裁判所HP 知的財産裁判例集より
「宅建取引営業秘密」事件
★東京地裁平成19.10.30平成18(ワ)14569等不正競争行為差止請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 平田直人
裁判官 柵木澄子
■事案
原告会社の元役員と従業員による営業秘密の持ち出しや
新会社の営業表示の類似性が争点となった事案
原告:宅建取引業者ら
被告:宅建取引業者、元取締役、元従業員
■結論
請求棄却
■争点
条文 不正競争防止法2条1項1号、4号
1 営業主体混同惹起行為性
2 名刺の営業秘密性
3 引き抜き行為の不法行為性
■判決内容
<経緯>
H02.12 被告Bが原告会社に入社
H13.10 被告Aが原告会社に入社
H16.07.28 Aが原告会社の取締役に就任
H17.11.30 Aが取締役を辞任、退職
H17.12.14 Aが被告会社設立、代表取締役就任
H18.01.20 Bが原告会社を退職
H18.02.01 Bが被告会社に入社、取締役に就任
<争点>
1 営業主体混同惹起行為性
「仮住まい情報センター」などの原告営業表示の周知性について、
原告は、ちらし、顧客紹介用紙、下敷き、新聞広告等で使用して
いた旨の主張をしていましたが、その使用期間、使用頻度、使用
態様等についての主張立証を尽くしておらず認定されるに至って
いません。
(22頁以下)
2 名刺の営業秘密性
12社のハウスメーカーの営業担当者の氏名、所属部署、連絡先等の
情報の営業秘密性について、秘密管理性と非公知性に関して検討し
ています。
(1)秘密管理性
裁判所は、
『秘密管理性が認められるためには,その情報を客観的に秘密として管理していると認識することができる状態にあることが必要であり,具体的には,当該情報にアクセスすることができる者が制限され,アクセスした者が秘密であると認識することができることが必要である。』
としたうえで、
名刺の管理状況、就業規則の規定の解釈などから原告会社では名刺が
秘密情報として管理されていないこと、仮に原告が管理を徹底指導し
ていたとしてもアクセス制限性、認識可能性について何ら主張立証が
ない、と判断しています。
(24頁以下)
(2)非公知性
『非公知性が認められるためには,当該情報が,保有者の管理下以外では一般的に入手することができない状態にあることが必要である。』
としたうえで、裁判所は、営業活動上名刺交換で取得しうる情報であり、
一般的に入手することができない状態にあるとはいえないとしています。
(26頁)
よって、原告主張の情報は、営業秘密性を具備しないとされました。
3 引き抜き行為の不法行為性
原告は、Aによる社員B引き抜き行為が取締役の忠実義務違反、従業員と
しての誠実義務違反、自由競争逸脱行為にあたると主張しましたが、
容れられていません。
(26頁以下)
BのほうからAの会社への就職を申し入れしていたことなどもあって、
Bに対するAによる退職や入社の勧誘の事実が認定されていません。
■コメント
原告会社の社長とその息子の経営方針に反発して
袂を分かち競業する会社を始めた原告会社No.2のA。
そのAに原告会社でトップの営業成績を収めていた
社員を引き抜かれたとして原告は裁判を起しましたが、
結論的には、原告敗訴となりました。
■参考文献
小松一雄編著「不正競業訴訟の実務」(2005)331頁以下
「宅建取引営業秘密」事件
★東京地裁平成19.10.30平成18(ワ)14569等不正競争行為差止請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 平田直人
裁判官 柵木澄子
■事案
原告会社の元役員と従業員による営業秘密の持ち出しや
新会社の営業表示の類似性が争点となった事案
原告:宅建取引業者ら
被告:宅建取引業者、元取締役、元従業員
■結論
請求棄却
■争点
条文 不正競争防止法2条1項1号、4号
1 営業主体混同惹起行為性
2 名刺の営業秘密性
3 引き抜き行為の不法行為性
■判決内容
<経緯>
H02.12 被告Bが原告会社に入社
H13.10 被告Aが原告会社に入社
H16.07.28 Aが原告会社の取締役に就任
H17.11.30 Aが取締役を辞任、退職
H17.12.14 Aが被告会社設立、代表取締役就任
H18.01.20 Bが原告会社を退職
H18.02.01 Bが被告会社に入社、取締役に就任
<争点>
1 営業主体混同惹起行為性
「仮住まい情報センター」などの原告営業表示の周知性について、
原告は、ちらし、顧客紹介用紙、下敷き、新聞広告等で使用して
いた旨の主張をしていましたが、その使用期間、使用頻度、使用
態様等についての主張立証を尽くしておらず認定されるに至って
いません。
(22頁以下)
2 名刺の営業秘密性
12社のハウスメーカーの営業担当者の氏名、所属部署、連絡先等の
情報の営業秘密性について、秘密管理性と非公知性に関して検討し
ています。
(1)秘密管理性
裁判所は、
『秘密管理性が認められるためには,その情報を客観的に秘密として管理していると認識することができる状態にあることが必要であり,具体的には,当該情報にアクセスすることができる者が制限され,アクセスした者が秘密であると認識することができることが必要である。』
としたうえで、
名刺の管理状況、就業規則の規定の解釈などから原告会社では名刺が
秘密情報として管理されていないこと、仮に原告が管理を徹底指導し
ていたとしてもアクセス制限性、認識可能性について何ら主張立証が
ない、と判断しています。
(24頁以下)
(2)非公知性
『非公知性が認められるためには,当該情報が,保有者の管理下以外では一般的に入手することができない状態にあることが必要である。』
としたうえで、裁判所は、営業活動上名刺交換で取得しうる情報であり、
一般的に入手することができない状態にあるとはいえないとしています。
(26頁)
よって、原告主張の情報は、営業秘密性を具備しないとされました。
3 引き抜き行為の不法行為性
原告は、Aによる社員B引き抜き行為が取締役の忠実義務違反、従業員と
しての誠実義務違反、自由競争逸脱行為にあたると主張しましたが、
容れられていません。
(26頁以下)
BのほうからAの会社への就職を申し入れしていたことなどもあって、
Bに対するAによる退職や入社の勧誘の事実が認定されていません。
■コメント
原告会社の社長とその息子の経営方針に反発して
袂を分かち競業する会社を始めた原告会社No.2のA。
そのAに原告会社でトップの営業成績を収めていた
社員を引き抜かれたとして原告は裁判を起しましたが、
結論的には、原告敗訴となりました。
■参考文献
小松一雄編著「不正競業訴訟の実務」(2005)331頁以下