裁判所HP 知的財産裁判例集より

「マクドナルド フランチャイズ契約解除」事件(控訴審)

知財高裁平成19.9.27平成18(ネ)10032不正競争行為差止等・損害賠償等反訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 田中信義
裁判官     古閑裕二
裁判官     浅井憲


★原審(本訴)
東京地裁平成18.2.21平成17(ワ)14972不正競争民事訴訟PDF


■事案

マクドナルドの「直営店」での委託販売契約から「フランチャイズ店」
(フランチャイズ契約)への契約形態の移行の際の契約関係をめぐって
争われた事案


原告(被控訴人、反訴被告):日本マクドナルド株式会社
被告(控訴人、反訴原告) :フランチャイジー


■結論

控訴棄却


■争点

条文 民法90条

1 店舗の有形無形固定資産の売買契約の公序良俗違反性
2 買戻の債務不履行の成否
3 店舗価値維持による不当利得返還請求



■判決内容

<経緯>

H4末   原告-長崎屋 店舗建物無断転貸問題
H5.7.10  原告-被告間で本件店舗での委託販売契約締結
H5.8.24  被告が本件店舗建物賃借権を譲受ける
H6.12.1  フランチャイズ契約に向けたトレーニング開始
H8.5.31  原告-被告間で店舗の有形無形固定資産の売買契約締結
H8.6.1  フランチャイズ契約締結

H12.3   被告が納入業者への支払い遅延
H12.8   法人税等滞納を理由とする差押処分
H12.9〜
H15.3   数次に亘る審査、改善事項の提言
H15.5.29 原告が解除の意思表示(第1通知書)
H15.8.11 民事調停、不成立
H16.12.3 原告が解除の意思表示(第2通知書)
H17.3.23 原告が解除の意思表示(第3通知書)


<争点>

1 店舗の有形無形固定資産の売買契約の公序良俗違反性

原告直営店での被告による委託販売の契約形態からフランチャイズ
店としてのフランチャイズ契約形態への転換を望んでいた被告に対
して原告側が直営店舗の有形、無形(営業権)固定資産を買い取ら
せたのは優越的地位の濫用にあたり、この売買契約は公序良俗に反
して無効であると被告は主張していました。

しかし、無形固定資産(営業権)買取りの経済的合理性、委託販売
契約上のマージンの位置づけ、FC契約前の売買契約であって原告は
フランチャイザーとしての地位を利用したものでないことなどから、
被告の主張(不当利得返還請求)は認められませんでした。
(6頁以下)


2 買戻の債務不履行の成否

被告は、公序良俗違反性が認められない場合であってもフランチャ
イズ契約終了に伴い店舗の無形固定資産を買い戻す義務が覚書に基
づき原告にあると主張しました。

覚書第1項
「本契約終了後,乙が甲に対し本契約第2条第1項第1号記載の営業場所を賃貸し,甲が賃借する契約が成立することを条件として,甲は営業場所に存する乙の全資産を現状有姿のまま甲の計算による定率簿価価格で買い取るものとする。」

しかし、この買戻し条項は、
本件FC契約が終了し,フランチャイザーとフランチャイジーの関係が解消されたとしても,原告と被告会社間で本件店舗の建物の賃貸借契約が締結されることによって,原告が直営店に戻すなどして本件店舗における営業を継続することができるという利益が保証される場合には,本件店舗に残る被告会社の全資産を買い取るとの趣旨

であると認定されて、原告被告間の賃貸借契約が成立していないこと
から買戻しの条件が成就していないとされました。

よって、原告の買戻義務は否定されました。
(10頁以下)


3 店舗価値維持による不当利得返還請求

被告が店舗で営業をしていた間、店舗の価値を維持したから、原告が
再度店舗の営業実績を承継した以上、その対価を不当利得として支払
うべきであると被告は主張しましたが、容れられていません。

また、フランチャイズ契約が終了した場合、原告がのれん代等の無体
財産に対する対価を支払う必要がないことがフランチャイズ契約に明
示されていることから、この点からも被告の不当利得返還請求は成立
しないと言及されています。
(11頁以下)


■コメント

原審ではフランチャイズ契約の解除を軸に争われていましたが、
控訴審では大きく争点が整理されて(訴えの取下と交換的変更)
フランチャイズ契約前後の契約関係が新たな争点として争われて
います。

不正競争防止法の争点も取り下げられています。


■過去のブログ記事

2006年02月22日記事
「マクドナルド フランチャイズ契約解除」事件〜不正競争防止法 不正競争行為差止等請求事件判決(知財判決速報)〜