裁判所HP 知的財産裁判例集より
「地震対策装置特許権侵害虚偽告知」事件(控訴審)
★知財高裁平成19.9.12平成18(ネ)10080債務不存在確認等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 宍戸充
裁判官 柴田義明
★原審
東京地裁平成18.10.11平成17(ワ)22834債務不存在確認等請求事件
■事案
地震対策装置に関する特許権侵害を巡る弁護士らによる
警告書送付行為の営業誹謗行為性が争われた事案
控訴人/被控訴人(一審被告):特許権者(弁理士)
被控訴人/控訴人(一審原告):金具類製造販売会社
■結論
一審被告控訴部分棄却/一審原告控訴部分一部認容
■争点
条文 不正競争防止法2条1項14号、民法709条
1 特許権の構成要件充足性(略)
2 虚偽告知性
3 過失の有無
4 不法行為性
■判決内容
<争点>
2 虚偽告知性
原審同様、特許権に無効理由があることから、警告書における
一審原告製品が本件特許権を侵害する旨の記載は、虚偽事実で
あると判断されています。
(34頁)
なお、原審では、警告書送付行為の違法性について、特許権者
の権利行使として社会通念上必要と認められる範囲を超えてい
るとまではいえない、として違法性が阻却されていました。
(原審33頁以下)
控訴審では原審の違法性論を採らず、通知行為の不正競争行為
性を前提として侵害告知を繰り返すおそれ(将来部分)につい
ての差止の要否について新たに検討が加えられ、
『本件において,一審被告は,本件特許権が有効であり,一審原告製品が本件特許権の技術的範囲に属する可能性があることを前提とした本件警告書を送付したほか,本件訴訟において,本件特許権が有効であり,一審原告製品が本件特許権の技術的範囲に属する旨の主張,すなわち,上記内容の告知,流布を今後も適法に行うことができるとの趣旨の主張をしている。そして,これら一審被告の訴訟前の行動,訴訟における対応その他の訴訟に表れた事情を総合的に考慮すれば,一審被告については,本件特許権を無効とする審決が前記判決に対する上告が棄却されるなどして確定した場合を別として,上記内容の不正競争行為を行うおそれがないとはいえず,上記の差止請求を認めることが相当である。』
(34頁以下)
将来部分についての差止が認められると控訴審は判断しました。
3 過失の有無
警告書送付行為による営業上の利益侵害に対する損害賠償請求に
ついて、裁判所は、
『警告書送付時までの,警告書の内容が虚偽であると疑うべき事情や前記(6)エのような警告書の内容,配布時期,配布先に照らして一審被告に要求される調査義務の内容・程度に,技術的範囲の属否の判断や無効理由の存否についての上記の諸事情を総合考慮すると,警告書の送付時に,その警告書の内容が虚偽でなく,送付行為が不正競争行為でないと認識して,警告書の送付を行ったことにつき,一審被告に過失があったということはできない。』
(35頁以下)
一審被告に過失がなかったと判断しています。
4 不法行為性
この点についても一審被告に故意・過失がないとして不法行為性
が否定されています。
■コメント
原審が違法性論での処理をしたのに対して、控訴審は過失論
で対応をしたところが参考になります。
(結論に差異が生じないと考えられる点について、
小松一雄編著「不正競業訴訟の実務」(2005)386頁参照)
なお、控訴審では、侵害警告書を送付した弁護士(一審被告)
は当事者から外れています。
■参考文献
相良由里子「虚偽事実の告知・流布行為の認定」
『知的財産法の理論と実務第3巻』(2007)394頁以下参照
■過去のブログ記事
2006年11月02日
「地震対策装置特許権侵害虚偽告知」事件〜特許権 債務不存在確認等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
「地震対策装置特許権侵害虚偽告知」事件(控訴審)
★知財高裁平成19.9.12平成18(ネ)10080債務不存在確認等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 宍戸充
裁判官 柴田義明
★原審
東京地裁平成18.10.11平成17(ワ)22834債務不存在確認等請求事件
■事案
地震対策装置に関する特許権侵害を巡る弁護士らによる
警告書送付行為の営業誹謗行為性が争われた事案
控訴人/被控訴人(一審被告):特許権者(弁理士)
被控訴人/控訴人(一審原告):金具類製造販売会社
■結論
一審被告控訴部分棄却/一審原告控訴部分一部認容
■争点
条文 不正競争防止法2条1項14号、民法709条
1 特許権の構成要件充足性(略)
2 虚偽告知性
3 過失の有無
4 不法行為性
■判決内容
<争点>
2 虚偽告知性
原審同様、特許権に無効理由があることから、警告書における
一審原告製品が本件特許権を侵害する旨の記載は、虚偽事実で
あると判断されています。
(34頁)
なお、原審では、警告書送付行為の違法性について、特許権者
の権利行使として社会通念上必要と認められる範囲を超えてい
るとまではいえない、として違法性が阻却されていました。
(原審33頁以下)
控訴審では原審の違法性論を採らず、通知行為の不正競争行為
性を前提として侵害告知を繰り返すおそれ(将来部分)につい
ての差止の要否について新たに検討が加えられ、
『本件において,一審被告は,本件特許権が有効であり,一審原告製品が本件特許権の技術的範囲に属する可能性があることを前提とした本件警告書を送付したほか,本件訴訟において,本件特許権が有効であり,一審原告製品が本件特許権の技術的範囲に属する旨の主張,すなわち,上記内容の告知,流布を今後も適法に行うことができるとの趣旨の主張をしている。そして,これら一審被告の訴訟前の行動,訴訟における対応その他の訴訟に表れた事情を総合的に考慮すれば,一審被告については,本件特許権を無効とする審決が前記判決に対する上告が棄却されるなどして確定した場合を別として,上記内容の不正競争行為を行うおそれがないとはいえず,上記の差止請求を認めることが相当である。』
(34頁以下)
将来部分についての差止が認められると控訴審は判断しました。
3 過失の有無
警告書送付行為による営業上の利益侵害に対する損害賠償請求に
ついて、裁判所は、
『警告書送付時までの,警告書の内容が虚偽であると疑うべき事情や前記(6)エのような警告書の内容,配布時期,配布先に照らして一審被告に要求される調査義務の内容・程度に,技術的範囲の属否の判断や無効理由の存否についての上記の諸事情を総合考慮すると,警告書の送付時に,その警告書の内容が虚偽でなく,送付行為が不正競争行為でないと認識して,警告書の送付を行ったことにつき,一審被告に過失があったということはできない。』
(35頁以下)
一審被告に過失がなかったと判断しています。
4 不法行為性
この点についても一審被告に故意・過失がないとして不法行為性
が否定されています。
■コメント
原審が違法性論での処理をしたのに対して、控訴審は過失論
で対応をしたところが参考になります。
(結論に差異が生じないと考えられる点について、
小松一雄編著「不正競業訴訟の実務」(2005)386頁参照)
なお、控訴審では、侵害警告書を送付した弁護士(一審被告)
は当事者から外れています。
■参考文献
相良由里子「虚偽事実の告知・流布行為の認定」
『知的財産法の理論と実務第3巻』(2007)394頁以下参照
■過去のブログ記事
2006年11月02日
「地震対策装置特許権侵害虚偽告知」事件〜特許権 債務不存在確認等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜