裁判所HP 知的財産裁判例集より
「営業ノウハウ書籍」事件
★東京地裁平成19.8.30平成18(ワ)5752著作権侵害差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官 間史恵
裁判官 古河謙一
■事案
ビジネス・営業ノウハウ本の複製権・翻案権侵害性が争われた事案
原告:セミナー開催会社代表取締役A
出版会社
被告:セミナー開催会社元従業員
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法第2条1項1号、21条、27条、114条1項
1 書籍の複製権・翻案権侵害性
2 差止の範囲論
3 損害論
4 謝罪広告の要否
■判決内容
<経緯>
H2〜原告代表取締役Aがビジネスセミナーを開催
H7〜被告はセミナー会社を退職、独自にセミナーを開催
H9〜原告代表取締役Aが書籍について原告出版社と出版権設定契約
H12 原告代表取締役Aは別訴で被告に対し勝訴(著作権侵害事案)
H17 被告は本件書籍を出版
H18 訴外本件書籍出版社と原告らと裁判上の和解成立(保管書籍の廃棄)
<争点>
1 書籍の複製権・翻案権侵害性
(1)複製権・翻案権侵害性
裁判所は、江差追分最高裁判例を引用したうえで複製権・翻案権侵害性
を検討。最高裁平成13年06月28日平成11(受)922損害賠償等請求事件PDF
(裁判要旨)
結論としては、被告書籍238頁中、8頁相当の分量に著作権侵害性があると
認定しています。
(28頁以下)
(2)依拠性
H12に原告が別件の著作権侵害事案で被告に対して勝訴判決を得ている
ことなどを含め、被告は原告書籍や配布資料に接する機会があったと
認定されています。
(29頁)
2 差止の範囲論
被告書籍は一冊として出版されているわけですが、裁判所は侵害部分は
可分であること、侵害部分を削除しても書籍自体として意味は通じる、
として被告書籍全体の廃棄は認めませんでした。
(52頁以下)
3 損害論
被告書籍は自費出版でしたが、被告書籍の販売利益を定価の50%相当額
と認定した上で著作権法114条1項による損害額算定法を採用。
原告らの限界利益(貢献利益)も原告書籍定価の50%相当額であったと
したうえで、侵害部分の寄与度を2割として算定しています。
(53頁以下)
4 謝罪広告の要否
発行された被告書籍4000部のうち、頒布販売されたのは1415部にとどまる
こと、被告書籍の多くがすでに廃棄処分されていること、侵害箇所が8頁
(全体238頁中)であることなどから謝罪広告の必要性はないとされました。
(58頁)
■コメント
原告は、「お客様が絶句する究極の経営5つの超戦略」「狙った
お客の80%は落とせる 矢部広重の必勝方程式―1000名の経営トッ
プが実践した驚異の実績」などの、ビジネス帝王学を学ぶノウハ
ウ本を出版しているかたです。
被告は、研修業務について原告と代理店契約を締結後、独立して
いる経緯があるので、ざっくりいえばノウハウ利用態様(その表現
方法)の妥当性というところが争点となった事案でした。
侵害性判断部分(29頁以下)を読むと、「アイデア」類否の部分が
あって微妙な判断もあります。
■追記(08.02.14)
控訴審
★知財高裁平成20年02月12日平成19(ネ)10079著作権侵害差止等請求控訴事件PDF
「営業ノウハウ書籍」事件
★東京地裁平成19.8.30平成18(ワ)5752著作権侵害差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官 間史恵
裁判官 古河謙一
■事案
ビジネス・営業ノウハウ本の複製権・翻案権侵害性が争われた事案
原告:セミナー開催会社代表取締役A
出版会社
被告:セミナー開催会社元従業員
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法第2条1項1号、21条、27条、114条1項
1 書籍の複製権・翻案権侵害性
2 差止の範囲論
3 損害論
4 謝罪広告の要否
■判決内容
<経緯>
H2〜原告代表取締役Aがビジネスセミナーを開催
H7〜被告はセミナー会社を退職、独自にセミナーを開催
H9〜原告代表取締役Aが書籍について原告出版社と出版権設定契約
H12 原告代表取締役Aは別訴で被告に対し勝訴(著作権侵害事案)
H17 被告は本件書籍を出版
H18 訴外本件書籍出版社と原告らと裁判上の和解成立(保管書籍の廃棄)
<争点>
1 書籍の複製権・翻案権侵害性
(1)複製権・翻案権侵害性
裁判所は、江差追分最高裁判例を引用したうえで複製権・翻案権侵害性
を検討。最高裁平成13年06月28日平成11(受)922損害賠償等請求事件PDF
(裁判要旨)
結論としては、被告書籍238頁中、8頁相当の分量に著作権侵害性があると
認定しています。
(28頁以下)
(2)依拠性
H12に原告が別件の著作権侵害事案で被告に対して勝訴判決を得ている
ことなどを含め、被告は原告書籍や配布資料に接する機会があったと
認定されています。
(29頁)
2 差止の範囲論
被告書籍は一冊として出版されているわけですが、裁判所は侵害部分は
可分であること、侵害部分を削除しても書籍自体として意味は通じる、
として被告書籍全体の廃棄は認めませんでした。
(52頁以下)
3 損害論
被告書籍は自費出版でしたが、被告書籍の販売利益を定価の50%相当額
と認定した上で著作権法114条1項による損害額算定法を採用。
原告らの限界利益(貢献利益)も原告書籍定価の50%相当額であったと
したうえで、侵害部分の寄与度を2割として算定しています。
(53頁以下)
4 謝罪広告の要否
発行された被告書籍4000部のうち、頒布販売されたのは1415部にとどまる
こと、被告書籍の多くがすでに廃棄処分されていること、侵害箇所が8頁
(全体238頁中)であることなどから謝罪広告の必要性はないとされました。
(58頁)
■コメント
原告は、「お客様が絶句する究極の経営5つの超戦略」「狙った
お客の80%は落とせる 矢部広重の必勝方程式―1000名の経営トッ
プが実践した驚異の実績」などの、ビジネス帝王学を学ぶノウハ
ウ本を出版しているかたです。
被告は、研修業務について原告と代理店契約を締結後、独立して
いる経緯があるので、ざっくりいえばノウハウ利用態様(その表現
方法)の妥当性というところが争点となった事案でした。
侵害性判断部分(29頁以下)を読むと、「アイデア」類否の部分が
あって微妙な判断もあります。
■追記(08.02.14)
控訴審
★知財高裁平成20年02月12日平成19(ネ)10079著作権侵害差止等請求控訴事件PDF