裁判所HP 知的財産裁判例集より
「グラブ浚渫施工管理プログラム」事件
★大阪地裁平成19.7.26平成16(ワ)11546損害賠償等請求事件PDF
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 山田知司
裁判官 高松宏之
裁判官 村上誠子
■事案
グラブ浚渫船(水底土砂掘削作業船)の作業状況を管理するGPS対応
プログラムについて、その著作物性、権利帰属性が争われた事案
原告:コンピュータソフト開発販売会社
被告:業務用ナビゲーションシステム開発製造会社
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法第2条1項1号、不正競争防止法2条1項14号
1 プログラムの創作性
2 プログラムの著作権の帰属
(以下、略)
3 著作権譲渡の対抗要件の要否
4 差止請求の可否
5 損害論
6 複製販売許諾契約の成否
7 バグを理由とする代金支払拒絶の可否
8 信義則上の販売禁止義務の有無
9 営業誹謗行為性(不正競争防止法2条1項14号)
■判決内容
<経緯>
A(原告会社代表取締役)は発注先会社からグラブ浚渫船(水底土砂
掘削作業船)で利用するグラブ浚渫施工管理システムに関するプログ
ラムの開発を依頼され納品していました。
その後、発注先会社(代表取締役B)が倒産(H12.6)。
AはH12.8に設立された別法人である被告会社と取引を開始。
なお、被告会社は発注先会社の破産宣告後、当該発注先会社が有して
いた特許権、サーバ、什器備品を破産管財人から譲り受け(H13.3)、
H12.11〜H16.3までのあいだに本件プログラムを複製の上、20件のグラ
ブ浚渫施工管理システムにインストールしてこれを販売していました。
Aは遅くともH18.8までにH15.6設立の原告会社に対してプログラムの
著作権等を譲渡しています。
<争点>
1 プログラムの創作性
原告側が開発した船体位置決めプログラム、MS-DOS 版プログラム、
Windows版プログラムのうちMS-DOS 版とWindows版のプログラムに
ついて、MS-DOS 版プログラムが、船体位置決めプログラムと別個の
創作性のあるプログラムであるかどうか、またMS-DOS 版プログラム
とはOS、プログラム言語が異なるWindows版プログラムとの関係性が
争点となりました。
結論的には、MS-DOS 版、Windows版いずれのプログラムも創作性が
ある著作物と判断されています。
(68頁以下、80頁以下)
なお、MS-DOS 版プログラムは船体位置決めプログラムを原著作物と
する二次的著作物であり、Windows版プログラムはMS-DOS 版プログ
ラムの二次的著作物という位置づけの判断となっています。
(69頁、87頁以下)
2 プログラムの著作権の帰属
船体位置決めプログラム、MS-DOS 版プログラム、Windows版プログ
ラムの著作権の帰属がさらに争点となっています。
開発報酬の価額、ソースプログラムの管理状況、著作権表示などの
諸点が検討された上で結論的には、MS-DOS 版プログラム、Windows版
プログラムについては発注先会社ではなく原告側に帰属するとされま
した。(70頁以下、88頁以下)
なお、船体位置決めプログラムについては、少なくとも被告には帰属
しないと判断されています(79頁以下)。
*最終的に裁判所は、被告の抗弁を認めず、本件プログラムの複製
販売の差止、損害賠償請求、未払い請負代金請求を認容しています。
■コメント
開発されたプログラムの権利の帰属関係を規定する契約書の取り交わ
しがなく、プログラムの権利関係が曖昧になってしまった事案です。
被告会社の現在の代表取締役Bは、倒産した発注先会社の当時の代表
取締役(Bもそのときに破産宣告を受けていた)でもあったので、
倒産という付随事情がありますが、事案を単純化すれば発注先と受注
先とのプログラムの著作権の権利帰属をめぐる争いの構図といえます。
■関連サイト
原告サイト
被告サイト
■参考文献
ライセンス契約と倒産について
金井高志「コンピュータソフト・インターネットビジネスにおける
著作権問題-他の法分野との交錯領域における問題-」
『コピライト』464号(1999)16頁以下
(財)知的財産研究所編「知的財産ライセンス契約の保護
-ライセンサーの破産の場合を中心に-」(2004)
■追記(07.09.18)
企業法務戦士の雑感
■[企業法務][知財]またしても大阪発
「グラブ浚渫施工管理プログラム」事件
★大阪地裁平成19.7.26平成16(ワ)11546損害賠償等請求事件PDF
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 山田知司
裁判官 高松宏之
裁判官 村上誠子
■事案
グラブ浚渫船(水底土砂掘削作業船)の作業状況を管理するGPS対応
プログラムについて、その著作物性、権利帰属性が争われた事案
原告:コンピュータソフト開発販売会社
被告:業務用ナビゲーションシステム開発製造会社
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法第2条1項1号、不正競争防止法2条1項14号
1 プログラムの創作性
2 プログラムの著作権の帰属
(以下、略)
3 著作権譲渡の対抗要件の要否
4 差止請求の可否
5 損害論
6 複製販売許諾契約の成否
7 バグを理由とする代金支払拒絶の可否
8 信義則上の販売禁止義務の有無
9 営業誹謗行為性(不正競争防止法2条1項14号)
■判決内容
<経緯>
A(原告会社代表取締役)は発注先会社からグラブ浚渫船(水底土砂
掘削作業船)で利用するグラブ浚渫施工管理システムに関するプログ
ラムの開発を依頼され納品していました。
その後、発注先会社(代表取締役B)が倒産(H12.6)。
AはH12.8に設立された別法人である被告会社と取引を開始。
なお、被告会社は発注先会社の破産宣告後、当該発注先会社が有して
いた特許権、サーバ、什器備品を破産管財人から譲り受け(H13.3)、
H12.11〜H16.3までのあいだに本件プログラムを複製の上、20件のグラ
ブ浚渫施工管理システムにインストールしてこれを販売していました。
Aは遅くともH18.8までにH15.6設立の原告会社に対してプログラムの
著作権等を譲渡しています。
<争点>
1 プログラムの創作性
原告側が開発した船体位置決めプログラム、MS-DOS 版プログラム、
Windows版プログラムのうちMS-DOS 版とWindows版のプログラムに
ついて、MS-DOS 版プログラムが、船体位置決めプログラムと別個の
創作性のあるプログラムであるかどうか、またMS-DOS 版プログラム
とはOS、プログラム言語が異なるWindows版プログラムとの関係性が
争点となりました。
結論的には、MS-DOS 版、Windows版いずれのプログラムも創作性が
ある著作物と判断されています。
(68頁以下、80頁以下)
なお、MS-DOS 版プログラムは船体位置決めプログラムを原著作物と
する二次的著作物であり、Windows版プログラムはMS-DOS 版プログ
ラムの二次的著作物という位置づけの判断となっています。
(69頁、87頁以下)
2 プログラムの著作権の帰属
船体位置決めプログラム、MS-DOS 版プログラム、Windows版プログ
ラムの著作権の帰属がさらに争点となっています。
開発報酬の価額、ソースプログラムの管理状況、著作権表示などの
諸点が検討された上で結論的には、MS-DOS 版プログラム、Windows版
プログラムについては発注先会社ではなく原告側に帰属するとされま
した。(70頁以下、88頁以下)
なお、船体位置決めプログラムについては、少なくとも被告には帰属
しないと判断されています(79頁以下)。
*最終的に裁判所は、被告の抗弁を認めず、本件プログラムの複製
販売の差止、損害賠償請求、未払い請負代金請求を認容しています。
■コメント
開発されたプログラムの権利の帰属関係を規定する契約書の取り交わ
しがなく、プログラムの権利関係が曖昧になってしまった事案です。
被告会社の現在の代表取締役Bは、倒産した発注先会社の当時の代表
取締役(Bもそのときに破産宣告を受けていた)でもあったので、
倒産という付随事情がありますが、事案を単純化すれば発注先と受注
先とのプログラムの著作権の権利帰属をめぐる争いの構図といえます。
■関連サイト
原告サイト
被告サイト
■参考文献
ライセンス契約と倒産について
金井高志「コンピュータソフト・インターネットビジネスにおける
著作権問題-他の法分野との交錯領域における問題-」
『コピライト』464号(1999)16頁以下
(財)知的財産研究所編「知的財産ライセンス契約の保護
-ライセンサーの破産の場合を中心に-」(2004)
■追記(07.09.18)
企業法務戦士の雑感
■[企業法務][知財]またしても大阪発