裁判所HP 知的財産裁判例集より
「『めしや食堂』店舗外観」事件
★大阪地裁平成19.7.3平成18(ワ)10470不正競争行為差止等請求事件PDF
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官 西理香
裁判官 西森みゆき
■事案
フランチャイズチェーンの外食店舗の外観などが類似する
として不正競争行為性が争われた事案
原告:飲食店経営会社
被告:飲食店経営会社
■結論
請求棄却
■争点
条文 不正競争防止法2条1項2号、1号
1 営業表示の類似性
2 店舗外観の営業表示性
■判決内容
争点
1 営業表示の類似性
原告の表示は「ごはんや まいどおおきに ○○食堂」、
被告の表示は「めしや食堂」でした。
裁判所は、原告表示の「まいどおおきに食堂」部分に原告の
営業表示としての識別性があると認定したうえで称呼の点で
両者は類似しない、として不正競争行為性を否定しています。
(21頁以下)
2 店舗外観の営業表示性
原告は、予備的請求として店舗外観の類似性、不正競争行為性を
争点としています。
裁判所は店舗外観の営業表示性について、まず、
『店舗外観は,それ自体は営業主体を識別させるために選択されるものではないが,特徴的な店舗外観の長年にわたる使用等により,第二次的に店舗外観全体も特定の営業主体を識別する営業表示性を取得する場合もあり得ないではないとも解され,原告店舗外観全体もかかる営業表示性を取得し得る余地があること自体は否定することができない。』
として、セカンダリーミーニング取得の可能性を肯定。
しかし、続けて、
『しかし,仮に店舗外観全体について周知営業表示性が認められたとしても,これを前提に店舗外観全体の類否を検討するに当たっては,単に,店舗外観を全体として見た場合の漠然とした印象,雰囲気や,当該店舗外観に関するコンセプトに似ている点があるというだけでは足りず,少なくとも需要者の目を惹く特徴的ないし主要な構成部分が同一であるか著しく類似しており,その結果,飲食店の利用者たる需要者において,当該店舗の営業主体が同一であるとの誤認混同を生じさせる客観的なおそれがあることを要すると解すべきである。』
(34頁)
として、類似性判断での処理を指向しています。
その上で
・店舗看板、ポール看板
・メニュー看板
・店舗外装の配色
などの店舗外観の個々の構成要素を検討、両者の店舗外観に
全体としての類似性があるとはいえないと判断しました。
なお、一般不法行為性についても否定されています(37頁)。
■コメント
ブログやネット掲示板、店舗備付け「お客様の声」メモなどで
両店の業態等の類似性が指摘されていたことがきっかけのよう
です。(36頁以下参照)
2ちゃんねるやブログで店舗外観の「パクリ」が大きく喧伝される
事態であったとすれば、原告会社としても黙ってはいられなかっ
たでしょう。
原告がトレードドレスについて言及していますが(9頁以下)、
店舗外観など建築物も含めた外観保護を考えた場合、高部判事が
指摘されているように商号と同様の営業表示性を店舗外観自体が
取得していることが求められてきます(下記参考文献「座談会」
41頁参照)。
不正競争防止法の趣旨が営業自体の保護ではなくて競業を認めた
上での誤認混同表示行為の規制にあることからすれば、店舗外観
自体での誤認混同表示性はそう簡単には肯定されないでしょう。
店舗外観にかかわる事案としては、古くは「パン屋の食堂事件」
(大判S17.8.27、下記小野「概説」参照)があり、近時では
ユニクロ対ダイエー仮処分申請事件(2002年6月和解)があります。
今年のはじめには日経流通新聞に「外食知財紛争」として店舗
外観保護の方向性について記事として取り上げられています。
(下記ブログ記事参照)
店舗の什器やメニューも含めVI(ヴィジュアル・アイデンティティ)
構築を手がけるデザイン・建築士事務所からの依頼でFC展開業者と
の間の業務委託契約書を私のところでも作成することがありますが、
関係者はこうした店舗外観の知財性にも今後は一層留意する必要
がありそうです。
■過去のブログ記事
「店構え「激似」、外食知財紛争――外観保護、広がるか米流解釈、店舗全体の印象重視。」(日経流通新聞2007.2.16)
■参考文献
小野昌延「不正競争防止法概説」(1994)103頁以下
小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」(上)
(2007)188頁以下(三山)
牧野利秋監修「座談会 不正競争防止法をめぐる実務的課題と理論」
(2005)37頁以下参照
・トレードドレスに関連して、
鳥羽みさを「いわゆる「地模様」の商標登録性と「商標」の定義−
エピライン東京高裁判決に見るトレード・ドレスの保護−」
「パテント」(2002)55巻3号51頁以下PDF
生駒正文「トレードドレス法理序説-判決例を通して-」
『牛木理一先生古稀記念 意匠法及び周辺法の現代的課題』
(2005)729頁以下
三木茂、井口加奈子「店舗デザインの法的保護-米国トレードドレス保護と我が国における保護の可能性-」同上749頁以下
■関連サイト
・原告サイト
まいどおおきに食堂
IR情報(現時点では特になし)
・被告サイト
株式会社ライフフーズ めしや食堂
IR情報PDF
【有価証券報告書】
・フジオフードシステム
有価証券報告書第8期第一部4事業等のリスク
(2)競合の状況について
(8)重要な訴訟事件の発生について
・ライフフーズ
有価証券報告書第21期第一部4事業等のリスク
(9) 株式会社フジオフードシステムとの訴訟について
訴訟に至る経緯が記載されています。
EDINET参照
----------------------------------------
■追記(07.08.06)
企業法務戦士の雑感
■[企業法務][知財] 「店舗の外観」は保護されるか?〜法と仁義の隘路で。
----------------------------------------
■追記(08.6.21)
平成20年5月26日、上告不受理で終わりました。
控訴審(2007年12月11日記事)
----------------------------------------
■追記(08/11/12)
「知」的ユウレイ屋敷(08/11/12記事)
[不正競争]店舗外観の保護
--------------------
■追記09/6/30
企業法務戦士の雑感(2009-06-29記事)
■[企業法務][知財]外食業界における「知財」
「『めしや食堂』店舗外観」事件
★大阪地裁平成19.7.3平成18(ワ)10470不正競争行為差止等請求事件PDF
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官 西理香
裁判官 西森みゆき
■事案
フランチャイズチェーンの外食店舗の外観などが類似する
として不正競争行為性が争われた事案
原告:飲食店経営会社
被告:飲食店経営会社
■結論
請求棄却
■争点
条文 不正競争防止法2条1項2号、1号
1 営業表示の類似性
2 店舗外観の営業表示性
■判決内容
争点
1 営業表示の類似性
原告の表示は「ごはんや まいどおおきに ○○食堂」、
被告の表示は「めしや食堂」でした。
裁判所は、原告表示の「まいどおおきに食堂」部分に原告の
営業表示としての識別性があると認定したうえで称呼の点で
両者は類似しない、として不正競争行為性を否定しています。
(21頁以下)
2 店舗外観の営業表示性
原告は、予備的請求として店舗外観の類似性、不正競争行為性を
争点としています。
裁判所は店舗外観の営業表示性について、まず、
『店舗外観は,それ自体は営業主体を識別させるために選択されるものではないが,特徴的な店舗外観の長年にわたる使用等により,第二次的に店舗外観全体も特定の営業主体を識別する営業表示性を取得する場合もあり得ないではないとも解され,原告店舗外観全体もかかる営業表示性を取得し得る余地があること自体は否定することができない。』
として、セカンダリーミーニング取得の可能性を肯定。
しかし、続けて、
『しかし,仮に店舗外観全体について周知営業表示性が認められたとしても,これを前提に店舗外観全体の類否を検討するに当たっては,単に,店舗外観を全体として見た場合の漠然とした印象,雰囲気や,当該店舗外観に関するコンセプトに似ている点があるというだけでは足りず,少なくとも需要者の目を惹く特徴的ないし主要な構成部分が同一であるか著しく類似しており,その結果,飲食店の利用者たる需要者において,当該店舗の営業主体が同一であるとの誤認混同を生じさせる客観的なおそれがあることを要すると解すべきである。』
(34頁)
として、類似性判断での処理を指向しています。
その上で
・店舗看板、ポール看板
・メニュー看板
・店舗外装の配色
などの店舗外観の個々の構成要素を検討、両者の店舗外観に
全体としての類似性があるとはいえないと判断しました。
なお、一般不法行為性についても否定されています(37頁)。
■コメント
ブログやネット掲示板、店舗備付け「お客様の声」メモなどで
両店の業態等の類似性が指摘されていたことがきっかけのよう
です。(36頁以下参照)
2ちゃんねるやブログで店舗外観の「パクリ」が大きく喧伝される
事態であったとすれば、原告会社としても黙ってはいられなかっ
たでしょう。
原告がトレードドレスについて言及していますが(9頁以下)、
店舗外観など建築物も含めた外観保護を考えた場合、高部判事が
指摘されているように商号と同様の営業表示性を店舗外観自体が
取得していることが求められてきます(下記参考文献「座談会」
41頁参照)。
不正競争防止法の趣旨が営業自体の保護ではなくて競業を認めた
上での誤認混同表示行為の規制にあることからすれば、店舗外観
自体での誤認混同表示性はそう簡単には肯定されないでしょう。
店舗外観にかかわる事案としては、古くは「パン屋の食堂事件」
(大判S17.8.27、下記小野「概説」参照)があり、近時では
ユニクロ対ダイエー仮処分申請事件(2002年6月和解)があります。
今年のはじめには日経流通新聞に「外食知財紛争」として店舗
外観保護の方向性について記事として取り上げられています。
(下記ブログ記事参照)
店舗の什器やメニューも含めVI(ヴィジュアル・アイデンティティ)
構築を手がけるデザイン・建築士事務所からの依頼でFC展開業者と
の間の業務委託契約書を私のところでも作成することがありますが、
関係者はこうした店舗外観の知財性にも今後は一層留意する必要
がありそうです。
■過去のブログ記事
「店構え「激似」、外食知財紛争――外観保護、広がるか米流解釈、店舗全体の印象重視。」(日経流通新聞2007.2.16)
■参考文献
小野昌延「不正競争防止法概説」(1994)103頁以下
小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」(上)
(2007)188頁以下(三山)
牧野利秋監修「座談会 不正競争防止法をめぐる実務的課題と理論」
(2005)37頁以下参照
・トレードドレスに関連して、
鳥羽みさを「いわゆる「地模様」の商標登録性と「商標」の定義−
エピライン東京高裁判決に見るトレード・ドレスの保護−」
「パテント」(2002)55巻3号51頁以下PDF
生駒正文「トレードドレス法理序説-判決例を通して-」
『牛木理一先生古稀記念 意匠法及び周辺法の現代的課題』
(2005)729頁以下
三木茂、井口加奈子「店舗デザインの法的保護-米国トレードドレス保護と我が国における保護の可能性-」同上749頁以下
■関連サイト
・原告サイト
まいどおおきに食堂
IR情報(現時点では特になし)
・被告サイト
株式会社ライフフーズ めしや食堂
IR情報PDF
【有価証券報告書】
・フジオフードシステム
有価証券報告書第8期第一部4事業等のリスク
(2)競合の状況について
(8)重要な訴訟事件の発生について
・ライフフーズ
有価証券報告書第21期第一部4事業等のリスク
(9) 株式会社フジオフードシステムとの訴訟について
訴訟に至る経緯が記載されています。
EDINET参照
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■追記(07.08.06)
企業法務戦士の雑感
■[企業法務][知財] 「店舗の外観」は保護されるか?〜法と仁義の隘路で。
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■追記(08.6.21)
平成20年5月26日、上告不受理で終わりました。
控訴審(2007年12月11日記事)
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■追記(08/11/12)
「知」的ユウレイ屋敷(08/11/12記事)
[不正競争]店舗外観の保護
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■追記09/6/30
企業法務戦士の雑感(2009-06-29記事)
■[企業法務][知財]外食業界における「知財」