ここのところ著作権法関連のおもしろい判例が続き、
また相変わらず不正競争防止法関連の判例もたくさん
あってアタマから湯気が出ている状況です。

本来、企業法務戦士の雑感さん(http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/
にまずは分析して戴きたいところですが、ちょっとアタマ
の体操ついでに無責任に・・・↓

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平成19年新司法試験試験選択科目P.17

[知的財産法]〔第2問〕
以下の事実関係を前提として,後記の設問に答えよ。なお,著作者人格権に関しては論じる必要はない。

【事実関係】
甲は,小説Aを執筆し出版した。これは,甲が数年暮らした外国を舞台に,外国人の若い男女を主人公とした恋愛小説であった。甲は,小説Aを演劇として上演することを計画し,その脚色を乙と丙に依頼し,乙と丙は,これを受けて,共同して小説Aを脚色し,脚本Bを執筆した。
作家志望の丁は,小説の書き方の勉強のために,小説Aを基にして,ストーリー展開と登場人物の性格設定を同様なものとしつつ,舞台を日本とし,主人公を日本人の若い男女に置き換えた小説Cを執筆した。
同じく作家志望の戊も,小説の書き方の勉強のために,小説Aの続編として,主な登場人物をそのまま登場させ,主人公のその後の人生を描く小説Dを執筆した。

〔設問〕
1. 乙は,甲の上演計画が頓挫したことから,自らが代表者である劇団に脚本Bに基づいて演劇Eを演じさせ,これを録音録画したDVDを販売したいと考えている。この場合,乙は,甲と丙の承諾を得ることが必要か。
2. 丁は,小説Cが一般の人にどのように評価されるかを知りたくなり,これを,自らがボランティアで行っている小説等の無料朗読会において朗読した。この場合,甲は,丁に対して,どのような請求をすることができるか。
3. 戊は,小説Dの出来栄えに満足し,多くの人に読んでもらうために,これを,自らがインターネット上に開設したホームページに掲載した。この場合,甲は,戊に対して,どのような請求をすることができるか。


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・論文式試験問題集選択科目PDF(法務省2007.5.21公表)より


(1)乙は、甲と丙の承諾を得る必要がある。

小説Aの二次的著作物としての性格をもつ脚本Bについては、
甲が原著作物の著作権者としてかかわる(著作権法11条、28
条)とともに、共同執筆者である丙も共有者として脚本Bに
権利を及ぼすことになる(65条1項2項)。


(2)甲は丁に対して朗読会の差止請求をすることができる。

小説Cは小説Aと比較してみるとストーリー展開、人物の性格
設定が同様であることから類似性があり、また小説Aに依拠
しているとして翻案権侵害が認められる余地がある(27条、
江差追分判例)。

著作権侵害のおそれを理由として侵害の停止又は予防を請求
することができる(112条1項)。


(3)甲は、戊に対して差止請求をすることができる。
損害が発生していれば損害賠償請求ができる。

(2)と異なり、登場人物の名称などしか小説Dで利用しなかっ
た場合、アイデアだけの流用で作品名も含め著作権侵害はない
とされる可能性がある。

この点、小説Dがあたかも甲の執筆作品であるかのような表示を
行うことで甲の活動と誤認混同を生じさせるおそれがある場合は、
不正競争防止法2条1項1号もしくは2号に基づいて差止請求をする
ことができることとなる(同3条)。

さらに、戊のウエブ掲載行為が甲のパブリシティ権を侵害する
ような態様である場合は、甲はパブリシティ権の財産的権利の
側面に基づいて(人格的側面ではなく)差止請求をする余地が
ある(おニャン子クラブ事件高裁判決)。

損害が発生している場合は、別途損害賠償請求が可能となる
(不正競争防止法4条、民法709条)。


とまあ、ちょっと考えすぎでしょうか・・・・

「ドラえもん最終回」事件のように絵柄自体をそのままに
作画したのとは違いますが、試験委員にはそんな事案も念頭にあっ
たのでしょうか。。


■参考(となるかどうか・・・)判例

「チーズはどこへ消えた?」対「バターはどこへ溶けた?」事件
東京地裁平成13年12月19日平成13(ヨ)22090不正競争民事仮処分事件