裁判所HP 知的財産裁判例集より
「水門開閉装置営業秘密」事件
★大阪地裁平成19.5.24平成17(ワ)2682損害賠償請求事件PDF
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 山田知司
裁判官 高松宏之
裁判官 村上誠子
■事案
原告会社の従業員であった被告らが退職後競業する別会社において
原告保有の営業秘密の開示・使用行為を行ったかどうかが争われた
事案
原告:機械器具製造販売会社
被告:水門開閉装置設計製造会社ら
■結論
請求棄却
■争点
条文 不正競争防止法2条1項7号、8号、民法709条
1 営業秘密性の有無
2 営業秘密の不正開示・使用の有無
3 一般不法行為の成否
■判決内容
争点
1 営業秘密性の有無
水門開閉機用減速機の全体図面(組立図)及び歯車の強度計算に関す
るデータ、得意先元帳等については秘密管理性が否定され、部品図及
び機械効率のデータについては秘密管理性のほか非公知性、有用性も
肯定されて「営業秘密性」が認められています。
(23頁以下)
技術上の情報の一部だけに営業秘密性が認められ、営業上の情報に至
っては原告側の情報管理が甘くすべて秘密管理性が否定されてしまっ
ています。
2 営業秘密の不正開示・使用の有無
営業秘密性が肯定された部品図と機械効率のデータについて、その
秘密情報が使用されていたかどうかが争点となっています。
部品図については、水門毎の特注生産で部品図も注文毎に作成される
ものであり、当該原告の部品図がそのまま被告の顧客に対して開示・
使用されたとは認められませんでした。
(34頁以下)
また、機械効率データの流用の事実も認定されるまでには至りません
でした。
(37頁以下)
以上から、被告らの競業行為について不正競争行為性は否定されまし
た。
3 一般不法行為の成否
『当該行為がことさら情報の保有者に損害を与えることのみを目的としてなされた一種の営業妨害行為としての性質のみを有し,市場における競争行為の一環として見ることができないといった特段の事情の存しない限り,民法709条の一般不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。』
(39頁)
という観点から、本件へのあてはめとしては特段の事情が認められな
いとして一般不法行為性を否定しています。
■コメント
原告会社は昭和初期より減速機メーカーとして歴史があり、被告らはそ
の会社の元従業員達でした。
退職当時営業部長代理だった被告は被告会社の代表取締役に就任し、ほ
かの退職従業員も取締役などに就いていました。
ノウハウの持ち出し・利用が今回争われたわけですが、従業員との秘密
保持契約もなく、また社内情報管理体制も未整備な状態だったことも含
め、結論的には被告らの営業活動は自由競争の範囲内での競業行為と判
断されました。
■追記(07.06.07)参考ブログ
企業法務戦士の雑感
■[企業法務][知財] 「秘密管理性」要件をめぐる判断の揺らぎ?
「水門開閉装置営業秘密」事件
★大阪地裁平成19.5.24平成17(ワ)2682損害賠償請求事件PDF
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 山田知司
裁判官 高松宏之
裁判官 村上誠子
■事案
原告会社の従業員であった被告らが退職後競業する別会社において
原告保有の営業秘密の開示・使用行為を行ったかどうかが争われた
事案
原告:機械器具製造販売会社
被告:水門開閉装置設計製造会社ら
■結論
請求棄却
■争点
条文 不正競争防止法2条1項7号、8号、民法709条
1 営業秘密性の有無
2 営業秘密の不正開示・使用の有無
3 一般不法行為の成否
■判決内容
争点
1 営業秘密性の有無
水門開閉機用減速機の全体図面(組立図)及び歯車の強度計算に関す
るデータ、得意先元帳等については秘密管理性が否定され、部品図及
び機械効率のデータについては秘密管理性のほか非公知性、有用性も
肯定されて「営業秘密性」が認められています。
(23頁以下)
技術上の情報の一部だけに営業秘密性が認められ、営業上の情報に至
っては原告側の情報管理が甘くすべて秘密管理性が否定されてしまっ
ています。
2 営業秘密の不正開示・使用の有無
営業秘密性が肯定された部品図と機械効率のデータについて、その
秘密情報が使用されていたかどうかが争点となっています。
部品図については、水門毎の特注生産で部品図も注文毎に作成される
ものであり、当該原告の部品図がそのまま被告の顧客に対して開示・
使用されたとは認められませんでした。
(34頁以下)
また、機械効率データの流用の事実も認定されるまでには至りません
でした。
(37頁以下)
以上から、被告らの競業行為について不正競争行為性は否定されまし
た。
3 一般不法行為の成否
『当該行為がことさら情報の保有者に損害を与えることのみを目的としてなされた一種の営業妨害行為としての性質のみを有し,市場における競争行為の一環として見ることができないといった特段の事情の存しない限り,民法709条の一般不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。』
(39頁)
という観点から、本件へのあてはめとしては特段の事情が認められな
いとして一般不法行為性を否定しています。
■コメント
原告会社は昭和初期より減速機メーカーとして歴史があり、被告らはそ
の会社の元従業員達でした。
退職当時営業部長代理だった被告は被告会社の代表取締役に就任し、ほ
かの退職従業員も取締役などに就いていました。
ノウハウの持ち出し・利用が今回争われたわけですが、従業員との秘密
保持契約もなく、また社内情報管理体制も未整備な状態だったことも含
め、結論的には被告らの営業活動は自由競争の範囲内での競業行為と判
断されました。
■追記(07.06.07)参考ブログ
企業法務戦士の雑感
■[企業法務][知財] 「秘密管理性」要件をめぐる判断の揺らぎ?