裁判所HP 知的財産裁判例集より

「印鑑基材特許権営業誹謗」事件

大阪地裁平成19.2.8平成17(ワ)3668等特許権に基づく差止請求権不存在確認等請求事件PDF

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 山田知司
裁判官     高松宏之
裁判官     村上誠子


■事案

装飾印鑑基材に関する特許権紛争にかかわり営業誹謗行為性
(不正競争防止法2条1項14号)も問題となった事案

原告:印鑑製造販売会社
被告:印章製造販売会社ら


■結論

請求一部認容


■争点

条文 不正競争防止法2条1項14号、民法709条、715条

1 特許権侵害性(略)
2 営業誹謗行為性
3 過失の有無


■判決内容

原告は被告と販売代理店契約を締結の上、被告製造商品の装飾印鑑
(絵柄入り和紙が本体に封入されたプラスチック印鑑)を販売して
いました。

その後、原告は自ら製造した装飾印鑑を販売しましたが、被告は
原告商品に関する取引先などに対して、原告商品が被告商品に関す
る特許権を侵害している旨の口頭又は文書による通知を行っていま
した。


1 特許権侵害性(略)

結論的には、原告商品・原告方法が被告の本件発明の技術的範囲に
属しないとして原告による特許権侵害性が否定されています。


2 営業誹謗行為性

当事者間には競争関係があること、特許権侵害性が否定されたこと
から、被告が取引先などへ告知・流布した事実の虚偽性が認められ、
営業上の信用が害されるおそれもあるとして営業誹謗行為性が肯定
されました。
結論として差止請求が認容されています。
(83頁以下)


3 過失の有無

営業誹謗行為について被告の過失の有無が問題となりましたが、

被告P1が上記の告知をした平成16年10月31日当時は,本件特許は特許出願中であって登録されてなかったので,被告P1は,本件特許権に基づく原告商品の販売についての差止請求権を有していなかったのに,原告商品の販売中止を申し入れた過失がある。さらに,原告商品のように市場で入手できる商品に関し,原告の取引先に対して,原告商品が本件特許権を侵害する旨告知する際には,原告商品を入手して分析し,検討した上で行うべきである。そして,原告商品を分析すると,内部に棒状体が存在し,シート体と棒状体の間隔が非常に狭く,本件明細書の実施例とは相当異なり,構成要件Cを充足するか否かに問題があることが分かるから,これについての十分に検討し,これを踏まえて「虚偽」とならないような方法を採る義務があった。ところが,証拠(乙A7)によれば,被告P1が原告商品を入手して分析したのは平成17年5月ころであって,平成16年10月31日までには原告商品を入手すらしておらず,ゆえに,原告商品の分析も行っていなかった過失があることが認められ,この過失により,被告P1は,上記虚偽の事実の告知に至ったものと認められる。
(85頁)

被告の過失も肯定されて損害賠償請求も認められています。

告知・流布行為当時(H16年10月〜11月)、いまだ出願中(登録日
H16年12月11日)の状況でした。


■コメント

装飾印鑑がどういうものであるかは、当事者の下記サイトを
ご覧いただくとだいたいのイメージが掴めると思います。

販売代理店契約上の売掛代金支払い等にかかわる争点もあって
代理店契約関係がどのようなものだったかというところも興味
深いところでした。


■関連サイト

原告サイト

被告サイト