裁判所HP 知的財産裁判例集より
「レンジフードフィルタ営業誹謗」事件（控訴審）
★知財高裁平成19.5.15平成17(ネ)10119特許権侵害差止等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第４部
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 石原直樹
裁判官 高野輝久
★原審
大阪地裁平成17.9.22平成17(ワ)1394特許権民事訴訟PDF
■事案
特許権侵害紛争をめぐり、原告側の情報告知流布行為が不正競争防止法
2条1項14号にあたるとして特許権侵害性とともに営業誹謗行為性が
争いとなった事案
原告：プラスチック製家庭用品製造販売会社
被告：プラスチック製日用雑貨品製造販売会社ら
■結論
原審原告本訴棄却・被告反訴一部棄却
■争点
条文 不正競争防止法2条1項14号
１ 特許権侵害性（略）
２ 営業誹謗行為性における過失の有無
■判決内容
２ 営業誹謗行為性における過失の有無
原告による取引先への特許権侵害性に関する情報の提供行為について、
本件特許権が無効審判で無効とさせるべきものであるとの判断から
営業誹謗行為性を肯定。
ただ、過失については原審では、
『 特許権者において、特許権の侵害品であると考える物品について、これを製造していない第三者に対して警告するときは、特許に無効原因がないか、それが真実侵害品であるか、その警告が製造者の営業上の信用を害する虚偽の事実とならないかについて、より一層の慎重さが要求されるものである。』
『ところが、原告は、上記(1)の行為をするに当たって、いずれも実用新案関係の公報ないし出願書類のマイクロフィルムである審判甲第１ないし第３、第５号証刊行物に照らして、本件特許権の有効性や技術的範囲該当性について検討したとも、その検討結果を踏まえて警告が被告らの営業上の信用を害する虚偽の事実とならないように留意したとも認めることはできない。かえって、原告は、上記(1)�，任蓮∨楫鐺探�権の権利範囲より広く、「金属製フィルタに対応した相似形状の平面方形状」の文言のない特許請求の範囲が記載された公開公報を送付し、同�△任蓮�被告らから無効審判請求がされ、審判甲第１ないし第３、第５号証刊行物に接した後であるのに、「原告が平成元年から販売しているキャップ式フィルター」全体に権利があり、「損害賠償は、特許出願日までさかのぼって請求することが特許法では可能」であり、「特許が無効になる事は、ほんの少数」として、本件特許権が無効となる可能性はほんの少しであるかのような記載をして、被告らの取引先に書面を送付している。以上の事実に、上記(1)の文面を総合すれば、原告は、真摯に本件特許権の有効性、技術的範囲該当性や被告らの営業上の信用を害する虚偽の事実とならないかという点に留意せず、上記(1)の行為をしたものと推認すべきである。したがって、原告には、上記(1)の行為について過失がある。』
（9頁以下）
として過失を肯定していました。
これに反し、控訴審では、
『特許権者において，特定の者の製造する物品が当該特許権の侵害品である旨を第三者に対し警告する場合には，その製造者に対し警告する場合と比べ，より一層の慎重さが要求されるとしても，上記１の本件特許に係る無効事由の内容に照らし，また，上記２のとおり，被告製品は，本件発明の技術的範囲に属すると認められることにかんがみると，本件においては，特許権者である原審原告が具体的な無効事由につき出願時又はそれ以降にその存在を疑って調査検討をすることを期待することができるような事情は認め難いから，原審原告による上記行為につき，故意過失があったとまでは直ちに認めることはできない。』
（38頁以下）
として、過失を否定しています。
なお、本判決の同日に特許権審決取消請求事件控訴審の判断が
出ています。
知財高裁平成19年05月15日平成17(行ケ)10678審決取消請求事件PDF
知財高裁平成19年05月15日平成18(行ケ)10278審決取消請求事件PDF
■コメント
原審、控訴審ともに本件特許権が無効審判で無効とさせるべきもの
であり、原告の取引先への通知行為が営業誹謗行為性を有すると
判断しています。
しかし、過失については、原審では肯定、控訴審ではこれを否定。
控訴審でも通知行為の差止は認められましたが、一転して損害賠償
は否定という結果となっています。
被告商品の本件発明の技術的範囲該当性などでの判断の相違が
過失の有無の認定での結論に影響を与えたようです。
■参考文献
原審について、
小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」（下）（2007）731頁以下
「レンジフードフィルタ営業誹謗」事件（控訴審）
★知財高裁平成19.5.15平成17(ネ)10119特許権侵害差止等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第４部
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 石原直樹
裁判官 高野輝久
★原審
大阪地裁平成17.9.22平成17(ワ)1394特許権民事訴訟PDF
■事案
特許権侵害紛争をめぐり、原告側の情報告知流布行為が不正競争防止法
2条1項14号にあたるとして特許権侵害性とともに営業誹謗行為性が
争いとなった事案
原告：プラスチック製家庭用品製造販売会社
被告：プラスチック製日用雑貨品製造販売会社ら
■結論
原審原告本訴棄却・被告反訴一部棄却
■争点
条文 不正競争防止法2条1項14号
１ 特許権侵害性（略）
２ 営業誹謗行為性における過失の有無
■判決内容
２ 営業誹謗行為性における過失の有無
原告による取引先への特許権侵害性に関する情報の提供行為について、
本件特許権が無効審判で無効とさせるべきものであるとの判断から
営業誹謗行為性を肯定。
ただ、過失については原審では、
『 特許権者において、特許権の侵害品であると考える物品について、これを製造していない第三者に対して警告するときは、特許に無効原因がないか、それが真実侵害品であるか、その警告が製造者の営業上の信用を害する虚偽の事実とならないかについて、より一層の慎重さが要求されるものである。』
『ところが、原告は、上記(1)の行為をするに当たって、いずれも実用新案関係の公報ないし出願書類のマイクロフィルムである審判甲第１ないし第３、第５号証刊行物に照らして、本件特許権の有効性や技術的範囲該当性について検討したとも、その検討結果を踏まえて警告が被告らの営業上の信用を害する虚偽の事実とならないように留意したとも認めることはできない。かえって、原告は、上記(1)�，任蓮∨楫鐺探�権の権利範囲より広く、「金属製フィルタに対応した相似形状の平面方形状」の文言のない特許請求の範囲が記載された公開公報を送付し、同�△任蓮�被告らから無効審判請求がされ、審判甲第１ないし第３、第５号証刊行物に接した後であるのに、「原告が平成元年から販売しているキャップ式フィルター」全体に権利があり、「損害賠償は、特許出願日までさかのぼって請求することが特許法では可能」であり、「特許が無効になる事は、ほんの少数」として、本件特許権が無効となる可能性はほんの少しであるかのような記載をして、被告らの取引先に書面を送付している。以上の事実に、上記(1)の文面を総合すれば、原告は、真摯に本件特許権の有効性、技術的範囲該当性や被告らの営業上の信用を害する虚偽の事実とならないかという点に留意せず、上記(1)の行為をしたものと推認すべきである。したがって、原告には、上記(1)の行為について過失がある。』
（9頁以下）
として過失を肯定していました。
これに反し、控訴審では、
『特許権者において，特定の者の製造する物品が当該特許権の侵害品である旨を第三者に対し警告する場合には，その製造者に対し警告する場合と比べ，より一層の慎重さが要求されるとしても，上記１の本件特許に係る無効事由の内容に照らし，また，上記２のとおり，被告製品は，本件発明の技術的範囲に属すると認められることにかんがみると，本件においては，特許権者である原審原告が具体的な無効事由につき出願時又はそれ以降にその存在を疑って調査検討をすることを期待することができるような事情は認め難いから，原審原告による上記行為につき，故意過失があったとまでは直ちに認めることはできない。』
（38頁以下）
として、過失を否定しています。
なお、本判決の同日に特許権審決取消請求事件控訴審の判断が
出ています。
知財高裁平成19年05月15日平成17(行ケ)10678審決取消請求事件PDF
知財高裁平成19年05月15日平成18(行ケ)10278審決取消請求事件PDF
■コメント
原審、控訴審ともに本件特許権が無効審判で無効とさせるべきもの
であり、原告の取引先への通知行為が営業誹謗行為性を有すると
判断しています。
しかし、過失については、原審では肯定、控訴審ではこれを否定。
控訴審でも通知行為の差止は認められましたが、一転して損害賠償
は否定という結果となっています。
被告商品の本件発明の技術的範囲該当性などでの判断の相違が
過失の有無の認定での結論に影響を与えたようです。
■参考文献
原審について、
小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」（下）（2007）731頁以下
