裁判所HP 知的財産裁判例集より

「ガス式釘打機ストリップ形態」事件

大阪地裁平成19.4.26平成17(ワ)2190特許権侵害差止等請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官  田中俊次
裁判官      西理香
裁判官      西森みゆき


■事案

建築現場で利用される釘打ち機に装填される連続打ち込みのための
釘の保持帯(ストリップ)の形態に関する不正競争行為性が争われた
事案

原告:ねじ・金具類の開発メーカーら
被告:産業用機械器具卸会社


■結論

請求一部認容


■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号

1 特許権侵害性(略)
2 不正競争行為性
  1 商品形態の商品等表示性
  2 形態の類似性
  3 誤認混同の恐れ
3 損害額


■判決内容

2 不正競争行為性

1 商品形態の商品等表示性

釘打ち機に装填される連続打込みのための釘の保持に使われる
ストリップの形態に特別顕著性があるのか、また商品の機能・効果
に必然的に由来する形態なのかどうかがまずは争点となりました。


商品形態自体に「商品等表示性」が認められるためには、

1特別顕著性
2周知性

が必要とされますが(55頁以下)、
結論的には、ストリップが釘打ち機一般に使用されるものではない
こと、また「各スリーブが筒状の第1部分と第2部分とを有しており,
第1部分と第2部分を区画する前後一対の凹所の奥部に窓が
えぐれたような形状で開いておりこの窓からピンが露出している」
部分に特別顕著性が認められ、さらに10年間競合商品ががなかった
ことなどから周知性(65頁以下)も肯定されています。


2 形態の類似性

特別顕著性が認められた原告商品の形態部分と被告商品の形態は
共通する特徴があり、両者の相違点は微々たるものに過ぎないと
されて類似性が肯定されています。
(66頁以下)


3 誤認混同の恐れ

誤認、出所混同が生じるおそれがあると判断されました(68頁)。


なお、別物件の連結ピンの形態については、類似性が否定されて
います。(69頁「争点8」以下)


3 損害額

不正競争行為性が認められた部分の損害額に関して
使用料相当損害金としては、特許発明実施許諾料を
参考に純販売額の8%を基準に算定されています。
(72頁以下)


なお、不正競争行為性が認められた部分については
差止の必要性も肯定されています。
(73頁以下)


■コメント

特許権の侵害性は否定されたものの、不正競争行為性は
肯定されたという事案です。

商品等表示性と技術的機能に由来する形態の議論、
特許権独占の下での周知性獲得と不正競争防止法の保護の
関係などについては、下記にあげた参考文献に触れられて
いますが、今回の事案は特許権侵害とならない部分での
不正競争防止法適用のケースとなっています。


■参考サイト

日本パワーファスニング株式会社(原告)
製品情報


■参考文献

芦田幸子「商品形態の商品等表示性についての平成9年以降の判例を中心とした検討」
     小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」(上)
     (2007)193頁以下

牧野利秋監修「座談会 不正競争防止法をめぐる実務的課題と理論
     (2005)13頁以下