裁判所HP 知的財産裁判例集より
「害虫防除装置営業誹謗」事件
★東京地裁平成19.3.20平成18(ワ)15425等特許権差止請求権不存在確認請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官 古河謙一
裁判官 吉川泉
■事案
電池式虫よけ装置に関する特許権紛争をめぐり、取引先に配布された
文書やプレスリリース提供が虚偽事実の告知・流布行為にあたるとして
その営業誹謗行為性が争点となった事案
原告(反訴被告):大日本除蟲菊(金鳥)
被告(反訴原告):アース製薬
■結論
請求棄却(本訴・反訴ともに棄却)
■争点
条文 不正競争防止法2条1項14号
1 本件特許の有効性(略)
2 営業誹謗性の肯否
■判決内容
2 営業誹謗性の肯否
裁判所は、本訴被告の特許権の有効性を否定した上で
本訴被告が取引先に配布した文書および新聞社に対して行った
情報提供行為の営業誹謗性については、その成立を否定しています。
(1)文書配布行為
被告は、取引先に対して原告の本訴提訴や自社の見解など経緯を示した
文書を取引先に配布しました。
この点について、裁判所は結論的には営業誹謗行為性を否定しています。
(48頁以下)
『当該告知,流布の内容が同条項の「虚偽の事実」に当たるか否かは,当該事実の告知,流布を受けた受け手に真実と反するような誤解を生じさせるか否かという観点から判断すべきである。具体的には受け手がどのような者であってどの程度の予備知識を有していたか,当該陳述が行われた具体的状況を踏まえつつ,当該受け手を基準として判断されるべきである。』
『原告と被告の取引先は,甲14文書の配布を受けたとしても,被告が原告各製品の製造販売行為が本件特許権を侵害するものと認識していると解釈することはあっても,原告各製品が客観的にみて本件特許権を侵害しているものと解するとまでいうことはできない。』
(48頁、49頁)
「営業上の信用を害する事実」かどうかの判断と「事実の虚偽性」の判断が
明確に区別された説示とはなっていません。
後掲パチスロ機パテントプール事件控訴審判決(東京高裁平成14.6.26)を
踏襲した判示といえます。
この点について、
小松一雄編著「不正競業訴訟の実務」(2005)381頁以下、
土肥一史「取引先に対する権利侵害警告と不正競争防止法」
『知的財産法の理論と現代的課題 中山信弘先生還暦記念論文集』
(2005)441頁以下、
田村善之「不正競争防止法概説第二版」(2003)440頁以下参照。
(2)情報提供行為
新聞記者に対する情報提供行為について、提訴の事実などを告げているだけ
でその内容は真実であって虚偽ではないとされています。
(49頁以下)
よって、(1)(2)いずれの行為についても不正競争防止法2条1項14号に
該当しないとされました。
■コメント
電池式蚊取り機を製造販売するキンチョーとアースの紛争として、
新聞記事にもなっていましたが、
特許権の肯否とあわせて不正競争防止法上の論点も争われました。
アースの特許権は無効にされるべきものとの判断となりましたので
この点についてはさらに争われそうです。
■参考判例
・パチスロ機の誹謗中傷事件(2)
東京高裁平成14年6月26日平成13年(ネ)第4613号不正競争行為差止等請求控訴事件/同年(ネ)第5552号附帯控訴事件
日本ユニ著作権センター/判例全文・2002-06-26
「害虫防除装置営業誹謗」事件
★東京地裁平成19.3.20平成18(ワ)15425等特許権差止請求権不存在確認請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官 古河謙一
裁判官 吉川泉
■事案
電池式虫よけ装置に関する特許権紛争をめぐり、取引先に配布された
文書やプレスリリース提供が虚偽事実の告知・流布行為にあたるとして
その営業誹謗行為性が争点となった事案
原告(反訴被告):大日本除蟲菊(金鳥)
被告(反訴原告):アース製薬
■結論
請求棄却(本訴・反訴ともに棄却)
■争点
条文 不正競争防止法2条1項14号
1 本件特許の有効性(略)
2 営業誹謗性の肯否
■判決内容
2 営業誹謗性の肯否
裁判所は、本訴被告の特許権の有効性を否定した上で
本訴被告が取引先に配布した文書および新聞社に対して行った
情報提供行為の営業誹謗性については、その成立を否定しています。
(1)文書配布行為
被告は、取引先に対して原告の本訴提訴や自社の見解など経緯を示した
文書を取引先に配布しました。
この点について、裁判所は結論的には営業誹謗行為性を否定しています。
(48頁以下)
『当該告知,流布の内容が同条項の「虚偽の事実」に当たるか否かは,当該事実の告知,流布を受けた受け手に真実と反するような誤解を生じさせるか否かという観点から判断すべきである。具体的には受け手がどのような者であってどの程度の予備知識を有していたか,当該陳述が行われた具体的状況を踏まえつつ,当該受け手を基準として判断されるべきである。』
『原告と被告の取引先は,甲14文書の配布を受けたとしても,被告が原告各製品の製造販売行為が本件特許権を侵害するものと認識していると解釈することはあっても,原告各製品が客観的にみて本件特許権を侵害しているものと解するとまでいうことはできない。』
(48頁、49頁)
「営業上の信用を害する事実」かどうかの判断と「事実の虚偽性」の判断が
明確に区別された説示とはなっていません。
後掲パチスロ機パテントプール事件控訴審判決(東京高裁平成14.6.26)を
踏襲した判示といえます。
この点について、
小松一雄編著「不正競業訴訟の実務」(2005)381頁以下、
土肥一史「取引先に対する権利侵害警告と不正競争防止法」
『知的財産法の理論と現代的課題 中山信弘先生還暦記念論文集』
(2005)441頁以下、
田村善之「不正競争防止法概説第二版」(2003)440頁以下参照。
(2)情報提供行為
新聞記者に対する情報提供行為について、提訴の事実などを告げているだけ
でその内容は真実であって虚偽ではないとされています。
(49頁以下)
よって、(1)(2)いずれの行為についても不正競争防止法2条1項14号に
該当しないとされました。
■コメント
電池式蚊取り機を製造販売するキンチョーとアースの紛争として、
新聞記事にもなっていましたが、
特許権の肯否とあわせて不正競争防止法上の論点も争われました。
アースの特許権は無効にされるべきものとの判断となりましたので
この点についてはさらに争われそうです。
■参考判例
・パチスロ機の誹謗中傷事件(2)
東京高裁平成14年6月26日平成13年(ネ)第4613号不正競争行為差止等請求控訴事件/同年(ネ)第5552号附帯控訴事件
日本ユニ著作権センター/判例全文・2002-06-26