裁判所HP 知的財産裁判例集より
「3DCADソフト著作権侵害」事件
★東京地裁平成19.3.16平成17(ワ)23419損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 頼晋一
■事案
フランスの3Dソフトウエアメーカーの製品を改変して
使用許諾範囲外の利用行為を行った事案
原告:ダッソーシステムズ(仏ソフトウエア開発会社)
被告:デザインモックアップ製作会社
■結論
請求認容
■争点
条文 著作権法第21条、27条、113条3項2号、114条3項
1 翻案権侵害性
2 複製権侵害性
3 損害額
■判決内容
1 翻案権侵害性
本件デジタルモックアップソフトウエアは、多くのモジュールを収載したもので、
これらモジュールの使用については、モジュールごとに個別にライセンスを
受ける必要がありました。
被告は、使用許諾の有無を管理するプログラム部分に手を加えて、
ライセンスを受けていない部分のモジュールについても使用可能な
状態としていました。
こうした改変行為を裁判所は本件ソフト全体に対する翻案権侵害行為と
認定しました。(20頁以下)
2 複製権侵害性
『実質的に観察すれば,使用が制限された状態でインストールされていたモジュールをアンインストールし,使用が制限されない状態のモジュールを新たにコンピュータのハードディスクにインストールしたことと同視することができるから,本件改変行為により,本件ソフトウェア中の使用許諾を受けていないモジュールにつき,ハードディスクへの複製行為があったと考えることができる。』
(23頁)
翻案権侵害のほかに、法律構成として複製権侵害も成立しうると
判断しています。
3 損害額
114条3項を根拠として、16億円近くの損害額を認定しました。
(24頁以下)
被告は11台のPCに本件ソフトをインストールしていましたが、
1台のパソコンについて1億4千万円余の侵害状況を
作出してしまったことになります。
なお、原告弁護士費用は、着手金+成功報酬が1億円。
損害額の5%と算定されて、7500万円が弁護士費用として
認められました。
(29頁)
■コメント
16億円近い損害額が認められました。
ソフトの不正使用事件としてはとても高額なものとなっています。
10数本のプログラムについて、
基本ライセンス料+年間ライセンス料(基本料の14%)を基礎として
5000万円以上のライセンス料を被告は正規に支払っていましたが、
高額なライセンス料の支払いに魔がさしたのか、従業員の単独行為なのか、
改変行為を行ってとんでもない事態を引き起こしてしまいました。
不正行為についての内部通報でもあったのでしょうか、
平成17年6月に被告の作業所に対して証拠保全が行われており、
11台のPCでの違反事実が明白となっています。
なお、ライセンス状況の権利管理情報に対する改変行為が
著作権法113条3項2項の「侵害みなし行為」に該当するかどうかも
争点となりましたが、
翻案権あるいは複製権侵害自体が認められたこともあって、
裁判所はこの点の判断を示していません。
■参考サイト
・違法コピーの通報について
ビジネス ソフトウェア アライアンス
BSA Home Page
・原告会社サイト
Dassault Systemes
*余談ですが、ダッソーといえば、ダッソーミラージュ。
三角翼のフランス製戦闘機。
原告は、航空機設計ソフトの歴史があるようです。
・2DCADソフトがかかわった過去の事案(JR-CAD事件)
「電車線−基準線作成プログラム」事件
東京地裁平成15年1月31日平成13年(ワ)第17306号著作権侵害差止等請求事件
■追記(08.02.10)
大瀬戸豪志、岩崎浩平「使用許諾されたソフトウェアを管理するソフトウェアの改変行為と著作権侵害」『知財管理』57巻12号1937頁以下(2007.12)
「3DCADソフト著作権侵害」事件
★東京地裁平成19.3.16平成17(ワ)23419損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 頼晋一
■事案
フランスの3Dソフトウエアメーカーの製品を改変して
使用許諾範囲外の利用行為を行った事案
原告:ダッソーシステムズ(仏ソフトウエア開発会社)
被告:デザインモックアップ製作会社
■結論
請求認容
■争点
条文 著作権法第21条、27条、113条3項2号、114条3項
1 翻案権侵害性
2 複製権侵害性
3 損害額
■判決内容
1 翻案権侵害性
本件デジタルモックアップソフトウエアは、多くのモジュールを収載したもので、
これらモジュールの使用については、モジュールごとに個別にライセンスを
受ける必要がありました。
被告は、使用許諾の有無を管理するプログラム部分に手を加えて、
ライセンスを受けていない部分のモジュールについても使用可能な
状態としていました。
こうした改変行為を裁判所は本件ソフト全体に対する翻案権侵害行為と
認定しました。(20頁以下)
2 複製権侵害性
『実質的に観察すれば,使用が制限された状態でインストールされていたモジュールをアンインストールし,使用が制限されない状態のモジュールを新たにコンピュータのハードディスクにインストールしたことと同視することができるから,本件改変行為により,本件ソフトウェア中の使用許諾を受けていないモジュールにつき,ハードディスクへの複製行為があったと考えることができる。』
(23頁)
翻案権侵害のほかに、法律構成として複製権侵害も成立しうると
判断しています。
3 損害額
114条3項を根拠として、16億円近くの損害額を認定しました。
(24頁以下)
被告は11台のPCに本件ソフトをインストールしていましたが、
1台のパソコンについて1億4千万円余の侵害状況を
作出してしまったことになります。
なお、原告弁護士費用は、着手金+成功報酬が1億円。
損害額の5%と算定されて、7500万円が弁護士費用として
認められました。
(29頁)
■コメント
16億円近い損害額が認められました。
ソフトの不正使用事件としてはとても高額なものとなっています。
10数本のプログラムについて、
基本ライセンス料+年間ライセンス料(基本料の14%)を基礎として
5000万円以上のライセンス料を被告は正規に支払っていましたが、
高額なライセンス料の支払いに魔がさしたのか、従業員の単独行為なのか、
改変行為を行ってとんでもない事態を引き起こしてしまいました。
不正行為についての内部通報でもあったのでしょうか、
平成17年6月に被告の作業所に対して証拠保全が行われており、
11台のPCでの違反事実が明白となっています。
なお、ライセンス状況の権利管理情報に対する改変行為が
著作権法113条3項2項の「侵害みなし行為」に該当するかどうかも
争点となりましたが、
翻案権あるいは複製権侵害自体が認められたこともあって、
裁判所はこの点の判断を示していません。
■参考サイト
・違法コピーの通報について
ビジネス ソフトウェア アライアンス
BSA Home Page
・原告会社サイト
Dassault Systemes
*余談ですが、ダッソーといえば、ダッソーミラージュ。
三角翼のフランス製戦闘機。
原告は、航空機設計ソフトの歴史があるようです。
・2DCADソフトがかかわった過去の事案(JR-CAD事件)
「電車線−基準線作成プログラム」事件
東京地裁平成15年1月31日平成13年(ワ)第17306号著作権侵害差止等請求事件
■追記(08.02.10)
大瀬戸豪志、岩崎浩平「使用許諾されたソフトウェアを管理するソフトウェアの改変行為と著作権侵害」『知財管理』57巻12号1937頁以下(2007.12)