裁判所HP 知的財産裁判例集より

「電磁波吸収材ノウハウ」事件

東京地裁平成19.3.16平成17(ワ)18066損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官    平田直人
裁判官    中島基至


■事案

電磁波吸収材製造技術に関して、ノウハウの無断使用があったとして、
不法行為性、営業秘密の不正使用行為性が争われた事案


原告:被告会社元技術本部長/顧問
被告:塗料製造販売会社


■結論

請求棄却


■争点

条文 不正競争防止法2条1項4号、2条6項

1 ノウハウの侵害性



■判決内容

1 ノウハウの侵害性

原告と第三者との間のノウハウに関する覚書や
技術開発経緯書面、売上帳簿、特許権実施許諾契約書、NDAなどが
書証として提出されていますが、ノウハウの特定に結びつかず、
また侵害行為の具体的内容も明らかとはなりませんでした。

結局、

原告が,本件ノウハウが不正競争防止法2条6項所定の営業秘密に該当することを主張立証せず,また,被告の不正競争行為を具体的に主張立証していない以上,被告が不正競争行為による損害賠償責任を負うということはできない。
 また,原告が本件ノウハウの具体的な内容を明らかにした上で,被告による使用行為を具体的に主張立証しない以上,被告が本件ノウハウを使用したことを理由とする不法行為による損害賠償責任を肯定することはできない。

(10頁以下)

という結論となりました。



■コメント

原告側には代理人弁護士が就いていますが、ノウハウや
不正競争行為の内容について原告側立証が充分尽くされておらず、
この点の判断についてはあっさり終わっています。


今回の事案の経緯については、11頁以下に詳しいところです。

原告は被告会社の技術顧問としてライセンシーである特許実施品製造会社と
実施品販売会社の交渉窓口を担当していましたが、
原告は実施品販売会社の役員にもなっていて、また融資の際には
実施品販売会社のために個人的に連帯保証人にもなっていましたが、
この販売会社代表者との関係がうまくいかなくなったようで
紛争が生じてしまっています。

判決文を読む限り、被告の預かり知らないところでの紛議で
被告はとばっちりを受けたような印象です。