裁判所HP 下級裁判所判例集より
「押し花教室営業差止」事件
★さいたま地裁越谷支部平成18.12.13平成17(ワ)677営業差止等請求事件PDF
さいたま地方裁判所越谷支部
裁判官 橋本英史
■事案
原告カルチャー教室の卒業生である被告が原告との間で合意した
競業禁止規約の公序良俗違反性(民法90条)が争われた事案
原告:押し花制作カルチャー教室主宰者
被告:任意教室主宰者
■結論
請求棄却
■争点
条文 民法90条
1 競業禁止規約の公序良俗違反性
■判決内容
1 競業禁止規約の公序良俗違反性
裁判所は、
一般的な技能にかかわるノウハウなどの取得については教本書籍から
取得するのと基本的には異ならないとし、卒業生に対する競業禁止合意に
ついては、
『その合意が,事業者の保有する知的財産権,営業秘密,ノウハウ,営業・役務表示,ブランド価値,企業イメージ,事業者が創設しブランド名を付した段位・資格の社会的な通用性・信頼性等の正当な利益を保護することを目的とするものであり,禁止・制限される,営業の範囲の広狭,禁止・制限条件の有無・内容,期間及び場所的範囲(区域)の定めの有無・内容,代償的措置の有無・内容等の諸事情を考慮して,その目的の達成のために必要かつ相当なものとして,合理性を有するものとは認められず,個人の営業の自由,職業選択の自由を不当に害するものである,と判断される場合には,当該競業避止特約は,公序良俗に違反するものとして,民法90条により無効になるものと解される。』
(13頁以下)
競業禁止・制限の目的の正当性と手段の合理性がなければならないと
説示しました。
そのうえで、
『これを本件についてみると,本件合意は,原告が本件訴訟で被告に対して差止請求をするとおり,原告の営業内容である,「押し花又は押し花を使用した絵画の作成方法について営利目的で第三者に指導すること」を禁止するものであり,「押し花又は押し花を使用した絵画の作成方法」という一般的な技能,知識分野に係る営業を包括的に禁止し,かつ,その禁止される期間及び場所的範囲の限定が全くないものであるから(この事実は,当事者間に争いがない。),このような包括的,無制限の競業避止義務について,合理性があるものと判断すべき特段の事情が認められない限り,本件合意は,公序良俗に反し無効であるといわざるを得ない。』
(15頁以下)
目的の正当性はともかく、手段の合理性に欠けると
ものである。
そして、上記「特段の事情」も認められないとして、
結論として本件合意は公序良俗に違反して無効と
されました。
■コメント
押し花教室の卒業生に対するコントロールとして、
上級コース卒業生には、任意教室開設の際には本部との
一定の契約関係を締結する必要(年会費の支払い)が
求められていました。
被告は、卒業後一時期こうした関係のなかで任意教室を主宰
していましたが、その後退会して独自に教室経営を行いました。
原告教室が保有する固有のノウハウについては、結局のところ
原告は具体的な立証ができず、著作権に関連する主張も特に
していません(19頁)。
もともと、主婦を対象にした一般技芸のレベルの押し花制作
について、こうした競業禁止規定で広く網をかけておくのは
困難だったと思われます。
また、原告教室の名称やブランドに頼ることなく被告が押し花教室を
主宰する限り、不正競争防止法にも抵触しないでしょうし、
やはり原告主張にはムリがあったようです。
「押し花教室営業差止」事件
★さいたま地裁越谷支部平成18.12.13平成17(ワ)677営業差止等請求事件PDF
さいたま地方裁判所越谷支部
裁判官 橋本英史
■事案
原告カルチャー教室の卒業生である被告が原告との間で合意した
競業禁止規約の公序良俗違反性(民法90条)が争われた事案
原告:押し花制作カルチャー教室主宰者
被告:任意教室主宰者
■結論
請求棄却
■争点
条文 民法90条
1 競業禁止規約の公序良俗違反性
■判決内容
1 競業禁止規約の公序良俗違反性
裁判所は、
一般的な技能にかかわるノウハウなどの取得については教本書籍から
取得するのと基本的には異ならないとし、卒業生に対する競業禁止合意に
ついては、
『その合意が,事業者の保有する知的財産権,営業秘密,ノウハウ,営業・役務表示,ブランド価値,企業イメージ,事業者が創設しブランド名を付した段位・資格の社会的な通用性・信頼性等の正当な利益を保護することを目的とするものであり,禁止・制限される,営業の範囲の広狭,禁止・制限条件の有無・内容,期間及び場所的範囲(区域)の定めの有無・内容,代償的措置の有無・内容等の諸事情を考慮して,その目的の達成のために必要かつ相当なものとして,合理性を有するものとは認められず,個人の営業の自由,職業選択の自由を不当に害するものである,と判断される場合には,当該競業避止特約は,公序良俗に違反するものとして,民法90条により無効になるものと解される。』
(13頁以下)
競業禁止・制限の目的の正当性と手段の合理性がなければならないと
説示しました。
そのうえで、
『これを本件についてみると,本件合意は,原告が本件訴訟で被告に対して差止請求をするとおり,原告の営業内容である,「押し花又は押し花を使用した絵画の作成方法について営利目的で第三者に指導すること」を禁止するものであり,「押し花又は押し花を使用した絵画の作成方法」という一般的な技能,知識分野に係る営業を包括的に禁止し,かつ,その禁止される期間及び場所的範囲の限定が全くないものであるから(この事実は,当事者間に争いがない。),このような包括的,無制限の競業避止義務について,合理性があるものと判断すべき特段の事情が認められない限り,本件合意は,公序良俗に反し無効であるといわざるを得ない。』
(15頁以下)
目的の正当性はともかく、手段の合理性に欠けると
ものである。
そして、上記「特段の事情」も認められないとして、
結論として本件合意は公序良俗に違反して無効と
されました。
■コメント
押し花教室の卒業生に対するコントロールとして、
上級コース卒業生には、任意教室開設の際には本部との
一定の契約関係を締結する必要(年会費の支払い)が
求められていました。
被告は、卒業後一時期こうした関係のなかで任意教室を主宰
していましたが、その後退会して独自に教室経営を行いました。
原告教室が保有する固有のノウハウについては、結局のところ
原告は具体的な立証ができず、著作権に関連する主張も特に
していません(19頁)。
もともと、主婦を対象にした一般技芸のレベルの押し花制作
について、こうした競業禁止規定で広く網をかけておくのは
困難だったと思われます。
また、原告教室の名称やブランドに頼ることなく被告が押し花教室を
主宰する限り、不正競争防止法にも抵触しないでしょうし、
やはり原告主張にはムリがあったようです。