裁判所HP 知的財産裁判例集より

「クレハ医薬品包装」事件(控訴審)

知財高裁平成19.1.30平成18(ネ)10061特許権侵害差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官    森義之
裁判官    田中孝一


★原審
東京地裁平成18.5.25平成17(ワ)785特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟


■事案

後発医薬品(ジェネリック医薬品)の特許権侵害性とともに
製品包装の外観類似性から不正競争行為性を争った事案


原告(控訴人) :化学工業薬品製造販売会社
被告(被控訴人):ジェネリック医薬品製造販売会社


■結論

控訴棄却(原告側敗訴)


■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号

1 特許権侵害性(略)
2 不正競争行為性(2条1項1号)


■判決内容

2 不正競争行為性(2条1項1号)

原告製品と被告製品の包装外観の類似性からその不正競争行為性
が争われました。
ひとつはチューブ型分包包装、もうひとつはPTPシート型
カプセル包装。
(これらの画像については、原審の添付資料をご覧下さい。)

1 周知性

本件では、商品等表示性について、まず周知性の要件から
検討が加えられています(原審60頁以下参照)。

控訴審ではこの点について、

被告各製品の形態・包装が,原告各製品の形態・包装と極めて類似するものであったとしても,不正競争防止法2条1項にいう不正競争行為に該当するためには,類似性の要件のほかに,原告各製品の形態・包装が同項1号にいう周知商品等表示( 「他人の商品等表示…として需要者の間に広く認識されているもの」)に該当するとの要件を満たす必要があり,これらの両要件の判断は,別個の観点から行われるものである。

そして,周知商品等表示該当性の有無は,被控訴人らの主観的意図から判断されるのではなく,原告各製品の外観が独自の特徴を有し,かつ,かかる外観が長期間継続的かつ独占的に使用されるか又は短期間でも強力な宣伝等が伴って使用されることにより,その外観が控訴人の製品であることを示す出所表示であると需要者の間で広く認識されるようになったといえるか,という見地から判断されるものである。

さらに,上記のように類似性の要件と周知商品等表示該当性の要件とについての判断が別個の観点から行われるものであることにも照らせば,原告各製品の形態・包装と極めて類似する被告各製品を製造・販売したとしても,それだけで当然に原告各製品の外観が「商品等表示」に該当することを認めていることになるとはいえないと解するのが相当である。

そして,原告各製品が上記「商品等表示」に該当するものではないことは,原判決説示のとおりである。
(44頁)

*原審説示では、
 『原告各製品は,いわゆる先行医薬品として,一定期間独占的に販売されたものの,原告製品1の包装の宣伝広告は前記認定の程度であり,医薬品の宣伝広告としては,短期間に強力な宣伝広告が行われたものとはいいがたく,また,その宣伝広告において,原告製品1の包装(外観)が示されていないものが多い。
 (原審65頁)
 なお、宣伝広告費は5年間で5000万円程度でした。


結論として、不正競争行為性を認めませんでした。

2 特別顕著性

原告製品の包装は、いずれも単純な色彩と形状の組合せの
域を出るものではないとして、特別顕著性についても
否定しています。
(45頁以下)


■コメント

医薬品のカプセルやPTPシートなどの包装外観の類似性が
争われた事案としては昨年の「エーザイ事件
(東京地裁平成18年1月13日平成17(ワ)5657など12件)があり、
こちらは原審、控訴審とも確認できた範囲では
(知的財産高等裁平成18年09月27日平成18(ネ)10011など)
原告エーザイ側のすべて敗訴という結果で終わっています。

今回の事案も、不正競争防止法の観点からは
後発医薬品の流通促進を促す立場にたつもので
国の医療費抑制政策にも合致する司法判断と
言えそうです。


■過去のブログ(2006年01月17日)

「医薬品カプセル色彩類似」事件〜不正競争行為差止等請求事件判決(知財判決速報)〜