裁判所HP 知的財産裁判例集より
「まねきTV」事件(抗告審)
知財高裁平成18.12.22著作権民事仮処分決定
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 三村量一
裁判官 古閑裕二
裁判官 嶋末和秀
対フジテレビ
平成18(ラ)10009PDF
対テレビ東京
平成18(ラ)10010PDF
対TBS
平成18(ラ)10011PDF
対NHK
平成18(ラ)10012PDF
対日本テレビ
平成18(ラ)10013PDF
対テレビ朝日
平成18(ラ)10014PDF
・過去の記事
番組ネット転送ビジネス「まねきTV」著作隣接権仮処分命令申立事件(2006年08月06日)
・まねきTVサービス
まねきTV
・SONY ロケーションフリー
ロケーションフリー
債務者側弁護士として、小倉先生と水口先生のブログ記事があります。
・benli
まねきTV抗告審決定
・夜明け前の独り言 水口洋介
まねきTV 知財高裁決定
■事案
ソニーの既製機器「ロケーションフリー」を利用した
インターネット回線でのテレビ番組視聴サービスを提供している業者が、
番組をネットに載せるようにする行為についての放送事業者の
権利である著作隣接権(送信可能化権)を侵害しているかどうかが
争われた事案。
抗告人(債権者) :TV局各社(NHK+在京キー局)
被抗告人(債務者):海外在住者向けテレビ番組ネット転送サービス運営会社
■結論
抗告棄却(放送事業者側敗訴)
■争点
条文 著作権法第99条の2
1 債務者(被抗告人)による送信可能化行為の有無
■判決内容
1 債務者(被抗告人)による送信可能化行為の有無
1 サービスシステムの機能
(1)自動公衆送信装置に該当するか
(2)送信可能化行為の主体はだれか
(1)自動公衆送信装置に該当するか
『ベースステーションによって行われている送信は,個別の利用者の求めに応じて,当該利用者の所有するベースステーションから利用者があらかじめ指定したアドレス(通常は利用者自身)宛てにされているものであり,送信の実質がこのようなものである以上,本件サービスに関係する機器を一体としてみたとしても,「自動公衆送信装置」該当性の判断を左右するものではない。』
『「ポートフォワーディング」(IPマスカレード)は,一個のグローバルIPアドレスだけで複数の端末がインターネットにアクセスすることができるようにする技術であるが,各端末が「1対1」の送信を行う機能しか有しないときは,この技術を用いたとしても,「1対1」の送信しかできないのであって,「1対多」の送信が可能になるものではない。』
(対フジPDF9頁)
こうした点から、業者のシステムは自動公衆送信装置に該当しないと判断。
(2)送信可能化行為の主体はだれか
『ベースステーションは「1対1」の送信を行う機能のみを有するものであって,「自動公衆送信装置」に該当するものではないから,被抗告人がベースステーションにアンテナを接続したり,ベースステーションをインターネット回線に接続したりしても,その行為が送信可能化行為に該当しないことは明らかである。』
『アンテナが単独で他の機器に送信する機能を有するものではなく,受信機に接続して受信設備の一環をなすものであることは,技術常識であるから,被抗告人がベースステーションにアンテナを接続しても,ベースステーションへの送信を行ったことにはならない。』
(同10頁)
この点でも、業者の行為主体性が否定されました。
2 サービスの利用形態
『本件サービスにおいては,利用者各自につきその所有に係る1台のベースステーションが存在するところ,各ベースステーションからの送信の宛先は,これを所有する利用者が別途設置している専用モニター又はパソコンに設定されており,被抗告人がこの設定を任意に変更することはない。』
(同11頁)
3 送信の契機
『各ベースステーションからの送信は,これを所有する利用者の発する指令により開始され,当該利用者の選択する放送について行われるものに限られており,被抗告人がこれに関与することはない。』
(同11頁)
以上の各事情から、一連のシステムは「自動公衆送信装置」に
あたらず、システムから行われる送信も「公衆送信」にあたらない。
サービス業者はシステムの寄託を受けて電源とアンテナの接続環境を
提供しているだけであり、侵害性はないと判断しました。
(同11頁)
■コメント
知財高裁三村コートは、東京地裁高部コートの判断を維持しています。
6つの決定とも説示部分は同一です。
テレビ番組ネット転送サービスのビジネスモデルとして
ようやく著作権法上の問題を一応はクリアしたものが出たことと
なりました。
放送事業者はサービス業者がシステムのベースに使用している
ソニー製品自体を叩けなかった以上、
いつかはこうした業者による便利なサービスの提供を
容認せざるを得ない事態となっていたでしょう。
「放送事業者は裁判をやるなら侵害品を提供するソニーを
訴えるのがスジ」
と揶揄されても仕方がないのですが、
広告代理店のビルのなかでは、「ロケフリ」無線LAN電波が
飛び交っているといいます。とてもじゃないですが
放送事業者は他のところを相手にはできないでしょう。
「まねきTV」事件(抗告審)
知財高裁平成18.12.22著作権民事仮処分決定
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 三村量一
裁判官 古閑裕二
裁判官 嶋末和秀
対フジテレビ
平成18(ラ)10009PDF
対テレビ東京
平成18(ラ)10010PDF
対TBS
平成18(ラ)10011PDF
対NHK
平成18(ラ)10012PDF
対日本テレビ
平成18(ラ)10013PDF
対テレビ朝日
平成18(ラ)10014PDF
・過去の記事
番組ネット転送ビジネス「まねきTV」著作隣接権仮処分命令申立事件(2006年08月06日)
・まねきTVサービス
まねきTV
・SONY ロケーションフリー
ロケーションフリー
債務者側弁護士として、小倉先生と水口先生のブログ記事があります。
・benli
まねきTV抗告審決定
・夜明け前の独り言 水口洋介
まねきTV 知財高裁決定
■事案
ソニーの既製機器「ロケーションフリー」を利用した
インターネット回線でのテレビ番組視聴サービスを提供している業者が、
番組をネットに載せるようにする行為についての放送事業者の
権利である著作隣接権(送信可能化権)を侵害しているかどうかが
争われた事案。
抗告人(債権者) :TV局各社(NHK+在京キー局)
被抗告人(債務者):海外在住者向けテレビ番組ネット転送サービス運営会社
■結論
抗告棄却(放送事業者側敗訴)
■争点
条文 著作権法第99条の2
1 債務者(被抗告人)による送信可能化行為の有無
■判決内容
1 債務者(被抗告人)による送信可能化行為の有無
1 サービスシステムの機能
(1)自動公衆送信装置に該当するか
(2)送信可能化行為の主体はだれか
(1)自動公衆送信装置に該当するか
『ベースステーションによって行われている送信は,個別の利用者の求めに応じて,当該利用者の所有するベースステーションから利用者があらかじめ指定したアドレス(通常は利用者自身)宛てにされているものであり,送信の実質がこのようなものである以上,本件サービスに関係する機器を一体としてみたとしても,「自動公衆送信装置」該当性の判断を左右するものではない。』
『「ポートフォワーディング」(IPマスカレード)は,一個のグローバルIPアドレスだけで複数の端末がインターネットにアクセスすることができるようにする技術であるが,各端末が「1対1」の送信を行う機能しか有しないときは,この技術を用いたとしても,「1対1」の送信しかできないのであって,「1対多」の送信が可能になるものではない。』
(対フジPDF9頁)
こうした点から、業者のシステムは自動公衆送信装置に該当しないと判断。
(2)送信可能化行為の主体はだれか
『ベースステーションは「1対1」の送信を行う機能のみを有するものであって,「自動公衆送信装置」に該当するものではないから,被抗告人がベースステーションにアンテナを接続したり,ベースステーションをインターネット回線に接続したりしても,その行為が送信可能化行為に該当しないことは明らかである。』
『アンテナが単独で他の機器に送信する機能を有するものではなく,受信機に接続して受信設備の一環をなすものであることは,技術常識であるから,被抗告人がベースステーションにアンテナを接続しても,ベースステーションへの送信を行ったことにはならない。』
(同10頁)
この点でも、業者の行為主体性が否定されました。
2 サービスの利用形態
『本件サービスにおいては,利用者各自につきその所有に係る1台のベースステーションが存在するところ,各ベースステーションからの送信の宛先は,これを所有する利用者が別途設置している専用モニター又はパソコンに設定されており,被抗告人がこの設定を任意に変更することはない。』
(同11頁)
3 送信の契機
『各ベースステーションからの送信は,これを所有する利用者の発する指令により開始され,当該利用者の選択する放送について行われるものに限られており,被抗告人がこれに関与することはない。』
(同11頁)
以上の各事情から、一連のシステムは「自動公衆送信装置」に
あたらず、システムから行われる送信も「公衆送信」にあたらない。
サービス業者はシステムの寄託を受けて電源とアンテナの接続環境を
提供しているだけであり、侵害性はないと判断しました。
(同11頁)
■コメント
知財高裁三村コートは、東京地裁高部コートの判断を維持しています。
6つの決定とも説示部分は同一です。
テレビ番組ネット転送サービスのビジネスモデルとして
ようやく著作権法上の問題を一応はクリアしたものが出たことと
なりました。
放送事業者はサービス業者がシステムのベースに使用している
ソニー製品自体を叩けなかった以上、
いつかはこうした業者による便利なサービスの提供を
容認せざるを得ない事態となっていたでしょう。
「放送事業者は裁判をやるなら侵害品を提供するソニーを
訴えるのがスジ」
と揶揄されても仕方がないのですが、
広告代理店のビルのなかでは、「ロケフリ」無線LAN電波が
飛び交っているといいます。とてもじゃないですが
放送事業者は他のところを相手にはできないでしょう。