裁判所HP 知的財産裁判例集より
「スポーツマーケティング会社商号使用差止」事件
★東京地裁平成18.11.29平成18(ワ)9080商号使用禁止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 杉浦正樹
裁判官 頼晋一
■事案
競業関係にあり、しかもいずれも渋谷区内にある会社が商号の類似性から
不正競争行為性を巡って争った事案
原告:スポーツマーケティング情報提供サービス会社
被告:スポーツマーケティング・コンサル会社
■結論
請求棄却
■争点
条文 会社法8条
1 不正の目的の有無
■判決内容
1 不正の目的の有無
スポーツに関するマネジメント業務などで両社とも競争関係にありました。
被告は原告を知っていましたし、本店所在地もいずれも渋谷区内で
距離にして1.5キロ離れている程度。
そして、
原告「スポーツ・マーケティング・ジャパン株式会社」、
被告「ジャパン・スポーツ・マーケティング株式会社」という
商号の類似性。
それでも結論的には、「不正の目的」はないとして
商号使用差止、抹消登記請求を認めませんでした。
「不正の目的」の意義について、
『会社法8条は,名声・信用が化体された商号を使用することについての会社の利益を保護する観点から,営業主体を誤認させる目的での商号の使用を禁止する趣旨の規定である。このような趣旨から,同条にいう「不正の目的」とは,他人の営業を表示する商号等を自己の営業に使用することにより,自己の営業を当該商号等によって表示される他人の営業と誤認混同させようとする意思をいうものと解するのが相当である。』
(12頁)
こうした判断のもと、
原告側の、類似商号と競業関係の認識があれば「不正の目的」があるとの
主張を容れませんでした。
そして裁判所は、以下の点から「不正の目的」なしと判断しています。
1 被告の会社も合併・商号変更などを経ているがその活動歴、信用、
知名度は原告と勝るとも劣らない。(16頁以下)
2 商号中の「スポーツマーケティング」は、「製鉄」や「自動車工業」と
同じく業務内容を示すもので、一社独占を認めるべきものではない。(17頁)
3 「ジャパン」も多くの企業がその使用を望むもの。(17頁)
4 本店所在地移転の経緯も原告に有利な事情は認められない。(17頁)
なお、
『確かに,原告が先に原告商号の使用を開始したものであり,それを知っていた被告としては,原告に対する何らかの配慮をすべきではなかったかと考えられないではないが,それは,道義的責任なり,日本的な謙譲の美徳の問題といわざるを得ないものであり,これを法的義務にまで高めようとする原告の主張は採用することができない。』
ということで、原告側に法的保護に値する権利があるとまでは
認めませんでした。
■コメント
商号に関しての不正競争行為規定としては、
旧商法21条から新会社法8条や商法12条に規定が改められましたが、
今回の判決は法改正されてはじめての商号使用差止事件の
判決となるのではないでしょうか。
既登記商号に関する旧商法20条の規定もなくなり
同一番地でもない限り同一商号での登記申請も可能と
なったわけですが、今後は類似商号事案については
この判決のようにより実質的に「不正の目的」の有無などが
事案ごとに詳細に検討されるものと思われます。
■参考文献
小松一雄編著「不正競業訴訟の実務」(2005)421頁以下
「スポーツマーケティング会社商号使用差止」事件
★東京地裁平成18.11.29平成18(ワ)9080商号使用禁止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 杉浦正樹
裁判官 頼晋一
■事案
競業関係にあり、しかもいずれも渋谷区内にある会社が商号の類似性から
不正競争行為性を巡って争った事案
原告:スポーツマーケティング情報提供サービス会社
被告:スポーツマーケティング・コンサル会社
■結論
請求棄却
■争点
条文 会社法8条
1 不正の目的の有無
■判決内容
1 不正の目的の有無
スポーツに関するマネジメント業務などで両社とも競争関係にありました。
被告は原告を知っていましたし、本店所在地もいずれも渋谷区内で
距離にして1.5キロ離れている程度。
そして、
原告「スポーツ・マーケティング・ジャパン株式会社」、
被告「ジャパン・スポーツ・マーケティング株式会社」という
商号の類似性。
それでも結論的には、「不正の目的」はないとして
商号使用差止、抹消登記請求を認めませんでした。
「不正の目的」の意義について、
『会社法8条は,名声・信用が化体された商号を使用することについての会社の利益を保護する観点から,営業主体を誤認させる目的での商号の使用を禁止する趣旨の規定である。このような趣旨から,同条にいう「不正の目的」とは,他人の営業を表示する商号等を自己の営業に使用することにより,自己の営業を当該商号等によって表示される他人の営業と誤認混同させようとする意思をいうものと解するのが相当である。』
(12頁)
こうした判断のもと、
原告側の、類似商号と競業関係の認識があれば「不正の目的」があるとの
主張を容れませんでした。
そして裁判所は、以下の点から「不正の目的」なしと判断しています。
1 被告の会社も合併・商号変更などを経ているがその活動歴、信用、
知名度は原告と勝るとも劣らない。(16頁以下)
2 商号中の「スポーツマーケティング」は、「製鉄」や「自動車工業」と
同じく業務内容を示すもので、一社独占を認めるべきものではない。(17頁)
3 「ジャパン」も多くの企業がその使用を望むもの。(17頁)
4 本店所在地移転の経緯も原告に有利な事情は認められない。(17頁)
なお、
『確かに,原告が先に原告商号の使用を開始したものであり,それを知っていた被告としては,原告に対する何らかの配慮をすべきではなかったかと考えられないではないが,それは,道義的責任なり,日本的な謙譲の美徳の問題といわざるを得ないものであり,これを法的義務にまで高めようとする原告の主張は採用することができない。』
ということで、原告側に法的保護に値する権利があるとまでは
認めませんでした。
■コメント
商号に関しての不正競争行為規定としては、
旧商法21条から新会社法8条や商法12条に規定が改められましたが、
今回の判決は法改正されてはじめての商号使用差止事件の
判決となるのではないでしょうか。
既登記商号に関する旧商法20条の規定もなくなり
同一番地でもない限り同一商号での登記申請も可能と
なったわけですが、今後は類似商号事案については
この判決のようにより実質的に「不正の目的」の有無などが
事案ごとに詳細に検討されるものと思われます。
■参考文献
小松一雄編著「不正競業訴訟の実務」(2005)421頁以下