裁判所HP 知的財産裁判例集より
「予備校教材」事件
★東京地裁平成18.11.15平成18(ワ)4824等 損害賠償請求事件 著作権PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 頼晋一
■事案
中小企業診断士試験用教材の原稿を勝手に改変・転用されたとして著作権侵害を理由に資格試験予備校などが訴えられた事案
原告:原稿執筆者
被告:経営コンサルティング会社
資格試験予備校
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法114条2項・3項
1 故意・過失の存否
2 損害額
■判決内容
1 故意・過失の存否
原告に執筆を依頼した経営コンサルティング会社が無断で原稿に修正を加えて転用、資格試験予備校に提供していました。争点のひとつとして、この資格試験予備校の「過失」の存否がありました。
この点、裁判所は
『被告東京LMは,資格取得講座を開講し,受講生用の教材等を発行することを業として行っている会社であり,教材等の作成及び発行に当たり,第三者の著作権等を侵害することがないよう十分確認すべき義務を負っていると認められるところ,その注意義務を尽くしたことを認めるに足りる証拠はない。』
(9頁)
として、複製権、著作者人格権侵害に関する過失を認定しました。
2 損害額
損害額算定については、114条3項により6万円(原稿10頁分、1頁6000円単価)とそれに著作者人格権侵害の慰謝料として11万円の合計17万円と判断されました。
■コメント
裁判ネタが多い予備校のLECさんですが、出版社の注意義務と同様、厳しい判断が示されています。
「企業法務戦士の雑感」さんが言うように予備校にしてみると「もらい事故」ではあるけれど、争点1の問題意識は企業のみなさんはとても高くてわたしのところでも出版、印刷業のかたからは、この部分の権利関係を中心とした契約書の監修を依頼される場面が最近特に増えています。
携帯コンテンツ制作でもたとえばドコモは公式サイト立ちあげの際のコンテンツ制作業者とのコンテンツ配信契約において下請けの作家さんとの権利処理の契約書をいちいち確認するようになってきています。
そのため、コンテンツ制作業者からは整合性のある契約書の作成をわたしに求められます。
PDF3頁には予備校と経営コンサルティング会社とのあいだでとりかわされた業務委託契約書の著作権処理にかかわる規定が抜粋して掲載されていますが、吟味された内容となっていません。
他人の著作物(情報成果物)を使うということ、それが予備校の業務の中核であるにもかかわらず、この部分を真剣に考えていないということが契約書の文言からすぐに分かります。
どんなに第三者保証規定を詰めて規定してももらい事故は防げませんが、コンプライアンスとしてその意識を持つ事は経営者に必要です。
弁護士に契約書ひな型を作ってもらっただけでは、こうした意識を持ったことには全然なりません。
会社のトップ、営業部長、総務部長のみなさんとじっくりお話をさせていただいて問題意識を共有してこそはじめてこうしたリスクが低減されるのではないかというのが現場の実感です。
■参考ブログ
「企業法務戦士の雑感」さん
■[企業法務][知財] 試されるリーガルマインド
■参考判例
調査確認義務について
「ぐうたら健康法事件」
東京地判H7.5.31
「ホテルジャンキーズ事件」
東京地判H14.4.15
■追記(07.03.08)
控訴審判決
知財高裁平成19年02月28日平成18(ネ)10090損害賠償請求控訴事件
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 三村量一
裁判官 古閑裕二
原告側は損害額について争い、控訴審では
「複製権侵害に基づき30万円,著作者人格権(公表権,氏名表示権,同一性保持権)侵害に基づき20万円の合計50万円の損害金」
とされました。
「予備校教材」事件
★東京地裁平成18.11.15平成18(ワ)4824等 損害賠償請求事件 著作権PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 頼晋一
■事案
中小企業診断士試験用教材の原稿を勝手に改変・転用されたとして著作権侵害を理由に資格試験予備校などが訴えられた事案
原告:原稿執筆者
被告:経営コンサルティング会社
資格試験予備校
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法114条2項・3項
1 故意・過失の存否
2 損害額
■判決内容
1 故意・過失の存否
原告に執筆を依頼した経営コンサルティング会社が無断で原稿に修正を加えて転用、資格試験予備校に提供していました。争点のひとつとして、この資格試験予備校の「過失」の存否がありました。
この点、裁判所は
『被告東京LMは,資格取得講座を開講し,受講生用の教材等を発行することを業として行っている会社であり,教材等の作成及び発行に当たり,第三者の著作権等を侵害することがないよう十分確認すべき義務を負っていると認められるところ,その注意義務を尽くしたことを認めるに足りる証拠はない。』
(9頁)
として、複製権、著作者人格権侵害に関する過失を認定しました。
2 損害額
損害額算定については、114条3項により6万円(原稿10頁分、1頁6000円単価)とそれに著作者人格権侵害の慰謝料として11万円の合計17万円と判断されました。
■コメント
裁判ネタが多い予備校のLECさんですが、出版社の注意義務と同様、厳しい判断が示されています。
「企業法務戦士の雑感」さんが言うように予備校にしてみると「もらい事故」ではあるけれど、争点1の問題意識は企業のみなさんはとても高くてわたしのところでも出版、印刷業のかたからは、この部分の権利関係を中心とした契約書の監修を依頼される場面が最近特に増えています。
携帯コンテンツ制作でもたとえばドコモは公式サイト立ちあげの際のコンテンツ制作業者とのコンテンツ配信契約において下請けの作家さんとの権利処理の契約書をいちいち確認するようになってきています。
そのため、コンテンツ制作業者からは整合性のある契約書の作成をわたしに求められます。
PDF3頁には予備校と経営コンサルティング会社とのあいだでとりかわされた業務委託契約書の著作権処理にかかわる規定が抜粋して掲載されていますが、吟味された内容となっていません。
他人の著作物(情報成果物)を使うということ、それが予備校の業務の中核であるにもかかわらず、この部分を真剣に考えていないということが契約書の文言からすぐに分かります。
どんなに第三者保証規定を詰めて規定してももらい事故は防げませんが、コンプライアンスとしてその意識を持つ事は経営者に必要です。
弁護士に契約書ひな型を作ってもらっただけでは、こうした意識を持ったことには全然なりません。
会社のトップ、営業部長、総務部長のみなさんとじっくりお話をさせていただいて問題意識を共有してこそはじめてこうしたリスクが低減されるのではないかというのが現場の実感です。
■参考ブログ
「企業法務戦士の雑感」さん
■[企業法務][知財] 試されるリーガルマインド
■参考判例
調査確認義務について
「ぐうたら健康法事件」
東京地判H7.5.31
「ホテルジャンキーズ事件」
東京地判H14.4.15
■追記(07.03.08)
控訴審判決
知財高裁平成19年02月28日平成18(ネ)10090損害賠償請求控訴事件
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 三村量一
裁判官 古閑裕二
原告側は損害額について争い、控訴審では
「複製権侵害に基づき30万円,著作者人格権(公表権,氏名表示権,同一性保持権)侵害に基づき20万円の合計50万円の損害金」
とされました。