裁判所HP 知的財産裁判例集より

『シェーン』著作権保護期間満了事件

東京地裁平成18.10.6平成18(ワ)2908 著作権侵害差止等請求事件 著作権民事訴訟PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清水節
裁判官    山田真紀
裁判官    佐野信


■事案

原告:映画会社
被告:格安DVD販売会社

パブリックドメインとなった映画を格安DVDとして
製造・販売していた業者に対して
映画会社が、著作権保護期間はいまだ満了していないとして
著作権侵害などを理由に損害賠償、差止を請求した事案。


■結論

請求棄却


■争点

条文 著作権法第54条1項、附則2条1項

1 54条1項適用の有無

本件映画の著作物は、著作権法改正附則2条1項が適用される
保護期間が満了していない著作物かが争点となりました。


■判決内容

1 54条1項適用の有無


1 著作権法における存続期間の解釈(22頁以下)

(1)期間認定として日を単位としており、12月31日と1月1日は重ならない。
 (改正前著作権法54条1項、57条、民法140条、141条、著作権法附則1条)

(2)罪刑法定主義からする明確性の要請


2 他の法令における解釈との整合性(23頁以下)

所得税法や行政事件訴訟法の改正にかかわる解釈との
整合性について言及。


3 立法者意思(33頁以下)

昭和28年公表映画の著作権の消滅を防ぐという
明確な改正目的はなかった。


4 45年改正法附則の解釈(35頁以下)

45年改正法附則2条1項の解釈も本件附則2条1項と
同じような解釈をするべきである。
昭和45年12月31日に満了する著作物については
同法は適用されないとするのが文理解釈として
相当である。

原告は、45年改正法附則2条1項の解釈が確立している
として、その解釈を本件改正法附則2条1項についても
行うべきであると主張しましたが、容れられませんでした。


5 文化庁著作権課の見解等(36頁以下)

文化庁著作権課の見解はあくまでも所管官庁である文化庁における解釈にすぎず,これが直ちに立法者意思に結び付くものとはいえない。

*原告の解釈は文化庁見解とも同じであると主張しましたが
一蹴されています。


以上から、著作権法54条1項は適用されず、
本件映画の著作権は平成15年12月31日が満了した時点で
消滅している、としました。



■コメント

今年7月、東京地裁民事47部高部コートで仮処分事案ですが
映画「ローマの休日」の保護期間を巡って同種の
裁判がありました。

この決定で、原告映画会社敗訴の判断。
思いがけずびっくりしましたが、
今度は別のコートで同様の判断が下されました。


知財部6名の裁判官が附則2条1項等について
同様の解釈をしました。
文理解釈部分はもちろんですが、
立法者意思解釈の部分をこの先、知財高裁がどのような判断を
下すのか興味津々といったところです。


★東京地裁平成18.7.11平成18(ヨ)22044
著作権仮処分命令申立事件PDF
「ローマの休日」事件決定PDF



■過去のブログ記事

「ローマの休日」保護期間事件〜著作権 仮処分命令申立事件決定(知的財産裁判例集)〜


■追記(06.10.7)

さらに詳細な検討ブログ記事として

企業法務戦士の雑感
■[企業法務][知財] 再び下された「英断」


■追記(06.10.20)

20日付日経朝刊より
19日、パラマウント社が控訴したそうです。

■追記(06.12.09)

作花文雄『映画「ローマの休日」の保護期間をめぐる法制上の論点
ー映画「ローマの休日」等格安DVD販売事件における著作権法改正改正法の
経過措置の文理解釈と立法趣旨に関する混迷ー』
コピライト46巻548号2006.12月号22頁以下


■追記(07.03.30)

07年3月29日、知財高裁塚原コートで控訴棄却の判断。

判決文PDF

■追記(2007年12月18日)

最高裁判所第三小法廷平成19.12.18平成19(受)1105著作権侵害差止等請求事件
「『シェーン』著作権保護期間満了」事件(上告審)〜著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(最高裁判所判例集)〜


■追記(08.03.08)

2008年03月08日記事
「『モダンタイムス』格安DVD」事件(控訴審)〜著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜