8月20日刊行の本書は、窃盗、贋作、盗作など美術作品を巡って
世間を賑わせた戦後の美術事件を概観するものです。

三越での古代ペルシア秘宝展贋作展示事件(128頁)や
コロー作品国際窃盗事件(182頁)などは、
そういえばそんな事件があったなあ!」という
感慨を覚えます。

文化行政のインチキさ加減(「贋作を擁護した奈良博」144頁以下)、
カラダを張って芸術を守るという美術館の気概の欠如など
(「昭和天皇コラージュ版画問題」213頁以下)、考えさせられます。

いずれにしろ、モノの真贋より人の真贋を見抜くほうが
よほど難しい・・・!!

著作権との関係では、マッド・アマノ事件(246頁)の
裁判の顛末が読みやすく書かれています。
そのほか、コラムにバス車体広告事件(209頁)、レオナールフジタ事件(225頁)
など。


266頁以下には、「戦後美術事件史年表」が掲載されていて
ちょっとした資料です。
たとえば、山梨県立近代美術館が購入したミレーの「種まく人」が
いくらだったか(2億円)とか、宇都宮市立美術館購入の
マグリット「大家族」が6億円だったなどにも触れられています。




芸術とスキャンダルの間――戦後美術事件史