裁判所HP 知的財産裁判例集より

大阪地裁平成18.7.27平成17(ワ)11663不正競争行為差止等請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官    西 理香
裁判官    西森みゆき



■事案

ラッパのマーク」の正露丸を販売する大幸薬品が
類似するパッケージで正露丸を販売している他社を
相手取って争った事案


■結論

請求棄却(原告大幸薬品側敗訴)


■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号、2号、商標法26条1項2号

1 正露丸パッケージの「商品等表示性」
2 「ラッパの図柄」の類似性、誤認混同のおそれの有無
3 「正露丸」「SEIROGAN」の「商品等表示性」
4 商標権の効力制限(商標法26条1項2号)


■判決内容

1 正露丸パッケージの「商品等表示性」

この点について判例は、
類似のパッケージで販売している競合他社が数多く
10社以上)存在することから、
「ラッパの図柄」を度外視した包装態様のみでは
原告製品としての出所表示機能を具備しないと
判断しました。
(20頁)

オレンジ色のパッケージデザインには
大幸薬品製品としての特別顕著性がない
というわけです。


2 「ラッパの図柄」の類似性、誤認混同のおそれの有無

自他商品識別機能を有するのは、1の点からすると
「ラッパの図柄」と原告の社名のみということになるが、
被告の製品の図柄である「瓢箪」部分と「ラッパ」部分とは
類似しない。
そして類似しない以上、誤認混同のおそれもない
と判断されました。
(20頁以下)


3 「正露丸」「SEIROGAN」の「商品等表示性」

「正露丸」「SEIROGAN」の文字表示についても、
クレオソート胃腸薬品を指称する普通名称であり、
原告製品を識別する商品表示性はないと判断されました。
(27頁)


ここで「正露丸」が自他商品識別力がなく出所表示機能がない
普通名称に過ぎないかどうかが検討されています。

昭和29年当時は「正露丸」は普通名称でした。
昭和49年、商標登録無効審判についての審決取消訴訟判決において
「正露丸」に「セイロガン」と振り仮名のように付記された商標が
登録無効と判断された事案からその事実が認められています。

そこで、昭和29年から50年を経た今日の取引の実情の変化
勘案して、
現在でもなお「正露丸」が普通名称といえるかどうか
検討が加えられました。

結論的には上記の通り、現在でもなお「正露丸」は
普通名称であると判断されました。
(22頁以下)


4 商標権の効力制限(商標法26条1項2号)

原告は、「正露丸」、「SEIROGAN」を商標登録していました。
しかし、「正露丸」、「SEIROGAN」ともに本件医薬品の普通名称であり、
被告はこれを普通に用いられる方法で表示したものに過ぎない
として、原告の本件商標権の効力は被告の商品表示(標章)には
及ばないと判断されました(商標法26条1項2号)。
(27頁以下)



■コメント

はじめにこの裁判の結論を聞いたとき、
「こんなにパッケージが似ているのに、どうして
『ラッパのマーク』は負けたんだろう?」という
思いでした。

でも、以下のようなサイトを見てみると
ゾロ製品があるわあるわ!

「正露丸」

正露丸,この謎に満ちた類似品の数々、、


これではいまさら保護しろと言われても
ちょっとどうかなあ、と思い直した次第です。
(実際、大幸薬品は昭和52年以降本件提訴まで
競合他社へ使用中止警告等を一切していませんでした。
26頁参照。)


■追記(06.8.4)

大幸薬品のプレスリリース
和泉薬品工業株式会社に対する 不正競業行為差止等請求事件の大阪地裁判決について

含有成分の違い(ロートエキス)に対する懸念が表明されています。