裁判所HP 知的財産裁判例集より

東京地裁平成18.7.31平成17(ワ)8362不正競争行為差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清水節
裁判官    山田真紀
裁判官    片山信



■事案

ソフトウエア仕様の双方向型認証システムに関する
技術について、その営業秘密性(非公知性)が
問題となった事案。


■結論

請求棄却(原告技術者側敗訴)



■争点

条文 不正競争防止法2条1項8号、6項

1 営業秘密性(非公知性)


■判決内容

1 営業秘密性(非公知性)

本件営業秘密の内容となる認証技術は、原告が出願し
公開された特許出願に係る公開特許公報に
開示されていました。

原告側は弁論準備手続期日に本件認証技術が
公知である点について争わない旨陳述していました。

裁判所の判断は以下のとおりです。

不正競争防止法における「営業秘密」は,「秘密として管理されている生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって,公然と知られていないものをいう」とされており(同法2条6項),「公然と知られていない」ものであることが要件とされる。
しかし,本件営業秘密の内容である認証技術が,原告自らが出願した本件公知例にすべて開示されている公知のものであるとの被告の主張に対し,原告は,上記のとおり,これを争わないとし,そのほか,本件営業秘密が「公然と知られていない」ものであることについて何ら主張,立証を行わない。
 そうすると本件営業秘密は「公然と知られていないもの」であるとは認められず,不正競争防止法2条6項にいう営業秘密には当たらないというべきである。

(9頁)

裁判所は非公知性の要件を欠く以上、その余の判断をするまでもなく
請求棄却の判断としました。


「公然と知られていない」状態とは、
「当該情報が刊行物に掲載されていない等、保有者の管理下以外では
一般的に入手することができない状態にあること」をいいます
(経産省知財政策室編著「逐条解説不正競争防止法 平成16・17年改正版
(2005)35頁)。

この点で過去に問題となった事案としては、
リバースエンジニアリングによって当該情報が探知できる場合があります
(小松一雄編著「不正競業訴訟の実務」(2005)332頁)。

ただ、今回の事案では公開特許公報に掲載された技術で
しかも公知性について原告が争っていないので、それ以上
どうしようもないところです。



■コメント

当事者間では共同開発に先立つ段階での本件技術内容の
開示契約書(秘密保持契約書)1通、
それに引き続いての共同開発契約書取り交わしが2通、
覚書1通と、段階を追って契約書をまとめています。

ですが、どこでボタンの掛け違いが生じたのでしょう、
原告をして「一方的に裏切られ」た(8頁)という
状況になってしまい
今回の提訴に至っています。

そのあたりの経緯が判決文には現れておらず、
また、原告の主張立証活動にも腑に落ちないところがあり
原告にとってどういう意味合いのある訴訟だったのか
判然としないところです。