欧文文字を美しく書く西洋書術(カリグラフィー)。

カリグラフィ作家として活躍されている進藤洋子さんが
観光キャンペーン「にいがた花物語」のイラストに
自分の作品が盗用されたとして新潟県観光協会を相手取って
使用差止の仮処分申請を東京地裁に行ったそうです。

ヤフーのニュースサイトで双方の画像を較べてみると
なんとも微妙で判断の難しい事案が起こったものだなあ、
との印象です。

「花」という文字をモチーフにしている点が
著作権侵害性判断にどのようにかかわってくるのか
裁判所の判断が注目されます。


ヤフーニュース
Yahoo!ニュース - 毎日新聞 - <パンフ盗用>デザイナー、新潟県観光協会に仮処分申請

Yahoo!ニュース - 著作権


進藤洋子のカリグラフィ
進藤洋子のカリグラフィ

にいがた花物語
にいがた花物語

新潟県観光協会
新潟県観光協会


■追記(06.6.18)

「エンドユーザーの見た著作権」さんがブログ記事で
この問題についてアンケート調査をしているサイトを
紹介されています。


エンドユーザーの見た著作権」さん
「花」の書「ソックリ」で著作権侵害が問えるか否か?

「ソックリ広告博物館」
アンケート結果

「依拠性」を強く推認させるアンケート結果です。
ですが、アンケートにある作家さんのコメントにあるように
この作品のエレメントのうちどこが特徴的な部分といえるのか、
まずはその分析、整理をした上で類似性の判断である
実質的同一性の有無の判断が行われることになるのでしょう。

動書書体事件」(東京地裁平成元年11.10判決 昭62(ワ)1136号)
によれば、書であれば字体以外の要素としては
墨の濃淡、かすれ具合、筆の勢い等」となるでしょうが
今回は色使いも重要な要素となってきそうです。


■追記(06.6.19)

小笠原先生のブログ記事より

OgacciのBoyacky
花の書体

カリグラフィの著作物性を判断した判例について
紹介がありました。
小松一雄判事の担当された裁判です。

カリグラフィイラストCD-ROM事件
大阪地裁平成11.9.21平成10(ワ)11012等
平成10年 (ワ) 11012号 著作権法に基づく差止め等請求事件
平成11年 (ワ) 4128号 損害賠償請求事件

判決文PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官    渡部勇次
裁判官    水上周


■追記(06.9.30)

進藤さんが9月29日、東京地裁に本訴請求したようです(東京新聞)。

6月の仮処分申請に対して協会側はパンフレットの配布などを
中止したので仮処分の申請は取り下げていたが、謝罪がないことから
本訴に至ったとのこと。