知財判決速報より
★H17.12.19 大阪地裁 平成16(ワ)13057 その他 民事訴訟事件
■事案
工業所有権(産業財産権)やノウハウに関する
ライセンス(譲渡や実施許諾)代行業務を行う原告が、
ライセンサーたる立場に立つ被告との間の
業務代行契約上の保証金返還等を巡って争われた事案。
知的財産権取引仲介業務を行う原告側が被告に対して
保証金名目で1000万円を代行契約締結時に
支払っていました。
■結論
請求棄却
(保証金返還不要、不法行為も成立していない。
契約は有効に成立しており、保証金の返還時期は
契約規定から契約終了後2年経過してからである。
返還期限は未到来であるから返還は不要。)
■争点
条文 民法90条 709条
1 契約の有効性
2 保証金支払いを巡る法律関係等
■判決内容
1 契約の有効性
ライセンス業務代行契約の有効性について、
原告側は被告による「詐欺まがいの契約」、
契約の対象となる被告保有の工業所有権等の
情報について原告に「開示」しなかった
などとして民法90条により契約は
無効と主張していました。
裁判所は、被告側のライセンスに向けた
契約意思の内容を詳細に検討。
そして情報の「開示」については
『原告は、被告が、本件契約の対象となる工業所有権等を原告に開示しなかったために、技術の譲渡等の契約に至ることができなかったと主張する。
この、原告への「開示」とは、原告代表者本人尋問の結果に照らせば、技術内容そのものの開示ではなく、代行業務の対象となる工業所有権やノウハウの特定の意味で主張しているものと解されるところ、原告代表者及び被告の各本人尋問の結果によれば、確かに、被告が、これを出願番号等を用いて明確に特定して原告に伝えたことがないことは認められる。
しかしながら、そのこと自体の当否は別として、この事実のみによって、このことが、技術の譲渡等の契約に至らなかった原因であると認めることはできず、また、これを認めるに足りる証拠もない。そして、上記のとおり、被告が原告代表者や原告従業員に伴われて企業を訪問し、説明やサンプルの材料提供を行ったり、その後の契約に向けた協議を行っていることに照らせば、やはり、被告が代行業務の対象となる工業所有権やノウハウの明確な特定をしなかったからといって、被告において、本件契約に基づく原告を介しての技術の譲渡等をする意思がなかったと認めることはできない。』
として、結論的には原告側の無効主張を容れませんでした。
2 保証金支払いを巡る法律関係等
ライセンス代行業務を行う原告が、
工業所有権やノウハウ等を保持する被告側に
保証金1000万円を支払っています。
この保証金の目的について裁判所は、
『本件契約の特記事項(4)は、本件保証金の返還時期を第12条の有効期間満了後と定め、第12条は、本件契約終了後も第10条及び第11条の規定は契約終了後2年間有効に存続すると定め、第10条及び第11条は原告の守秘義務とその例外を規定している。
これらの規定の内容及び体裁に照らせば、本件契約第4条の保証金(本件保証金)は、少なくとも、本件契約の第10条が規定する原告の守秘義務の履行を確保するためのものであると解するのが相当である。』
と認定しています。
その上で、保証金支払いを巡る事実関係を検討、
保証金返還時期が既に到来しているとする
原告側の主張を裁判所は結論として
容れませんでした。
■コメント
知的財産権取引仲介を行う者と
ライセンサーとのあいだでの契約関係が
裁判上で問われるという珍しい事案。
仲介者側が保証金を1000万円支払っている
という点でも注目されます。
また、代行業務ついての報酬については
別に定めてあるようですが
(別表1・2 判決には不掲載)、
判決内容からすると契約締結に当たって
着手金や一時金の支払いはなく仲介諸経費等は
成功報酬、あるいは特許等実施許諾契約
継続期間中の手数料報酬によるところであった
ことから、スジの良い工業所有権、ノウハウ等に
ついてのライセンス業務代行契約だったのかも
しれません。
ただ、業務代行契約書の概要が判決文中に
掲載されていますが、保証金額の高さに較べると
契約書の体裁が貧弱な印象を持ちます。
原告側が契約を急いだのか
いずれにしても契約がたった2ヶ月で解消されています。
このままでは仲介業務にかかった経費は出ませんし
1000万円も塩漬け状態。仲介者としては
きついところです。
契約書の点についていえば
原告側としては、もう少し開示する情報の範囲や
保証金の目的などを契約上で明示するなど
詰めることができたのではないかと
思われるところです。
★H17.12.19 大阪地裁 平成16(ワ)13057 その他 民事訴訟事件
■事案
工業所有権(産業財産権)やノウハウに関する
ライセンス(譲渡や実施許諾)代行業務を行う原告が、
ライセンサーたる立場に立つ被告との間の
業務代行契約上の保証金返還等を巡って争われた事案。
知的財産権取引仲介業務を行う原告側が被告に対して
保証金名目で1000万円を代行契約締結時に
支払っていました。
■結論
請求棄却
(保証金返還不要、不法行為も成立していない。
契約は有効に成立しており、保証金の返還時期は
契約規定から契約終了後2年経過してからである。
返還期限は未到来であるから返還は不要。)
■争点
条文 民法90条 709条
1 契約の有効性
2 保証金支払いを巡る法律関係等
■判決内容
1 契約の有効性
ライセンス業務代行契約の有効性について、
原告側は被告による「詐欺まがいの契約」、
契約の対象となる被告保有の工業所有権等の
情報について原告に「開示」しなかった
などとして民法90条により契約は
無効と主張していました。
裁判所は、被告側のライセンスに向けた
契約意思の内容を詳細に検討。
そして情報の「開示」については
『原告は、被告が、本件契約の対象となる工業所有権等を原告に開示しなかったために、技術の譲渡等の契約に至ることができなかったと主張する。
この、原告への「開示」とは、原告代表者本人尋問の結果に照らせば、技術内容そのものの開示ではなく、代行業務の対象となる工業所有権やノウハウの特定の意味で主張しているものと解されるところ、原告代表者及び被告の各本人尋問の結果によれば、確かに、被告が、これを出願番号等を用いて明確に特定して原告に伝えたことがないことは認められる。
しかしながら、そのこと自体の当否は別として、この事実のみによって、このことが、技術の譲渡等の契約に至らなかった原因であると認めることはできず、また、これを認めるに足りる証拠もない。そして、上記のとおり、被告が原告代表者や原告従業員に伴われて企業を訪問し、説明やサンプルの材料提供を行ったり、その後の契約に向けた協議を行っていることに照らせば、やはり、被告が代行業務の対象となる工業所有権やノウハウの明確な特定をしなかったからといって、被告において、本件契約に基づく原告を介しての技術の譲渡等をする意思がなかったと認めることはできない。』
として、結論的には原告側の無効主張を容れませんでした。
2 保証金支払いを巡る法律関係等
ライセンス代行業務を行う原告が、
工業所有権やノウハウ等を保持する被告側に
保証金1000万円を支払っています。
この保証金の目的について裁判所は、
『本件契約の特記事項(4)は、本件保証金の返還時期を第12条の有効期間満了後と定め、第12条は、本件契約終了後も第10条及び第11条の規定は契約終了後2年間有効に存続すると定め、第10条及び第11条は原告の守秘義務とその例外を規定している。
これらの規定の内容及び体裁に照らせば、本件契約第4条の保証金(本件保証金)は、少なくとも、本件契約の第10条が規定する原告の守秘義務の履行を確保するためのものであると解するのが相当である。』
と認定しています。
その上で、保証金支払いを巡る事実関係を検討、
保証金返還時期が既に到来しているとする
原告側の主張を裁判所は結論として
容れませんでした。
■コメント
知的財産権取引仲介を行う者と
ライセンサーとのあいだでの契約関係が
裁判上で問われるという珍しい事案。
仲介者側が保証金を1000万円支払っている
という点でも注目されます。
また、代行業務ついての報酬については
別に定めてあるようですが
(別表1・2 判決には不掲載)、
判決内容からすると契約締結に当たって
着手金や一時金の支払いはなく仲介諸経費等は
成功報酬、あるいは特許等実施許諾契約
継続期間中の手数料報酬によるところであった
ことから、スジの良い工業所有権、ノウハウ等に
ついてのライセンス業務代行契約だったのかも
しれません。
ただ、業務代行契約書の概要が判決文中に
掲載されていますが、保証金額の高さに較べると
契約書の体裁が貧弱な印象を持ちます。
原告側が契約を急いだのか
いずれにしても契約がたった2ヶ月で解消されています。
このままでは仲介業務にかかった経費は出ませんし
1000万円も塩漬け状態。仲介者としては
きついところです。
契約書の点についていえば
原告側としては、もう少し開示する情報の範囲や
保証金の目的などを契約上で明示するなど
詰めることができたのではないかと
思われるところです。
コメント
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。