山と渓谷社から8月1日刊行の本書は、明大山岳部による前人未到、単独の大学山岳部関係者による世界8000M級の山々の完全制覇のドキュメント。

現在登山というと、中高年の方によるものや高所登山請負人(国際公募隊、商業登山)のサポートによる個人レベルの登山がニュースとなりますが、一方では一見古風ではありますが、団体の総合力、体育会の伝統に根付いた登山も存在しているということ。
とりもなおさず「伝統」というものが良い結果を生み出す事例として、記憶に留められるべき業績です。

世界8000M級14座単独登頂としてはメスナーが有名ですが、私立大学という団体の学生やOBが14座を完全登頂したことは世界的に見ても偉業で、明大OBの私としてもたいへん誇りとするべき壮挙です。


明大山岳部といえば、冒険家の植村直己さんを思い浮かべます。
私が小学生の頃、植村さんが北極圏12000キロ犬ぞり旅行から帰国した際、父とともに出迎えに空港まで行って挨拶したり、自分より大きな犬を柵越しに見たりと(今では検疫でそれほど早くは見られないでしょう)そんな思い出があります。

本書を読むと現在の学生、若手OBの力量ー行動力、判断力、忍耐力どれをとっても往年の登山家のものに引けをとらないことがわかります。
彼らの記録がこうして刊行されて、手軽に接することができるのは望外の幸せです。


なお、著者の谷山宏典さんは将棋の駒のたとえで言うと「香車」のような人、とは父の弁。
今後ライターとしての活動も楽しみなところです。


登頂八〇〇〇メートル―明治大学山岳部十四座完登の軌跡