先日弁護士・弁理士でおいでの伊藤真先生の講義に接する機会がありました。お話のなかから寄与責任(共同責任関係)について、判例をいくつか俯瞰しながら備忘録的に記しておきたいと思います。


≪1 直接侵害者以外の関与者の責任を認めた判例

(1)以下の判例では、「管理性」「経済的利益の帰属」という観点から関与者の責任が肯定されています。

1 カラオケ装置リース業者(大阪地判H6.3.17)
2 カラオケルーム経営者(大阪地決H9.12.12、東京地判H10.8.27)
3 バレエ興行主(「バレエ・アダージェット事件」東京地判H10.11.20)
4 歌謡ショープロモーター(東京地判H14.6.28)
5 ファイル交換サービス提供事業者(「ファイルローグ事件」東京地判H15.1.29(中間)東京地判H15.12.17(終局)、東京高判H17.3.31)


(2)侵害主体の拡張

1 メモリーカード輸入・販売業者(「ときめきメモリアル事件」最判H13.2.13、また「DEAD OR ALIVE2事件」東京高判H16.3.31)
 ・・・法律構成については、ユーザーとの共同不法行為論、ユーザー手足論などが主張されています(H13年度重判288頁参照)。  

2 カラオケ装置リース業者(最判H13.3.2)
 ・・・条理上の注意義務違反から不法行為責任の主体性を肯定。

4 出版社(「ホテル・ジャンキーズ事件東京地裁H14.4.15)
 ・・・調査確認義務懈怠に基づく責任を肯定。

3 通信カラオケ業者(「ヒットワン事件」大阪地判H15.2.13)
 ・・・侵害主体に準じる幇助者として責任を肯定。

4 ネット掲示板管理者(「2ちゃんねる事件」東京高判H17.3.3)
 ・・・是正措置義務違反として責任を肯定。


≪2 差止請求の拡張を肯定した判例

1 通信カラオケ業者(「ヒットワン事件」大阪地判H15.2.13)

2 ネット掲示板管理者(「2ちゃんねる事件」東京高判H17.3.3)


伊藤先生の分析によると、侵害主体の拡張の点は判例のトレンドとして認められるが、差止請求の対象拡張についてはまだはっきりとした方向性が見出せないということでした。

なお、共同著作権等侵害者に対する差止請求について、作花文雄詳解著作権法第三版」803頁以下参照。
また、著作権判例百選第二版(1994)収録判例を分析した久保利英明「侵害行為者側が複数の場合の問題点」『裁判実務大系27知的財産関係訴訟法』(1997)342頁以下参照。