本書は、戦時中に作られた国策雑誌「FRONT」製作にかかわり、日本のグラフィック誌製作の黎明期から活動された多川精一さんの戦中戦後を回顧するものです。


私事ですが、多川さんと私の父は府立工芸学校(現都立工芸高校・東京都文京区 水道橋駅前)で5年間同じクラスの同級生(クラスは3クラス)。

府立工芸では、印刷・金属・機械・木材の4つのコースがあり父は金属科、多川さんは印刷科に所属。
当時印刷科には20数名、金属科がそれより少し多いという状況で金属科の学生も印刷を一般科目として受講。
実習はそれぞれ別だったそうです。

その頃の多川さんは本書25ページにある風貌そのもの。大人しくしゃべらない印象、タイプとしてはスポーツマンとは正反対という感じだったそうです。


府立工芸の卒業時期は3月ですが、父の学年から繰上げ卒業で12月卒業。その8日に開戦。開戦の詔勅の際に学校の講堂に集まったといいますから風雲急を告げる時期であったことが伺えます。

戦後多川さんは印刷方面へ、父は映像(テレビ)方面へと畑は違ったようですが、本書はグラフィックの歴史を知る上でたいへん参考になるものです。


焼跡のグラフィズム―『FRONT』から『週刊サンニュ-ス』へ