日ごろから著作物の取扱いに関して、当該利用契約違反(著作権法63条2項)が即著作権侵害となるのかどうか思い悩む場合があります。
債権侵害(債務不履行)で終わる話なのか、著作権侵害となれば刑事事件にまで発展しかねないので悩みはさらに深くなります。


ところで、5月21日に開催された著作権法学会の2005年度研究大会には残念ながら参加できませんでしたが、今大会のメインテーマは「契約」でした。
著作権法の平成18年改正については、「契約」に関わる事項も議論の遡上に載せられてはいますが、学会でこれから理論的な議論するという現状ではこの点に関して立法にすぐに反映させるのは困難な状況でしょう。

たとえば、平成16年4月施行の下請法では書面交付義務が規定されましたが(3条書面交付義務)、この書面は発注書などで足り契約書である必要はありません。著作権譲渡契約要式行為化の議論はこれからといえます。
また、契約によって「引用」(30条)を制限できるのか、規定の強行法規性解釈論などもこれからの検討課題といえます。


著作権法学会サイト

ネット上で読むことができる著作権契約法理に関する論文として、弁護士の近藤先生のものがあります。
近藤剛史「情報化社会における著作権と契約法理」(初出「パテント」Vol.51 No.5 1998年)

最近刊行された本の中に収められた論文として、小宮山宏之「著作権法の条理と解釈」(苗村憲司ほか「現代社会と著作権法」39頁以下2005年)があります。ここでは著作権と民法の関係、契約と著作権法とのかかわりについて言及されています。