著作権侵害事件があっても弁護士費用のほうがかかってしまうので、経済的損失を訴訟で回復するのはなかなか困難です。そんな著作権関係訴訟の現状の一端が窺える事案が知財判決速報に掲載されています。

H17. 4.27 東京地裁 平成16(ワ)26771 著作権 民事訴訟事件


事案は、「代ゼミTVネット」番組を違法コピーしてそれをヤフーオークションに出品、販売したとして、著作権者が複製権・頒布権侵害を理由に損害賠償を求めたというものです。

ところで、被告側が口頭弁論期日に出頭せず準備書面なども提出しなかったので、擬制自白が成立しています（民訴法159条）。
ですので、争点らしいものはないのですが、裁判所の損害賠償額の認定（違法行為と損害との間の相当因果関係の有無の判断）の現在のあり方が分かるので参考になるのではないでしょうか。


原告が請求した損害の内容

・逸失利益にかかわる損害

1　民法709条･･･視聴料相当額の損害賠償請求
2　著作権法114条3項･･･使用料相当額の損害賠償請求

・その他の財産的損害

1　調査費用
(1) ヤフオク継続的監視のための人件費
(2) 違法コピーテープの収録内容確認のための人件費
(3) 出張費用（被告との面談目的）

2　弁護士費用


このうち判決では、逸失利益のうち著作権法114条3項に基づく主張のみ認め、その他の財産的損害では調査費用のうち(2)の一部と弁護士費用の一部を認めました。

逸失利益に関しては民法709条を根拠にする損害額の認定はきわめて困難な状況のようです（早稲田祐美子「著作権侵害による損害」牧村利秋ほか編『新・裁判実務大系　著作権関係訴訟法』528頁2004年）。

ただ、本事案のようにコンテンツ配信会社としては違法コピー商品防圧のための地道な努力が必要で、長期的に見ればこうした訴訟の提起も重要なのかもしれません。

なお、損害額認定に関する詳しい文献として、
青柳�沙辧崔�作権侵害及び著作者人格権侵害の場合の損害賠償請求」西田美昭ほか編『民事弁護と裁判実務(８)知的財産権』673頁以下（1998年）参照。