28日付朝日新聞朝刊に掲載されていた記事ですが、大学別入試過去問題集「赤本」が問題の素材に使われた作家らから著作権侵害で提訴されたというものです。

入試問題では、事前に作家から利用許諾を得ると出題問題がバレてしまう可能性があるので、また通常の利用形態とは異なるので著作権者の利益を大きく損ねることもないとの判断から著作権法では著作権者の許諾は不要となっています(36条)。

本条で許諾不要な場合というのは、大学などの入学試験、会社の入社試験運転免許試験などでの利用の場合です。
今回問題となった過去問集は本条ではカバーされません。したがって、著作権者の許諾が必要となります(加戸守行「著作権逐条講義」四訂新版257頁)。


今回無断転載を理由とする損害賠償の提訴ですが、作家の方々はあるいはあまりにもひどい出題にカチンと来たのかもしれません。

へんなところに穴をあけた穴埋め問題や、作者の意図した文章とは異なる文脈を埋め込んでそれを見つける間違い探し問題・・・入試問題制作主体の大学側(外注入試問題制作業者)にそもそもの問題があったのかもしれません。

いずれにしましても、過去問集が出版されないというのは困った事態です。作家の著作者人格権同一性保持権)を最大限尊重しつつ円満な利用環境が整備されるよう、関連団体との話し合いがまとまることを願わずにはいられません。

記事
NPO日本文藝著作権センター
日本ビジュアル著作権協会