知財判決速報に著作権にかかわる高裁判決が掲載されていました。
事案は各種学校やその講座内容等の情報を掲載した情報誌「ケイコとマナブ」(リクルート)が似た様な紙面構成をもつ他社情報誌に対して、リクルートの有する編集著作物の著作権を侵害するものであるとして著作権に基づき雑誌の製作、発売等の差止め、損害賠償等を請求したというものです。
簡単に言うと
原告側であるリクルートは同種の情報誌では草分け的な存在で、その編集方針として各種情報を見やすいように配置・分類したりと紙面上独自の工夫を凝らしていますが、その手法・アイデアが後発の出版会社に盗用されたことを争ったわけです。
結論的にはリクルートの主張は認められませんでした(原告敗訴)。
著作権法 第12条1項
編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。
広告主からの依頼原稿(素材)を独自の編集方針に従って配置・分類(選択又は配列)した結果として独創性が認められる場合、全体が著作物として保護されることになります。
今回、情報誌が全体として編集著作物であることに争いはありません。
第2条1項
1.著作物
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
両社の雑誌では個々の広告掲載契約上の広告原稿は広告主が両社共通していたとしても別モノですからその点で盗用があったわけではありまぜん。原告としては「素材」(広告依頼原稿)部分を除いた「選択・配置」といった手法・アイデアの部分での著作権侵害を争ったわけです。
裁判所は「選択・配置」部分に表現上の「創作性」はない、あるいは具体的な編集物を離れた編集体系自体は選択・配列のアイデアに過ぎず「表現」それ自体ではない、として著作権法上の保護の対象にならないと判断しました。
せっかく工夫を凝らした分類・配列を施してもそれ自体は保護されないというのは納得がいかないところもあるでしょうが、「素材」の情報内容が類似する場合はその分類・配列といった編集体系・手法が類似するのも仕方がないとも考えられます。
著作権法での保護が求められないとすればあとは不正競争防止法や民法上の不法行為の成立の余地を検討するほかありません。
(もっとも、判決では不法行為の点についても違法性があるとはいえないとしてその成立を否定しています。)
H17.3.29 東京高裁 平成16(ネ)2327 著作権 民事訴訟事件
「アイコン」「カプセル」など、よくわからないコトバものもありますが、これらについては地裁判決のサイト末尾に添付されています。
H16.3.30 東京地裁 平成15(ワ)285 著作権 民事訴訟事件
なお、「選択・配列」における創造性と「素材」の抽象化の論理関係について、牧村利秋編「新・裁判実務大系 著作権関係訴訟法」(2004年)150頁以下(田中孝一)参照。

新・裁判実務大系 (22)
事案は各種学校やその講座内容等の情報を掲載した情報誌「ケイコとマナブ」(リクルート)が似た様な紙面構成をもつ他社情報誌に対して、リクルートの有する編集著作物の著作権を侵害するものであるとして著作権に基づき雑誌の製作、発売等の差止め、損害賠償等を請求したというものです。
簡単に言うと
原告側であるリクルートは同種の情報誌では草分け的な存在で、その編集方針として各種情報を見やすいように配置・分類したりと紙面上独自の工夫を凝らしていますが、その手法・アイデアが後発の出版会社に盗用されたことを争ったわけです。
結論的にはリクルートの主張は認められませんでした(原告敗訴)。
著作権法 第12条1項
編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。
広告主からの依頼原稿(素材)を独自の編集方針に従って配置・分類(選択又は配列)した結果として独創性が認められる場合、全体が著作物として保護されることになります。
今回、情報誌が全体として編集著作物であることに争いはありません。
第2条1項
1.著作物
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
両社の雑誌では個々の広告掲載契約上の広告原稿は広告主が両社共通していたとしても別モノですからその点で盗用があったわけではありまぜん。原告としては「素材」(広告依頼原稿)部分を除いた「選択・配置」といった手法・アイデアの部分での著作権侵害を争ったわけです。
裁判所は「選択・配置」部分に表現上の「創作性」はない、あるいは具体的な編集物を離れた編集体系自体は選択・配列のアイデアに過ぎず「表現」それ自体ではない、として著作権法上の保護の対象にならないと判断しました。
せっかく工夫を凝らした分類・配列を施してもそれ自体は保護されないというのは納得がいかないところもあるでしょうが、「素材」の情報内容が類似する場合はその分類・配列といった編集体系・手法が類似するのも仕方がないとも考えられます。
著作権法での保護が求められないとすればあとは不正競争防止法や民法上の不法行為の成立の余地を検討するほかありません。
(もっとも、判決では不法行為の点についても違法性があるとはいえないとしてその成立を否定しています。)
H17.3.29 東京高裁 平成16(ネ)2327 著作権 民事訴訟事件
「アイコン」「カプセル」など、よくわからないコトバものもありますが、これらについては地裁判決のサイト末尾に添付されています。
H16.3.30 東京地裁 平成15(ワ)285 著作権 民事訴訟事件
なお、「選択・配列」における創造性と「素材」の抽象化の論理関係について、牧村利秋編「新・裁判実務大系 著作権関係訴訟法」(2004年)150頁以下(田中孝一)参照。

新・裁判実務大系 (22)
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