知財判決速報2019

2019年10月15日

サイト制作業務権利濫用事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

サイト制作業務権利濫用事件

大阪地裁令和1.10.3平成30(ワ)5427著作権侵害差止等請求事件PDF
別紙1

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 谷 有恒
裁判官    野上誠一
裁判官    島村陽子

*裁判所サイト公表 2019.10.11
*キーワード:サイト制作業務、保守管理業務、権利濫用

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■事案

ウェブサイトのリニューアル業務に関連して著作権の帰属や権利濫用の抗弁の成否が争点となった事案

原告:映像製作事業者
被告:研修教材販売会社ら

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法21条、27条、20条、民法1条3項、709条

1 複製権、翻案権侵害の成否
2 著作者人格権侵害の成否
3 一般不法行為論など

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■事案の概要

『本件は,原告が,「ライズ株式スクール」を運営していた被告ピー・エム・エー,その代表者である被告P3及びその取締役である被告P4,並びに被告P4が新たに設立した会社である被告インターステラー及びその取締役である被告P5に対し,原告が被告ピー・エム・エーから依頼を受けて作成した,同被告のウェブサイト
(1risekabu.com/ 以下「原告ウェブサイト」という。)を,被告らが無断で複製し,新たなウェブサイト(risekabu.com/ 別紙被告著作物目録記載1。以下「被告ウェブサイト」という。)及びこれと一体となった動画配信用のウェブサイト(https://plusone.socialcast.jp/ 別紙被告著作物目録記載2。以下「本件動画ウェブサイト」という。)を制作してインターネット上に公開したことが,原告の著作権及び著作者人格権の侵害並びにその他不法行為に当たると主張し,著作権法112条1項,2項に基づき,(1)被告ウェブサイト及び本件動画ウェブサイトの複製,翻案又は公衆送信の差止め,(2)被告ウェブサイト及び本件動画サイトの削除,並びに,(3)民法709条,719条,会社法429条1項に基づく損害賠償請求又は原告と被告ピー・エム・エーとの契約に基づく請求として,1260万円及びこれに対する不法行為の後の日又は請求日の翌日である平成30年7月14日(被告らに対する最終の訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの遅延損害金の支払を請求する事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H27.10 被告が原告にサーバ移管業務発注
H28.04 被告が原告にサイト制作業務発注
H28.10 サイト公開
H29.12 サーバ更新費用未払いでサイト閲覧不可
H30.01 被告が新たにサイト制作、公開

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■判決内容

<争点>

1 複製権、翻案権侵害の成否

(1)原告ウェブサイトの制作による著作権の帰属

(ア)契約内容の合理解釈

裁判所は、ウェブサイトの制作について、原被告間で本件制作業務委託契約を締結し、例えば原告ウェブサイトの権利を原告に留保して原告が被告に使用を許諾し使用料を収受するといった形式をとっておらず、また、ウェブサイトの制作に対して対価324万円を支払う旨を約しており、原告がウェブサイトを制作して被告のウェブサイトとして公開された時点でその引渡しがあったものとして、ウェブサイトに係る権利は原告が制作したり購入したりした部分を含めて全体として被告(被告ピー・エム・エー)に帰属したと解するのが相当であると判断しています(30頁以下)。

(イ)保守業務委託契約の規定

本件保守業務委託契約には同契約に基づいて原告が制作したウェブサイトの著作権その他の権利が原告に帰属する旨の規定(14条2項)がありました。
この点について、裁判所は、同条項がその後に締結された本件制作業務委託契約に当然に適用されるわけではないと判断しています(32頁以下)。
また、本件制作業務委託契約に関連して、注文書の仕様欄には、全面リニューアル後の成果物の著作権その他の権利は制作者の原告に帰属するものとする旨の記載がありましたが、その点についての合意があったと認定されていません。

(ウ)権利濫用

裁判所は、仮にウェブサイトの一部に原告の著作物と認めるべき部分が存在する場合であったとしても、原告がその部分の著作権を理由に被告ウェブサイトに対する権利行使をすることは権利の濫用に当たり許されないと判断しています(33頁以下)。

結論として、被告ピー・エム・エーがウェブサイトを本件サーバから別のサーバに移転して被告ウェブサイトとして公開することや業務内容の変更等に応じてウェブサイトの記載内容を変更することについて、裁判所は、原告は著作権を主張することはできないものと解すべきであり、被告らに対する原告の著作権侵害に基づく請求は理由がないと判断しています。

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2 著作者人格権侵害の成否

原告は、被告らがウェブサイトの著作権を侵害する行為及び原告の同意を得ずに被告ウェブサイトを公表したこと、また、被告ウェブサイトに原告の氏名を表示しなかったこと、さらには被告ウェブサイトの「ログイン」ボタンを押すと本件動画ウェブサイトに遷移するようウェブサイトを改変したことが原告の著作者人格権を侵害すると主張しましたが、裁判所は認めていません(36頁)。

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3 一般不法行為論など

原告は、被告らの行為が一般不法行為及び不正競争防止法違反(営業秘密の不正使用)に当たると主張しましたが、裁判所は、具体的事実の主張はなされておらず、当該不法行為と本件における差止め・削除請求及び損害賠償請求との関係は判然とせず、また、営業秘密性についての立証もないとして、原告の主張を認めていません(36頁以下)。

そのほか、本件保守業務委託契約の未払報酬、本件制作業務委託契約の違約金又は未払金に関する損害賠償請求も認められていません。

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■コメント

契約書や注文書の規定には、受注側に著作権が留保されている内容の体裁となっていましたが、サイト制作の経緯やサイトの性質、また受注側である原告の不適切な対応などから、裁判所は書面の文言よりも取引実態に即した解釈を行って著作権の発注側への移転、あるいは、権利濫用の抗弁を肯定しています。
(なお、サイト制作による納品物の著作物性は判断されていません。)

ドメイン失効、サーバの更新費用の支払いを徒過しても一定期間内であれば復旧は可能ですが、通常、サイト制作業者は元データを納品後もある程度の期間は保持していると推察され、復旧作業にサイト制作と同額以上の報酬(434万円)を改めて要求するのは不合理な態度であると判断されても仕方がないと思われます。
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2019年10月01日

SUQSUQ対JASRAC事件−著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件等判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

SUQSUQ対JASRAC事件

知財高裁令和1.9.18平成31(ネ)10035等著作権侵害差止等請求控訴事件、同附帯控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    山門 優
裁判官    高橋 彩

*裁判所サイト公表 2019.9.27
*キーワード:演奏権、ジャスラック、将来給付の訴え

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■事案

飲食店舗でのバンド生演奏に関する使用料徴収を巡る事案

控訴人兼附帯被控訴人(1審被告):飲食店経営者ら
被控訴人兼附帯控訴人(1審原告):JASRAC

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■結論

一部変更

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■争点

条文 著作権法38条

1 侵害主体性
2 著作権法38条1項該当性
3 損害額

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■事案の概要

『(1)本件は,著作権等管理事業者である被控訴人が,控訴人らに対し,被控訴人との間で利用許諾契約を締結しないまま,(1)控訴人Xが,平成20年6月18日から平成27年1月22日までの間「Music LoungeSUQSUQ」(旧SUQSUQ)の,平成27年7月9日から同年11月30日までの間「LIVE BAND PARADISE」(PARADISE)の実質的経営者として,(2)控訴人らが,平成27年12月7日から現在に至るまで,「Music Lounge SUQSUQ」(現SUQSUQ)の実質的経営者として,それぞれ上記各店において,楽曲につき演奏,歌唱ないしカラオケ機器により使用した行為が,被控訴人が著作権を管理する著作物(管理著作物)の演奏権ないし上映権侵害に当たると主張して,控訴人らに対し,〈1〉著作権法112条1項に基づいて,現SUQSUQにおける管理著作物の演奏・歌唱による使用の差止めを求めるとともに,〈2〉主位的に著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として,予備的に不当利得返還請求として,i)控訴人Xにつき,上記各店における平成20年6月18日から平成28年10月31日までの使用料相当額及び弁護士費用から既払金8万7480円を控除した残額472万0620円(このうち52万2720円の限度で控訴人Yと連帯して)並びにこれに対する不法行為以後又は請求の日の翌日である平成28年12月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金又は利息金,ii)控訴人Yにつき,現SUQSUQにおける平成27年12月7日から平成28年10月31日までの使用料相当額及び弁護士費用52万2720円並びにこれに対する不法行為以後又は請求の日の翌日である同年12月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金又は利息金,iii)控訴人らにつき,現SUQSUQにおける同年11月1日から管理著作物の使用終了に至るまで,連帯して,月4万3200円の割合による将来の使用料相当額の各支払を求める事案である。』

『(2)原判決は,控訴人らが管理著作物の演奏主体に当たると判断して,〈1〉被控訴人の差止め請求を認容し,〈2〉金銭請求について,i)控訴人Xにつき,平成20年6月18日から平成28年10月31日までの不法行為についての損害賠償金から既払金を控除した残額477万0876円(このうち51万3216円の限度で控訴人Yと連帯して)及びこれに対する不法行為以後である同年12月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,ii)控訴人Yにつき,控訴人Xと連帯して,平成27年12月7日から平成28年10月31日までの不法行為についての損害賠償金51万3216円及びこれに対する不法行為以後である同年12月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,iii)控訴人らにつき,連帯して,同年11月1日から平成30年11月15日(原審口頭弁論終結日)までの不法行為についての損害賠償金105万8400円の各請求を認め,同月16日から上記著作物の使用終了に至るまでの不法行為に基づく損害賠償金又は不当利得金の将来請求に係る部分を却下し,その余の請求を棄却した。』

『(3)控訴人らは,被控訴人の請求を認容した部分を不服として控訴した。また,被控訴人は将来請求について却下した部分及び被控訴人の請求を棄却した部分を不服として附帯控訴した上で,〈2〉のi)の控訴人Xに対する請求を473万8677円(このうち52万2720円の限度で控訴人Yと連帯して)及びこれに対する平成28年12月14日から支払済みまで年5分の割合による金員の請求に,〈2〉のiii)の控訴人らに対する将来請求について月4万7520円の割合による請求に,それぞれ拡張した。』
(3頁以下)

原審:静岡地方裁判所平成28年(ワ)第907号

<経緯>

2008.06 店舗開業
2014.09 原告が静岡地裁に仮処分命令申し立て
2015.01 仮処分決定、執行
2015.04 被告が仮処分決定取消し申し立て
2015.05 和解成立、店舗廃業
2015.07 営業再開
2016.11 原告が静岡地裁に本件提訴

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■判決内容

<争点>

1 侵害主体性

控訴人らの管理著作物の著作権侵害主体性に関する原審の判断が控訴審でも維持されています(16頁以下)。

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2 著作権法38条1項該当性

権利制限規定である38条1項(営利を目的としない上演等)の適用の肯否について、控訴審は非適用と判断しています(18頁)。

結論として、控訴人Xが本件店舗の本件各店において管理著作物に係る著作権を侵害したこと、控訴人Yは現SUQSUQにおいて管理著作物に係る著作権を侵害したこと、また、控訴人らにおける著作権侵害についての故意があることが認定されています。

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3 損害額

控訴人X    470万4605円
控訴人Y     51万3523円
控訴人XY連帯 153万2903円
(19頁以下)

なお、将来給付の訴えに関わる請求については、却下の判断となっています(27頁以下)。

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■コメント

原審の内容が確認できていないので、詳細は不明ですが、
「本件仮処分決定の執行がされたため,控訴人Xは,自分の経営名義ではいつまでも演奏ができず,一旦廃業して他人の名義で営業を再開すれば,本件仮処分決定の執行の対象となった楽器等も使用できるようになると考え,旧SUQSUQを閉店し,Aに相談してAの名義でPARADISEを開店した」(17頁)
とあるように、経営主体を変更するなどして違法状態を継続した事案です。

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■参考サイト

JASRACプレスリリース
「社交場の経営者らに対し著作権侵害行為の差止めと損害賠償を請求」(2016年11月11日)
リリース
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2019年09月27日

FC2アダルト動画発信者情報開示請求事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

FC2アダルト動画発信者情報開示請求事件

東京地裁令和1.9.4令和1(ワ)11739発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官    三井大有
裁判官    今野智紀

*裁判所サイト公表 2019.9.24
*キーワード:発信者情報開示請求、著作者の推定

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■事案

アダルトビデオの違法アップロード事案について発信者情報開示がされた事案

原告:アダルトビデオ制作会社
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法23条、14条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 原告が本件作品の著作者であるか否か
2 原告が被告に対して被告保有情報の開示を請求し得るか否か

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■事案の概要

『本件は,原告が,インターネットの動画投稿サイトである「FC2動画」に原告が著作権を有する別紙作品目録記載の動画(以下「本件作品」という。)の一部を何者かが無断でアップロードしたことにより,原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかであるから,同アップロードをした者(以下「発信者」という。)への損害賠償請求権の行使等のために経由プロバイダである被告から発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるなどと主張して,被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,被告が保有する別紙発信者情報目録記載の発信者情報の開示を求める事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H30.09 本件作品を原告が販売
H30.09 原告が違法アップロードを発見
H30.11 米国ネバダ連邦地方裁判所に対してFC2社を相手方として情報開示申し立て
H30.12 FC2社が原告に対して本件IPアドレスを開示

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■判決内容

<争点>

1 原告が本件作品の著作者であるか否か

映画の著作物である本件作品のDVDのパッケージの裏面左下隅には「DEEP’S」の文字がそのロゴと共に表示されており、その下に「制作・著作・受審/ディープス」と表示されていることなどから、原告はこれをレーベル名として用いてアダルトビデオ作品を全国的に流通・販売しており、AV業界ではそのことが広く知られていると裁判所は認定。
原告の変名として周知の「ディープス」が著作者名として通常の方法により表示されているということができるとして、原告は本件作品の著作者と推定され、その推定を覆すに足りる証拠は存在しないとして、原告が本件作品の著作者であると判断しています(4頁)。

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2 原告が被告に対して被告保有情報の開示を請求し得るか否か

裁判所は、発信者が本件作品の一部の抜粋である本件動画を本件ウェブページにアップロードして送信可能化したことにより、原告の本件作品に係る著作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかであると判断。
また、FC2社が原告に開示した本件IPアドレスは発信者が本件動画をアップロードした際のIPアドレスであることが認められるとして、被告保有情報は原告の上記公衆送信権の侵害に係る発信者情報に当たると判断。
そして、原告は発信者に対して不法行為に基づく損害賠償等の請求をする予定であるから、そのために上記発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると裁判所は認定。
結論として、原告は被告に対してプロバイダ責任制限法4条1項に基づいて被告保有情報の開示を請求することができると判断しています(4頁以下)。

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■コメント

アダルト動画の海賊版対策に関わる発信者情報開示の事案となります。
ちなみに令和元年に入っての提訴で9月の判決なので、迅速な対応です。

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■過去のブログ記事

FC2動画アダルトサイト無断配信事件4
東京地裁平成31.3.27平成30(ワ)34818発信者情報開示請求事件
アダルトビデオ海賊版発信者情報開示請求事件
東京地裁平成31.4.17平成30(ワ)38035発信者情報開示請求事件
アダルト動画発信者情報開示請求事件
東京地裁令和1.5.23平成30(ワ)39200発信者情報開示請求事件
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2019年09月20日

夜景写真発信者情報開示事件(対NTTぷらら)−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

夜景写真発信者情報開示事件(対NTTぷらら)

東京地裁令和1.6.26平成31(ワ)1955発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 山田真紀
裁判官    神谷厚毅
裁判官    矢野紀夫

*裁判所サイト公表 2019.−−
*キーワード:発信者情報開示、写真、著作物性、引用

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■事案

夜景写真が無断でネット掲載されたとして発信者情報開示請求がされた事案(対NTTぷらら案件)

原告:写真家
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法21条、23条、32条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 本件投稿による権利侵害の明白性
2 本件発信者情報が本件投稿による侵害に係る発信者情報であるといえるか
3 開示を求める正当な理由の有無

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■事案の概要

『本件は,原告が,電気通信事業を営む被告に対して,被告の電気通信設備を経由してされたインターネット上のウェブサイトへの写真の掲載によって,当該写真についての原告の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたことが明らかであり,別紙1発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)が,その侵害に係る発信者情報であって,上記の掲載をした者(以下「本件投稿者」という。)に対する損害賠償請求を行うために被告の保有する発信者情報の開示が必要であるとして,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づいて,本件発信者情報の開示を求める事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H30.7 本件投稿者が「みんカラ」に本件画像を投稿

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■判決内容

<争点>

1 本件投稿による権利侵害の明白性

(1)本件画像の著作物性、原告の著作権

本件画像は夕方に横浜ベイブリッジを中心とする風景を撮影した写真でしたが、裁判所は、原告が本件画像の撮影者であり、本件画像は著作物性もあると判断。
原告が本件画像の著作者、著作権者であると認めています(5頁以下)。

(2)引用の肯否

被告は、本件投稿者が本件画像を本件記事内で使用したのは引用に当たり、公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内で行われたものであるから、著作権法32条1項により著作権侵害は成立しない旨反論しましたが、裁判所は被告の主張を認めていません(6頁以下)。

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2 本件発信者情報が本件投稿による侵害に係る発信者情報であるといえるか

被告が保有する別紙2侵害情報目録記載のIPアドレスの評価について、結論として、裁判所は、本件発信者情報は本件投稿による侵害に係る発信者情報と認めています(7頁以下)。

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3 開示を求める正当な理由の有無

原告は、本件投稿者に対して本件画像の著作権侵害について不法行為に基づく損害賠償請求をする意思を有しており、そのためには被告が保有する本件発信者情報の開示を受ける必要があるものと認められるとして、裁判所は、その開示を受けるべき正当な理由があると判断しています(9頁)。

結論として、原告の請求が認容されています。

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■コメント

夜景写真家岩崎拓哉氏(https://www.yakei-photo.jp/)から、対NTTぷらら案件の判決文が裁判所サイトで公開されたことをお伝えいただき、またコメントをお寄せいただきました。

「本件は、ブログを管理するコンテンツプロバイダ側が投稿時刻のログ(IPアドレス)を保有しない不利な状況下であり、本人訴訟で顧問弁護士に相談をしながら進め、無事に勝訴して発信者情報が開示されました。」

別訴の対エキサイト事案(東京地裁平成31.4.17平成31(ワ)2413発信者情報開示請求事件)と同様、請求認容の結論となりますが、対エキサイト事案に比べると(対象となる風景は異なりますが)、本件では被告は夜景写真の著作物性を正面から否定しており、夜景写真への理解を示さず、また、写真の著作物性を巡る近時の裁判例の動向を踏まえておらず、その主張は空々しい印象を受けます。

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■過去のブログ記事

夜景写真発信者情報開示事件(対エキサイト)
東京地裁平成31.4.17平成31(ワ)2413発信者情報開示請求事件
記事
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2019年09月02日

「ツェッペリン飛行船と黙想」事件(控訴審)3−著作権 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「ツェッペリン飛行船と黙想」事件(控訴審)3

知財高裁令和1.8.7平成31(ネ)10026損害賠償請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    高橋 彩
裁判官    菅 洋輝

*裁判所サイト公表 2019.8.26
*キーワード:編集著作者性

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■事案

書籍の編集著作者性が争点となった事案の控訴審

控訴人(1審原告) :個人
被控訴人(1審被告):出版社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条2項、12条

1 控訴人が本件書籍の編集著作者であるか否か

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■事案の概要

『本件は,控訴人が,編集著作物である原判決別紙書籍目録記載の書籍(本件書籍)の編集著作者であるところ,被控訴人による本件書籍の複製及び販売は,控訴人の有する編集著作物に係る編集著作権(複製権及び譲渡権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害する行為である旨主張して,被控訴人に対し,著作権及び著作者人格権侵害の不法行為に基づく損害賠償金215万2000円(印税相当額の損害15万2000円及び慰謝料200万円の合計額)及びこれに対する不法行為の日である平成24年12月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,著作権法115条に基づき,編集著作者としての名誉及び声望の回復措置として謝罪広告等の掲載を求める事案である。』

『原審は,控訴人の請求をいずれも棄却したところ,控訴人がこれを不服として控訴するとともに,当審において,控訴の趣旨2項にかかる謝罪広告等を求める内容につき訴えを変更した。』
(1頁以下)

原審:横浜地方裁判所川崎支部平成30年(ワ)第476号

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■判決内容

<争点>

1 控訴人が本件書籍の編集著作者であるか否か

控訴人は、控訴審における補充主張として、編集著作物において素材の選択、配列を決定した者は問題とならず、配列を行ったのは控訴人であるなどと主張しました(4頁以下)。
この点について、控訴審は、

『しかしながら,控訴人の主張が,決定権限を持たずに素材の配列に関与した者,例えば,単なる原案,参考案の作成者や,相談を受けて参考意見を述べた者までがおよそ編集著作者となるというものであるとすれば,そのような主張は,著作者の概念を過度に拡張するものであって,採用することはできない。また,本件において本件書籍の分類項目を設け,選択された作品をこれらの分類項目に従って配列することを決定したのが被控訴人であることは先に引用した原判決認定のとおりであって,当審における控訴人の主張を踏まえてもかかる認定は左右されない。』

と判断。また、控訴人は、被控訴人の前件訴訟における訴訟行為を捉えて本件において被控訴人は自分自身が編集著作者であると主張することは許されないなどと主張しました。
この点についても控訴審は、

『しかしながら,そもそも控訴人が前提とするところの,前件訴訟において被控訴人が編集著作者でないと自白し,本件書籍が編集著作物であれば控訴人が編集著作者であると認めたなどとする事実関係を裏付ける証拠はないから,控訴人の主張はその前提を欠くものである。かえって,控訴人による本件訴訟は,前件訴訟においてAが敗訴したことを受けて,原告を控訴人とするとともに,Aは控訴人の代理人であったなどとして,実質的には前件訴訟と同様の事実関係の主張を繰り返すものに過ぎず,前件訴訟の蒸し返しであるといわざるを得ない。』

として、控訴人の主張を認めていません。
結論として、控訴審でも原審の判断を維持しています。

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■コメント

原審の内容が分からないため正確には把握できませんが、「ツェッペリン飛行船と黙想」事件の関係者による3つ目の訴訟ではないかと推測されます。

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■過去のブログ記事

知財高裁平成28.1.27平成27(ネ)10022損害賠償等請求控訴事件
「ツェッペリン飛行船と黙想」事件(控訴審)

知財高裁平成30.3.19平成30(ネ)10008独立当事者参加事件
「ツェッペリン飛行船と黙想」独立当事者加事件2

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2019年08月26日

コンタクトレンズ販売チラシ事件(控訴審)−著作権 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

コンタクトレンズ販売チラシ事件(控訴審)

大阪高裁令和1.7.25平成31(ネ)500損害賠償請求控訴事件PDF

大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 山田陽三
裁判官    倉地康弘
裁判官    久保井恵子

*裁判所サイト公表 2019.8.
*キーワード:チラシ、著作物性、競業避止義務違反、一般不法行為論

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■事案

コンタクトレンズ販売用のチラシの著作物性などが争点となった事案の控訴審

控訴人(1審原告) :コンタクトレンズ販売会社
被控訴人(1審被告):コンタクトレンズ販売会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号

1 本件チラシの著作物性
2 従業員の引抜きによる不法行為の成否
3 被控訴人の競業避止義務違反性
4 被告チラシの作成、頒布は控訴人の営業上保護された法的利益を侵害する不法行為に該当するか

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■事案の概要

『本件は,いずれもコンタクトレンズ販売店の経営等を行う会社である控訴人と被控訴人の間の損害賠償請求の事案である。
 控訴人は,被控訴人に対し,(1)被控訴人の頒布しているチラシが控訴人の著作権(複製権及び翻案権)及び著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)を侵害しているとして不法行為に基づき損害金178万2000円及びこれに対する不法行為の後であるとする平成29年8月18日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,(2)被控訴人が控訴人の従業員を違法に引き抜いたとして不法行為に基づき損害金192万2092円及びこれに対する上記(1)と同様の遅延損害金の支払を求め,(3)被控訴人は控訴人との間のフランチャイズ契約又は信義則に基づき競業避止義務を負っているにもかかわらず,これに違反して控訴人の販売店の隣に販売店を設けて顧客を自店に誘導するなどしたので,債務不履行又は不法行為が成立し,競業避止義務を負わないとしても自由競争を逸脱する違法な競業行為による不法行為が成立するとして損害金550万円(ただし,損害の一部であるとする。)及びこれに対する請求の日の翌日である上記(1)と同じ日から支払済みまで商事法定利率年6分(不法行為に基づく場合は民法所定の年5分)の割合による遅延損害金の支払を求めている。
 原審が控訴人の請求をいずれも棄却したため控訴人が控訴し,当審において上記(1)について請求原因を追加し,当該チラシの頒布による不法行為の保護法益は,著作権及び著作者人格権にとどまらず,控訴人の営業上保護された法的な利益一般でもあると主張した。』
(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件チラシの著作物性
2 従業員の引抜きによる不法行為の成否
3 被控訴人の競業避止義務違反性

争点1から3まで、結論について原審の判断が控訴審でも維持されています(5頁以下)。

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4 被告チラシの作成、頒布は控訴人の営業上保護された法的利益を侵害する不法行為に該当するか

控訴審で追加された争点ですが(6頁以下)、控訴人は本件チラシが著作物と認められないとしても被告チラシの作成、頒布は控訴人に対する不法行為を構成すると主張しました。
この点について、控訴審は控訴人の主張を認めていません。

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■コメント

控訴審でも原審の判断が維持されています。

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■過去のブログ記事

大阪地裁平成31.1.24平成29(ワ)6322損害賠償請求事件
原審記事
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2019年08月16日

報道写真発信者情報開示請求事件2−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

報道写真発信者情報開示請求事件2

東京地裁令和1.7.30平成31(ワ)8400発信者情報開示請求事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 田中孝一
裁判官 奥 俊彦
裁判官 本井修平

*裁判所サイト公表 2019.8.7
*キーワード:写真、著作物性、法人著作、引用

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■事案

聖教新聞掲載の画像が無断でウェブサイトに掲載されたことから発信者情報開示請求がされた事案

原告:宗教法人
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、15条、32条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 本件写真の著作物性
2 本件写真の著作者が原告であること
3 著作権法32条1項の引用が成立しないこと
4 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告の提供するインターネット接続サービスを介してインターネット上のウェブサイトに投稿された別紙投稿記事目録記載の投稿記事(以下「本件記事」という。)中の写真は,原告が著作権を有する別紙写真目録の写真(以下「本件写真」という。)と実質的に同一のものであるから,本件記事を投稿した行為は本件写真に係る原告の著作権(公衆送信権)を侵害するものであることが明らかであるとして,経由プロバイダである被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき,本件記事の投稿に関する別紙発信者情報目録記載の情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H30.11 Aが本件写真を撮影、聖教新聞に掲載

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■判決内容

<争点>

1 本件写真の著作物性

本件写真の著作物性(著作権法2条1項1号)について、裁判所は、「本件写真は世界広布新時代第39回本部幹部会の様子を撮影したものであるところ,講演者とともに,参加者及び会場のおおむね全体が写るように講演者の斜め後方から撮影されており,被写体の選択,構図,カメラアングル等に撮影したAの個性が表れているものと認められる。したがって,本件写真は思想又は感情を創作的に表現したものとして,その著作物性が肯定できるものというべきである。」として肯定しています(5頁)。

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2 本件写真の著作者が原告であること

本件写真は、原告の発意に基づき、原告の業務に従事する者が職務上作成した著作物であって原告が自己の著作の名義の下に公表したものと認められ、原告の就業規則に別段の定めもないことから、著作権法15条1項に基づき本件写真の著作者は原告であると裁判所は判断しています(5頁)。

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3 著作権法32条1項の引用が成立しないこと

被告は引用の成立を主張しましたが、裁判所は、投稿者の主張、意見が判然とせず、本件写真を引用する必要性が認められないとして、引用の成立を否定しています(6頁以下)。

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4 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無

本件記事の投稿によって本件写真に係る原告の公衆送信権が侵害されたことは明らかであり、また、原告が本件記事の投稿者に対する損害賠償請求等を行うために被告に対して本件発信者情報の開示を求めることには正当な理由があると裁判所は判断(6頁以下)。

結論として、原告の請求を認容しています。

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■コメント

類似の発信者情報開示請求事案に関する別の法廷での判断となります。

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■過去の関連ブログ記事

東京地裁令和1.5.17平成30(ワ)6060発信者情報開示請求事件
報道写真発信者情報開示請求事件
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2019年08月01日

ミスチル楽曲無断配信事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ミスチル楽曲無断配信事件

東京地裁令和1.6.19平成31(ワ)7965発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官    三井大有
裁判官    今野智紀

*裁判所サイト公表 2019.ーー
*キーワード:レコード製作者、著作隣接権、発信者情報開示請求

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■事案

ファイル交換共有ソフトウェアShareを利用してミスチルの楽曲を配信した者に関する発信者情報開示請求事件

原告:レコード会社
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法96条の2、プロバイダ責任制限法4条1項

1 著作権侵害性、開示の必要性

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■事案の概要

『本件は,実演家Mr.Childrenが歌唱する楽曲を録音したレコードの送信可能化権を有すると主張する原告が,経由プロバイダである被告に対し,氏名不詳者が上記レコードを圧縮して複製したファイルをコンピュータ内の記録媒体に記録して蔵置し,被告の提供するインターネット接続サービスを経由して自動公衆送信し得る状態にした行為により,上記送信可能化権を侵害されたことが明らかであるとして,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,上記著作権侵害行為に係る別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 著作権侵害性、開示の必要性

被告は、著作権(レコード製作者の送信可能化権)侵害性や情報開示の必要性について不知ないし争う姿勢を示しましたが、裁判所は、原告は本件レコードの送信可能化権を侵害した本件発信者に対して損害賠償請求権や差止請求権を行使する必要があるとして、本件発信者情報の開示を受ける正当な理由があると判断(3頁以下)。
結論として、原告の請求を認容しています。

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■コメント

実演家Mr.Childrenが歌唱する楽曲「Printing」ほか全12曲を収録した平成6年9月1日発売のアルバム「Atomic Heart」がファイル交換ソフトで配信された事案となります。
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2019年07月31日

報道写真発信者情報開示請求事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

報道写真発信者情報開示請求事件

東京地裁令和1.5.17平成30(ワ)6060発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官    吉野俊太郎
裁判官    今野智紀

*裁判所サイト公表 2019.ーー
*キーワード:写真、著作物性、発信者情報開示請求

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■事案

報道写真の著作物性などが争点となった事案

原告:宗教法人
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 本件写真が著作物に当たるか
2 原告は本件写真の著作権者かどうか
3 本件各投稿写真は本件写真を複製したものか

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■事案の概要

『本件は,原告が,経由プロバイダである被告に対し,氏名不詳者らが,インターネット上のウェブサイトに原告が著作権を有する写真を掲載し,原告の公衆送信権を侵害したことが明らかであるとして,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づき,当該著作権侵害行為に係る別紙発信者情報目録記載の発信者情報の開示を求める事案である。』(1頁以下)

本件写真:平成30年8月22日付け聖教新聞に掲載された写真

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■判決内容

<争点>

1 本件写真が著作物に当たるか

本件写真は、原告の名誉会長夫妻が原告の施設に赴いた際に数十名の原告会員らが同施設前において同夫妻らに拍手をし、同夫妻らがこれに車中から応じる場面を撮影した報道写真でした。
本件写真の著作物性(著作権法2条1項1号)について、裁判所は、「時間的に動きがあり,空間的にも広がりがある場面を効果的に表現するため,撮影のアングル,シャッタースピード,タイミング,絞りなどにおいて工夫がされている」と認定。
本件写真は、撮影者の個性が現れており、撮影者の思想又は感情を創作的に表現した著作物に当たると判断しています(4頁)。

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2 原告は本件写真の著作権者かどうか

原告の聖教新聞社(原告の機関紙等の出版等の収益事業を行う部門)の職員であったAが、原告の業務として本件写真を撮影したこと、本件写真は聖教新聞社が平成30年8月22日付けで発行した聖教新聞のB名義のコラム上に掲載されたが、原告の就業規則には「職員が職務上の行為として著作した著作物の著作権は、法人に帰属する。」と規定されていると裁判所は認定。
本件写真は、原告の「職員が職務上の行為として著作した著作物」として、結論としては、原告がその著作権を有すると認めています(4頁以下)。

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3 本件各投稿写真は本件写真を複製したものか

本件写真と本件各投稿写真を比較すると、原告名誉会長夫妻及び会員の配置、姿勢、背景、色彩、撮影アングルなどにおいて同一であるということができるとして、裁判所は、本件各投稿写真は本件写真を複製したものであると判断(5頁)。

結論として、本件発信者らが本件各記事に本件各投稿写真を掲載したことによって原告の著作権(送信可能化権)が侵害されたことが明らかであり、原告は本件発信者らに対して著作権(送信可能化権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権等を有し、その権利を行使するために本件発信者情報の開示が必要であると判断。
原告の主張を認容しています。

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■コメント

ここ数年で写真の著作物性で否定の判断が裁判所で示されたのは、メガネ商品広告写真事件(知財高裁平成28.6.23平成28(ネ)10025売掛金請求控訴事件)でのメガネの商品広告写真、一竹辻が花美術館グッズ事件(東京地裁平成30.6.19平成28(ワ)32742著作権侵害差止等請求事件)の際の館内や美術館外観の写真といった程度ですが、スナップ写真の類いの写真については著作物性(創作性)が争点にならない日が早く来て欲しいと思っています。

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■過去のブログ記事

池田名誉会長写真発信者情報開示請求事件
東京地裁平成31.4.10平成30(ワ)38052発信者情報開示請求事件
2019年06月15日記事
written by ootsukahoumu at 05:59|この記事のURL

2019年07月30日

アダルト動画発信者情報開示請求事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

アダルト動画発信者情報開示請求事件

東京地裁令和1.5.23平成30(ワ)39200発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    安岡美香子
裁判官    古川善敬

*裁判所サイト公表 2019.ーー
*キーワード:動画、発信者情報開示請求

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■事案

アダルト動画が無断でネット配信されたことから発信者情報開示請求がされた事案

原告:アダルト映画製作販売会社
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 発信者情報開示請求の肯否

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■事案の概要

『本件は,映画の著作物について著作権を有すると主張する原告が,一般利用者に対してインターネット接続プロバイダ事業等を行っている被告に対し,被告の提供するインターネット接続サービスを経由して上記映画を何者かが動画共有サイトにアップロードした行為によって原告の公衆送信権(著作権法23条1項)が侵害されたと主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である。』(1頁以下)

本件著作物:の「グラビアアイドル究極進化!1年で開発された神BODY!大痙攣イキまくり乱交解禁スペシャル!A」
発売日:平成29(2017)年9月1日
メーカー:MOODYZ(ムーディーズ)

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■判決内容

<争点>

1 発信者情報開示請求の肯否

原告が本件著作物の著作権者であり、本件利用者によって本件著作物がファイル交換共有ソフトウェアを利用してアップロードされたことによって送信可能化状態に置かれ、著作権侵害があったこと、損害賠償請求を行使するにあたり、本件利用者の氏名、住所等を覚知する必要があることなどから、原告の主張を裁判所は認めています(3頁以下)。

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■コメント

原告による違法配信対策が続いています。
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2019年07月29日

夜景写真発信者情報開示事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

夜景写真発信者情報開示事件

東京地裁平成31.4.17平成31(ワ)2413発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官    三井大有
裁判官    今野智紀

*裁判所サイト公表 2019.ーー
*キーワード:発信者情報開示、写真、著作物性

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■事案

夜景写真が無断でネット掲載されたとして発信者情報開示請求がされた事案

原告:写真家
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法21条、23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 本件各画像の著作物性
2 原告の著作者性
3 権利侵害の明確性、開示の必要性

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,氏名不詳者が,被告が運営するブログサービスにおけるウェブサイト上に原告が著作権を有する写真をアップロードし,原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害したことが明らかであるとして,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,上記著作権侵害行為に係る別紙1発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。』
(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件各画像の著作物性

本件各画像は、いずれも眺望した夜景を撮影したもので、本件画像1は長時間露光によって街明かりを写し込み、絞り込むことで手前の街明かりから遠くの街明かりまでピントが合うようにするなどして撮影されたものでした。
本件画像2は、シャッターを8秒間開けて被写体のカップルが止まった状態できれいに写るようにタイミングを見計らってシャッターを切るなどして撮影されたものでした。
本件各画像は、絞りやシャッターチャンスの捕捉、構図やアングルなどを工夫して撮影されたものであるとして、写真の著作物であると裁判所は認定しています(2頁以下)。

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2 原告の著作者性

原告が運営する「夜景INFO」という名称のウェブサイトに掲載された本件各画像の右下には、「Copyright(c)Night View Photographer X」と記載された著作権表示がされ、原告の姓と名のイニシャルにおいて一致していること、また、原告が本件各写真のデータを所持していることから、原告が本件各画像を撮影した著作者であり、その著作権を有する者と裁判所は認定しています(3頁)。

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3 権利侵害の明確性、開示の必要性

本件発信者による本件各写真の画像データの入手先は、原告ウェブサイト以外に考え難いことから、本件発信者は原告ウェブサイトから本件各写真の画像ファイルを複製した上で本件ブログページに掲載(アップロード)して上記画像ファイルを送信可能化したものと裁判所は判断。
原告は、本件発信者に対して著作権(複製権、送信可能化権)侵害を理由とする損害賠償請求権を有するところ、原告が本件発信者に対してその権利を行使するためには本件発信者情報の開示が必要であるとして、裁判所は原告の主張を認容しています(3頁)。

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■コメント

原告の写真家はサイト「夜景INFO」を運営されている岩崎拓哉さんかと思われます。
レタッチもされていて、写真の著作物性については特段問題は生じないかと考えられます。
実際、旅行雑誌の編集者に聞くと、夜景のショットは難しく、手間暇掛かるということで、夜景専門のカメラマンに依頼することもあるそうです。

■追記(2019年7月29日)
夜景写真家岩崎拓哉さんから情報を頂きました。
別件で対NTTぷらら案件があるそうで、控訴はなく情報が開示され、発信者と交渉中とのことです。

東京地裁令和元年6月26日平成31年(ワ)1955発信者情報開示請求事件
東京地裁民事29部
written by ootsukahoumu at 06:07|この記事のURL

2019年07月27日

BSS−PACK著作権譲渡契約錯誤事件(控訴審)−著作権 プログラム著作権確認並びに著作権侵害差止請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

BSS−PACK著作権譲渡契約錯誤事件(控訴審)

知財高裁令和1.7.10平成31(ネ)10020プログラム著作権確認並びに著作権侵害差止請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    高橋 彩
裁判官    菅 洋輝

*裁判所サイト公表 2019.7.24
*キーワード:著作権譲渡、錯誤無効、公序良俗違反

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■事案

ソフトウェアの著作権譲渡契約の錯誤無効の成否が争点となった事案の控訴審

控訴人(1審原告) :ソフトウェア開発会社、代表取締役ら
被控訴人(1審被告):ソフトウェア開発会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 民法95条、90条

1 本件譲渡契約の全部又は一部が錯誤無効となるか否か
2 非登録プログラムに係るサンライズ社の履行請求権の消滅時効の成否等
3 本件譲渡契約の公序良俗違反(当審における追加主張)

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■事案の概要

『1 本件は,控訴人らが,原判決別紙対象プログラム目録記載1及び2の各プログラムの著作権(著作権法27条,28条に規定する権利を含む。以下,著作権に言及する場合,同様である。)を有するとして,被控訴人に対し,(1)上記著作権を有することの確認を求めるとともに,(2)被控訴人において被告製品を販売する行為が控訴人らの上記著作権を侵害すると主張して,著作権法112条1項に基づく被告製品の販売の差止め及び同条2項に基づく被告製品の廃棄等を求める事案である。
2 原審は,控訴人らの請求をいずれも棄却したところ,控訴人らがこれを不服として控訴した。』
(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件譲渡契約の全部又は一部が錯誤無効となるか否か
2 非登録プログラムに係るサンライズ社の履行請求権の消滅時効の成否等

争点1、2について、控訴審は、結論として原審の判断を維持しています。

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3 本件譲渡契約の公序良俗違反(当審における追加主張)

控訴人らは、本件合意の悪質性を強調して本件譲渡契約の公序良俗違反による無効をを主張しましたが、控訴審は、控訴人らの主張する事実関係をもってしても、直ちに公序良俗違反(民法90条)となるものではない上、そもそもサンライズ社の欺罔行為などといった上記主張に係る事実関係を裏付ける客観的証拠もないとして、控訴人らの主張を認めていません(8頁)。

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■コメント

公序良俗違反の争点が控訴審で追加されましたが、結論に変わりはありませんでした。

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■過去のブログ記事

東京地裁平成31.2.5平成30(ワ)13092プログラム著作権確認請求並びに著作権侵害差止請求事件
原審記事
written by ootsukahoumu at 09:17|この記事のURL

2019年07月26日

楽曲無断放送事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

楽曲無断放送事件

東京地裁平成31.4.26平成30(ワ)38579損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 山田真紀
裁判官    西山芳樹
裁判官    伊藤清隆

*裁判所サイト公表 2019.−−
*キーワード:−−

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■事案

楽曲が無断で放送されたなどとして著作権侵害性などを争点とした事案

原告:個人
被告:テレビ局ら

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法21条

1 著作権侵害性の有無

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■事案の概要

(原告の主張)
『(1)原告とBが作詞作曲した「ふみとやすおの歌」(以下「原告作品」という。)が言語及び音楽の著作物(著作権法10条1項1号,2号)に当たるところ,被告らが原告の許諾なくこれを変形するなどして放送したこと又はそのDVDを販売するなどしたことが原告の著作権(複製権,翻案権,同一性保持権又は公表権)の侵害であるとし,(2)原告を「暴走族」などと発言した映像を放送したこと又はそのDVDを販売するなどしたことが原告の名誉権の侵害であるとし,(3)原告のプライバシーを発言した映像を放送したこと又はそのDVDを販売するなどしたことが原告のプライバシーの侵害であるとし,(4)原告を殺害する趣旨を発言した映像を放送したこと又はそのDVDを販売するなどしたことが脅迫に該当するとし,(5)原告を「デーブー」などと発言した映像を放送したこと又はそのDVDを販売するなどしたことが侮辱に該当するとし,(6)「Aストップ」などと発言した映像を放送したこと又はそのDVDを販売するなどしたことが原告の人格権の一種である平穏生活権の侵害であるとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,被告らに対して,前記第1(請求)記載の金額の損害賠償金及び遅延損害金の支払を求めるものである(一部請求)。
 被告日本放送協会に対する請求については,本件第1回口頭弁論期日において,請求金額を別紙2訴額計算書記載の157万2464円から264万6384円に拡張した。』(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 著作権侵害性の有無

原告は、被告らが放送した映像又は販売するなどしたDVDの映像中に原告が指摘する発言が含まれており、これらが原告の著作権(複製権、翻案権、同一性保持権又は公表権)、名誉権、プライバシー又は平穏生活権を侵害し又は脅迫若しくは侮辱に該当すると主張して被告らが放送した映像又は販売するなどしたDVDの映像及びそれらの反訳書を提出しました。
この点について、裁判所は、事実認定として、収録音声にはその意味内容や表現として原告の名前を発言したものとも、原告の平穏生活権を侵害する発言とも、原告作品を発言したものとも認められないなどとして原告の主張を否定。原告の被告らに対する請求を認めていません。

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■コメント

原告の楽曲「ふみとやすおの歌」をネット検索してもヒットせず、どのような経緯の事案だったのか、本人訴訟ということもあり、よく分かりません。

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2019年07月25日

学習塾模試ウェブ解説事件−著作権 著作権に基づく差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

学習塾模試ウェブ解説事件

東京地裁令和1.5.15著作権に基づく差止等請求事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官    三井大有
裁判官    遠山敦士

*裁判所サイト公表 2019.7.22
*キーワード:編集著作物、模試、複製、翻案

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■事案

学習塾が作成した問題や解説の著作物性などが争点となった事案

原告:学習塾経営会社
被告:学習塾経営会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法12条、2条1項1号、21条、27条

1 本件問題及び本件解説の著作物性の有無
2 複製又は翻案該当性

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■事案の概要

『本件は,中学校の受験のための学習塾等を運営する原告が,同様に学習塾を経営する被告に対し,被告が,原告の許可なく,別紙1−1及び1−2の各問題及び別紙1−3及び1−4の「解答と解説」と題する各解説を複製して利用した行為が複製権侵害に当たると主張し,また,上記各問題及び上記各解説をインターネット上で動画配信している行為が翻案権侵害に当たると主張し,被告に対し,著作権法112条1項に基づき,上記動画等の配信の差止め及びその予防を求めるとともに,同法114条2項に基づき,損害賠償の一部請求として1500万円及びこれに対する不法行為後の日である平成30年6月13日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H30.04 原告が本件問題のテスト実施、本件解説を配布
    被告が同テスト終了後1時間後にウェブ上で本件問題について解説実施

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■判決内容

<争点>

1 本件問題及び本件解説の著作物性の有無

原告が制作した国語の読解問題について、同問題に係るテストの終了後に、被告の担当者等がウェブ上の動画において口頭でその解説をしましたが、本件問題及び本件解説が画面上に表示されることはありませんでした(10頁以下)。

(1)本件問題の編集著作物性

まず、本件問題の編集著作物性(著作権法12条)の有無について、裁判所は、題材となる作品の選択、題材とされた文章のうち設問に取り上げる文又は箇所の選択、設問の内容、設問の配列・順序について、作問者の個性が発揮されており、その素材の選択又は配列に創作性があると認めることができると判断。本件問題は編集著作物に該当するとしています。

(2)本件解説の著作物性

次に、本件解説について、裁判所は、

「本件問題の各設問について,問題の出題意図,正解を導き出すための留意点等について説明するものであり,各設問について,一定程度の分量の記載がされているところ,その記載内容は,各設問の解説としての性質上,表現の独自性は一定程度制約されるものの,同一の設問に対して,受験者に理解しやすいように上記の諸点を説明するための表現方法や説明の流れ等は様々であり,本件解説についても,受験者に理解しやすいように表現や説明の流れが工夫されるなどしており,そこには作成者の個性等が発揮されているということができる。」(11頁)

として、言語の著作物性(2条1項1号)を肯定しています。

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2 複製又は翻案該当性

被告は、複数の原告学習塾の生徒から問題の原本を入手して解説を行っている事実は認めるものの、問題を複製した事実は否認しており、本件においては被告が自ら本件問題及び本件解説文を複製したと認めるに足りる証拠はないとして、結論として裁判所は被告による複製の事実を認めていません(11頁以下)。
また、被告ライブ解説の本件問題の翻案性について、本件問題の全部又は一部の画像を表示しておらず、また、口頭で本件問題の全部又は一部を読み上げるなどの行為もしていないことから、被告ライブ解説は本件問題の本質的な特徴の同一性を維持しているということはできず、被告ライブ解説に接する者が本件問題の素材の選択又は配列に係る本質的な特徴を直接感得することができないと裁判所は判断。
結論として、被告ライブ解説の本件問題の翻案性を否定しています。

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■コメント

別紙を見ますと、対象となったのは、小学校6年生向け国語2種類、2018年4月15日実施「第1回志望校判別サピックスオープン」の問題と解説となります。
事実認定として被告学習塾による複製や翻案の事実が認められていませんが、権利侵害しないように、よほど被告学習塾は気をつけて解説動画配信を行ったことになります。事実認定について控訴審の判断が注目されます。
written by ootsukahoumu at 07:12|この記事のURL

2019年07月22日

アニソンP2P無断送信事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

アニソンP2P無断送信事件

東京地裁令和1.6.20平成31(ワ)2629発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 田中孝一
裁判官    横山真通
裁判官    奥 俊彦

*裁判所サイト公表 2019.7.17
*キーワード:レコード製作者、P2P、発信者情報開示

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■事案

P2P型ファイル交換共有ソフトShareを利用してアニメソングを送信した者の発信者情報開示を求めた事案

原告:レコード会社ら
被告:プロバイダ事業者

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法96条の2、プロバイダ責任制限法4条

1 本件各レコードの送信可能化権を侵害されたことが明らかであるか
2 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか

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■事案の概要

『本件は,レコード製作会社である原告らが,自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ,氏名不詳者において,当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置し,インターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインターネット接続サービスを経由して自動的に送信し得る状態にして,原告らの送信可能化権を侵害したことが明らかであると主張して,被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,上記氏名不詳者に係る発信者情報の開示を求める事案である。』
(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 本件各レコードの送信可能化権を侵害されたことが明らかであるか

被告から別紙対象目録の「IPアドレス」欄記載のアイ・ピー・アドレスを割り当てられた氏名不詳者が、インターネットに接続し、それぞれ対応する同目録の「日時」欄の日時頃に本件交換ソフトを介して「ファイル名」欄記載のファイルを公衆からの求めに応じて自動的に送信し得る状態にしたことによって、「原告」欄記載の各原告が有する本件各レコードの送信可能化権(著作権法96条の2)を侵害したことが認められると裁判所は判断しています(4頁以下)。

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2 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか

被告は、被告からアイ・ピー・アドレスを割り当てられた氏名不詳者による本件各レコードの送信可能化権侵害との関係において、プロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たり、原告らが同侵害に基づく差止請求権や損害賠償請求権を行使するためには、上記氏名不詳者に係る発信者情報(氏名(又は名称)、住所及び電子メールアドレス)の開示を受ける必要があるとして、原告らにはその発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると裁判所は判断(5頁)。

結論としてプロバイダ責任制限法4条1項に基づく原告の請求を認容しています。

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■コメント

ソーシャルゲーム発祥の「アイドルマスターシンデレラガールズ」の楽曲「Absolute NIne」やTVアニメ「おしえて!ギャル子ちゃん」主題歌「YPMA☆GIRLS」といった楽曲のP2P利用無断送信の事案となります。
written by ootsukahoumu at 06:37|この記事のURL

2019年07月19日

「BAO BAO ISSEY MIYAKE」ブランド鞄形態模倣事件−著作権 不正競争行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「BAO BAO ISSEY MIYAKE」ブランド鞄形態模倣事件

東京地裁令和1.6.18平成29(ワ)31572不正競争行為差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    安岡美香子
裁判官    古川善敬

*裁判所サイト公表 2019.7.16
*キーワード:バッグ、商品等表示、美術の著作物、応用美術論、一般不法行為論

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■事案

バッグなどのデザインの著作物性が争点となった事案

原告:デザイン事務所、ファッションブランド会社
被告:装飾雑貨製造販売会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、同2項、10条1項4号、不正競争防止法2条1項1号、3条、4条、5条

1 原告商品の形態は商品等表示に該当するか
2 原告商品の形態は周知ないし著名か
3 被告商品の形態は原告商品の形態と類似して混同のおそれがあるか
4 原告商品1ないし6に著作物性が認められるか
5 本件ブランドに係る価値の毀損による損害賠償請求権の存否
6 損害論

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■事案の概要

『本件は,原告らが,三角形のピースを敷き詰めるように配置することなどからなる鞄の形態は,原告イッセイミヤケの著名又は周知の商品等表示であり,被告による上記形態と同一又は類似の商品の販売は不正競争防止法2条1項1号又は2号所定の不正競争行為に該当するとともに,同形態には著作物性が認められるから,被告による上記販売行為は原告らの著作権(複製権又は翻案権)を侵害するなどと主張して,被告に対し,(1)原告イッセイミヤケが,不正競争防止法3条1項,2項又は著作権法112条1項,2項に基づき,原告デザイン事務所が著作権法112条1項,2項に基づき,それぞれ上記商品の製造・販売等の差止め及び商品の廃棄を,(2)原告イッセイミヤケが,不正競争防止法4条,5条1項又は民法709条,著作権法114条1項に基づき損害の一部である1億1000万円及びこれに対する不法行為後の日である平成29年10月4日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,(3)原告デザイン事務所が,主位的に不正競争防止法4条又は民法709条(著作権侵害)に基づき,予備的に民法709条(一般不法行為)に基づき損害の一部である7199万5000円及びこれに対する上記(2)と同一の遅延損害金の支払を,(4)原告らが不正競争防止法14条又は著作権法115条に基づき謝罪広告の掲載を,それぞれ求める事案である。』
(2頁以下)

<経緯>

H22.09 原告イッセイミヤケが「BAO BAO ISSEY MIYAKE」ブランド(本件ブランド)展開
H28.09 被告が被告商品を販売

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■判決内容

<争点>

1 原告商品の形態は商品等表示に該当するか

裁判所は、原告商品の形態が商品等表示(不正競争防止法2条1項1号)に該当するかどうかについて、特別顕著性と周知性を検討(29頁以下)。
結論として、原告商品の本件形態1は、特別顕著性と周知性を具備し、商品等表示に該当すると判断しています。

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2 原告商品の形態は周知ないし著名か

裁判所は、原告商品の本件形態1は、遅くとも平成27年の時点で原告イッセイミヤケの出所を示すものとして全国の需要者に広く認識されていたと認めることができると判断しています(40頁)。

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3 被告商品の形態は原告商品の形態と類似して混同のおそれがあるか

8点の被告商品の形態が原告商品の形態と類似して混同のおそれがあるかについて、裁判所は、原告商品の形態と被告商品の形態は全体として類似すると判断。また、被告商品の形態は原告商品と出所の混同を生じさせると認定しています(40頁以下)。

結論として、被告による被告商品の販売行為は、不正競争法2条1項1号の不正競争行為に該当すると裁判所は判断しています。

そして、被告に対して同法3条1項に基づいて本件形態1を備えた被告商品の各形態のトートバッグ、ショルダーバッグ、リュックサック等の鞄及び袋物並びに携帯用化粧道具入れの譲渡、引き渡し、譲渡又は引き渡しのために展示し、輸入の差止め請求をすることができ、同条2項に基づいて侵害行為を組成した被告商品の廃棄請求が認められています。

また、被告には過失があることから、被告は原告イッセイミヤケに対して同法4条に基づいて侵害行為によって原告イッセイミヤケが受けた損害を賠償する責任を負うことが認められています。

なお、信用回復措置としての謝罪文の掲載の必要性は認められていません。

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4 原告商品1ないし6に著作物性が認められるか

原告商品1ないし6は、ショルダーバッグ、携帯用化粧道具入れ、リュックサック及びトートバッグであり、いずれも物品を持ち運ぶという実用に供される目的で同一の製品が多数製作されたものでしたが、原告らは、原告商品1ないし6の個々の商品のデザインは創作性の程度が高いものであるとして著作物性が認められ、被告商品は原告商品1ないし6を複製ないし翻案したものであるとして、原告らの著作権(複製権又は翻案権)を侵害する旨主張しました(47頁以下)。
裁判所は、この点について応用美術論に言及した上で、原告商品の特徴は著作物性を判断するに当たっては実用目的で使用するためのものといえる特徴の範囲内というべきものであり、原告商品において実用目的で使用するための特徴から離れて、その特徴とは別に美的鑑賞の対象となり得る美的構成を備えた部分を把握することはできないとするのが相当であると判断。
結論として、原告商品1ないし6に著作物性は認められていません。

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5 本件ブランドに係る価値の毀損による損害賠償請求権の存否

原告デザイン事務所は、被告の被告商品販売に係る不正競争行為によって原告デザイン事務所が本件商標を有する本件ブランドの持つ社会的信用やブランドイメージが毀損されたと主張して被告に対して不正競争防止法4条に基づいて損害賠償を請求しましたが、裁判所は認めていません(49頁以下)。
また、原告デザイン事務所は、被告が被告商品の販売により本件ブランドの価値を毀損する行為は一般不法行為に該当すると主張して民法709条に基づく損害賠償を請求しましたが、本件ブランドの価値の棄損により原告デザイン事務所に対する法的利益が棄損されたとは認められないとして、この点についても裁判所は認めていません。

なお、原告デザイン事務所の請求はいずれも棄却されています。

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6 損害論

(1)不正競争防止法5条1項に基づく損害
6506万8000円

(2)弁護士費用相当額損害
 600万円

合計 7106万8000円(50頁以下)。

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■コメント

商標権侵害は認められないものの、バッグなどの形態が類似しており、消費者に誤解を生じさせる商品の販売にあたるとして、不正競争行為性が肯定された事案です。
バッグなどのデザインについて応用美術論として著作権による保護の可能性も有り得ますが、本事案ではデザインの著作物性が認められず、著作権による保護は否定されています。

被告商品については、判決文に画像が掲載されていますが、原告商品はニュース記事掲載の画像からどのようなものであったかが窺うことができます。
画像

(判決文より 被告商品1)

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■参考記事

「バオ バオ」が模倣品裁判に勝訴 損害賠償額は7000万円以上 | WWD JAPAN.com(2019/06/20)

対バルコス社事案
イッセイ ミヤケが「バオ バオ」に類似したバッグの販売等を差し止める仮処分を申し立て(2019/06/14)
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2019年07月13日

金魚電話ボックス事件−著作権に基づく差止等請求事件判決−

金魚電話ボックス事件

奈良地裁令和元年7月11日平成30(ワ)466著作権に基づく差止等請求事件
裁判長裁判官 島岡大雄
裁判官    井上直樹
裁判官    植原美也子

*裁判所サイト未公表/個人サイト掲載 2019.7.11
*キーワード:著作物性

金魚電話ボックス問題と「メッセージ」
(ならまち通信社 2019年7月11日更新 作成:松永洋介)
判決文PDF
訴状PDF

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■事案

電話ボックスを金魚水槽にした作品の著作物性が争点となった事案

原告:美術作家
被告:商店街協同組合、地域振興団体代表者

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条

1 原告作品の著作物性
2 著作権侵害の有無

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告組合及び「K−Pool Project」代表者である被告●●が制作し,又は展示した別紙被告作品目録記載の美術作品(以下「被告作品」という。)について,被告作品は別紙原告作品目録記載の美術作品(以下「原告作品」という。)を複製したものであって,原告の複製権,同一性保持権及び氏名表示権を侵害している旨主張して,(1)被告組合及び被告●●に対し,著作権法114条1項に基づき,被告作品の制作の差止めを求めるとともに,(2)被告組合に対し,同条2項に基づき,被告作品を構成する水槽及び公衆電話機の廃棄を求め,また,(3)被告組合及び被告●●に対し,不法行為に基づく損害賠償請求として330万円(同条3項による使用料相当額100万円,同一性保持権及び氏名表示権の各侵害による慰謝料100万円ずつと弁護士費用30万円との合計)及びこれに対する被告作品の設置日である平成26年2月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。』(2頁)

<経緯>

H12.12 原告が原告作品制作
H23.10 京都造形芸大の学生らが被告作品制作
H26.02 被告らが被告作品設置、管理

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■判決内容

<争点>

1 原告作品の著作物性

裁判所は、まず著作物性の意義(著作権法2条1項1号)に言及した上で、原告作品の基本的な特徴を検討。

(1)公衆電話ボックス様の造形物を水槽に仕立て、金魚を泳がせている点
(2)受話器部分を利用して気泡を出す仕組みの点

が特徴点であるが、いずれもアイデアの範疇であると判断しています(8頁以下)。
これに対して、公衆電話ボックス様の造形物の色・形状、内部に設置された公衆電話機の種類・色・配置等の具体的な表現においては創作性を認め得るとして、争点2において原告作品と被告作品の対比において検討をしています(9頁以下)。

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2 著作権侵害の有無

原告作品と被告作品の共通点としては、

(1)造作物内部に二段の棚板が設置され、その上段に公衆電話機が設置されている点
(2)同受話器が水中に浮かんでいる点

が認められるが、(1)は一般的なもので創作性がなく、(2)の点のみでは被告作品から原告作品を直接感得することができない、として、結論として被告作品による原告作品の著作権侵害性が否定されています。

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■コメント

個人が開設しているサイトに本事案の経緯や訴訟資料が掲載されています。
訴状に掲載されている画像を見るとカラーであるため、作品の相違が良くわかります。
原告ボックス

(訴状より 原告作品)
被告ボックス

(被告作品)



個人的には、政策的価値判断として、既製品(レディメイド)の転用作品についてはデッドコピーに限って保護を検討していくということで(あるいは、調整弁として依拠性を厳密に判断するなど)、地裁の棄却の結論は(理論構成はともかくとして)理解できます。

原告作品がパブリックアートとして設置される環境と密接に関係することもあるでしょうし、環境保全のメッセージが含まれているとすれば、こうした点が作品性を考える際の視点になるとしても、そうした関係性や思想は著作権での保護を超えたところにあります。
マルセル・デュシャンのレディ・メイドを想起する時、著作権で保護する具体的な表現を越えたところに真の意味、価値があると思われ、そこで作家さんがどう社会にインパクトを与えるか、が勝負なのかな、と思います(その意味では充分、本作品はインパクトがあったのではないでしょうか)。
written by ootsukahoumu at 10:10|この記事のURL

2019年06月24日

任天堂マリカー事件(控訴審 中間判決)−著作権 不正競争行為差止等請求控訴事件等判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

任天堂マリカー事件(控訴審 中間判決)

知財高裁令和1.5.30平成30(ネ)10081等不正競争行為差止等請求控訴事件等PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 森 義之
裁判官    佐野 信
裁判官    熊谷大輔

*裁判所サイト公表 2019.6.17
*キーワード:マリオ、キャラクター、ドメイン、不正競争行為、著名性、著名表示冒用行為、権利の濫用

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■事案

公道カート営業で「マリオカート」標章の使用やコスチューム提供などの不正競争行為性が争点となった事案の控訴審の中間判決

控訴人・被控訴人・反訴被告(1審原告):任天堂
控訴人・被控訴人・反訴原告(1審被告):自動車レンタル会社
被控訴人(1審被告):1審被告会社代表取締役

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■結論

本訴請求認容、反訴請求却下

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項2号、13号、5条

1 STREET KART店舗において本件レンタル事業が実施され被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームの使用がされているか
2 富士河口湖店及び六本木店において現在被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームが使用されているか
3 一審被告会社が平成27年6月4日の設立時から現在まで自ら又は関係団体と共同して本件各店舗において本件レンタル事業を実施し、自ら又は関係団体と共同して被告標章第1の使用行為、本件制作行為、本件宣伝行為、本件各ドメイン名の使用行為並びに本件貸与行為を行ったのか
4 被告標章第1の営業上の使用行為及び商号としての使用行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当するか
5 登録商標の抗弁の成否
6 本件宣伝行為及び本件貸与行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当するか
7 本件各ドメイン名の使用行為が不競法2条1項13号の不正競争行為に該当するか
8 一審被告Yに対する損害賠償請求の可否
9 一審原告の損害額
10 反訴請求の可否

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■事案の概要

『本件は,一審原告が,一審被告会社による(1)一審原告の周知又は著名な商品等表示である原告文字表示(原告文字表示マリオカート及び原告文字表示マリカー)と類似する被告標章第1の営業上の使用行為及び商号としての使用行為が,不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に,(2)一審原告が著作権を有する原告表現物と類似する部分を含む本件各写真及び本件各動画を作成してインターネット上のウェブサイトへアップロードする本件掲載行為が,一審原告の著作権(複製権又は翻案権,自動公衆送信権及び送信可能化権)侵害に,(3)一審原告の周知又は著名な商品等表示である原告表現物又は原告立体像と類似する商品等表示である被告標章第2を使用する行為である本件宣伝行為(本件掲載行為,従業員のコスチューム着用行為及び店舗における人形の設置行為からなる行為)が不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に,(4)一審原告の特定商品等表示である原告文字表示と類似する本件各ドメイン名の使用が,不競法2条1項13号の不正競争行為に,(5)原告表現物の複製物又は翻案物である本件各コスチュームを利用者に貸与する本件貸与行為が,一審原告の著作権(貸与権)侵害に,それぞれ該当すると主張し,一審被告らに対して以下の各請求をした事案である。(以下略)』

『原判決は,要旨,以下のアーキのとおり判断し,前記(1)の各請求について,被告標章第1の使用差止め及び同抹消(外国語のみで表記されたウェブサイト及びチラシについてのものを除く。),被告標章第2の使用差止め,本件各動画のデータ廃棄,本件各ドメイン名の使用差止め(外国語のみで記載されたウェブサイトのために使用する場合を除く。)並びに一審被告会社に対する損害金1000万円及びこれに対する不正競争行為の最終日である平成30年3月31日から支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余の請求をいずれも棄却した。
(以下略)』

『一審原告は,原判決のうち,(1)外国語のみで表記されたウェブサイト及びチラシにおける被告標章第1の使用の差止請求並びに外国語のみで表記されたウェブサイト及びチラシからの被告標章第1の抹消請求を棄却した部分,(2)本件各ドメイン名を外国語のみで記載されたウェブサイトのために使用する行為の差止請求及び本件ドメイン名2の登録抹消請求を棄却した部分,(3)一審被告Yに対する損害賠償請求を棄却した部分を不服として控訴を提起するとともに,損害賠償請求の金額を1000万円から5000万円に増額し,併せて遅延損害金の起算日を平成30年3月31日に繰り下げた。』

『他方,一審被告会社は,一審被告会社の敗訴部分を不服として控訴を提起するとともに,反訴を提起し,一審被告会社が別紙コスチューム目録記載のコスチュームを着用した人物の写真又は映像を公衆送信する行為について,一審原告が,別紙反訴被告表現物目録1ー4記載の表現物に関する複製権及び公衆送信権に基づき,これを差し止める権利を有しないことの確認を求めたが,一審原告は,同反訴の提起については同意しない旨述べた。』

『原判決のうち,本件写真1の作成・アップロードが不正競争行為又は著作権(複製権,翻案権,自動公衆送信権,送信可能化権)侵害に該当しないとした部分,カート車両以外の自動車,自転車及び軽車両からの被告標章第1の抹消請求を棄却した部分,一審被告会社の商号登記の抹消登記手続請求を棄却した部分,本件各写真及び本件各動画の削除並びに本件各写真のデータの廃棄請求を棄却した部分,本件ドメイン名4の登録抹消請求を棄却した部分並びに原告表現物の複製又は翻案及び複製物又は翻案物の自動公衆送信,送信可能化の差止請求を棄却した部分は,当審における審理判断の対象となっていない。』
(3頁以下)

〈原審目録より〉
被告標章目録第1
1 マリカー
2 MariCar
3 MARICAR
4 maricar

被告標章目録第2
「マリオ」「ルイージ」「ヨッシー」「クッパ」のコスチューム等

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■判決内容

<争点>

1 STREET KART店舗において本件レンタル事業が実施され被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームの使用がされているか

控訴審は、被告標章第1の2乃至4のいずれかがSTREET KART店舗のうち、品川第2号店と横浜店を除く各店舗において使用されていたものと認められ、STREET KART店舗とMariCAR店舗の一体性から、品川第2号店及び横浜店においても使用されていたものと推認することができると判断しています(71頁以下)。

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2 富士河口湖店及び六本木店において現在被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームが使用されているか

富士河口湖店では、被告標章第1の3、4を使用しており、六本木店は被告標章第1の4を使用していると認定されています(77頁以下)。

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3 一審被告会社が平成27年6月4日の設立時から現在まで自ら又は関係団体と共同して本件各店舗において本件レンタル事業を実施し、自ら又は関係団体と共同して被告標章第1の使用行為、本件制作行為、本件宣伝行為、本件各ドメイン名の使用行為並びに本件貸与行為を行ったのか

設立時から現在までの一審被告会社による本件レンタル事業の実施やそれに伴う被告標章第1及び被告標章第2の使用について、控訴審は、一審被告会社は平成28年6月24日以降も自ら又は少なくとも関係団体と共同して本件レンタル事業を実施しており、自ら又は関係団体と共同して後記認定の不正競争行為を行っていると判断しています(79頁以下)。

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4 被告標章第1の営業上の使用行為及び商号としての使用行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当するか

(1)本件需要者

本件需要者は、日本において観光の体験等として公道カートを運転してみたい一般人、とりわけ比較的若年の成年層であり、原判決の口頭弁論終結前の時点において、一審被告らのいうところの訪日外国人(外国人旅行者、在日米軍関係者、在日大使館員など)に限られることはなく、日本人も需要者であったと控訴審は判断しています(86頁以下)。

(2)原告文字表示及び「MARIO KART」表示の周知性・著名性

控訴審は、「MARIO KART」表示は日本の国内外の本件需要者の間で、また、原告文字表示マリオカートは日本国内の本件需要者の間でそれぞれ著名であったと判断。
原告文字表示マリオカート及び「MARIO KART」表示と被告標章第1との類否に関し、まず、原告文字表示マリオカートについて、外観、称呼に関しては一定程度似ており、観念の点でも同一の観念が生じると判断。日本国内の本件需要者との関係で原告文字表示マリオカートと被告文字表示第1の1(マリカー)は類似していると判断しています(89頁以下)。
次に、「MARIO KART」表示と被告標章第1との類否に関し、外観、称呼に関しては一定程度似ており、観念の点でも同一の観念が生じると判断。日本国内外の本件需要者全てとの関係で「MARIO KART」表示と被告標章第1の2乃至4は類似していると判断しています。

結論として、2条1項2号の成立を肯定しています。

『原告文字表示マリオカートは著名であって,被告標章第1の1の需要者である日本国内の本件需要者との関係で被告標章第1の1と類似しており,「MARIO KART」表示は著名であって,被告標章第1の2〜4の需要者である日本国内外の本件需要者との関係で被告標章第1の2〜4と類似するものである。
 また,前記第2の2(4),第3の1〜3で認定した一審被告会社が単独又は関連団体と共同で行っている被告標章第1の使用行為は,いずれも被告標章第1を,自己がしている本件レンタル事業という役務を表示するものとして使用するものといえる。
 そして,不競法2条1項2号は,著名表示をフリーライドやダイリューションから保護するために設けられた規定であって,混同のおそれが不要とされているものであるから,一審被告らが主張するような打ち消し表示の存在や本件各コスチュームの使用割合が低いこと(ただし,この点についての一審被告らの主張を採用できないことは,後記6(2)エのとおりである。)といった事情は,何ら不正競争行為の成立を妨げるものではない。
 したがって,その余の点について判断するまでもなく,自ら又は関係団体と共同して被告標章第1を前記第2の2(4),第3の1〜3で認定したとおり使用する一審被告会社の行為は,外国語のみで記載されたウェブサイト等で用いることも含めて不正競争行為に該当するものである。』(99頁)

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5 登録商標の抗弁の成否

一審被告らは、一審被告会社は「マリカー」の標準文字からなる本件商標を有しており、「マリカー」という標章を使用する正当な権限を有するから、仮に被告標章第1の使用行為が不正競争行為に該当するとしても差止請求や損害賠償請求は認められない旨主張しましたが、控訴審は権利の濫用として一審被告らのこれらの主張を認めていません(100頁以下)。

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6 本件宣伝行為及び本件貸与行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当するか

控訴審は、原告表現物(原告表現物マリオ、原告表現物ルイージ、原告表現物ヨッシー及び原告表現物クッパ)の著名性を認定した上で、本件写真2及び3のサイト掲載、各動画のYouTubeへのアップロード、本件貸与行為、本件マリオ人形の使用行為、従業員によるコスチュームの着用行為といった各行為の2条1項2号該当性を肯定しています(101頁以下)。

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7 本件各ドメイン名の使用行為が不競法2条1項13号の不正競争行為に該当するか

控訴審は、一審被告会社は不正の利益を得る目的をもって、一審原告の特定商品等表示である原告文字表示及び「MARIO KART」表示と類似する本件各ドメイン名を使用したと認められることから、同行為は不競法2条1項13号所定の不正競争行為に該当し、一審原告の営業上の利益を害するものであると判断しています(119頁以下)。

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8 一審被告Yに対する損害賠償請求の可否

一審被告Yは、取締役として会社が不正競争行為を行わないようにする義務があり、一審被告Yにはそのような義務に違反した点について悪意又は少なくとも重過失があることから、一審被告Yは会社法429条1項に基づく責任を負うと控訴審は判断しています(121頁以下)。

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9 一審原告の損害額

一審被告会社は、一審原告に対して不競法4条に基づいて一審原告の請求に係る一審被告会社が設立された平成27年6月4日から平成30年10月31日までの間に一審原告に生じた損害を賠償する責任を負い、一審被告Yは、悪意又は重過失による任務懈怠が認められ、一審被告会社と連帯して上記損害を賠償する責任を負うと控訴審は判断しています(123頁以下)。

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10 反訴請求の可否

一審原告の反訴の同意がなく、結論として、一審被告会社の反訴の提起は不適法であると控訴審は判断しています(民訴法300条1項 124頁)。

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■コメント

不正競争防止法上の侵害論についての中間判決となります。原審と大きく異なる点として、不正競争防止法2条1項1号(商品等主体混同惹起行為)ではなく、2号(著名表示冒用行為)の成立が認められています。
なお、損害論(数額の点)はこれからとなります。

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■過去のブログ記事

東京地裁平成30.9.27平成29(ワ)6293不正競争行為差止等請求事件
原審記事
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2019年06月21日

新冷蔵庫システム開発契約事件(控訴審)−著作権 損害賠償等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

新冷蔵庫システム開発契約事件(控訴審)

知財高裁令和1.6.6平成30(ネ)10052損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 森 義之
裁判官    眞鍋美穂子
裁判官    熊谷大輔

*裁判所サイト公表 2019.6.13
*キーワード:ソフトウェア開発委託契約、保守管理、複製、翻案

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■事案

ソフトウェア開発業務委託契約の条項の解釈を巡る紛争の控訴審

控訴人(1審原告) :物流倉庫等システムソフトウェア開発会社
被控訴人(1審被告):食品類卸売会社、システム開発会社、原告元従業員

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■結論

控訴棄却

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■争点

1 本件ソースコードの成果物該当性
2 本件基本契約終了前の本件ソースコードの複製・翻案
3 本件基本契約の終了後に控訴人の許諾なく本件共通環境設定プログラムを複製又は翻案することが本件基本契約によって許されるか
4 本件基本契約終了後の本件ソースコードの使用によるみなし侵害(著作権法113条2項又はその類推適用)の有無
5 被控訴人マルイチ産商の本件共通環境設定プログラムの使用を停止し廃棄する債務の有無
6 不当利得返還請求権の有無

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■事案の概要

『ア 主位的請求
控訴人は,(1)被控訴人らは,本件基本契約の終了(平成26年9月17日)前の平成25年11月27日,本件新冷蔵庫等システムのサーバ移行に際し,本件共通環境設定プログラムのソースコード(以下「本件ソースコード」という。)を複製・翻案してその複製権又は翻案権を侵害し,上記本件基本契約の終了後,本件共通環境設定プログラムのダイナミックリンクライブラリ形式のファイル(以下「DLLファイル」という。),エグゼファイル(以下「EXEファイル」という。)及び本件ソースコード(以下,単に「本件共通環境設定プログラム」というときには,上記DLLファイル,EXEファイル及び本件ソースコードを併せたものを指すこととする。)を複製・翻案して本件共通環境設定プログラムの複製権又は翻案権を侵害し(主位的請求原因1),又は(2)上記本件基本契約の終了後,被控訴人マルイチ産商が本件共通環境設定プログラムの使用を継続したことが,著作権法113条2項又はその類推適用により,本件共通環境設定プログラムの著作権を侵害するものとみなされる(主位的請求原因2。なお,主位的請求原因1,2は選択的請求原因と解される。)と主張し,民法709条,719条1 項前段及び著作権法114条3項に基づく損害賠償請求として,1620万円(平成26年9月17日から平成29年9月16日まで1か月当たり45万円の使用料の合計額)及びこれに対する不法行為の後の日である訴状送達の日の翌日(被控訴人マルイチ産商,被控訴人Y1及び被控訴人Y2につき平成29年10月15日,被控訴人テクニカルパートナーにつき同月16日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払並びに平成29年9月17日から被控訴人マルイチ産商が原判決別紙プログラムの使用を停止するまでの間1か月45万円の使用料相当額の支払を求めるとともに,同法112条1項及び2項に基づき,被控訴人マルイチ産商に対し,原判決別紙プログラムの使用の差止め及び原判決別紙プログラムのソースコードの廃棄を求めた。』

『イ 予備的請求
控訴人は,被控訴人マルイチ産商は,本件基本契約又は条理に基づき,原判決別紙プログラムの使用を停止し,本件ソースコードを廃棄する債務を負うところ,被控訴人マルイチ産商が原判決別紙プログラムの使用を継続していることが,上記債務の不履行に当たり,又は原判決別紙プログラムの使用料相当額の支払を免れていることが不当利得に当たると主張し,被控訴人マルイチ産商に対し,債務不履行に基づく損害賠償請求(予備的請求原因1)又は不当利得に基づく利得金返還請求(予備的請求原因2。なお,予備的請求原因1,2は選択的請求原因と解される。)として,1620万円(前記の合計額)及びこれに対する平成29年10月15日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払並びに同年9月17日から被控訴人マルイチ産商が原判決別紙プログラムの使用を停止するまでの間1か月当たり45万円の使用料相当額の支払を求めるとともに,本件基本契約又は条理に基づく債務の履行請求として(予備的請求原因1),被控訴人マルイチ産商に対し,原判決別紙プログラムの使用の差止め及び原判決別紙プログラムのソースコードの廃棄を求めた。』

『原判決は,(1)本件ソースコードが本件基本契約の終了前に複製又は翻案されたこと及び本件基本契約の終了後に本件共通環境設定プログラムが複製又は翻案されたことを認めるに足りる証拠はなく,(2)仮に,これらの複製又は翻案がされたとしても,本件共通環境設定プログラムは,本件基本契約で規定された「成果物」に該当し,本件基本契約の終了前及び終了後において,被控訴人マルイチ産商は,本件基本契約に基づき本件共通環境設定プログラムを使用するために必要な範囲で本件共通環境設定プログラムを複製又は翻案して利用することができたから,複製権又は翻案権の侵害は成立しないとし,さらに,(3)被控訴人マルイチ産商が,本件共通環境設定プログラムの複製物の所有権を取得しているから,本件共通環境設定プログラムを使用することができ,その使用による著作権法113条2項のみなし侵害も成立せず,(4)被控訴人マルイチ産商は,本件基本契約終了後も本件共通環境設定プログラムを使用することができるから,その使用が債務不履行に当たらず,不当利得も成立しないとして,控訴人の請求をいずれも棄却する旨の判決を言い渡した。』

『控訴人は,控訴を提起するとともに,当審において,前記(1)ア(2)の主位的請求原因2を撤回し,同請求原因を予備的請求の請求原因3(予備的請求原因1ー3はいずれも選択的請求原因である。また,控訴人は当審において,予備的請求原因3のみなし侵害の主張の対象を本件ソースコードとした。)として追加する訴えの変更をするとともに,前記(1)ア(1)の主位的請求原因における被控訴人テクニカルパートナーの責任を民法715条1項に基づくものとした。』
(3頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件ソースコードの成果物該当性

控訴審は、本件ソースコードは本件基本契約にいう「成果物」に該当すると判断しています(20頁以下)。

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2 本件基本契約終了前の本件ソースコードの複製・翻案

本件基本契約21条3項(2)は、控訴人が従前からその著作権を有していた「成果物」についても被控訴人マルイチ産商が自ら使用するために必要な範囲で著作権法に基づく利用を無償でできると規定しており、旧サーバから新サーバへの移行に伴って本件ソースコードを複製したり、新サーバ移行に必要な限度で翻案したりすることは、自ら使用するために必要な範囲に該当するものといえると控訴審は判断。
また、仮に、控訴人が主張するとおり旧サーバから新サーバへの移行に伴って本件ソースコードが複製又は翻案されたとしても、それが複製権又は翻案権の侵害となることはないと判断しています(22頁)。

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3 本件基本契約の終了後に控訴人の許諾なく本件共通環境設定プログラムを複製又は翻案することが本件基本契約によって許されるか

本件基本契約26条から、本件基本契約の更新しない旨の意思表示による終了後も本件基本契約21条3項(2)は有効であり、被控訴人マルイチ産商は21条3項(2)に基づいて本件共通環境設定プログラムについて自ら使用するために必要な範囲内で著作権法に基づく利用を無償ですることができたと控訴審は判断。

そして、保守管理のために本件共通環境設定プログラムを複製又は翻案することは自己使用のために必要な範囲でされるものといえるとして、本件基本契約終了後に控訴人が主張するように被控訴人らが保守管理業務の一環として本件共通環境設定プログラムを複製又は翻案することがあったとしても、それについて複製権又は翻案権の侵害となることはないというべきであると控訴審は判断しています(22頁以下)。

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4 本件基本契約終了後の本件ソースコードの使用によるみなし侵害(著作権法113条2項又はその類推適用)の有無

本件ソースコードについて、本件基本契約の終了の前後を問わず被控訴人マルイチ産商が自己の利用する範囲内で複製又は翻案することができることから、被控訴人マルイチ産商が著作権を侵害した行為によって作成された複製物を使用しているとは認められないと控訴審は判断。控訴人の主張を認めていません(25頁)。

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5 被控訴人マルイチ産商の本件共通環境設定プログラムの使用を停止し廃棄する債務の有無
6 不当利得返還請求権の有無

本件基本契約の終了後も被控訴人マルイチ産商は本件共通環境設定プログラムを使用することができたことから、控訴人の主張するような債務や条理の存在を認めることはできず、その使用が不当利得となることもないと控訴審は判断。控訴人のこの点についての主張も認めていません(25頁)。

結論として、控訴審は控訴人の主張を認めていません。

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■コメント

ソフトウェア開発業務委託基本契約書の条項の解釈、また事実認定が問題となった事案ですが、控訴審でも原判決の判断が維持され、また、控訴審での新たな主張についても棄却の判断となっています。

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■過去のブログ記事

東京地裁平成30.6.21平成29(ワ)32433損害賠償等請求事件
原審記事
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2019年06月19日

「でんちゅ〜」飲食店用注文管理システム事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「でんちゅ〜」飲食店用注文管理システム事件

大阪地裁令和1.5.21平成28(ワ)11067著作権侵害差止請求事件PDF
別紙1

*裁判所サイト公表 2019.6.11
*キーワード:プログラム、著作物性

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■事案

飲食店向け注文管理システムの共同開発にあたり著作権の帰属などが争点となった事案

原告:システムエンジニア
被告:経営コンサル会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項10号の2

1 原告プログラムの著作物性

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■事案の概要

『本件は,被告が飲食店等に対して頒布している「でんちゅ〜」という名称の「コンピュータ及びタブレット上で動作する注文管理及び商品管理のために利用されるソフトウェア」(以下「でんちゅ〜」という。)に係るプログラム(以下「被告プログラム」という。)は,以前,原告が開発したプログラム(以下「原告プログラム」という。)を複製又は翻案した物であるから,「でんちゅ〜」を制作し,被告プログラムを複製,販売,頒布する被告の行為は,原告の,原告プログラムについての著作権(複製権,翻案権ないし譲渡権)を侵害する旨を主張し,著作権法112条1項に基づき,被告プログラムの複製,販売,頒布の各差止めを,同条2項に基づき,同プログラムの廃棄を求める事案である。』
(1頁以下)

「でんちゅ〜」:飲食店用注文管理システム

<経緯>

H23 原告起業
H23 被告会社設立
H23 被告代表者が特開2013−3812
H24 原被告間雇用契約
H27 原告退職

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■判決内容

<争点>

1 原告プログラムの著作物性

裁判所は、プログラムの著作物性について、「プログラムに著作物性があるというためには,指令の表現自体,その指令の表現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表現上の創作性が表れていることを要するといわなければならない」
として、溶銑運搬列車制御プログラム事件(知財高裁平成24年1月25日判決平成21(ネ)10024著作権確認等請求控訴事件)に言及した上で、ソースコードに創作性が認められるというためには定型の指令やありふれた指令の組合せを超えた、独創性のあるプログラム全体の構造や処理手順、構成を備える部分があることが必要であり、原告は原告プログラムの具体的記述の中のどの部分にこれが認められるかを主張立証する必要があるところ、具体的にどの指令の組合せに選択の幅があり、いかなる記述がプログラム制作者である原告の個性の発現であるのかを具体的に主張立証していないとして、原告プログラムの著作物性を否定。

結論として、そのほかの争点を判断することなく、棄却の判断をしています(22頁以下)。

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■コメント

原告には代理人が就いていますが、著作物性に関する立証が尽くされていないとして、棄却の判断を受けています。

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■参考判例

溶銑運搬列車制御プログラム事件(控訴審)
知財高裁平成24年1月25日判決平成21(ネ)10024著作権確認等請求控訴事件
判決文PDF
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