知財判決速報2017

2017年07月15日

チップ選別機プログラム事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

チップ選別機プログラム事件

東京地裁平成29.6.29平成28(ワ)36924著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    萩原孝基
裁判官    林 雅子

*裁判所サイト公表 2017.7.13
*キーワード:プログラム、著作物性

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■事案

ソフトウェア開発受託業務に関連してプログラムの著作物性が争点となった事案

原告:ソフトウェア開発業者
被告:精密機器製造販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、10号の2

1 本件プログラムの著作物性

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■事案の概要

『本件は,個人としてソフトウェアの受託開発業を営んでいる原告が,被告は原告の著作物であるプログラムのソースコードを使用してプログラムを作成し,当該プログラムを搭載した機器を取引先に納入することにより,原告の著作権(翻案権,譲渡権及び貸与権)を侵害したと主張して,被告に対し,著作権法112条1項及び2項に基づき,被告が作成したプログラム及びそのソースコードの使用の差止め並びに廃棄を求めるとともに,民法709条及び著作権法114条2項に基づき損害金180万円の支払を求める事案である。』(1頁以下)

<経緯>

H27.08 被告がSEDI社からチップ選別機製造受託
H27.09 原被告間でソフトウェア開発請負契約締結
H28.02 請負契約終了
H28.04 原告が被告に対して別件提訴、60万円認容

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■判決内容

<争点>

1 本件プログラムの著作物性

本件プログラムの著作物性について、被告は、本件プログラムは指令の表現やその組合せ等について作成者の個性が表れたものとはいえず、著作物に当たらないと反論しました(7頁以下)。
この点について、裁判所は、プログラムの著作物性の意義(著作権法2条1項1号、同項10号の2)について言及した上で、原告は本件ソースコードを証拠としてして提出し、また、本件プログラムの処理の内容を述べたのみであり、本件ソースコードの具体的な表現について、その表現自体や表現の組合せ、表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり、かつ、それがありふれた表現ではなく作成者の個性、表現上の創作性が表れていることを主張立証しなかったと判断。本件プログラムの著作物性を否定しています。

結論として、棄却の判断となっています。

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■コメント

ソフトウェア開発請負案件での発注元と請負側との紛争ですが、本人訴訟ということもあって、プログラムの著作物性について原告側の立証が尽くされていません。
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2017年07月14日

VAN(Value Added Network)事業営業秘密事件(控訴審)−著作権 不正競争行為等差止請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

VAN(Value Added Network)事業営業秘密事件(控訴審)

知財高裁平成29.6.28平成28(ネ)10110不正競争行為等差止請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官    中島基至
裁判官    岡田慎吾

*裁判所サイト公表 2017.7.6
*キーワード:ソフトウェア、翻案、競業制限、営業秘密

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■事案

電気通信回線を利用して小売業者からの商品の発注を卸売業者等に取次ぐ事業(VAN)について、ソフトウェアの無断翻案や仕入価格の営業秘密性などが争点となった事案

控訴人(1審原告) :情報処理会社
被告訴人(1審被告):情報処理会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法27条、不正競争防止法2条1項7号

1 競業禁止合意違反の有無
2 被控訴人による本件情報の不正使用の有無等
3 被控訴人による本件ソフトウェアの著作権侵害等の有無
4 被控訴人による本件データベースの著作権侵害等の有無

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■事案の概要

『本件は,控訴人が,被控訴人に対し,(1)被控訴人との間で,被控訴人が原判決別紙事業目録記載の事業(以下「本件事業」という。)を行わない旨の競業禁止の合意(以下「本件競業禁止合意」という。)をしたにもかかわらず,被控訴人が本件事業を行うのは,本件競業禁止合意に違反すると主張して,当該合意に基づき,被控訴人が本件事業を行うことの差止めを,(2)控訴人が有する原判決別紙営業秘密目録記載の情報(以下「本件情報」という。)は営業秘密に該当するところ,被控訴人は控訴人から示された本件情報を不正の利益を得る目的で使用しており,被控訴人において本件情報を使用する行為が不正競争防止法2条1項7号に該当すると主張して,同法3条1項及び2項に基づき,本件情報を利用して小売業者に対し仕入効率の良否を判定するための情報が記載された文書を配布することの差止めを求めるとともに,本件情報が記載された書面及び記憶媒体の廃棄を,(3)控訴人は,原判決別紙ソースコード1及び2(以下「本件ソフトウェア」という。)並びに原判決別紙データベース目録記載のデータベース(以下「本件データベース」という。)の著作権を有すると主張し,また,被控訴人との間で,被控訴人が控訴人の本件事業の拡大のために本件ソフトウェア及び本件データベースを利用する旨の合意(以下「本件利用合意」という。)をしたにもかかわらず,被控訴人が本件ソフトウェア及び本件データベースを無断で改変し自らの事業のためにこれらを使用する行為は,控訴人の著作権(翻案権)を侵害するとともに,本件利用合意にも違反すると主張して,著作権法112条1項及び2項並びに本件利用合意に基づき,本件ソフトウェア及び本件データベースの使用の差止めを求めるとともに,本件ソフトウェア及び本件データベースが収納された記憶媒体の廃棄を,それぞれ求める事案である。』

『原審は,本件情報及び本件データベースの各内容が特定されていないため,これらの情報に関する請求は特定を欠くものであって,上記(2)に係る全ての請求及び上記(3)に係る各請求のうち本件データベースに係る請求は不適法であるとして,これらをいずれも却下するとともに,本件競業禁止合意及び本件利用合意が成立したものと認めることができず,また,控訴人は,被控訴人が本件ソフトウェアを翻案したことを具体的に主張立証するものではないから,上記(1)に係る請求及び上記(3)に係る各請求のうち本件ソフトウェアに係る請求をいずれも棄却した。
 控訴人は,これを不服として控訴した。』(2頁以下)

<経緯>

S44.08 1審原告会社(控訴人)設立
H22.04 Aが原告会社の取締役就任
H23.07 Aが1審被告会社(被控訴人)設立検討

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■判決内容

<争点>

1 競業禁止合意違反の有無

本件競業禁止合意及び本件利用合意が成立したことを裏付ける契約書その他の客観的証拠が認められず、控訴人の主張は容れられていません(3頁以下)。

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2 被控訴人による本件情報の不正使用の有無等

原審では、本件情報の特定がされておらず、営業秘密性を欠くなどと判断されていましたが、控訴審でも原審の判断が維持されています。

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3 被控訴人による本件ソフトウェアの著作権侵害等の有無

原審では被控訴人が本件ソフトウェアを翻案したといえるかを控訴人が何ら具体的に主張立証していないと判断されていましたが、控訴審でも原審の判断が維持されています。

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4 被控訴人による本件データベースの著作権侵害等の有無

原審では本件データベースも同様に十分特定されていないなどと判断されていましたが、控訴審でも原審の判断が維持されています。

結論として、原審同様、控訴審でも控訴人(1審原告)の主張は認められていません。

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■コメント

原告会社と被告会社は人的にも密接な関係をもって協力して事業にあたっており、何がきっかけで訴訟にまで至ったか、興味を引くところです。

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■参考判例

東京地裁平成28.10.27平成27(ワ)24340不正競争行為等差止請求事件
原審判決文PDF

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2017年07月03日

「FC2動画」アダルトビデオ無断配信発信者情報開示請求事件(対プレステージ)−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「FC2動画」アダルトビデオ無断配信発信者情報開示請求事件(対プレステージ)

東京地裁平成29.6.26平成29(ワ)9799発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官    伊藤清隆
裁判官    天野研司

*裁判所サイト公表 2017.6.30
*キーワード:動画、無断配信、発信者情報開示請求

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■事案

アダルトビデオを「FC2動画」サイトで無断配信した者の情報開示請求をプロバイダに求めた事案

原告:アダルトビデオ制作販売会社
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法14条、17条1項、プロバイダ責任制限法4条

1 原告は本件著作物の著作権者であるか
2 本件動画は本件著作物の複製物であるか
3 被告は「開示関係役務提供者」に当たるか
4 本件発信者情報の開示を受ける必要性は認められるか

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■事案の概要

『本件は,別紙2著作物目録記載の映画の著作物(以下「本件著作物」という。)の著作権者であると主張する原告が,氏名不詳者(以下「本件投稿者」という。)が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト「FC2動画」(以下「本件サイト」という。)にアップロードした別紙3動画目録記載の動画(以下「本件動画」という。)は本件著作物の複製物であるから,本件投稿者による上記アップロード行為により原告の有する本件著作物の著作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかであり,本件投稿者に対する損害賠償請求権の行使のために本件動画に係る別紙1発信者情報目録記載の情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を受ける必要があると主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下,単に「法」という。)4条1項に基づき,被告に対し,本件発信者情報の開示を求める事案である。』
(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 原告は本件著作物の著作権者であるか

裁判所は、本件著作物が公衆に提供されるに際して、DVDパッケージに原告商標が付されているとか、サイトのトップバナーに原告商標が表示されているなど、原告の名称が本件著作物の著作者名として通常の方法により表示されているということができるとして、原告は本件著作物の著作者と推定され(著作権法14条)、同推定を覆すに足りる事情はうかがわれないと判断。
原告は、本件著作物の著作者と認められ、その後著作権が移転した等の事情もうかがわれないとして、原告は本件著作物の著作権者である(17条1項)と認定しています(4頁以下)。

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2 本件動画は本件著作物の複製物であるか

本件著作物は収録時間2時間1分5秒の動画であること、本件動画の総再生時間は48分42秒であること、本件サイトにアップロードされていた本件動画の再生前サムネイル画像と本件著作物の再生時間27分3秒付近のスクリーンショットとが一致すること、本件動画の再生中のスクリーンショットと本件著作物の再生時間2分44秒付近のスクリーンショットとが一致すること、本件動画は本件著作物の再生時間3分頃から51分頃までと一致すると裁判所は判断。
結論として、本件動画は本件著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものとして再製されたもの、すなわち本件著作物の複製物であると認定しています(5頁)。

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3 被告は「開示関係役務提供者」に当たるか

被告がプロバイダ責任制限法2条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に当たり、また、同4条1項にいう「開示関係役務提供者」に当たると裁判所は認定しています(5頁以下)。

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4 本件発信者情報の開示を受ける必要性は認められるか

原告は、原告が有する本件著作物の著作権(公衆送信権)が侵害されたことを原因として、本件投稿者に対して不法行為による損害賠償請求権を行使するために本件発信者情報の開示を求めているものと認められ、損害賠償請求権を行使するためには本件投稿者を特定する必要があることから、原告には同特定のために本件発信者情報の開示を受ける必要があると裁判所は判断しています(6頁)。

結論として、本件投稿者に関する氏名又は名称、住所、電子メールアドレスの情報開示が認められています。

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■コメント

違法にコンテンツが配信された場合、配信者を特定するためにプロバイダに情報開示を求めるステップがありますが、その際、裁判が必要になれば権利者(被害者)は、プロバイダと無断配信者の2回、裁判をする必要があり得、たいへんな手間と労力が掛かることになります。
プロバイダが現状、発信者の情報開示に対してどの程度の事案の場合に訴訟対応しているのか、不明でしたが、先日2017年6月30日開催の第17期文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会第2回を傍聴していた際に、リーチサイトに関する事業者からのヒアリングがあり、その配布資料の中に参考になる数字がありました(「ニフティ株式会社におけるリーチサイトへの対応について」(一社)テレコムサービス協会サービス倫理委員会委員長 丸橋透氏 資料)。
そこでは、ニフティの2016年度権利侵害対応件数として、
訴訟・仮処分17件
任意の請求 382件(ガイドライン書式119件、通報フォーム263件)
合計 399件(発信者情報開示 49件 送信防止措置352件)

また、399件の内訳としては、
著作権侵害 26件(約12%)
名誉毀損などその他 353件(約88%)

とのことでした。

発信者情報開示請求49件のうちの著作権侵害事案での訴訟・仮処分の割合がどの程度か知りたいところですが、著作権侵害事案の割合も勘案すると、さほどの数ではないかとは推察されます。
ただ、そうすると、(いちおう他社案件とはなりますが同じ富士通系列)本事案のように、争点の内容を見る限り、どうして訴訟をしないと開示しないのかいまひとつ判然としないところもあって、発信者情報開示請求訴訟の事案がいつも請求認容をもらっているのをみるにつけ、できるだけ早く社内ガイドラインを精緻化して被害者側に訴訟の手間を掛けさせない対応が求められるのではないかと思うところです。

なお、本事案の裁判所サイト公開と同時に、同種事案となる後掲の対MAXING事件も公開されています。

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■関連判例

「FC2動画」アダルトビデオ無断配信事件(対MAXING)
東京地裁平成29.6.26平成29(ワ)5388発信者情報開示請求事件
判決文PDF

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■追記(2017.07.03)

2017年7月3日公表

ビッグローブ対プレステージ事件(別件)
東京地裁平成29.6.22平成28(ワ)35208発信者情報開示請求事件

動画作品「素人AV体験撮影493」

判決文PDF
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2017年06月26日

獄中絵画展示事件(対画廊)−著作権 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

獄中絵画展示事件(対画廊)

知財高裁平成29.6.14平成29(ネ)10006損害賠償請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    大西勝滋
裁判官    寺田利彦

*裁判所サイト公表 2017.6.20
*キーワード:絵画、展示、画廊、注意義務、過失論、送信可能化、プライバシー

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■事案

獄中絵画のネット掲載における画廊経営者の過失の有無などが争点になった事案

控訴人 :画廊経営者
被控訴人:受刑者

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法23条

1 送信可能化権侵害
2 プライバシー侵害

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■事案の概要

『本件は,府中刑務所の受刑者であった被控訴人が,控訴人及びその妻である一審被告Aに対し,同人らは,その経営する控訴人肩書地所在の画廊「ギャラリーTEN」(本件画廊)において,平成22年9月10日から同月19日までの間,「救援連絡センター」と称する団体(救援センター)と共に「獄中画の世界―25人のアウトサイダーアート展」と題する絵画の展示会(本件展示会)を開催し,(1)本件展示会において被控訴人制作の絵画「ジョニー・デップ」を被控訴人の許諾なく展示・公表して被控訴人が有する同絵画の展示権及び公表権を侵害した(不法行為1),(2)これに先立つ同年8月16日,被控訴人制作の絵画「イエス最後の祈り」が無断掲載された本件展示会のパンフレット(本件パンフレット)の画像を被控訴人に無断でウェブサイトに掲載して被控訴人が有する同絵画の公衆送信権(送信可能化権)を侵害した(不法行為2),(3)(a)本件展示会の来訪者に対して被控訴人の許諾なく写真撮影を許可したことにより,英字新聞ジャパンタイムズの日刊紙及び週刊紙上に絵画「ジョニー・デップ」が写り込んだ写真が掲載され,また,(b)自ら甲37ウェブサイトに本件展示会の宣伝(出品者すなわち獄中者としての被控訴人の氏名の表示を含む。)を投稿し,あるいは,本件展示会の来訪者に対して写真撮影を禁止したり,撮影した写真や被控訴人の氏名を含む本件展示会の内容をウェブサイト上に掲載することを禁止するなどの適切な措置を講じなかったことにより,被控訴人作成の絵画の画像や獄中者としての被控訴人の氏名がウェブサイト上に多数掲載され,(a)(b)により被控訴人が有する絵画の複製権の侵害やプライバシー権の侵害を多数発生させ,あるいは,その侵害を幇助した(不法行為3),(4)上記(1)ないし(3)の権利侵害について被害回復措置を採らなかったことにより被控訴人の損害を拡大させた(不法行為4),(5)被控訴人の絵画(被控訴人の所有する絵画)を紛失して被控訴人の財産権を侵害した(不法行為5)などと主張して,不法行為に基づく損害賠償として160万円(不法行為1による損害10万円,同2による損害10万円,同3(a)による損害30万円,同(b)による損害30万円,同4による損害42万円,同5による損害20万円及び(6)弁護士費用として18万円の合計)及びこれに対する遅延損害金(上記(2)の10万円に対する平成22年8月16日から,上記(1)及び(5)の30万円に対する同年9月10日から,上記(3)(a)(b)の60万円に対する同月19日から,上記(4)の42万円に対する平成25年9月26日から,上記(6)の18万円に対する平成26年10月15日から各支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金)の連帯支払を求める事案である。
 原審は,控訴人につき不法行為2及び同3の一部の成立を認めて,不法行為2につき3000円,同3につき1万円,両不法行為と相当因果関係を有する弁護士費用として1万円の合計2万3000円の限度で被控訴人の請求を認容したところ,控訴人が敗訴部分を不服として本件控訴をした。』
(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 送信可能化権侵害
2 プライバシー侵害

控訴審も、控訴人は絵画「イエス最後の祈り」が掲載された本件パンフレットの画像を本件ウェブサイトにアップロードしたことによる送信可能化権侵害(不法行為2)及び本件展示会の宣伝の一環として自らウェブサイトに被控訴人の氏名の表示を含む投稿を行ったことによるプライバシー侵害(不法行為3)についての過失責任を免れないものと判断して、原審の判断を維持しています(4頁以下)。

(1)送信可能化権侵害(過失の有無について)

控訴人は、本件展示会の主催者である救援センターの依頼を受けて会場を無償で提供し、それに付随して本件パンフレットの本件ウェブサイトへの掲載等の依頼を受けたにすぎないと主張しました。
この点について控訴審は、依頼を受けたとはいえ、最終的に自らの判断で他人の著作物である絵画が掲載された本件パンフレットの画像をウェブサイトにアップロードする以上、控訴人としては救援センターを通じるなどして著作権者(被控訴人)の許諾が得られているかどうかを自ら確認し、その確認が取れなければアップロード自体を差し控えるなどの適切な対応を採るべきであったことは当然であると判断。
控訴人がこれを怠った以上、控訴人は過失責任を免れないと判断しています(6頁以下)。

(2)プライバシー侵害(過失の有無について)

控訴人は、本件展示会の主催者が救援センターであって控訴人ではないこと、本件展示会の出品者と救援センターとの関係、控訴人の本件展示会への関与の経緯等からして、受刑者であるとの情報を実名でインターネット上に公表することにつき被控訴人本人の承諾の有無に関して救援センター等に確認していなかったとしても、控訴人に過失がないことは明らかであるなどと主張しました。
しかし、控訴審は、ある者が服役中であるという事実は、その者の名誉あるいは信用に直接にかかわる事項であり、その者は当該事実を公表されないことについて法的保護に値する利益を有するものというべきであるから、自らの判断で受刑者であることを実名をもって表示する(投稿をする)以上、本人である被控訴人の承諾があるか否かを確認する義務があることは当然であると判断。
控訴人がこれを怠った以上、控訴人は過失責任を免れないと判断しています(7頁以下)。

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■コメント

最高裁サイトから判例が消えておりますが、内容的に展示会主催者が当事者である獄中絵画展示事件(知財高裁平成25.9.30平成25(ネ)10040損害賠償請求控訴事件)の別案件と思われます。この対展示会主催者事案の判断からしますと、展示会主催者との関係でパンフレット掲載による著作権侵害と氏名表示による氏名表示権侵害、プライバシー権侵害が認定されていることになります。
画廊自主企画にしろ単なる場所貸しにしろ、画廊業務において、画廊はパンフレットを宣伝のためにサイトに掲載することがあるかと思いますが、知財高裁レベルで著作権侵害に関する注意義務、過失が画廊経営者にも認められた点は参考になります。

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■過去のブログ記事

獄中絵画展示事件(2013年10月18日)
ブログ記事
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2017年06月22日

「ホストラブ」発信者情報開示請求事件−著作権 信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「ホストラブ」発信者情報開示請求事件(対NTTぷらら)

東京地裁平成29.6.2平成29(ワ)9325信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 東海林 保
裁判官    廣瀬 孝
裁判官    遠山敦士

*裁判所サイト公表 2017.6.12
*キーワード:複製権、公衆送信権、同一性保持権、発信者情報開示請求

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■事案

インターネット掲示板「ホストラブ」に無断で写真が掲載されたとして発信者情報開示請求をした事案

原告:個人
被告:インターネット接続サービス事業者

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法21条、23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 権利侵害の明白性
2 発信者情報開示を受けるべき正当理由の有無

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■事案の概要

『本件は,原告が、被告に対し,氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上の電子掲示板に写真を投稿したことにより原告の著作権(複製権,公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)が侵害されたと主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H28.02 原告がコミュニティサイト「ワクワクメール」に原告写真2を掲載
H28.11 原告がコミュニティサイト「ワクワクメール」に原告写真1を掲載

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■判決内容

<争点>

1 権利侵害の明白性

原告は平成28年10月頃、青空や白い雲などを被写体とした原告写真1をスマートフォンで撮影し、平成28年11月9日、「コミュニティサイト『ワクワクメール』」における日記に同写真を掲載しました。そして、同月10日、本件発信者が上記日記に掲載された原告写真1を複製して本件写真1を本件スレッドに掲載しました(4頁以下)。
また、原告は平成28年2月頃、花の咲いた鉢植えなどを被写体とした原告写真2をスマートフォンで撮影し、上記「ワクワクメール」における日記に同写真を掲載。そして、同年11月10日、本件発信者が上記日記に掲載された原告写真2を複製し、これを切り取り、拡大するなどした上で画像上に赤字で丸印や矢印を付した本件写真2を本件スレッドに掲載しました。

この点について、裁判所は、原告が原告写真1及び2の著作者であること、本件各記事に掲載された本件写真1及び2はそれぞれ原告の著作物である原告写真1及び2を複製したものであること、本件写真2は原告写真2の一部を切り取り、拡大するなどした上、赤字で丸印や矢印を付して改変したものであると認定。
本件発信者による本件各記事の投稿は、原告写真1及び2に係る原告の複製権及び公衆送信権並びに原告写真2に係る同一性保持権の侵害に当たると判断しています。
結論として、本件各記事が本件ウェブサイトに掲載されたことによって原告の権利が侵害されたことは明らかであると判断しています。

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2 発信者情報開示を受けるべき正当理由の有無

裁判所は、原告は本件発信者に対して原告写真1及び2の複製権及び公衆送信権並びに原告写真2の同一性保持権侵害を理由とする損害賠償請求権等を行使することができるところ、その行使をするためには、その発信者情報の開示が必要であると判断。
原告には被告から本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると認めています(6頁)。

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■コメント

無断でネット上の写真を転用されたことから転用者の情報開示をプロバイダに求めた事案です。
類似の案件となる対KDDI事件も本件の数日後に公表されています(原告側代理人が同一の事案です)。

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■関連判例

対KDDI事件
東京地裁平成29.6.9平成29(ワ)4222発信者情報開示請求事件

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 東海林 保
裁判官    遠山敦士
裁判官    勝又来未子

*裁判所サイト公表 2017.6.19

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2017年06月19日

交通事故相談会広告事件−著作権 損害賠償請求事件、著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

交通事故相談会広告事件

東京地裁平成29.2.28平成28(ワ)12608損害賠償請求事件、著作権侵害差止等請求事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    矢口俊哉
裁判官    廣瀬達人

*裁判所サイト公表 2017.6.9
*キーワード:広告、黙示的承諾、複製権、編集著作物、一般不法行為論

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■事案

交通事故相談会向けに作成されたチラシ広告の利用許諾の有無、著作物性などが争点になった事案

本訴原告兼反訴被告:弁護士
本訴被告兼反訴原告:行政書士

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■結論

本訴、反訴 請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、12条、22条、民法709条

1 利用許諾の抗弁の成否
2 改変許諾の抗弁の成否
3 一般不法行為の成否
4 原告追加部分の著作物性及び複製権侵害の成否
5 本件被告ファイルの編集著作物性の有無

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■事案の概要

『(1) 本訴請求
ア 原告は,被告が別紙5及び6の各広告(以下,順次,「被告広告1」及び「被告広告2」という。)を頒布する行為が,別紙1の広告(以下「原告広告」という)について原告が有する著作権(複製権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害し,又は原告に対する一般不法行為に該当すると主張して,被告に対し,複製権侵害又は一般不法行為に基づく財産的損害に係る損害賠償金5万円,同一性保持権侵害又は一般不法行為に基づく精神的損害に係る損害賠償金30万円及びこれらに対する不法行為後の日である平成28年4月26日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(なお,原告は,訴状添付の対比表(1)及び(2)においては,原告広告とは別の日時及び会場等に係る広告を掲載しているが,原告の主張に照らせば,原告が著作権及び著作者人格権を主張するのは原告広告であると解される。)。
イ 原告は,被告が原告広告を複製し,又は頒布する行為が,原告が有する原告広告の著作権(複製権)を侵害すると主張して,被告に対し,著作権法112条1項に基づき,原告広告の複製又は頒布の各差止めを求める。
ウ 原告は,被告が別紙7及び8の各アンケート(以下,順次「被告アンケート1」,「被告アンケート2」という。)を作成・配布する行為が,原告が作成した別紙4記載2の表(以下「本件原告ファイル」という。)のうち別紙2の赤枠内の記載に相当する部分(以下「原告追加部分」という。
なお,別紙2の書面全体は被告アンケート1である。)についての原告の著作権(複製権)を侵害すると主張して,被告に対し,著作権法112条1項に基づき,原告追加部分の複製又は頒布の各差止めを求める。』

『(2) 反訴請求
被告は,原告が本件原告ファイルの記載された宣伝広告チラシを作成・頒布する行為が,別紙3の表(以下「本件被告ファイル」という。)についての被告の著作権(複製権又は翻案権及び譲渡権)又は著作者人格権(同一性保持権)を侵害すると主張して,原告に対し,著作権法112条1項,2項に基づき,本件被告ファイルの複製又は頒布の各差止め並びに本件原告ファイルが記載された宣伝広告チラシの頒布の差止め及び廃棄を求めるとともに,同一性保持権侵害に基づく精神的損害に係る損害賠償金33万円及びこれに対する不法行為後の日である平成28年7月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。』(2頁以下)

<経緯>

H12.05 CがNPO「交通事故110番」設立
H16   NPOが全国各地で無料地方相談会を開催
H23.05 Cと被告が問い合わせフォームを作成(本件被告ファイル)
H25.01 原告が甲府での交通事故無料相談会向け広告を作成(原告広告)
H25.01 Cが原告に原告広告の提供を依頼
H28.01 被告が静岡での地方相談会向け広告を作成(被告広告1)
H28.02 被告が高崎での地方相談会向け広告を作成(被告広告2)
H28.04 原告が本訴提起
H28.06 原告が交付での無料相談会向け広告を作成

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■判決内容

<争点>

1 利用許諾の抗弁の成否

原告が、被告らに対して原告広告の利用を包括的に許諾していたかどうかについて、裁判所は、原告が被告及びH弁護士から原告広告とほぼ同一内容のH広告の作成配布をしたと明確に告げられていながら、これを何ら問題とすることなく、かえって、H広告及び原告広告が同一の広告文言及び事例の紹介を用いていることを前提に、弁護士会からの指摘を回避するための原告広告の具体的表現に関する変更を提案していたといった事情などを勘案。
仮に原告広告に著作物性があったとしても、原告は、本件NPO法人の提携専門家らに対して、少なくとも黙示的には原告広告の利用を包括的に許諾したものと認められると判断しています(24頁以下)。

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2 改変許諾の抗弁の成否

仮に原告広告に著作物性があったとしても、原告が、本件NPO法人の提携専門家らに対して、少なくとも黙示的には、原告広告の改変についても許諾したものと認められると裁判所は判断しています(27頁)。

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3 一般不法行為の成否

原告は、被告が原告広告を無断で模倣して被告広告1及び2を作成したことによって、原告が有する原告広告を模倣されないという法的保護に値する利益が侵害された旨主張しました。
この点について、裁判所は、原告の主張する利益が法的に保護されるべき利益に当たるか否かは疑問があり、また、原告は被告を含む本件NPO法人の提携専門家らに対して原告広告の複製及び改変を許諾したものと認められることから、被告が原告広告を無断で模倣したという原告の主張は、その主張の前提を欠くと判断しています(27頁以下)。

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4 原告追加部分の著作物性及び複製権侵害の成否

アンケートの原告追加部分と被告アンケート1及び2の対比について、裁判所は、著作物性(著作権法2条1項1号)の意義について言及した上で、共通する7点について検討。いずれも、ありふれた表現、あるいはアイデアの部類のものにすぎないとしてその著作物性を否定。
原告追加部分と被告アンケート1及び2の共通する部分は、いずれも著作権法によって保護される思想又は感情の創作的な表現には当たらないとして、被告アンケート1及び2は原告追加部分の複製には該当しないと判断しています(28頁以下)。

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5 本件被告ファイルの編集著作物性の有無

反訴請求において、被告は、質問事項を工夫したなどとして、問い合わせフォームである本件被告ファイルの編集著作物性(12条)を主張しましたが、裁判所は、いずれもアイデアないしありふれた表現に過ぎないとして編集著作物性を認めていません(30頁以下)。

結論として、原告の本訴請求及び被告の反訴請求はいずれも理由がないとして棄却されています。

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■コメント

別紙が添付されており内容がよく分かります。
原被告間でお互い連絡を取り合い、また、業務用のチラシとして良いところを双方で利用し合っているような状況のなかでの紛争でした。

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2017年06月12日

「高円寺ラブサイン」CD製作事件−著作権 著作権確認等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「高円寺ラブサイン」CD製作事件

東京地裁平成29.5.24平成28(ワ)9780著作権確認等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官    天野研司
裁判官    鈴木千帆

*裁判所サイト公表 2017.6.7
*キーワード:楽曲制作契約、原盤制作契約、著作権譲渡契約

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■事案

音楽CD製作にあたって、発注者側の契約内容の認識が問題となった事案

原告:カラオケクラブ経営者A
被告:レコード製作会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法61条

1 被告は原告との間で本件CD制作契約を締結するに際して本件著作権を原告に取得させる旨を約したか
2 被告が原告に本件著作権を取得できると誤信させた上で本件CD制作契約を締結したことが原告に対する不法行為に当たるか
3 被告が著作権信託契約の仕組みを説明しなかったことが原告に対する不法行為に当たるか
4 被告がJASRACに本件作品届を提出しこの事実を原告に秘していたことが原告に対する不法行為に当たるか

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■事案の概要

『1 本件は,別紙作品目録記載1(1)ないし2(2)の各作品(作品名及び作詞者により特定される歌詞並びに作品名及び作曲者により特定される曲。以下,個別には同目録の番号に応じて「本件作品1(1)」などといい,本件作品1(1)及び同(2)を併せて「本件作品1」,本件作品2(1)及び同(2)を併せて「本件作品2」という。また,本件作品1及び同2を併せて「本件各作品」という。)について,本件各作品の実演を収録したCDの制作を被告に依頼した原告が,原被告間には,被告が原告に対して本件各作品の著作権(著作権法上の著作者としての複製権,演奏権,公衆送信権等,譲渡権,貸与権,編曲権及び二次的著作物の利用に関する原著作者の権利。以下,これらを併せて「本件著作権」という。)を帰属させる旨の合意が成立していたと主張して,被告に対し,次の請求をする事案である。
(1) 主位的請求として,原告が本件著作権を有することの確認を求めた。
(2) 予備的請求1として,被告の責めに帰すべき事由により,本件著作権を原告に帰属させる債務が履行不能になったと主張して,債務不履行による損害賠償金580万9650円及びこれに対する請求後の日である平成28年4月15日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
(3) 予備的請求2として,(1)被告が,本件著作権を取得することができると原告に誤信させてCDの制作に関する契約を締結したことが詐欺の不法行為に当たる,(2)被告が,原告に対して,著作権信託契約の仕組みを説明することなく,一般社団法人日本音楽著作権協会(以下「JASRAC」という。)への申請費用を支払わせたことは,信義則上の説明義務に違反する不法行為に当たる,(3)被告が,本件各作品についてJASRACに作品届を提出し,この事実を原告に秘していたことは,原告に対する不法行為に当たる,と主張して,不法行為による損害賠償金580万9650円及びこれに対する不法行為後の日である平成28年4月15日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。』
(2頁以下)

<経緯>

H20   原告がカラオケクラブ開店
H24.04 原告が被告に157万9500円支払
H24.05 原告が被告に「6/20A&F新曲発表会記念島ゆたかSHOW」代金21万円支払
H24.06 本件CD1000枚販売
H24.07 原告が被告に「UGA・JOY通信カラオケ入曲2曲」代金31万5000円支払
H24.09 被告と作曲家Bが著作権譲渡契約、被告が音楽出版者としてJASRACに管理委託
H24.10 原告が被告に「CD再版制作(A&F)JASRAC申請含む3000枚」等代金117万7000円支払
H24.10 本件CD3000枚販売

【本件CD】
題名   高円寺ラブサイン/幸せもう一度
実演家  A&F
レーベル 被告
価格  1143円税別
リリース 2012/6/20

1. 高円寺ラブサイン 歌唱A&F/作詞B/作曲B/編曲C
2. 幸せもう一度  歌唱F
3. 高円寺ラブサイン(カラオケ)
4. 幸せもう一度(カラオケ)

「高円寺ラブサイン」「幸せもう一度」:JASRAC全信託

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■判決内容

<争点>

1 被告は原告との間で本件CD制作契約を締結するに際して本件著作権を原告に取得させる旨を約したか

原告と被告との間には本件CD制作契約が成立し、同契約には被告がその責任において本件著作権を原告に取得させる義務を負う旨の約定が含まれていたなどと主張しました(14頁以下)。
この点について、裁判所は、メモや見積書などの記載等から原告の主張を認めていません。

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2 被告が原告に本件著作権を取得できると誤信させた上で本件CD制作契約を締結したことが原告に対する不法行為に当たるか

原告は、被告が原告が本件著作権を取得することができないことを知りながら「全部,100パーセント,ママのものです。」などと発言して本件著作権を取得できる旨述べて、原告をその旨誤信させた上で原告からCD制作等の対価名目で合計328万1500円を支払わせたことが、原告に対する詐欺の不法行為を構成するなどと主張しました(15頁以下)。
この点について、裁判所は、Eが原告に対して「全部,100パーセント,ママのものです。」と述べたとの事実が認められないこと、本件見積書には本件CDに収録される作品の著作権を原告が取得することを示すような記載がないことから、Eの言動は客観的にみて原告をして本件著作権を取得できる旨誤信させるような行為とは認め難いと判断。
これを違法性ある欺罔行為ということは困難であるとして、詐欺に関する不法行為について原告の主張を認めていません。

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3 被告が著作権信託契約の仕組みを説明しなかったことが原告に対する不法行為に当たるか

原告は、被告が本件CD制作契約を締結するに際して原告に対して著作権信託契約の仕組みを説明しなかったことが原告に対する不法行為を構成すると主張しました(15頁以下)。
この点について、裁判所は、本件見積書の記載など諸事情を勘案した上で、原告の主張を認めていません。
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4 被告がJASRACに本件作品届を提出しこの事実を原告に秘していたことが原告に対する不法行為に当たるか

原告は、被告がJASRACに本件作品届を提出し、この事実を平成26年9月まで原告に秘していたことが原告に対する不法行為を構成する旨主張しました(16頁)。
しかし、裁判所は、そもそも被告が本件作品届を提出していたことを殊更原告に秘していたものとは認め難い。また、仮にそのような事実が認められるとしても本件作品届を提出したことやこれを秘していたことによって原告のいかなる権利又は法律上の利益が侵害されたというのか判然としないというほかないとして、原告のこの点に関する不法行為成立の主張を認めていません。

結論として、原告の主張をすべて認めていません。

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■コメント

CD製作を音楽愛好家に持ちかけた際に、音楽ビジネスにおける一般的な権利処理について発注者側と受注者側とでお互いに認識を深めていなかったことが紛争の根本になります。
JASRACに信託管理させる場合、音楽著作権がJASRACに帰属するとか、原盤権がどこに帰属するかといった、プロの音楽家・実演家でも権利処理についての正確な理解があるとは必ずしもいえないなか、仲介業者やレコード製作会社側とクリエーター側の情報格差は、そう簡単には埋められないところではないかと思われます。

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■参考サイト

本件CD販売サイト
高円寺ラブサイン/幸せもう一度/ラッツパック・レコード

原告ブログ
高円寺カラオケクラブ姉妹 - 楽天ブログ

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2017年06月02日

「知と文明のフォーラム」遺言書事件(控訴審)−著作権 不当利得返還等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「知と文明のフォーラム」遺言書事件(控訴審)

知財高裁平成29.4.26平成28(ネ)10108不当利得返還等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    大西勝滋
裁判官    杉浦正樹

*裁判所サイト公表 2017.5.31
*キーワード:自筆証書遺言、遺贈、死因贈与契約

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■事案

遺言書などにより著作物の著作権が譲渡されていたかどうかが争点となった事案の控訴審

控訴人 (1審原告):フォーラム団体
被控訴人(1審被告):亡Aの法定相続人

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 民法968条

1 本件文書が自筆証書である遺言書に当たるか
2 亡Aとフォーラムの間で死因贈与契約が締結されたか

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■事案の概要

『(1) 本件は,設立中の法人で,「知と文明のフォーラム」と称する団体(フォーラム)からその権利義務を承継したと主張する控訴人が,亡A(亡A)の夫で,唯一の法定相続人である被控訴人に対し,以下の各請求をする事案である。
ア 控訴の趣旨第2項に係る請求
(ア) 主位的に,フォーラムが亡Aから自筆証書(本件文書)による遺言に基づく遺贈を受けたことにより同人の別紙著作物目録記載の著作物(本件各著作物)に係る著作権を含む全ての財産を取得し,これを控訴人が承継した旨を主張し,亡Aの預金その他の財産を保有する被控訴人に対し,法律上の原因なく利得しているとして,不当利得金の内金3000万円及びこれに対する平成27年12月5日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求
(イ) 予備的に,フォーラムが亡Aから同人の全ての財産の死因贈与を受け,その地位を控訴人が承継した旨を主張し,亡Aの相続人である被控訴人に対し,死因贈与契約の履行として,亡Aの預金等の内金3000万円及びこれに対する平成27年12月5日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求
イ 控訴の趣旨第3項に係る請求
控訴人は,上記ア(ア)又は(イ)のとおり本件各著作物に係る著作権を取得したとして,控訴人が当該著作権を有することの確認を求める請求
(2) 原判決は,本件文書は遺言書として完成したものとは認められないとして,自筆証書遺言としての効力を否定するとともに,亡Aとフォーラムとの間の死因贈与契約の成立も否定して,控訴人の各請求をいずれも棄却した。
 そこで,控訴人は,原判決を不服として本件控訴を提起した。』
(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件文書が自筆証書である遺言書に当たるか
2 亡Aとフォーラムの間で死因贈与契約が締結されたか

控訴審も、争点(1)について、本件文書は遺言書の下書きないし草案であって、完成した遺言書といえるものではないから,自筆証書遺言としての効力を有しないものと判断。また、争点(2)について、亡Aとフォーラムの間で亡Aの財産に係る死因贈与契約が成立したとは認められないと判断。
結論として、原審の判断を維持して棄却しています。

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■コメント

故青木やよひ氏の著作物の著作権の帰属を巡る争いの控訴審です。
原審の判断が維持されています。

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■過去のブログ記事

2016年11月02日
原審記事
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2017年05月29日

会員情報管理システム開発事件(控訴審)−著作権 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

会員情報管理システム開発事件(控訴審)

知財高裁平成29.5.23平成28(ネ)10113損害賠償請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官    山門 優
裁判官    片瀬 亮

*裁判所サイト公表 2017.5.24
*キーワード:職務著作

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■事案

ソフトウェアの著作者性が争点となった事案の控訴審

控訴人 (1審原告):被告元従業員
被控訴人(1審被告):コンピュータ関連機器販売会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権15条2項

1 本件システム開発に関する不当利得返還請求の可否
2 被控訴人の安全配慮義務違反に基づく請求の可否
3 「会員情報管理システム」の著作者は控訴人か被控訴人か

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■事案の概要

『本件は,平成19年9月3日から平成22年5月31日までの間,被控訴人に雇用されていた控訴人が,被控訴人に対し,(1)控訴人が被控訴人の従業員として開発に従事したプログラムである「会員情報管理システム」及び「知らせますケン」並びにこれらに係るシステム(以下,これらのシステム及びプログラムを総称して「本件システム」という。)について,被控訴人が納入先から得た請負代金及び保守費用を控訴人に分配していないことが不当利得に当たると主張して,不当利得返還請求権に基づき,(1)主位的に,被控訴人が得た請負代金及び保守費用のうちの控訴人の寄与分相当額から控訴人が受領済みの賃金額を控除した額合計1938万6607円及びうち558万3703円に対する平成21年4月1日(被控訴人が「知らせますケン」の報酬金の支払を受けた日の翌日)から,うち1380万2904円に対する平成22年4月2日(被控訴人が「会員情報管理システム」の報酬金の支払を受けた日の翌日)から各支払済みまで民法704条前段所定の年5分の割合による利息(以下「法定利息」という。)の支払を,(2)予備的に,上記合計額から「会員情報管理システム」の保守費用相当額を控除した合計1318万6607円及びこれに対する法定利息の支払を求め,(2)控訴人が,被控訴人の安全配慮義務違反のために過重労働を原因とするうつ病を発症して後遺障害を生じたことから,退職及び退職後2年間の休業を余儀なくされたと主張して,債務不履行に基づく損害賠償金として,休業損害,後遺障害逸失利益及び慰謝料相当額(主位的に合計6286万2435円,予備的に合計4912万0445円)並びにこれに対する催告の後の日である平成27年8月8日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,(3)被控訴人の業務として控訴人が制作したプログラムである「会員情報管理システム」について,その制作時,被控訴人が安全配慮義務を怠っていたために控訴人に重大な労働災害(過労死)が発生する蓋然性が高い状況にあったこと等に照らすと,著作権法15条2項の適用は権利濫用ないし公序良俗違反に当たるから,職務著作とは認められないと主張して,(1)控訴人が著作者であり,被控訴人が著作者ではないことの確認を求めるとともに,(2)著作者人格権に基づき,原判決別紙技術目録記載の文言の使用禁止を求め,(4)控訴人が受領すべき保険金(平成21年2月20日発生の通勤時の事故に関するもの)を被控訴人が取得していると主張して,不当利得返還請求権に基づき,被控訴人が得た保険金のうち少なくとも8万1000円及びこれに対する平成21年5月28日(被控訴人が保険金を受領した日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による法定利息の支払を求め,(5)控訴人の訴え提起前の照会に対して被控訴人が契約書等の書面の開示を拒否したことが不法行為に当たると主張して,不法行為に基づく損害賠償金として,被控訴人及び第三者らに対する照会書等の郵送費用6866円及びこれに対する不法行為の後の日である平成28年4月5日(同年3月22日付け請求拡張申立書送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』

『原判決は,(1)控訴人の被控訴人に対する労務の提供が雇用契約に基づくものである以上,控訴人が開発した本件システムについて被控訴人が取引先から代金を受領したとしても,控訴人の損失及び被控訴人の利得の有無には何ら影響しないと認められるから,本件システム開発に関する不当利得返還請求は,その前提を欠くものである,(2)控訴人が被控訴人を退職する前後の状況や退職後の経緯等からすると,控訴人が過重労働を原因とするうつ病を発症し,労働能力を喪失していたとは認められず,被控訴人に安全配慮義務違反があったとは認められない,(3)「会員情報管理システム」は著作権法15条2項所定の職務著作に該当するから,その著作者は被控訴人である,(4)被控訴人は,平成21年2月20日に発生した控訴人の通勤時の事故に関して保険会社から受領した保険金と同額の金員を控訴人に支払済みであるから,被控訴人に利得はない,(5)被控訴人が契約書等の書面の開示に応じなかったことが控訴人に対する不法行為を構成するということはできないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
 そこで,控訴人が,これを不服として,上記(1)ないし(3)の支払等を求める限度において控訴した(原判決が上記(4)及び(5)の請求を棄却した部分は,不服の対象とされていない。)。また,控訴人は,当審において,上記(2)の予備的請求に係る損害に「会員情報管理システム」の保守費用相当額である620万円を加え,同請求を5532万0445円及び法定利息の請求に拡張した。』
(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件システム開発に関する不当利得返還請求の可否
2 被控訴人の安全配慮義務違反に基づく請求の可否
3 「会員情報管理システム」の著作者は控訴人か被控訴人か

(1)控訴人の本件システム開発に関する不当利得返還請求、(2)安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求並びに(3)「会員情報管理システム」の著作者であること等の確認請求及び著作者人格権に基づく請求を理由がないものとしていずれも棄却した原判決は相当であると控訴審も判断。控訴人が控訴審で拡張した予備的請求も理由がないとして棄却しています(9頁以下)。

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■コメント

控訴審でも原審の判断が維持されています。

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■過去のブログ記事

2016年11月19日
原審記事
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2017年05月22日

「ステラマッカートニー青山」店舗設計事件−著作権 著作者人格権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「ステラマッカートニー青山」店舗設計事件

東京地裁平成29.4.27平成27(ワ)23694著作者人格権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    村井美喜子
裁判官    廣瀬達人

*裁判所サイト公表 2017.5.15
*キーワード:建築、設計、共同著作者性、氏名表示権

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■事案

日本空間デザイン賞2015などに入賞した「ステラマッカートニー青山」ブティック店舗の外観設計について共同著作者性などが争点となった事案

原告:建築設計会社
被告:建築会社、出版社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項2号、19条、115条

1 原告が共同著作者であるか
2 原告が原著作者であるか

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■事案の概要

『本件は,建築設計等を目的とする原告が,自らが別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)の共同著作者(主位的主張)又は本件建物を二次的著作物とする原著作物の著作者(予備的主張)であるにもかかわらず,(1)被告竹中工務店が本件建物の著作者を同被告のみであると表示したことにより,そのように表示された賞を同被告が受賞したこと,及び,(2)被告竹中工務店の上記表示を受けて,被告彰国社がそのように表示された書籍を発行・販売してこれを継続していることが,原告の有する著作者人格権(氏名表示権)を侵害する行為であると主張して,【1】被告らに対し,(1)原告が本件建物について著作物人格権(氏名表示権)を有することの確認,及び,(2)民法719条及び709条に基づき,慰謝料100万円(上記書籍の販売等に係るもの)及びこれに対する不法行為の日の後である平成27年6月17日から支払済みまで民法所定の割合による遅延損害金の連帯支払を,【2】被告竹中工務店に対し,(1)民法709条に基づき,慰謝料200万円(上記受賞に係るもの)及びうち100万円に対する不法行為の日の後である同月30日から,うち100万円に対する不法行為の日の後である同年7月10日から各支払済みまで民法所定の割合による遅延損害金の支払,並びに,(2)著作権法115条に基づく名誉回復措置としての通知及び謝罪広告の掲載を,【3】被告彰国社に対し,(1)同法112条1項に基づき,上記書籍の複製及び頒布の差止め,(2)同条2項に基づき,上記書籍の回収及び廃棄,並びに,(3)同法115条に基づき,名誉回復措置として謝罪広告の掲載を,それぞれ求める事案である。』
(2頁以下)

<経緯>

H24.12 エーエイチアイが被告竹中工務店に設計建築を依頼
H25.05 被告竹中工務店が設計資料を作成
H25.06 エーエイチアイが原告に外観デザイン監修を依頼
H25.09 原告が図面、立体模型を作成
H25.09 エーエイチアイ、原告、被告竹中工務店が打合せ
H26.10 本件建物が完成
H27.06 「DSA 日本空間デザイン賞2015」入選
H27.06 被告彰国社が本件書籍発行
H27.07 「JCD Design Award2015」準大賞受賞

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■判決内容

<争点>

1 原告が共同著作者であるか

原告は、原告代表者が本件建物のファサード上部に組亀甲柄を元にした立体格子を設置することを提案しており、本件建物の外観設計に関して原告代表者の創作的関与等があると主張しました(22頁以下)。

(1)原告代表者の創作的関与について

裁判所は、創作的表現(著作権法2条1項1号)及び「建築の著作物」(同法10条1項5号)の意義について言及した上で、本件について検討。

「原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表者の提案は,被告竹中工務店設計資料を前提として,その外装スクリーンの上部部分に,白色の同一形状の立体的な組亀甲柄を等間隔で同一方向に配置,配列するとのアイデアを提供したものにすぎないというべきであり,仮に,表現であるとしても,その表現はありふれた表現の域を出るものとはいえず,要するに,建築の著作物に必要な創作性の程度に係る見解の如何にかかわらず,創作的な表現であると認めることはできない。更に付言すると,原告代表者の上記提案は,実際建築される建物に用いられる組亀甲柄の具体的な配置や配列は示されていないから,観念的な建築物が現されていると認めるに足りる程度の表現であるともいえない。」(24頁)

として、本件建物の外観設計について原告代表者の共同著作者としての創作的関与を否定しています。

(2)「共同して創作した」といえるかについて

仮に、として、裁判所は、本件建物の外観設計における原告代表者の創作的関与の有無の点はともかくとして、被告竹中工務店の設計担当者は本件打合せで原告代表者から原告設計資料及び原告模型に基づく提案内容の説明を聞いたことはあるものの、原告との共同設計の提案を断り、その後、原告代表者と接触ないし協議したことはないといった経緯などから、共同創作の意思や事実を否定しています(25頁以下)。

結論として、原告が本件建物の共同著作者であるとは認められていません。

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2 原告が原著作者であるか

原告は、仮に、原告が本件建物の共同著作者であるとは認められないとしても、被告竹中工務店は原告設計資料及び原告模型に基づく提案内容を翻案して本件建物を創作しているとして、本件建物は原告の提案内容を原著作物とする二次的著作物に当たり、原告は二次的著作物である本件建物の原著作物の著作者である旨主張しました(26頁以下)。

(1)原著作物性について

裁判所は、原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表者の提案は創作的な表現であるとはいえないとして、これに著作物性を認めることはできない(建物の著作物性を認めることもできない)と判断しています(26頁)。

(2)被告竹中工務店による翻案について

また、仮に、として、裁判所は、原告設計資料及び原告模型に係る原告代表者の提案についての著作物性の有無の点を措くとしても、原告設計資料及び原告模型と本件建物とはその表現上の重要な部分において多くの相違点があり、本件建物から原告設計資料及び原告模型における表現上の本質的特徴を感得することはできないと判断。被告竹中工務店が原告設計資料及び原告模型に係る原告代表者の提案を翻案して本件建物の設計を完了したとか、本件建物が上記提案の二次的著作物に当たるとは認められないとしています(26頁以下)。

結論として、原告が本件建物の原著作者であると認めていません。

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■コメント

ファッションブランド「ステラマッカートニー」(Stella McCartney ポール・マッカートニーの娘が設立)の青山店(表参道 みゆき通り 港区南青山)の外観設計の共同著作者性が争点となった事案です。
みゆき通りに行って見てみましたが、この界隈にあるブティックやスイーツショップの店舗外観はどれも個性的です。本件建物と通りを挟んで斜め向かい側には、プラダの店舗がありますが、プラダはガラスの菱形状の特徴的な店舗外観で、編込み様の立体形状の組亀甲柄を用いた本件建物の意匠もこの立地であれば、その「佇まい」も納得するものでした。
(なお、デザインコンセプトとして、「光を纏ったキューブを街に浮かべる」という点があることから、機会をみて夜間に足を運んでみたいと思います。)

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■参考サイト

一般社団法人 日本商環境デザイン協会
2015入賞者リスト


1

2
(格子柄が特徴的な店舗外観 2017年5月18日撮影)
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2017年05月17日

BSS−PACKソフト営業秘密事件(控訴審)−著作権 不正競争行為差止等控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

BSS−PACKソフト営業秘密事件(控訴審)

知財高裁平成29.4.27平成28(ネ)10107不正競争行為差止、プログラム著作権確認各請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 森 義之
裁判官    森岡礼子
裁判官    中村 恭

*裁判所サイト公表 2017.5.12
*キーワード:プログラム、著作権譲渡契約、営業秘密

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■事案

ソフトウェアの著作権譲渡に伴って営業秘密も移転していたかどうかなどが争点となった事案の控訴審

控訴人 :ソフトウェア開発販売会社ら
被控訴人:コンピュータ情報処理サービス会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法61条2項、不正競争防止法2条1項4号、5号、10号

1 本件営業秘密部プログラムは原告らの営業秘密であるか等

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■事案の概要

『第1事件は,控訴人(一審原告)ソフトウェア部品株式会社(以下「控訴人ソフトウェア部品社」という。)が,被控訴人(一審被告)に対し,別紙BSS―PACK中核部(ミドルソフト)営業秘密部プログラム目録記載のプログラム(オブジェクトコード及びソースコード。以下「本件営業秘密部プログラム」という。)が,控訴人ソフトウェア部品社の営業秘密に当たるところ,被控訴人がこれを取得して使用し,被控訴人製品を製造して販売したことが不正競争防止法2条1項4号,5号及び10号に該当すると主張して,不正競争防止法3条1項に基づき,被控訴人製品の販売の差止を求めるとともに,同条2項に基づき,被控訴人製品の廃棄等を求める事案である。控訴人(第1事件参加人・第2事件原告)株式会社ビーエスエス(以下「控訴人ビーエスエス社」という。),同株式会社ソフトウエア部品開発株式会社(以下「控訴人ソフトウエア部品開発社」という。),同X1(以下「控訴人X1」という。)及び同X2(以下「控訴人X2」という。)は,いずれも,控訴人ソフトウェア部品社から,本件営業秘密部プログラムの持分の譲渡を受け,控訴人ソフトウェア部品社と,本件営業秘密部プログラムを共有するに至ったと主張して,承継参加を申し出て,前記の控訴人ソフトウェア部品社の各請求と同じ各請求をしている。
 第2事件は,控訴人らが,被控訴人に対し,別紙プログラム目録記載1〜3の各プログラム(以下「本件先行ソフトウェア部品プログラム」という。)について,原著作権又は二次的著作権を有すると主張して,本件先行ソフトウェア部品プログラムの著作権を有することの確認を求める事案である。』

『原判決は,控訴人ビーエスエス社が本件営業秘密部プログラムについての営業秘密や本件先行ソフトウェア部品プログラムについての著作権を有していたとしても,これらは株式会社サンライズ・テクノロジー(以下「サンライズ社」という。)に譲渡されており,控訴人らが現時点でこれらを有するということはできないとして,控訴人らの第1事件及び第2事件に係る各請求をいずれも棄却したため,控訴人らは,これを不服として本件控訴を提起した。』
(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件営業秘密部プログラムは原告らの営業秘密であるか等

知財高裁も、控訴人らが本件営業秘密部プログラムについての営業秘密や本件先行ソフトウェアプログラムに関する本件各著作権を有するということはできないと判断した原判決は相当であると判断。控訴を棄却しています(9頁以下)。

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■コメント

原審の判断を維持して、控訴を棄却しています。

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■過去のブログ記事

BSS−PACKソフト営業秘密事件
原審記事(2016年11月01日)

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2017年04月06日

あぶらとり紙包装紙デザイン事件−著作権 著作権侵害損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

あぶらとり紙包装紙デザイン事件

東京地裁平成29.3.23平成28(ワ)16088著作権侵害損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    萩原孝基
裁判官    中嶋邦人

*裁判所サイト公表 2017.4.3
*キーワード:著作権者性

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■事案

あぶらとり紙商品の包装デザインの著作権の帰属などが争点となった事案

原告:健康食品製造販売会社
被告:箔加工品製造販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条2項、61条1項

1 本件著作物の著作者及び著作権者

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,原告は別紙著作物目録記載の「ふるや紙」等の文字及び図柄からなるデザイン(以下「本件著作物」という。)の著作権者であるところ,被告が製造販売する別紙被告商品目録の記載の商品(以下「被告商品」という。)のデザイン(同目録「表」欄記載のもの。以下「被告デザイン」という。)は本件著作物に依拠して作成されたものであり,原告の著作権(複製権)の侵害に当たると主張して,民法709条,著作権法114条2項に基づき損害賠償金の一部2000万円及びこれに対する不法行為の日の後(訴状送達の日の翌日)である平成28年5月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』(1頁以下)

<経緯>

S51 被告が「ふるや紙」名称のあぶらとり紙を製造販売
    原告が被告から商品を仕入れて販売
H10 原被告間の取引終了
H12 被告が被告商品を製造販売
H27 Bが被告に書面送付

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■判決内容

<争点>

1 本件著作物の著作者及び著作権者

本件著作物の著作者及び著作権者について、本件著作物はBが作成したものであり、Bから原告代表取締役Aに、さらに、Aから原告へその著作権が譲渡されたと原告は主張しました。
この点について、裁判所は、本件著作物の作成者がBである根拠がないなどの点を含め、原告の主張を裏付ける客観的な証拠はないとして、原告が本件著作物の著作権者であると認めることはできないと判断。原告の主張を認めていません(6頁以下)。

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■コメント

15年以上前の包装紙デザインの制作の経緯について、当事者間で事実が大きく食い違っている事案です。被告は、本件著作物と被告デザインが同一又は類似であることを争っていません。
原告は、本件著作物の著作物性について、

・特に「紙」の文字の「氏」部の4画目が1画目の上に突き出ている点
・「糸」偏の形状、「る」の文字が小さく配置されている点
・「や」の文字の3画目の先の部分をかすれさせている点

などが特徴的で、全体として独創的かつ伝統的な雰囲気を醸し出している著作物であり、「ふるや紙」の文字の右上にある模様も同様であるとして、美的創作性を有する著作物性であると主張しました。
この論点について裁判所は判断していませんが、仮に判断されるとしても書や包装紙のデザインとして著作物性があるかどうかは、微妙な判断となりそうです。
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2017年04月04日

Windows8海賊版販売事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

Windows8海賊版販売事件

大阪地裁平成29.2.20平成28(ワ)10506損害賠償請求事件PDF

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 高松宏之
裁判官    田原美奈子
裁判官    林啓治郎

*裁判所サイト公表 2017.3.28
*キーワード:海賊版販売、損害論

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■事案

マイクロソフトWindows8やOffice2013などの海賊版をヤフオクで販売した事案

原告:マイクロソフト
被告:個人

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法21条、23条、114条3項

1 侵害論
2 損害論

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■事案の概要

『被告は前述第1の2項の行為に関連して、平成26年8月11日頃から同27年5月17日頃までの間、ヤフー株式会社が運営する「ヤフオク!」において、「P2」という Yahoo!JapanID を利用して、別紙被告商品一覧表の商品欄記載の商品(本件各プログラム)を販売していた(甲2の1,2)。そして、少なくとも、被告は平成27年1月28日から同3月7日までの間、本件各プログラムを、購入申込者と思われるものに対して、ダウンロードさせていた』事案(5頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 侵害論

被告は、ヤフオクで原告のソフトウェアの海賊版を販売し、原告の著作権及び商標権を侵害したとして、著作権法違反及び商標法違反の罪で判決が確定していました。
被告は、本訴において著作権(複製権及び送信可能化権)侵害に基づく損害賠償債務の存在について争っておらず、原告主張の各事実について自白したものと見なされています(2頁)。

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2 損害論

著作権侵害による使用許諾料相当額の損害
について、原告は、被告が落札者に本件各プログラムをダウンロードさせて販売した回数にプログラムの販売価格を乗じた金額の2965万3992円及び弁護士費用相当額損害296万円の合計3261万3922円を損害額とし、その一部である280万円を本訴において請求しました(2頁以下)。
結論として、裁判所は原告の主張を認めています。

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■コメント

ビジネスソフトの海賊版販売に関して刑事事件に引き続く民事事件となります。
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2017年03月31日

車両運行管理ソフト営業誹謗事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

車両運行管理ソフト営業誹謗事件

東京地裁平成29.3.16平成27(ワ)37329損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    萩原孝基
裁判官    林 雅子

*裁判所サイト公表 2017.3.27
*キーワード:営業誹謗、ライセンス契約、包括的許諾

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■事案

車両運行管理ソフトのライセンス契約を巡って営業誹謗行為があったかどうかなどが争点となった事案

原告:情報通信システム企画販売会社、代表取締役
被告:コンピュータ装置製造販売会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法22条、不正競争防止法2条1項15号

1 本件端末交換等の必要性の有無
2 本件複製行為に対する被告の許諾の有無
3 不正競争に関する被告の故意又は過失の有無
4 損害額

   --------------------

■事案の概要

『本件は,原告会社が被告から継続的に購入して顧客に納入していたGPSシステム端末及びソフトウェアにつき,(1)原告会社が必要のない端末の入替え及びソフトウェアの著作権(複製権)侵害を行っている旨の虚偽の事実を被告が上記顧客に対して文書で告知した行為が不正競争防止法2条1項15号の不正競争に該当すると主張して,原告会社が,被告に対し,同法4条に基づき損害賠償金330万円及びこれに対する不法行為の日の後(訴状送達の日の翌日)である平成28年1月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,(2)原告らの本件損害賠償債務(被告のソフトウェアについての著作権(複製権)侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権)の有無について被告が争っていると主張して,原告らが,被告に対し,本件損害賠償債務の不存在確認をそれぞれ求める事案である。』(2頁)

<経緯>

H18.11 原告XがTMS−1を被告から継続的に購入
H21.07 原告会社設立
H24.06 原告会社が成田運輸から受注
H24.10 原告会社がTMS−1売買契約解除の意思表示
H25.06 被告が甲11文書を70社に送付
H25.07 被告が甲12文書を70社に送付

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■判決内容

<争点>

1 本件端末交換等の必要性の有無

被告の事業所ASP事業部名義の平成25年6月20日付け文書(甲11文書)は、地図ソフトの新バージョンへの移行に際して車載端末を入れ替える必要が全くないにもかかわらず、これがあるかのように原告会社が顧客に対して説明し、この説明に基づいて端末全数が入れ替えられた事実を摘示するものでした。この事実が虚偽であるかどうかについて、裁判所は、結論として同事実を虚偽と認定。原告会社と被告は競争関係にあり、当該文書の摘示する事実はその内容に鑑みると原告会社の営業上の信用を害するものであるとして、被告による当該文書の送付は、不正競争防止法2条1項15号の不正競争に該当すると判断しています(8頁以下)。

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2 本件複製行為に対する被告の許諾の有無

原告らは、原告会社による本件基地局ソフト2の複製を被告が包括的に許諾していたとして、原告会社がこれを違法にコピーした旨の被告の文書(「違法コピーのご報告及び今後のご連絡」と題する被告代表取締役及びASP事業部部長の連名の平成25年7月10日付け文書 甲12文書)の記載は虚偽であり、原告らは著作権侵害に基づく本件損害賠償債務を負わない旨主張しました(10頁以下)。
この点について、裁判所は、被告の包括的許諾は認められないとして、本件基地局ソフト2の複製につき包括的な許諾があったことを前提に、甲12文書の送付が不正競争に当たるとする原告会社の損害賠償請求及び著作権侵害による損害賠償債務を負わないとする原告らの債務不存在確認請求は、いずれも理由がないと判断しています。

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3 不正競争に関する被告の故意又は過失の有無

甲11文書を顧客に対して送付した行為が不正競争防止法2条1項15号の不正競争に該当するところ、裁判所は、被告には不正競争につき過失があると認定しています(14頁以下)。

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4 損害額

甲11文書に関する不正競争による原告会社の損害について、裁判所は、原告会社の営業上の信用が損なわれたことによる損害額を50万円、弁護士費用相当額損害を10万円、合計60万円を損害額として認定しています(15頁)。

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■コメント

運送会社で車両の位置や運行状態をリアルタイムに把握して車両の運行等を管理するシステムのライセンス契約を巡る争いとなります。
被告が作成して原告の取引先に送付した文書の営業誹謗行為性に関連して、原告らによる被告ソフトの無許諾インストール使用が複製権侵害にあたるかどうかが事実認定として争点の1つとなっています。

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2017年03月30日

ストレッチポール健康器具ドメイン事件−損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ストレッチポール健康器具ドメイン事件

大阪地裁平成29.3.21平成28(ワ)7393損害賠償請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 森崎英二
裁判官    田原美奈子
裁判官    大川潤子

*裁判所サイト公表 2017.3.27
*キーワード:不正目的ドメイン使用、名誉毀損

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■事案

他社商品名を含むURLを取得して当該商品の信用を毀損するようなサイトを運営していた者の著作権侵害性などが争点となった事案

原告:工業用ゴム製品製造販売会社
被告:ウェブサイト運営者

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法32条、不正競争防止法2条1項13号

1 本件ウェブページによる名誉棄損の成否
2 名誉棄損の免責事由の有無
3 被告の行為が著作権(複製権、公衆送信権)侵害に該当するか
4 本件日本語ドメイン名を使用する行為が不正競争防止法2条1項13号の不正競争に該当するか
5 損害論

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■事案の概要

『本件は,「アクシスフォーマー」との名称の健康器具を販売している原告が,その開設するウェブサイトで原告の上記製品についてのコメント等を掲載している被告に対し,下記請求をした事案である。(以下、略)』(1頁以下)

<経緯>

H28.01 発信者情報開示請求訴訟判決(前件訴訟)

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■判決内容

<争点>

1 本件ウェブページによる名誉棄損の成否

被告が運営しているウェブサイト下のウェブページ(本件ウェブページ)に掲載されている本件記載は、原告製品が他社製品の模倣品であり、同等規格製品と比較すると芯材部分が抜けやすく、芯材中央が凹んでいるなどの欠陥を有する粗悪品であることなどを指摘する内容でした。
本件ウェブページによる名誉棄損の成否について、裁判所は、本件ウェブサイトにアクセスして本件記載に接した一般の需要者は、原告製品は粗悪品であって信用できず、ひいてはその製造者である原告も信用できない企業であると認識するものであると判断。
本件ウェブページの記載が原告の社会的評価を低下させ信用を棄損することは明らかであるとして、本件ウェブページに本件記載を掲載した被告の行為は原告の名誉を毀損する行為であると認定しています(12頁以下)。

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2 名誉棄損の免責事由の有無

名誉棄損の免責事由の有無について、裁判所は、結論として、専ら公益を図る目的を欠くなどとして違法性阻却による不法行為責任の免責を認めていません(13頁以下)。

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3 被告の行為が著作権(複製権、公衆送信権)侵害に該当するか

別紙対比表1、2の「被告侵害部分」で特定された原告コンテンツの各記載について、裁判所は、その内容や記載の順序、文体等に照らして原告の個性が表出されているものと認められるとして、これらはいずれも原告の思想又は感情を創作的に表現したものとして著作権法上の著作物(著作権法2条1項1号)であると判断。原告はその作成者としてその著作権(複製権、公衆送信権)を有すると認定しています。
その上で、被告は原告コンテンツをそのまま自らの本件ウェブページに転載しており、不特定多数の者が本件ウェブサイトにアクセスして本件ウェブページを自由に閲覧することができるものであることから、被告は原告の複製権及び公衆送信権を侵害したと判断しています(14頁以下)。
なお、被告は引用(32条1項)に該当する旨反論しましたが、裁判所は、被告の行為は原告製品ひいては原告の信用を毀損する目的でされた違法な行為であり、その引用が「公正な慣行に合致するもの」とも「引用の目的上正当な範囲内で行なわれる」ものともいうことはできないとして、被告の主張を認めていません。

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4 本件日本語ドメイン名を使用する行為が不正競争防止法2条1項13号の不正競争に該当するか

被告が運営していた「アクシスフォーマー.com」(本件日本語ドメイン名)は、原告の特定商品等表示と類似のドメイン名でした。裁判所は、本件ウェブサイト自体が原告に損害を加える目的で開設されたサイトであると認定。本件ウェブサイトの開設者である被告は、原告に損害を加える目的で原告の特定商品等表示である原告製品名と類似の本件日本語ドメイン名を使用したものというべきであり、これは不正競争防止法2条1項13号の不正競争に該当すると判断しています(15頁以下)。

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5 損害論

(1)本件記載を本件ウェブページに掲載したことによる損害額について

名誉棄損による無形損害の損害額 50万円

(2)本件日本語ドメイン名の使用料相当額について

  3万円

(3)原告コンテンツの著作権侵害による利用許諾相当額について

  3万円

(4)前件訴訟の弁護士費用相当の損害額について

  4万円

(5)本件訴訟の弁護士費用相当の損害額について

  5万円

上記合計65万円を損害額として認定しています(16頁以下)。

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■コメント

裁判所サイトでは別紙1乃至3がPDFで個別に添付されていますが、対比表の内容が省略されていて白紙のため、リンクが貼られていても意味がないものとなっています。そのため、楽天市場のサイト内の記載ということで原告の著作物の概要は分かりますが、対象となる著作物の正確な内容は分かりません。
原告商品のアクシスフォーマーは、1M程度の長さの円柱形の健康器具で、ストレッチをする時に用いられるものです(いわゆるストレッチポール、ヨガポール)。芯材がポリプロピレン(発泡材)で外皮が合成皮革となっており、発砲材だけのものより高級感がありそうです。

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■参考サイト

【楽天市場】アクシスフォーマー
共和ゴムwebshop
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2017年03月27日

「柴田是真 下絵・写生集」書籍印刷用データ流用事件−損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「柴田是真 下絵・写生集」書籍印刷用データ流用事件

大阪地裁平成29.1.12平成27(ワ)718損害賠償等請求事件PDF
別紙

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 高松宏之
裁判官    田原美奈子
裁判官    林啓治郎

*裁判所サイト公表 2017.3.21
*キーワード:所有権、無体物、データ、黙示の合意、信義則

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■事案

印刷会社保有の書籍印刷用データの無断流用が債務不履行などに該当するかどうかが争点となった事案

原告:出版社
被告:印刷会社、出版社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 民法85条、著作権法32条1項

1 被告ニューカラー写真印刷が本件絵画データを使用したか
2 原告が本件印刷用データを所有しているか
3 原告と被告ニューカラー写真印刷が原告書籍の出版の際本件合意をしたか
4 原告は本件写真データの使用を許諾したか
5 本件写真データの使用について著作権法32条1項が類推適用されるか
6 損害額又は本件印刷用データの使用料
7 不法行為責任の成否
8 被告光村推古書院の本件合意違反による不法行為責任の成否

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■事案の概要

『原告は,被告らが,原告が「柴田是真 下絵・写生集」との題名の書籍(以下「原告書籍」という。)を出版した際に製作された印刷用のデータ(以下「本件印刷用データ」という。ただし,その具体的な内容は,当事者間に争いがある。)を使用して,「柴田是真の植物図」との題名の書籍(以下「被告書籍」という。)を印刷・製本し,出版したと主張して,被告らに対し,以下の請求をした。(以下、略)』(2頁以下)

<経緯>

H16.08 原告と東京芸大美術館が刊行申合せ
H17.02 原告被告ニューカラー間見積書(962万1200円)
       原告が被告ニューカラーに840万円支払
H25.07 被告光村推古書院と東京芸大美術館が被告書籍合意
H25.08 被告光村推古書院が東京芸大美術館に62万6850円支払
       被告光村推古書院が被告ニューカラーに252万円支払
H27.12 原告が日本書籍出版協会会員420社へ照会実施

原告書籍:「柴田是真 下絵・写生集」(平成17年4月11日初版発行)
被告書籍:「柴田是真の植物図」(平成25年9月20日初版発行)

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■判決内容

<争点>

1 被告ニューカラー写真印刷が本件絵画データを使用したか

本件絵画データは、原告書籍の出版の際に原告が東京芸大美術館の許可を得て撮影・製作させた柴田是真の絵画のリバーサルフィルム(反転フィルム。現像の過程において露光・第一現像後、反転現像によってポジ画像(陽画)を得る構造を持つ写真フィルム)に基づいて被告ニューカラー写真印刷が製作当初から印刷に至る最終過程までの間に製作したすべての印刷用データでした。

裁判所は、
(1)被告光村推古書院は被告書籍を発行するに当たって東京芸大美術館から原板使用許可を受けて62万6850円を支払っている
(2)東京芸大美術館は原板使用許可の際には画像データを送付しており、被告光村推古書院に対しても写真原板ではなく画像データを送付したものと考えられ本件の提訴後に原告が東京芸大美術館から送付を受けた画像データはRGBデータであったことからすると、被告光村推古書院が送付を受けた画像データはRGBデータであったと推認される
(3)RGBデータをCMYKデータに変換して被告書籍の掲載形態とすることは可能である
(4)原告書籍と被告書籍の間には掲載した絵画や掲載形態に相違があることが認められる

といった点から、被告ニューカラー写真印刷は、東京芸大美術館から送付を受けた画像データを用いて被告書籍を制作した可能性があると認定。
結論として、被告ニューカラー写真印刷が被告書籍の出版に当たって、本件絵画データを使用したと認めることはできないと判断。本件の被告ニューカラー写真印刷に対する原告の各請求を認めていません(20頁以下)。

次に、宮内庁所蔵に係る明治宮殿「千種の間」の室内写真2葉(本件写真)のデータについて、被告ニューカラー写真印刷が被告書籍の出版の際に本件写真データ(本件印刷用データのうち、本件写真に係るデータ)を使用したことは当事者間に争いがないため、以下、本件写真データの使用との関係で原告の被告ニューカラー写真印刷に対する各請求が検討されています。

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2 原告が本件印刷用データを所有しているか

原告が本件印刷用データを所有しているかどうかについて、裁判所は、被告ニューカラー写真印刷は、本件印刷用データが保存された記録媒体を所持しているところ、民法上の所有権の客体である「物」は「有体物」に限定されており(民法85条)、本件印刷用データそれ自体はデジタル化された情報であって無体物であるため所有権の客体たり得ず、原告が同データを所有する旨の原告の主張は採用することができないと判断しています(27頁以下)。

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3 原告と被告ニューカラー写真印刷が原告書籍の出版の際本件合意をしたか

原告は、原告書籍の出版の際に被告ニューカラー写真印刷との間で本件印刷用データを原告以外の出版社の出版物の印刷・製本に使用する場合は原告の許諾を得た上で当該出版社が原告に使用料を支払うこととする旨の合意が成立している旨主張しました(28頁以下)。

この点について、裁判所は、原告書籍の出版の際に原告は被告ニューカラー写真印刷に対して原告書籍の印刷・製本の対価を支払っており、その前提として原告と被告ニューカラー写真印刷は契約書は作成していないものの、原告書籍に関する印刷・製本契約を締結したと認定。
原告書籍の印刷・製本契約における本件合意の有無については、日本書籍出版協会会員などへのアンケート調査結果などから、一般に、印刷・製本契約を締結した出版社と印刷業者との間では印刷業者は出版社の許諾を得ない限り、印刷用データの再利用をすることができないとの商慣行が存在していると認めるのが相当であると判断。
本件において、原告と被告ニューカラー写真印刷との間の原告書籍に関する印刷・製本契約において、上記の商慣行にのっとり、被告ニューカラー印刷は原告の許諾を得ない限り本件印刷用データの再利用をすることができないとの黙示の合意がされたと認めるのが相当であり、そうでないとしても被告ニューカラー印刷は印刷・製本契約に付随して原告の許諾を得ない限り本件印刷用データの再利用をすることができないとの義務を信義則上負うと解するのが相当であると判断しています。

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4 原告は本件写真データの使用を許諾したか

結論として、原告が本件写真データの使用を許諾したと認めることはできないと判断されています(35頁以下)。

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5 本件写真データの使用について著作権法32条1項が類推適用されるか

被告らは、原告書籍からの転載が宮内庁による許可の条件とされていたため、被告らは被告書籍に原告書籍からの転載である旨を明示したものであり、著作権法32条1項「引用」の類推適用により原告の許諾がなくとも本件写真データを使用できる旨主張しましたが、裁判所は、「本件写真データの使用につき原告の許諾を要するか否かは,被告書籍を出版する際に,原告書籍に掲載された本件写真を転載する方法に関わる事項であるにすぎず,本件写真を転載するに当たり,原告書籍のために作成された本件写真データを利用する内容上の必要性があるというわけではないから,同項の類推適用の基礎を欠くというべきである」として、被告らの主張を認めていません(38頁以下)。

結論として、被告ニューカラー写真印刷は、原告に無断で本件写真データを使用したことにつき、原告に対して債務不履行による損害賠償責任を負う(予備的請求1)と判断されています。

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6 損害額又は本件印刷用データの使用料

原告は、原告書籍の出版の際に本件写真の撮影を株式会社エスエス東京に依頼して同社に6万9300円を支払っていたこと、また、原告は他社から原告が出版した書籍に掲載された写真3枚を紹介映像に使用したい旨の依頼を受けた際に1枚当たり3万円(税別)の使用料の支払を条件として使用を許可していました。
こうした点から、裁判所は、原告は被告ニューカラー写真印刷に本件写真データの再利用を許諾する際には相当額の使用料を徴収していたと考えられ、その際の使用料相当額が被告ニューカラー写真印刷による債務不履行に係る損害額となると判断。
被告ニューカラー写真印刷について、本件写真データの使用料は写真1枚につき3万円と認めるのが相当であり、原告は2枚の写真から成る本件写真データの使用料相当額の損害を被っている損害額は6万円と認定しています(39頁以下)。

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7 不法行為責任の成否

被告ニューカラー写真印刷又は被告光村推古書院が、被告書籍のために本件印刷用データを再利用する場合に原告の許諾を得た上で使用料を支払う旨の慣習法上・条理上の義務又は不文律違反の不法行為責任を負うかについて、裁判所は、本争点は予備的請求2に係るものであるものの、仮に本争点について被告ニューカラー写真印刷の責任が認められるとしても、それによる損害額が争点6で認定した額を超えるとは認められないとして、本争点について検討するまでもなく、予備的請求1に係る後記認容額を超える部分に係る予備的請求2は理由がないと判断しています(40頁)。

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8 被告光村推古書院の本件合意違反による不法行為責任の成否

被告光村推古書院について、被告ニューカラー写真印刷による債務不履行に加担したことが原告が被告ニューカラー写真印刷に対して有する債権侵害としての不法行為を構成するかどうかについて、裁判所は、結論として不法行為の成立を肯定。本件写真データの使用料相当額として6万円を損害額(不真正連帯債務関係)として認定しています(40頁以下)。

結論としては、原告の請求の趣旨に鑑みて、各被告について3万円の損害賠償及びその遅延損害金の限度で認容されています。

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■コメント

原告書籍は、1800年代に活躍した江戸蒔絵を継承する蒔絵師、柴田是真の天井図下絵や写生帖から成る絵画を内容とするもので、絵画は東京藝術大学大学美術館が所蔵していました(書籍の価格は1万5000円)。
印刷用データの取扱いについて、原告側が印刷業者への詳細なアンケート調査を実施することで、印刷業者による印刷用データの無断流用(二次使用)が商慣習上認められていない点を裁判所に認めさせた部分は、近時の印刷業界におけるデータの権利関係に関する意識調査としてもたいへん参考になるかと思われます。
本件では、著作権の保護期間が切れている著作物が対象で著作権が中心の争点にはなりませんでしたが、無体物であるデータと所有権の関係、印刷用データの取扱いにおける契約上留意する点など(データ保存期間や流用禁止期間、契約期間なども併せて)について、示唆に富んだ事例といえます。


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■参考資料

東京都印刷工業組合「組合ガイド」(平成14年3月20日発行)
『「印刷版」・「印刷データ」の権利帰属』
PDF(ダウンロード)


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2017年03月21日

サプリ会員登録サイトHTML制作事件(控訴審)−著作権 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

サプリ会員登録サイトHTML制作事件(控訴審)

知財高裁平成29.3.14平成28(ネ)10102損害賠償請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官    古河謙一
裁判官    鈴木わかな

*裁判所サイト公表 2017.3.15
*キーワード:サイト制作、HTML、創作性

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■事案

連鎖販売取引に関する通販管理システムのサイトのHTML部分の創作性が争点となった事案の控訴審

控訴人 (1審原告):ソフト開発会社
被控訴人(1審被告):サプリ製造販売会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号

1 本件プログラムの著作物性及び著作者

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■事案の概要

『(1)本件は,控訴人が,被控訴人に対し,被控訴人は,控訴人が被控訴人との契約(本件契約)に基づいて作成し,被控訴人に使用させていた通販管理システム(本件システム)を機能させるためのプログラム(本件プログラム)を,本件契約終了後に違法に複製し,本件プログラムの著作権(複製権)を侵害したとして,不法行為(民法709条)に基づき,本件契約終了日の翌日である平成25年11月1日から平成26年12月31日までの著作権法114条3項による損害の賠償等及び遅延損害金の支払を求めた事案である。
(2)原判決は,本件プログラムに含まれるHTML(本件HTML)についても本件プログラムについても,控訴人の従業員が創作的表現を作成したと認めるに足りず,したがって,仮に本件HTMLや本件プログラムの一部に創作的表現が含まれるとしても,控訴人が本件HTMLや本件プログラムの著作者であるとはいえないとして,控訴人の請求を棄却した。
 控訴人は,原判決を不服として控訴した。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 本件プログラムの著作物性及び著作者

プログラムの著作物性について、控訴審は、

『著作物性が認められるためには,創作性(著作権法2条1項1号)を要するところ,創作性は,表現に作者の個性が表れていることを指すものと解される。プログラムは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(同条1項10号の2)であり,コンピュータに対する指令の組合せであるから,正確かつ論理的なものでなければならないとともに,著作権法の保護が及ばないプログラム言語,規約及び解法(同法10条3項)の制約を受ける。そうすると,プログラムの作成者の個性は,コンピュータに対する指令をどのように表現するか,指令の表現をどのように組み合わせるか,どのような表現順序とするかなどといったところに表れることとなる。したがって,プログラムの著作物性が認められるためには,指令の表現自体,同表現の組合せ,同表現の順序からなるプログラムの全体に選択の幅が十分にあり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性が表れているものであることを要するということができる。プログラムの表現に選択の余地がないか,あるいは,選択の幅が著しく狭い場合には,作成者の個性の表れる余地がなくなり,著作物性は認められなくなる。
 前記1のとおり,本件HTMLは,被控訴人が決定した内容を,被控訴人が指示した文字の大きさや配列等の形式に従って表現するものであり,そもそも,表現の選択の幅は著しく狭いものということができる。』(15頁)

と説示した上で、本件HTML及び本件プログラムの著作物性を検討しています。

(1)本件HTMLの著作物性について

控訴人においてAによる創作的表現と主張している部分について、控訴審は、いずれも作成者の個性が表れているということはできないと判断。
そして、本件HTMLにおいて、控訴人がAによる創作的表現である旨を主張している部分に著作物性が認められない以上、本件HTMLの著作物性は認められないと判断しています。

(2)本件プログラムの著作物性について

控訴人は、本件HTML以外、本件プログラムのどの部分に作成者の個性が表れているかを具体的に主張立証しておらず、本件PHPプログラムも含め本件プログラムの本件HTML以外の部分に著作物性を認めるに足りる証拠はないと判断。本件プログラムの著作物性を否定しています(25頁)。

結論として、控訴人の請求を棄却した原判決は結論において正当と判断、控訴を棄却しています。

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■コメント

控訴審でも原審の結論を維持しています。

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■過去のブログ記事

2016年10月20日 原審記事

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2017年03月09日

綿麻刺繍アンサンブルデザイン事件−著作権 不正競争行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

綿麻刺繍アンサンブルデザイン事件

大阪地裁平成29.1.19平成27(ワ)9648等不正競争行為差止等請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 森崎英二
裁判官    田原美奈子
裁判官    大川潤子

*裁判所サイト公表 2017.03.06
*キーワード:形態模倣、応用美術、一般不法行為論

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■事案

婦人用被服のデザインの形態模倣性、著作権侵害性などが争点となった事案

原告:婦人用高級服飾品製造販売会社
被告:婦人服等製造販売会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項3号、著作権法2条1項1号、2条2項、民法709条

1 被告商品1ないし同3は原告商品を模倣した商品であるか
2 著作権侵害の成否
3 被告商品2、同3の販売行為が一般不法行為を構成するか
4 損害論

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■事案の概要

『本件のうち甲事件は,別紙原告商品目録記載1,同2の各商品(以下「原告商品1」,「原告商品2」という。)を製造,販売していた原告が,別紙被告商品目録記載1,同2の各商品(以下「被告商品1」,「被告商品2」という。)を製造販売する被告に対し,下記1,2の請求をした事案であり,乙事件は,別紙原告商品目録記載3の商品(以下「原告商品3」という。)を製造,販売していた原告が,別紙被告商品目録記載3の商品(以下「被告商品3」という。)を製造販売する被告に対し,下記3の請求をした事案である。
 記 (略)』(2頁以下)

<経緯>

H26 原告が原告商品1、2、3を販売
H27 被告が被告商品1、2、3を販売

原告商品1:丸首刺繍レース生地使用七部袖ブラウス
原告商品2:丸首オリジナル刺繍レース使いランニング
原告商品3:胸部リンゴモチ−フ付きボーダー柄長袖チュニックTシャツ

被告商品1:綿麻刺繍アンサンブルのうちのブラウス
被告商品2:綿麻刺繍アンサンブルのうちのランニングシャツ
被告商品3:半袖Tシャツ

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■判決内容

<争点>

1 被告商品1ないし同3は原告商品を模倣した商品であるか

(1)被告商品1

裁判所は、原告商品1と被告商品1を正面視した形態の共通点、相違点を検討。

『両商品は,(1)丸首襟の形状をしていること,(2)前身頃のボタン部の左右部分に,縦方向に一定幅で区切られた範囲においてハシゴ状柄のレース生地が用いられ上下にわたって一定間隔で水平方向の開口部がある部分が設けられていること,(3)その外側部分及び袖口部分には二種類の花柄の刺繍が交互に施されているのに袖部分及び裾部分には刺繍が施されていないという組み合わせとなっているという,両商品の特徴をなす点で正面視した形態が共通している。そして,両商品を背面視した形態はほぼ同一であるから,両商品は商品全体の形態が酷似し,その形態が実質的に同一であるものと認められる。』(16頁)

として、依拠性の点も含め、結論として被告商品1は原告商品1を模倣した商品と判断しています。

(2)被告商品2

裁判所は、原告商品2と被告商品2を正面視した形態の共通点、相違点を検討。

『原告商品2と被告商品2の正面視した形態は,いずれもノースリーブであり,その胸部分に花柄の刺繍が施されている点で形態全体が似ており,とりわけ花柄の刺繍部分などは同一であって被告商品2の形態が原告商品2に依拠して作られたことを容易にうかがわせるものであるが,商品正面の目立つ場所に集中している,ネックラインの形状,前身頃と後身頃の縫い合わせの仕上げの仕方,さらには襟首直下のレース生地による切り替え部分の有無で相違している。
 そして,これらの相違点は,ありふれた形態であるノースリーブのランニングシャツの全体的形態に変化を与えており,およそ両商品を対比してみたときに商品全体から見てささいな相違にとどまるものとは認められないから,両商品を背面視した形態が同一であることを考慮したとしても,被告商品2の形態は原告商品2の形態に酷似しているとはいえず,両商品の形態は実質的に同一であるということはできない。』(17頁以下)

として、模倣性を否定しています。

(3)被告商品3

裁判所は、原告商品3と被告商品3を正面視した形態の共通点、相違点を検討。

『原告商品3と被告商品3は,(1)商品全体に黒色と白色の横縞が繰り返されているだけでなく,第1横縞部分,第2横縞部分,第3横縞部分という特徴的な繰り返しパターンがほぼ同様に施されている点,(2)前身頃に類似するデザインの大きなりんごの柄がほぼ同じ手法で施されている点,(3)そのりんご部分を縁取りするようにラインストーンが同じパターンで配されている点で形態が共通しており,これらの特徴的部分で正面視した形態がほぼ同一である。そして,両商品を背面視した形態もほぼ同一であるから,両商品は商品全体の形態が酷似し,その形態が実質的に同一であるものと認められる』

として、被告商品3は原告商品3を模倣した商品であると判断しています(18頁以下)。

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2 著作権侵害の成否

原告は、原告商品2の花柄刺繍部分及び同部分を含む原告商品2全体のデザインは著作物であり、被告商品2は原告商品2を複製ないし翻案したものであるとして、著作権(複製権ないし翻案権)侵害が認められると主張しました(21頁以下)。

この点について、裁判所は、

『原告商品2の花柄刺繍部分のデザインは,衣服に刺繍の装飾を付加するために制作された図案に由来するものと認められ,また同部分を含む原告商品2全体のデザインも,衣服向けに制作された図案に由来することは明らかであるから,これらは美的創作物として見た場合,いわゆる応用美術と位置付けられるものである。』

とした上で、応用美術の意義について言及。そして、

『原告商品2の花柄刺繍部分の花柄のデザインは,それ自体,美的創作物といえるが,5輪の花及び花の周辺に配置された13枚の葉からなるそのデザインは婦人向けの衣服に頻用される花柄模様の一つのデザインという以上の印象を与えるものではなく,少なくとも衣服に付加されるデザインであることを離れ,独立して美的鑑賞の対象となり得るような創作性を備えたものとは認められない』

『また,同部分を含む原告商品2全体のデザインについて見ても,その形状が創作活動の結果生み出されたことは肯定できるとしても,両脇にダーツがとられ,スクエア型のネックラインを有し,襟首直下にレース生地の刺繍を有するというランニングシャツの形状は,専ら衣服という実用的機能に即してなされたデザインそのものというべきであり,前記のような花柄刺繍部分を含め,原告商品2を全体としてみても,実用的機能を離れて独立した美的鑑賞の対象となり得るような創作性を備えたものとは認められない。』

としてデザインの著作物性(著作権法2条1項1号、2条2項)を否定。原告の主張を認めていません。

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3 被告商品2、同3の販売行為が一般不法行為を構成するか

一般不法行為論(民法709条)の肯否について、裁判所は、原告は、被告が原告商品2のデザインをコピーして酷似した商品を製造販売したことを主張するものの、不正競争防止法又は著作権の保護法益とは異なる法益侵害の事実を主張するものではないとして、原告の主張を認めていません(22頁以下)。

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4 損害論

(1)被告商品1の販売による損害(24頁以下)

原告の受ける利益額5834円×販売1232着=718万7488円(不正競争防止法5条1項)
弁護士費用相当額損害 71万円
合計789万7488円

(2)被告商品3の販売による損害

原告の受ける利益額6901円×販売389枚=268万4489円
弁護士費用相当額損害 26万円
合計294万4489円

結論として、被告商品1、同3の製造販売行為の差止め、これら商品の廃棄及び損害賠償として合計1084万1977円が認定されています。

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■コメント

別紙に商品画像が掲載されているため、どのような商品かよくわかります。
過去の婦人服デザインの裁判例としては、丸首ネック、4段フリル、ノースリーブ型カットソーの服飾デザインについて、商品を模倣したかどうかが争われた事案がありました(知財高裁平成17.12.5平成17(ネ)10083、東京地裁平成17.3.30平成16(ワ)12793。)また、ノースリーブ型ワンピースについては、知財高裁平成17.11.10平成17(ネ)10088、東京地裁平成17. 4.27平成16(ワ)12723参照。

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■参考判例

カットソー事件
知財高裁平成17.12.5平成17(ネ)10083
ノースリーブワンピース事件
知財高裁平成17.11.10平成17(ネ)10088
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2017年02月04日

雑誌「プレジデント」記事翻案事件(控訴審)−著作権 著作権侵害および名誉侵害行為に対する損害賠償控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

雑誌「プレジデント」記事翻案事件(控訴審)

知財高裁平成29.1.24平成28(ネ)10091著作権侵害および名誉侵害行為に対する損害賠償控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官    片岡早苗
裁判官    古庄 研

*裁判所サイト公表 2017.1.27
*キーワード:翻案権、同一性保持権、名誉・声望権

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■事案

雑誌に掲載された記事を要約してウェブサイトに転用されたとして著作権侵害性などが争点となった事案の控訴審

控訴人 (1審原告):映画プロデューサー
被控訴人(1審被告):新聞社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、27条、113条6項

1 翻案権侵害の成否
2 同一性保持権侵害の成否
3 名誉・声望権侵害の成否
4 社会的評価の低下の有無
5 真実性の抗弁ないし公正な論評の抗弁の成否


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■事案の概要

『本件は,控訴人記事(甲2)の著作者であり,著作権者である控訴人が,被控訴人が運営するウェブサイトに掲載された被控訴人記事(甲1)により,著作権(翻案権)及び著作者人格権(同一性保持権,名誉・声望権)を侵害され,名誉を毀損されたと主張して,被控訴人に対し,(1)著作権侵害,著作者人格権侵害ないし名誉毀損の不法行為に基づき,損害合計340万円及びこれに対する不法行為の後の日(訴状送達の日の翌日)である平成28年2月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,(2)著作権法115条ないし民法723条に基づき,被控訴人のウェブサイトへの謝罪文の掲載を求めた事案である。
 原審は,(a)被控訴人各表現は,表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,控訴人各表現と同一性を有するにすぎないから,控訴人各表現を翻案したものではない,(b)被控訴人記事は,控訴人記事を改変したものではないから,同一性保持権の侵害はない,(c)控訴人指摘の被控訴人記事中の表現部分は,被控訴人記事の著者の控訴人記事に対する意見ないし論評又は控訴人記事から受けた印象を記載したものにすぎず,控訴人又は控訴人記事を誹謗中傷するものとは認められないから,名誉・声望権の侵害はない,(d)被控訴人記事が控訴人の社会的評価を低下させる理由として控訴人が主張する点は,控訴人の社会的評価を低下させることの理由とはなり得ないし,被控訴人記事の記載が控訴人の社会的評価を低下させるものとも認められないから,名誉毀損は成立しないなどとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
 控訴人が,これを不服として控訴した。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 翻案権侵害の成否
2 同一性保持権侵害の成否
3 名誉・声望権侵害の成否
4 社会的評価の低下の有無
5 真実性の抗弁ないし公正な論評の抗弁の成否


控訴審での控訴人の補充主張について、控訴審は認めていません。
結論として、原審の判断が控訴審でも維持されています。

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■コメント

原審の判断が控訴審でも維持されています。
最高裁サイトに公表された平成29年判断の著作権判例として最初の判決となります。

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■過去のブログ記事

2016年09月15日 原審記事
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