知財判決速報2016

2016年06月24日

「中日英ビジネス用語辞典」出版契約事件−著作権 印税等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「中日英ビジネス用語辞典」出版契約事件

東京地裁平成28.3.29平成27(ワ)24749印税等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    矢口俊哉
裁判官    広瀬達人

*裁判所サイト公表 2016.6.15
*キーワード:出版契約、印税支払時期

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■事案

ビジネス辞典の編著者が印税未払いを理由として出版社を訴えた事案

原告:個人
被告:出版社

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■結論

請求却下、棄却

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■争点

条文 民法415条、民法709条

1 職権による検討
2 印税支払請求権の有無
3 不法行為の成否及び損害額

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■事案の概要

『本件は,被告から出版された「中日英ビジネス用語辞典 会計・金融・法律」(以下「本件書籍」という。)の編著者である原告が,被告との間で締結した本件書籍の出版契約(以下「本件契約」という。)に基づく印税が未払であるなどと主張して,被告に対し,(1)本件契約に基づく印税140万円及びこれに対する支払日である平成26年5月15日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払(上記第1の1。以下「本件請求1」という。),(2)被告による印税の過少申告という不法行為に基づく損害賠償金1080万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成27年9月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(上記第1の2。以下「本件請求2」という。)をそれぞれ求めるとともに,(3)本件契約17条に係る文言についての原告の解釈が正しいことを認めるよう求め(第1の3。以下「本件請求3」という。),また,(4)本件契約18条に規定する発行部数を証する全ての証拠書類について,本件契約が定める保存期間の満了日からさらに2年間延長することを求める(第1の4。以下「本件請求4」という。)事案である。』
(2頁)

<経緯>

H18.07 原被告間で本件書籍出版契約(本件契約)締結
H26.04 被告が本件書籍を出版

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■判決内容

<争点>

1 職権による検討

本件契約17条に係る文言についての原告の解釈が正しいことを認めるよう求める点(本件請求3)と、本件契約18条に規定する発行部数を証する全ての証拠書類について、本件契約が定める保存期間の満了日からさらに2年間延長することを求める点(本件請求4)については、裁判所は、本件請求3については、何ら具体的紛争の解決に資するものではなく確認ないし給付請求の対象として不適格であり、また、本件請求4については、請求の特定を欠くとして各争点について不適法却下としています(9頁以下)。

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2 印税支払請求権の有無

原告は、被告が本件書籍の初刷1000部を既に完売し、本件書籍の増刷を既に複数回行っているとして、少なくとも本件書籍のうち初刷1000部完売の売上に相当する印税額140万円(7000円×1000部×20%)の支払いを主張しました(10頁以下)。
この点について、裁判所は、被告において本件書籍を増刷したことを裏付ける証拠は見当たらないと認定。
また、本件契約17条2項2.1後段により、被告の原告に対する印税の支払時期は、平成28年5月16日(本件書籍の奥付に記載された発行日である平成26年4月5日から2年を経過した月の翌月15日(平成28年5月15日)が日曜日であるので、その翌日)となるとして、原告の主張する印税支払請求権(履行期到来済みのもの)の存在は認められないと判断。
原告の印税支払請求は認められていません。

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3 不法行為の成否及び損害額

原告は、被告が原告に印税を過少申告したことが原告に対する不法行為に当たると主張しましたが、裁判所は、被告が原告に支払われるべき印税額を実際よりも低く伝えたとか、本件書籍の印刷部数ないし実売部数を実際よりも低く伝えたことを認めるに足りる証拠がないなどとして、原告の主張を認めていません(15頁)。

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■コメント

2014年4月5日刊行の「中日英ビジネス用語辞典 会計・金融・法律」について、編著者が出版社に対して、印税未払いなどを争点に提訴した事案となります(本人訴訟)。
本書は、「現代のグローバルビジネスの現場で使われているビジネス用語を、中・日・英の3カ国語の対訳形式で収録」したもので、編著者は上海出身で、日本のメーカーに勤務するなどして国際ビジネスの実務に携わったかたです。


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2016年06月22日

催眠術DVD事件(控訴審)−著作権 損害賠償等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

催眠術DVD事件(控訴審)

知財高裁平成28.6.9平成28(ネ)10021損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    大西勝滋
裁判官    杉浦正樹

*裁判所サイト公表 2016.6.15
*キーワード:損害論、みなし侵害行為

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■事案

催眠術DVDを無断複製してヤフオクで販売してた個人に対する損害額が争点となった事案の控訴審

控訴人 (一審原告):グラフィックデザイン会社、会社代表者
被控訴人(一審被告):個人

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法113条6項、民法709条

1 控訴人会社の損害の発生及びその額
2 被控訴人の行為が控訴人Xの著作者人格権のみなし侵害行為に当たるか
3 控訴人Xの著作者人格権侵害による慰謝料額
4 謝罪広告の要否
5 控訴人Xの当審における追加請求の可否

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■事案の概要

『本件は,控訴人Xが創作し,控訴人会社が著作権を有する著作物(DVD)を被控訴人が無断で複製・販売したことが,控訴人会社の著作権(複製権,頒布権)を侵害するとともに,控訴人Xの名誉・声望を害する方法により上記著作物を利用したことを理由にその著作者人格権を侵害する行為とみなされるとして,控訴人らが被控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償金(控訴人会社につき上記著作権侵害による財産的損害103万0448円,控訴人Xにつき上記著作者人格権侵害による慰謝料60万円)及びこれに対する不法行為の後である平成27年4月16日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,また,控訴人Xが,被控訴人に対し,著作権法115条に基づき,その名誉・声望を回復するための適当な措置として,謝罪広告の掲載を求めた事案である。』

『原判決は,控訴人会社の損害賠償請求については,被控訴人が控訴人会社の著作権(複製権,頒布権)を侵害する行為を行ったことを前提に,3万0448円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余の請求を棄却した。また,控訴人Xの損害賠償請求及び謝罪広告請求については,被控訴人の行為は控訴人Xの著作者人格権のみなし侵害行為には当たらないとして,いずれも棄却した。
 そこで控訴人らは,原判決中の各敗訴部分を不服として本件控訴を提起した。そして,控訴人Xは,当審において,被控訴人が控訴人会社の著作権(複製権,頒布権)を侵害したことによって控訴人会社の代表者である控訴人Xが精神的苦痛を受けたとして,被控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償金(60万円の慰謝料)及びこれに対する不法行為の後である平成27年4月16日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求を,前記著作者人格権侵害による慰謝料請求と選択的なものとして追加した。』(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 控訴人会社の損害の発生及びその額
2 被控訴人の行為が控訴人Xの著作者人格権のみなし侵害行為に当たるか
3 控訴人Xの著作者人格権侵害による慰謝料額
4 謝罪広告の要否

争点1乃至4について、原審同様、控訴審でも控訴人会社の損害賠償請求3万0448円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求める限度で認められており、また、控訴人Xの著作者人格権侵害に基づく損害賠償請求及び謝罪広告請求はいずれも理由がないと判断されています(5頁以下)。

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5 控訴人Xの当審における追加請求の可否

控訴人Xは、控訴審において、被控訴人が控訴人会社の原告著作物に係る著作権(複製権、頒布権)を侵害する不法行為を行ったことによって、控訴人会社の代表者としての控訴人Xが精神的苦痛を受けたとして、控訴人Xの被控訴人に対する慰謝料請求の根拠となる旨主張しました(6頁以下)。
この点について、裁判所は、

『控訴人Xの被控訴人に対する慰謝料請求が認められるためには,被控訴人の行為が控訴人Xとの関係で不法行為を構成することが必要であり,そのためには,被控訴人の行為が控訴人Xの権利又は法律上保護される利益を侵害するものであることが必要となる(民法709条)。しかるところ,被控訴人が原告著作物を複製・頒布した行為は,原告著作物の著作権者である控訴人会社との関係では,その権利(著作権)を侵害する不法行為を構成することが明らかであるものの,原告著作物の著作権者ではない控訴人Xとの関係では,同人のいかなる権利又は法律上保護される利益を侵害することになるのかが不明というべきである。控訴人Xは,自らが控訴人会社の代表者であり,控訴人会社の著作権侵害によって精神的苦痛を受けたことをその主張の根拠とするが,会社の代表者たる個人が,当該会社に帰属する著作権に関して当然に何らかの権利や法律上保護される利益を有するものではないから,控訴人Xが控訴人会社の代表者であることのみをもって,控訴人会社の著作権を侵害する行為が控訴人X個人の権利又は法律上保護される利益をも侵害することが根拠付けられるものではなく,そのほかにこれを根拠付け得る事情も認められない。』

として、控訴人会社の原告著作物に係る著作権(複製権、頒布権)侵害を理由とする控訴人Xの慰謝料請求には理由がないと判断しています。

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■コメント

控訴審でも原審と同様の判断となっています。

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■過去のブログ記事

2016年02月18日記事
東京地裁平成28.1.22平成27(ワ)9469損害賠償請求事件
催眠術DVD事件
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2016年06月21日

ボディーバストネックレス事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ボディーバストネックレス事件

東京地裁平成28.2.25平成28(ワ)15789著作権侵害差止等請求事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    矢口俊哉
裁判官    広瀬達人

*裁判所サイト公表 2016.6.15
*キーワード:著作物性、複製、氏名表示権

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■事案

ネックレスの彫刻デザインの類否が争点となった事案

原告:ジュエリー作家
被告:ファッションブランド日本法人

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、22条、19条

1 複製権侵害の成否
2 氏名表示権侵害の成否

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■事案の概要

『本件は,ジュエリー作家である原告が,被告が輸入,販売する別紙物件目録記載のアクセサリー(以下「被告製品」という。)について,原告が制作した別紙写真一覧の写真(以下「本件写真1」〜「本件写真12」といい,これらを併せて「本件各写真」という。)に写った彫刻それ自体又は指輪に接着された彫刻部分(以下,これらを「原告彫刻」という。)を複製したものであるから,被告による被告製品の国内への輸入又は国内での販売は,原告の著作権(複製権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害する行為とみなされると主張して,被告に対し,著作権法(以下「法」という。)112条に基づき被告製品の輸入,販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに,著作権及び著作者人格権侵害の不法行為に基づき損害賠償金合計2000万円(内訳は,逸失利益4200万円の一部である1200万円及び慰謝料800万円)及びこれに対する平成27年3月20日(原告の著作権侵害警告が被告に到達した日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,さらに,法115条に基づき謝罪広告の掲載を求める事案である。』
(2頁)

<経緯>

H25.02 原告が原告彫刻を作成
H26.09 セリーヌ社が被告製品を発表、販売

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■判決内容

<争点>

1 複製権侵害の成否

(1)類否について

原告彫刻は、乳白色の板状部材の表面に女性の裸体を表現した彫刻で、乳首のすぐ下と陰部のすぐ上の位置で胴体を上下に水平方向に直線でカットし、かつ、左乳房の中心付近で垂直方向に直線でカットしたものでした。
被告製品との類否について、裁判所は、原告彫刻と被告製品とは、女性の身体のカットの構図において共通の特徴がみられるものの、このような構図それ自体に創作性は乏しいと判断。
また、原告彫刻においては、全体に豊満で肉感的な印象を与えるものであるのに対して、被告製品は全体として平坦でひきしまった印象を与えるものであることが認められるところ、こうした相違からすると、被告製品から原告彫刻の表現上の特徴を直接感得することはできないと判断。
両者が類似しているとは認めていません(16頁以下)。

(2)依拠性について

「念のため」として、依拠性についても検討が加えられていますが、結論として認められていません(17頁以下)。

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2 氏名表示権侵害の成否

原告は、被告製品の形態が原告彫刻と寸分違わぬものであり、また、被告製品が原告彫刻に依拠して製作されたことを前提として、被告製品は国内で作成したとしたならば著作者人格権(氏名表示権)の侵害となるべき行為によって作成された物(法113条1項1号)に当たるから、被告が被告製品を輸入、販売、販売の申出をする行為は原告の氏名表示権を侵害する行為とみなされる旨主張しました。
しかし、裁判所は、被告製品が原告彫刻と類似しているとも、原告彫刻に依拠して製作されたとも認められないことから、被告製品は国内で作成したとしても原告の氏名表示権の侵害となるべき行為によって作成された物には当たらないとして、原告の主張を認めていません(20頁)。

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■コメント

平成26年9月28日、パリにおいてセリーヌ社が「CELINE 2015年春夏コレクション」を発表しましたが、その発表作品中に被告製品がありました。
ジュエリー目的でよくありそうなモチーフの彫刻作品となると、デッドコピーでもない限り、類否や依拠性の判断は、ハードルが高いかと思われます。

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2016年06月20日

コミュニティFM「リスラジ」事件−著作権 地位確認請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

コミュニティFM放送「リスラジ」事件

東京地裁平成28.6.8平成27(ワ)8615地位確認請求事件PDF
別紙1 当事者目録
別紙2 原告らの請求
別紙3 各原告の音楽番組名
別紙4 各原告の配信内容

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官    鈴木千帆
裁判官    笹本哲朗

*裁判所サイト公表 2016.6.14
*キーワード:利用許諾契約、利用許諾契約約款、放送、配信、サイマル放送、ザッピング機能

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■事案

コミュニティFMがサイマル放送(ラジオ番組を地上波放送と同時にインターネット配信すること)でザッピング機能を提供した点がレコード協会との間の契約更新拒絶事由にあたるかどうかなどが争点となった事案

原告:コミュニティFMラジオ局運営会社29社
被告:日本レコード協会

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権等管理事業法16条、独禁法19条、民法90条

1 被告の本件更新拒絶は管理事業法16条にいう「正当な理由がなく」利用の許諾を拒んでいるものとして無効(民法90条)か
2 被告の本件更新拒絶は信義則に反し無効か
3 被告の本件更新拒絶は「共同の取引拒絶」(独禁法19条、2条9項1号イ又は同項6号イ、一般指定1項)又は「その他の取引拒絶」(独禁法19条、2条9項6号イ、一般指定2項)に該当するため無効(民法90条)か
4 「取引条件等の差別的取扱い」(独禁法19条、2条9項6号イ、一般指定4項)に該当するため無効(民法90条)か

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■事案の概要

『原告らは,コミュニティ放送(放送法施行規則別表第五号(注)九のコミュニティ放送をいう。以下同じ。)を行う放送局(FMラジオ局)を運営する株式会社であり,各原告が運営する各放送局の放送番組の一つとして,それぞれラジオ音楽番組を地上波により放送(以下「地上波放送」という。)しているところ,同ラジオ音楽番組の地上波放送と同時に,株式会社エムティアイ(以下「MTI」という。)が運営するスマートフォン及びパソコン向け無料配信サービス「Listen Radio」(以下「リスラジ」という。)においてインターネット配信している(以下,各原告による同ラジオ音楽番組のインターネット配信を併せて「本件各番組配信」という。また,各原告がそれぞれ運営する放送局において地上波放送し,リスラジを通じて配信しているラジオ音楽番組のリスラジにおける番組名は,別紙「各原告の音楽番組名」記載のとおり,放送局やリスラジにおけるチャンネルにより異なることがあるが,以下,各原告らがリスラジを通じてインターネット配信している各ラジオ音楽番組を併せて「本件各音楽番組」という。)。
 リスラジにおける「おすすめ番組まとめ」チャンネルには,各原告の本件各音楽番組をつなぎ合わせて自動的にまとめる機能(以下「ザッピング機能」又は「リスラジのまとめチャンネル機能」という。)があり,24時間連続して音楽番組がインターネット配信されるという特徴を有する。
 被告は,本件各番組配信が,被告の管理に係る商業用レコード製作者の複製権,譲渡権及び送信可能化権等の権利に関する,平成26年4月1日から平成27年3月31日までの期間を対象とする,各原告と被告との間の利用許諾契約(従前の契約が,期間満了日の1か月前までに,契約当事者のいずれも異議を述べないときは,同一条件で,契約の対象期間が期間満了日の翌日から1年間延長され,以後も同様とする旨の条項〔以下「自動更新条項」といい,同条項に基づく契約の対象期間の更新を「自動更新」という。〕に基づいて,自動更新されたものを含む。以下,各原告共通して,「本件利用許諾契約」という。)に基づく使用料規程(以下,各原告共通して,「本件使用料規程」という。)の細則(以下,各原告共通して,「本件使用料規程細則」又は「本件細則」という。)の適用基準に違反しているなどとして,各原告に対し,平成27年2月26日付け「サイマルラジオ許諾契約に関するご連絡」と題する書面(以下,各原告共通して,「本件ご連絡書面」という。)を送付し,同年4月1日以降は,本件利用許諾契約を自動更新しない(本件利用許諾契約をいったん終了させる)旨の通知(以下,各原告共通して,「本件更新拒絶」という。)をした。
 各原告は,本件訴訟において,被告に対し,被告による各原告に対する本件更新拒絶は,著作権等管理事業法(以下「管理事業法」という。)若しくは私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)により禁止されている行為に該当し,又は信義則に反するから,私法上,無効である旨主張し(同主張は,本件利用許諾契約の期間満了日の1か月前までに,被告又は各原告のいずれも異議を述べなかったものとみなされる結果,同契約が自動更新された旨を主張する趣旨と解される。),本件利用許諾契約(上記のとおり,自動更新された本件利用許諾契約の趣旨と解される。)に基づき,(1)主位的に,本件使用料規定細則第3条に定める使用料を支払うことにより,被告による著作隣接権管理に係る商業用レコード(以下「被告の管理レコード」という。)を録音したコミュニティ放送番組(コミュニティ放送に供される番組をいうものと解される。以下,本判決において「コミュニティ放送番組」というときは,上記の趣旨である。)をインターネット上で同時に配信することを目的として,被告の管理レコードを複製及び送信可能化する方法で利用することができる契約上の地位にあることの確認を求め,(2)予備的に,本件使用料規程「第3節1(2)本表」(以下「本件使用料規程本則」又は「本件本則」という。)に定める使用料(本件使用料規定細則第3条に定める使用料よりも,高額である。)を支払うことにより,上記契約上の地位にあることの確認を求めている。』
(1頁以下)

<経緯>

H27.02 被告が本件各番組配信即時中止催告書送付
H27.02 原告が契約上の地位にあることを仮に定めることの仮処分命令申立
H27.02 被告が契約更新拒通知
H27.03 被告が利用許諾契約書案を提示
H27.03 原告が照会書送付。被告が回答書送付
H27.03 原告が要望書送付。被告が回答
H27.03 被告が「3月26日付け契約申込み」誘引
H27.03 原告が「3月26日付け契約申込み」拒絶

本件管理委託契約 約款PDF

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■判決内容

<争点>

1 被告の本件更新拒絶は管理事業法16条にいう「正当な理由がなく」利用の許諾を拒んでいるものとして無効(民法90条)か

(1)本件各音楽番組が本件利用許諾契約における「自ら制作し放送するラジオ番組」(自主制作番組)といえるか

リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルを通じた本件各音楽番組の配信は、MTIの発意によるMTIの責任により配信されているものと認められる以上、リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルに提供される本件各音楽番組を、各原告の発意と責任によって制作された番組と認めることはできないと裁判所は判断しています(46頁以下)。

(2)被告の利用許諾の権限について

管理委託契約約款3条において、管理委託の範囲が定められており、同条(2)ア(3)で、「コミュニティ放送事業者が自ら制作し放送するラジオ番組(コマーシャルを除く。)」と定められていることから、被告の利用許諾の権限は、この範囲に限定されている。
そして、リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルを通じて配信されることを前提とした本件各音楽番組は、コミュニティ放送事業者が自ら制作し放送するラジオ番組といえないことから、リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルに提供されることを前提とした本件各音楽番組についての配信に関する利用許諾権限を被告が有していないことは明らかであると裁判所は判断しています(53頁以下)。

結論として、被告による本件更新拒絶は、管理事業法16条所定の正当な理由のない利用の許諾の拒否には当たらず、無効とはいえないと裁判所は判断しています。

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2 被告の本件更新拒絶は信義則に反し無効か

原告らは、被告はこれまでリスラジと同様の機能を有する他のアプリケーションの利用について何ら問題視しておらず、リスラジのアプリの利用についても被告と十分に事前協議を重ねており、事実上、被告は原告らの行為を明示的又は黙示的に承認してきたにもかかわらず、本件更新拒絶を行ったものであって、被告の本件更新拒絶は信義則に反し、無効である旨主張しました(57頁以下)。

この点について、裁判所は、被告はリスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルについて、

・配信開始直後の平成24年12月から問題視していた
・CSRAなどと協議を重ねてきた
・協議の経過において明確に被告の利用許諾権限の範囲外であることも伝えていた

ことが認められるとし、

・被告が最終的に協議が整う見込みがないと判断して本件利用許諾契約を自動更新させないという対応をとったことが信義則に反するとはいえない
・協議の継続中に自動更新されたことをもって直ちに被告が黙示に承諾したとか、黙認したと評価することはできない
・3月6日契約書案の内容は合理的である
・被告は本件更新拒絶の後も3月6日契約書案を原告らに提示し利用許諾の範囲内での契約締結に応じる旨も明らかにしていた

といった点から、被告の原告らに対する本件更新拒絶が信義則に反し、無効であるとは認められないと判断しています。

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3 被告の本件更新拒絶は「共同の取引拒絶」(独禁法19条、2条9項1号イ又は同項6号イ、一般指定1項)又は「その他の取引拒絶」(独禁法19条、2条9項6号イ、一般指定2項)に該当するため無効(民法90条)か

原告らは、被告が各原告に対して本件更新拒絶によって本件利用許諾契約における契約上の地位を認めないことは、「共同の取引拒絶」(独禁法19条、2条9項1号イ又は同項6号イ、一般指定1項)又は「その他の取引拒絶」(独禁法19条、2条9項6号イ、一般指定2項)に該当するため、無効(民法90条)である旨主張しました(58頁以下)。

しかし、裁判所は、

・本件更新拒絶には正当な理由がある
・リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルを通じた配信を前提とする本件各音楽番組は、「自主制作番組」に当たらず、被告は、自主制作番組に当たらない番組に関して被告の管理レコードについての許諾権限を有していない

といった点から、被告はそもそも本件各音楽番組に関して、各原告と取引をする権限も拒絶する権限も有していないというべきであって、リスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルを通じた配信を前提とした本件各音楽番組を配信するために本件利用許諾契約上の地位についての確認を求める原告らの主張は、その前提を欠くものであると判断。

被告の本件更新拒絶は、「共同の取引拒絶」(独禁法19条、2条9項1号イ又は同項6号イ、一般指定1項)又は「その他の取引拒絶」(独禁法19条、2条9項6号イ、一般指定2項)に該当せず無効(民法90条)とはいえないと判断しています。

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4 「取引条件等の差別的取扱い」(独禁法19条、2条9項6号イ、一般指定4項)に該当するため無効(民法90条)か

原告らは、本件更新拒絶はリスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルに参加しているコミュニティ放送局だけを差別的に取り扱うために行われたものであり、取引条件等の差別的取扱い(独禁法19条、2条9項6号イ、一般指定4項)に該当するため、無効(民法90条)である旨主張しました(59頁以下)。

この点について、裁判所は、平成27年4月1日以降、本件利用許諾契約の内容で被告と利用許諾契約を締結し又は自動更新したコミュニティFM局が存在しているものの、それは単なる手続上の事情によるものであって、被告は現にこれらの契約先に対して、平成28年4月1日以降、契約を自動更新させない旨の通知をし、3月6日契約書案による契約の申込みを誘引していると認定。
本件更新拒絶がリスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルに参加しているコミュニティ放送局だけを差別的に取り扱うために行われたということはできないと判断。

結論として、「取引条件等の差別的取扱い」(独禁法19条、2条9項6号イ、一般指定4項)に該当せず無効(民法90条)とはいえないと判断しています。

結論として、原告らの契約上の地位の確認は認められていません。

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■コメント

複数のコミュニティ放送局において時間ごとに分散して配信されている番組を自動的に連続して聴くことができる、まとめチャンネル機能(ザッピング機能)を原告ラジオ局側が提供した点がレコード協会との契約に違反することは明らかで、契約更新拒絶に対しては原告ラジオ局側も信義則や民法90条といった一般条項を根拠にするくらいのほか、対応しようがなかったことになります。

なお、サイマル放送を推進する会からプレスリリースが出されています。

CSRA加盟コミュニティ放送局と日本レコード協会との間の訴訟における第一審判決について|サイマル放送を推進する会のプレスリリース

「「まとめチャンネル」は、コミュニティ放送局によりサイマル配信された音楽情報番組を受信する、いわば「ラジオ放送の受信機」と同様のものにすぎません。配信される音楽情報番組自体は、これに参加する各コミュニティ放送局が、互いに番組制作能力を補い、番組制作に対する意向を十分に伝えあって、共同で制作したものです。そして、自局の編成方針に従い同音楽情報番組の地上波放送を決定し公衆に提供しているのは、各コミュニティ放送局に他なりません。つまり、各コミュニティ放送局が、音楽情報番組についての「発意」と「責任」を有しながら同番組を地上波放送し、それらを並行してサイマル配信していることは明白であり、同番組が各コミュニティ放送局にとっての「自主制作番組」に該当することは当然のことです。同判決の事実認定は、ラジオ・テレビを問わず、放送業界において当然とされてきた常識的な扱いを根底から覆すものであります。」

「放送と通信の融合」はよくわかるところですが、まずは、約款などの改訂作業(つまるところ、使用料をどうするかの調整)が必要かと思われます。

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■参考サイト

ITmedia LifeStyle記事(2015年02月26日 23時37分)
コミュニティFM 39局、日本レコード協会とソニー・ミュージックの“サイマル放送中止要求”に異議

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2016年06月16日

音楽CD製造販売業務委託契約事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

音楽CD製造販売業務委託契約事件

東京地裁平成28.2.16平成25(ワ)33167損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    矢口俊哉
裁判官    廣瀬達人

*裁判所サイト公表 2016.6.13
*キーワード:業務委託、CD販売、配信、レンタル、債務不履行

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■事案

音楽CD製造販売業務委託契約について債務不履行があったかどうかなどが争点となった事案

原告:音楽制作会社、会社代表者
被告:音楽制作会社、衛星放送事業者ら

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法114条2項、90条の3第2項、民法415条

【1】 原告ノアの被告タッズに対する原告ノア印税の支払請求及び債務不履行に基づく損害賠償請求
【2】 原告ノアの被告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求
【3】 原告Aの被告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求
【4】 原告Aの被告タッズ及び同スペースに対する名誉回復措置請求

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■事案の概要

『本件は,本件CDについてのレコード製作者である原告ノア及び本件CDに収録された別紙CD目録4記載の各楽曲(以下「本件楽曲」という。)の実演家である原告Aが,被告らに対し,以下の各請求をする事案と解される。
(1)原告ノアの被告タッズに対する,印税の支払請求及び債務不履行に基づく損害賠償請求
 原告ノアは,被告タッズに対し,(1)被告タッズとの本件CDの製造販売委託契約の履行請求として,被告タッズが販売した本件CD213枚の売上金のうち原告ノアが取得すべき部分(以下,本件楽曲又は本件CDの各売上金のうち原告ノアが取得すべき部分を「原告ノア印税」という。)に相当する35万5071円,(2)同契約上の債務不履行による損害賠償として,同契約に要した費用と弁護士相談料(予備的に,本来取得するはずだった原告ノア印税相当額と弁護士相談料)を合計した144万4299円並びに上記(1)及び(2)に対する商事法定利率年6分の割合による各遅延損害金の支払を求める(上記第1の1)。
(2)原告ノアの被告らに対する,不法行為に基づく損害賠償請求
 原告ノアは,被告らに対し,被告らが,(1)原告ノアの許諾がないのに,本件CDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信を繰り返し,原告ノアが有する本件CDについてのレコード製作者の著作隣接権(複製権,貸与権,譲渡権及び送信可能化権。著作権法(以下,単に「法」という。)89条2項)及び原告Aから譲り受けた本件楽曲についての実演家の著作隣接権(送信可能化権。法89条1項)を侵害し,また,(2)本件CDを廃盤にして,原告ノアの本件原盤,ジャケットを含む本件CD及びポスター等の所有権を侵害したため,これらの不法行為により,上記(1)について合計722万3480円,上記(2)について合計839万1174円,上記(1)(2)を通じた弁護士相談料として113万3232円の損害を被ったと主張して,不法行為に基づく損害賠償金1674万7886円(上記の合計額)及びこれに対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(上記第1の2)。
(3)原告Aの被告らに対する,不法行為に基づく損害賠償請求
 原告Aは,被告らに対し,被告らが,(1)音楽配信事業者のウェブサイトを通じて本件楽曲を配信するに際し,ファイル圧縮によって本件楽曲の音質を劣化させるなどして,本件楽曲の実演家である原告Aの実演家人格権(同一性保持権。法89条1項)を侵害し,(2)本件CDの廃盤と廃盤理由に関する虚偽の説明により原告Aの名誉権及び人格権を侵害し,(3)無断で原告Aのアーティスト名や写真を使用して原告Aのプライバシー権等を侵害したため,これらの不法行為により,上記(1)について100万円,上記(2)について400万円,上記(3)について100万円,上記(1)〜(3)を通じた弁護士相談料として30万円の損害を被ったと主張して,不法行為に基づく損害賠償金630万円(上記の合計額)及びこれに対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(上記第1の3)。
(4)原告Aの被告タッズ及び同スペースに対する名誉回復措置請求
 原告Aは,被告スペースに対し,被告スペースが本件CDの廃盤によって原告Aの名誉を棄損したと主張し,名誉を回復するために適当な処分(民法723条)として,本件CDを全国で販売するよう求める(上記第1の4)。
 また,原告Aは,被告タッズ及び同スペースに対し,同被告らが本件CDの廃盤によって原告Aの名誉を棄損したと主張し,名誉を回復するために適当な処分(民法723条)として,ジャズ雑誌3誌に謝罪広告を掲載すること,及び被告スペースの管理するホームページ上に謝罪広告を掲載することを求める(上記第1の5,6)。』(3頁以下)

<経緯>

H19.09 原告Aが本件楽曲のレコーディングを実施(本件実演)
H21.08 原告Aが原告ノアにDVD原盤に係る全ての権利を譲渡
H22.09 本件原盤完成
H22.10 原告ノアと被告タッズがCD製造販売業務委託契約(本件契約)締結
H22.11 被告タッズと被告スペースが本件再委託契約締結
H23.02 被告スペースが本件CDを販売
H23.03 原告ノア元代表がDMMに本件CDレンタルについて抗議
H23.04 被告スペースが本件CD廃盤処置、出荷停止。

アルバム名:The Good Life Jazz Standards from New York
曲数:全12曲
実演家:E
発売日:平成23年2月23日
レーベル:24JazzJapan
商品番号:DDCZ-1737

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■判決内容

<争点>

【1】原告ノアの被告タッズに対する原告ノア印税の支払請求及び債務不履行に基づく損害賠償請求

1 本件契約に基づく原告ノア印税の支払請求権の存否及び額

原告ノア被告タッズ間の本件原盤を音源とする音楽CD(本件CD)の製造販売業務の委託契約により製造販売する本件CD1枚当たりの手数料等は、以下の通りの内容でした(8条)。

1 小売価格(税込) 3000円
2 小売価格(税抜) 2858円(1/1.05)
3 小売店手数料 572円(2×20%)
4 販売元(被告スペース)手数料 434円((2−3)×19%)
5 発売元(被告タッズ)手数料 185円((2−3−4)×10%)
6 原告ノアの収益 1667円(2−3−4−5)

被告タッズが本件契約8条に基づき原告ノアに支払うべき原告ノア印税の額は本件CD1枚当たり1667円であるところ、本件契約に基づき本件CD213枚が販売されていることから、原告ノアは被告タッズに対して原告ノア印税として35万5071円(1667円×213枚)の支払請求権を有するものと裁判所は認定しています(25頁)。

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2 本件契約についての債務不履行の成否

被告タッズは、本件契約の契約期間である平成23年10月24日までの間、本件契約に基づいて本件CDを販売する義務を負っていたところ、本件廃盤通知をした同年4月5日以降、本件CDの販売業務を行っていないとして、この点は、被告タッズによる本件契約の債務不履行に当たる、と裁判所は判断しています(25頁以下)。

なお、被告タッズは、原告ノアの当時の代表者Dがレンタル事業者に対して本件CDのレンタルを停止するよう求めたことが、本件契約の定める解除事由に当たると主張しましたが、原告ノアが被告タッズに対して本件CDのレンタルを許諾した事実は認められず、原告ノアの当時の代表者Dが本件CDのレンタルを行っているレンタル事業者に対して、本件CDのレンタルを停止するよう求めたことは、著作隣接権者としての正当な権利行使であるから、本件契約15条(5)号の解除事由に当たるものではないと裁判所は判断しています。

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3 損害の有無及び額

本件CDの発売日(平成23年2月23日)から本件廃盤処置までの2か月足らずの間における販売枚数が213枚に上ること、本件契約の契約期間が本件廃盤処置から半年以上先の平成23年10月24日までであることを裁判所は勘案して、被告タッズの債務不履行がなければ本件CDの一般流通分300枚のうち、未販売の87枚についても本件契約期間満了までに完売できた蓋然性が高いと判断。
原告ノアがその販売に係る収益を得ることができなかったことによる損害は、被告タッズの債務不履行と相当因果関係があるとして、本件契約8条に基づき、本件CD87枚分の税抜販売価格から小売店手数料、販売元手数料及び発売元手数料を控除した金額である14万5029円(計算式1667円×87枚)が原告ノアの損害と認定しています(26頁以下)。

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【2】原告ノアの被告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求

4 著作隣接権侵害の不法行為の成否

(1)被告タッズらについて

被告タッズらの不法行為責任について、本件契約書には本件CDのレンタルや本件楽曲の配信についての許諾を明記した条項はなく、本件CDのレンタル又は本件楽曲の配信について、原告ノアの許諾があったと認めることはできないと裁判所は判断。
そして、被告Bが、被告タッズの代表者として被告スペースに対して、レンタル事業者へのレンタル用CDの販売やインターネット配信会社への本件楽曲の配信まで含めて委託する内容の再委託契約を締結し、その結果として、本件CDのレンタルや本件楽曲の配信が行われたことは、原告ノアのレコード製作者としての複製権、貸与権及び譲渡権を侵害するものであると判断。
また、被告タッズらに少なくとも過失があったことも明らかであるとして、結論として、被告タッズらに原告ノアの著作隣接権(貸与権及び送信可能化権等)を侵害する共同不法行為が成立すると判断しています(27頁以下)。

(2)被告スペースについて

被告スペースの不法行為責任について、裁判所は、契約当事者としては、相手方の利用許諾権限の有無を確認する注意義務があるというべきであり、これを怠って当該著作物を利用した場合、当該第三者に対する不法行為責任を免れないとの原則論に言及した上で、本件に関して、被告スペースは本件再委託契約の締結時において被告タッズがレコード製作者及び実演家の各著作隣接権を有しないことを認識していたにも関わらず、被告スペースにおいて、著作隣接権者に問い合わせ、又は本件契約書を確認するなどの方法によって本件CD及び本件楽曲についての被告タッズの利用許諾権限を確認したことが伺われないとして、被告スペースは、本件CDの無断レンタルや本件楽曲の無断配信について、少なくとも過失があると認められると判断。原告ノアに対して被告タッズらとの共同不法行為が成立すると判断しています(29頁以下)。

(3)被告Cについて

被告スペースの一従業員にすぎない被告Cについて、原告ノアの著作隣接権侵害を行うことについての故意、過失があったと認めるに足る証拠はないとして、原告ノアの被告Cに対する請求は認められていません(30頁)。

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5 本件原盤等に対する所有権侵害の不法行為の成否

原告ノアは、本件廃盤処置によって本件原盤、本件CD及びポスター等の販促物が無価値となったとして、これが、被告らによる原告ノアの本件原盤等に対する所有権を侵害する旨主張しましたが、裁判所は認めていません(30頁)。

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6 被告らに対する損害額

(1)無断レンタル及び無断配信に係る損害(30頁以下)

レンタル 2000円(250円×8枚)
配信   5077円
合計   7077円

(2)その他の損害

弁護士相談料等は認定されていません。

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【3】原告Aの被告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求

7 同一性保持権侵害の不法行為の成否

原告Aは、被告らが、

(1)MP3、AAC又はWMA等の圧縮フォーマットを利用して本件楽曲の音声を圧縮して配信したこと
(2)本件楽曲12曲を曲毎に配信したこと

が、いずれも本件楽曲についての同一性保持権を侵害する旨主張しました(33頁以下)。

圧縮配信について、裁判所は、「やむを得ないと認められる改変」(法90条の3第2項)に当たり、また、原告Aが本件契約後の平成22年12月27日に被告Bに送信したEメール中に「圧縮をやって頂きたいと思っておりました。」「引き続き圧縮をお願いできますでしょうか?」などの記載があることから、原告Aも本件楽曲の圧縮を了承していたことが推認されると判断。
圧縮配信行為について、原告Aの同一性保持権を侵害するものということはできないと判断しています。
また、曲毎に配信した点について、本件楽曲はいずれも独立の楽曲であり、原告Aが本件CDにおける本件楽曲の配列を工夫したとしても、この点は実演家の同一性保持権の保護範囲に含まれるものではないとして、(2)についても原告Aの同一性保持権を侵害するものとは認められないと裁判所は判断しています。

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8 名誉権侵害又は人格権侵害の不法行為の成否

原告Aは、廃盤となった音楽CD及びその実演家等は、何らかの重大な問題を抱えている者であると認識されるなどと主張しましたが、裁判所は、本件廃盤処置が直ちに原告Aの名誉権又はその他の人格権を侵害するとは認めていません(34頁以下)。

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9 プライバシー権等侵害の不法行為の成否

原告Aは、被告らが原告Aのアーティスト名や本件CDのジャケット写真等を配信したことが、原告Aの実演家人格権(氏名表示権)のほか、肖像権及びプライバシー権等の人格権を侵害すると主張しました(35頁以下)。
この点について、裁判所は、原告Aのアーティスト名は原告Aが音楽活動のために使用し、本件CDにも本件楽曲の実演家名として表示されているものであるから、これを本件楽曲の配信に当たって使用することが原告Aの氏名表示権ないし人格権を侵害するものでないと判断。
また、本件CDのジャケット写真等についても、本件CDの販売宣伝のために原告Aの承認の下で作成されたものである上、原告Aの音楽活動と無関係な原告Aの私的な情報が掲載されているわけではないこと、原告A自身が本件CDのジャケット上に上記写真等を表示・掲載して公開していることなどから、本件楽曲の配信に当たって、同ジャケット写真等を使用することについて、原告Aの肖像権やプライバシー権等の人格権を侵害するものではないと判断しています。

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10 原告Aの被告タッズ及び同スペースに対する名誉回復措置請求

本件CDの廃盤により原告Aの名誉が毀損されたとは認められないとして、原告Aの被告タッズ及び同スペースに対する名誉回復措置請求はいずれもその前提を欠くと裁判所は判断しています(36頁)。

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■コメント

仲介業者がCD製造販売業務以外に契約外のレンタルや配信業務をしてしまった事案となります。
原告会社関係者のかたから御連絡をいただき、会長さんの名義で2016年4月25日付「告発文」を受け取り、拝見しました。
そこでは、無許諾海外配信が続いていること、また、被告スペース社が控訴していることなども伝える内容となっています。

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2016年06月14日

「バシッとキメたいそう」楽曲類否事件−著作権 楽曲演奏禁止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「バシッとキメたいそう」楽曲類否事件

東京地裁平成28.5.19平成27(ワ)21850楽曲演奏禁止等請求事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    萩原孝基
裁判官    中嶋邦人

*裁判所サイト公表 2016.6.9
*キーワード:複製、翻案、依拠性

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■事案

コンペ作品である楽曲の類否が争点となった事案

原告:作曲家
被告:作曲家、音楽制作会社ら

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法21条、27条

1 原告楽曲と被告楽曲の同一性ないし類似性及び依拠性

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■事案の概要

『本件は,別紙楽譜目録記載2の楽曲(以下「原告楽曲」という。)の著作者である原告が,被告Y,被告Z及び被告SMEが原告楽曲に依拠してこれに類似した被告楽曲を創作し,被告TSCがこれを番組内で放送し,被告SMDがこれを収録したDVDその他の物を販売したことが原告の著作権(複製権又は編曲権)及び著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)を侵害していると主張して,被告らに対し,(1)著作権法112条に基づき被告楽曲の演奏,複製等及びこれを録音又は録画したCD,DVDその他の物の複製等の禁止を求めるとともに,(2)民法709条,著作権法114条2項に基づき,損害賠償金(被告Y,被告Z及び被告SMEに対し9000万円,被告TSCに対し7000万円,被告SMDに対し6000万円)及びこれに対する不法行為の後である訴状送達日の翌日(被告Yにつき平成27年9月3日,その余の被告につき同月2日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 原告楽曲と被告楽曲の同一性ないし類似性及び依拠性

【応募条件】
テレビ番組「しまじろうのわお」内で放送予定のダンスコーナーで使用される楽曲として、
(1)子供向け番組であるが、「子供が真似したがる繰り返し感」と「大人が引っかかる耳に残るメロとアレンジ」を両立したダンス曲とすること
(2)沖縄民謡、レゲエ及びハワイアンの要素をミックスし、指定された部分(第4フレーズの後)に4拍程度の間を置くこと
(3)曲全体の長さが89秒であること
(4)指定された歌詞に合わせること
(5)従前の曲より低年齢の子供でもダンスができる感じとすること
(6)ボーカルは男性であるが、歌詞の一部(第4フレーズ)は沖縄のお囃子風の女性の歌唱を想定していること

原告楽曲及び被告楽曲は、いずれもこの募集条件に合致するように作曲されました。
そして、裁判所は、原告の別紙楽譜目録記載の原告楽曲及び被告楽曲の各楽譜について検討を加えています
(7頁以下)。

(ア)いずれも同一の歌詞に曲を付したものであること
(イ)歌詞の各音(53音)の相違点
(ウ)旋律の相違点
(エ)1分当たりの拍子数は原告楽曲が約142.77、被告楽曲が約142.93であり、両楽曲のテンポはほぼ同一
(オ)いずれも募集条件に合致するように作曲された

といった諸点を前提に、

・原告楽曲と被告楽曲の旋律(ウ)は、旋律の上昇及び下降など多くの部分が相違しており、一部に共通する箇所があるものの相違部分に比べればわずかなものであって、被告楽曲において原告楽曲の表現上の特徴を直接感得することができるとは認め難い。
・両楽曲は、全体の構成(ア)、歌詞の各音に対応する音符の長さ(イ)及びテンポ(エ)がほぼ同一であり、沖縄民謡風のフレーズを含む点で共通するが、これらは募集条件により歌詞、曲調、長さ、使用目的等が指定されており(オ)、作曲に当たってこれに従ったことによるものと認められる。

以上の点から、こうした部分の同一性ないし類似性から被告楽曲が原告楽曲の複製又は翻案に当たると評価することはできないと判断しています。

なお、依拠性についても、念のため、検討が加えられていますが(11頁)、否定されています。

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■コメント

被告楽曲は、沖縄民謡風の「しまじろうのわお!」ダンスコーナー曲「バシッとキメたいそう」(作詞:平林 勇 作曲:MINE−CHANG 出版者:ソニー・ミュージックパブリッシング ジャスラック信託管理)かと思われます。

作曲のコンペがあって、指定条件(仮の題目、曲調、アレンジ方法、曲の長さ、歌詞その他の条件が付されていたものの、本質的な旋律及びハーモニーの進行についての具体的な指示は無し)の下で歌詞に曲を付けるということで作曲し提供したら、落選したが、当選作品が自分の作品に似ているのではないか、と疑義が生じた事案です。
選定後、他の落選作品をどの程度参考にして製品としての作品へと作り込まれたか、そのあたりの経緯は不明ですが、応募条件の指定が細かい場合、似通った作品が集まる可能性はありそうです。

さて、楽譜が別紙1に掲載されていますが、わたしは、楽譜が読めないため、楽譜が読めるかたに意見を伺ってみました。
ピアノが趣味なかたは、弾いてみて、最後の一節の処理などを踏まえ、クロとのご意見。

また、顧問先事務所所属のアーティスト秦万里子さん(シンガーソングライター)にも伺ってみました。秦さんは、即興も得意なアーティストさんです。
秦万里子オフィシャルサイト

以下、秦さんから許諾を得て、秦さんのご意見の一部を転載させて頂きました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

おもしろいですね。
これはとても興味がわきました。

まず結論から云いますと、似てない、、という判断をすると思います。
何故か?

1)この条件を出されたら、音楽家としては、、、

きめたいきめたい きめたいそう というリズム、自然に頭に浮かぶリズムです。


き、き、きめたい、きめたいそう
きめきめ、きめきめ きめたいそう
きめたいそ、そ、きめたいそう
きめたいそうそう、きめたいそう

なども浮かびますが、この案件の「きめたい、きめたい きめたいそう」というリズムは、お子様ランチの様な、だれもがおもいつくパターンであるということで、全く予想できる「類似」です。

お子様ランチに スパゲティとハンバーグとオムライスとプリンがのっていても、だれも盗作だと云わない、、って感じでしょうか。。。

2)メロディは、パッと見ると上記にご説明したリズムパターンが使用されている為に、似ていますが、音楽的作りが全く違います。私は原告の方が数段優れていると思います。だからこそ、この原告は怒ったと思います。なんじゃこりゃ、、、というのが被告の作品。このコード進行も沖縄風も、まあ、言ってみれば「アバンギャルド」といいますか、音楽的ではない。

ですが、この世の中、音楽的である事が採用される条件ではないのでね。その辺は原告側の方が、シンプルではありますが、音楽的には高い。

原告の沖縄風は、それがとても生かされている。被告の物は、とってつけた、、にわか勉強したな、こいつ、、、という感じですね。

(途中、略)

訴えた方の方が音楽的に上なのに、コンペで落ちた。。。皮肉ですね。
明日は我が身、おそろしい。

(途中、略)

(過去、条件を付された委嘱楽曲の制作について、「なんの曲にも似てないんだよ、だからダメなんだ」とダメ出しをもらった経験を踏まえ)
はあ???でありますが、これが一般人、しかも一回しか耳にしないであろう曲の場合、そうして欲しいという気持ちも(音楽脳はそういうものです)わからないではない。

要は、何かににていると覚え易いのですね。オリジナリティに富んでいると覚え難い。

(途中、略)

そして周りに迎合しなかったスティーブジョブズを、尊敬するのであります。

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「良い作品」と「売れる作品」は、かならずしも一致しないという現実。
考えさせられました。

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■参考判例

どこまでも行こう/記念樹事件
東京高裁平成14年9月6日平成12(ネ)1516各損害賠償請求本訴、著作権確認請求反訴控訴事件
控訴審判決文PDF
別紙1
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2016年06月07日

恋愛アドベンチャーゲーム改変事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

恋愛アドベンチャーゲーム改変事件

大阪地裁平成28.4.28平成27(ワ)12757損害賠償請求事件PDF

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 高松宏之
裁判官    田原美奈子
裁判官    林啓治郎

*裁判所サイト公表 2016.06.03
*キーワード:擬制自白、漫画、ゲーム、翻案

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■事案

PSP用恋愛アドベンチャーゲーム向け漫画原画をR18ゲームに無断転用された事案

原告:漫画家
被告:ゲーム制作販売会社

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法114条3項

1 侵害論
2 損害論

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■事案の概要

<経緯>

H25.06 訴外アートムーヴが原告にゲームブランド「QuinRose」向け作画依頼
H25.07 原告がアートムーヴに納品開始
H26.08 納品終了
H26.11 アートムーヴがプレイステーションポータブル(PSP)用のゲームとして販売
H27.08 アートムーヴが原告に本件ゲームのスマートフォン向けオンラインゲーム化を提案
       被告がアートムーヴから受け取った本件著作物を改変して本件R18ゲームを制作
       アートムーヴが訴外DMMと契約。本件R18ゲームを配信開始
H27.11 DMMが販売停止措置

       アートムーヴ、破産手続中
       (事件番号:東京地裁平成27年(フ)第10281号)

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■判決内容

<争点>

1 侵害論

原告制作のイベント画(ゲームの進行に従って各場面を描写するために挿入されるイラスト)について、被告は複製するだけにとどまらず、被告自身において、頭部など登場人物を決定づける重要な部分を取り出し、首から下の着衣部分は切除し、被告自身が作成した裸体のイラストに当該頭部だけを接合したり、原告が作成した複数の著作物から部分的に取り出して継ぎ接ぎにして組み合わせ、それに裸体画を書き足したりするなどして改変し、露骨に性交を描写した場面等に書き換えて18歳以上を対象とするゲーム(いわゆる「R18ゲーム」)を制作し、配信しました。被告のこれらの行為について、裁判所は、原告の翻案権等(著作権法27条、28条、21条、23条、26条の2)の侵害、及び同一性保持権等(20条、18条、19条)の侵害の成立を擬制自白により肯定しています(1頁)。

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2 損害論

(1)著作権侵害による損害

著作権侵害による損害について、原告が、訴外アートムーヴから開発中であった本件ゲームで使用する原画の製作等を依頼された際、原画の製作等を含めて包括的に報酬350万円で注文を受けていることを踏まえ、裁判所は、本件R18ゲームという1個のゲーム作品のために多数のイベント画が使用される場合についても、上記と同様の報酬支払の形態を採用した上で著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額は、上記と同様に350万円と認めるのが相当であると判断しています(1頁以下)。

(2)著作者人格権侵害による損害

被告がゲームのタイトル名及び登場人物名をそのままにして、原告の意に反して、原告の製作した原画の部分を取り出して、つぎはぎにして裸体のイラストと組み合わせるなどして改変し、露骨に性交を描写した場面等に書き換えており、その結果、原告が改変後の本件R18ゲームについても原画を製作したとの印象や認識が広まったとうかがわれると裁判所は判断。
訴外DMMによる本件R18ゲームの販売期間が約2か月であることを考慮に入れても、被告の改変行為により生じた原告の精神的損害を金銭に評価した額は、200万円と認めるのが相当であると判断しています。


(3)弁護士費用相当額損害 50万円

以上合計、600万円が認定されています。

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■コメント

関連情報からしますと、原告は商業BL(Boys Love)や乙女ゲームの原画などを手掛ける平未夜氏。本件ゲームは、QuinRoseの乙女ゲーム「マーメイド・ゴシック」のようです。
被告が口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しなかったことから、擬制自白が成立しています。
本来、責任を負うべきアートムーヴが破産手続にあることから、原告としては被告を相手にせざるを得なかったかと思いますが、被告に資力があるのか、賠償金の回収は前途多難かもしれません。

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■参考サイト

(2015/10/2 11:28 ネタとぴ)
「ハートの国のアリス」などで知られる乙女ゲームブランド「QuinRose」の会社、アートムーヴが事業停止に

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2016年06月03日

MAY J.提供楽曲著作権譲渡契約証書真否確認事件(控訴審)−著作権 証書真否確認等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

MAY J.提供楽曲著作権譲渡契約証書真否確認事件(控訴審)

知財高裁平成28.5.26平成28(ネ)10002証書真否確認等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    大西勝滋
裁判官    杉浦正樹

*裁判所サイト公表 2016.5.27
*キーワード:音楽、譲渡契約、証書真否確認、相殺

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■事案

楽曲の著作権譲渡契約書の真否が争点となった事案の控訴審

控訴人(一審原告) :音楽マネジメント会社、同社代表者
被控訴人【一審被告):音楽制作会社ら

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 民法505条

1 本件契約書の成立の真否
2 不法行為に基づく損害賠償請求及び謝罪広告請求の可否
3 本件楽曲の著作権譲渡契約に基づく代金請求の可否(相殺の抗弁の成否)

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■事案の概要

『本件は,控訴人らが,被控訴人らに対し,控訴人会社とエイベックス・エンタテインメント株式会社(AEI。被控訴人ADの旧商号)との間の2012年(平成24年)12月1日付け著作権譲渡契約書(本件契約書。その写しは別添のとおり。)は,被控訴人らの従業員らによって偽造されたものであるとして,本件契約書の成立の不真正の確認を求めるとともに,被控訴人らの従業員らによる本件契約書の偽造という不法行為について,被控訴人らは使用者責任を負うとして,民法709条,715条1項本文,723条に基づき,控訴人会社に対する損害賠償金80万9000円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払並びに控訴人らに対する当該不法行為により棄損された名誉を回復するための措置としての謝罪広告を求めた事案である。』

『原判決は,本件契約書は偽造されたものとは認められず,真正に成立したものと認められるとして控訴人らの請求をいずれも棄却したため,控訴人らは,これを不服として本件控訴を提起した。そして,控訴人会社は,当審において,被控訴人らに対する損害賠償請求に係る請求額を70万9000円及びこれに対する遅延損害金に減縮するとともに,控訴人会社とAEIとの間で締結された本件楽曲に係る著作権の譲渡契約に基づき,当該契約上の代金債務をAEIから引き受けたと主張する被控訴人AMC及び同AMPに対し,代金10万円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を求める請求を追加した。なお,被控訴人らは,いずれも控訴人会社による上記請求の減縮に同意した。』(3頁)

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■判決内容

<争点>

1 本件契約書の成立の真否

本件契約書の成立の真否について、控訴審も、本件契約書は偽造されたものとは認められず、真正に成立したものであると判断しています(8頁以下)。

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2 不法行為に基づく損害賠償請求及び謝罪広告請求の可否

被控訴人らの従業員らが本件契約書を偽造したとの事実は認められないことから、当該事実が認められることを前提とする控訴人会社の損害賠償請求及び控訴人らの謝罪広告請求に理由がないと判断されています(15頁)。

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3 本件楽曲の著作権譲渡契約に基づく代金請求の可否(相殺の抗弁の成否)

控訴人会社は、被控訴人AMPに対して控訴人会社とAEIとの間の本件楽曲の著作権譲渡契約に基づく10万円の代金債権を有していたものの、被控訴人AMPは、控訴人会社に対して控訴人会社が平成25年4月頃から6か月以上に亘って、被控訴人AMPに対し面談や話合いを求めるなどしてその業務を妨害したことについて、不法行為に基づく損害賠償請求権として30万円の支払請求権を有していると裁判所は認定。
その上で、被控訴人AMPの相殺によって当該代金債権は消滅したと裁判所は判断。控訴人会社の被控訴人AMC及び同AMPに対する本件楽曲の著作権譲渡契約に基づく代金請求には理由がないと判断されています(15頁以下)。

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■コメント

控訴審で追加した請求部分も含め、一審原告(控訴人)の請求は認められていません。

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■過去のブログ記事

東京地裁平成27.11.26平成27(ワ)10310証書真否確認等請求事件
2016年01月08日記事 原審記事

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2016年05月30日

ゴルフクラブシャフトデザイン事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ゴルフクラブシャフトデザイン事件

東京地裁平成28.4.21平成27(ワ)21304著作権侵害差止等請求事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    藤原典子
裁判官    萩原孝基

*裁判所サイト公表 2016.5.24
*キーワード:工業デザイン、応用美術論、著作物性

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■事案

ゴルフシャフトのデザインやそのデザインを利用したカタログ表紙のデザインの著作物性が争点となった事案

原告:グラフィックデザイナー
被告:ゴルフ用品製造販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、2条2項

1 本件シャフトデザイン及び本件原画の著作物性
2 本件カタログデザインの著作物性

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,別紙原告デザイン目録記載1のゴルフクラブのシャフトの外装デザイン(以下「本件シャフトデザイン」という。)及びその基となった同記載2の原画(以下「本件原画」という。)並びに同記載3のカタログの表紙デザイン(以下「本件カタログデザイン」という。)はいずれも原告の著作物であるところ,被告の販売する被告シャフトは本件シャフトデザインの特徴を全て踏襲した上で配色,パターンの位置等を変えたものであるから本件シャフトデザイン(予備的に本件原画)に係る原告の著作権(翻案権,二次的著作物の譲渡権)及び同一性保持権を侵害し,また,被告の頒布する被告カタログは本件カタログデザインの特徴を全て踏襲した上で配色,パターンの位置等を変えたものであるから本件カタログデザインに係る原告の同一性保持権を侵害しているとして,(1)被告シャフト5〜8による著作権侵害につき民法703条,704条に基づく使用料相当額の不当利得金5400万円及び利息の返還,(2)被告シャフト及び被告カタログによる同一性保持権侵害につ き民法709条に基づく慰謝料(一部請求)425万円及び遅延損害金の支払,(3)被告シャフト及び被告カタログによる同一性保持権侵害につき著作権法112条1項に基づく製造ないし頒布等の差止め及び同条2項に基づく廃棄,(4)被告シャフトによる同一性保持権侵害につき同法115条に基づく謝罪広告の掲載を求めた事案である。』
(2頁以下)

<経緯>

H14 被告が広告業者にシャフトデザイン制作を発注
    広告業者が原告に外注
    原告が納品、デザイン料10万円受領
H14.11 
    被告が「Tour AD I-65」製造販売
    被告が広告業者にカタログ製作発注
    広告業者が原告に外注
    原告が納品、デザイン料20万円受領
H15 15年度カタログ(本件カタログ)頒布
H26 26年度被告カタログ製作、頒布
H27 27年度被告カタログ製作、頒布

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■判決内容

<争点>

1 本件シャフトデザイン及び本件原画の著作物性

裁判所は、著作物性(著作権法2条1項1号)、美術の著作物(2条2項)の意義について言及した上で、

「純粋な美術ではなくいわゆる応用美術の領域に属するもの,すなわち,ゴルフクラブのシャフトのように実用に供され,産業上利用される製品のデザイン等は,実用的な機能を離れて見た場合に,それが美的鑑賞の対象となり得るような創作性を備えている場合を除き,著作権法上の著作物に含まれないものと解される。」(7頁)

として、応用美術論について説示。そして、

「本件シャフトデザイン及び本件原画は,ゴルフクラブのユーザーの目を引くことなど専ら商業上の目的のため,発注者である被告の意向に沿って,実用品であるシャフトの外装デザインとして作成されたことが明らかである。一方,本件の関係各証拠上,本件シャフトデザイン及び本件原画が,シャフトの外装デザインという用途を離れて,それ自体として美的鑑賞の対象とされるものであることはうかがわれない。」

と判断。
本件シャフトデザイン及び本件原画は、いずれも著作権法上の著作物に当たらないと判断されています。

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2 本件カタログデザインの著作物性

原告は、本件カタログデザインは本件シャフトデザインの特徴的部分を平面上に表現したものであるとして著作権法上の著作物に当たると主張しました。
この点について、裁判所は、原告の主張は本件シャフトデザインに著作物性が認められることを前提とするものであるが、これを認めることができない以上、本件カタログデザインについても本件シャフトデザインについて判示したのと同様の理由によって著作権法上の著作物に当たらないと判断しています(8頁)。

結論として、原告の主張はいずれも認められていません。

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■コメント

別紙1をみると、ゴルフシャフトのデザインやカタログ表紙のデザインがどのようなものであったかが分かります。
gennga_R
(原告原画(一部))
syafuto_R
(シャフトデザイン(一部))

縞々模様が10年以上に亘ってシャフトの基本デザインとして採用されている点で、デザイナーとしても自分の作品としての思い入れが積もったのかもしれません。

そもそも論としては、間に入っている広告代理店のハンドリングの悪さ(代理店がデザイナーに外注する際に、契約書を作っていなかったと想像されます。また、この内容で裁判にまでしてしまっており、クライアントに迷惑を掛けない対応ができなかった)に起因する事案です。

なお、被告のIR情報を見ても、「事業等のリスク」に本訴訟案件の掲載がないため、具体的なリスクと認識されていないともいえそうです。
投資家情報

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■参考サイト

GRAPHITE DESIGN ゴルフ・シャフト Tour AD
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2016年05月27日

ライブバー「X.Y.Z.→A」音楽使用料事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ライブバー「X.Y.Z.→A」音楽使用料事件

東京地裁平成28.3.25平成25(ワ)28704著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 東海林 保
裁判官    広瀬 孝
裁判官    勝又来未子

*裁判所サイト公表 2016.05.19
*キーワード:音楽著作権、使用料、契約、カラオケ法理

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■事案

ジャスラックの契約形態等に対する不信を理由に使用料金額等を争った事案

原告:音楽著作権管理団体
被告:ライブハウス経営者、ロックバンドドラマー

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法22条、民法1条3項

1 被告らの演奏主体性
2 オリジナル曲の演奏による著作権侵害の成否
3 被告らの故意又は過失の有無
4 原告による許諾の有無
5 権利濫用等の抗弁の成否
6 差止請求の適法性及び差止めの必要性
7 将来請求の可否
8 損害ないし損失発生の有無及びその額

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■事案の概要

『本件は,著作権等管理事業者である原告が,被告らに対し,別紙1店舗目録記載の店舗(以下「本件店舗」といい,同目録(1)の店舗を「本件店舗6階部分」といい,同目録(2)の店舗を「本件店舗5階部分」という。)を被告らが共同経営しているところ,被告らが原告との間で利用許諾契約を締結しないまま同店内でライブを開催し,原告が管理する著作物を演奏(歌唱を含む)させていることが,原告の有する著作権(演奏権)侵害に当たると主張して,(1)上記著作物の演奏・歌唱による使用の差止めを求め,(2)主位的に著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として,予備的に悪意の受益者に対する不当利得返還請求として,連帯して,使用料相当額,弁護士費用及び使用料相当額について平成27年10月31日までに生じた確定遅延損害金又は利息金合計703万5519円並びにうち616万3064円(使用料相当額及び弁護士費用)に対する同年11月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金又は利息金の支払を求めるとともに,(3)不法行為に基づく損害賠償請求又は不当利得に基づく返還請求として,平成27年11月1日から上記著作物の使用終了に至るまで,連帯して,使用料相当額月6万3504円の支払を求める事案である。』
(2頁以下)

<経緯>

H21.05 本件店舗5階部分営業開始
H21.09 原告が「音楽著作物利用許諾契約申込書」郵送
H22.02 本件店舗6階部分営業開始
H24.02 原告が民事調停申し立て
H25.04 民事調停不成立
H27.10 本件店舗5階部分営業終了

店舗名:「LIVE BAR X.Y.Z.→A」

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■判決内容

<争点>

1 被告らの演奏主体性

被告らは、演奏主体は出演者でライブハウス側ではないと主張しましたが、裁判所は、クラブキャッツアイ事件、ロクラク2事件の最高裁判決に言及した上で、結論として、被告らはいずれも本件店舗における原告管理著作物の演奏を管理・支配し、演奏の実現における枢要な行為を行い、それによって利益を得ていると判断。
原告管理著作物の演奏主体(著作権侵害主体)に当たると認めています(40頁以下)。

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2 オリジナル曲の演奏による著作権侵害の成否

被告らは、自ら制作したオリジナル曲を演奏することは原告に著作権管理を信託している著作者自身が許諾しているのであるから、不法行為に当たらない旨主張しましたが、裁判所は、原告との著作権信託契約からこれを認めていません(43頁)。

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3 被告らの故意又は過失の有無

被告らは、店舗開店後、原告に著作権料を支払わなければならないことを認識していたとして、著作権侵害行為の認識があり、被告らには著作権侵害の故意があると認定されています(43頁以下)。

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4 原告による許諾の有無

被告らは、平成24年6月11日の本件調停の第2回調停期日において、原被告間で被告らないし被告Aが、原告に対して1曲当たり140円の使用料を支払うという内容で合意が成立した、あるいは、原告が被告らに対して原告管理著作物の利用を許諾する旨の意思表示をしたなどと主張しましたが、裁判所は認めていません(44頁以下)。

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5 権利濫用等の抗弁の成否

被告らは、原告が独占禁止法に反する違法な包括的契約を強要し、背信的な交渉を行い、被告Aから使用料を受領しないこと等を理由として、原告の各請求は、権利の濫用及び(又は)信義則違反(形式的権利の濫用、優越的地位の濫用、公序良俗違反、禁反言則違反、説明義務違反、誠実交渉義務違反等)に該当すると主張しましたが、裁判所は認めていません(45頁以下)。

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6 差止請求の適法性及び差止めの必要性

被告らは著作権侵害主体に当たり、かつ、原被告間で原告管理著作物に係る利用許諾契約が締結されていないにもかかわらず、被告らは本件店舗6階部分において、現在も原告管理著作物を利用しているとして、被告らは原告の著作権を侵害する行為を現にしているというほかないと裁判所は判断。
差止めの必要性があると判断しています(47頁以下)。

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7 将来請求の可否

原告は、本件口頭弁論終結以後も被告らの不法行為が継続することが確実であると主張して、将来の不法行為に基づく損害賠償請求を主張しました(49頁以下)。
この点について、裁判所は、将来の給付を求める訴えにおける継続的不法行為に基づき将来発生すべき損害賠償請求権の取扱いについて、大阪空港騒音訴訟最高裁事件(昭和56年12月16日大法廷判決)などに言及。
その上で、本件について、本件店舗においてはライブの出演者自らが演奏曲目を決定しており、被告らによる原告著作物の利用楽曲数は毎日変動するものであり、その損害賠償請求権の成否及びその額を一義的に明確に認定することはできないこと、また、具体的に請求権が成立したとされる時点において初めてこれを認定することができるものであること、さらに、権利の成立要件の具備については権利者である原告が主張立証責任を負うべきものであるといった点から、口頭弁論終結日の翌日である平成28年2月11日以降に生ずべき損害賠償金の支払いを求める部分は不適法であるとして、却下の判断をしています。

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8 損害ないし損失発生の有無及びその額

損害論について、以下のように認定されています(50頁以下)。

使用料相当損害金又は不当利得金 212万4412円
遅延損害金又は利息金 30万6858円
弁護士費用等 40万円

損害額又は不当利得額 合計283万1270円

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■コメント

ジャスラック対ファンキー末吉氏(ライブバー)の事案です。ミュージシャンであるファンキー末吉氏もライブバー運営に深く関わっていました。
ライブバーのサイトには、「お知らせ」として判決に触れたコメントが掲載されていますが、ファンキー末吉氏のブログ記事には、現状、判決後のコメントはないようです。
上記「お知らせ」を読みますと、「JASRACに対しては、ご出演者(演奏家)が曲別の許諾申請・支払いをスムーズに行えるシステム、ご出演者の負担する著作権料がその曲の著作者に正しく分配されるシステムを提供するよう求めてきました。」ということですが、ジャスラックのシステムの改善を訴訟の場で問題提起するという意味合いが強いという印象を受ける訴訟です。

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■参考サイト

JASRACとの戦い
ファンキー末吉BLOG〜ファンキー末吉とその仲間たちのひとりごと〜

Live Bar X.Y.Z.→A
八王子 ライブバーX.Y.Z.→A

「ライブハウスの経営者らに対する訴訟の判決について」(2016年3月30日)
ジャスラック プレスリリース

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■参考判例

クラブキャッツアイ事件
判決文
ロクラク2事件
判決文
大阪空港騒音事件
判決文

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2016年05月24日

ソーシャルアプリゲーム「神獄のヴァルハラゲート」事件−著作権 収益金配分請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ソーシャルアプリゲーム「神獄のヴァルハラゲート」事件

東京地裁平成28.2.25平成25(ワ)21900収益金配分請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    矢口俊哉
裁判官    宇野遥子

*裁判所サイト公表 2016.5.17
*キーワード:ゲーム、職務著作、黙示の合意、映画の著作物、映画製作者

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■事案

ソーシャルゲームアプリ開発に関して職務著作性などが争点となった事案

原告:被告の元取締役
被告:ソーシャルアプリ企画開発会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法15条、2条3項、2条1項10号、29条1項

1 本件ゲームは被告における職務著作であるか
2 本件ゲームは「映画の著作物」に当たり、その著作権は被告に帰属するか
3 原被告間で本件ゲーム製作に関する報酬合意がされたか

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■事案の概要

『本件は,「神獄のヴァルハラゲート」との名称のソーシャルアプリケーションゲーム(以下「本件ゲーム」という。)の開発に関与した原告が,本件ゲームをインターネット上で配信する被告に対し,(1)主位的に,原告は本件ゲームの共同著作者の1人であって,同ゲームの著作権を共有するから,同ゲームから発生した収益の少なくとも6割に相当する金員の支払を受ける権利がある旨,(2)予備的に,仮に原告が本件ゲームの共同著作者の1人でないとしても,原被告間において報酬に関する合意があり,仮に同合意がないとしても,原告には商法512条に基づき報酬を受ける権利がある旨主張して,著作権に基づく収益金配分請求権(主位的請求)ないし報酬合意等による報酬請求権(予備的請求)に基づき,本件ゲームの配信開始から平成25年7月末日までに被告が本件ゲームにより得た利益の6割相当額とされる1億1294万1261円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成25年9月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合(主位的請求)又は商事法定利率年6分の割合(予備的請求)による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁)

<経緯>

H24.07 原告がGLOOPS社退社
     現被告代表者らもGLOOPS社退社
H24.09 被告設立。原告が発起人の1人
H24.10 原告が被告に貸付
H24.12 本件ゲーム完成
H25.01 原告が被告の取締役に就任
     本件ゲームをグリーで配信
H25.03 原告が役員報酬として合計63万円受領       

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■判決内容

<争点>

1 本件ゲームは被告における職務著作であるか

原告が主張する著作権に基づく収益金配分請求について、まず、本件ゲームの職務著作性(著作権法15条1項)に関して、裁判所は各要件を検討しています(20頁以下)。

(1)法人等の発意に基づくこと

現被告代表者Bは、原告がGLOOPS社に在籍中から本件ゲームを新会社等において製作予定であることを告げて原告に対して本件ゲーム開発への参加を勧誘したこと、原告もBの勧誘があったためにGLOOPS社を退社して本件ゲーム開発に関与したことを認めていること、その後も被告において本件ゲーム開発が行われ被告名義で本件ゲームが配信されたこと等から、本件において実質的にはBが代表取締役を務める被告の発意に基づいて本件ゲーム開発が行われたものと認められると裁判所は判断しています。

(2)法人等の業務に従事する者が職務上作成したこと

裁判所は、「法人等と著作物を作成した者との関係を実質的にみたときに,法人等の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり,法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを,業務態様,指揮監督の有無,対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して判断すべきである」として、RGBアドベンチャー事件(最高裁平成15年4月11日第二小法廷判決)に言及。
その上で、原告は本件ゲーム開発期間中は被告に雇用されておらず、被告の取締役の地位にもなかったものの、被告においてタイムカードで勤怠管理をされ、被告のオフィス内で被告の備品を用い、Bの指示に基本的に従って本件ゲーム開発を行い、労務を提供するという実態にあったと認定。
被告から報酬を受領していなかった期間があるものの、取締役としての報酬には本件ゲーム開発に係る報酬の後払い的な性質を含むことも考慮した上で、要件(2)を充足すると判断しています。

(3)法人等が自己の著作名義の下に公表すること

本件ゲームは被告名義でインターネット上で配信されたものであり、要件(3)を充足すると裁判所は判断しています。

(4)作成時における契約、勤務規則その他に別段の定めがないこと

原被告間で本件ゲームの著作権の帰属に関して特段の合意があったとは認められないと裁判所は判断しています。

結論として、本件ゲームの被告における職務著作の成立が認められています。

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2 本件ゲームは「映画の著作物」に当たり、その著作権は被告に帰属するか

次に、原告の主位的請求に関して、「念のため,仮に職務著作の点を措いて」として、本件ゲームの「映画の著作物」該当性等についても検討が加えられています。
被告は本件ゲームは「映画の著作物」としての取扱いから、著作権は原告に帰属しないと主張しました。

この点について、裁判所は、本件ゲームは「映画の著作物」に該当すること、被告が映画製作者に該当し、また、原告は本件ゲームの製作に参加することを約束していると判断(2条3項、2条1項10号、29条1項)。仮に原告が映画の著作物である本件ゲームの著作者であるとしても、その著作権は被告に帰属すると判断しています(22頁以下)。

結論として、本件ゲームは職務著作あるいは「映画の著作物」に該当するため、原告は本件ゲームの著作権を有していないことから、原告の主位的請求は理由がないと判断されています。

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3 原被告間で本件ゲーム製作に関する報酬合意がされたか

(1)合意の有無

予備的請求に関して、裁判所は、原被告間において原告が本件ゲーム開発に従事することの対価に関する黙示の合意があったものと認めるのが合理的であると判断しています(28頁以下)。

(2)合意の内容

本件ゲームの開発について、ボーナス300万円及び開発が行われた期間につき月額30万円の報酬を支払う旨の黙示の合意が成立したものと認めるのが相当であると裁判所は判断しています。

結論として、ボーナス300万及び4カ月分の報酬120万円の合計420万円が支払額として認定されています。

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■コメント

ソーシャルアプリゲームを開発する同志が退社後、新たに会社を立ち上げてゲームを開発、販売したものの、仲違いがあって紛争に至ったという事案です。
問題となったゲーム「神獄のヴァルハラゲート」は、「GREE Platform Award 〜The first half of 2013〜」で総合大賞を受賞するなど、評価の高いゲームであったようです(被告会社沿革参照)。
原告が被告設立時に出資した額(8株8万円)との株価の差額8256万2101円ものキャピタルゲインが原告に生じているということで(12頁参照)、本件ゲームがヒット作品であったことが伺えます。

なお、原被告らが退職した会社が、被告らに対して営業秘密漏洩(不正競争防止法事件)等で民事提訴していました。
訴訟の提起に関するお知らせ(2013年6月12日 株式会社gloops プレスリリース)
この件については、和解が成立しています。
訴訟の和解に関するお知らせ(2014年5月27日 株式会社グラニ プレスリリース)

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■参考判例

最高裁平成15年4月11日平成13(受)216著作権使用差止請求事件
RGBアドベンチャー事件

【裁判要旨】
「いわゆる観光ビザにより我が国に滞在した外国人であるデザイナー甲が,アニメーション等の企画,撮影等を業とする株式会社乙の従業員宅に居住し,その事務所で作業を行い,乙から毎月基本給名目で一定額の金銭の支払を受けて給料支払明細書も受領し,乙の企画したアニメーション等に使用するものとして図画を作成したなど判示の事実関係の下においては,甲がした作業について乙が指揮監督をしていたかどうかを確定することなく,甲の在留資格の種別,雇用契約書の存否等の形式的な事由を主たる根拠として,甲と乙との間の雇用関係の存在を否定し,甲が著作権法15条1項にいう「法人等の業務に従事する者」に当たらないとした原審の判断には,違法がある。」

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■追記(2016.09.13)

「神獄のヴァルハラゲート」文書提出命令申立事件
知財高裁平成28.8.8平成28(ウ)10038文書提出命令申立事件
決定PDF
2016年9月13日公開
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2016年05月23日

構造詳細設計用3DCADソフトウェア不正使用事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

構造詳細設計用3DCADソフトウェア不正使用事件

大阪地裁平成28.3.24平成27(ワ)7614損害賠償請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 森崎英二
裁判官    田原美奈子
裁判官    大川潤子

*裁判所サイト公表 2016.5.17
*キーワード:海賊版、損害論

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■事案

構造詳細設計用3DCADソフトウェアの海賊版使用にあたり損害額などが争点となった事案

原告:ソフトウェア開発会社(フィンランド法人)
被告:鋼構造物製作会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法114条3項

1 著作権侵害の故意過失の有無
2 損害額

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■事案の概要

『本件は,別紙プログラム目録記載のプログラム(以下「本件プログラム」という。)の著作権者である原告が,同プログラムの不正コピー品を購入しコンピュータにインストールして利用した被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求として836万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成24年11月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H24.10 被告が本件プログラムの不正コピー品インストール用DVDを購入
     被告事務所の2台のPCにインストールし使用

本件プログラム:
Tekla Structures
バージョン 18.0 SR0
エディション Full Detailing

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■判決内容

<争点>

1 著作権侵害の故意過失の有無

インターネットを通じて購入した不正コピー品によって本件プログラムを被告のコンピュータへインストールした行為は、著作権者である原告から利用許諾を受けずになされたものであり、複製権を侵害する違法な行為であると裁判所は認定。
そして、被告は、かつて本件プログラムの古いバーションについては、原告からライセンスを受けた事実を認めているとして、今回の本件プログラムのコンピュータへのインストールについて、原告のライセンス(利用許諾)が必要であったことは認識していたと認められると判断。本件プログラムの複製権侵害行為について、被告に少なくとも過失があると裁判所は判断しています(4頁以下)。

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2 損害額

(1)使用料相当損害

本件プログラムの日本国内での使用については、100%の子会社であるテクラ株式会社を通じて本件プログラムのライセンス契約を締結する必要があり、ライセンス料はコンピュータ1台当たり380万円でした。
被告は2台のコンピュータにインストールした事実を認めていることから、裁判所は、原告が「受けるべき金銭の額に相当する額」(著作権法114条3項)、複製権侵害行為が2回行われたことを前提に、760万円を下らないものと算定するのが相当であると判断しています(5頁以下)。

(2)弁護士費用相当額損害

弁護士費用相当の損害額は、76万円と認定されています(6頁以下)。

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■コメント

建築・建設業界向けのソフトウェアの海賊版使用事案となります。
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2016年05月21日

宇多田ヒカル「First Love」事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

宇多田ヒカル「First Love」事件

東京地裁平成28.4.21平成27(ワ)28086損害賠償等請求事件PDF
別紙1(原告請求目録)

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    萩原孝基
裁判官    中嶋邦人

*裁判所サイト公表 2016.5.16
*キーワード:著作者性

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■事案

宇多田ヒカルの楽曲について、原告の共同著作者性が争点となった事案

原告:個人
被告:宇多田ヒカル

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、2号

1 請求の特定
2 通知の合意の成否
3 著作者性

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■事案の概要

『本件は,原告が,宇多田ヒカル名義の編集著作物であるCDアルバム「First Love」(以下「本件アルバム」という。)及び「誰かの願いが叶うころ」と題する楽曲の歌詞(以下,これと本件アルバムを併せて「原告著作権主張作品」という。)の共同著作者であり,「B&C」,「はやとちり」及び「Wait&See〜リスク〜」と題する各楽曲の歌詞(以下「原告関与主張歌詞」と総称する。)の被告による創作に関与したが,被告が原告の氏名を表示せず,被告のみが著作者として利益を得ており,これにより原告が損害を被ったと主張して,被告に対し,(1)著作権法2条,12条1項,19条1項及び115条に基づきウェブサイト上に原告の氏名及び謝辞を表示すること(第1請求),(2)民法1条,90条及び91条に基づき被告が原告と合意した上で著作物を発表する前に原告に通知等を行うこと(第2請求),(3)民法709条,著作権法114条3項に基づき原告著作権主張作品及び原告関与主張歌詞から受領すべき金員を支払うこと(第3請求),(4)民法709条,710条に基づき損害賠償金1339万1000円を支払うこと(第4請求),(5)著作権法115条及び民法723条に基づき原告著作権主張作品及び原告関与主張歌詞の創作に原告が関わった事実を公表すること(第5請求)並びに(6)著作権法112条に基づき本件の裁判が確定するまで被告による新たな著作物の販売を差し止めること(第6請求)を求める事案である。』
(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 請求の特定

被告は、本案前の主張として原告の請求が特定されていないことを理由に本件訴えの却下を求めましたが、裁判所は、いずれも請求として特定されていないとはいえないとして、本案について判断がされています(2頁)。

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2 通知の合意の成否

原告は、「原告が表意する文言ならびに発案などを被告が創作また実演する営利を目的とした著作物に用いる場合は、その長短、程度に係らず、その著作物を発表する以前に原告に通知し、双方協議の上、双方の合意を持って発表すること」(別紙1参照)等を民法1条、90条及び91条に基づき被告に対して求めました。

この点について、裁判所は、上記各条によっても、こうした合意を形成して通知等を求める法律上の請求権が生じるとはいえないとして、原告の主張を認めていません(2頁)。

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3 著作者性

原告は、本件アルバムにおける本件アルバム名と同名の楽曲の曲順やテンポ等が原告が被告に伝えた内容を反映したものとなっていること、また、「誰かの願いが叶うころ」と題する歌の歌詞のうち、「みんなに必要とされる君を癒せるたった一人になりたくて少し我慢し過ぎたな」の部分が、被告宛の投稿を受け付けるウェブサイトに原告が投稿した文章に依拠した結果として、ほぼ同一のものとなっていることから、原告著作権主張作品については原告が共同著作者の一人であり、また、原告関与主張歌詞については被告による創作に関与したと主張しました(2頁以下)。

この点について、裁判所は、

「本件の関係各証拠を総合しても原告が主張する伝達内容が被告に伝えられたとは認め難い上,仮にそのような事実が認められるとしても,ある作品の著作者であるというためには,その者が思想又は感情を創作的に表現したものであることを要する(著作権法2条1項1号,2号)。ところが,原告が主張する伝達内容は,楽曲のテンポその他の素材の内容及び配列の順序のいずれの点においても,創作のための着想にすぎず,具体的な表現であるということはできない。」と判断。

また、原告がウェブサイトに上記歌詞と表現上符合するような投稿をしたことをうかがわせる証拠はなく、さらに、原告関与主張歌詞についての原告の主張についてみても、原告は具体的な関与経過について何ら主張立証していないとして、原告の主張を認めていません。

結論として、原告の請求1乃至6について、いずれも認められていません。

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■コメント

原告の主張を見ると宇多田ヒカルの創作現場に近い関係者の印象ではありますが、原告の経歴や経緯は不明です。
なお、本件は本人訴訟で、被告側代理人として前田哲男先生がご担当です。
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2016年05月18日

日航機墜落事故写真発信者情報開示事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

日航機墜落事故写真発信者情報開示事件

東京地裁平成28.4.27平成28(ワ)2419発信者情報開示請求事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官    笹本哲朗
裁判官    天野研司

*裁判所サイト公表 2016.5.11
*キーワード:発信者情報開示請求、著作者性、職務著作

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■事案

日航機墜落事故写真が無断で「NAVERまとめ」に掲載されたとして投稿者の情報を開示請求した事案

原告:報道カメラマン
被告:電気通信事業会社

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■結論

請求認容

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■争点

条文 プロバイダ責任制限法4条、著作権法14条、15条、19条、21条、23条

1 本件記事により原告の著作権又は著作者人格権が侵害されたことが明らかであるか
2 本件発信者情報が原告の損害賠償請求権の行使のために必要であるか

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■事案の概要

『本件は,別紙原告写真目録記載1及び2の各写真(以下,符号に対応して「本件写真1」,「本件写真2」といい,併せて「本件各写真」という。)の著作者であり,本件各写真の著作権を有すると主張する原告が,氏名不詳者(以下「本件投稿者」という。)が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト「NAVERまとめ」(以下「本件サイト」という。)に投稿した記事(以下「本件記事」という。)中に掲載されている別紙投稿写真目録記載1及び2の各写真(以下,符号に対応して「本件投稿写真1」,「本件投稿写真2」といい,併せて「本件各投稿写真」という。)は,それぞれ本件写真1及び同2を複製したものであるから,本件投稿者が本件記事を本件サイトに投稿した行為により原告の有する著作権及び著作者人格権が侵害されたことは明らかであり,本件投稿者に対する損害賠償請求権の行使のために本件記事に係る別紙発信者情報目録記載の情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を受ける必要があると主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下,単に「法」という。)4条1項に基づき,経由プロバイダである被告に対し,本件発信者情報の開示を求める事案である。』(1頁以下)

<経緯>

H25.08 本件投稿者が本件記事を本件サイトに投稿
       LINE社に仮処分命令申立(東京地裁平成27年(ヨ)第22087号)
H27.10 本件記事から本件各投稿写真が削除

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■判決内容

<争点>

1 本件記事により原告の著作権又は著作者人格権が侵害されたことが明らかであるか

1.本件各写真の著作権者について

(1)著作者性

本件各写真は、いずれも株式会社新潮社が発行する「FOCUS」(本件雑誌)に掲載されたもので、本件雑誌には本件写真1の右下脇に「PHOTO A」と、本件写真2の左下脇に「PHOTO B」と、それぞれ記載されていました。
本件写真1について、裁判所は、本件雑誌の刊行により公衆へ提供されたものと認められるが、本件雑誌において本件写真1の右下脇に「PHOTO A」と原告の氏名が表示されていることから、本件写真1の著作者(撮影者)は原告と推定され(著作権法14条)、同推定を覆すに足りる証拠はないと判断しています(4頁以下)。
また、本件写真2について、本件雑誌において本件写真2の左下脇に「PHOTO B」と記載されており本件写真2の著作者はBと推定される(著作権法14条)ものの、Bは、本件写真2を撮影したのは原告であること、原告が本件写真2のネガを保有していることを認める旨の確認書を作成しており、また、原告は、本件写真2のネガを用いて本件写真目録を作成していることが認められるとして、本件写真2の著作者(撮影者)も原告であると認めるのが相当であると裁判所は判断しています。

(2)職務著作性

原告は本件各写真を撮影した当時、フリーカメラマンの立場にあったものと認められるとして、本件各写真について職務著作(15条1項)が成立するものとは認められないと裁判所は判断しています(5頁)。

2.本件投稿写真が本件各写真の複製物であるか

本件各投稿写真は、いずれも本件雑誌に掲載された本件各写真に依拠して有形的に再製されたものであり、本件各写真の複製物であると認められると裁判所は判断しています(5頁以下)。

3.本件記事による著作権及び著作者人格権の侵害について

本件記事に掲載された本件各投稿写真は、いずれも本件各写真の複製物と認められるが、本件記事は原告の氏名を表示しておらず、また、本件記事はインターネット上のウェブサイトである本件サイトに投稿されることによって本件各投稿写真は自動公衆送信し得るようになっていたものと認められると裁判所は認定。
結論として、本件投稿者が本件記事を本件サイトに投稿したことによって原告の有する著作権(複製権、公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)が侵害されたことは明らかであると判断しています(6頁)。

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2 本件発信者情報が原告の損害賠償請求権の行使のために必要であるか

争点1の侵害を原因として、本件投稿者に対して不法行為による損害賠償請求権を行使するために本件発信者情報の開示を原告は求めているところ、損害賠償請求権を行使するためには、本件投稿者を特定する必要があるとして、原告には同特定のために本件発信者情報の開示を受ける必要があるといえると裁判所は判断しています(6頁以下)。

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■コメント

「NAVERまとめ」サイトでの投稿記事が問題となった事案としては、最近では創価学会池田名誉会長の肖像画像事案がありました(後掲記事参照)。

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■過去のブログ記事

東京地裁平成28.1.18平成27(ワ)21642発信者情報開示請求事件
「NAVERまとめ」投稿記事発信者情報開示事件

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2016年05月16日

串かつ「かつーん」商標事件−商標権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

串かつ「かつーん」商標事件

東京地裁平成28.4.18平成25(ワ)20031損害賠償等請求事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官    笹本哲朗
裁判官    天野研司

*裁判所サイト公表 2016.5.10
*キーワード:商標、著作権の抗弁、著作物性

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■事案

串かつ店舗で使用される文字とロゴで構成された標章の著作物性などが争点となった事案

原告:飲食店経営会社
被告:原告元代表取締役、不動産管理会社

原告商標:「かつーん」(5596424)(5596423)
被告標章:「かつーん」「かつ〜ん」

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 会社法467条、356条、商標法36条、29条、著作権法2条1項1号

1 原告の被告A颪紡个垢覯饉卷。苅横馨鬘厩爐亡陲鼎損害賠償請求
2 原告の被告らに対する共同不法行為に基づく損害賠償請求
3 被告A颪紡个垢詼楫鏗鴇ι幻△亡陲鼎差止請求
4 原告の被告A颪紡个垢觸衢権に基づく本件各動産引渡請求等

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■事案の概要

『本件は,原告が,(1)平成24年6月5日から平成25年4月27日まで原告の取締役であった被告A颪,(1)平成24年10月末に,株主総会の承認を経ることなく,原告の経営していた串かつ店「かつーん」千歳烏山店(以下,単に「千歳烏山店」という。)に関する事業を被告A饉身に譲渡したことにより,会社法467条1項に違反するとともに,利益相反取引(同法356条1項2号)をしたものとして同法356条1項に違反した,(2)同年8月17日から同月22日までの間及び同年9月24日から同年10月31日までの間に,原告の千歳烏山店の売上金を横領した,(3)同月25日,原告がしていた商標登録出願を無断で取り下げた,(4)同年9月25日及び同年10月25日に,株主総会決議を経ずに,被告A饉身の取締役報酬をお手盛りした,(5)同年9月25日から平成25年4月27日までの間,株主総会の承認を経ることなく,既に原告に事業譲渡していたはずの串かつ店「かつーん」赤坂店(以下,単に「赤坂店」という。)の営業を行い,競業避止義務違反(同法356条1項1号)をしたものとして同法356条1項に違反した,以上(1)ないし(5)をもって取締役としての任務を怠ったものである旨主張して,被告A颪紡个掘て泳。苅横馨鬘厩爐亡陲鼎損害賠償請求として,3500万円及びこれに対する平成26年7月18日付け訴え変更申立書送達日の翌日である同月23日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,(2)被告A颪,平成24年10月30日,原告と被告東邦サプライとの間で締結されていた千歳烏山店の店舗建物に係る賃貸借契約を解約し,同年11月1日,被告A餮朕佑同建物を賃借する旨の賃貸借契約を締結したことは,横領に当たり,被告東邦サプライにも共同不法行為責任がある旨主張して,被告らに対し,民法709条,719条に基づく損害賠償請求として,1500万円及びこれに対する各訴状送達日の翌日である,被告A颪砲弔平成25年8月24日から,被告東邦サプライにつき同月29日から,各支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め(なお,被告A颪紡个垢襪海寮禅瓩蓮ぞ綉(1)の請求のうち1500万円及びこれに対する平成26年7月23日から支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金の支払請求と,損害額及び遅延損害金が重複する範囲で選択的併合の関係にある。),(3)被告A颪,串かつ料理を主とする飲食物を提供するに当たり,別紙被告標章目録記載の各標章(以下,それぞれ「被告標章1」ないし「被告標章3」といい,これらを併せて「被告各標章」という。)を使用していることは,別紙原告商標目録記載の各商標(以下,それぞれ「原告商標1」及び「原告商標2」といい,これらを併せて「原告各商標」という。)に係る各商標権(以下,それぞれ「本件商標権1」及び「本件商標権2」といい,これらを併せて「本件各商標権」という。)を侵害するものである旨主張して,被告A颪紡个掘ぞι庫。械蕎鬘厩爐亡陲鼎,被告各標章の使用の差止めを求め,(4)別紙物件目録記載の各動産(以下「本件各動産」という。)を占有している被告A颪紡个掘ぁ複院頬楫鏗篤飴困猟詑濕攘戚鷭了,使用貸借契約終了又は所有権に基づき,本件各動産の引渡しを求めるとともに,(2)本件各動産の引渡済みまで又は上記引渡しの強制執行が不能となるまで1か月当たり同目録の各「使用料」欄記載の金額の割合による使用料相当損害金の支払並びに(3)本件各動産の強制執行不能の場合に同目録の各「価格」欄記載の代償金及びこれに対する執行不能となった日の翌日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 原告の被告A颪紡个垢覯饉卷。苅横馨鬘厩爐亡陲鼎損害賠償請求
(略)

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2 原告の被告らに対する共同不法行為に基づく損害賠償請求
(略)

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3 被告A颪紡个垢詼楫鏗鴇ι幻△亡陲鼎差止請求

(1)商標権侵害性

被告A颪糧鏐霽絃錬欝擇喩鏐霽絃錬欧了藩儿坩戮蓮原告の保有する本件商標権1を侵害し、被告標章3の使用行為は、原告の保有する本件商標権2を侵害すると裁判所は判断しています(58頁)。

(2)著作権の抗弁の成否

被告A颪蓮抗弁として、原告商標2については平成19年頃、A鵑創作し、著作権を有しているものであり、被告A颪錬像鵑ら許諾を得て赤坂店の営業にかつ〜んロゴ(被告標章3)を使用しているが、他方、原告は、被告A颪主体となって利用する限りでかつ〜んロゴ(原告商標2)の使用許諾を得ていたところ、平成24年9月24日、A鬚本件預金引揚げをしたことにより、千歳烏山店の運営を継続することができなくなり、被告A颪鮗臑里箸靴童狭陲かつ〜んロゴを使用することは不可能となった。
以上からすれば、原告の被告A颪紡个垢詼楫鐓ι幻■欧旅垰箸蓮原告商標2の商標登録出願の日より前に生じた他人の著作権(A鵑涼作権)と抵触するため、商標法29条により許されない旨主張しました。

この点について、裁判所は、原告商標2のロゴは、「かつ〜ん」の文字を毛筆体に変形し「か」の字を大きくしたものと、その背景に「○」の中に「串」の字を朱色で記載したマークを配したものであり、同ロゴは、商標として使用することが予定された実用的・機能的なロゴであること、上記の文字やマークはそれぞれありふれたものとみられることからすると、その実用的機能を離れて創作性は認められないことから、著作権法上の著作物には当たらず、これについて著作権は発生しないというべきであると判断。
被告A颪主張する著作権の抗弁(商標法29条)は、その前提を欠き、採用することができないと判断しています。

(3)先使用権の抗弁の成否(略)
(4)権利濫用の抗弁の成否(略)
(5)無効の抗弁の成否(略)
(6)通常使用権の抗弁の成否(略)

結論としては、被告A颪串かつ料理を主とする飲食物の提供という役務に関して、その提供を受ける者の利用に供するメニュー並びに看板、ホームページ及びチラシに被告各標章を使用することに関しては、商標法36条1項により原告は被告A颪紡个靴董∨楫鐓ι幻■韻亡陲鼎い独鏐霽絃錬欝擇喩鏐霽絃錬欧痢△泙拭∨楫鐓ι幻■欧亡陲鼎い独鏐霽絃錬海痢各使用行為の差止めを請求することができると判断されています。

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4 原告の被告A颪紡个垢觸衢権に基づく本件各動産引渡請求等
(略)

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■コメント

串かつ店の経営を巡る紛争のなかで「かつ〜ん」文字とロゴで構成される標章の著作物性が争点の1つとなりましたが、結論としては、著作物性が否定されています。

option1

(別紙より)

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2016年05月13日

「エジソンのお箸」幼児用箸事件−著作権 著作権侵害行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「エジソンのお箸」幼児用箸事件

東京地裁平成28.4.27平成27(ワ)27220著作権侵害行為差止等請求事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官    笹本哲朗
裁判官    天野研司

*裁判所サイト公表 2016.5.10
*キーワード:著作物性、工業デザイン、応用美術論

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■事案

幼児用箸のデザインの著作物性などが争点となった事案

原告:ベビー用品輸入製造販売会社
被告:プラスチック製品企画製造販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、2条2項、10条1項4号、6号

1 原告各製品に係る著作権侵害(複製権又は翻案権)の成否
2 原告図画に係る著作権侵害の成否

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■事案の概要

『本件は,「エジソンのお箸」という商品名の幼児用箸を製造販売している原告が,「デラックストレーニング箸」という商品名の幼児用箸を製造販売している被告に対し,自らが別紙原告著作物目録1記載の図画(以下「原告図画」という。)及び別紙原告著作物目録2記載1ないし19の各幼児用箸(以下,同目録の番号に従い「原告製品1」などといい,これらを併せて「原告各製品」という。)に係る各著作権を有すること(なお,原告各製品のうち,上部の部材に記載又は成形されたキャラクターの図柄又は立体像については,原告も著作権を主張しているものではないと解される。)を前提に,被告による被告商品目録記載1ないし20の各幼児用箸(以下,同目録の番号に従い「被告商品1」などといい,これらを併せて「被告各商品」という。)の製造販売が上記各著作権(複製権及び翻案権)を侵害する旨主張して,被告に対し,(1)著作権法112条1項・2項に基づき,被告各商品の製造及び販売の差止め並びに廃棄を求めるとともに,(2)平成25年1月から平成27年9月28日(訴え提起時現在)までの間における上記各著作権侵害を内容とする不法行為に基づく損害賠償請求として,2400万円の内金100万円及びこれに対する不法行為の後である同年11月13日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

(1頁以下)

<経緯>

H15 原告が原告各製品を製造販売
H25 被告が被告各製品を製造販売
H25 不競法、特許法に基づく差止め等請求訴訟提起
    (大阪地裁平成25年(ワ)第2464号事件)、棄却判決
H26 知財高裁控訴棄却判決(知財高裁平成25年(ネ)第10110号事件)
H27 本訴提起

原告商品名:「エジソンのお箸」
被告商品名:「デラックストレーニング箸」
原告図画:「子供の知能を発展させる練習用箸」(米国著作権登録番号VAu 1-173-069)

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 原告各製品に係る著作権侵害(複製権又は翻案権)の成否

原告各製品は幼児用箸として実用に供されるためにデザインされた機能的な工業製品でしたが、原告は、これが著作権法上の「著作物」(2条1項1号)として保護を受ける旨主張しました(11頁以下)。
この点について、裁判所は、機能性を有する製品のデザインに関する著作権法、意匠法、不正競争防止法での取扱いに関して言及した上で、
「実用に供される機能的な工業製品ないしそのデザインは,その実用的機能を離れて美的鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えていない限り,著作権法が保護を予定している対象ではなく,同法2条1項1号の「文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」に当たらないというべきである。」(11頁以下)と説示。
幼児の練習用箸として量産される工業製品であること、リングの個数、配置、形状、構造、また、連結箸であること等の検討から、結論として、原告各製品は、実用的機能を離れて美的鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えているということはできないし、純粋美術と同視し得る程度の美的特性を備えているということもできないと判断。
原告各製品は著作権法2条1項1号所定の著作物には当たらないことから、被告による被告各商品の製造販売が原告各製品に係る著作権(複製権又は翻案権)を侵害するとする原告の主張を認めていません。

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2 原告図画に係る著作権侵害の成否

(1)「学術的な性質」を有する図面該当性

原告図画は、原告各製品ないしこれに類似する製品を製作するためのあくまで工業用のデザイン画の域を出ないものと認められるとして、原告図画は「学術的な性質」を有する図面(著作権法10条1項6号)とはいえないと裁判所は判断しています(13頁)。

(2)美術の著作物性

原告は、「原告図画は,あたかも画家がスケッチするようなタッチで描かれたものであって,特にデザイン画中の影の表現等は絵画的な表現形式であり,美術の著作物に当たる。」旨主張しました(13頁以下)。
この点について、裁判所は、原告図画について、原告各製品等工業製品の製作とは離れて純粋に白黒のスケッチ画として見た上で検討を加えています。
そして、3次元の被告各商品とは形状や色彩等において全く異なり、また、仮に原告の指摘する影の表現等の絵画的な特徴をもって創作性を認めるとした場合、その特徴は被告各商品には何ら現れていないとして、被告各商品から原告図画の表現形式上の本質的特徴は感得することができないと判断。
また、被告各商品が原告図画に依拠して作られたとの事実を認めるに足りる証拠もないと認定。
被告製品が原告図画の複製にも翻案にも当たらないことは明らかであると判断しています。

結論として、被告による被告各商品の製造販売が原告図画に係る著作権(複製権又は翻案権)を侵害するということはできないとされています。

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■コメント

別紙1に原被告各製品が掲載されているので、製品の対比がし易いです。
いずれも幼児向けの箸のトレーニング用のもので、キャラクターを配した機能性箸となっています。
なお、先行する裁判で不正競争防止法2条1項1号の論点(商品の形態的な特徴をもって同号の商品等表示に該当するかどうか)については、すでに控訴審でも否定されています。

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■先行判例

(控訴審)
知財高裁平成26年4月24日平成25(ネ)10110特許権侵害差止等請求控訴事件
特許権侵害差止等請求控訴事件

(原審)
大阪地裁平成25年10月31日平成25(ワ)2464特許権侵害差止等請求事件
特許権侵害差止等請求事件
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2016年05月11日

EM菌新聞記事事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

EM菌新聞記事事件

東京地裁平成28.4.28平成27(ワ)18469損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    藤原典子
裁判官    中嶋邦人

*裁判所サイト公表 2016.5.9
*キーワード:著作物性、引用、複製権、同一性保持権

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■事案

有用微生物群(EM)に関する新聞記事が研究者の著作権等を侵害するかどうかが争点となった事案

原告:大学名誉教授
被告:新聞社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、20条、民法709条

1 本件被告記載1及び2が原告の複製権又は同一性保持権を侵害するか
2 原告を取材せずに本件記事1及び2を掲載した行為が不法行為に当たるか

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■事案の概要

『本件は,原告が,新聞社である被告に対し,被告が発行する新聞の記事に原告の執筆したブログの一部を引用したことが原告の複製権(著作権法21条)及び同一性保持権(同法20条)の侵害に当たるとともに,原告を取材せずに記事を掲載した行為が不法行為に当たると主張して,(1)民法709条に基づく損害賠償金352万円及びこれに対する最終の不法行為の日である平成24年7月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,(2)著作権法115条及び人格権に基づく名誉回復措置として謝罪広告の掲載を求める事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H19.10.1 原告がブログ記事(本件原告記載)を掲載
H24.7.03 被告が本件記事1を青森版に掲載
H24.7.11 被告が本件記事2を青森版に掲載

原告ブログ:「新・夢に生きる」
本件記事1:「EM菌効果『疑問』検証せぬまま授業」
本件記事2:「科学的効果疑問のEM菌 3町が町民に奨励」

【別紙対照表】
原告ブログ記事:
「私はEMの本質的な効果は,B先生が確認した重力波と想定される縦波の波動によるものと考えています。」
本件記事1:
「EM菌の効果について,開発者のA・琉球大名誉教授は「重力波と想定される波動によるもの」と主張する。」
本件記事2:
「開発者のA・琉球大名誉教授は,効果は「重力波と想定される波動による」と説明する。」

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■判決内容

<争点>

1 本件被告記載1及び2が原告の複製権又は同一性保持権を侵害するか

原告は、本件原告記載は有用微生物群(EM)に関する考え方をできる限りコンパクトに伝えるために工夫を凝らしたものであり、原告の個性が表現された著作物であるとした上で、本件記事中の被告記載1及び2は、本件原告記載の「B先生が確認した」、「縦波の」との文言を削除して原告の意に反する改変を加えた上で出典を明示せずに無断で引用したものであって、報道の目的上正当なものともいえないから原告の複製権(著作権法21条)及び同一性保持権(同法20条)を侵害する旨主張しました(5頁以下)。

この点について、裁判所は、本件において本件原告記載と本件被告記載1及び2が表現上共通するのは「重力波と想定される」「波動による(もの)」との部分のみであり、この部分はEMの効果に関する原告の学術的見解を簡潔に示したものであって、原告の思想そのものということができるとして、著作権法において保護の対象となる著作物(2条1項1号)に当たらないと判断。

結論として、被告による複製権侵害は認められず、また、これを前提とする同一性保持権侵害も認められないとしています。

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2 原告を取材せずに本件記事1及び2を掲載した行為が不法行為に当たるか

原告は、被告が原告を取材していないにもかかわらず、あたかも原告を取材して得たコメントを掲載したと読まれる記事(本件記事1及び2)を掲載したとして、当該行為が不法行為に当たる旨主張しました(6頁以下)。

この点について、裁判所は、本件被告記載1及び2の記載に接した一般の新聞読者の普通の注意力に照らすと、本件記事1及び2が被告が原告を取材して得られたコメントを掲載した記事として読まれる可能性があるというべきであり、また、被告が公表している「記者行動基準」に規定する取材方法に抵触しかねない行為であったと判断。
もっとも、記者行動基準は社内指針にすぎないこと、また、本件被告記載1及び2は、公にされていた本件原告記事を参考にして執筆されたものであって、その内容はEMの本質的効果に関する原告の見解に反するものではないと認められるとして、不法行為と評価すべき違法性があったとはいえないと判断。

結論として、被告の記事掲載行為が不法行為に当たるとする原告の主張は認められていません。

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■コメント

原告のブログ記事(ウェブマガジン)は、2016年4月2日のもので105回を数える連載記事で、問題とされた記事は、2007年10月1日付「波動技術実践研究会発足記念フォーラム(9月8日)」となります。
http://www.ecopure.info/rensai/teruohiga/yumeniikiru05.html

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2016年04月25日

著作権判例百選編集事件(保全異議申立事件)−著作権 保全異議申立事件決定(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

著作権判例百選編集事件(保全異議申立事件)

東京地裁平成28.4.7平成28(モ)40004保全異議申立事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官    笹本哲朗
裁判官    天野研司

*裁判所サイト公表 2016.04.21
*キーワード:判例集、編集、編集著作者、共同著作物、翻案、氏名表示権、同一性保持権

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■事案

著作権判例百選の編者が出版社との間で編集著作者性などを巡って争われた事案

債権者:大学教授X
債務者:出版社

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■結論

仮処分決定認可

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■争点

条文 著作権法14条、12条、27条、19条、20条、65条3項、64条2項

1 著作者性
2 翻案該当性ないし直接感得性
3 本件著作物を本件原案の二次的著作物とする主張の当否
4 氏名表示権の侵害の有無
5 同一性保持権の侵害の有無
6 黙示の許諾ないし同意の有無
7 著作権法64条2項、65条3項に基づく主張の当否
8 権利濫用の有無
9 本件雑誌の出版の事前差止めの可否
10 保全の必要性

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■事案の概要

『債権者は,自らが編集著作物たる別紙著作物目録記載の雑誌『著作権判例百選[第4版]』(以下「本件著作物」という。)の共同著作者の一人であることを前提に,債務者が発行しようとしている別紙雑誌目録記載の雑誌『著作権判例百選[第5版]』(以下「本件雑誌」という。)は本件著作物を翻案したものであるなどと主張して,本件著作物の(1)翻案権並びに二次的著作物の利用に関する原著作物の著作者の権利(著作権法28条)を介して有する複製権,譲渡権及び貸与権又は(2)著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)に基づく差止請求権(以下「本件差止請求権」ともいい,これに係る差止請求を「本件差止請求」ともいう。)を被保全権利として,債務者による本件雑誌の複製,頒布,頒布する目的をもってする所持又は頒布する旨の申出(以下,併せて「複製・頒布等」ということがある。)を差し止める旨の仮処分命令を求めた(以下「本件仮処分申立て」という。)。当裁判所は,本件仮処分申立てには理由があると判断し,平成27年10月26日,「債務者は,別紙雑誌目録記載の雑誌の複製,頒布,頒布する目的をもってする所持又は頒布する旨の申出をしてはならない。」との仮処分決定(以下「本件仮処分決定」という。)をした。
 本件は,債務者がこれを不服として保全異議を申し立て,原決定である本件仮処分決定の取消しと本件仮処分申立ての却下を求める事案である。』

<経緯>

H20.08 百選4版企画決定
H21.01 編者会議
H21.12 百選4版発行
H26.08 百選5版企画
H26.09 出版社とXが面談
H26.10 出版社とXが面談
H26.11 出版社とXが面談
H27.01 出版社とXが面談
H27.05 代理人らが和解案提案
H27.08 Xが本件仮処分申立て
H27.09 百選5版 当初刊行予定
H27.10 本件仮処分決定
H28.01 出版社が本件保全異議申立て
H28.02 出版社が和解拒否

基本事件
平成27年(ヨ)第22071号仮処分命令申立事件
平成27年10月26日仮処分決定

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■判決内容

<争点>

1 著作者性

百選第4版(本件著作物)について、Xは、自らとA教授、B教授及びC教授の4名を著作者とする共同著作物である旨主張し、これに対して、出版社は、B教授及びD教授の2名を著作者とする共同著作物である旨主張し、Xが著作者の一人であるか否かが争点となっています(38頁以下)。
この点について、裁判所は、表紙やはしがきの表示などから、著作権法14条によりXは編集著作物たる本件著作物の著作者(編集著作者)と推定されると判断。その上で、本件においてXが本件著作物の編集著作者であるとの推定を覆す事情が疎明されているか否かについて、推定を覆す事情が疎明されているということはできないと判断。
結論として、Xは、編集著作物たる本件著作物の著作者の一人であると判断されています。

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2 翻案該当性ないし直接感得性

本件雑誌の表現から本件著作物の表現上の本質的特徴を直接感得することができるかどうかについて、裁判所は、第4版(本件著作物)と第5版(本件雑誌)とでは、掲載される判例と執筆者の執筆する解説が編集著作物たる本件著作物及び本件雑誌の素材となるが、その表現(素材の選択又は配列)の選択の幅(個性を発揮する余地)を考えた場合、『判例百選』の性格上、判例の選択や判例等の配列に係る選択の幅はある程度限られるものの、執筆者の選択、すなわち誰が執筆する解説を載せるかという選択の幅は決して小さくないこと、どの判例の解説の執筆者として誰を選ぶかに係る選択の幅は極めて広い、というべきであると判断。

諸事情を総合勘案した上で、本件著作物と本件雑誌とで創作的表現が共通し同一性がある部分が相当程度認められる一方、本件雑誌が新たに付加された創作的な表現部分により本件著作物とは別個独立の著作物になっているとはいい難いと裁判所は判断。

本件雑誌の表現からは、本件著作物の表現上の本質的特徴を直接感得することができると認定しています(45頁以下)。

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3 本件著作物を本件原案の二次的著作物とする主張の当否

出版社は、本件著作物はB教授及びD教授が作成した第4版搭載判例リスト案(本件原案)を原著作物とする二次的著作物にすぎず、二次的著作物の著作権者が権利を主張できるのは新たに付加された創作的部分に限られるが、本件著作物において本件原案に新たに付加された創作的表現が本件雑誌において再製されているとは認められない旨主張しました(47頁以下)。

この点について、裁判所は、本件原案は最終的な編集著作物たる雑誌『著作権判例百選[第4版]』の完成に向けた一連の編集過程の途中段階において準備的に作成された一覧表の一つであり、原案にすぎないものであって、その後編者により修正、確定等がされることを当然に予定していたものであり、途中の段階で本件原案が独立の編集著作物として成立したとみた上で本件著作物について本件原案を原著作物とする二次的著作物にすぎないとすることは相当ではないと判断。
出版社の主張を認めていません。

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4 氏名表示権の侵害の有無

本件雑誌の発行に当たって、はしがきにおいてXの氏名を記載するほかは、編者ないし編集著作者としてXの氏名を表示しない予定だった点について、裁判所は、出版社が本件雑誌を頒布して公衆に提供するに当たって、原著作物の編集著作者としてのXの氏名の表示をしないことは、Xの氏名表示権(著作権法19条1項後段)を侵害することになると判断しています(48頁以下)。

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5 同一性保持権の侵害の有無

本件雑誌による本件著作物の素材の選択・配列の改変について、Xは、「顔真卿自書建中告身帖事件上告審判決」を本件雑誌では「著作物」の大項目中の項目1に持ってきた配列の仕方や、執筆者としてa判事、b弁護士及びXを除外した選択の仕方等について、「耐え難い」としていることも含め、本件雑誌における改変は、Xの「意に反して」(20条1項)本件著作物を改変したものであると裁判所は判断しています(50頁以下)。

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6 黙示の許諾ないし同意の有無

出版社は、『判例百選』が改版と編者の変動(新たな版において編者に交代が生じ得ること)を所与の前提とする性質の出版物であり、編者に就任する者はこれを承知していることを根拠として、Xが編者への就任の際に、出版社に対して本件雑誌のような改訂版の出版に関して黙示的に本件著作物の利用を許諾し、著作者人格権を行使しない点を同意した旨主張しました(52頁以下)。
この点について、裁判所は、改版に当たって編者の交代が生じ得るということやこれを認識していたことのみから債権者が手放しで上記許諾ないし同意をしたと当然に推認することはできないとして、出版社の主張を認めていません。

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7 著作権法64条2項、65条3項に基づく主張の当否

編集著作者5名のうち、Xを除く4名は本件雑誌の出版に関して、出版社に対して本件著作物の利用を許諾し、著作者人格権を行使しない旨同意しているが、平成27年11月30日付けでXに対して通知書面により上記許諾及び同意に関して、著作権法64条1項及び65条2項所定の合意を求めたものの、
Xはこれを拒絶しており、このような合意を拒むことについては、正当な理由(65条3項)がなく、かつ、信義に反する(64条2項)ものであり、このことは本件差止請求に対する抗弁となる旨出版社は主張しました(54頁以下)。
この点について、裁判所は、Xが通知書面をもって求められた合意を拒むことには正当な理由があるということができ、また、通知書面に対してXが信義に反して合意を妨げているということはできないと判断。出版社の主張を認めていません。

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8 権利濫用の有無

出版社は、極めて重大な不利益を出版関係者及び社会一般に及ぼすとして、Xが出版者に対して本件差止請求権を行使することは権利の濫用に当たる旨主張しましたが、裁判所は認めていません(58頁以下)。

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9 本件雑誌の出版の事前差止めの可否

出版社は、北方ジャーナル事件最高裁判決を援用して出版の事前差止めは許容されない旨主張しましたが、両事件は事案の基本的な性格を全く異にするなどとして、裁判所は出版社の主張を認めていません(61頁以下)。

結論として、著作権、著作者人格権侵害性(そのおそれ)があり、Xは出版社に対して著作権又は著作者人格権に基づき、本件雑誌の複製・頒布等の差止めを請求することができると判断されています。

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10 保全の必要性

出版社は、本件仮処分決定当時、平成27年11月6日に本件雑誌を発行しようとしており、現時点においても本件仮処分決定がなければ本件雑誌をそのまま発行しようとしているものと一応認められること、そして、本件雑誌の複製・頒布等により債権者Xの著作者人格権が侵害される関係にあることから、本件については、民事保全法23条2項所定の「争いがある権利関係について債権者に生ずる急迫の危険を避けるためこれを必要とするとき」に該当する(保全の必要性がある)というべきであると裁判所は判断しています(65頁以下)。

結論として、Xの本件仮処分申立てには理由があり、これを認容した原決定(本件仮処分決定)は相当であると判断されています。

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■コメント

著作権判例百選第4版は、2009年刊行、編者は中山信弘 (明治大学特任教授)、大渕哲也 (東京大学教授)、小泉直樹 (慶應義塾大学教授)、田村善之 (北海道大学教授)の各先生です(肩書は当時)。

大学の法学部では、判例集の「百選」に掲載された事案の解説を担当された研究者は、学生にとっては憧れ、一種のブランドで、ゼミも人気がありましたが、本事案は法学部生にとって身近な判例集である百選制作での人選や編集過程の一端を窺うことができるたいへん興味深い事件です。

決定文を拝読しますと、双方の代理人が、事態を丸く収めようとご尽力されたことが伝わってきますが、和解には至らず残念なところです。

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■参考サイト

「著作権判例集が「著作権侵害」 出版差し止め命じる決定」(佐々波幸子 2015年10月29日08時23分)
朝日新聞デジタル

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■追記(2016.12.13)

抗告審では14条の著作者の推定の覆滅として、経過等を詳細に検討。
本件著作物の編集過程全体の実態として、アドバイザーの地位に置かれるにとどまるなどとして、結論として、X教授の本件著作物の著作者性を否定。

裁判所 知的財産高等裁判所第3部
決定日 平成28年11月11日
事件番号 平成28年(ラ)第10009号 保全異議申立決定に対する保全抗告事件
裁判官
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官 杉浦正樹
裁判官 寺田利彦
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2016年04月04日

字幕制作ソフト事件(控訴審)−著作権 損害賠償等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

字幕制作ソフト事件(控訴審)

知財高裁平成28.3.23平成27(ネ)10102損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官    中村 恭
裁判官    中武由紀

*裁判所サイト公表 2016.3.31
*キーワード:プログラム著作物、著作物性、退職従業員、複製、翻案

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■事案

退職従業員による字幕制作用ソフトウェアの複製、翻案が争点となった事案の控訴審

控訴人(一審原告) :字幕システム開発会社
被控訴人(一審被告):字幕制作ソフト開発会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、10号の2、21条、27条

1 Template.mdbの創作性
2 被控訴人プログラムは控訴人プログラムを複製又は翻案したものであるか

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■事案の概要

『本件は,控訴人が,被控訴人に対し,被控訴人が製造,販売する「Babel」という名称の字幕制作用ソフトウェア(被控訴人プログラム)が,控訴人が製造,販売する「SST G1」という名称の字幕制作用ソフトウェア(控訴人プログラム)の複製又は翻案であるとして,(1)著作権(複製権,翻案権又は譲渡権)に基づき,被控訴人プログラムの複製等の差止め及び被控訴人プログラムの廃棄を求めるとともに,(2)不法行為に基づき,平成25年2月1日から同年8月9日までの損害賠償金4844万1393円(著作権法114条1項適用,平成26年3月5日付けで請求拡張)及びこれに対する不法行為後である訴状送達日の翌日(平成25年7月20日)から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』

『原判決は,本件プログラム(平成25年4月15日にリリースされた被控訴人プログラムのバージョン2.0.0.11)の動作が控訴人プログラムの複製・翻案であるとする特徴を示すものとはいえず,そのほか被控訴人プログラムを控訴人プログラムの複製・翻案とする根拠も認められないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
 控訴人は,これを不服として控訴するとともに,当審において,被控訴人プログラムに含まれる「PlugDtm.dll」という名称のファイルが,控訴人プログラムに含まれる「Template.mdb」という名称のAccess形式のファイル(Template.mdb)を複製したものであるとして(当事者間に争いがない。),Template.mdbの使用等の差止請求を追加した。』
(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 Template.mdbの創作性

控訴人(一審原告)は、控訴審においてAccess形式で作成された一つのファイルであるTemplate.mdbが単独でプログラム著作物又はデータベース著作物として創作性を有し、Template.mdbと控訴人プログラムのその余の部分とは不可分一体である旨主張しました(6頁以下)。
この点について、裁判所は、プログラム著作物の創作性(著作権法2条1項1号、10号の2)の意義について言及した上で、本件に関して、Template.mdbをプログラムとして見た場合、変数やテキストデータが格納されているにすぎず、コンピュータに対する指令の組合せに個性が顕れる余地はほとんどなく、プログラムの著作物としての創作性を想定し難いとして、Template.mdb自体にはプログラムの著作物又はデータベースの著作物としての創作性を認めることはできないと判断しています。

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2 被控訴人プログラムは控訴人プログラムを複製又は翻案したものであるか

控訴人が主張するプログラム上の共通の事象の発生などを踏まえても、被控訴人プログラムが控訴人プログラムにおいて創作性を有する蓋然性の高い部分のコードの全部又は大多数をコピーしたことを推認させる事情とはいえないなどとして、被控訴人プログラムが控訴人プログラムを複製又は翻案したものであるとは認められていません(8頁以下)。

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■コメント

原審同様、原告(控訴人)の主張は認められていません。

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■過去のブログ記事

2015年08月17日
原審記事

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■参考サイト

控訴人プレスリリース(平成28年3月24日)
お客様 各位

被控訴人会社プレスリリース(平成28年3月25日)
ニュースリリース

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2016年03月17日

「NAVERまとめ」投稿記事発信者情報開示事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「NAVERまとめ」投稿記事発信者情報開示事件

東京地裁平成28.1.18平成27(ワ)21642発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官      鈴木千帆
裁判官      笹本哲朗


*裁判所サイト公表 2016.3.16
*キーワード:写真、著作物性、引用、プロバイダ責任制限法

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■事案

創価学会池田名誉会長の肖像画像などが無断で「NAVERまとめ」サイトに投稿されたことからプロバイダに対して発信者の情報開示を求めた事案

原告:宗教法人
被告:経由プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、32条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 本件記事により原告の著作権〔公衆送信権〕が侵害されたことが明らかであるか
2 本件発信者情報が原告の損害賠償請求権の行使のために必要であるか

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■事案の概要

『本件は,別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)の著作権を有すると主張する原告が,氏名不詳者(以下「本件投稿者」という。)により,被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト「NAVERまとめ」(以下「本件サイト」という。)に投稿された別紙投稿記事目録記載の記事(以下「本件記事」という。)と共に掲載された別紙掲載写真目録記載の写真(以下「本件掲載写真」という。)は,本件写真を複製したものであって,本件投稿者が本件掲載写真を本件サイトに掲載した行為により原告の有する著作権が侵害されたことは明らかであるとして,本件投稿者に対する損害賠償請求権の行使のために本件記事に係る別紙発信者情報目録記載の情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を受ける必要があると主張し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下,単に「法」という。)4条1項に基づき,経由プロバイダである被告に対し,本件発信者情報の開示を求める事案である。被告は,本件投稿者の上記行為により,原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかとはいえないなどとして争っている。』(1頁以下)

<経緯>

H19.12 原告職員Bが本件写真を撮影

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■判決内容

<争点>

1 本件記事により原告の著作権〔公衆送信権〕が侵害されたことが明らかであるか

(1)本件写真の創作性及び著作権者

本件写真は、A名誉会長を被写体としてその上半身を写真中央に配置し、顔の表情がはっきりと分かるように撮影し、背景の花などはぼかすなどして撮影者である原告職員Bの思想・感情が創作的に表現されたものであるとして、裁判所は、写真の著作物として著作物性(著作権法2条1項1号)を肯定しています。
また、本件写真は、原告職員Bが原告の業務上撮影したものであり、その後、原告の著作名義の下に公表されたものであることから、著作権法15条1項により原告がその著作者となると判断されています(5頁以下)。

(2)本件掲載写真が本件写真を複製したものであるか

本件掲載写真は、本件投稿者が本件写真と同一性を有する画像検索サイト上の写真に依拠して再製したものといえるとして、本件掲載写真は本件写真を複製したものと認定されています(6頁)。

(3)故意・過失

本件投稿者は、本件掲載写真の権利関係が不明であったにもかかわらず、安易に本件サイト上に本件記事と共に掲載したものというほかないとして、対象著作物の権利者の許諾を得るべき注意義務を尽くしたものとは認められないと裁判所は判断。
少なくとも本件投稿者に本件写真の著作権(公衆送信権)の侵害について過失があると認められています(6頁以下)。

(4)引用の成否

本件記事には本件掲載写真を説明する記述はなく、本件記事において本件掲載写真を掲載する必要性は明らかではない上、本件記事は本件掲載写真を掲載するにあたってその出典を明示していないことから、本件掲載写真の掲載が著作権法32条1項にいう引用に当たる余地があるとはいえないと裁判所は判断しています(7頁以下)。

結論として、本件投稿者が本件掲載写真を含む本件記事を本件サイトに投稿したことにより、原告が有する本件写真の著作権(公衆送信権)が侵害されたことは明らかであると判断されています。

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2 本件発信者情報が原告の損害賠償請求権の行使のために必要であるか

開示を受ける本件発信者情報について、被告は、損害賠償請求権を行使するには発信者の氏名又は名称並びに住所が開示されれば十分であり、これに加えて電子メールアドレスの開示を受ける必要はないと反論しました。
この点について、裁判所は、原告が、本件投稿者に対して本件写真の著作権(公衆送信権)侵害の不法行為による損害賠償請求権を行使するためには、本件投稿者を特定する必要があり、原告には同特定のために別紙発信者情報目録記載の情報のすべて(電子メールアドレスを含む。裁判外で任意の履行請求の際には、電子メールアドレスの開示がこれに資する)の開示を受ける必要があると判断しています(8頁以下)。

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■コメント

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Yahoo!知恵袋投稿記事発信者情報開示事件と類似の事案となります。

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■過去のブログ記事

2015年05月22日記事
Yahoo!知恵袋投稿記事発信者情報開示事件

2013年11月01日記事
ニコニコ動画発信者情報開示請求事件

written by ootsukahoumu at 07:01|この記事のURLTrackBack(0)