知財判決速報2016

2017年03月29日

結婚式場リーフレット用写真流用事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

結婚式場リーフレット用写真流用事件

大阪地裁平成28.10.13平成28(ワ)6054損害賠償請求事件PDF

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 高松宏之
裁判官    田原美奈子
裁判官    林啓治郎

*裁判所サイト公表 2017.3.24
*キーワード:写真、損害論

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■事案

結婚式場リーフレット用写真などを使用目的範囲を超えてサイトで流用した事案

原告:写真家
被告:メイク専門学校運営会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法23条

1 侵害論
2 損害論

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■事案の概要

『原告が撮影して被告に提供した各写真(以下「本件各写真」という。)について,原告が著作権を有すると認められるところ,同「三」記載の被告の行為によって,上記の著作権が侵害されたと認められる』事案(1頁以下)

<経緯>

H13.10 被告が原告に撮影発注。被告が65万円支払
H14.01 原告写真4枚をP4宣材として使用を許諾
H21.08 原告がP5作品を撮影。被告側が6万円支払
H21.11 被告が原告写真をHPで使用
H27.12 原告が被告に損害金720万円請求

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■判決内容

<争点>

1 侵害論

被告は、原告に対して2度に亘り撮影依頼をしていましたが、リーフレットに写真を使用する際の合意についてみると、写真の権利は原告に帰属し、使用目的は当該リーフレットの写真に限定して1年間のリーフレット使用に限って使用を許諾していました。また、P5のヘアメイク作品の撮影写真については、ヘアメイクアーチストであるP5のプロモーション使用目的、1年間限りでの使用許諾の合意となっていました。
被告が、原告写真をこうした使用許諾範囲を超えて被告のホームページなどで使用している点について、裁判所は、被告が適式の呼出しを受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しないことから、請求原因事実を争うことを明らかにしないものとして擬制自白を認め、原告の写真に関する著作権について被告の行為による著作権侵害を認定しています(1頁以下)。

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2 損害論

原告は、原告写真の被告ホームページへの流用は平成21年11月から平成27年12月までの6年間に亘るとして、損害額として、1440万円(月額20万円×12ケ月×6年)の損害と弁護士費用相当額損害160万円の合計1600万円を主張しました。
この点について、裁判所は、結論として、月額10万円の損害として720万円、弁護士費用相当額損害として70万円の合計790万円を認定しています(2頁以下)。

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■コメント

昨年10月の判決で公表が遅いです。
訴訟提起前の請求額が満額認定される結果となっています。被告側も対応を放置すると金額面でも大きな痛手を被ることになります。

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2017年02月09日

カーナビ地図データ使用許諾契約事件−著作権 使用権料請求事件等判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

カーナビ地図データ使用許諾契約事件

大阪地裁平成28.11.28平成27(ワ)6363等使用権料請求事件等PDF

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 高松宏之
裁判官    田原美奈子
裁判官    林啓治郎

*裁判所サイト公表 2017.1.27
*キーワード:ライセンス契約、不安の抗弁

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■事案

地図データの使用許諾契約について不安の抗弁の成否などが争点となった事案

原告:カーナビゲーションシステム制作会社
被告:自動車用品製造販売会社

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■結論

第1事件:請求一部認容
第2事件:請求棄却


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■争点

条文 民法620条

1 本件契約における使用権料の額
2 被告による本件契約解除の有効性
3 本件契約解除が有効である場合の原告の未払使用権料支払請求権の存否・被告の既払使用権料返還請求権の存否

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■事案の概要

『第1事件は,原告が被告に対し,原告が使用権あるいは著作権を有する地図データについて,被告との間の有償使用許諾契約に基づき,使用権料1億5500万円(税抜き)の残金5940万円(5500万円とその消費税)及びこれに対する支払期日の翌日である平成27年5月14日から支払済みまで同契約で定める年15%による遅延損害金の支払を請求した事案である。これに対し,被告は,同契約による使用権料について支払済みの1億800万円(1億円とその消費税)を超える額の合意はなく,また,同契約は原告が地図データを提供しなかった債務不履行に基づき解除されたと主張して争っている。
 第2事件は,被告が原告に対し,上記使用許諾契約の解除に基づく原状回復請求権として,支払済み使用権料1億円の返還及びこれに対する同金員受領の日である平成26年6月12日から支払済みまで商事法定利率年6%の割合による利息の支払を請求した事案である。これに対し,原告は,上記解除の有効性を争うとともに,仮に上記解除が有効であるとしても原告は被告に対して使用権料の支払請求権を有する等と主張して争っている。』(2頁)

<経緯>

H26.05 原被告間で使用許諾契約締結
H26.06 被告が1億800万支払い
H26.12 被告が使用権料分割払い、契約変更の要望
H27.02 被告が残金5500万円支払拒絶
H27.02 原告が不安の抗弁を主張
H27.03 被告が契約解除通知
H27.05 被告が原告に対して第2事件提訴
H27.06 原告が被告に対して第1事件提訴

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■判決内容

<争点>

1 本件契約における使用権料の額

本件契約における使用権料について、本件使用権料表には基本使用権料は1億5500万円とすると記載されていました。
裁判所は、原告と被告は本件契約の締結により、本件使用権料表に記載のある1億5500万円の使用権料の額をその使用権料の支払方法等も含めて合意したものと認めるのが相当であると認定しています(18頁以下)。

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2 被告による本件契約解除の有効性

(1)原告の責めに帰すべき債務不履行の有無

原告の責めに帰すべき債務不履行の有無について、裁判所は以下のように判断しています(20頁以下)。

(a)被告の使用権喪失の有無

本件契約における使用権料は、いわゆる年間最低使用料としての実質を有するものであると解するのが相当であり、本件契約第4条においては、何の条件の記載もなく原告が被告に対して本件データについての使用許諾をするものとされ、使用権料の支払がない場合に使用権を失うなどの定めはされていないことからすれば、本件契約において、使用権料の不払又は履行拒絶によって直ちに使用権が喪失ないし失効するとの解除条件が付されていたとは認められない。
被告が使用権料の残金を支払わないことを明確にしたことのみによっては使用権を喪失することはなく、被告は本件契約に基づく本件データの使用権を有していた。

(b)不安の抗弁

被告が使用権料の残金の支払を定められた支払期日に行わない意思を明確にしている以上、被告による支払拒絶の意思は明確にされていたといえる。しかし、使用権料は使用許諾を受けるためだけの対価ではなく、それに満つるまでの複製使用の対価としての性質も有するものであるから、使用権料は、使用権及び個別複製の双方と対価関係にあるものといえるところ、本件契約締結後に被告から使用権料1億5500万円のうち1億円が支払われ、原告が本件データの提供を拒絶する時点での使用権料の充当後残額(税込み)は6988万円余り、提供を拒絶した際に発注されていた3030枚の複製使用料に充当した後でも5974万円余りであったことからすれば、拒絶当時、原告においては、上記3030枚の発注はもちろん、それを超える相当数の発注についても、その対価たる複製使用料について十分な担保を有していたものといえる。
本件契約が被告の業務において不可欠な本件データを継続的に供給するものであったことからすれば、平成27年2月に被告が使用権料の残金を支払うことを明確に拒絶したとしても、原告において、被告に対する本件データの提供義務を履行させることが、著しく当事者間の衡平を欠く状況にあり信義に反するとまでいえるものではなく、原告において不安の抗弁を主張することはできない。

原告が、平成27年2月に被告に対する本件データの提供を拒絶したことは、原告の責めに帰すべき債務不履行であるといえる。

(2)解除事由

原告が被告の複製申請に対して本件データの提供を行うことは、原告の本件契約における債務そのものであるから、これを拒絶することは、本件契約第6条4項(6)に定める「本契約もしくは使用許諾地域等の個別契約上の重大な債務不履行」に該当するといえ、被告は、直ちに本件契約を解除することができるから、被告が原告に対して行った解除の意思表示は、本件契約条項に基づくものとして有効であると裁判所は判断(24頁以下)。

結論として、被告による本件契約解除は有効であると判断しています。

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3 本件契約解除が有効である場合の原告の未払使用権料支払請求権の存否・被告の既払使用権料返還請求権の存否

解除により本件契約が使用許諾期間途中で効力を失った場合に、契約がどのように解消されるかについては明確に定められていないことから、本件契約解除による使用権料の支払義務の帰趨が問題となっています(25頁以下)。

(1)本件契約解除の遡及効の有無について

本件契約には本件契約条項に基づく解除の効力について具体的な定めはないものの、本件契約が被告の行う複製使用申請に対して、原告が本件データを提供するという関係が使用許諾期間において続くという意味で継続的な契約の性質を有し、また、本件契約に基づき相当数の本件データの複製物が原告から被告に提供され、これを使用したカーナビゲーションが第三者に販売されていることを考慮すれば、本件契約条項に基づく解除については民法620条を準用し、将来に向かって効力が生じると解するのが相当であると裁判所は判断しています。

(2)使用権料残金

本件では、被告が原告に対して1か月又は2か月おきに相当量の複製発注をしてきていることに鑑み、解除による事後的な対価的清算としては、使用許諾期間の観点から考えることとし、使用許諾期間1年間のうち被告が使用許諾の利益を享受したと認められる期間に相当する範囲に対応する使用権料は原告が収受でき、それ以後の期間に対応する使用権料は、これを原告は収受できないと考え、このような清算関係に沿うように、被告の使用権料支払義務又は原告の原状回復義務のいずれかを認めることとするのが相当であると裁判所は判断。
1億6740万円(1億5500万円×1.08[税込み])のうち、使用許諾契約の始期である平成26年5月14日から上記平成27年2月4日までの267日に対応する額は、1億2245万4246円(1億6740万円÷365日×267日)となるから、被告の支払った1億800万円を超える1445万4246円については、被告は原告に対して未だ使用権料として支払義務を負っており、他方、被告が原告に支払った1億800万円は、上記1億2245万4246円を超えるものではないから、原告から被告に対して返還する使用権料はないと認定。
結論として、被告は、原告に対して本件契約に基づく使用権料の残金として1445万4246円の支払が認められています。

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■コメント

被告は、自動車が趣味でカー用品などを購入する機会が多い人には名の通った企業です。

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2017年01月28日

宇多田ヒカル「First Love」事件(控訴審)−著作権 損害賠償等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

宇多田ヒカル「First Love」事件(控訴審)

知財高裁平成28.12.22平成28(ネ)10057損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官    中島基至
裁判官    岡田慎吾

*裁判所サイト公表 2017.1.25
*キーワード:著作者性

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■事案

宇多田ヒカルの楽曲について、共同著作者性が争点となった事案の控訴審

控訴人 (1審原告):個人
被控訴人(1審被告):宇多田ヒカル

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、2号

1 請求の特定
2 通知の合意の成否
3 著作者性

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■事案の概要

『本件は,控訴人が,被控訴人に対し,控訴人がAOLのチャット機能又はメール機能を使用して被控訴人のスクリーンネームであるA又は同人のメールアドレスであるA@aol.com に文章を伝達するなどして被控訴人の創作に関与したとして,控訴人は宇多田ヒカル名義の編集著作物(CDアルバム「First Love」)及び「誰かの願いが叶うころ」と題する楽曲の歌詞の共同著作者であると主張し,また,控訴人が「B&C」,「はやとちり」及び「Wait & See〜リスク〜」と題する各楽曲の歌詞につき,被控訴人の創作に関与したものの被控訴人が控訴人の氏名を表示せず被控訴人のみが著作者として利益を得るなどしたと主張して,著作権法115条,民法709条等に基づき,別紙控訴人請求目録記載の各請求(当審第1回口頭弁論調書参照)を求めた事案である。
 原審は,控訴人において主張する伝達内容が被控訴人に伝えられたものとは認められないとして,控訴人の各請求をいずれも棄却した。控訴人がこれを不服として控訴した。』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 請求の特定
2 通知の合意の成否
3 著作者性

控訴審は、原判決の判断を維持して棄却の判断をしています。

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■コメント

1審原告(控訴人)の説得力のある主張立証もなく、判決文3頁の簡潔な内容となっています。

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■過去のブログ記事

2016年05月21日 原審記事

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2017年01月26日

ゴーストライター問題イベントキャンセル事件−著作権 損害賠償請求事件(本訴)、著作権使用料請求事件(反訴)判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ゴーストライター問題イベントキャンセル事件

大阪地裁平成28.12.15平成26(ワ)9552等損害賠償請求事件(本訴)、著作権使用料請求事件(反訴)PDF

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 高松宏之
裁判官    田原美奈子
裁判官    林啓治郎

*裁判所サイト公表 2017.1.23
*キーワード:ゴーストライター、告知義務違反、著作権譲渡、不当利得

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■事案

全ろう聴覚障害であることやゴーストライターによる作曲など虚偽事情によってイベント公演が中止された際の損害などが争われた事案

原告:イベントプロモーター
被告:音楽家

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法121条、民法709条、704条

1 被告による不法行為の成否(本訴)
2 原告の損害額(本訴)
3 被告には本件楽曲に係る損失があるか(反訴)
4 原告の利得額(反訴)

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■事案の概要

『(1)本訴
原告が,被告に対し,被告が,全ろうの中自ら作曲したと発表していた楽曲につき,被告の説明が真実であると誤信して当該楽曲を利用する全国公演の実施を求めた原告に対してその実施を許可し,さらに,その後も,被告の説明が虚偽であることを隠して多数回の実施を強く申し入れたことにより,原告が多数の全国公演を実施することとなったが,被告の虚偽説明等が公となり原告が上記公演を実施できなくなったことにより多額の損害を被ったと主張し,不法行為に基づく損害賠償請求として,損害金6131万0956円及びこれに対する不法行為日後の平成26年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』

『(2)反訴
被告が,原告に対し,原告が企画・実施した全国公演において被告が著作権を有する楽曲を利用したのであるから,その利用の対価を支払う義務があることを当然に知りながらこれを支払わないでその使用料相当額の利得を得ており,これにより著作権者である被告が同額の損失を被ったとして,民法704条に基づく不当利得返還請求権として,使用料相当額730万8955円の返還及びこれに対する平成26年2月3日(最終公演日の翌日)から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』(2頁以下)

<経緯>

H08 被告が作曲家P2と知り合う
H10 被告がゲームソフト「バイオハザード」音楽担当
H11 被告がゲームソフト「鬼武者」音楽担当、P2に交響曲作曲依頼
H13 TIME誌が聴覚障害の被告を紹介する記事掲載
H13 被告がP2に交響曲第1番「HIROSHIMA」作曲依頼
H19 被告が自伝を出版
H20 TBSテレビで被告が取り上げられる
H21 テレビ新広島で被告が取り上げられる
H23 日本コロンビアからCD販売
H24 NHKやテレビ朝日で被告が取り上げられる
H24 被告がP2にピアノ作品集作曲依頼
    P2が「ピアノのためのレクイエム・イ短調」作曲
H25 P2が「ピアノ・ソナタ第2番」作曲
H25 「NHKスペシャル 魂の旋律 音を失った作曲家」放映
H25 原被告間で本件交響曲公演、本件ピアノ公演打ち合わせ
H25 被告自伝が文庫化
H26 被告が原告にゴーストライター問題の週刊文春記事を転送
H26 NHKがおわび、P2が謝罪会見
H26 被告とP2が著作権譲渡確認書作成
H26 JASRACが被告との著作権信託契約を解除
H26 原告が本訴提起
H27 被告がP2に訴訟告知

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■判決内容

<争点>

1 被告による不法行為の成否(本訴)

原告は、被告が公表していた本件楽曲が被告自ら作曲した作品であること、被告が全ろうの中で苦労をして絶対音感を頼りに作曲した状況が、いずれも虚偽であって、このような虚偽の説明を前提に原告に本件公演の実施を許可し、さらに公演を増やすよう申し入れるなどして本件公演の実施に深く関与した行為が不法行為である旨主張しました。
これに対して、被告は、原告が主張するいずれの事実も虚偽ではなく、そもそも本件楽曲に関する明確な著作物利用契約まで成立したとはいえないまま本件公演が行われたものであるとして、被告に告知義務違反はないなどと反論しました(25頁以下)。

この点について裁判所は、被告に全ろうといった身体障害の事情での作曲活動といったことがなければ原告は本件公演を企画しなかったであろうし、P2が作曲していたという作曲状況も企画の上で重要な前提事実であると認定。また、原被告間で著作物利用契約も成立していたと判断。
そして、本件公演の企画に対して被告が関与をするに当たり、被告においてこれまで公表していた被告の人物像や作曲状況が事実とは異なることを原告にあらかじめ伝え、その内包されるリスクを告知する義務があったものというべきであると裁判所は判断。
結論として、被告がこの義務に反して事実を告げずに原告が多額の費用を掛けて多数の人が携わることとなる全国公演を行うことを了承し、さらには公演数を増やすように強く申し入れるなどして本件公演の企画に積極的に関与し、それにより原告に本件公演を企画・実施するに至らせた行為は、原告に対する不法行為を構成すると判断しています。

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2 原告の損害額(本訴)

原告の損害額について、裁判所は、損害として損益通算すべきは、(1)実施された公演については、通常得られる利益を超過して得られた利益を通算対象とすべきであり、(2)中止された公演については、売上げがない反面、経費は支出しており、また、同時期に他の公演を企画・実施する機会を逸し、突然の中止であったために他の公演で代替する余裕もなかったと認められるとして、(a)純粋支出となった経費に加え、(b)他の公演を実施していれば通常得られたであろう利益を損害として通算対象とすべきであると判断しています(30頁以下)。

(1)実施された公演による利益

実施された公演から得られた超過的利益があるとは認められず、通算対象とすべき利益は存しない。

(2)本件公演中止による損害

(a)純粋支出となった経費

・返金したチケット返送料 5万8560円
・返送料振込手数料 2万0300円
・プレイガイドへ支払った手数料等 270万6243円
・振込手数料 6988円
・公演中止広告費 21万0000円
・会場費 279万3040円
・広告費 132万2718円

(b)他の公演を実施していれば通常得られたであろう利益

・本件公演中止による逸失利益 4277万5259円

売上予定額9337万1860円−経費額5059万6601円

・本件交響曲公演のプログラムの販売不能による逸失利益 188万5313円

(3)弁護士費用 500万0000円

合計5677万8421円

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3 被告には本件楽曲に係る損失があるか(反訴)

被告は、原告が本件楽曲に係る使用料を支払うことなく実施された本件公演において本件楽曲を演奏させたことについて、使用料相当額の不当利得が成立すると主張しました(37頁以下)。
この点について、裁判所は、前提としてP2から被告への本件楽曲の著作権譲渡を認定しています。
なお、原告は、譲渡契約があるとしてもその実質はゴーストライター契約であって、著作権法121条に反する、あるいは公序良俗に反するもので無効である旨反論しましたが、裁判所は、被告とP2との間で著作権譲渡合意が本件楽曲に関する合意と不可分一体のものとされていたとまでは認められず、また、性質上不可分一体のものとも認められないと判断。そして、著作権法121条は作者名を詐称して複製物を頒布する行為を処罰の対象とするにすぎず、著作権を譲渡することを何ら制約するものではないとして、本件確認書自体が同条に反するものではなく、また、そのことは公序良俗違反についても同様であるとして、被告とP2との間における本件楽曲の著作権譲渡合意は無効とはいえないと判断しています。
結論として、被告には本件楽曲に係る使用料相当額の損失があり、原告による本件楽曲の利用利益の享受という利得は、法律上の原因を欠くものであったと認定しています。

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4 原告の利得額(反訴)

本件における原告の利得額としての使用料相当額は、原告がJASRACに対して支払うべき使用料相当額であると裁判所は判断。
結論として、被告の原告に対する不当利得返還請求として410万6459円の利得額が認定されています

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■コメント

興業イベントについて、中止された14公演の損害額の認定の点が参考になる事案です。
音楽家新垣隆氏が2014年2月6日、記者会見を開いて佐村河内守氏のゴーストライターを18年間に亘り担当していたことを公表、お茶の間を賑わせる話題となりました。その際、フィギュアスケート高橋大輔選手がソチオリンピックのプログラムで自分の楽曲を使用するのも憚られる、といった内容が印象に残っています。
当時、原告のサモンプロモーションはいち早くチケット払戻しなどのプレスリリースを告知し、また、2014年に本件提訴をしました(「<佐村河内氏>代作で全国ツアー中止 6100万円賠償提訴」毎日新聞2014年11月25日10時45分配信)。
JASRACは「佐村河内守氏の作品について 2014年2月5日プレスリリース」で楽曲の取扱いについて注意喚起。また、音楽CDを制作販売した日本コロンビアも「関係各位 2014年2月7日 佐村河内守氏につきまして」として出荷停止、販売中止などについてプレスリリースを公表していました。

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2017年01月18日

ヱヴァンゲリヲン予告映像無断配信事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ヱヴァンゲリヲン予告映像無断配信事件

東京地裁平成28.12.20平成28(ワ)31972発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    萩原孝基
裁判官    林 雅子

*裁判所サイト公表 2017.1.13
*キーワード:動画配信サイト、発信者情報開示、複製、公衆送信

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■事案

アニメ映画「ヱヴァンゲリヲン」の予告映像を無断でYouTubeで配信されたことから発信者情報開示請求が行われた事案

原告:映像制作会社
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法21条、23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 権利侵害の明白性
2 本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無

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■事案の概要

『本件は,原告が被告に対し,氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上の動画共有サイトに動画を掲載したことにより原告の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたと主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,被告が保有する発信者情報の開示を求めた事案である。』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 権利侵害の明白性

氏名不詳者が平成28年、被告からインターネットプロトコルアドレスの割当てを受けてインターネットに接続し、インターネット上の動画共有サイト「YouTube」に別紙投稿動画目録記載の動画(本件動画)を投稿し、本件動画を不特定多数の者が閲覧することができる状態に置きました。
この点について、裁判所は、原告が本件予告映像の著作権者であること、本件動画は本件予告映像を複製したものであることが認められるとして、本件氏名不詳者による本件動画の投稿は本件予告映像に係る原告の複製権及び公衆送信権の侵害に当たると判断。
本件予告映像に係る複製権及び公衆送信権を制限する事由が存在することはうかがわれないとして、本件動画の投稿により本件予告映像に係る原告の複製権及び公衆送信権が侵害されたことは明らかであると判断しています(3頁)。

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2 本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無

原告は、本件氏名不詳者に対して本件予告映像の複製権及び公衆送信権侵害を理由とする損害賠償請求権等を行使することができるところ、原告が本件氏名不詳者の氏名や住所等を覚知することは困難であると考えられることから、原告には本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると裁判所は判断。
結論として、別紙発信者情報目録記載の各情報(IPアドレスに関する、氏名又は名称、住所、電子メールアドレス)の開示請求が認容されています(3頁以下)。

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■コメント

原告は庵野秀明監督が代表を務めるアニメ制作会社となります。本件映像は、アニメ映画である「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」のDVD内に収録されていた次回予定作品の予告映像でした。

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2017年01月16日

「性犯罪被害にあうということ」映画化事件(控訴審)−著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「性犯罪被害にあうということ」映画化事件(控訴審)

知財高裁平成28.12.26平成27(ネ)10123著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官    片岡早苗
裁判官    古庄 研

*裁判所サイト公表 2017.1.12
*キーワード:映画、原作小説、映画化合意、翻案権、同一性保持権、名誉権

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■事案

性犯罪被害に関するノンフィクション小説の映画化にあたって合意の有無などが争点となった事案の控訴審

控訴人 (1審被告):テレビディレクター兼プロデューサー
被控訴人(1審原告):ノンフィクション小説著者

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■結論

原判決変更

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■争点

条文 著作権法22条、27条、20条、112条

1 著作権(翻案権・複製権)侵害の成否
2 著作者人格権(同一性保持権)侵害の成否
3 人格権としての名誉権及び名誉感情の侵害の成否
4 本件各著作物の場面・台詞不使用の合意の成否
5 本件映画の上映等の差止請求及び本件映画のマスターテープ等の廃棄請求の当否
6 損害発生の有無及びその額

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■事案の概要

『本件は,被控訴人が,控訴人に対し,(1)(1)控訴人の製作に係る別紙物件目録(原判決添付の別紙物件目録と同一であるから,これを引用する。)記載の映画(本件映画)は,被控訴人の執筆に係る本件各著作物の複製物又は二次的著作物(翻案物)であると主張して,本件各著作物について被控訴人が有する著作権(複製権,翻案権)及び本件各著作物の二次的著作物について被控訴人が有する著作権(複製権,上映権,公衆送信権〔自動公衆送信の場合にあっては,送信可能化権を含む。〕及び頒布権),並びに本件各著作物について被控訴人が有する著作者人格権(同一性保持権)に基づき,本件映画の上映,複製,公衆送信及び送信可能化並びに本件映画の複製物の頒布(本件映画の上映等)の差止め(著作権法112条1項)を求めるとともに,本件映画のマスターテープ又はマスターデータ及びこれらの複製物(本件映画のマスターテープ等)の廃棄(同条2項)を求め,(2)本件映画は,被控訴人の人格権としての名誉権又は名誉感情を侵害するとして,同人格権に基づき,本件映画の上映等の差止めを求めるとともに,本件映画のマスターテープ等の廃棄を求め,(3)本件映画製作の前に控訴人・被控訴人間に成立した本件各著作物不使用の合意に基づいて,本件映画の上映等の差止めを求めるとともに,本件映画のマスターテープ等の廃棄を求め,(2)著作者人格権(同一性保持権)侵害(本件各著作物を被控訴人の意に反して改変されたこと)の不法行為による損害賠償金400万円(慰謝料300万円と弁護士費用100万円の合計)及びこれに対する不法行為の後である平成26年5月8日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,(3)債務不履行(控訴人が被控訴人との本件各著作物不使用の合意に違反して本件映画を製作したこと)による損害賠償金(精神的苦痛に対する慰謝料)100万円及びこれに対する平成26年12月27日(同月26日付け訴えの変更申立書(2)の送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である(なお,被控訴人は,上記(2)及び(3)の請求について,仮執行宣言を申し立てた。)。』

『原審は,(1)(1)(a)著作権及び著作者人格権に基づく本件映画の上映等の差止請求については,原判決別紙エピソード別対比表3,4,6及び7の本件映画欄に記載の表現を含む本件映画の上映等の差止めを求める限度(ただし,著作者人格権に基づく差止請求は,本件映画の複製の差止めを求める限度)で認容し,(b)著作権及び著作者人格権に基づく本件映画のマスターテープ等の廃棄請求については,原判決別紙エピソード別対比表3,4,6及び7の本件映画欄に記載の表現を含む本件映画のマスターテープ等の廃棄を求める限度で認容し,(2)(a)人格権に基づく本件映画の上映等の差止請求については,原判決別紙侵害認定表現目録1及び2の(1)〜(3)に記載の表現を含む本件映画の上映等(ただし,本件映画の複製を除く。)の差止めを求める限度で認容し,(b)人格権に基づく本件映画のマスターテープ等の廃棄請求については,これを棄却し,(3)(a)本件各著作物不使用の合意に基づく本件映画の上映等の差止請求については,原判決別紙確定稿対比表の赤色部分,緑色部分及び水色部分の表現を含む本件映画の上映等の差止めを求める限度で認容し,(b)本件各著作物不使用の合意に基づく本件映画のマスターテープ等の廃棄請求については,原判決別紙確定稿対比表の赤色部分,緑色部分及び水色部分の表現を含む本件映画のマスターテープ等の廃棄を求める限度で認容し,(2)著作者人格権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求については,55万円(慰謝料50万円と弁護士費用5万円)及びこれに対する平成26年5月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,(3)本件各著作物不使用の合意違反の債務不履行に基づく損害賠償請求については,これを棄却した。
 原判決に対し,控訴人のみが控訴を提起した。』(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 著作権(翻案権・複製権)侵害の成否
2 著作者人格権(同一性保持権)侵害の成否
3 人格権としての名誉権及び名誉感情の侵害の成否
4 本件各著作物の場面・台詞不使用の合意の成否
5 本件映画の上映等の差止請求及び本件映画のマスターテープ等の廃棄請求の当否
6 損害発生の有無及びその額

[判決主文]

『1 原判決主文第1項ないし第4項を次のとおり変更する。
(1)控訴人は,別紙翻案権侵害認定表現目録記載1ないし7の表現を含む別紙物件目録記載の映画を上映し,複製し,公衆送信し,送信可能化し,又は同映画の複製物を頒布してはならない。
(2)控訴人は,別紙人格権侵害認定表現目録記載1ないし4に記載の表現を含む別紙物件目録記載の映画を上映し,公衆送信し,送信可能化し,又は同映画の複製物を頒布してはならない。
(3)控訴人は,別紙合意に基づく差止一覧記載の赤色部分,緑色部分及び水色部分の表現を含む別紙物件目録記載の映画を上映し,複製し,公衆送信し,送信可能化し,又は同映画の複製物を頒布してはならない。
(4)控訴人は,別紙翻案権侵害認定表現目録記載1ないし7の表現を含む別紙物件目録記載の映画のマスターテープ又はマスターデータ及びこれらの複製物を廃棄せよ。
(5)控訴人は,被控訴人に対し,55万円及びこれに対する平成26年5月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(6)被控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。』

[判断理由]略

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■コメント

実質敗訴の一審被告プロデューサー側だけが控訴しました。差止めの対象の点などを除いて大筋で原判決の結論が維持されているといえます。
なお、51頁以下に別紙が添付されていて内容が詳細に分かり参考になります。
51頁に「翻案権侵害認定表現目録」、52頁以下に「エピソード別対比表」、61頁に「人格権侵害認定表現目録」、62頁以下に「合意に基づく差止一覧」、137頁以下に「控訴人確定稿対比表」、212頁以下には「合意に基づく差止一覧についての補足説明」があります。

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■過去のブログ記事

2015年11月09日 原審記事
原判決PDF
原審別紙

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2017年01月10日

コミュニティFM「リスラジ」事件(控訴審)−著作権 地位確認請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

コミュニティFM「リスラジ」事件(控訴審)

知財高裁平成28.12.22平成28(ネ)10072地位確認請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    大西勝滋
裁判官    寺田利彦

*裁判所サイト公表 2017.1.5
*キーワード:利用許諾契約、利用許諾契約約款、放送、配信、サイマル放送、ザッピング機能

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■事案

コミュニティFMがサイマル放送(ラジオ番組を地上波放送と同時にインターネット配信すること)でザッピング機能を提供した点がレコード協会との間の契約更新拒絶事由にあたるかどうかなどが争点となった事案の控訴審

控訴人 (1審原告):コミュニティFMラジオ局運営会社27社
被控訴人(1審被告):日本レコード協会

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権等管理事業法16条、独禁法19条、民法90条

1 被控訴人の本件更新拒絶は管理事業法16条にいう「正当な理由がなく」利用の許諾を拒んでいるものとして無効(民法90条)か
2 被控訴人の本件更新拒絶は信義則に反し無効か
3 被控訴人の本件更新拒絶は「共同の取引拒絶」(独禁法19条、2条9項1号イ又は同項6号イ、一般指定1項)又は「その他の取引拒絶」(独禁法19条、2条9項6号イ、一般指定2項)に該当するため無効(民法90条)か
4 「取引条件等の差別的取扱い」(独禁法19条、2条9項6号イ、一般指定4項)に該当するため無効(民法90条)か

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■事案の概要

『本件は,コミュニティ放送を行う放送局(FMラジオ局)を運営する控訴人ら(一審原告ら)が,被控訴人(一審被告)に対し,被控訴人による本件更新拒絶(控訴人らがそれぞれラジオ音楽番組をスマートフォン及びパソコン向け無料配信サービス「Listen Radio」〔リスラジ〕においてインターネット配信〔本件各音楽番組配信〕しているのは,被控訴人が管理するレコード〔管理レコード〕の利用に関する,控訴人らと被控訴人との間の利用許諾契約〔本件利用許諾契約〕に基づく使用料規程〔本件使用料規程〕の細則〔本件使用料規程細則〕の適用基準に違反するとして,本件利用許諾契約の更新を拒絶した行為)は,著作権等管理事業法(管理事業法)16条所定の正当な理由のない利用の許諾の拒否,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独禁法)所定の不公正な取引方法に該当し,又は信義則に反するから,私法上無効であると主張して,本件利用許諾契約に基づき,(1)主位的に,本件使用料規程細則第3条に定める使用料を支払うことにより,被控訴人による著作隣接権管理に係る商業用レコード(被控訴人の管理レコード)を録音したコミュニティ放送番組をインターネット上で同時に配信することを目的として,被控訴人の管理レコードを複製及び送信可能化する方法で利用することができる契約上の地位にあることの確認を求め,(2)予備的に,本件使用料規程「第3節1(2)本表」(本件使用料規程本則)に定める使用料(本件使用料規程細則第3条に定める使用料よりも高額である。)を支払うことにより,上記契約上の地位にあることの確認を求める事案である。
 原判決は,本件更新拒絶について,控訴人らの主張(管理事業法16条所定の正当な理由のない利用の許諾の拒否,独禁法所定の不公正な取引方法,信義則違反)をいずれも認めず,控訴人らの請求を棄却したため,これを不服として控訴人らが控訴した。』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 被控訴人の本件更新拒絶は管理事業法16条にいう「正当な理由がなく」利用の許諾を拒んでいるものとして無効(民法90条)か

控訴人らは、控訴審において、本件各音楽番組が控訴人らの「自主制作番組」に該当するかどうかについてさらに主張を重ねましたが、本件各音楽番組は株式会社エムティアイ(MTI)の発意と責任の下で制作されていると認めるのが合理的であり、およそ控訴人らの主体的な関与の下で制作されたものとはいえないと控訴審は判断、本件各音楽番組の自主制作番組性が否定されています(26頁以下)。
結論として、控訴人らの主張は認められていません。

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2 被控訴人の本件更新拒絶は信義則に反し無効か

控訴人らは、本件各音楽番組とミュージックバードが制作しコミュニティ放送事業者に供給している音楽番組とで不当に取扱いを異にしており、控訴人らに対してのみ本件更新拒絶により本件各音楽番組のサイマル配信を認めておらず、かかる取扱いが信義則に反するとして、本件更新拒絶は信義則に反し無効である旨主張しましたが、控訴審は控訴人らの主張を認めていません(35頁以下)。

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3 被控訴人の本件更新拒絶は「共同の取引拒絶」(独禁法19条、2条9項1号イ又は同項6号イ、一般指定1項)又は「その他の取引拒絶」(独禁法19条、2条9項6号イ、一般指定2項)に該当するため無効(民法90条)か

控訴人らは、被控訴人の圧倒的市場支配力に照らせば強度の公正競争阻害性を生じさせるとして、独禁法上の「共同の取引拒絶」又は「その他の取引拒絶」に該当する旨主張しましたが、控訴審は控訴人らの主張を認めていません(36頁)。

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4 「取引条件等の差別的取扱い」(独禁法19条、2条9項6号イ、一般指定4項)に該当するため無効(民法90条)か

控訴人らは、本件更新拒絶はリスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルに参加しているコミュニティ放送局だけを差別的に取り扱うために行われたものであり、取引条件等の差別的取扱いに該当するため無効(民法90条)である旨主張しましたが、控訴審は控訴人らの主張を認めていません(36頁以下)。

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■コメント

原審の棄却の判断が控訴審でも維持されています。控訴審は1回の口頭弁論だけで結審したと伺っています。

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■過去のブログ記事

2016年06月20日 原審記事
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2017年01月07日

カラオケ音源動画配信事件−著作権 著作隣接権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

カラオケ音源動画配信事件

東京地裁平成28.12.20平成28(ワ)34083著作隣接権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    林 雅子
裁判官    中嶋邦人

*裁判所サイト公表 2017.1.5
*キーワード:カラオケ、レコード製作者、動画、送信可能化、差止めの必要性

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■事案

カラオケ音源を使用して歌唱している場面を撮影してYouTubeで動画配信した事案

原告:業務用通信カラオケ機器製造販売会社
被告:個人

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法96条の2、112条

1 本件動画の送信可能化の差止めの肯否

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,被告が原告の作成したカラオケ音源を用いてカラオケ歌唱を行っている様子を自ら動画撮影した動画の電磁的記録をインターネット上の動画共有サイトにアップロードした行為が,原告の上記カラオケ音源に係る送信可能化権(著作権法96条の2)の侵害に当たると主張して,同法112条1項及び2項に基づく上記動画の送信可能化の差止め及びその電磁的記録の消去を求める事案である。』(1頁以下)

<経緯>

H28.08 原告がカラオケ用音源(本件DAM音源)作成
H28.09 被告が本件動画をYouTubeにアップロード

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■判決内容

<争点>

1 本件動画の送信可能化の差止めの肯否

被告は、カラオケ店舗において業務用通信カラオケ機器DAMの端末を利用してカラオケ歌唱を行い、その際に自身が歌唱する様子を動画撮影して本件DAM音源の音が記録された動画をインターネット上の動画共有サイトであるYouTubeにアップロードしました。
原告は、本件行為は原告の本件DAM音源に係る送信可能化権を侵害する行為に当たり、本件動画は既にYouTube上から削除されているものの、被告が他の動画共有サービスを用いるなどして本件動画の電磁的記録を送信可能化する可能性があること、被告による原告の送信可能化権侵害を防ぐためには被告が管理する本件動画の電磁的記録を消去する必要があるとして、被告に対して本件動画の送信可能化の差止め及びその電磁的記録の記録媒体からの消去を求めました。
対して、被告は、自主的に本件動画をYouTube上から削除したこと、また、そもそも本件動画は主として被告自身の歌唱の様子を撮影したものであって原告の利益を明確に侵害したとはいい難いものであるとして、差止請求等の訴訟を提起することは適切でなく原告は被告に連絡をとって被告が自主的に削除する機会を与えるべきであった旨反論しました。
この点について、裁判所は、本件動画がYouTube上から現時点では削除されているとしても、本件動画の電磁的記録が被告の有する記録媒体から消去されたことはうかがわれないとして、原告の上記請求について差止め等の必要性を欠くとみることは相当でないと判断。
本件行為は本件DAM音源に係る原告の送信可能化権の侵害に当たることから、原告は被告に対し本件動画の送信可能化の差止め及びその電磁的記録の記録媒体からの消去を求めることができると判断しています(3頁)。

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■コメント

カラオケ音源を使用して歌唱しているシーンを自撮りして動画配信した事案となります。
動画サイトからすぐに削除したようですが、内容や態様が看過できないものだったのか、差止めやデータ消去の必要が認められています。
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2017年01月05日

ゴルフクラブシャフトデザイン事件(控訴審)−著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ゴルフクラブシャフトデザイン事件(控訴審)

知財高裁平成28.12.21平成28(ネ)10054著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官    片岡早苗
裁判官    古庄 研

*裁判所サイト公表 2016.12.28
*キーワード:工業デザイン、応用美術論、著作物性

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■事案

ゴルフシャフトのデザインやそのデザインを利用したカタログ表紙のデザインの著作物性が争点となった事案の控訴審

控訴人(1審原告) :グラフィックデザイナー
被控訴人(1審被告):ゴルフ用品製造販売会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、2条2項、10条1項4号

1 本件シャフトデザイン及び本件原画の著作物性
2 本件カタログデザインの著作物性
3 被告シャフトによる翻案権及び二次的著作物の譲渡権並びに同一性保持権侵害の有無

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■事案の概要

『本件は,控訴人が,被控訴人に対し,(1)別紙被告シャフト目録(原判決別紙被告シャフト目録記載の各シャフトに,それぞれデザインを記載したもの)記載1〜83の被告シャフトが,主位的には,控訴人の著作物である本件シャフトデザインの翻案に当たり,予備的には,控訴人の著作物である本件原画の翻案に当たるから,被控訴人の被告シャフト製造,販売行為が,控訴人の著作権(翻案権,二次的著作物の譲渡権)を侵害し,(2)被告シャフトの製造は,主位的には,控訴人の意に反して本件シャフトデザインを改変してなされたものであり,予備的には,控訴人の意に反して本件原画を改変してなされたものであるから,控訴人の著作者人格権(同一性保持権)を侵害し,(3)別紙被告カタログ目録(原判決別紙被告カタログ目録記載の各カタログに,それぞれデザインを記載したもの)記載1及び2の被告カタログの製作は,控訴人の意に反して,控訴人の著作物である本件カタログデザインを改変してなされたものであるから,控訴人の著作者人格権(同一性保持権)を侵害しているとして,(1)被告シャフト5〜8による著作権(翻案権,二次的著作物の譲渡権)侵害につき民法703条,704条に基づく使用料相当額の不当利得金5400万円及びこれに対する不当利得日である平成19年6月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息の返還,(2)被告シャフト及び被告カタログによる著作者人格権(同一性保持権)侵害につき民法709条に基づく慰謝料850万円の内金425万円及びこれに対する不法行為の後である平成27年8月18日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,(3)被告シャフト及び被告カタログによる著作者人格権(同一性保持権)侵害につき著作権法112条1項に基づく被告シャフト及び被告カタログの製造及び頒布の差止め並びに同条2項に基づく廃棄,並びに,(4)被告シャフトによる著作者人格権(同一性保持権)侵害につき,同法115条に基づく謝罪広告の掲載を求めた事案である。
 原判決は,本件シャフトデザイン,本件原画及び本件カタログデザインは,いずれも,著作権法上の著作物に当たらないとして,控訴人の請求を全部棄却した。』(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件シャフトデザイン及び本件原画の著作物性

控訴審は、応用美術の著作物性(美術の著作物 著作権法10条1項4号)の意義について言及した上で、本件シャフトデザイン及び本件原画の著作物性について検討しています(24頁以下)。
結論として、ありふれたものであるなどとして、本件シャフトデザイン等には創作的な表現は認められず、著作物性を認めていません。

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2 本件カタログデザインの著作物性

控訴審は、本件カタログデザインの著作物性について、特段の工夫が見られず平凡であるとして、本件カタログデザインには本件シャフトデザイン等より更に創作的な表現はなく、著作物性は認められないと判断しています(36頁以下)。

   --------------------

3 被告シャフトによる翻案権及び二次的著作物の譲渡権並びに同一性保持権侵害の有無

控訴審は、念のため、として、仮に本件シャフトデザイン等に著作物性が認められるとした場合において、被告シャフトが本件シャフトデザイン等を翻案したものであり、被控訴人が控訴人の著作権(翻案権、二次的著作物の譲渡権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害したといえるかについて検討しています(37頁以下)。
結論としては、仮に本件シャフトデザイン等に著作物性が認められるとしても、被告シャフトは本件シャフトデザイン等の表現上の本質的特徴を直接感得できるものではないとして、仮に被告シャフトに創作性がある場合には別個の著作物であることとなると判断。被控訴人による被告シャフト製造、頒布が本件シャフトデザイン等に係る控訴人の著作権(翻案権、二次的著作物の譲渡権)を侵害したとは認められないと判断しています。

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■コメント

ゴルフシャフトのデザインやそのデザインを利用したカタログ表紙のデザインの著作物性について、控訴審でもそれらの著作物性が否定され、原審の棄却の結論が維持されています。

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■過去のブログ記事

2016年05月30日 原審記事

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2016年12月30日

ツイキャス無断ライブ配信事件−著作権 著作権侵害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ツイキャス無断ライブ配信事件

東京地裁平成28.12.15平成28(ワ)11697著作権侵害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    林 雅子
裁判官    中嶋邦人

*裁判所サイト公表 2016.12.27
*キーワード:動画配信、公表権、時事の事件の報道、名誉声望侵害行為

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■事案

講演を無断でツイキャスでライブ動画配信した事案

原告:宗教法人元職員ら
被告:著述家

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法18条、41条、23条、113条6項

1 本件配信による公表権侵害の成否
2 本件配信の「時事の事件の報道」該当性
3 本件コメントによる原告Aの名誉又は声望の毀損の有無
4 損害額

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■事案の概要

『本件は,原告ら4名による講演を被告がインターネット上で配信したことに関し,(1)原告らが被告に対し,原告らそれぞれの著作物である上記講演中の各原告の口述部分に係る公表権及び公衆送信権が侵害されたと主張して,不法行為(民法709条)に基づく損害賠償金として原告A及び原告Bにつき各550万円,原告C及び原告Dにつき各110万円並びにこれらに対する不法行為の日である平成27年12月12日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を,(2)原告Aが被告に対し,上記配信は原告Aの名誉又は声望を害する方法で行われたと主張して,著作権法115条に基づく名誉回復措置として謝罪広告の掲載をそれぞれ求める事案である。』(2頁)

<経緯>

H27.12 第3回真理講演会開催
     被告が講演をツイキャスでネット動画配信
     被告が25件のコメントを投稿

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■判決内容

<争点>

1 本件配信による公表権侵害の成否

原告らは、本件配信はライブ配信であり、本件講演が原告らによる口述と同時に配信されるため本件配信の時点では本件講演は未公表であった旨主張しました(6頁以下)。
この点について、裁判所は、本件講演会は定員86名の会場で行われ、対象者が限定されておらず、事前に申込みをすれば誰でも参加することができるものであったとして、本件講演は不特定又は多数の者に対して行われたものであり、原告らの口述により公衆に提示され公表されたと判断。原告の本件配信による公表権侵害(著作権法18条)の主張を認めていません。

   --------------------

2 本件配信の「時事の事件の報道」該当性

被告は、言語の著作物である本件講演をインターネット上の配信サイトで無断配信しており、被告の行為は本件講演に係る各原告の公衆送信権(23条)を侵害する行為に該当すると裁判所は認定。
これに対して、被告は、本件配信は「時事の事件の報道」(41条)に該当するため、原告らの著作権が制限され公衆送信権侵害は成立しない旨主張しました。
この点について、裁判所は、本件講演それ自体が同条にいう「時事の事件」に当たるとみることは困難であること、さらに、同条は時事の事件を報道する場合には当該事件を構成する著作物等を「報道の目的上正当な範囲内」において「当該事件の報道に伴って利用する」限りにおいて、当該著作物についての著作権を制限する旨の規定であるところ、本件配信は,約3時間にわたり本件講演の全部を本件コメントを付して配信するものであり、同条により許される著作物の利用に当たらないことは明らかであると判断。
結論として、本件配信は、上記公衆送信権を侵害すると判断しています(7頁)。

   --------------------

3 本件コメントによる原告Aの名誉又は声望の毀損の有無

被告が本件配信の際に原告Aに関して、「ラスボス・Aは,この後3時から」「ラスボス登場」などのコメントを投稿したことが原告Aの名誉又は声望を毀損する方法で行われたものにあたり、著作者人格権を侵害する行為とみなされるかどうか(113条6項)について、裁判所は、 結論として、被告による本件講演の利用の方法が原告Aの名誉又は声望を害するものであったと認めることはできないと判断。名誉回復措置に関する謝罪広告掲載の請求(115条)を認めていません(7頁以下)。

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4 損害額

被告による公衆送信権侵害の点について、以下のように損害額を認定しています(8頁以下)。

(1)財産的損害

原告A、B 各6万円
原告C 1万円
原告D 3000円

(2)弁護士費用相当額損害

原告A、B 各1万円
原告C 2000円
原告D 1000円

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■コメント

講演会を無断でツイキャス(http://twitcasting.tv/)でライブ動画配信した事案となります。
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2016年12月22日

著作権判例百選編集事件(保全異議申立事件 抗告審)−著作権 保全異議申立決定に対する保全抗告事件決定(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

著作権判例百選編集事件(保全異議申立事件 抗告審)

知財高裁平成28.11.11平成28(ラ)10009保全異議申立決定に対する保全抗告事件決定PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    杉浦正樹
裁判官    寺田利彦

*裁判所サイト公表 2016.11.25
*キーワード:編集著作者、著作者の推定、覆滅

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■事案

著作権判例百選の編者が出版社との間で編集著作者性などを巡って争われた事案の抗告審

抗告人:出版社
相手方:研究者

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■結論

原決定取消し、仮処分決定取消し、仮処分命令申立て却下

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■争点

条文 著作権法14条

1 著作者性

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■事案の概要

『相手方は,「相手方は,編集著作物たる著作権判例百選[第4版](本件著作物)の共同著作者の一人であるところ,抗告人が発行しようとしている著作権判例百選[第5版](本件雑誌)は本件著作物を翻案したものであるから,本件著作物の著作権を侵害する。」などと主張して,本件著作物の翻案権並びに二次的著作物の利用に関する原著作物の著作者の権利を介して有する複製権,譲渡権及び貸与権,又は著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)に基づく差止請求権(本件差止請求権)を被保全権利として,抗告人による本件雑誌の複製・頒布等を差し止める旨の仮処分命令を求める申立て(本件仮処分申立て)をした。 これに対し,東京地方裁判所は,平成27年10月26日,この申立てを認める仮処分決定(本件仮処分決定)をした。これを不服とした抗告人が保全異議を申し立てたが,原決定は,平成28年4月7日,本件仮処分決定を認可した。
 本件は,この原決定を不服とした抗告人が,原決定及び本件仮処分決定の取消し並びに本件仮処分申立ての却下を求めた事案である。』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 著作者性

(1)著作者性の推定

抗告審は、相手方(大学教授)の編集著作者性について、本件著作物には相手方の氏名を含む本件著作物編者らの氏名が編集著作者名として通常の方法により表示されているとして、相手方については著作者の推定(法14条)が及ぶと判断しています(24頁以下)。

(2)推定の覆滅

次に、著作者性の推定の覆滅の可否について検討されています。
著作者の意義(著作権法2条1項2号)、編集著作物の意義(12条1項)について言及した上で、

『本件のように共同編集著作物の著作者の認定が問題となる場合,例えば,素材の選択,配列は一定の編集方針に従って行われるものであるから,編集方針を決定することは,素材の選択,配列を行うことと密接不可分の関係にあって素材の選択,配列の創作性に寄与するものということができる。そうである以上,編集方針を決定した者も,当該編集著作物の著作者となり得るというべきである。
 他方,編集に関するそれ以外の行為として,編集方針や素材の選択,配列について相談を受け,意見を述べることや,他人の行った編集方針の決定,素材の選択,配列を消極的に容認することは,いずれも直接創作に携わる行為とはいい難いことから,これらの行為をしたにとどまる者は当該編集著作物の著作者とはなり得ないというべきである。』(46頁)

として、当該行為の具体的内容を踏まえながら、

『さらに,当該行為者の当該著作物作成過程における地位,権限,当該行為のされた時期,状況等に鑑みて理解,把握される当該行為の当該著作物作成過程における意味ないし位置付けをも考慮して判断されるべきである。』(47頁)

と当該行為の背景事情なども斟酌する旨説示。

そして、

『少なくとも本件著作物の編集に当たり中心的役割を果たしたB教授,その編集過程で内容面につき意見を述べるにとどまらず,作業の進め方等についても編集開始当初からE及びB教授にしばしば助言等を与えることを通じて重要な役割を果たしたというべきA教授及び抗告人担当者であるEとの間では,相手方につき,本件著作物の編集方針及び内容を決定する実質的権限を与えず,又は著しく制限することを相互に了解していた上,相手方も,抗告人から「編者」への就任を求められ,これを受諾したものの,実質的には抗告人等のそのような意図を正しく理解し,少なくとも表向きはこれに異議を唱えなかったことから,この点については,相手方と,本件著作物の編集過程に関与した主要な関係者との間に共通認識が形成されていた』

『これらの事情を総合的に考慮すると,本件著作物の編集過程において,相手方は,その「編者」の一人とされてはいたものの,実質的にはむしろアイデアの提供や助言を期待されるにとどまるいわばアドバイザーの地位に置かれ,相手方自身もこれに沿った関与を行ったにとどまるものと理解するのが,本件著作物の編集過程全体の実態に適すると思われる。』

として、相手方はアドバイザーの地位にすぎないと認定。
結論として、14条による推定にもかかわらず、相手方をもって本件著作物の著作者ということはできないと判断しています。

以上から、相手方は本件著作物の著作者ではなく、著作権及び著作者人格権を有しないとして、抗告人に対する被保全権利である本件差止請求権は認められず、相手方による本件仮処分申立ては理由を欠くものとして却下され、これを認めた本件仮処分決定及びこれを認可した原決定はいずれも取り消され、本件仮処分申立ては却下されています。

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■コメント

抗告審では一転、著作者の推定の覆滅が認められ、大学教授は著作者ではないと判断されました。
著作者の推定を認めた点は原審と同様の判断でしたが、抗告審では詳細な認定を行い、異なる結果となっています。

12月中旬には発売されて手元に百選第5版が届きました。多くの方々の思いが詰まった1冊として今まで以上に丁寧に取扱いたいと思います。

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■過去のブログ記事

2016年04月25日
原審記事

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■著作者の推定に関連する判例

「高速道路パノラマ地図」事件 東京地裁昭和39年11月26日判決
「地球儀用世界地図」事件 東京地裁昭和44年5月31日判決、東京高裁昭和46年2月2日判決
「現代世界総図」事件 東京地裁昭和54年3月30日判決
ミュージカル脚本著作権存在確認等請求事件 東京地裁平成16年3月19日判決
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/446/010446_hanrei.pdf
(以上、「著作権実務提要1」参照)
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2016年12月19日

「バシッとキメたいそう」楽曲類否事件(控訴審)−著作権 楽曲演奏禁止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「バシッとキメたいそう」楽曲類否事件(控訴審)

知財高裁平成28.12.8平成28(ネ)10067楽曲演奏禁止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    大西勝滋
裁判官    杉浦正樹

*裁判所サイト公表 2016.12.16
*キーワード:複製、翻案、依拠性

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■事案

コンペ作品である楽曲の類否が争点となった事案の控訴審

控訴人(1審原告) :作曲家
被控訴人(1審被告):作曲家

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法21条、27条

1 控訴人楽曲と被控訴人楽曲の同一性ないし類似性及び依拠性

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■事案の概要

『控訴人は,甲12及び乙15に収録された音源に係る楽曲(以下「原告楽曲」という。)の著作者であるところ,原審において,一審被告Y(被控訴人),一審被告A(被告A)及び一審被告株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント(被告SME)が原告楽曲に依拠してこれに類似した甲13及び乙4に収録された音源に係る楽曲(以下「被告楽曲」という。)を制作したこと,一審被告テレビせとうち株式会社(被告TSC)がこれをテレビ番組内で放送したこと及び一審被告株式会社ソニー・ミュージックダイレクト(被告SMD)がこれを収録したDVD等を販売したことが,控訴人の著作権(複製権又は編曲権)及び著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)を侵害しているとして,被控訴人らに対し,(1)著作権法112条に基づき,別紙楽譜目録記載1(控訴人が被告楽曲の旋律を表す楽譜であると主張するもの)の楽曲の演奏,複製等及びこれを録音又は録画したCD,DVD等の複製,販売等の禁止を求めるとともに,(2)不法行為に基づく損害賠償金(被控訴人,被告A及び被告SMEに対し9000万円,被告TSCに対し7000万円,被告SMDに対し6000万円)及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を求めた。
 原判決は,被告楽曲が原告楽曲を複製又は翻案したものに当たるとはいえず,控訴人の著作権及び著作者人格権が侵害されたとは認められないとして,控訴人の被控訴人らに対する請求をいずれも棄却した。
 そこで,控訴人は,原判決中,控訴人の被控訴人に対する上記(1)の請求を棄却した部分を不服として,本件控訴を提起した。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 控訴人楽曲と被控訴人楽曲の同一性ないし類似性及び依拠性

控訴審も被控訴人楽曲が控訴人楽曲を複製又は翻案したものであるとは認めず、被控訴人が控訴人楽曲に係る著作権及び著作者人格権を侵害しているとはいえないとして、控訴人の被控訴人に対する請求には理由がないと判断しています(4頁以下)。

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■コメント

原審の判断を控訴審でも維持しています。

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■過去のブログ記事

2016年06月14日
原審記事


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2016年12月12日

スティック型加湿器形態模倣事件(控訴審)−著作権 不正競争差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

スティック型加湿器形態模倣事件(控訴審)

知財高裁平成28.11.30平成28(ネ)10018不正競争差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官    中村 恭
裁判官    森岡礼子

*裁判所サイト公表 2016.12.09
*キーワード:商品形態模倣行為性、応用美術、著作物性

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■事案

スティック型加湿器のデザインの著作物性などが争点となった事案の控訴審

控訴人(1審原告) :プロダクトデザイナーら
被控訴人(1審被告):家電輸入卸会社、雑貨店

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■結論

原判決変更

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、10条1項4号、不正競争防止法2条1項3号、19条1項5号、5条3項2号

1 不正競争行為性
2 著作物性
3 損害額

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■事案の概要

『本件は,本判決別紙3「控訴人加湿器目録」記載1及び2の加湿器(以下,それぞれ,同目録の番号により「控訴人加湿器1」などという。)の開発者である控訴人らが,被控訴人に対し,(1)本判決別紙1「被控訴人商品目録」記載の加湿器(以下「被控訴人商品」という。)は,控訴人加湿器1又は控訴人加湿器2の形態を模倣したものであるから,その輸入,販売等は不正競争防止法2条1項3号の不正競争(形態模倣)に当たるとして,同法3条1項及び2項に基づいて,被控訴人商品の輸入,販売等の差止め及び廃棄を,(2)控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2は,いずれも,美術の著作物(著作権法10条1項4号)に当たるから控訴人らはこれらに係る著作権(譲渡権又は二次的著作物の譲渡権)を有するとして,著作権法112条1項及び2項に基づいて,被控訴人商品の輸入,販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに(上記(1)とは選択的併合),(3)不正競争防止法違反又は著作権侵害の不法行為に基づき(選択的併合,不正競争防止法5条3項2号又は著作権法114条3項の選択的適用),損害賠償金各120万円(逸失利益各95万円と弁護士費用各25万円の合計120万円の2人分で総計240万円)及びこれに対する不法行為後の日である平成27年3月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,それぞれ求める事案である。』

『原判決は,控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2につき,(1)両者は,いずれも,市場における流通の対象となる物とは認められないから,不正競争防止法2条1項3号にいう「商品」に当たらない,(2)両者は,いずれも,美的鑑賞の対象となり得るような創作性を備えていると認めることはできないから,著作物に当たらないとして,控訴人らの各請求をいずれも棄却した。』(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 不正競争行為性

(1)「他人の商品」該当性

控訴審は、「他人の商品」の意義(不正競争防止法2条1項3号)について言及した上で、「他人の商品」性判断にあたり、「商品化」を完了した物品であるかどうかについて検討。
控訴人らは平成23年11月に商品展示会に控訴人加湿器1を出展しているが、商品展示会は商品を陳列して商品の宣伝、紹介を行い、商品の販売又は商品取引の相手を探す機会を提供する場であり、商品展示会に出展された商品は特段の事情のない限り、開発、商品化を完了し、販売を可能とする段階に至ったことが外見的に明らかになったものと認めるのが相当であると判断。
結論として、控訴人加湿器1及び2について、いずれも「他人の商品」該当性を肯定しています(15頁以下)。

(2)形態の模倣の有無

控訴審は、被控訴人商品と控訴人加湿器1及び2は、いずれも実質的に同一の形態を有するものであり、また、依拠性もあるとして、被控訴人商品は控訴人加湿器1又は控訴人加湿器2のいずれか又は双方を模倣(2条5項)したものであると判断しています(19頁以下)。

(3)保護期間終了の成否

控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2の形態の3年間の保護期間(19条1項5号イ)は、いずれも本件口頭弁論終結日の前の平成26年11月1日の経過により終了していると認定されています(24頁以下)。

(4)善意無重過失の有無及び被控訴人の過失の有無

被控訴人による形態を模倣した被控訴人商品の輸入について、差止請求は保護期間終了によりできないものの、控訴人らの損害賠償請求の当否の検討がされています。
この点について、被控訴人の主観的要件として、過失が認定されています。
また、譲受時に形態模倣商品が他人の商品を模倣したものであることに関する善意無重過失性の被控訴人の主張立証(19条1項5号ロ)について、被控訴人の主張は認められていません(26頁以下)。

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2 著作物性

控訴審は、著作物性の意義(著作権法2条1項1号)及び応用美術の著作物性(10条1項4号)について言及した上で、控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2の著作物性を検討。
アイデア部分を除いた、リング状パーツ5を用いた点、吸水口6の形状、噴霧口7周辺の形状といった構成部分について、いずれも平凡な表現手法又は形状であって、個性が顕れているとまでは認められず、その余の部分も同様であると判断。控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2には著作権法における個性の発揮を認めることはできないとして、各商品の著作物性を否定しています(28頁以下)。

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3 損害額

不正競争防止法違反に基づく損害賠償請求(保護期間終了日の平成26年11月1日よりも前の被控訴人商品の輸入。なお、当該商品がいつ販売されたかは当該商品の輸入自体が侵害行為である以上、損害額の算定を左右しない)について、

(1)逸失利益(5条3項2号)

小売価格1900円×販売数1万6739個×形態の相当使用料率5%
合計159万円

(2)弁護士費用相当額

合計30万円

結論として、控訴人らの控訴人加湿器1及び控訴人加湿器2に係る権利・利益の割合で案分して、各94万5000円と損害額が認定されています(32頁以下)。

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■コメント

原審では、加湿器1及び2は、試作品であり市場における流通の対象となる物とは認められないとして、不正競争防止法2条1項3号にいう「商品」に当たらないと判断されていましたが、控訴審では、一転、商品化を完了していると判断されて他人の商品性が肯定、損害も認定されています。
「商品」性の論点としては、(1)商品の容器や包装、(2)商品の部品や部分、(3)商品の組み合わせといったものがありますが(新注解不正競争防止法第三版上巻478頁以下参照)、試作品かどうか、商品化を完了したかどうかが争点となった事案の控訴審判断としては先例性があるかと考えられます。

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■過去のブログ記事

2016年01月25日
原審記事
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2016年11月19日

会員情報管理システム開発事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

会員情報管理システム開発事件

東京地裁平成28.10.21平成27(ワ)20841損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 東海林 保
裁判官    広瀬 孝
裁判官    勝又来未子

*裁判所サイト公表 2016.11.16
*キーワード:職務著作

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■事案

ソフトウェアの著作者性が争点となった事案

原告:被告元従業員
被告:コンピュータ関連機器販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法15条2項

1 システム開発に関する不当利得返還請求の可否
2 被告の安全配慮義務違反に基づく請求の可否
3 「会員情報管理システム」の著作者は原告か被告か
4 保険金に関する請求の可否
5 原告による訴え提起前の照会に対する開示拒否が不法行為に当たるか

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■事案の概要

『本件は,平成19年9月3日から平成22年5月31日までの間,被告に雇用されていた原告が,被告に対し,(1)原告が被告の従業員として開発に従事したコンピュータシステムないしプログラムである別紙プログラム目録記載2の「知らせますケン」(以下,単に「しらせますケン」という。)及び「会員情報管理システム」について,被告が納入先から得た請負代金及び保守代金を原告に分配していないことが不当利得に当たると主張して,不当利得返還請求権に基づき,(1)主位的に,被告が得た請負代金及び保守費用のうちの原告の寄与分相当額から原告が受領済みの賃金額を控除した額合計1938万6607円及びうち558万3703円に対する平成21年4月1日(被告が「知らせますケン」の報酬金の支払を受けた日の翌日)から,うち1380万2904円に対する平成22年4月2日(被告が「会員情報管理システム」の報酬金の支払を受けた日の翌日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,(2)予備的に,上記合計額から「会員働者災害補償保険の「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準」第14級の9に当たる後遺障害を生じたことから,退職及び退職後2年間の休業を余儀なくされたと主張して,債務不履行に基づく損害賠償請求として休業損害,後遺障害逸失利益及び慰謝料相当額(主位的に合計6286万2435円,予備的に合計4912万0445円)並びにこれに対する催告の後の日である平成27年8月8日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め(請求の趣旨第2項),また,(3)被告の業務として原告が制作したプログラムである「会員情報管理システム」について,その制作時,被告が安全配慮義務を怠っていたために原告に重大な労働災害(過労死)が発生する蓋然性が高い状況にあったこと等に照らすと,著作権法15条2項の適用は権利濫用ないし公序良俗違反に当たるから,職務著作とは認められないと主張して,(1)原告が著作者であり,被告が著作者ではないことの確認を求めるとともに(請求の趣旨第3項),(2)著作者人格権に基づいて別紙「技術目録」記載の文言の使用禁止を求め(請求の趣旨第4項),(4)原告が受領すべき保険金(平成21年2月20日発生の通勤時の事故に関するもの)を被告が取得していると主張して,不当利得返還請求権として被告が得た保険金のうち少なくとも8万1000円及びこれにする平成21年5月28日(被告が保険金を受領した日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め(請求の趣旨第5項),(5)原告の訴え提起前の照会に対し,被告が契約書等の書面の開示を拒否したことが不法行為に当たると主張して,不法行為に基づく損害賠償請求として被告及び第三者らに対する照会書等の郵送費用6866円及びこれに対する不法行為の後の日である平成28年4月5日(平成28年3月22日付け請求拡張申立書送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である』(2頁以下)

<経緯>

H20.05 原告が「知らせますケン」開発に従事
H20.09 原告が「会員情報管理システム」開発に従事
H21.02 原告が交通事故で負傷
H22.05 原告退職
H22.06 原告が被告に対して未払賃金等支払を求める訴えを提起(別件訴訟)
H26.08 原告が被告に訴えの提訴予告通知書通知

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■判決内容

<争点>

1 システム開発に関する不当利得返還請求の可否

原告は、被告が取引先から受領した報酬金額に原告の寄与度を乗じた額を原告に返還しなければならないなどとして、システム開発に関する不当利得の返還を主張しました。
この点について、裁判所は、原告は雇用契約(民法623条)に基づいて労働に従事することによって雇用契約の相手方である被告に対する報酬請求権を取得し、被告は原告から労務提供を受けることと引き換えに原告に対する報酬支払債務を負うのであって、労務の提供が雇用契約に基づくものである以上、原告が被告に労務を提供したとしても原告には損失がなく、被告には利得がないとして、原告の主張を認めていません(22頁以下)。

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2 被告の安全配慮義務違反に基づく請求の可否

(略)

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3 「会員情報管理システム」の著作者は原告か被告か

「会員情報管理システム」の著作者について、裁判所は、法人である被告の従業員である原告が被告の発意に基づいてプログラムである「会員情報管理システム」を創作したことについては当事者間に争いがないこと、また、「会員情報管理システム」の著作者に関して、作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがあることはうかがえないと認定。
結論として、「会員情報管理システム」は、著作権法15条2項所定の職務著作に該当し、上記プログラムの著作者は被告であると判断しています。

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4 保険金に関する請求の可否

(略)

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5 原告による訴え提起前の照会に対する開示拒否が不法行為に当たるか

(略)

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■コメント

本人訴訟ということもあって、原告側の主張が整理されていない印象です。
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2016年11月17日

EM菌新聞記事事件(控訴審)−著作権 損害賠償等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

EM菌新聞記事事件(控訴審)

知財高裁平成28.11.10平成28(ネ)10050損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官    中島基至
裁判官    岡田慎吾

*裁判所サイト公表 2016.11.14
*キーワード:著作物性、複製、翻案

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■事案

有用微生物群(EM)に関する新聞記事が研究者の著作権等を侵害するかどうかが争点となった事案の控訴審

控訴人(1審原告) :大学名誉教授
被控訴人(1審被告):新聞社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、20条、115条、民法709条

1 本件被控訴人記載1及び2が控訴人の複製権又は同一性保持権を侵害するか
2 控訴人を取材せずに本件記事1及び2を掲載した行為が不法行為に当たるか

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■事案の概要

『本件は,控訴人が,新聞社である被控訴人に対し,被控訴人が発行する新聞の記事に控訴人の執筆したブログの一部を引用したことが控訴人の複製権(著作権法21条)及び同一性保持権(同法20条)の侵害に当たるとともに,控訴人を取材せずに記事を掲載した行為が不法行為に当たると主張して,(1)民法709条に基づき,慰謝料等の損害賠償金合計352万円及びこれに対する最終の不法行為の日である平成24年7月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,(2)著作権法115条及び人格権に基づき名誉回復措置として謝罪広告の掲載を,それぞれ求める事案である。
 原審は,控訴人の請求をいずれも棄却したため,控訴人は,原判決を不服として,控訴を提起した。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 本件被控訴人記載1及び2が控訴人の複製権又は同一性保持権を侵害するか

控訴審は、著作物性や複製、翻案の意義について言及した上で、本件控訴人記載の著作権侵害の成否を判断。結論として、本件被控訴人記載1及び2は、著作物の複製に当たらず複製権を侵害するものとはならない。また、被控訴人による複製権侵害を前提とする同一性保持権の侵害も認められず、控訴人の著作者人格権を侵害することにもならないと判断しています(4頁以下)。

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2 控訴人を取材せずに本件記事1及び2を掲載した行為が不法行為に当たるか

控訴人を取材せずに本件記事1及び2を掲載した行為は、被控訴人が作成し公表している「朝日新聞記者行動基準」が規定する取材方法に抵触するものとして、被控訴人社内における自律的処理の対象として検討されるのは格別、その態様、記事の内容及び趣旨、控訴人の学者としての社会的地位、本件記事1及び2の掲載により負うこととなった控訴人の負担等を総合考慮すると、本件記事1及び2の掲載行為により控訴人の被った精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を超えるとまではいい難く、これを不法行為法上違法なものであるということはできないと控訴審は判断しています(6頁以下)。

結論として、控訴人(1審原告)の主張はいずれも認められていません。

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■コメント

原審の棄却の判断が維持されています。

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■過去のブログ記事

2016年05月11日
原審記事
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2016年11月11日

音楽CD製造販売業務委託契約事件(控訴審)−著作権 損害賠償等請求控訴事件等判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

音楽CD製造販売業務委託契約事件(控訴審)

知財高裁平成28.11.2平成28(ネ)10029損害賠償等請求控訴事件、同付帯控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官    古河謙一
裁判官    鈴木わかな

*裁判所サイト公表 2016.11.04
*キーワード:業務委託、CD販売、配信、条理、注意義務

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■事案

音楽CD製造販売業務委託契約について債務不履行があったかどうかなどが争点となった事案の控訴審

控訴人兼附帯被控訴人(1審被告):衛星放送事業者
被控訴人兼附帯控訴人(1審原告):音楽制作会社

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■結論

控訴棄却、附帯控訴原判決変更

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■争点

条文 著作権法114条2項、114条の5

1 著作隣接権侵害の不法行為の成否
2 本件原盤等に対する所有権侵害の不法行為の成否
3 損害額
4 被控訴人の申立て

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■事案の概要

『本件は,被控訴人が,控訴人に対し,(1)本件原盤から複製された本件CDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信により,被控訴人が有する本件原盤についてのレコード製作者の著作隣接権(複製権,貸与権,譲渡権及び送信可能化権)及び本件楽曲についての実演家の著作隣接権(送信可能化権)を侵害したことを理由とする,民法709条に基づく損害賠償金722万3480円(著作権法114条2項)の支払,(2)本件CDを廃盤にして,被控訴人の本件原盤,ジャケットを含む本件CD及びポスター等の所有権を侵害したことを理由とする,民法709条に基づく損害賠償金839万1174円の支払,(3)民法709条に基づく上記(1)及び(2)に関する弁護士相談料に係る損害賠償金113万3232円の合計1674万7886円及びこれに対する平成23年4月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』
『原判決は,前記(1)(1)につき,控訴人が,被控訴人のレコード製作者の著作隣接権を侵害したとして,控訴人に対し,7077円及びうち2000円に対する平成23年4月5日から,うち5077円に対する平成25年3月31日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の限度で損害賠償金の支払を認め,その余の請求をいずれも棄却した。』
『控訴人は,原判決を不服として,控訴を提起した。
被控訴人は,附帯控訴を提起し,原審における1674万7886円及びこれに対する遅延損害金の請求中,前記(1)(1)著作隣接権侵害に係る損害を原審における722万3480円から778万1706円とし,上記請求を,1730万6112円及び遅延損害金の請求に拡張した。』(2頁以下)

『被控訴人代表者及び原審被告タッズらは,いずれも控訴せず,また,被控訴人も,原審被告タッズら及び同Bに対する請求に関しては控訴しなかった。したがって,被控訴人代表者の請求並びに被控訴人の原審被告タッズら及び同Bに対する請求は移審せず,それぞれの控訴期間の満了をもって,確定した。』

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■判決内容

<争点>

1 著作隣接権侵害の不法行為の成否

控訴人は、本件CDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信に当たって被控訴人の許諾の有無を確認すべき条理上の注意義務を負うものであるなどとして、結論として、原審同様、控訴人の不法行為責任を肯定しています(13頁以下)。

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2 本件原盤等に対する所有権侵害の不法行為の成否

原審同様、本件廃盤処置により被控訴人の所有権が侵害されて被控訴人主張の損害が発生したとは認められていません(19頁以下)。

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3 損害額

(1)被控訴人のレコード製作者としての本件原盤に係る複製権及び譲渡権の侵害

4952円(619円×8枚 著作権法114条2項)

(2)被控訴人のレコード製作者としての本件原盤に係る貸与権の侵害による損害

2000円(250円×8枚 著作権法114条2項)

(3)被控訴人のレコード製作者としての本件原盤に係る送信可能化権及び実演家としての本件実演に係る送信可能化権の侵害による損害

配信関係の損害について、控訴審は、控訴人が本件楽曲に係る配信実績及び売上金について十分な調査をして資料を提出しているか、疑問を提示。また、控訴人自身がいまだ把握しきれていない本件楽曲の配信実績が存在する可能性も否定できない旨指摘した上で、被控訴人のレコード製作者としての本件原盤に係る送信可能化権及び実演家としての本件実演に係る送信可能化権の侵害による損害額を立証するために必要な事実を立証することは、当該事実の性質上極めて困難なものといわざるを得ないと判断。
口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて事実審の口頭弁論終結日である平成28年9月28日までの本件楽曲の無断配信の回数は400回と認定。また、配信1回当たり控訴人が受領した金額の平均はおおむね146円と認定しています(著作権法114条の5)。

5万8400円(146円×400回)

被控訴人の損害額は、5万8400円(146円×400回)から支払済みの1万9329円を控除した3万9071円と認定しています。

結論として、合計4万6023円が損害額として認定されています(22頁以下)。

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4 被控訴人の申立て

被控訴人の調査嘱託や文書提出命令の申立てについて、必要性がないなどとしていずれも認められていません(32頁以下)。

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■コメント

原審の判断が基本的に維持されています。損害額については、配信部分について増額の認定になっています。

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■過去のブログ記事

原審記事(2016年06月16日)

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2016年11月02日

「知と文明のフォーラム」遺言書事件−著作権 不当利得返還等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「知と文明のフォーラム」遺言書事件

東京地裁平成28.10.25平成27(ワ)31705不当利得返還等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    林 雅子
裁判官    中嶋邦人

*裁判所サイト公表 2016.10.27
*キーワード:自筆証書遺言、遺贈、死因贈与契約

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■事案

遺言書などにより著作物の著作権が譲渡されていたかどうかが争点となった事案

原告:フォーラム団体
被告:亡Bの法定相続人

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 民法968条

1 本件文書が自筆証書である遺言書に当たるか
2 亡Bとフォーラムの間で死因贈与契約が締結されたか

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■事案の概要

『本件は,原告が,本件各著作物の著作権を含むB(以下「亡B」という。)の財産につき,これを法定相続により取得したとする被告(亡Bの夫)に対し,主位的に自筆証書(後述の本件文書)による遺言に基づいて遺贈を受けたこと,予備的に死因贈与を受けたことを主張して,不当利得(主位的)又は死因贈与契約(予備的)に基づく3000万円(内金請求)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成27年12月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払と,本件各著作物に係る著作権を有することの確認を求める事案である。』(1頁以下)

<経緯>

H18 「知と文明のフォーラム」発足
H18 亡Bが本件文書を作成
H21 亡Bが死亡
H23 原告団体法人設立
H27 被告が原告代表理事を退任

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■判決内容

<争点>

1 本件文書が自筆証書である遺言書に当たるか

亡Bが作成した本件文書について、原告は、本件文書は亡Bの全財産をフォーラムに遺贈する旨を内容としているもので、その全文、日付及び氏名が遺言者である亡Bの自書によるものであり、押印もされていることから遺言書である旨主張しました。
これに対して、亡Bの夫で唯一の法定相続人である被告は、本件文書は単なる下書き、草案程度のものであって、遺言書ではない旨反論しました(6頁以下)。

この点について、裁判所は、

・本件文書の本文は黒インクのペンと鉛筆によって書かれており、複数の加除訂正等の変更箇所があるがこれらの箇所に亡Bの署名押印はない
・平成18年1月30日から4月5日の間に弁護士に遺言書の作成について相談している
・平成24年8月頃、亡Bの著作物を整理していたフォーラムの関係者により他の書類に雑然と紛れ封筒に入っていない状態で発見

といった諸事情を勘案した上で、

・多数の加除訂正等がペン又は鉛筆によって遺言書に求められる方式(民法968条2項)によることなく施されている。このうちペンを用いて記載された部分をみても、亡Bは変更を加えながら文章を作成していると認められ、作成の時点で記載内容が確定していなかった。また、鉛筆によって数行にわたり抹消された部分もある。
・本件文書は亡Bの書斎に置いてあった書類に紛れた状態にあったというが、遺言書という重要な書類の保管方法としては不自然なものである。
・本件文書の作成直後から複数の弁護士に相談をして遺言書の作成について助言を受けており、このような本件文書作成後の事情もこれが遺言書の下書きないし草案であることを裏付けている。

と判断。本件文書は遺言書として完成したものあるとは認められず、自筆証書遺言としての効力を有しないと判断しています。

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2 亡Bとフォーラムの間で死因贈与契約が締結されたか

原告は、フォーラムは亡B及び被告の遺産の受け皿にするために設立されたものであり、亡Bは平成18年1月頃のフォーラム発足当初から自身の遺産をフォーラムに譲り渡す旨何度も発言しており、フォーラムの構成員もそのことを承知していた。本件文書は、フォーラムの了解の下に作成された死因贈与契約を証する書面である旨主張しました(9頁以下)。

この点について、裁判所は、

・本件文書は遺言書の下書きにとどまるものであるから、これにより亡Bが死因贈与の意思を有していたと認めることはできない。
・将来的に遺産を贈与したいという意向を有していたといい得るとしても、フォーラムに死因贈与する旨の確定的な意思表示があったとは認められない。
・亡Bが多額の金融資産と不動産及び本件各著作物の著作権を有しており、原告がその全てを死因贈与により取得したというのであれば、原告は設立後速やかに被告が法人設立時に拠出した2000万円を超える部分の交付など贈与の履行を求めるものと解されるが、本件の証拠上そのような事情はうかがわれない。

といったことから、亡Bとフォーラムの間に死因贈与契約が締結されたとは認められないと判断しています。

結論として、原告の請求は認められていません。

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■コメント

2009年11月25日に亡くなった青木やよひ氏の著作物の著作権の帰属を巡る争いです。生前に作成した文書が要式行為である自筆証書遺言(単独行為である遺贈)にあたらず、また、当事者の合意による死因贈与契約の成立も否定されており、氏及び被告を顕彰する目的を有するフォーラム団体への著作権の帰属は認められていません。
青木やよひ氏の著作としては、女性学やベートーベン研究に関するものなどがあります。
なお、被告となった夫は北沢方邦氏で音楽論、構造主義人類学などの研究者です。

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■参考サイト

一般財団法人 知と文明のフォーラム

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2016年11月01日

BSS−PACKソフト営業秘密事件−著作権 不正競争行為差止請求事件等判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

BSS−PACKソフト営業秘密事件

東京地裁平成28.10.25平成28(ワ)360等不正競争行為差止請求事件、同承継参加申出事件、プログラム著作権確認請求事件PDF
別紙1(BSS−PACK 中核部(ミドルソフト)営業秘密部プログラム目録)
別紙2(プログラム目録)

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    萩原孝基
裁判官    中嶋邦人

*裁判所サイト公表 2016.10.27
*キーワード:プログラム、著作権譲渡契約、営業秘密

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■事案

ソフトウェアの著作権譲渡に伴って営業秘密も移転していたかどうかが争点となった事案

第1事件原告兼第2事件原告:ソフトウェア開発販売会社、代表者
第1事件被告兼第2事件被告:コンピュータ報処理サービス会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法61条2項、不正競争防止法2条1項4号、5号、10号

1 本件営業秘密部プログラムは原告らの営業秘密であるか等

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■事案の概要

『第1事件は,原告ソフトウェア部品社が,被告に対し,本件営業秘密部プログラムが第1事件原告の営業秘密に当たるところ,被告がこれを取得して使用し,被告製品を製造して販売したことが不正競争(不正競争防止法2条1項4号又は5号,10号)に当たると主張して,同法3条1項及び2項に基づき被告製品の販売差止め及び廃棄等を求めるとともに,第1事件承継参加人らが,被告に対し,原告ソフトウェア部品社と本件営業秘密部プログラムを共有するに至ったと主張して承継参加を申し出て,上記請求と同趣旨の請求をする事案である。
 第2事件は,原告らが,被告に対し,本件先行ソフトウェア部品プログラムについて,(1)これを創作したことによる著作権,(2)「オリジナルソフトウェア部品」という名称のプログラム(以下「本件オリジナルソフトウェア部品プログラム」という。)を原著作物とする二次的著作物である本件先行ソフトウェア部品プログラムについての原著作者の著作権(以下,上記(1)の著作権と併せて「本件各著作権」という。)を有することの確認を求める事案である』
(3頁)

<経緯>

H02 原告ビーエスエス社が「BSS−PACK(VAX/VMS版)」開発販売
H09 原告ビーエスエス社が「BSS−PACK」開発販売
H15 被告が被告製品販売
H18 原告ビーエスエス社とサンライズ社が事業継続支援合意、著作権譲渡
H19 サンライズ社から株式会社フロンテックへ著作権譲渡
H21 株式会社フロンテックから被告へ著作権譲渡

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■判決内容

<争点>

1 本件営業秘密部プログラムは原告らの営業秘密であるか等

原告らは、本件営業秘密部プログラムが原告らの営業秘密であり、また、本件各著作権が原告らに帰属する旨主張しました。これに対して被告はこれらに係る権利は本件譲渡契約によりサンライズ社に譲渡されたことから、第1事件及び第2事件の原告らの請求はいずれも認められない旨主張しました。

この点について、裁判所は、本件合意及びこれに引き続いて締結された本件譲渡契約に関して、

・実質的に原告ビーエスエス社のBSS−PACKに関する事業を従業員ごと他の会社に移転させて、その事業をサンライズ社の支援の下で継続させることを念頭に置いたものである。
・本件譲渡契約の契約書上、譲渡対象については包括的な記載となっており、本件営業秘密部プログラム及び本件先行ソフトウェア部品プログラムを含め明示的に譲渡対象から除かれたプログラムはない。
・原告ビーエスエス社はサンライズ社に対し著作者人格権を行使しないとされた。
・本件登録プログラムについては著作権法27条及び28条に規定する権利を含めて譲渡された。

といった点から、本件譲渡契約により譲渡されたのは旧BSS−PACKないしBSS−PACKに関するプログラム著作物の全てについての著作権その他の知的財産権であったと解するのが相当であり、本件営業秘密部プログラムについて、原告ビーエスエス社が有していたという営業秘密や本件先行ソフトウェア部品プログラムに係る著作権も譲渡対象であったと判断。
以上から、(1)本件営業秘密部プログラムについての営業秘密や本件先行ソフトウェア部品プログラムについての本件各著作権を原告ビーエスエス社が有していたとしても、(2)本件営業秘密部プログラムについての営業秘密や本件先行ソフトウェア部品プログラムについての本件各著作権は本件譲渡契約によりサンライズ社に譲渡されており、原告らが現時点においてこれを有するということはできず、結論として、原告らの第1事件及び第2事件の請求はいずれも理由がないと判断されています。

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■コメント

対象となったソフトは、販売管理、購買管理、生産管理、財務管理、人事管理などからなる業務領域を網羅する企業基幹業務サポートのための統合業務ERP(Enterprise Resource Planning)情報システムパッケージ製品です。
本件については紛争となるような事案だったのか疑問が残りますが、エスクロウサービスなどにも触れられていて、ソフト開発・販売を巡る融資や金回りの現場の一端に触れる事案としては参考になるかもしれません。

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■参考サイト

株式会社サンライズ・テクノロジー(平成18年4月3日)
『BSS-PACK』ERPビジネスの組織設置のお知らせ

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■「BSS-PACK」関連訴訟

ソフトウェア提供パートナー契約事件
原審記事
控訴審記事

統合業務管理ERPソフト事件
控訴審記事

証書真否確認事件
知財高裁平成27.6.24平成27(ネ)10035証書真否確認請求控訴事件
判決PDF


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2016年10月31日

「エジソンのお箸」幼児用箸事件(控訴審)−著作権 著作権侵害行為差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「エジソンのお箸」幼児用箸事件(控訴審)

知財高裁平成28.10.13平成28(ネ)10059著作権侵害行為差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    大西勝滋
裁判官    寺田利彦

*裁判所サイト公表 2016.10.24
*キーワード:著作物性、工業デザイン、応用美術論

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■事案

幼児用箸のデザインの著作物性などが争点となった事案の控訴審

控訴人(1審原告) :ベビー用品輸入製造販売会社
被控訴人(1審被告):プラスチック製品企画製造販売会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、2条2項、10条1項4号、6号

1 1審原告各製品に係る著作権侵害(複製権又は翻案権)の成否
2 1審原告図画に係る著作権侵害の成否

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■事案の概要

『本件は,幼児用箸を製造販売する控訴人(1審原告)が,同種製品を製造販売する被控訴人(1審被告)に対し,被控訴人による別紙被控訴人商品目録記載1ないし20の各幼児用箸(被告各商品)の製造販売は,控訴人が有する原判決別紙原告著作物目録1記載の図画(原告図画)及び同別紙原告著作物目録2記載1ないし19の各幼児用箸(原告各製品)に係る各著作権(複製権及び翻案権。ただし,原告各製品のうちキャラクターの図柄及び立体像に関する部分を除く。)を侵害すると主張して,(1)著作権法112条1項・2項に基づき,被告各商品の製造販売の差止め及び廃棄を求めるとともに,(2)平成25年1月から平成27年9月28日(本件訴え提起日)までの間における前記各著作権の侵害を内容とする不法行為に基づく損害賠償請求として,2400万円のうち100万円及びこれに対する不法行為の後の日である同年11月13日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 原判決は,原告図画及び原告各製品のいずれについても著作権(複製権及び翻案権)侵害を認めず,控訴人の請求をいずれも棄却したため,これを不服として控訴人が本件控訴をした。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 1審原告各製品に係る著作権侵害(複製権又は翻案権)の成否
2 1審原告図画に係る著作権侵害の成否

原審の判断を維持して棄却の判断をしています(2頁以下)。

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■コメント

幼児用の練習箸のデザインについて、著作権法では保護されないことが原審同様、控訴審でも確認されています。

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■過去のブログ記事

原審記事

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2016年10月27日

ライブバー「X.Y.Z.→A」音楽使用料事件(控訴審)−著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ライブバー「X.Y.Z.→A」音楽使用料事件(控訴審)

知財高裁平成28.10.19平成28(ネ)10041著作権侵害差止等請求控訴事件PDF
別紙(1)(別紙1から3)
別紙(2)(別紙4 使用料相当損害金一覧)

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官    古河謙一
裁判官    鈴木わかな

*裁判所サイト公表 2016.10.20
*キーワード:音楽著作権、使用料、契約、カラオケ法理、損害論

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■事案

ジャスラックの契約形態等に対する不信を理由に使用料金額等を争った事案の控訴審

控訴人兼被控訴人(1審原告):音楽著作権管理団体
被控訴人兼控訴人(1審被告):ライブハウス経営者、ロックバンドドラマー

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■結論

原判決変更

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■争点

条文 著作権法22条、民法1条3項

1 1審被告らの演奏主体性
2 オリジナル曲の演奏による著作権侵害の成否
3 1審被告らの故意又は過失の有無
4 1審原告による許諾の有無
5 権利濫用等の抗弁の成否
6 差止請求の適法性及び差止めの必要性
7 将来請求の可否
8 損害ないし損失発生の有無及びその額

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■事案の概要

『本件は,著作権等管理事業者である1審原告が,1審被告らに対し,原判決別紙1店舗目録記載の店舗(本件店舗。なお,同目録(1)の店舗は本件店舗6階部分であり,同目録(2)の店舗は本件店舗5階部分である。)を1審被告らが共同経営しているところ,1審被告らが1審原告との間で利用許諾契約を締結しないまま同店内でライブを開催し,1審原告が管理する著作物を演奏(歌唱を含む。)させていることが,1審原告の有する著作権(演奏権)侵害に当たると主張して,(1)上記著作物の演奏・歌唱による使用の差止めを求め,(2)主位的に著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として,予備的に悪意の受益者に対する不当利得返還請求として,連帯して,1)平成21年5月23日(本件店舗の開設日)から平成27年10月31日までの使用料相当額560万2787円,2)弁護士費用56万0277円及び3)上記使用料相当額について平成27年10月31日までに生じた確定遅延損害金又は利息金87万2455円の合計703万5519円及びうち616万3064円(上記1)と2)の合計額)に対する同年11月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金又は利息金の支払を求めるとともに,4)平成27年11月1日から上記著作物の使用終了に至るまで,連帯して,使用料相当額月6万3504円の支払を求めた事案である。
 原判決は,1審被告らが1審原告の管理する著作物の演奏主体に当たると判断して,(1)上記著作物の演奏・歌唱による使用の差止めを認め,(2)著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求又は悪意の受益者に対する不当利得返還請求について,1審被告らに対し,連帯して,1)平成21年5月23日から平成27年10月31日までの使用料相当損害金又は不当利得金203万0513円,2)弁護士費用40万円,3)上記1)の使用料相当額について平成27年10月31日までに生じた確定遅延損害金又は利息金30万6858円,4)上記1)と2)の合計額243万0513円に対する同年11月1日以降の遅延損害金又は利息金,5)同日から平成28年2月10日(原審口頭弁論終結日)までの使用料相当損害金又は不当利得金9万3899円の支払を求める限度で認容し,平成28年2月10日までのその余の請求を棄却するとともに,(3)同月11日以降の使用料相当損害金等請求は,将来請求の訴えの要件を欠くとして,却下した。
 そこで,1審原告及び1審被告らが,それぞれ敗訴部分を不服として控訴したものである。なお,1審原告は,当審における金員支払請求において弁護士費用相当額の請求を拡張し,1審被告らに対し,連帯して,1)平成21年5月23日(本件店舗の開設日)から平成28年3月31日までの使用料相当額592万0307円及び本判決別紙1の元本欄記載の各金員に対する起算日欄記載の各日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金又は利息の,2)弁護士費用59万2029円及びこれに対する平成28年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,3)平成28年4月1日から上記著作物の使用終了に至るまで,連帯して,使用料相当額月6万3504円の支払を求めるものである。』

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■判決内容

<争点>

1 1審被告らの演奏主体性

控訴審においても原審同様、クラブキャッツアイ事件、ロクラク2事件の最高裁判決を踏まえ、結論として1審被告らが本件店舗における1審原告管理著作物の演奏主体(著作権侵害主体)であると認められています(14頁以下)。

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2 オリジナル曲の演奏による著作権侵害の成否

著作権信託契約上、演奏者が1審原告に著作権管理を信託した楽曲を、演奏者が演奏する場合であっても1審原告の許諾を得ない楽曲の演奏が1審原告の著作権侵害に当たることは明らかであり、1審原告には使用料相当額の損害の発生が認められるとして、著作権侵害の不法行為が成立すると判断しています(19頁以下)。

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3 1審被告らの故意又は過失の有無

1審被告らは、本件店舗を開いた後は1審原告に著作権料を支払わなければならないことを認識しており、著作権侵害主体であることの認識があったことは明らかであって、1審被告らには著作権侵害の故意又は過失があったというほかないと判断しています(20頁以下)。

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4 1審原告による許諾の有無

本件調停の過程においても1審原告と1審被告ら又は1審被告Y1との間で、1審原告管理著作物の利用に関して利用条件等の契約の重要部分について意思が合致したとはいえないなどとして、結論としては、一審原告の許諾があったとは認められていません(21頁以下)。

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5 権利濫用等の抗弁の成否

1審原告が1審被告らに対し包括的契約の締結を強要した事実を認めるに足りないなどとして、結論としては権利濫用や信義則違反の抗弁を認めていません(23頁以下)。

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6 差止請求の適法性及び差止めの必要性

1審原告の1審被告らに対する差止請求には理由があると判断されています(25頁以下)。

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7 将来請求の可否

口頭弁論終結日以降の損害賠償請求権の成否及びその額を一義的に明確に認定することは、本件では困難であるなどとして、本件の損害賠償請求権は将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有さず、一審被告らに対する金員支払請求のうち、口頭弁論終結日の翌日である平成28年9月13日以降に生ずべき損害賠償金の支払を求める部分は不適法である、と判断しています(28頁以下)。

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8 損害ないし損失発生の有無及びその額

(1)演奏回数

1ライブ当たりの1審原告管理著作物の演奏曲数は、本件店舗の5階部分と6階部分の双方を利用している場合の5階部分については12曲、主たる演奏会場(上記場合の6階部分又はいずれか一方のみを利用している場合)については13曲と判断されています(29頁以下)。

(2)使用料

1曲当たりの使用料は140円(税抜)と認定されています。

・使用料相当損害金又は不当利得金:496万5101円
・弁護士費用:50万円
合計 546万5101円

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■コメント

ジャスラック対ファンキー末吉氏(ライブバー)の事案の控訴審です。
損害論について、原審では被告側の主張を取り入れていましたが、控訴審ではJASRAC側の資料を重視して増額の認定となっています。

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■過去のブログ記事

原審記事 

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■参考サイト

JASRACプレスリリース 2016年10月20日
「ライブハウスの経営者らに対する訴訟の知財高裁判決について」
プレスリリース

written by ootsukahoumu at 06:48|この記事のURLTrackBack(0)