知財判決速報2013

2014年03月31日

「プロ野球ドリームナイン」ソーシャルゲーム事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「プロ野球ドリームナイン」ソーシャルゲーム事件

東京地裁平成25.11.29平成23(ワ)29184損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 東海林保
裁判官      今井弘晃
裁判官      実本 滋

*裁判所サイト公表 2014.3.13
*キーワード:著作物性、複製、翻案、著名商品等表示、形態模倣、一般不法行為論

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■事案

プロ野球トレーディングカードを題材としたSNSゲームの類否が争点となった事案

原告:エンタテインメントコンテンツ企画制作会社
被告:コンテンツ制作配信会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、27条、不正競争防止法2条1項1号、2号、3号、民法709条

1 被告ゲームの制作・配信行為は原告の著作権を侵害するか
2 被告ゲームの配信行為は不競法2条1項1号又は2号の不正競争に該当するか
3 被告ゲームの配信行為は不競法2条1項3号の不正競争に該当する

4 被告ゲームの配信行為は不法行為に該当するか

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■事案の概要

『本件は,「プロ野球ドリームナイン」というタイトルのゲーム(以下「原告ゲーム」という。)をソーシャルネットワーキングサービス上で提供・配信している原告が,別紙ゲーム目録記載のゲーム(以下「被告ゲーム」という。)を提供・配信している被告に対して,主位的に,被告が原告ゲームを複製ないし翻案して,自動公衆送信することによって,原告の有する著作権(複製権,翻案権,公衆送信権)を侵害している,また,原告ゲームの影像や構成は周知又は著名な商品等表示若しくは形態であるところ,被告ゲームの影像や構成等は,原告ゲームの影像や構成と同一又は類似しているから,不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号ないし3号の不正競争に該当すると主張して,被告に対し,著作権法112条1項又は不競法3条の規定に基づき,被告ゲームの配信(公衆送信,送信可能化)の差止めを求めるとともに,著作権侵害による不法行為に基づく損害賠償請求,又は不競法4条に基づく損害賠償請求として5595万1875円及びこれに対する平成23年9月21日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,並びに弁護士費用相当額として260万円及びこれに対する平成24年2月21日(同月14日付け訴えの変更申立書の送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,予備的に,被告が行う被告ゲームの提供・配信は,原告ゲームを提供・配信することによって生じる原告の営業活動上の利益を不法に侵害する一般不法行為に該当すると主張して,不法行為に基づく損害賠償請求として1716万4696円及びこれに対する平成24年2月21日(同月14日付け訴えの変更申立書の送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』(2頁以下)

<経緯>

H23.04 原告ゲーム配信開始
H23.08 被告ゲーム配信開始

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■判決内容

<争点>

1 被告ゲームの制作・配信行為は原告の著作権を侵害するか

被告ゲームの制作・配信行為が原告の著作権を侵害するかどうかについて、裁判所は著作物性や複製、翻案の意義に関して言及した上で、原告ゲームと被告ゲームの個別表現等における著作権侵害の成否を検討しています(72頁以下)。

(1)個別表現

「選手ガチャ」「強化」「試合(リーグ)」「選手カード」について、表現の内容を検討した上で、原被告ゲームを対比。共通する部分もあるものの、具体的表現に多くの相違点があり、結論として複製又は翻案に当たらないと判断しています。

(2)まとまった表現

個別表現の表示の一連のまとまった表現に関しても複製又は翻案に当たらないとしています。

(3)ゲーム全体

(a)各要素の画面遷移(103頁以下)

「選手ガチャ」などの各要素の画面の選択及び配列において共通する点があるとはいえ、それはありふれた表現であって創作性が乏しい表現であり、複製又は翻案に当たらないと判断しています。

(b)ゲーム全体(118頁以下)

ゲームのルールに関わる部分は、それ自体アイデアにすぎず具体的表現とはいえず、仮に何らかの表現と捉えた場合でも、
・利用者の便宜のための画面や操作手順からの制約
・実在のプロ野球を題材とするトレーディングカードゲームからの制約
から特に特徴的な点、独創性があると認められない限り創作性は認められないとして、結論としては被告ゲームは複製又は翻案に当たらないとしています。

結論として、原告ゲームと被告ゲームは個別の表現においても、表現全体においてもアイデアなど表現それ自体でない部分又はありふれた表現において共通するにすぎないとして、被告ゲームについて複製権侵害又は翻案権侵害ということはできず、また公衆送信権侵害したということもできないと判断しています。

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2 被告ゲームの配信行為は不競法2条1項1号又は2号の不正競争に該当するか

(1)原告ゲームの進行及びゲームの影像と同進行に伴う変化の態様

原告は、原告ゲームの進行及びゲームの影像と同進行に伴う変化の態様は周知の商品等表示性又は著名な商品等表示性が認められるべきであると主張しました(120頁以下)。
この点について裁判所は、ゲームの進行は抽象的な観念にすぎず、それを基礎として具体的な表示となるものとしてゲームの影像とその変化の態様が商品等表示性が認められることがあり得るとしても、ゲームの進行自体が独立して取引の対象とされて周知または著名な商品等表示として認めるに足りる的確な証拠はない、として、不正競争防止法2条1項1号及び同項2号所定の「商品等表示」には当たらないと判断しています。

(2)原告ゲームの影像とその変化の態様

次に、原告ゲームの影像とその変化の態様について、ゲームの影像が他に例を見ない独創的な特徴を有する構成であり、かつ、そのような特徴を備えた影像が特定のゲームの全過程にわたって繰り返されて長時間にわたって画面に表示されることなどにより当該影像が需要者の間に広く認識されているような場合には、当該影像が不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」に該当することがあり得る。また、当該影像が著名といえる場合には、当該影像が同項2号にいう「商品等表示」に該当することがあり得ると裁判所は説示。
しかし、原告ゲームは、利用者が参加して楽しむというインタラクティブ性を有していることに由来する制約、野球というスポーツのルールに由来する一定の制約、プロ野球界の実在の球団及び選手の画像等を利用することに由来する一定の制約、トレーディングカードゲームの形態やルールに由来する一定の制約がある。さらに、原告ゲームの「選手ガチャ」「スカウト」「強化」「オーダー」及び「試合」といった各個別の項目における表現及び遊び方についても類似のゲームが既に採用している表現及び遊び方を採用しているにすぎない。そのため、それらをどのように選択し組み合わせて配列・構成したとしても、それらの諸要素を利用したゲームであれば相当程度似通ったものとならざるを得ないというべきであり、原告ゲームは個々の要素を個別に判断しても、また、その配列・構成を全体的に観察しても他に例を見ない独創的な特徴を有するものであると認めることはできないと判断。
さらに、原告ゲームについては、その全過程にわたって繰り返されて長時間にわたって画面に表示されて原告ゲームの影像とその変化の態様が需要者の間に広く認識されていたとか、著名であったと認めるに足りる的確な証拠もないと判断。
結論として、原告ゲームは、その影像が周知または著名な商品等表示であると認めることはできず、2条1項1号、2号による原告の請求はいずれも理由がないとしています。

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3 被告ゲームの配信行為は不競法2条1項3号の不正競争に該当する


原告は、原告ゲームの「選手ガチャ」「スカウト」「強化」「オーダー」「試合」の五つの要素における各画面表示の展開の組み合わせ及び各表示画面内の表示を総合したものが不正競争防止法2条1項3号の「形態」に当たると主張しました(123頁以下)。
この点について裁判所は、
「不競法2条1項3号は,他人の労力,資金の成果を,他の形態をとる選択肢があるにもかかわらず,ことさら商品を完全に模倣して,その他人と競争する行為を不正競争行為として規制するものであるところ,不競法における「商品の形態」とは,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいうところ(同法2条4項),それは知覚によって認識することができる有形的な商品の具体的な形状をいうものであり,無形のアイデア,商品の機能及び商品の抽象的な形態の特徴は含まれないと解すべきである。」
と説示した上で、本件については、原告が主張する原告ゲームの「選手ガチャ」「スカウト」「強化」「オーダー」「試合」の五つの要素における各画面表示の展開の組み合わせといったものは、原告ゲームの遊び方、進行方法若しくはゲームのルールであって、それ自体無形のアイデア、商品の機能若しくは抽象的な形態の特徴にとどまるというべきであるとして、2条1項3号の「形態」に当たると認めることはできないと判断しています。

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4 被告ゲームの配信行為は不法行為に該当するか

原告は、被告が原告ゲームのゲームシステムを完全に模倣してフリーライドしているとして一般不法行為論(民法709条)を主張しました(124頁以下)。
裁判所は、北朝鮮映画事件最高裁判決(最高裁平成23.12.8平成21(受)602)に言及するなどした上で本件を検討。原告が主張するところの保護されるべき利益については、原告ゲームの個別的、全体的な表現若しくはゲームの遊び方、進行方法、ゲームのルールといったアイデアや抽象的な特徴に基づく利益と何ら異なるものではなく、それらの点が著作権法及び不競法によっては保護されないものであり、また、本件全証拠を精査しても被告が被告ゲームを配信し、収益を得る行為がことさら原告に損害を与えることを目的として行われたなどの自由競争の範囲を逸脱する行為であると認めるに足りる事実も窺われないと判断。
結論として、被告が被告ゲームを制作しこれを配信する行為には著作権法の規律の対象とする著作物の利用若しくは不競法の定める不正競争行為の規制による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情は認められないとして、原告の主張を認めていません。

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■コメント

原告ゲームはグリーのプラットフォームで配信されていて、被告ゲームはDeNAで配信されているので、グリーとDeNAといえば、釣りゲームに関する紛争を思い出しますので(「釣りゲータウン2」事件 知財高裁平成24.8.8平成24(ネ)10027著作権侵害差止等請求控訴事件)、代理戦争ではないにしても本件の提訴にあたってどの程度プラットフォーム側の意向が影響したのか関心があるところですが、原告ゲームは両社で配信されているため、これは深読みでしょうか。

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■参考サイト

原告ゲーム
ドリナイ公式サイト プロ野球ドリームナイン
被告ゲーム
大熱狂!!プロ野球カード《公式》株式会社gloops(グループス)

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2014年03月26日

パチンコ用呼出ランプ「デー太郎ランプシリーズ」プログラム事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

パチンコ用呼出ランプ「デー太郎ランプシリーズ」プログラム事件

東京地裁平成25.12.25平成22(ワ)42457損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀滋
裁判官      小川雅敏
裁判官      西村康夫

*裁判所サイト公表 2014.3.11
*キーワード:不正競争行為、営業秘密、プログラム著作物、複製、翻案

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■事案

退職従業員によるパチンコ・スロット用呼出ランプのプログラムや回路図の持ち出しの有無などが争点となった事案

原告:遊技場向け電子制御機器製造販売会社
被告:パチンコ・スロット用呼出ランプ等製造販売会社、原告元従業員ら

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、27条、不正競争防止法2条6項

1 被告らの不正競争行為の有無
2 原告ソースプログラムに係る著作権侵害の有無
3 雇用契約上の信義誠実義務違反又は不法行為に基づく損害賠償請求の成否及び損害額

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告会社及び原告の従業員であった被告甲,被告乙及び被告丙(以下,当該3名を併せて「被告元従業員ら」という。)に対し,パチンコ・スロット用の呼出ランプ「デー太郎ランプシリーズ」(以下,併せて「原告製品」という場合がある。)を開発・製造するための技術情報として,「デー太郎ランプX(エックス)」を機能させるために作成されたソースプログラム(以下「原告ソースプログラム」という。),「デー太郎ランプMZ(メガゼータ)」の電気設計図面(パチンコ用及びスロット用入出力装置電気回路図,代表灯中継器回路図を含む。以下「原告図面」という。)及び電子部品データベース(以下「原告データベース」という。また,原告ソースプログラム,原告図面及び原告データベースを併せて「原告技術情報」という。)を有しており,原告技術情報が営業秘密に当たると主張した上で,被告会社は,被告甲が指示し,被告乙が原告ソースプログラムを,被告丙が原告図面及び原告データベースを原告の承諾なく持ち出したことを知って,原告技術情報を取得したものであって,被告会社の製造・販売に係る別紙製品目録記載1(1)及び(2)の製品(以下,併せて「被告製品」といい,個別に特定する場合には「イ号製品」などという。)は,原告ソースプログラムの一部を改変して作成した別紙製品目録記載2(1)及び(2)のプログラム(以下,併せて「被告プログラム」といい,そのソースプログラム及びオブジェクトプログラムを「被告ソースプログラム」「被告オブジェクトプログラム」という。また,個別に特定する場合には「イ号プログラム」などという。)をインストールし,原告図面及び原告データベースを使用して開発されたものであるから,被告会社は,原告の営業秘密を不正取得行為が介在したことを知って取得・使用するとともに,原告ソースプログラムの著作権(複製権・翻案権)を侵害し,また,被告甲は,雇用契約上の信義誠実義務に違反して引抜行為を行ったなどと主張して,(1)被告会社に対し,(ア)不正競争防止法3条1項に基づく差止請求として,被告製品の製造,販売又は販売の申出の禁止(請求1項),(イ)同法3条2項に基づく廃棄請求として,被告製品の廃棄(請求2項),(2)被告会社に対し,(ア)著作権法112条1項に基づく差止請求として,被告プログラムの複製の禁止(請求3項),(イ)同法112条2項に基づく廃棄請求として,被告プログラムを記憶させた記憶媒体の廃棄(請求4項),(3)被告会社,被告甲及び被告乙に対し,原告ソースプログラムに係る損害賠償請求(不正競争防止法4条〔同法5条2項による推定〕又は不法行為〔著作権法114条2項による推定〕,更に被告乙につき債務不履行に基づく)として,4億9000万円の一部である5000万円(附帯請求として訴状送達の日の翌日である被告会社につき平成23年1月28日,被告甲及び被告乙につき同月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の連帯支払(請求5項),(4)被告会社,被告甲及び被告丙に対し,原告図面及び原告データベースに係る損害賠償請求(不正競争防止法4条〔同法5条2項による推定〕,更に被告丙につき債務不履行に基づく)として,4億9000万円の一部である5000万円(附帯請求として訴状送達の日の翌日である被告会社につき平成23年1月28日,被告甲及び被告丙につき同月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の連帯支払(請求6項),(5)被告甲に対し,雇用契約上の信義誠実義務違反又は不法行為に基づく損害賠償請求として,4億円の一部である1億円(附帯請求として訴状送達の日の翌日である平成23年1月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払(請求7項)を求めた事案である。』(2頁以下)

<経緯>

H20 被告甲が原告を退職後、被告会社を設立
    被告乙、丙が原告を退職後、被告会社で就業
H21 被告がイ号製品販売

原告製品:パチンコ・スロット用呼出ランプ「デー太郎ランプシリーズ」

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■判決内容

<争点>

1 被告らの不正競争行為の有無

(1)原告技術情報が営業秘密に当たるか

まず、原告ソースプログラム及び原告図面が営業秘密に該当するかどうかが検討されています(23頁以下)。
原告は、原告技術情報については出入りが制限された事業所内で守秘義務を負う技術者等の特定の従業員のみがアクセス可能な状態で保管されており、また、従業員は原告技術情報を含む技術上の情報が秘匿性を有する性質のものであることを認識していたなどと主張しました。
しかし、裁判所は、原告ソースプログラム及び原告図面について、秘密として管理されていたことを認めることは困難であるとして、秘密管理性を否定。原告の主張を認めていません。
また、原告データベースについては、その内容の有用性及び非公知性が具体的に主張、立証されていないとして、原告データベースの営業秘密性は認められていません。

(2)被告らが原告技術情報を不正に取得したか

念のため、として、被告らが原告技術情報を不正に取得したかについても検討されています(25頁以下)。
この点について、裁判所は、被告乙のプログラマとしての経験年数や原告製品に係るプログラムの開発年数を考慮した上で、本件12桁の文字列が一致することにより直ちに被告乙の持ち出しが推認されるものではないなどとして、結論としては、被告乙が原告ソースプログラムを持ち出し、使用したことを認めることはできないと判断しています。
また、被告丙が原告図面を持ち出したかについては、回路図の対比においてランニング入出力部、代表灯出力部、書き込み回路は類似しており、外部装置であるパチンコ用及びスロット用入出力装置、代表灯中継器も同様であるものの、上記以外の図面は相違する点が多い上、被告丙は、本人尋問において回路や部品を記憶していた旨供述しており、丙の原告における担当業務に照らすと被告丙の供述を信用できないものということはできず、上記図面の類似点があるとしても直ちに被告丙が回路図を持ち出し、使用したと認めることができないと裁判所は判断。被告丙による原告図面の持ち出し、使用についても否定されています。

結論として、被告らによる不正競争行為性は否定されています。

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2 原告ソースプログラムに係る著作権侵害の有無

原告は、原告ソースプログラムのLED発光パターンに関わる本件12桁の文字列について創作性を主張しましたが、このような文字列を組み込むことはアイデアであると解されるとして、プログラム著作物としての創作的な表現とはいい難いと裁判所は判断。また、原告はリモコンの制御の時間判定の定数やポート制御の処理部分の創作性を原告は主張しましたが、定数については創作性が認められず、また、ポート制御の処理部分についても、創作性がないか、仮に認められるとしても原告と被告のプログラムの対応部分を比較すると、表現方法が異なるものであるとして、結論として複製権侵害及び翻案権侵害を裁判所は認めていません(32頁以下)。

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3 雇用契約上の信義誠実義務違反又は不法行為に基づく損害賠償請求の成否及び損害額

原告は、被告甲が組織的かつ計画的な引き抜きを行ったなどと主張しました(35頁以下)。
しかし、裁判所は、被告甲が原告を退職後、6名が原告を退職し、被告会社に在籍しているものの、上記6名の退職が被告甲の勧誘に端を発したものであったとしても被告乙及び被告丙は、本人尋問において、原告退職の理由として待遇面を挙げており(他の4名は転職理由不明)、その勧誘の目的が積極的な加害目的であったとは認められず、その勧誘の方法も社会的相当性を欠くものであることなどを認めるに足りる証拠はないとして、被告甲の勧誘行為に違法性はないと判断。結論として、原告の雇用契約上の信義誠実義務違反又は不法行為に基づく損害賠償請求は認められていません。

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■コメント

遊技機周辺機器の開発製造で競合する他社へ1割弱の従業員が移籍したという事案で、退職従業員による引き抜きや営業秘密の持ち出しが争点となりました。原告にとっては、技術畑の人員を中心に移籍がされてしまい、開発業務において痛手だったのかもしれません。
なお、被告会社サイトを拝見しますと、被告会社製品の液晶画面のデザイン性、技術力の高さが見てとれます。

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■参考サイト

原告製品情報
デー太郎ランプ11

被告製品群
製品情報

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2014年03月04日

祈願経文返還請求事件−著作権 損害賠償等請求本訴事件等判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

祈願経文返還請求事件

東京地裁平成25.12.13平成24(ワ)24933損害賠償等請求本訴事件等PDF
平成25(ワ)16293損害賠償請求反訴事件

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀滋
裁判官      西村康夫
裁判官      森川さつき

*裁判所サイト公表 2014.2.12
*キーワード:経文、著作物性、口述権、公衆、頒布、所有権

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■事案

祈願経文の著作物性などが争点となった事案

原告(反訴被告):宗教法人
被告(反訴原告):原告元信者ら

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■結論

本訴一部認容、反訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、10条1項1号、24条、民法719条

1 被告らに対する本件経文原本返還請求の成否
2 本件経文の著作物性
3 被告Bに対する本件経文(1)ないし(3)の口述差止請求及び本件経文(1)ないし(3)の複製物の廃棄請求の可否
4 被告Aに対する本件経文(4)ないし(6)の複製・頒布の差止請求及び本件経文(4)ないし(6)の複製物の廃棄請求の可否
5 被告らによる共同不法行為の成否
6 損害額
7 反訴請求の成否

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■事案の概要

『1 本訴事件
本件は,宗教法人である原告が,
(1)別紙動産目録記載の祈願経文(以下,同目録記載(1)ないし(6)の標題毎に,それぞれ「本件経文原本(1)」などといい,これらを併せて「本件経文原本」という。)の所有権に基づき,被告Bにつき本件経文原本(1)ないし(3)の,被告Aにつき本件経文原本(4)ないし(6)の各返還を求め,
(2)本件祈願経文原本に記載された祈願経文であって,別紙動産目録記載(1)ないし(6)の標題を有するもの(以下,同目録記載(1)ないし(6)の標題毎に,それぞれ「本件経文(1)」などといい,これらを併せて「本件経文」という。)の著作権(複製権,口述権)に基づき,(1)被告Bにつき本件経文(1)ないし(3)の口述の差止め(著作権法112条1項)及び同経文の複製物の廃棄(同条2項)を,(2)被告Aにつき本件経文(4)ないし(6)の複製及び上記複製によって作成された物の頒布(同法113条1項2号)の差止め(同法112条1項)並びに同経文の複製物の廃棄(同条2項)を各求め,
さらに,
(3)被告らが,共謀して,原告の法具及び袈裟を使用し,本件経文を読誦して祈願模倣行為を執り行うとともに,上記祈願模倣行為が原告の許可の下でなされたものである旨の発言を行ったこと等は,原告の名誉・信用を毀損するものであり,かつ,本件経文に係る原告の著作権(口述権)及び上記法具等に係る原告の所有権を侵害するものであって,被告らの共同不法行為(民法719条前段)を構成すると主張し,上記不法行為に基づく損害3300万円(名誉毀損等による無形損害等3000万円及び弁護士費用300万円)(附帯請求として,被告に対する各訴状送達日の翌日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求める事案である。
2 反訴事件
本件は,被告らが,本訴事件は,原告が,被告らに対する報復のために提起したものであり,本来であればおよそ法律問題となり得ない事実につき,成立し得ない法律構成で不当な主張をするものであるから,被告らに対する不法行為を構成すると主張し,上記不法行為に基づく損害賠償として,被告ら各自につき1000万円(附帯請求として,反訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求める事案である。』(3頁以下)

<経緯>

H22 被告Aらがカウンセラー検定協会設立
H23 協会名称を心検に変更
H24 被告らが除名処分
H24 原告が本訴提起、Eについては和解成立

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■判決内容

<争点>

1 被告らに対する本件経文原本返還請求の成否

(1)被告Bに対する本件経文原本(1)ないし(3)の返還請求の成否

裁判所は、被告Bが原告の所有に係る本件経文原本(1)ないし(3)を保有していたとは認められないとして、被告Bに対する本件経文原本(1)ないし(3)の返還請求を否定しています。(20頁以下)。

(2)被告Aに対する本件経文原本(4)ないし(6)の返還請求の成否

被告Aが保有していた本件経文(4)ないし(6)の記載物が原告の所有に係るものであると認められず、かつ、被告Aが上記経文を現在も保有している点についても認められないとして、被告Aに対する本件経文原本(4)ないし(6)の返還請求は認められないと裁判所は判断しています。

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2 本件経文の著作物性

本件経文の著作物性(著作権法2条1項1号)について、原告代表役員が天上界により降ろされた聖なる祈りの言葉として創作したもので、原告における宗教的儀式の中で読誦して用いられるものであるとされる本件経文に関して、裁判所は、本件経文の上記内容に照らし、本件経文には原告代表役員の個性が表現されているものといえるのであって、その思想又は感情を言語によって創作的に表現したものであると認められると判断。本件経文の著作物性を肯定しています(23頁以下)。

なお、原告は、原告代表役員から本件経文の著作権の譲渡を受けたものと認められ、原告は本件経文に係る著作権(口述権、複製権)を有するものと認定されています。

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3 被告Bに対する本件経文(1)ないし(3)の口述差止請求及び本件経文(1)ないし(3)の複製物の廃棄請求の可否

被告Bに対する本件経文(1)ないし(3)の口述差止請求及び本件経文(1)ないし(3)の複製物の廃棄請求の可否について、裁判所は、まず口述権における「公衆」の意義について言及。
「著作者は,その言語の著作物を公に口述する権利を専有するところ(著作権法24条),「公に」とは,その著作物を,公衆に直接見せ又は聞かせることを目的とすることをいい(同法22条),「公衆」には,不特定の者のほか,特定かつ多数の者が含まれる(同法2条5項)。そして,当該著作物の利用が公衆に対するものであるか否かは,事前の人的結合関係の強弱に加え,著作物の種類・性質や利用態様等も考慮し,社会通念に従って判断するのが相当である」旨説示しています。

そして、被告Bが「心検」の受講者等のうち、Eの勧めを受けて被告Bのもとを訪れた者の一部に対して本件経文(1)ないし(3)を読み上げたことがあり、また、本件経文(1)ないし(3)を一人で又は被告Cとともに読み上げたことがあるが、上記行為はいずれも、言語の著作物である本件経文(1)ないし(3)を口頭で伝達するものとして、「口述」(著作権法2条1項18号)に該当すると判断。
しかし、上記口述のうち、被告Bのみ又は被告Cと2人による読上げについては、自宅内において被告Bのみで又はその妻である被告Cと二人で行われたものであるから、上記口述が公衆に直接聞かせることを目的として行われたものとは認められないと認定。
上記読上げが「公に」なされたものと認められない以上、上記読上げが本件経文(1)ないし(3)に係る原告の口述権を侵害するものとは認められないとしています。
また、被告Bが同被告のもとを訪れた者に対して本件経文(1)ないし(3)を読み上げた点についても、被告Bが祈願を行った人数は5、6名にとどまるとみるべきであって、被告Bが多数人に対して祈願を行い、本件経文(1)ないし(3)を読み上げたものと認めることはできないと判断。原告の口述権侵害性を否定しています(26頁以下)。

結論として、被告Bについて本件経文(1)ないし(3)の口述権侵害は成立せず、被告Bに対する本件経文(1)ないし(3)の口述の差止請求及び専ら口述権侵害行為に供された器具としての本件経文(1)ないし(3)の複製物の廃棄請求はいずれも認められていません。

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4 被告Aに対する本件経文(4)ないし(6)の複製・頒布の差止請求及び本件経文(4)ないし(6)の複製物の廃棄請求の可否

裁判所は、被告Aが、本件経文(4)ないし(6)の複製物を頒布(著作権法2条1項19号)、すなわち公衆に譲渡したものとは認められず、また、原告の祈願経文を全て廃棄したものと認められるとした上で、被告Aが今後、本件経文(4)ないし(6)を複製するおそれがあるものとは認められないし、また、被告Aが廃棄の対象となる本件経文(4)ないし(6)の複製物を所持しているものとも認められないとして、被告Aに対する本件経文(4)ないし(6)の複製及び頒布の差止め並びに本件経文(4)ないし(6)の複製物の廃棄はいずれも認められないと判断しています(31頁以下)。

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5 被告らによる共同不法行為の成否

裁判所は、原告の主張する不法行為のうち、宗教法人としての本質の侵害、名誉・信用毀損、口述権侵害を理由とする部分については不法行為の成立を否定。もっとも、Eが原告から無断で持ち出した本件法具等について、被告B及び被告CはEが本件法具等を権原なく持ち出したことを認識し又は認識し得た上で共同して本件法具等を占有していたとして、本件法具等の占有につき、被告B及び被告Cに所有権侵害の共同不法行為が成立すると判断しています(32頁以下)。

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6 損害額

被告B及び被告Cの本件法具等の所有権侵害の共同不法行為による損害について6万円、弁護士費用相当額1万円の合計7万円を損害額として認定しています(34頁以下)。

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7 反訴請求の成否

被告らは、本訴事件は原告が被告らに対する報復のために提起したものであり、本来であればおよそ法律問題となり得ない事実につき成立し得ない法律構成で不当な主張をするものであるから、被告らに対する不法行為を構成すると反訴で主張しました(37頁以下)。
しかし、裁判所は、本訴請求について一部認容する部分があること等を考慮の上、原告が本訴請求の原因として主張する事実が事実的、法律的根拠を欠くものとはいえず、本件訴訟の提起が裁判制度の趣旨に反し著しく相当性を欠くものと評価することはできないとして、被告の主張を認めていません。

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■コメント

経文の著作物性が正面から争点となり、また、その経文を読誦して祈願模倣行為を行うことが口述権侵害にあたるかどうかなどが争われました。
なお、原告宗教法人が関わった最近の別件事件としては、「霊言」DVD複製頒布事件(後掲 東京地裁平成24.9.28平成23(ワ)9722損害賠償等請求事件)があります。

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■過去のブログ記事

「霊言」DVD複製頒布事件

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■参考サイト

除名処分
混ぜるな危険! ブログ・サンポール 「『心検(こころけん)』に関する流れ」(2012-05-11)

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2014年02月26日

毎日オークションカタログ事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

毎日オークションカタログ事件

東京地裁平成25.12.20平成24(ワ)268損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀滋
裁判官      小川雅敏
裁判官      西村康夫

*裁判所サイト公表 2014.2.10
*キーワード:準拠法、当事者適格、美術カタログ、オークション、複製権、引用、小冊子、権利濫用

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■事案

オークション用カタログに掲載された美術作品画像の複製権侵害性が争点となった事案

原告:美術著作権管理団体(フランス法人)、作家相続人(スイス)
被告:オークション会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法32条、47条、47条の2、114条3項、法適用通則法7条、13条、民法1条3項

1 原告X1の当事者適格の有無
2 著作権移転の有無
3 被告の複製権侵害の態様と原告らの損害額
4 利用許諾の有無
5 本件カタログが展示に伴う小冊子に当たるか
6 本件カタログにおいて美術作品を複製したことが適法引用に当たるか
7 原告らの請求が権利濫用に当たるか

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■事案の概要

『本件は,(1)フランス共和国法人である原告協会が,その会員(著作者又は著作権承継者)から美術作品(以下「会員作品」という。)の著作権の移転を受け,著作権者として著作権を管理し,(2)原告X1が,亡P(以下単に「P」という。)の美術作品(以下「P作品」という。)の著作権について,フランス民法1873条の6に基づく不分割共同財産の管理者であって,訴訟当事者として裁判上において,同財産を代表する権限を有すると主張した上で,原告らが,被告に対し,被告は,被告主催の「毎日オークション」という名称のオークション(以下「本件オークション」という。)のために被告が作成したオークション用のカタログ(以下「本件カタログ」という。)に,原告らの利用許諾を得ることなく,会員作品及びP作品の写真を掲載しているから,原告らの著作権(複製権)を侵害しているなどと主張して,不法行為に基づく損害賠償請求(又は不当利得に基づく利得金返還請求)として,(ア)原告協会につき1億5564万1860円の一部請求として8650万円(附帯請求として最終の侵害行為の日の後である平成22年12月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払,(イ)原告X1につき1696万1560円の一部請求として850万円(附帯請求として最終の侵害行為の日の後である同年6月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求めた事案である。』(2頁)

<経緯>

H22 原告協会と被告が東京地裁平成22.9.21平成21(ワ)232について和解

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■判決内容

<争点>

1 原告X1の当事者適格の有無

亡Pの相続人のひとりでPの著作権の管理者(代表者)ある原告X1の当事者適格(法定訴訟担当)について、裁判所は、被担当者と担当者の実体的法律関係に適用される準拠法により訴訟担当権限の有無を判断するとした上で、原告X1の権限は相続人間の合意によるもので実体的な法律関係から派生し、当該合意は法律行為に基づくことから、法の適用に関する通則法7条によりフランス法により判断するのが相当であると説示。結論として、原告X1は訴訟上の当事者として、本件訴訟について当事者適格を有するとされています(44頁以下)。

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2 著作権移転の有無

(1)準拠法について

原告協会が会員の美術作品の著作権を管理している点に関して、著作権の移転について適用されるべき準拠法の決定については、裁判所は、著作権移転の原因関係である契約等の債権行為に適用されるべき準拠法は通則法7条によりフランス法によると判断。
次に、著作権の物権類似の支配関係の変動について適用されるべき準拠法については、通則法13条により我が国の法令によると判断しています。(45頁以下)。

(2)著作権移転契約について

原告協会と会員との著作権移転に関する契約について、原告協会の会員は、原告協会に加入することによりその著作権が移転することを同意していたものと認められるとして、結論として原告協会に著作権の移転があったと認められるとしています(46頁以下)。

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3 被告の複製権侵害の態様と原告らの損害額

(1)被告の複製権侵害の態様について

裁判所は、著作権法114条3項の損害額を算定するについては、一般社団法人美術著作権協会(SPDA)の使用料規程に基づくのが相当であると判断、複製の態様の判断が損害額の算定と結び付くものであることに鑑み、複製の態様の認定においてもSPDAの基準に基づいて複製の態様を認定するのが相当であると説示。SPDAの色及びサイズの判断基準を検討した上で会員作品及びP作品を検討。著作権法47条の2の適用があると認められる複製以外は複製権侵害性が肯定されています(48頁以下)。

(2)原告らの損害額について

結論として、以下の損害額が算定されています(67頁以下)。

・使用料相当損害額
原告協会 合計3724万4350円
原告X1 合計 401万7000円

・弁護士費用相当額
原告協会 370万円
原告X1  40万円

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4 利用許諾の有無

被告は、ABの作品の著作権管理を行う株式会社ギャルリーためながから許諾を受けてAB作品を本件カタログに複製していたと主張しましたが、裁判所は認めていません(70頁)。

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5 本件カタログが展示に伴う小冊子に当たるか

本件カタログへの著作権法47条の適否について、裁判所は、「小冊子」は「観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする」ものであるとされていることからすれば、観覧する者であるか否かにかかわらず多数人に配布されるものは「小冊子」に当たらないと解するのが相当であると説示。その上で、本件カタログは、本件オークションや下見会の参加にかかわらず被告の会員に配布されるものであるから、著作権法47条にいう「小冊子」には当たるとは認められないと判断しています(70頁以下)。

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6 本件カタログにおいて美術作品を複製したことが適法引用に当たるか

被告は、本件カタログにおいて美術作品を複製したことが適法引用(著作権法32条1項)に当たる旨主張しました。
この点について裁判所は、他人の著作物を引用して利用することが許されるためには、引用して利用する方法や態様が報道、批評、研究等の引用するための各目的との関係で社会通念に照らして合理的な範囲内のものであり、かつ、引用して利用することが公正な慣行に合致することが必要であると説示。
その上で、本件カタログには、美術作品の写真に合わせてロット番号、作家名、作品名、予想落札価格、作品の情報等が掲載されるが、実際の本件カタログをみても写真の大きさの方が上記情報等の記載の大きさを上回るものが多く、上記の情報等に眼目が置かれているとは解し難い。また、本件カタログの配布とは別に、出品された美術作品を確認できる下見会が行われていることなどに照らすと上記の情報等と合わせて美術作品の写真を掲載する必然性は見出せないと判断。
本件カタログにおいて美術作品を複製するという利用の方法や態様は、本件オークションにおける売買という目的との関係で社会通念に照らして合理的な範囲内のものであるとは認められない。また、公正な慣行に合致することを肯定できる事情も認められないとして、被告の主張を認めていません。(71頁以下)。

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7 原告らの請求が権利濫用に当たるか

被告は、本件訴訟における原告の著作権の行使は著作権法改正前にオークションのために行われた複製について、法律が明確でなかったことを幸いとして、譲渡に伴う美術の著作物の複製が法律上合法であると確認された今に至って損害賠償を請求するもので、著作権法47条の2が新設された趣旨からすると著作権の濫用に該当するなどと主張しました。
しかし、裁判所は、被告の主張を認めていません(72頁以下)。

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■コメント

原告協会と被告との間で別の複数の作家については平成22年当時、和解により使用料相当額を支払うことが合意されていましたが、その他の作家については、協議を行うことのみの合意に留まっていました。
なお、オークションカタログへの作品画像の掲載を巡る最近の紛争としては、村上隆さんほかの作家さんの事案があります。控訴審で和解しましたが(知財高裁平成21(ネ)10079(訴訟上の和解))、美術作家の経済的利益を保護する追及権を先取りした和解内容として大家重夫先生がその意義を指摘されておいでです(後掲文献232頁以下参照)。

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■過去のブログ記事

東京地裁平成21.11.26平成21(ワ)31480損害賠償請求事件
オークションカタログ事件

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■参考文献

福王寺一彦、大家重夫『美術作家の著作権 その現状と展望』(2014)231頁以下

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■参考判例

・藤田嗣治事件
東京高裁昭和60.10.17昭和59(ネ)2293
・レオナール・フジタ・カタログ事件
東京地裁平成1.10.6昭和62(ワ)1744
・ダリ展朝日新聞カタログ事件
東京地裁平成9.9.5平成3(ワ)3682著作権侵害差止等請求事件(判時1621号130頁)
・バーンズコレクション事件
東京地裁平成10.2.20平成6(ワ)18591
・オークションカタログ事件
東京地裁平成21.11.26平成21(ワ)31480損害賠償請求事件
・美術鑑定書事件(控訴審)
知財高裁平成22.10.13平成22(ネ)10052損害賠償請求控訴事件(記事)

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2014年02月24日

船舶情報管理システム事件(別訴)−著作権 著作権確認請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

船舶情報管理システム事件(別訴)

東京地裁平成25.12.11平成24(ワ)33631著作権確認請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀滋
裁判官      小川雅敏
裁判官      西村康夫

*裁判所サイト公表 2014.2.4
*キーワード:訴訟物、既判力、信義則

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■事案

船舶情報管理システムの著作権確認の訴えについて実質的には前訴の蒸し返しとして却下された事案

原告:被告会社元従業員
被告:船舶用塗料製造販売会社、船舶塗装情報管理システム開発運用会社、塗料製造販売会社

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■結論

請求却下

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■争点

条文 民事訴訟法114条、115条

1 訴訟物の特定について
2 前訴確定判決の既判力について
3 被告中国塗料技研、被告大竹明新化学に対する訴えの適法性について
4 被告中国塗料に対する訴えの適法性について

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告らに対し,プログラムの著作物である船舶情報管理システムの著作権確認を求める訴訟である。』

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■判決内容

<争点>

1 訴訟物の特定について

原告は、請求の趣旨として「「船舶情報管理システム」に対する著作権」と記載していましたが、本訴において原告が被告らに著作権の確認を求める「船舶情報管理システム」とは、前訴において被告中国塗料に著作権の確認を求めていた別紙著作権目録記載の船舶情報管理システム(本件システム)を指していることが明らかであるとして、本訴の訴訟物は、本件システムの著作権として特定している、と裁判所は認めています(9頁以下)。

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2 前訴確定判決の既判力について

原告と被告中国塗料との間において、前訴の事実審の口頭弁論終結時である平成22年12月22日時点で原告が本件システムの著作権を有しないことは既判力をもって確定していると裁判所は認定。
原告は、信友又は被告中国塗料技研の「発意」は、原告が信友の取締役又は被告中国塗料技研の代表取締役として行ったもので原告と信友・被告中国塗料技研間の自己取引に当たるところ、前訴口頭弁論終結後に被告中国塗料技研は自己取引の承認を拒絶したから発意は無効であることが確定した、著作権法15条2項は憲法29条1項に違反するなどと主張しましたが、これらの主張はいずれも前訴口頭弁論終結前に主張することができた主張であるとして、被告中国塗料との関係では前訴確定判決の既判力に抵触し許されないと判断されています(10頁)。

   --------------------

3 被告中国塗料技研、被告大竹明新化学に対する訴えの適法性について

被告中国塗料技研、被告大竹明新化学に対する訴えの適法性について、裁判所は、被告中国塗料技研、被告大竹明新化学は、前訴の当事者でもその承継人等でもないことから前訴確定判決の既判力が及ぶわけではないと説示(民事訴訟法115条)。
しかし、前訴と訴訟物や当事者が異なるなどして前訴判決の既判力が及ばないとしても、後訴が実質的に見て紛争の蒸し返しといえるときは、後訴の提起は信義則に照らして許されないと解するのが相当であると示した上で、本件について検討。
前訴における原告の請求のうち著作権確認請求の訴訟物は、本訴の訴訟物と同一である。また、被告中国塗料技研は被告中国塗料の100パーセント子会社であり、被告大竹明新化学も被告中国塗料の子会社であって、被告中国塗料と利害関係は共通している。 さらに、本件システムは原告が被告中国塗料技研あるいは信友に在籍中に作成したものというのであるから、原告は、前訴において被告中国塗料技研及び被告大竹明新化学に対しても著作権確認請求を求めること、前訴において本訴と同様の主張をすることに何の支障もなかった。
そして、被告らとしては前訴確定判決の確定により本件システムの著作権の帰属に関する原告との紛争は解決されたものと信じても無理はなく、本訴において本件システムの著作権の帰属を再び争うことは被告らの地位を不当に長く不安定な状態におくものといえる。
以上の点から、本訴は、実質的には前訴の蒸し返しというべきであり、本訴の提起は信義則に照らして許されないものと解するのが相当であると裁判所は判断しています(10頁以下)。

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4 被告中国塗料に対する訴えの適法性について

被告中国塗料に対する関係においても本訴の提起は信義則に照らし許されないものと解するのが相当であると裁判所は判断しています(11頁)。

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■コメント

船舶情報管理システムに関する著作権確認の訴えについて、前訴では対象としなかった被告子会社を本訴で被告として加えましたが、実質的には前訴の蒸し返しとして却下されました。

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■前訴に関する過去のブログ記事

大阪地裁平成20.7.22平成19(ワ)11502著作権確認等請求事件
船舶情報管理システム事件
知財高裁平成23.3.15平成20(ネ)10064著作権確認等請求控訴事件
船舶情報管理システム事件(控訴審)

*上告不受理 最高裁平成24年2月28日決定平成23年(オ)第1066号、同23年(受)第1203号

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■追記(2014.11.05/2016.03.08)

東京地裁平成26.10.15平成25(ワ)9989著作物使用差止等請求事件
別件訴訟

知財高裁平成28.2.24平成26(ネ)10117著作物使用差止等請求控訴事件
控訴審
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2014年02月21日

簿記検定試験受験誌切り離し式暗記カード模倣事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

簿記検定試験受験誌切り離し式暗記カード模倣事件

東京地裁平成25.11.29平成24(ワ)18701損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀 滋
裁判官      小川雅敏
裁判官      西村康夫

*裁判所サイト公表 2014.1.31
*キーワード:引き抜き行為、編集著作物、商品等表示性

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■事案

従業員の引き抜き行為の違法性や簿記検定試験受験誌に添付された切り離し式暗記カードなどの模倣性が争点となった事案

原告:資格取得教育事業社
被告:資格取得教育事業社、被告会社出版事業部事業部長

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法12条1項、不正競争防止法2条1項1号

1 不法行為請求(1)の成否及び損害額
2 営業権に基づく差止請求の成否
3 不法行為請求(2)の成否及び損害額
4 不正競争防止法3条1項に基づく差止請求の成否
5 著作権法112条1項に基づく差止請求の成否

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■事案の概要

『本件は,原告が,(1)被告らの背信的な引き抜き行為があったなどと主張して,〈ア〉被告らに対し,不法行為に基づく損害賠償請求(以下「不法行為請求(1)」という。)として,7137万4238円(附帯請求として訴状送達の日の翌日である平成24年7月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払(請求1項のうちの一部),〈イ〉営業権に基づく差止請求として,原告従業員及び原告と業務委託契約をしている第三者との接触等の禁止(請求2項)を求めるとともに,(2)被告会社の簿記検定試験受験誌において,原告発行の簿記検定試験受験誌が切り離し式暗記カードを付けていることなどを模倣しているから,原告の商品等表示と被告の商品等表示が同一又は類似であり,原告の編集著作物の侵害であるなどと主張して,〈ア〉被告らに対し,不法行為に基づく損害賠償請求(以下「不法行為請求(2)」という。)として,458万9500円(附帯請求として上記(1)〈ア〉と同様の遅延損害金)の支払(請求1項のうちの一部)を求めるとともに,〈イ〉被告会社に対し,不正競争防止法3条1項又は著作権法112条1項に基づく差止請求として,被告会社発行の簿記検定試験受験誌に切り離し式の暗記カードを添付する等して出版,発売等を行うことの禁止を求めた事案である。』(2頁)

<経緯>

H19 被告Xが原告に入社
H23 被告Xが原告を退社
    被告Xが被告会社入社、原告元従業員4名が被告会社入社

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■判決内容

<争点>

1 不法行為請求(1)の成否及び損害額

1.従業員の引き抜きについて

被告Xが原告従業員らに対して退職して被告会社に就職することを勧誘した行為について、裁判所は、実際に被告会社に入社した4名に関してはそれぞれの退職の理由によるもので被告らの引き抜き行為が推認されるものではないと判断。また、その他の従業員に対する勧誘行為についても1回限りのものである等から社会的相当性を逸脱した態様ではないとして不法行為性を否定しています(21頁以下)。

2.業務委託契約の解消の求めについて

被告会社が業者との間で書店向け販売促進業務を委託していた契約に関連して、被告XがJ及びKに対して原告と業者との間の同種の契約の解消を求めた点について、裁判所は、原告と被告会社が簿記検定試験受験誌等の分野において競合することを考えれば、業者は被告会社に対する善管注意義務を全うできないおそれがあったというべきであり、被告らが業者に対して原告との業務委託契約の解消を求めたことが社会的相当性を欠くとはいい難いとして、違法とは認められないと判断しています
(25頁以下)。

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2 営業権に基づく差止請求の成否

被告らが違法な引き抜き等を行ったとは認められないことから、営業権に基づく差止請求は理由がないと判断されています(26頁)。

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3 不法行為請求(2)の成否及び損害額

1.不正競争防止法2条1項1号該当性

原告は暗記カードをつけてきた点など原告受験誌の商品形態の独自性から商品形態が不正競争防止法2条1項1号の商品等表示として保護される旨主張しました(26頁以下)。
しかし、裁判所は、商品形態が同号で保護される場合について、「ある商品の形態が他の商品に比べて顕著な特徴を有し,かつ,それが長期間にわたり特定の者の商品に排他的に使用され,又は短期間であっても強力な宣伝広告等により大量に販売されることにより,その形態が特定の者の商品であることを示す表示であると需要者の間で広く認識されるようになった場合には,商品の形態が同号により保護されることがあるものと解される」と示した上で、本件については切り離し式という機能に着目するものであって具体的な暗記カードの形態について主張するものではなく、このような暗記カードを受験誌である原告商品の形態と認めることは困難であるなどとして、商品等表示性を否定。2条1項1号該当性を否定しています。

2.編集著作物の侵害について

原告は、1切り離し式の暗記カード、2予想イベントとの連動、3本扉頁を省略する編集形態、4表紙の裏面部位にダイレクトに印字する編集形態を選択したとして、これらの4点において編集著作物である旨主張しました(29頁以下)。
この点について裁判所は、編集著作物(著作権法12条1項)の意義について、「素材の選択・配列という知的創作活動の成果である具体的表現を保護するものであり,素材及びこれを選択・配列した結果である実在の編集物を離れて,抽象的な選択・配列方法を保護するものではないと解するのが相当である」と示した上で、2、3については抽象的な選択あるいはアイデアを主張するにすぎず、1についても被告第130回受験誌には暗記カードが存在しておらず、原告が編集著作権の侵害を主張する被告第131回受験誌の問題の選択、配列の内容は原告第130回受験誌及び原告第131回受験誌の内容とは全く異なっており、原告の主張する切り離し式の暗記カードの編集著作物性の有無にかかわらず侵害が成立しない。さらに4についても表紙の裏面部位にダイレクトに印字する編集形態については素材の選択、配列を主張しているものとは解されないとして編集著作物の主張として主張自体失当であるなどと判断。被告受験誌の編集著作物侵害性を否定しています。

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4 不正競争防止法3条1項に基づく差止請求の成否

被告受験誌が不正競争防止法2条1項1号に該当するとは認められず、不正競争防止法3条1項に基づく差止請求は理由がないと判断されています(30頁)。

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5 著作権法112条1項に基づく差止請求の成否

被告受験誌が原告の編集著作物を侵害するとは認められず、著作権法112条1項に基づく差止請求は理由がないと判断されています(30頁以下)。

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■コメント

幹部社員が退職時に他の従業員への転職引き抜き行為をした点に端を発した紛争となります。
受験誌に付された切離し式暗記カードの編集著作物性が争点となりましたが、正面から判断されることなく侵害性が否定される結果となっています。

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2014年02月11日

漫画「彼女の告白」映画翻案事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

漫画「彼女の告白」映画翻案事件

東京地裁平成25.11.22平成25(ワ)13598著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀 滋
裁判官      小川雅敏
裁判官      森川さつき

*裁判所サイト公表 2014.1.31
*キーワード:漫画、映画、翻案、上映、同一性保持権

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■事案

漫画原作を無許諾で映画化したかどうかが争点となった事案

原告:漫画家
被告:映画プロデューサー

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■結論

請求一部認容(確定)

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■争点

条文 著作権法27条、22条の2、20条、112条、115条

1 本件映画が本件漫画を翻案(映画化)したものであるか
2 著作権法112条に基づく差止・廃棄請求の成否
3 不法行為に基づく損害賠償請求の成否及び損害額
4 著作権法115条に基づく名誉回復等の措置請求の成否

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■事案の概要

『本件は,漫画家である原告が,映画プロデューサー,映画監督等として活動している被告に対し,被告の製作・監督に係る短編映画「帰省」(以下「本件映画」という。)について,原告の許諾なく,原告の短編漫画である「彼女の告白」(以下「本件漫画」という。)を映画化し,映画祭において上映したなどと主張して,(1)著作権(二次的著作物に係る上映権)侵害のおそれを理由とする著作権法112条に基づく差止・廃棄請求として,本件映画の上映禁止,本件映画が記録された映画フィルム及び電磁的記録媒体の廃棄,(2)著作権(翻案権)及び著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求として,118万8000円(許諾料相当額8万円,慰謝料100万円及び弁護士費用10万8000円の合計額。また,附帯請求として訴状送達の日の翌日である平成25年6月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を含む。)の支払,(3)著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権)侵害を理由とする同法115条に基づく名誉回復等の措置請求として,被告の運営するウェブページ等において,別紙謝罪文目録記載の文章の掲載を求めた事案である。』(2頁)

本件漫画:短編漫画「彼女の告白」
本件映画:短編映画「帰省」

<経緯>

H14 本件漫画が講談社「週刊モーニング」掲載
H15 講談社イブニングKC「週刊石川雅之」収録
H22 被告が本件映画を製作、映画祭に出展
H24 原告が和解案提案。被告が示談書提案

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■判決内容

<争点>

1 本件映画が本件漫画を翻案(映画化)したものであるか

本件映画が本件漫画を翻案(映画化)したものであるかについて、裁判所は翻案に関する最高裁判決(江差追分事件 最高裁平成13年6月28日)に言及した上で、本件映画が本件漫画を翻案(映画化)したものであるといえるためには、被告が本件漫画に依拠して本件映画を製作し、かつ、本件映画に接する者が本件漫画の表現上の本質的な特徴を直接感得することができることが必要であると説示。その上で、 本件映画は、登場人物やストーリー展開が本件漫画と同じであり、台詞も本件漫画と多くの部分が同じであると判断。相違点はあるものの、表現上の本質的特徴部分において本件映画は本件漫画と同一であるとしています。
併せて、依拠性も肯定されており、本件映画は、本件漫画を翻案(映画化)したものであると認められています(9頁以下)。

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2 著作権法112条に基づく差止・廃棄請求の成否

(1)上映権侵害性の肯否

被告が本件映画の原著作物(本件漫画)の著作者である原告の本件映画に係る上映権を侵害したか否かについて、裁判所は、映画祭の主催者が上映行為をしており、被告が上映の枢要な行為をしたとは認め難いとして、被告による上映権侵害性を否定しています(12頁以下)。

(2)被告が原告の本件映画に係る上映権を侵害するおそれの有無

交渉の経緯から双方の歩み寄りが認められなかったことから、被告が自ら本件映画を上映するおそれがあると認めるのが相当であると判断されています(13頁以下)。

結論として、本件映画の上映禁止や本件映画が記録された映画フィルム及び電磁的記録媒体の廃棄について、その必要性を否定する事情は見当たらないとして、原告の著作権法112条1項に基づく差止・廃棄請求はいずれも理由があると裁判所は判断しています。

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3 不法行為に基づく損害賠償請求の成否及び損害額

被告は、著作権(翻案権)及び著作者人格権(同一性保持権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償責任があるとしたうえで、損害額について、裁判所は以下の内容を認定しています。

・著作権(翻案権)侵害に係る損害額(許諾料相当額) 8万円
・著作者人格権(同一性保持権)侵害に係る損害額(慰謝料額) 50万円
・弁護士費用相当額 6万円
 合計64万円

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4 著作権法115条に基づく名誉回復等の措置請求の成否

被告の同一性保持権侵害によって具体的に原告の社会的名誉・声望が害されたことを認めるに足りる証拠はなく、その他損害賠償とともに名誉回復等の措置が必要であることを肯定する事情は見当たらないとして、謝罪文掲載といった名誉回復等の措置請求を裁判所は認めていません(16頁)。

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■コメント

漫画家の石川雅之さんが映画プロデューサーである黒木敬士さんを著作権侵害を理由に提訴した事案となります。
ストーリー展開だけが同じであっても、台詞が違えば別作品とも言えますが、登場人物名にも同一のものがあり、台詞も多くの部分が同一だったということで、どうして映画化の際に、原作使用許諾に関する権利処理をしなかったのか疑問が残る事案です。15分の短編映画で自己資金、自主製作、趣味の範囲で製作したという理由(6頁)は、およそ職業人としては理解できない対応です。
なお、映画祭出展による上映については、被告は上映行為の主体とは判断されていませんが、積極的に複数の映画祭に出展、上映の機会を利用している被告の態度からすれば、主催者ではないからといって上映権侵害とならない判断には違和感を覚えるところです。

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■参考サイト

『週刊石川雅之』収録作品『彼女の告白』著作権侵害裁判の結果報告(2013/12/25 20:00)
講談社モーニング編集長 島田英二郎

原告「日記」
初期作品についてつらつらと(2012年9月20日)
『週刊石川雅之』収録作品『彼女の告白』著作権侵害裁判の結果報告(2013年12月25日)

東葛映画祭2010

山形国際ムービーフェスティバル YMF2011監督・作品「帰省」

したまちコメディ大賞2012 - 第5回したまちコメディ映画祭in台東

映像制作ユニットCineBlocks
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2014年02月06日

ジャスCD原盤製作契約事件−著作権 著作権確認等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ジャスCD原盤製作契約事件

東京地裁平成25.11.20平成24(ワ)8691著作権確認等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀 滋
裁判官      小川雅敏
裁判官      西村康夫

*裁判所サイト公表 2014.1.31
*キーワード:レコード製作者の権利、著作隣接権、原盤製作契約、マスターCD、所有権

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■事案

製作されたCDについてレコード製作者の権利の帰属などが争点となった事案

原告:ジャス歌手
被告:レコード製作販売会社

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法2条1項6号

1 レコード製作者の権利の確認請求について
2 本件マスターCDの引渡請求について
3 立替金請求について

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,(1)原告の歌唱を録音したCDについてのレコード製作者の権利を有することの確認,(2)レコード製作者の権利又は所有権に基づき,マスターCDの引渡し,(3)原告が立て替えた伴奏代金20万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成24年7月14日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払,を求めた事案』(1頁以下)

<経緯>

H22.11 原被告間でレコード製作合意、原告が被告に370万円支払
H23.08 本件CD「I’m a woman,Now −MIKI−」制作
H23.10 原告がソウル社に未払演奏料20万円代位弁済
H23.11 本件CD完成
H24.03 原告が本訴提起

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■判決内容

<争点>

1 レコード製作者の権利の確認請求について

原告によるレコード製作者の権利の確認請求について、裁判所は、

「著作権法上の「レコード製作者」とは,「レコードに固定されている音を最初に固定した者」(著作権法2条1項6号)をいうが,ここでいう「固定した者」とは,物理的な録音行為の従事者ではなく,自己の計算と責任において録音する者,通常は,原盤制作時における費用の負担者がこれに該当するというべきである(東京地裁平成19年1月19日判決・判時2003号111頁)。 」

として、「THE BOOM対SME」事件判決に言及した上で、

「これを本件についてみると,平成22年11月11日に原告が被告に370万円を交付したことは争いがないところ,上記1(3)のとおり,この370万円は本件CDの製作費全額として交付し,その際,レコード製作者の権利は原告に帰属させるという合意があったというのであり,その後も本件CDの製作費の負担やレコード製作者の権利の帰属を変更するような合意はされなかったことが認められるから,本件CDのレコード製作者は原告であり,本件歌唱を録音した本件マスターCDが作成された時点で,原告が本件CDのレコード製作者の権利の全部を原始的に取得したものというべきである。」

として、レコード製作者の権利の原告への帰属について原被告間での合意を認定しています。
結論として、原告によるレコード製作者の権利の確認請求が認められています。

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2 本件マスターCDの引渡請求について

被告が占有している原告歌唱を録音した本件マスターCDについて、裁判所は、

「マスターCDの所有権は,特段の合意がない限り,製作費を投じてマスターCDを製作させたレコード製作者に原始的に帰属するものとみるのが相当であり,本件においてこれと異なる合意をした証拠もないから,本件マスターCDの所有権は,レコード製作者である原告に原始的に帰属したものと認められる。」

として原告への所有権の帰属を認定した上で、

「原告は,複製作業に必要な限度で被告に本件マスターCDの占有権原を与えていたものと思われるが,遅くとも本件訴状の送達をもって返還を請求し,被告は占有権原の抗弁を主張していないのであるから,原告は,被告に対し,所有権に基づき,本件マスターCDの引渡しを求めることができる。」

として、原告の引渡請求を認めています。

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3 立替金請求について

伴奏を担当した実演家が所属するソウル社に対して被告が未払演奏料債務を負担しており、原告がソウル社に対して立て替え支払いをしていました。
原告が被告に対して第三者弁済に基づく求償金として20万円の支払請求が認められています(15頁以下)。

結論として、原告の請求が認容されています。

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■コメント

アルバム名でネット検索すると、本件CDが女性ジャズ・ヴォーカリスト歌手生活30周年を記念する9曲収録のアルバムであることが分かります。
被告会社のサイトを拝見すると、ジャス、クラッシック専用レーベルとして高い評価を受けているようです。実際、原盤は、ソニー・ミュージックスタジオでSMEのエンジニアが録音を担当して高品位録音されてCDが製作されています(SACD)。同様の製作環境で作られた別アーティストの作品の解説を読むと、DSD(ダイレクト・ストリーム・デジタル)方式で録音が行われたジャズSACDは少なく、世界的に見ても貴重な存在のようです(AMAZON/MAYUMI「I Wish You Love」作品解説参照)。

もっとも、原盤製作契約にあたり、被告が原盤権(著作隣接権)を保有して音源販売窓口を独占して営業、販促を行うというのであれば、原盤権の帰属や実演家印税といったものの有無も含めて細かく取り決めをしなければならないところですが(原盤独占譲渡契約)、契約書面が被告から原告へ交付されず、判決文を読む限りでは被告の業務は単なる音源、CDの製作に留まっています。
当初のアメリカでのレコーディングの要望が国内に変更されたり、製作費や販促費のやりとりで齟齬が生じたりと(製作費の内訳を相手に開示しないことも含め)、ありがちな経緯の話ではありました。

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■参考判例

レコード製作者の送信可能化権の帰属などを巡り紛争となった事案として
「THE BOOM対SME」事件参照(本訴棄却、反訴認容、控訴後和解)
東京地裁平成19.1.19平成18(ワ)1769等著作権民事訴訟PDF
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2014年01月20日

書籍「週刊ホンダCB750FOUR」事件(控訴審)−著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

書籍「週刊ホンダCB750FOUR」事件(控訴審)

知財高裁平成25.12.25平成25(ネ)10076著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官      西 理香
裁判官      神谷厚毅

*裁判所サイト公表 2014.1.14
*キーワード:写真、出版、著作者、職務著作、譲渡、包括許諾、複製権、公衆送信権、著作者人格権、損害論、差止

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■事案

バイクエンジン部分の写真についての二次利用に関する包括許諾の有無などが争点となった事案の控訴審

控訴人兼被控訴人(一審原告):写真家
被控訴人兼控訴人(一審被告):出版社
一審被告補助参加人     :制作会社

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■結論

一部変更

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■争点

条文 著作権法2条1項2号、15条1項、21条、23条、61条、63条、18条、19条、20条、114条3項、112条1項、2項

1 一審原告が本件写真の著作者(創作者)であるか
2 本件写真の創作が職務著作に当たるか
3 本件写真に係る著作権の譲渡の有無
4 包括的利用許諾の合意の有無
5 複製権及び公衆送信権の侵害の有無
6 公表権の侵害の有無
7 氏名表示権の侵害の有無
8 同一性保持権の侵害の有無
9 著作者人格権不行使の合意の有無
10 一審被告の過失の有無
11 損害額
12 差止の要否

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■事案の概要

『本件は,職業写真家である第1審原告が,出版社である第1審被告に対し,別紙写真目録1記載の写真(写真番号QP3K4517。以下「本件写真」という。)の著作権が第1審原告に帰属するのに,第1審被告は,第1審原告の承諾なく,別紙書籍目録記載の書籍(以下「本件書籍」という。)に本件写真を掲載し,第1審原告の著作権(複製権,公衆送信権)及び著作者人格権(公表権,氏名表示権,同一性保持権)を侵害したなどと主張して,(1)不法行為に基づく損害賠償請求として790万円(附帯請求として本件書籍の発行日である平成22年9月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払,(2)著作権法112条1項に基づく差止請求として,ア本件写真の複製,公衆送信又は改変の禁止,イ本件写真を複製した本件書籍の出版,販売又は頒布の禁止,(3)同法2項に基づく廃棄請求として,ア被告の運営するウェブサイト内のウェブページからの本件写真の削除,イ本件書籍の廃棄を求めた事案である。』
『原判決は,本件写真の著作権は第1審原告に帰属し,第1審被告が本件書籍に本件写真を掲載した行為は,第1審原告の著作権(複製権,公衆送信権)及び著作者人格権(公表権,氏名表示権,同一性保持権)を侵害するものであるとした上で,上記(1)の請求につき59万8757円及びこれに対する平成22年9月21日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を命じる限度で,上記(2)及び(3)の請求につき全部,第1審原告の請求を認容した。
 これに対し,第1審原告及び第1審被告の双方がそれぞれの敗訴部分につき控訴した。』(3頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 一審原告が本件写真の著作者(創作者)であるか
2 本件写真の創作が職務著作に当たるか

一審原告が本件写真の著作者(創作者)である点、また、本件写真の創作の職務著作性否定の点について、原審の判断が維持されています(10頁)。

   −−−−−−−−−−−−−−

3 本件写真に係る著作権の譲渡の有無
4 包括的利用許諾の合意の有無

元補助参加人従業員Bや補助参加人代表者Cの供述及び証言から、一審原告に対して、写真に関する権利の「買取り」、あるいは写真に関する権利は全て補助参加人のものになり、二次利用をしようがどのように使おうが補助参加人の自由であることを説明したと認められるとして、一審被告補助参加人と一審原告両者間で同趣旨の合意があったものと推認されると控訴審は判断。
これが口頭による合意であり書面による明確な合意ではないこと、及び補助参加人がやや不明瞭な対応をしたこともあったことなどの事情を総合的に考慮して、包括的合意の内容としては、著作権譲渡の合意は認められないものの、包括的利用許諾の合意があったと認定されています(10頁以下)。

   −−−−−−−−−−−−−−

5 複製権及び公衆送信権の侵害の有無
6 公表権の侵害の有無
7 氏名表示権の侵害の有無

包括的利用許諾の合意が認定され、複製権及び公衆送信権、公表権侵害性が否定されています(17頁以下)。
氏名表示については、一審原告が撮影写真の二次利用に当たってその方法(氏名表示の有無や氏名表示方法を含む)が制限されないことを承諾していたと認めることはできないとして、氏名表示権侵害性を肯定しています。

   −−−−−−−−−−−−−−

8 同一性保持権の侵害の有無
   
少なくとも一審原告は、一審原告の名誉・声望を害しない限りにおいて写真を切り出したり、あるいは写真上に説明のための文章等を追加する等、出版される書籍における写真の利用目的に応じて必要な限度での写真の改変については同意をしていたものと認めるのが相当であるとして、同一性保持権侵害が否定されています(18頁以下)。

   −−−−−−−−−−−−−−

9 著作者人格権不行使の合意の有無

一審原告に対して、撮影した写真について「買取り」である旨の説明はしているものの、著作者人格権の説明はしていないことなどから、一審原告と一審被告補助参加人との間で著作者人格権(氏名表示権)不行使の合意があったとまでは認めるには足りないとして、不行使合意は認められていません(20頁)。

   −−−−−−−−−−−−−−

10 一審被告の過失の有無

原審同様、一審被告の過失が認められています(20頁以下)。

   −−−−−−−−−−−−−−

11 損害額

氏名表示権侵害について慰謝料10万円、弁護士費用相当額1万円の合計11万円が損害額とされています(21頁)。

   −−−−−−−−−−−−−−

12 差止の要否

一審被告は、一審原告の氏名を表示することなく本件写真を本件書籍や一審被告のウェブサイトのウェブページに掲載しており、一審原告の氏名を表示しない限り、本件写真の複製又は公衆送信について差止めの必要があると認められています。
また、一審原告の氏名を表示しない限り、本件写真を複製した本件書籍の出版、販売又は頒布についても同様であるとしています。
さらに、一審被告ウェブサイトのウェブページからの本件写真の削除(ただし、一審原告の氏名を表示していないものに限る。)についても、その必要があると認められています。
なお、本件書籍の上記頁中、一審原告の氏名を表示することなく本件写真を複製して掲載した部分の廃棄を認めることで十分であり、本件書籍全体の廃棄を認める必要はないと判断されています(21頁以下)。

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■コメント

写真撮影の際の「買取り」発言等によって、写真著作物の著作権譲渡や包括的利用合意が認定できるかが争点とされた事案の控訴審です。
控訴審では写真家さんが一審よりも不利な判決となりました。
一審と異なり、控訴審では写真利用に関して包括的な二次利用合意が認定され、結果として複製権、公衆送信権侵害が否定され、また、公表権、同一性保持権侵害が否定され、氏名表示権侵害のみ肯定される結果となっています。

「買取り」の説明や二次利用の合意状況を証言等を踏まえどう捉えるかによって、認定が大きく違うこととなり、微妙な判断となりました。

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原審記事

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2013年12月30日

勝沼ワイナリー案内看板事件(控訴審)−著作権 著作物頒布広告掲載契約に基づく著作物頒布広告掲載料未払請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

勝沼ワイナリー案内看板事件(控訴審)

知財高裁平成25.12.17平成25(ネ)10057著作物頒布広告掲載契約に基づく著作物頒布広告掲載料未払請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官      中村 恭
裁判官      新谷貴昭

*裁判所サイト公表 2013.12.26
*キーワード:著作物性、創作性、応用美術、純粋美術、一般不法行為

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■事案

ワイナリーへの案内看板の図柄の著作物性が争点となった事案の控訴審

控訴人(一審原告) :広告看板制作会社
被控訴人(一審被告):ワイン製造販売会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、10条1項4号、民法709条

1 本件図柄の著作物性
2 控訴審における主張

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■事案の概要

『本件は,原判決別紙目録記載の図柄1〜12(以下,それぞれ「図柄1」などという。)につき著作権を有すると主張する控訴人が,被控訴人は,上記図柄を案内用看板に表示して使用し,上記図柄に係る原告の著作権を侵害等していると主張し,被控訴人に対し,著作権侵害等の不法行為責任に基づく損害賠償として,200万円及びこれに対する不法行為日よりも後の日である平成24年3月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。原審が控訴人の請求を棄却したところ,控訴人が控訴した。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 本件図柄の著作物性

本件図柄の著作物性(著作権法2条1項1号)について、控訴審においても、「文字部分を含めた本件図柄の構図,デザイン,配色,全体のバランスを総合的に見ても,特別な美的感興を呼び起こすような美的創作性を認めることはできないことに変わりない。」(5頁以下)
として原審同様、その著作物性を否定しています。

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2 控訴審における主張

(1)本件図柄の著作物性について

控訴人(一審原告)は、絵柄の美術性を控訴審で追加主張しましたが、控訴審は、広告看板用の図柄については、実用に供され、あるいは産業上利用される応用美術の範ちゅうに属するというべきものであり、著作権法上の保護を受けるためには純粋美術と同視し得る程度の創作性がなければならないとした上で、本件図柄は、純粋美術と同視できる程度に客観的外形的に観察して見る者の審美的要素に働きかける創作性を肯定することは困難であるとして、控訴人の主張を認めていません(6頁以下)。

(2)一般不法行為論

保護を受ける著作物については著作権法6条にその範囲が定められており、同条所定の著作物に該当しない著作物の利用行為については、「同法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではないと解するのが相当である」(最高裁平成23年12月8日判決平成21(受)602著作権侵害差止等請求事件)との北朝鮮映画事件判決に控訴審は触れた上で、本件では特段の事情を見出すことは困難であり、被控訴人の不法行為責任を認めることはできないと判断しています(7頁以下)。

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■コメント

勝沼ワイナリー案内看板事件の控訴審となります。結論としては、原審同様、看板図柄の著作物性は否定され、また、一般不法行為論の成立も否定されています。

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関連事件
勝沼ワイナリー案内看板事件(第2事件)

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2013年12月25日

似顔絵画像無断利用事件(控訴審)−著作権 損害賠償等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−


最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

似顔絵画像無断利用事件(控訴審)

知財高裁平成25.12.11平成25(ネ)10064損害賠償等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官      田中正哉
裁判官      神谷厚毅

*裁判所サイト公表 2013.12.24
*キーワード:公衆送信権、名誉声望保持権、名誉毀損

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■事案

漫画家が制作した似顔絵を許諾の範囲を超えた態様で利用したとして紛争となった事案の控訴審

控訴人(一審被告) :個人
被控訴人(一審原告):漫画家

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法23条、113条

1 本件行為1についての違法性及び責任
2 本件行為2についての違法性及び責任
3 損害額

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■事案の概要

『本件は,漫画家である被控訴人が,(1)控訴人の依頼に応じて描いた似顔絵を控訴人が無断で画像投稿サイトに投稿して被控訴人の著作権(公衆送信権)を侵害し,かつ,その名誉又は声望を害する方法で著作物を利用し被控訴人の著作者人格権を侵害した,(2)控訴人が被控訴人からあたかも殺害予告を受けたかのような記事をツイッターのサイトに投稿し,被控訴人の名誉を毀損した,と主張して,控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償として400万円及びこれに対する不法行為後の日である平成24年9月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 原審は,控訴人による公衆送信権及び著作者人格権の侵害並びに名誉毀損をいずれも認め,不法行為による損害賠償合計50万円及びこれに対する遅延損害金の限度で被控訴人の請求を認容し,その余の請求を棄却したところ,控訴人が上記請求認容部分を不服として控訴した。』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件行為1についての違法性及び責任
2 本件行為2についての違法性及び責任
3 損害額

各争点について、原審の判断を維持しています。

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■コメント

一審被告が控訴しましたが、原審の判断が維持されています。

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原審記事

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2013年12月13日

「実話大報」風俗記事翻案事件−著作権 著作権侵害損害賠償等本訴、ブログ記事抹消等反訴請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「実話大報」風俗記事翻案事件

東京地裁平成25.11.28平成24(ワ)3677著作権侵害損害賠償等本訴、ブログ記事抹消等反訴請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 高野輝久
裁判官      三井大有
裁判官      藤田 壮

*裁判所サイト公表 2013.12.10
*キーワード:出版社、翻案権、氏名表示権、同一性保持権、名誉権

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■事案

ブログ掲載記事の雑誌への無断掲載等が争点となった事案

原告(反訴被告):フリーライター
被告(反訴原告):出版社、編集プロダクション

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法27条、19条、20条、115条

1 原告の著作権の侵害の成否
2 原告の著作者人格権の侵害の成否
3 被告らの故意又は過失の有無
4 原告が受けた損害の額
5 謝罪広告の要否
6 被告らの名誉、信用毀損の成否(反訴)
7 違法性の阻却及び原告の故意又は過失の有無(反訴)
8 被告らが受けた損害の額(反訴)

   --------------------

■事案の概要

『本件は,本訴において,原告・反訴被告(以下「原告」という。)が,被告・反訴原告(以下「被告」という。)らが漫画を掲載した雑誌を編集,発行したことが原告の著作物の著作権及び著作者人格権を侵害すると主張して,被告らに対し,不法行為による損害賠償請求権に基づく131万円の連帯支払,被告株式会社ジーオーティー(以下「被告GOT」という。)に対し,著作権法115条に基づく謝罪広告の掲載をそれぞれ求め,反訴において,被告らが,原告がブログに記事等を掲載したことが被告らの名誉,信用を毀損したと主張して,原告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づく各100万円及びこれに対する不法行為の後である反訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払並びに名誉権に基づく記事等の削除を求める事案である。』
(3頁)

<経緯>

H22 原告が原告記事1、2をブログに掲載
H23 被告出版社が雑誌に被告漫画1、2を掲載、発行

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 原告の著作権の侵害の成否

原告がブログに掲載した「混浴乱交サークル」と題する記事(原告記事1)及び「生脱ぎパンティオークション乱交」と題する記事(原告記事2)を被告出版社が被告編プロに依頼し漫画を作画した上で、被告出版社刊行の雑誌「実話大報」(本件雑誌)に掲載しました。

裁判所は、原告記事と被告漫画を対比の上、各記述等について、

・場面の流れは、あらすじという表現それ自体ではない
・同一性があるとしても、個性がない、あるいはありふれており、表現上の創作性がない部分である

とする一方で、一部については、創作的に表現された部分について表現上の本質的特徴を直接感得することができるとして翻案を肯定しています(9頁以下)。

結論として、被告らは、被告漫画1記述7及び11を不可分的に有する被告漫画1を掲載した本件雑誌平成23年1月号を編集、発行した点、また、被告漫画2記述5及び6を不可分的に有する被告漫画2を掲載した本件雑誌平成23年6月号を編集、発行した点について、これにより原告の原告記事1及び2の著作権(翻案権)を侵害したものと認められています。

   --------------------

2 原告の著作者人格権の侵害の成否

原告の著作物を原著作物とする二次的著作物を含む被告漫画に原告の氏名が表示されていなかった点で氏名表示権侵害性が、また、文章を漫画にする方法で掲載されていた点で同一性保持権侵害性が肯定されています(12頁以下)。

   --------------------

3 被告らの故意又は過失の有無

被告らに原告記事の著作権及び著作者人格権侵害について調査義務違反に関して過失が認定されています(13頁)。

   --------------------

4 原告が受けた損害の額

財産的損害1万円、精神的損害5万円、弁護士費用相当額6000円の合計6万6000円が損害として認定されています(13頁以下)。

   --------------------

5 謝罪広告の要否

被告らの著作者人格権侵害行為により、原告の社会的声望名誉が毀損されたことを認めるに足りる証拠はないとして、謝罪広告は認められていません(14頁)。

   --------------------

6 被告らの名誉、信用毀損の成否(反訴)

原告がブログに掲載した著作権侵害行為を内容とする記事について、被告らは反訴として名誉、信用毀損行為性を争点としました(14頁以下)。
結論として、被告出版社についてのみ、名誉、信用毀損行為性が肯定されています。

   --------------------

7 違法性の阻却及び原告の故意又は過失の有無(反訴)

違法性阻却事由について、原告記事等が出版社による著作権侵害行為を内容とするもので企業の社会的責任に関するものとして公共の利害に関する事実であるものの、その目的が専ら公益を図るものであるとはいえないとして、裁判所は違法性阻却を認めていません。また、故意も肯定されています(16頁以下)。

   --------------------

8 被告らが受けた損害の額(反訴)

被告出版社の損害として40万円が認定されています。
また、被告出版社は、名誉権に基づき、原告記事等の記載の削除を求めることができると判断されています(17頁)。

   --------------------

■コメント

風俗情報誌がライターの風俗情報を無断で漫画化して雑誌に掲載した事案です。
ライターは本訴で一部勝訴したものの、反訴では被告出版社を批判するブログ記事が名誉権侵害と認定されて、著作権、著作者人格権侵害よりも高い損害額が認定されてしまっています。

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2013年12月09日

「甘露の法雨」録音物使用契約事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「甘露の法雨」録音物使用契約事件

東京地裁平成25.11.7平成23(ワ)37319損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 高野輝久
裁判官      三井大有
裁判官      藤田 壮

*裁判所サイト公表 2013.11.29
*キーワード:著作権譲渡、著作権使用契約、著作権表示

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■事案

生長の家創始者故谷口雅春氏の著作物に関する著作権の帰属や録音物使用契約を巡って争われた事案

原告:公益財団法人
被告:財団法人

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 民法415条

1 原告がAから本件原著作物の著作権の譲渡を受けたか
2 原被告間に本件契約書写に記載された内容の著作権使用契約が成立したか
3 原告が被告に対し本件カセットテープの複製、頒布を許諾したか
4 被告が本件カセットテープの複製、頒布により法律上の原因なくして印税に相当する額を利得したか
5 本件CDの(C)表示が著作物使用契約(CD)に違反するか

   --------------------

■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,(1)被告によるカセットテープの複製,頒布について,主位的に,著作権使用契約に基づき,昭和61年8月から平成23年10月までの印税合計2098万8000円及び各印税に対する支払時期の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,予備的に,原告の著作物の著作権を侵害するとして,著作権法112条に基づき,カセットテープの頒布の差止及びその廃棄並びに不法行為による損害賠償請求権に基づき,平成23年10月までに受けた損害2250万円,弁護士費用相当損害金200万円合計2450万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,又は,被告が法律上の原因なく利得し,そのために原告に損失を及ぼしたとして,不当利得返還請求権に基づき,平成23年10月までの被告の利得2250万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,(2)被告によるコンパクト・ディスクの販売について,表示が著作権使用契約により定められたものと異なるとして,同契約に基づき,その表示(訴状別紙「表示」に「1986」とあるのは,その趣旨に照らして,「2006」の誤記と認める。)の削除を求める事案である。』
(2頁)

<経緯>

S11 Aが本件原著作物(「聖経 甘露の法雨」「聖経 天使の言葉」「聖経 續々甘露の法雨」)を著述
S59 Aと被告が録音物著作権使用契約
S60 A死亡
S61 A相続人代表Cと被告が著作権使用契約
S61 原被告間で著作権使用契約書写作成
H18 原被告間でCD著作物使用契約

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 原告がAから本件原著作物の著作権の譲渡を受けたか

本件原著作物の著作権の帰属について、裁判所は、A(谷口雅春氏)は、原告の財団法人設立に当たり、A著述の「生命の實相」の著作権を、これに関連する「聖経 甘露の法雨」の著作権とともに譲渡し、さらに「聖経 天使の言葉」及び「聖経 續々甘露の法雨」についてそれぞれこれを公表した際にその著作権を原告に譲渡したものと認められると判断しています(6頁以下)。

   --------------------

2 原被告間に本件契約書写に記載された内容の著作権使用契約が成立したか

複写機により複製された原被告間の契約書の写しが存在したため、裁判所は、特段の事情がない限り、著作権使用契約が成立したものと認められるとした上で、Aの著作物の著作権の帰属や印税等の扱いが明確にされていなかったこと、お互いに原本を所持していないこと、作成の経緯を明らかにする証拠が全くないこと、被告とCとの間で著作権使用契約を締結したこと、被告の原告に対する印税の支払いがないこと等から、本件契約書写に記載された内容の著作権使用契約が成立したと認めるのを相当としない特段の事情があるというべきであると判断。原被告間における本件契約書写に記載された内容の著作権使用契約の成立は否定されています(8頁以下)。

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3 原告が被告に対し本件カセットテープの複製、頒布を許諾したか

裁判所は、原告は、昭和61年8月頃、Aの相続人代表であるCらに印税に相当する額を支払うことを条件に本件カセットテープの複製、頒布を被告に許諾したものと認められるとして、被告による本件カセットテープの複製、頒布は、原告の本件原著作物の著作権を侵害しないと判断しています(11頁)。

   --------------------

4 被告が本件カセットテープの複製、頒布により法律上の原因なくして印税に相当する額を利得したか

裁判所は、原告は、印税に相当する額をCらに支払うことを条件に本件カセットテープの複製、頒布を被告に許諾しており、被告はCらに印税に相当する額を支払っているため、被告がこれを利得したということはできないと判断しています(11頁)。

   --------------------

5 本件CDの(C)表示が著作物使用契約(CD)に違反するか

本件CDの著作権表示について、「C”,D”,2006」の部分は、著作権の帰属を不明確にする記載であるとして、著作物使用契約(CD)に違反すると裁判所は判断。表示の削除請求を認めています(11頁以下)。

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■コメント

生長の家の基本聖経『甘露の法雨』といった谷口雅春氏の著作物をカセットテープやCDで聴くことができますが、基本聖経の著作権の帰属や録音物使用許諾契約について紛争となった事案です。
複写機による契約書の写しが存在したものの、諸事情から当該契約書の内容での契約の成立が否定されています。

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■過去のブログ記事

「生命の實相」を巡る他の訴訟
「生命の實相」書籍著作権事件
「生命の實相」書籍著作権事件(控訴審)
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2013年12月04日

ルールベースエンジンソフト事件(控訴審)−著作権 未払著作権料請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ルールベースエンジンソフト事件(控訴審)

知財高裁平成25.11.27平成25(ネ)10058未払著作権料請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官      八木貴美子
裁判官      小田真治

*裁判所サイト公表 2013.11.28
*キーワード:使用許諾料、和解合意、要素の錯誤

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■事案

ソフトウェアの使用許諾料等に関する紛争の和解合意書の有効性などが争点となった事案の控訴審

控訴人(一審原告) :大学教授遺族ら
被控訴人(一審被告):設計・製図用コンピュータソフトウェア製造販売会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 民法95条

1 合意による紛争解決の有無及びその効果

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■事案の概要

『1 事案
 P1は,被控訴人の取締役であった。P1と被控訴人との間で,P1を著作権者と,被控訴人を使用者とし,P1は被控訴人に対し,P1が著作権(P5との共有)を有する電子計算機用のプログラムであるDSP(プログラムの著作物)の使用,複製,販売等を許諾することとし,他方,被控訴人はP1に対し,DSPの使用,複製,販売等につき使用許諾料を支払う旨の契約(本件使用許諾契約)を締結した。その後,被控訴人がアトリスに対して,同社のコンピュータにDSPを複製し,使用をすることを許諾したことから,P1の成年後見人が法定代理人として,被控訴人に対し,本件使用許諾契約に基づき,使用許諾料2565万2592円及びこれに対する平成18年12月1日から支払済みまで約定利率である年8%の割合による遅延損害金の支払を求めた(原審における訴訟係属中にP1は死亡したため,P1の相続人である控訴人らがP1の訴訟上の地位を承継し,被控訴人に対し,控訴人P2は使用許諾料1282万6296円及びこれに対する同日から上記割合による遅延損害金,控訴人P3及び同P4は,それぞれ使用許諾料641万3148円及びこれに対する同日から上記割合による遅延損害金の支払を求めた。)。
 これに対して,被控訴人は,被控訴人がP1に技術顧問料として月額50万円を支払い,また被控訴人が有する診療支援知識ベースの著作権をP1に譲渡することとし,その代わり,P1は,被控訴人がアトリスへDSPを貸与したことに関する過去分の請求を不問とすること等を内容とする合意(本件合意)が成立したから,P1の被控訴人に対する請求権は消滅したなどと反論した。
2 原審の判断
 原審は,P1と被控訴人との間で本件合意が成立したことにより,アトリスへのDSPの貸与に関し,P1の被控訴人に対する請求権が存在したか否かにかかわらず,その請求はできないものとなったと判断して,控訴人らの請求をいずれも棄却した。
 控訴人らは,原判決の取消し等を求めて,控訴を提起した。』(2頁以下)

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 合意による紛争解決の有無及びその効果

訴外株式会社アトリスへDSPソフトウェアをライセンスした際の使用許諾料の成否やその額について、P1と被控訴人の間で紛争となり、平成19年4月10日に関係者6名が参集の上、和解の内容となる合意書を作成した点に関して、原審は本件合意が成立したと認めていましたが、控訴審でも原審の判断を維持しています(5頁以下)。
なお、本件合意を締結するに当たり、P1の意思表示に要素の錯誤があったと控訴人は主張しましたが、認められていません。

結論として、本件合意が成立し、これを無効とする理由が認められない以上、本件合意成立後は被控訴人に対してその支払を求めることはできなくなり、P1の地位を承継した遺族である控訴人らについても同様であるとして、控訴人らの主張は認められていません。

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■コメント

原審の判断が維持されています。

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■過去のブログ記事

原審記事

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2013年12月02日

デジタルコンテンツオンデマンド出版事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

デジタルコンテンツオンデマンド出版事件

東京地裁平成25.11.15平成24(ワ)9900損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 東海林 保
裁判官      今井弘晃
裁判官      足立拓人

*裁判所サイト公表 2013.11.26
*キーワード:出版契約、オンデマンド出版

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■事案

デジタルパブリッシングサービスを巡って出版部数などが争点となった事案

原告:発明関連書籍著作者
被告:デジタルコンテンツ書籍製造販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 民法415条

1 被告による本件各書籍のデータの無断運用の有無

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■事案の概要

『本件は,本件契約によって被告の会員となった原告が,本件契約の第17条によれば,被告は原告から預託を受けたデジタルコンテンツデータを運用した場合,データ運用の対価に所定の料率を乗じた金員(以下「収益還元金」という。)を原告に支払うべき収益還元義務を負うところ,原告は,被告に対し,本件契約に基づき,平成21年3月末頃までに,別紙書籍目録記載の各書籍(以下「本件各書籍」といい,同目録記載の番号に従って順に「本件書籍1」などという。)を預託したが,被告は,平成22年初め頃から平成23年10月頃までの間に,原告から預かったデータを用いて本件各書籍につき各100冊の複製物を第三者に提供するなどして運用し,対価を得ているにもかかわらず,その収益を原告に還元していないと主張して,本件契約が定める収益還元義務の履行請求として,別紙書籍目録末尾収益還元料金計算結果記載の収益還元金191万3600円の内金161万9356円及び平成24年7月7日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案』(3頁)

<経緯>

H13 原被告間でデジタルパブリッシング出版会員契約締結
H17 原告がオンデマンド出版、ショートラン印刷
H22 原告が日販から返品依頼を受ける
H23 民事調停
H24 調停不成立、本件提訴

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■判決内容

<争点>

1 被告による本件各書籍のデータの無断運用の有無

原告は、被告へ預託された本件各書籍について、被告によって原告に無断で被告の記録にないデータ運用がされており、原告にその収益が還元されていないと主張、デジタルパブリッシング出版契約で定められた収益還元義務に基づき、原告に無断でデータ運用した本件各書籍について、各100冊分の収益還元金の支払を求めました(18頁以下)。
この点について、裁判所は、原告は、いつの時点で何冊を印刷し、そのうち何冊をいかなる経路で流通に置き、このうち販売された部数が何部であるか等について何ら主張立証を行っておらず、原告の了解のもとで流通に置かれた本件各書籍の総数とそうでない書籍の数とを比較のしようがないとして、被告による原告に対する無断データ運用の総数を検討する以前の問題として、そもそも原告の意思に基づかない書籍の流通自体があったのか否かは不明というほかないと判断。原告の請求を認めていません。

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■コメント

被告となった株式会社デジタルパブリッシングサービスは、凸版印刷(株)と(株)トーハンが共同で設立した会社で、自費出版物の制作・流通をオンデマンド出版により安価で実現するサービスを提供しています。
取次から返品受諾の打診を受けたことをきっかけとして、原告側が流通に置かれた出版物の対象や点数に疑問をもった訳ですが、原告著作物33点のうち、どのサービスによる出版で何点流通させたかの整理が原告側においてされていません。

システム的に事業社側が著者側に無断で登録データをオンデマンド出版して流通に置く場面があり得るのか不明ですが、流通に置いた書籍が返品された場合の取扱い(取次への確認や取扱い書店の情報の管理など)についての事業者免責規定が出版契約上、どのようになっていたのか確認したい部分ではあります。

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■参考サイト

株式会社デジタルパブリッシングサービス

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2013年11月13日

プログラム開発委託料請求事件(控訴審)−著作権 プログラム開発委託料等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

プログラム開発委託料請求事件(控訴審)

知財高裁平成25.10.30平成25(ネ)10053プログラム開発委託料等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官      八木貴美子
裁判官      小田真治

*裁判所サイト公表 2013.11.6
*キーワード:プログラム、著作物性、複製権、職務著作、開発委託契約、請負契約

(原審)
平成23(ワ)13057プログラム開発委託料等請求事件
東京地方裁判所民事第33部
裁判長裁判官 小林久起
裁判官      佐々木清一
裁判官      見原涼介

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■事案

協会の会員名簿など業務用データベース作成(ファイルメーカー)にあたってプログラマーとの業務委託契約の内容が争点となった事案

控訴人(原審原告) :プログラマー
被控訴人(原審被告):公益社団法人

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、10号の2、10号の3、15条2項、商法512条

1 プログラム気坊犬訐禅瓩旅糧
2 プログラム兇坊犬訐禅瓩旅糧

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■事案の概要

『1 原審の経過
(1)原審における請求
ア プログラム気了藩儺諾に係る請求
 原告は,平成10年に,被告との間で,プログラム気粒発委託契約を締結し,同年,プログラム気魍発・作成したことにより,プログラム気涼作権を取得し,被告に対しプログラム気砲弔い道藩儺諾をしたと主張して,商法512条の報酬請求権に基づき,平成23年4月20日以前5年間のプログラム気涼作権使用許諾料合計190万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年5月20日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
イ プログラム兇粒発・作成に係る請求
(ア)主位的請求
 原告は,平成22年10月下旬,被告との間で,開発委託料を定めずにプログラム兇粒発委託契約を締結し,同年12月から平成23年3月4日までの間に,被告に対し,プログラム兇魍発・作成して納品したと主張して,商法512条の報酬請求権に基づき,プログラム兇粒発委託料として合計960万円及びこれに対する平成23年5月20日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
(イ)予備的請求(1)
 原告は,被告との間で,プログラム兇虜鄒につき請負契約を締結し,その際,相当の報酬を支払うことを黙示的に合意したと主張して,相当な報酬額の一部である960万円及びこれに対する平成23年5月20日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
(ウ)予備的請求(2)
 原告は,プログラム兇鮑鄒したことにより,被告が不当に利得を得ていると主張して,不当利得返還請求権に基づき,不当利得210万円及びこれに対する不当利得をした平成23年3月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息(民法704条)の支払を求めた。
(2)原審の判断
 原審は,以下のとおり判断して,原告の請求をいずれも排斥した。
ア プログラム気了藩儺諾に係る請求について
 プログラム気蓮じ狭陲被告の業務に従事する者として職務上作成したものであり,その著作者は被告であるから,原告がプログラム気涼作権を有することを前提とするプログラム気坊犬觧藩儺諾料の請求は理由がない。仮に,プログラム気涼作者が原告であったとしても,原告,被告間にはプログラムの使用許諾料の支払を求めない合意があったと認められるから,原告の請求は理由がない。
イ プログラム兇粒発・製作に係る請求
 プログラム兇砲弔い討蓮じ狭陝と鏐雋屬乏発委託契約の成立も請負契約の成立も認められず,原告が不当に利得を得ているとも認められない。
 これに対し,原告は,原判決の取消しを求めて,控訴を提起した。』

『(3)当審における請求
ア プログラム気坊犬訐禅
 当審において,原告は,原審での主張に係る著作物の使用許諾料の請求を撤回し,以下の主位的請求及び予備的請求を追加した。
(ア)主位的請求
 原告は被告に対し,プログラム気鮑鄒し,使用させていることに対する相当の報酬として,商法512条の報酬請求権に基づき,190万円及びこれに対する平成23年5月20日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
(イ)予備的請求
 原告は,プログラム気鯤製して使用する被告の行為は,プログラム気砲弔い童狭陲陵する著作権(複製権)を侵害すると主張して,複製権侵害に基づく損害賠償金として190万円及びこれに対する平成23年5月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
イ プログラム兇坊犬訐禅
 当審において,原告は,以下の予備的請求を追加した。
 すなわち,原告は被告に対し,プログラム兇鯤製,使用する被告の行為は,プログラム兇砲弔い童狭陲陵する著作権(複製権)を侵害すると主張して,複製権侵害に基づく損害賠償として作成費相当額である960万円及びこれに対する平成23年5月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。』
(2頁以下)

<経緯>

H10.10 原告が被告の会員名簿等のコンピュータ入力作業
H12.06 原告が採点集計表作成
H20.03 原被告間で保守契約締結
H23.03 原告が被告に著作権使用料等を請求
H23.03 被告が原告に保守契約解約通知
H23.04 本件提訴

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■判決内容

<争点>

1 プログラム気坊犬訐禅瓩旅糧

(1)プログラム気虜鄒についての相当報酬

原告(控訴人)がプログラム機箆合会名簿、個人会員名簿、ダンス教師講習(考査)アソシエイト採点集計表、教師協会売掛金等のプログラム)を作成し、これを被告(被控訴人)に使用させていることの相当報酬としての商法512条の報酬請求権に基づく190万円の請求について、控訴審は、

・原告は被告から平成10年以降、本件保守契約が締結される前である平成20年2月までの間にプログラム(ソフト)作成料、プログラム使用料、データ入力料、パソコン指導料等の各種名目の下に、原告又はFを支払先として合計1000万円を超える支払を受けていた。
・平成20年3月に本件保守契約を締結し、保守料金の額について合意をしたが、その際にプログラム気虜鄒料については格別何らの取決めがされなかった。
・原告がプログラム気鮑鄒した平成10年以降平成23年2月までの間、原告が被告に対してプログラム気虜鄒料を請求した事実もない。

といった諸点から、本件保守契約締結以前に原告が行ったプログラム戯鄒作業に対する対価の支払は既に完了していると解するのが相当であると判断しています(10頁以下)。

(2)プログラム気了藩冦狙禅

プログラム気了藩冦狙禅瓩砲弔い胴義平海蓮

・被告が別途使用料を支払うことは当事者の間において想定されていないと解するのが合理的である。
・プログラム気了藩僂開始された後においても使用料の支払と窺える被告から原告に対する定期的な支払はされていない。
・本件保守契約締結に際しても使用料についての協議がされた形跡がない。

といった事実を総合して、原被告間において、原告がプログラム気虜鄒に関与したことについて、プログラム気了藩冦舛了拱Г呂覆せ櫃旅膂佞なされていたと認めるのが相当であると判断しています(11頁)。

結論として、商法512条に基づくプログラム気虜鄒・使用料の請求は理由がないと判断しています。

(3)プログラム気諒製権侵害性

プログラム気諒製権侵害を理由とする190万円の請求について、控訴審は、既存のパッケージソフトであるファイルメーカーを利用してデータの入力項目・入力方法の設定作業及びデータの入力、入力したデータの表示・印刷方法等の設定作業を原告は担当しプログラム気鮑鄒したものであり、既存のパッケージソフトはこれを利用して定められた手順に従って設定、入力等を行うことにより容易にプログラムが作成できるように作られており、プログラム気發海里茲Δ砲靴萄鄒されたものであると認められる。そして、本件全証拠によっても、プログラム気著作権法2条1項1号、10号の2、10号の3各所定の「著作物」、「プログラム」及び「データベース」に該当することを認めるに足りる証拠はないと判断。 原告がプログラム気涼作権を有することを前提とした複製権侵害による損害賠償請求は理由がないとしています。
また、仮に原告がプログラム気亡悗靴堂燭蕕の著作権を有するとしても、被告がプログラム気砲弔い栃製、使用するに当たって、原告の許諾があることは当事者間に争いはないことから、被告がプログラム気亡悗靴栃製権を侵害したとの主張は主張自体失当であると判断しています(11頁以下)。

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2 プログラム兇坊犬訐禅瓩旅糧

(1)プログラム兇坊犬覲発委託料の請求

原審では、原告がプログラム供淵献絅縫普及指導員名簿、地域会名簿、販売書籍売上げ、金種計算等のプログラム)の開発・製作と主張する作業の内容は、被告が使用しているデータベースソフトにおけるデータの入力・出力の設定を変更して被告の使い勝手に合わせる作業であって、それ自体独立したソフトウェアの開発・製作と評価できるようなものではないとして、原告の主張するプログラム兇粒発委託契約の成立は認められず、プログラム兇粒発委託料960万円の請求は理由がない、と判断されていました。
控訴審でも原告被告ともにプログラム兇虜鄒は、本件保守契約における保守業務の一環として行われる作業と理解していたと認めるのが相当であるとして、開発委託契約の成立を認めず、原審の結論が維持されています。

(2)プログラム兇諒製権侵害性

プログラム兇蓮▲廛蹈哀薀爿気離愁侫箸某靴燭糞’修鯢娉叩⊇だ阿鮖椶靴燭發里版Г瓩蕕譴襪箸海蹇∨楫鐐款攀鬚砲茲辰討皀廛蹈哀薀爿兇著作権法2条1項1号、10号の2、10号の3各所定の「著作物」、「プログラム」及び「データベース」に該当することを認めるに足りる証拠はないと控訴審は判断。
したがって、原告がプログラム兇涼作権を有することを前提とした複製権侵害による損害賠償請求は理由がないとされています。

そのほか、プログラム兇寮什遒坊犬訐蘇薹戚鵑亡陲鼎報酬請求や不当利得返還請求の肯否についても原審の判断が維持されています。

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■コメント

業務管理に資するプログラムを構築したプログラマーと製作を委託した法人の間の契約関係を巡って紛争になった事案です。
グラフやスプレッドシートの作成ができるパッケージソフトでデータベースソフトウェアのファイルメーカーを利用して作成されたプログラムであっても、必ずしも著作物性が否定される訳では無く、著作権登録の対象にもなりますが、今回の著作物については、(仮に何らかの著作権を有するとしても、と微妙な言い回しがされていますが)基本的にプログラムやデータベースとしての著作物性が否定されています。
原審では、プログラム著作物の職務著作性(15条2項)が争点とされ、肯定されていますが、原告の業務の関わり方として職務著作性を肯定できるかどうかは議論の余地がありそうです。

なお、原審の判決が出された当時は原審判決文の最高裁サイトでの公開がありませんでしたが、控訴審判決文の公開に併せて、原審の判決文が参考判決として添付掲載されています。

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2013年11月11日

ネコグッズデザイン翻案事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ネコグッズデザイン翻案事件

東京地裁平成25.10.21平成24(ワ)10382著作権侵害差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀 滋
裁判官      小川雅敏
裁判官      西村康夫

*裁判所サイト公表 2013.11.6
*キーワード:著作物性、複製、翻案、改変、一般不法行為

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■事案

グッズ用のネコやクマの図柄の類否が争点となった事案

原告:雑貨製造販売会社
被告:雑貨製造販売会社、デザイナー

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、27条、20条、112条、民法709条

1 被告商品が原告作品を複製・翻案したものであるか
2 原告の営業上の利益を故意に侵害することを理由とする不法行為に基づく損害賠償請求の成否

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■事案の概要

『本件は,原告が,原告作品について,デザイナーとして原告に勤務しているAが職務上作成したものであると主張した上で,被告甲が提供したデザインに基づいて被告会社が製造・販売した被告商品について,原告作品を複製・翻案したものである旨主張して,(1)被告会社に対し,(ア)著作権(複製権,翻案権,譲渡権)侵害を理由とする著作権法112条1項に基づく差止請求として,被告商品の製造・販売の禁止,(イ)同様に同条2項に基づく廃棄請求として,被告会社が占有する被告商品の廃棄を求めるとともに,(2)被告らに対し,(ア)著作権(複製権,翻案権,譲渡権)・著作者人格権(同一性保持権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求として,3億1526万6060円(内訳・著作権侵害につき同法114条2項の推定により2億7615万0960円,著作者人格権侵害につき慰謝料500万円,弁護士費用相当額3411万5100円)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成24年4月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,(イ)原告の営業上の利益を故意に侵害することを理由とする不法行為に基づく損害賠償請求として,慰謝料500万円及びこれに対する前同様の遅延損害金の支払を求めた事案である。』(2頁)

原告作品:「くろねこフェイスタオル」「ガーゼハンカチねことさかな」等5点
被告図柄:「シャロン」「サビーヌ」「ノワール」

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■判決内容

<争点>

1 被告商品が原告作品を複製・翻案したものであるか

被告商品が原告作品を複製又は翻案したものであるかどうかについて、原告主張に係る原告作品の箇所と被告商品の対応箇所の対比、検討がまずされています(38頁以下)。

原告作品1について、原告作品のネコの図柄の目、鼻、口、ひげ、耳、顔といった構成部分を抽出した上で、被告作品と対比。相違点が認められるとして、被告商品は原告作品を有形的に再製したものではなく、また、原告作品の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものでもない、として複製又は翻案を裁判所は認めていません。

結論として、原告作品5点すべてについて、被告商品による複製又は翻案を裁判所は認めていません。

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2 原告の営業上の利益を故意に侵害することを理由とする不法行為に基づく損害賠償請求の成否

原告は、被告らが何らの労力も費やさずに容易かつ大量に原告商品を模倣して営業上の利益を上げることは原告商品の価値を低下させるとともに、原告の顧客を奪うものであって、公正かつ自由な競争原理によって成り立つ取引社会において著しく不公正な手段を用いて法律上保護される原告の営業活動上の利益を侵害するものとして、不法行為(民法709条)を構成するなどと主張しました(47頁以下)。
しかし、裁判所は、被告らが自由競争の範囲を逸脱して原告の営業を妨害していることを肯定できる事情は見当たらないとして、原告の主張を認めていません。

結論として、改変(同一性保持権侵害性)も含め原告のいずれの請求も棄却されています。

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■コメント

原告作品や被告商品の画像が無く、また相違点の対比一覧表も判決文に添付がないため、具体的なデザインの類否の判断内容が判然としません。
被告会社サイトを拝見しますと、ネコの「シャロン」とクマの「ノワール」のデザインがどのような雰囲気のものであるかが分かりますが、原告会社サイトを見る限りでは、ネコやクマの図柄の商品はあるものの、本件の原告作品がどのようなものだったのかは(10年以上前の製品でラインナップから既に外れているのかもしれません)、分かりませんでした。
シャロン

「シャロン」と「ノワール」(コンパクトバッグ)

被告会社の取締役が原告の元従業員であった、また、被告会社の代表取締役が過去、別会社で原告が製造した商品を多数取り扱っていた、さらに、原告が被告会社に原告商品の販売を委託していたといった経緯があり、人的交流も含め原告商品については被告らは知悉している状況ではありました。
判決文37頁を読むと、商品の売れ筋といった市場分析も含めたノウハウへの被告側によるフリーライドといった認識が原告側にはあったようですが、一般不法行為論としても違法とは判断されていません。

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■過去のブログ記事

ネコのぬいぐるみの類否が争点となった事案
大阪地裁平成22.2.25平成21(ワ)6411著作権侵害差止等請求事件
猫ぬいぐるみ翻案事件(2010年3月8日記事)

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■参考サイト

原告サイト:商品一覧

被告会社サイト:商品一覧
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2013年11月08日

韓国ドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」小道具事件(控訴審)−著作権 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

韓国ドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」小道具事件(控訴審)

知財高裁平成25.10.30平成25(ネ)10046損害賠償請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官      西 理香
裁判官      田中正哉

*裁判所サイト公表 2013.11.6
*キーワード:著作権譲渡、対抗要件、背信的悪意者、展示権、複製権

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■事案

被控訴人らが、登録しなければ著作権譲渡を対抗することができない第三者(著作権法77条)に当たるかどうかが争点となった事案の控訴審

控訴人 (一審原告):韓国企業
被控訴人(一審被告):日本放送協会ら

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法77条

1 被控訴人らが本件小道具等の著作権の移転登録の欠缺を主張するについて正当な利益を有しない第三者に当たるか

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■事案の概要

『本件は,控訴人が,被控訴人らが韓国のテレビドラマの展覧会を開催して小道具や衣装,ドラマセット等を展示し,関連グッズを販売して,控訴人の上記小道具等の著作権(展示権及び複製権)を侵害したと主張して,被控訴人らに対し,不法行為に基づき,損害賠償を請求した事案である。原審が控訴人の請求をいずれも棄却したのに対し,控訴人が上記の裁判を求めて控訴しているものである。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 被控訴人らが本件小道具等の著作権の移転登録の欠缺を主張するについて正当な利益を有しない第三者に当たるか

韓国ドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」の美術や小物のデザイン、著作権等の権利譲渡を制作会社(MBCA)から受けたとする控訴人が、MBCAとライセンス契約を締結した上でドラマの展覧会を開催して小道具や衣装等を展示したり、関連グッズを販売した被控訴人らに対して小道具等の著作権(展示権、複製権)を侵害したと主張。
控訴人は登録を経ていなかったことから、登録を経ることなく対抗できる、いわゆる背信的悪意者に被控訴人らが当たるかどうかが原審に引き続き争点となっています(著作権法77条)。
この点について、被控訴人らが、控訴人に本件小道具等の著作権があることを知りながらMBCAと共謀してこれを否定したと評価すべき事情も見いだし難く、また、被控訴人らが控訴人の著作権の移転登録を妨げたといった事情も何ら窺えないとして、控訴審においても被控訴人らについて、控訴人の著作権の移転登録の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情があるということはできないと判断されています(5頁以下)。

結論として、控訴人の請求は棄却されています。

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■コメント

結論として原審の判断が維持されています。
平成23年7月7日にソウル高等法院で控訴人による韓国MBCの制作子会社であるMBCAに対する共同事業契約違反による損害賠償請求事件の判決があり(上告棄却確定)、本件一審判決の時点よりも控訴人とMBCAの紛争の経緯が明らかになっています(7頁以下参照)。控訴人とMBCAの間で紛争があるなかで、著作権譲渡の権利関係について移転登録もなく客観的に明確でない段階での取引として、被控訴人らがMBCAを信頼してライセンス契約を締結しても、やむを得ないところである、という裁判所の判断です。

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■過去のブログ記事

原審記事
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2013年11月01日

ニコニコ動画発信者情報開示請求事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ニコニコ動画発信者情報開示請求事件

東京地裁平成25.10.22平成25(ワ)15365発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官      高橋 彩
裁判官      植田裕紀久

*裁判所サイト公表 2013.10.23
*キーワード:著作物性、発信者情報開示、プロバイダ責任制限法

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■事案

ニコニコ動画サイトに掲載された動画の発信者に係る情報の開示を求めた事案

原告:宗教法人
被告:プロバイダ事業者

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、プロバイダ責任制限法4条1項

1 明らかな著作権侵害の有無について
2 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無について

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■事案の概要

『本件は,原告が,氏名不詳者により被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイトに掲載された動画(以下「本件動画」という。)が原告の著作権を侵害していると主張して,被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づき,被告が保有する発信者情報の開示を求めた事案である。』(1頁)

<経緯>

H24.11 本件動画投稿
H25.06 本件提訴、本件動画削除

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■判決内容

<争点>

1 明らかな著作権侵害の有無について

(1)原告動画の著作物性

原告動画は、原告信者の体験談を紹介するインタビューを中心に構成されたもので、とりわけ本件動画の部分1ないし4については、視聴者に対して効果的に伝える工夫をした部分であって、著作者の思想又は感情を創作的に表現したもの(著作権法2条1項1号)として映画の著作物に該当すると裁判所は判断しています(3頁以下)。

(2)原告動画の著作権者

原告動画は、シナノ企画の発意に基づきシナノ企画の従業員であるAがシナノ企画の職務として作成したものであり、シナノ企画の著作の名義の下に公表されたことが認められ、職務著作(15条1項)としてシナノ企画に著作権が帰属し、シナノ企画はその後、原告に対して原告動画についてのすべての著作権を譲渡したと認められることから、原告が原告動画について著作権を有していると認めることができると判断されています(5頁)。

(3)著作権侵害の有無

本件動画の部分1に接した者は原告動画の部分1の、また、本件動画の部分4に接した者は原告動画の部分4の表現上の本質的な特徴を直接感得し得るものであるとして、本件動画の部分1及び4は、対応する原告動画の部分を有形的に再生し、複製したものと評価することができると裁判所は判断。
本件動画を作成して本件サイトに投稿する行為は、原告動画のうち少なくとも原告動画の部分1及び4についての複製権及び公衆送信権を侵害すると判断しています(5頁)。

結論として、本件動画の動画投稿サイト「ニコニコ動画」への投稿により、原告の著作権が侵害されたことは明らかであると認められています(プロバイダ責任制限法4条1項1号)。

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2 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無について

原告が、原告動画の著作権を侵害した者に対して損害賠償請求権を行使するためには、被告が別紙動画投稿目録の「投稿日時」欄記載の日時に「投稿時IPアドレス」欄記載のIPアドレスを割り振った者、すなわち本件動画の発信者その他本件動画の送信に係る者の氏名又は名称、住所及び電子メールアドレスを取得することが必要であるとして、原告にはこれら発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると判断されています(プロバイダ責任制限法4条1項2号 6頁)。

結論として、別紙投稿動画目録記載の動画に関する以下の情報の開示請求が認められています。
1 発信者その他本件動画の送信に係る者の氏名又は名称
2 発信者その他本件動画の送信に係る者の住所
3 発信者の電子メールアドレス(電子メールの利用者を識別するための文字、番号、記号その他の符号)

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■コメント

プロバイダ責任制限法4条1項1号「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき」の判断に際して著作権侵害性が検討されています。

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■追記(2013/11/1)

関連事案(別件動画に関する発信者情報開示請求事件 裁判所サイト公表11/1)

原告対KDDI
東京地裁平成25.10.25平成25(ワ)15969

シナノ企画対KDDI
東京地裁平成25.10.25平成25(ワ)15970
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2013年10月29日

POS情報開示システムライセンス事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

POS情報開示システムライセンス事件

東京地裁平成25.9.20平成24(ワ)6801損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀 滋
裁判官      小川雅敏
裁判官      森川さつき

*裁判所サイト公表 2013.10.21
*キーワード:ライセンス契約、共同開発、契約不更新

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■事案

POS情報開示システムのライセンス契約不更新に起因して紛争となった事案

本訴原告・反訴被告:情報処理会社
本訴被告・反訴原告:生活協同組合、システム開発会社(組合子会社)

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■結論

本訴請求棄却、反訴請求認容

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■争点

条文 著作権法112条1項

1 著作権行使の不可能を理由とする不法行為の成否
2 契約の更新拒絶等を理由とする不法行為の成否
3 不法行為請求(2)の成否
4 著作権法112条1項に基づく差止請求の成否
5 本件第1ライセンス契約及び本件第1覚書に基づくライセンス使用料請求の成否(反訴)
6 本件第2ライセンス契約及び本件第2覚書に基づくライセンス使用料請求の成否(反訴)

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■事案の概要

『本訴は,原告が,(1)POS情報(販売時点情報)開示システム(プログラム)である「宝箱システム」(以下,「宝箱システム」といい,これに係るサービスを「宝箱サービス」という。)の著作権を有し,その後継システムである「トレジャーデータ」(以下「トレジャーデータ」という。)を共同開発して著作権を準共有しているなどとした上で,被告らは,原告の著作権行使を不可能にし,また,原告が継続契約関係に基づく独占的な営業上の利益を保有し,契約の更新を拒絶する正当な理由がないにもかかわらず,不当な意図に基づき契約の更新を拒絶したなどと主張して,不法行為に基づく損害賠償5億4413万9378円の一部請求として,被告ら各自に対し,4億9163万1283円の支払を求め(以下「不法行為請求(1)」という。),(2)被告組合は,宝箱システムの著作権を有していないにもかかわらず,ライセンス料を支払わせたなどと主張して,不法行為に基づく損害賠償請求(選択的に不当利得に基づく利得金返還請求)として,被告組合に対し,1億0919万6750円(附帯請求としてライセンス料の各支払日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金)の支払を求める(以下,選択的併合である不当利得に基づく利得金返還請求を含めて「不法行為請求(2)」という。)とともに,(3)著作権法112条1項に基づく差止請求として,被告らに対し,宝箱システム及びトレジャーデータの使用禁止を求めた事案である。
 反訴は,(1)被告組合が,宝箱システムのライセンス契約及び覚書に基づくライセンス使用料として,原告に対し,3191万5500円(附帯請求としてライセンス使用料の各弁済期の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金)の支払を求め,(2)被告会社が,トレジャーデータのライセンス契約及び覚書に基づくライセンス使用料として,原告に対し,3150万円(附帯請求として前同様の遅延損害金)の支払を求めた事案である。』(3頁以下)

<経緯>

H15 被告組合が東京流通情報にシステム開発、保守委託
    被告組合がいるかママにホームページ運用委託
H17 いるかママがPSIGとの間で「宝箱システム」運用業務委託契約締結
H18 被告組合といるかママ間で「宝箱システム」独占的ライセンス契約締結
    いるかママがサンエー、コープこうべ、ライフとの間で「宝箱システム」ライセンス契約締結
H19 いるかママから原告に運営引継ぎ
    原告と被告組合間で「宝箱システム」独占的ライセンス契約(本件第1ライセンス契約)、業務委託契約、覚書締結
    原告がPSIGとの間でシステム共同開発契約締結
    原告がサンエーとの間で「宝箱システム」ライセンス契約締結
    原告といるかママとの間で営業譲渡覚書締結
    原告がライフ(首都圏)との間で「宝箱システム」ライセンス契約締結
    原告がいるかママ及びコープこうべとの間で事業譲渡契約締結
    原告がライフ(近畿圏)との間で「宝箱システム」ライセンス契約締結
H21 原告がタイヨーとの間で「宝箱システム」ライセンス契約締結
    原告がサンネットとの間で「宝箱システム」ライセンス契約締結
H23 トレジャーデータの企画、開発、完成
    被告会社(被告組合子会社)と原告との間で「新宝箱システム環境使用契約書」、ライセンス契約書(本件第2ライセンス契約)、覚書締結
    被告会社がアジェントリクスとライセンス契約締結
    被告組合が原告に対して本件第1ライセンス契約不更新通知
    原告が札幌地裁に提訴、東京地裁へ移送

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■判決内容

<争点>

1 著作権行使の不可能を理由とする不法行為の成否

(1)宝箱システムの著作権の帰属

原告は、宝箱システムの著作権について開発元から譲渡を受けていたと主張しましたが、裁判所は認めていません(34頁以下)。結論として、宝箱システムの著作権は、被告組合に帰属していると判断しています。

(2)トレジャーデータの共同開発

宝箱システムの後継システムとなるトレジャーデータの開発について、原告は、被告らとの共同開発である等の主張をしましたが、トレジャーデータの開発に関する原告の主張を裁判所はいずれも認めていません(36頁以下)。

結論として、原告は、宝箱システム及びトレジャーデータの著作権を有するとは認められず、原告がこれらのシステムを利用することができなくなったとしても、それが原告による著作権の行使を不可能にした不法行為を構成するものとはいえない。また、著作物の使用という側面からも原告はトレジャーデータへの移行に伴い、宝箱サービスの使用廃止について同意しており、宝箱システムのプログラムを保管していたのであるから、被告らによって宝箱システムのプログラムの使用が不可能にされていたとは認められない。同様に、原告は、本件第2ライセンス契約によってトレジャーシステムを利用できる権利(ライセンス)を取得していたのであるから、被告らによってトレジャーデータの使用が不可能にされていたとは認められない。よって、著作権行使の不可能を理由とする不法行為は成立しない、と裁判所は判断しています。

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2 契約の更新拒絶等を理由とする不法行為の成否

原告は、宝箱システムからトレジャーデータへの移行作業は、従前同様に原告が独占的なライセンス権限、データベースの権限を有し、利用者に対し引き続きサービスを提供する権限を有していることを前提に行われたものである旨主張しました(39頁以下)。
この点について裁判所は、本件第2ライセンス契約の文言や被告会社からの通知の際の原告の対応を勘案して、原告と被告らの間において、原告に対してトレジャーデータの利用についても独占的なライセンスが与えられることが予定されていたと認めることは困難であるし、その他これを認めるに足りる証拠はないと判断。
結論として、被告会社が原告に対してトレジャーデータの利用について独占的なライセンスを与えなかったことや被告組合が本件業務契約を更新しないでPOS情報の提供をしなくなったこと等が原告の営業の利益を違法に侵害するとはいい難く、不法行為は成立しないと判断しています。

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3 不法行為請求(2)の成否

原告は、被告組合が宝箱システムのシステムプログラムの著作権を有していないのに不法にライセンス料名下に金員を詐取してライセンス料相当額の損害を原告に与えたなどとして、不法行為を主張するとともに、著作権がない被告組合に対し本来著作権使用の対価としてのライセンス料を支払う必要がないとして不当利得を主張しました(42頁以下)。
しかし、被告組合は宝箱システムの著作権を有しているとして、裁判所は原告の主張を認めていません。

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4 著作権法112条1項に基づく差止請求の成否

原告が宝箱システム及びトレジャーシステムの著作権を有しているとは認められないことから、差止請求は認められていません(43頁)。

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5 本件第1ライセンス契約及び本件第1覚書に基づくライセンス使用料請求の成否(反訴)

原告が被告組合に対して宝箱システムのライセンス利用料を支払うことを内容とする本件第1ライセンス契約及び本件第1覚書に基づく被告組合のライセンス使用料請求(3191万5500円)は、理由があると裁判所は判断しています(43頁以下)。

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6 本件第2ライセンス契約及び本件第2覚書に基づくライセンス使用料請求の成否(反訴)

原告が被告会社に対してトレジャーシステムを利用できる権利(ライセンス)の対価支払を内容とする本件第2ライセンス契約及び本件第2覚書に基づく被告会社のライセンス使用料請求(3150万円)は、理由があると裁判所は判断しています(44頁以下)。

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■コメント

POS情報開示システムのクラウド化に伴い、サービスの運用会社を変更、運用を発注元の子会社に担当させることとしたため、従前の運用会社との契約が不更新となったことから契約関係について紛争となりました。

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