知財判決速報2012

2012年08月20日

グリー対DeNA「釣りゲータウン2」事件(控訴審)−著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「釣りゲータウン2」事件(控訴審)

知財高裁平成24.8.8平成24(ネ)10027著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 睇眞規子
裁判官      井上泰人
裁判官      荒井章光

*裁判所サイト公表 2012.8.10
*キーワード:創作性、翻案、誤認混同惹起行為性、一般不法行為論

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■事案

携帯電話向けインターネット釣りゲームの類否や誤認混同惹起行為性が争点となった事案の控訴審

控訴人(一審被告) :インターネット情報提供会社、システム開発会社
被控訴人(一審原告):インターネット情報提供会社

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■結論

一審被告敗訴部分取消、一審原告控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、20条、27条、不正競争防止法2条1項1号、民法709条

1 「魚の引き寄せ画面」に係る著作権及び著作者人格権の侵害の成否
2 主要画面の変遷に係る著作権及び著作者人格権の侵害の成否
3 不正競争防止法2条1項1号に係る不正競争行為の成否
4 法的保護に値する利益の侵害に係る不法行為の成否

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■事案の概要

『本件は,第1審原告が,第1審被告らに対し,
(1) 第1審被告らが共同で製作し公衆に送信している携帯電話機用インターネット・ゲーム「釣りゲータウン2」(以下「被告作品」という。)を製作し公衆に送信する行為は,第1審原告が製作し公衆に送信している携帯電話機用インターネット・ゲーム「釣り★スタ」(以下「原告作品」という。)に係る第1審原告の著作権(翻案権,著作権法28条による公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害すると主張し,(1)著作権法112条に基づき,原判決別紙対象目録記載の被告作品に係るゲームの影像の複製及び公衆送信の差止め,ウェブサイトからの上記影像の抹消及び記録媒体からの上記影像に係る記録の抹消,(2)民法709条,719条に基づき,損害賠償金の支払,(3)著作権法115条に基づき,謝罪広告の掲載を求め,
(2) 第1審被告らが,原判決別紙影像目録1及び2記載の影像(以下「被告影像1」「被告影像2」という。)を第1審被告らのウェブページに掲載する行為は,不正競争防止法2条1項1号の「混同惹起行為」に当たると主張して,(1)同法3条に基づき,被告影像1の抹消及び第1審被告ORSOに対する被告影像2の抹消,(2)民法709条,719条に基づき,損害賠償金の支払,(3)不正競争防止法14条に基づき,謝罪広告の掲載を求め,
(3) 第1審被告らが,第1審原告に無断で原告作品に依拠して被告作品を製作し配信した行為は,第1審原告の法的保護に値する利益を違法に侵害し,不法行為に該当すると主張して,(1)民法709条,719条に基づき,損害賠償金の支払,(2)民法723条に基づき,謝罪広告の掲載を求める事案』

『原判決は,被告作品における「魚の引き寄せ画面」は,原告作品における「魚の引き寄せ画面」に係る第1審原告の著作権(翻案権,公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するとしたが,その余の著作権及び著作者人格権侵害の主張を認めず,また,第1審被告らの行為は不正競争防止法2条1項1号にも不法行為にも当たらないとして,前記1(1)(1)の全部並びに(1)(2)のうち合計2億3460万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で,第1審原告の請求を認容し,その余の請求を全て棄却した。
 そこで,第1審原告が,これを不服として控訴するとともに,損害賠償請求を拡張し,平成23年7月8日から平成24年3月8日までの期間の損害金として,1億2865万円及びこれに対する遅延損害金の支払を請求した。また,第1審被告らも,原判決を不服として控訴した。』(3頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 「魚の引き寄せ画面」に係る著作権及び著作者人格権の侵害の成否

「魚の引き寄せ画面」の類否に関して裁判所は、翻案の意義について言及した上で、携帯電話向けアプリや家庭用テレビゲームといった他の釣りゲームの影像についても検討(31頁以下)。その上で、

1 両作品の魚の引き寄せ画面は、水面より上の様子が画面から捨象され、水中のみが真横から水平方向に描かれている
2 水中の画像には、画面のほぼ中央に、中心からほぼ等間隔である三重の同心円と黒色の魚影及び釣り糸が描かれ、水中の画像の背景は、水の色を含め全体的に青色で、下方に岩陰が描かれている
3 釣り針にかかった魚影は、水中全体を動き回るが、背景の画像は静止している

といった点において両作品は共通すると判断。しかし、

1 釣りゲームにおいて、水中のみを描くことや水中の画像に魚影、釣り糸及び岩陰を描くこと、水中の画像の配色が全体的に青色であることは、他の釣りゲームにも存在するものである上、実際の水中の影像と比較しても、ありふれた表現である
2 水中を真横から水平方向に描き、魚影が動き回る際にも背景の画像は静止していることは、原告作品の特徴の1つでもあるが、このような手法で水中の様子を描くこと自体はアイデアというべきものである
3 三重の同心円を採用することは、従前の釣りゲームにはみられなかったものであるが、弓道、射撃及びダーツ等における同心円を釣りゲームに応用したものというべきものであって、釣りゲームに同心円を採用すること自体は、アイデアの範疇に属するものである
4 同心円の態様については、具体的表現において相違する
5 黒色の魚影と釣り糸を表現している点についても、釣り上げに成功するまでの魚の姿を魚影で描き、釣り糸も描いているゲームは、従前から存在していたものであり、ありふれた表現というべきである

として、共通する部分は、表現それ自体ではない部分又は表現上の創作性がない部分にすぎず、また、その具体的表現においても異なるものであると判断。
結論として、原告作品の魚の引き寄せ画面との共通部分と相違部分の内容や創作性の有無又は程度に鑑み、被告作品の魚の引き寄せ画面に接する者が、その全体から受ける印象を異にし、原告作品の表現上の本質的な特徴を直接感得できるということはいえないとして翻案権侵害性を否定しています。

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2 主要画面の変遷に係る著作権及び著作者人格権の侵害の成否

ゲームの画面と画面とをどのように遷移させるか、主要画面の選択と配列などの類似性に関して、裁判所はその他のゲーム機や携帯電話機用ゲームの特色について言及した上で、翻案の成否について検討しています(46頁以下)。
画面の選択と変遷、トップ画面、釣り場選択画面、キャスティング画面、釣り上げ成功時画面、釣り上げ失敗時画面について詳細に検討。
結論としては、被告作品の画面の変遷並びに素材の選択及び配列は、アイデアなど表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において原告作品のそれと同一性を有するにすぎず、また、具体的な表現において相違するものであって、原告作品の表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないとして翻案権侵害性を否定しています。

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3 不正競争防止法2条1項1号に係る不正競争行為の成否

第1審原告は、原告作品の引き寄せ画面は第1審原告の商品等表示として周知性を有するとして、第1審被告作品の利用について、誤認混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)にあたると主張しました。
この点について裁判所は、原告影像の第1審原告の周知商品等表示性、商品等表示としての使用性、影像の類似性のいずれも欠くとして、第1審被告らの行為の誤認混同惹起行為該当性を否定しています(61頁以下)。

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4 法的保護に値する利益の侵害に係る不法行為の成否

一般不法行為論について裁判所は、著作権法や不正競争防止法が規律の対象とする著作物や周知商品等表示の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り不法行為を構成するものではないと解するのが相当である、と説示した上で、第1審被告らの行為によって第1審原告の信用を毀損したとはいえないと判断。
仮に、第1審被告らが被告作品を製作するに当たって、原告作品を参考にしたとしても、第1審被告らの行為を自由競争の範囲を逸脱し第1審原告の法的に保護された利益を侵害する違法な行為であるということはできないから、民法上の不法行為は成立しないというべきであるとしています(65頁以下)。

結論として、第1審原告の請求は、全部棄却として原判決中第1審被告ら敗訴部分は取り消されています。

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■コメント

争点1については、原審から一転、著作権侵害性が否定されました。先行する他のゲームの分析もあったかとは思いますが、知財高裁第4部の政策的価値判断として携帯電話向けゲームコンテンツ開発、利用を促進する方向を選択したといえます。

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■過去のブログ記事

2012年03月29日記事 原審

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■参考サイト

企業法務戦士の雑感(2012−8−9記事)
あっという間の大逆転。

グリー株式会社 IRニュース(2012年8月8日)
著作権侵害差止等請求訴訟の控訴審判決のお知らせ
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2012年07月31日

漫画「子連れ狼」パチンコ遊技機ライセンス事件−著作権 許諾料返還請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

漫画「子連れ狼」パチンコ遊技機ライセンス事件

東京地裁平成24.7.19平成23(ワ)35541許諾料返還請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 高野輝久
裁判官      三井大有
裁判官      志賀 勝

*裁判所サイト公表 2012.7.25
*キーワード:マンガ、ライセンス契約、複製、翻案、キャラクター、解除、債務不履行、相殺

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■事案

パチンコ遊技機向け漫画原作の著作権処理がされていなかったことによりライセンス契約が解除された事案

原告:パチンコメーカー
被告:版権管理会社

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法21条、27条、民法540条

1 被告の有する漫画「桃太郎侍」の独占的商品化権侵害に係る損害賠償請求権を自働債権とする相殺の抗弁

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■事案の概要

『パチンコ遊技機等の開発,製造,販売に利用するための漫画・劇画(以下「プロパティ」という。)のライセンス契約4件を被告と締結した原告が,被告に対し,被告はライセンス対象のプロパティの利用を原告に許諾する全ての権原を有する旨保証しながら,これを有していなかったため,(1)うち3件のライセンス契約については,これを催告の上解除したと主張して,解除に基づく原状回復として,支払済みの許諾料合計1億5200万円及びこれに対する返還期限の翌日である平成22年6月12日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求め,(2)その余のライセンス契約1件については,原告が別途プロパティの利用許諾料の支出を余儀なくされて同額の損害を被ったと主張して,債務不履行に基づく損害賠償として,1400万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年11月10日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。被告は,被告の有する漫画「桃太郎侍」の独占的商品化権侵害に係る損害賠償請求権を自働債権とする相殺の抗弁を主張して,原告の請求を争っている』事案(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 被告の有する漫画「桃太郎侍」の独占的商品化権侵害に係る損害賠償請求権を自働債権とする相殺の抗弁

原告は、パチンコ、パチスロ遊技機の開発、製造、販売に利用するために「修羅雪姫」、「子連れ狼」、「花平バズーカ」、「弐十手物語」の各漫画原作について被告とライセンス契約を締結し被告から利用許諾を得たものの、被告が著作権者から利用許諾を受けることができなかったことから、契約を解除、許諾料の返還請求をするなどしました。
これに対して、被告は、被告が保有する漫画「桃太郎侍」の独占的商品化権について、原告が被告の許諾を得ることなくパチンコ遊技機「CR桃太郎侍」に当該漫画を使用しているとして独占的商品化権侵害に基づく損害賠償請求権を自働債権とする相殺の抗弁を主張しました(7頁以下)。

この点について、裁判所は、

『(被告が主張する)権利ないし利益の内容を含めて,その趣旨が判然としないが,これをもって,本件パチンコ遊技機の液晶画面の表示等が,本件小説の二次的著作物である本件漫画の著作権,特に複製権・翻案権を侵害しているという趣旨であると善解することができるとしても,被告は,本件パチンコ遊技機の液晶画面の表示等が本件漫画に依拠したものであることについて何ら具体的な主張立証をしないばかりか,本件漫画の表現と上記表示における表現とが完全に違っていることを自認しているから,本件パチンコ遊技機を製造販売することが本件漫画の複製権・翻案権を侵害するとは認められない。』

『また,被告は,本件漫画に登場する「桃太郎侍」などのいわゆるキャラクターが著作物であるかのような主張もするが,本件漫画を離れ,キャラクター自体を著作物と認めることはできないというべきであるから(最高裁平成9年7月17日第一小法廷判決・民集51巻6号2714頁参照),被告の上記主張は失当というほかない。』

として被告の主張を容れず、原告の被告に対する不法行為は成立せず自働債権の発生を認めることができないとして、被告の相殺の抗弁を認めていません。

結論として、請求全部認容となっています。

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■コメント

仲介する著作権管理会社が著作権者から許諾を得られなかったことが原因でメーカーとの間のパチンコ台への漫画作品の二次利用契約が解除された事案ですが、版権元となる漫画家さんご自身の契約関係がもともと錯綜している場合、魅力的な作品ではあるものの、その取扱いについてはリスクの高い契約になります。
P台メーカーさんも執行役員レベルが著作権者に直接会うなどして細心の注意を払っておいでかとは思いますが、避けて通れないリスクなのかもしれません。
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2012年07月17日

近世錦絵世相史事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

近世錦絵世相史事件

大阪地裁平成24.7.5平成23(ワ)13060損害賠償請求事件PDF
別紙PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 谷 有恒
裁判官      松川充康
裁判官      網田圭亮

*裁判所サイト公表 2012.7.12
*キーワード:複製、翻案、アイデア表現二分論、一般不法行為

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■事案

錦絵の研究成果について盗用があるなどとして書籍の複製権、翻案権侵害性が争点となった事案

原告:錦絵研究家P3の相続人
被告:作家、浮世絵研究家

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、27条、民法709条

1 被告の行為が原告著作物についての著作権侵害(複製権侵害又は翻案権侵害)に当たるか
2 一般不法行為の成否

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■事案の概要

『原告が,被告に対し,(1)被告が執筆した「江戸のニューメディア 浮世絵 情報と広告と遊び」と題する単行本(以下「本件単行本」という。)の記述,(2)被告が執筆した「大江戸浮世絵暮らし」と題する文庫本(以下「本件文庫本」という。)の記述,及び(3)被告が出演した「NHKウィークエンドセミナー 江戸のニューメディア 浮世絵意外史」と題するテレビ番組(全4回。以下,放送順に「本件番組1」ないし「本件番組4」という。)での発言について,いずれも原告の著作権(複製権又は翻案権)を侵害し,又は一般不法行為が成立すると主張して,損害賠償金1000万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成23年11月3日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案』(1頁)

<経緯>

S10 P3が近世錦繪世相史刊行
S45 P3死亡、原告が著作権を相続
S53 原告が「錦絵随想8」執筆
S55 原告が「P3コレクション全集1 」に「あとがき」執筆
H3  被告が放送番組に出演
H4  被告が「江戸のニューメディア浮世絵 情報と広告と遊び」刊行
H14 被告が「大江戸浮世絵暮らし」刊行

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■判決内容

<争点>

1 被告の行為が原告著作物についての著作権侵害(複製権侵害又は翻案権侵害)に当たるか

原告は、被告著作物部分の記述又は発言が、原告の祖父であるP3の独自の研究成果を盗用し、自説として発表したものであり、原告記述部分と同一又は本質的に同一であることから複製又は翻案に当たると主張しました。
この点について、裁判所は、複製と翻案の意義について言及した上で、原被告著作物を対比して検討しています(別紙対比目録参照)。
結論として、著作物性がある部分での同一性がない、具体的な表現が異なっている、表現上の本質的特徴を感得できないなどとして、いずれの部分についても複製権又は翻案権侵害性を否定しています(20頁以下)。

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2 一般不法行為の成否

原告は、原告の祖父P3が長年の調査・研究により浮世絵版画は美術品として作られたものではなく、かわら版から発展したものであり、江戸時代の庶民の玩具であり、幕末期以降は事件報道を行うことにより一種のジャーナリズム的役割を果たした旨のユニークな結論にたどりついたところ、被告はP3の労苦にただ乗りして名声を上げ、かつ経済的利益を上げたことを理由に、一般不法行為(民法709条)が成立すると主張しました。
この点について裁判所は、著作権法が規律の対象とする権利あるいは利益とは異なる法的に保護された利益を違法に侵害するなどの特段の事情がない限り不法行為を構成するものではないとした上で、本件では特段の事情がなく、原告の法的保護に値する利益が違法に侵害されたとは認められないと判断しています(30頁以下)。

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■コメント

別紙が添付されていて、原被告著作物の対比ができます。
例えば、符号Mの部分の対比は、以下の通りです。

・原告著作物4
「江戸時代末期において、玩具的教育資料としての役割をはたした錦絵の伝統は、やがて明治になると、教材という形で、正式な教育教材として扱われるようになった。」

・被告単行本148頁、文庫本189頁、
「こういうのをなにに使ったかというと、小学校とか、寺子屋から発展したそういうところで教科書の副読本として用いていたのです。」
・本件番組4
「こういうのを何に使ったかといいますと、これはアノ、小学校とかあるいは、マ寺子屋からこう発展したソノ、ウノーところですね、そういうところでアノー教科書のソノアノー副読本として用いていたんですね。ですからまあ、これは明らかにソノ浮世絵が大量生産できるというソノ利点と、あとソノ絵でもって説明できるということで、結局百科事典の代わりに、こういうものをソノたくさん作って、ウノ子供たちが勉強したってことですね。」


箱根富士屋ホテル物語事件一審(東京地裁平成22.1.29平成20(ワ)1586)のような一部認容の判断がされる余地もあるのが、アイデアと表現の連続性がある著作権事件での侵害性判断の難しいところかもしれません(控訴審では棄却)。
もっとも、本件別紙対比目録を見る限り、類否は事実やアイデアのレベルのものといえ、これで侵害性を肯定するとなれば、自由な表現活動が脅かされる懸念があります。
原告としては、被告がP3の見解への配慮を欠く点を法的に問題としている訳ですが、こうした点は、P3著作物を初出として被告著作物などに参考文献として掲載するかどうかも含めて、被告の浮世絵研究家としての学問的な評価の問題とすれば足りると思うところです。

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■過去のブログ記事

「箱根富士屋ホテル物語」事件(原審)
控訴審

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■参考判例

江差追分事件 最高裁平成13年6月28日平成11(受)922損害賠償等請求事件

学説や思想それ自体が著作権法の保護の範疇に属するものではないとした事案として、
・「日本の名著 三浦梅園」事件 
 東京地裁昭和59年4月23日昭和57(ワ)13668最新著作権関係判例集4巻282頁以下
 東京高裁昭和62年3月19日昭和59(ネ)1299 同6巻122頁以下
・「中国塩政史の研究」事件
 東京地裁平成4年12月16日平成元(ワ)1607等 判時1472号130頁以下
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2012年06月25日

退職従業員印刷会社顧客情報営業秘密事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

退職従業員印刷会社顧客情報営業秘密事件

東京地裁平成24.6.11平成22(ワ)23557損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀 滋
裁判官      森川さつき
裁判官      菊池絵理

*裁判所サイト公表 2012.6.21
*キーワード:退職従業員、顧客情報、営業秘密、複製権

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■事案

退職従業員による顧客情報の利用の違法性などが争点となった事案

原告:印刷物デザイン会社
被告:印刷会社、原告元従業員ら

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法21条、不正競争防止法2条6項、民法715条

1 スズキ印刷の保管する印刷用フィルムについて(被告Aらの債務不履行又は不法行為の成否)
2 本件システムについて(被告Aらの債務不履行又は不法行為の成否)
3 本件システムについて(本件システムの著作権(複製権)侵害の成否)
4 本件顧客情報について(被告Aらの債務不履行又は不法行為の成否)
5 クイックの保管する印刷用フィルムについて(被告Aらの債務不履行又は不法行為の成否)
6 NPiフォームの使用について(被告Aらの債務不履行又は不法行為の成否、損害額)
7 被告ニッシンの責任の成否
8 被告B、被告D及び被告Fに対する身元保証債務履行請求の可否
9 被告A及び被告Cに対する退職金返還請求(民法704条)の可否

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■事案の概要

『本件は,原告が,原告の元従業員であり,原告を退職後,被告有限会社ニッシングラフィック社(以下「被告ニッシン」という。)に就職した被告A(以下「被告A」という。),被告C(以下「被告C」という。)及び被告E(以下「被告E」といい,被告A,被告C及び被告Eを併せて「被告Aら」という。)は,(1)原告が有限会社スズキ印刷(以下「スズキ印刷」という。)において保管していた印刷用フィルムにつき,原告に無断で廃棄を指示し,かつ,その一部を隠匿し,(2)別紙システム目録記載の原告の印刷受発注システム(以下「本件システム」という。)のプログラムを持ち出した上,被告ニッシンに漏えいし,これを複製して被告ニッシンに利用させ,(3)原告から別紙営業秘密目録記載の顧客情報(以下「本件顧客情報」という。)を持ち出した上,被告ニッシンに漏えいし,これを利用して原告の顧客を被告ニッシンに収奪させ,(4)原告が株式会社クイック(以下「クイック」という。)において保管していた原告の印刷用フィルムを被告ニッシンの業務のために原告に無断で使用し,(5)株式会社賀川印刷(以下「賀川印刷」という。)が保管していた原告のNPiフォームを被告ニッシンの業務のために原告に無断で使用したと主張し,被告Aらの上記(1)〜(5)の行為は,同人らにつき,原告との間の雇用契約上の債務不履行及び共同不法行為(民法709条,710条,719条)に該当し,かつ,被告ニッシンにつき,共同不法行為(同法709条,719条)又は使用者責任(同法715条)が成立し,また,上記(2)の行為については,被告Aら及び被告ニッシンにつき,原告の著作権(複製権)侵害の共同不法行為が成立し,さらに,上記(2)及び(4)の行為については,被告Aら及び被告ニッシンの不正競争(被告Aらにつき不正競争防止法2条1項4号又は7号,被告ニッシンにつき同条1項4号,5号又は8号)に該当すると主張し,被告B,被告D及び被告Fについては,被告Aらをそれぞれ身元保証したものであるから,被告Aらの上記(1)〜(5)の行為による損害賠償義務につき,身元保証契約に基づく連帯保証債務履行義務を負うと主張して,
(1)被告Aらについては,債務不履行責任(民法415条),共同不法行為責任(同法709条,719条)又は不正競争防止法4条に基づく損害賠償として,被告ニッシンについては,使用者責任(民法715条),共同不法行為責任(同法709条,719条)又は不正競争防止法4条に基づく損害賠償として,被告B,被告D及び被告Fについては,身元保証契約に基づく連帯保証債務の履行請求として,連帯して,合計849万1899円((1)につき15万円,(2)につき200万円〔著作権法114条2項〕,(3)及び(4)につき629万1274円〔不正競争防止法5条2項〕,(5)につき5万0625円)及びこれに対する各被告に対する各訴状送達日の翌日(被告A,被告C,被告E,被告ニッシン,被告B及び被告Dについては平成22年8月11日,被告Fについては平成22年8月12日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するとともに,
(2)被告Aら及び被告ニッシンに対し,著作権法112条1項及び2項に基づき,本件システムの使用の差止め並びに同システムの内容を記録したデータ等の削除及び廃棄を,
(3)被告Aら及び被告ニッシンに対し,不正競争防止法3条1項及び2項に基づき,本件顧客情報の使用又は開示の差止め並びに本件顧客情報の内容を記録したデータ等の削除及び廃棄を各求め,
 上記(1)〜(5)の各行為は,被告A及び被告Cに関し,懲戒解雇事由に該当するものであるところ,同被告らは,懲戒解雇事由があり,退職金受領資格がないことを知りながら,原告から退職金を受領したものであり,これは同被告らの不当利得に当たると主張して,悪意の受益者に対する不当利得返還請求(民法704条)として,被告Aに対し540万0456円,被告Cに対し114万4033円(附帯請求として,同被告らに対する各訴状送達日の翌日である平成22年8月11日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求める事案』(3頁以下)

<経緯>

S56 被告Aが原告に入社
H07 被告Cが原告に入社
H19 原告会社で人員整理、A、Cを解雇、再雇用
H20 原告会社就業規則の改訂
H22 被告A、Cが原告を退職

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■判決内容

<争点>

1 スズキ印刷の保管する印刷用フィルムについて(被告Aらの債務不履行又は不法行為の成否)

被告Aらが、原告が印刷会社において保管していた印刷用フィルムについて原告に無断で廃棄を指示し、かつ、その一部を隠匿したかどうかについて、被告Aらの行為は、印刷会社の求めに応じて原告の再版作業を円滑にするための作業を行ったものとみることができ、原告との関係において違法性を有するものとは認められないと判断されています(41頁以下)。

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2 本件システムについて(被告Aらの債務不履行又は不法行為の成否)

被告Aらが、原告の印刷受発注システムのプログラムを持ち出した上、被告会社に漏えいし、これを複製して被告会社に利用させたかどうかについて、結論としては、それらの事実は認められていません(44頁以下)。

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3 本件システムについて(本件システムの著作権(複製権)侵害の成否)

争点2の通り、複製の事実が認められていません(47頁以下)。


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4 本件顧客情報について(被告Aらの債務不履行又は不法行為の成否)

原告から別紙営業秘密目録記載の顧客情報を持ち出した上、被告会社に漏えいし、これを利用して原告の顧客を被告会社に収奪させたかどうかについて、顧客情報の持ち出しや利用の事実が認められていません。また、顧客情報の営業秘密性についても、本件顧客情報のうち、個人の記憶や連絡先の個人的な手控えなどに係る情報については、雇用契約上開示等を禁じられる営業秘密に当たるとみることはできず、営業担当者がこれをその退職後に利用することがあったとしても、原告との間の雇用契約上の義務に反し、または不法行為を構成するものではないと判断されています(48頁以下)。

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5 クイックの保管する印刷用フィルムについて(被告Aらの債務不履行又は不法行為の成否)

被告Cが、原告が印刷会社クイックにおいて保管していた原告の印刷用フィルムを被告会社の業務のために原告に無断で使用したかどうかについて、一部の印刷業務について原告フィルムの流用が認められ、自由競争の範囲を超える違法なものとして被告Cの雇用契約上の債務不履行及び不法行為が認められています(53頁以下)。
損害額については、流用受注分に相当する被告会社の売上金額を基礎として原告の粗利益率を乗じた8万0401円と判断しています。

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6 NPiフォームの使用について(被告Aらの債務不履行又は不法行為の成否、損害額)

被告A及びCが、印刷会社が保管していた原告のNPiフォーム(用紙)を被告会社の業務のために被告らが原告に無断で使用したかどうかについて、無断使用が認められ違法性が肯定されています(72頁以下)。
損害額については、一時的流用、使用枚数等を勘案して使用料相当額を5000円として同額を損害と認定しています。

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7 被告ニッシンの責任の成否

被告A及びCの不法行為について、使用者責任(民法715条)が認められています(74頁)。

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8 被告B、被告D及び被告Fに対する身元保証債務履行請求の可否

被告B(被告Aの配偶者)、被告D(被告Cの配偶者)は、それぞれ原告との間の身元保証契約に基づきそれぞれA、Cと連帯して損害を賠償する義務を負うと判断されています(74頁以下)。

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9 被告A及び被告Cに対する退職金返還請求(民法704条)の可否

平成19年に支払われた退職金は、不当利得の対象とならず、平成22年退職時に支払われた金員についても、退職金不支給又は減額すべき事由は認められないとして、退職金の返還請求を認めていません(75頁以下)。

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■コメント

退職従業員による印刷用写真フィルムや用紙の流用が問題となった事案です。印刷システムの著作権侵害性や不正競争防止法上の営業秘密侵害性は否定されています。

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2012年06月11日

韓国楽曲通信カラオケ事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

韓国楽曲通信カラオケ事件

東京地裁平成24.5.31平成21(ワ)28388損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官      上田真史
裁判官      大西勝滋

*裁判所サイト公表 2012.6.1
*キーワード:準拠法、信託譲渡契約、約款、音楽著作権管理団体、KOMCA

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■事案

韓国楽曲の日本での通信カラオケ利用に関して、作家と韓国音楽著作権協会(KOMCA)との間の信託譲渡契約の内容が争点となった事案

原告:大韓民国(韓国)国籍を有する作詞家、作曲家9名
被告:業務用カラオケ事業者ら(日本企業)

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法21条、23条

1 本件の準拠法
2 本件相互管理契約発効前における本件各楽曲の著作権の信託譲渡の有無

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■事案の概要

『本件は,別紙目録1の「曲名」欄記載の各楽曲(以下「本件各楽曲」と総称する。)を作詞又は作曲した原告らが,被告らが,本件各楽曲のデータを作成し,これを被告らの製造に係る業務用通信カラオケ装置の端末機に搭載されたハードディスクに記録し,又は上記端末機を通信カラオケリース業者等に対して出荷した後に発表された本件各楽曲(新譜)のデータを被告らの管理するセンターサーバに記録し,上記端末機にダウンロードさせた行為が,本件各楽曲について原告らが有する複製権(著作権法21条)又は公衆送信権(同法23条1項)を侵害する旨主張して,被告らに対し,不法行為に基づく損害賠償及び遅延損害金の支払を求める事案』(2頁以下)

<経緯>

S47 原告らが作詞、作曲
S48 KOMCA(韓国音楽著作権協会)が著作権信託契約約款制定
S55 原告らがKOMCAと信託契約
H19 KOMCAとJASRAC(日本音楽著作権協会)が相互管理契約締結

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■判決内容

<争点>

1 本件の準拠法

まず、韓国人である原告9名の作詞、作曲した音楽著作物について、裁判所はベルヌ条約3条(1)(a)及び著作権法6条3号によりわが国の著作権法により保護されるとした上で準拠法を検討しています。
この点について原告らの著作権侵害に基づく損害賠償請求を不法行為と法性決定し、法の適用に関する通則法(新法)附則3条4項、旧法例11条により原因事実発生地である日本の法律が準拠法となると判断。
そして、信託譲渡に伴う著作権の帰属について適用されるべき準拠法に関して、信託譲渡の原因行為である法律行為の成立及び効力については、新法附則3条3項、旧法7条に基づき韓国の法律によると判断し、本件著作権の譲渡の第三者に対する効力に係る物権類似の支配関係の変動について適用されるべき準拠法は、保護国の法令である我が国の著作権法によると判断しています(37頁以下)。

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2 本件相互管理契約発効前における本件各楽曲の著作権の信託譲渡の有無

KOMCAの著作権信託契約約款について、裁判所は本件には平成14年約款が適用されるとした上で、原告ら各信託契約によりKOMCAへ信託譲渡された著作権の対象範囲について検討しています(38頁以下)。
平成14年約款は、信託譲渡の対象となる信託財産の範囲について、地域的なものを含めて何らの制限をすることなく、委託者が現に保有するすべての音楽著作物及び将来保有することになるすべての同著作権をその対象とすることを定めたものであると裁判所は解釈。
結論として、原告らが、KOMCAとの間で著作権信託契約約款(昭和48年約款、昭和61年約款、昭和62年約款、平成11年約款又は平成14年約款)に基づいて本件各信託契約をそれぞれ締結したことにより、本件相互管理契約発効前の各契約締結時点で、原告らが保有するすべての音楽著作物の著作権及び将来保有することになるすべての同著作権が原告らからKOMCAへ信託譲渡されたものと認められ、その信託譲渡の対象には本件各楽曲の著作権も含まれるとして、本件各楽曲の著作権は、本件相互管理契約発効前に原告らからKOMCAへ信託譲渡されたものと認められるとしています。

以上から、原告らは本件相互管理契約発効前に本件各楽曲の著作権を保有していなかったとして、その余の点について判断するまでもなく原告らの被告らに対する本件各楽曲の複製権又は公衆送信権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求は、いずれも理由がないと判断されています。

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■コメント

KOMCAとジャスラックが相互管理契約を締結(2008年1月1日発効)する以前の韓国音楽著作物の利用に関する権利関係が争点となりました。
ジャスラックの約款でいえば、外国地域における管理委託範囲の特例として著作権信託契約約款附則4条2項1号にあるような留保規定がKOMCAの約款にも従前明記されていれば解釈上は問題がなかったわけですが、裁判所は約款規定の不備(46頁)を指摘して、明確な規定を欠くと判断しました。
なお、KOMCAの約款をサイト掲載のもの(英語版)で見てみると、2009年(平成21年)改訂のもので、現状でも外国地域における管理委託範囲の特例規定はないようです。
KOMCAの主務官庁である韓国文化体育観光部の見解書は、この場面では個別の権利者に著作権が留保されているとの行政解釈を示しており(48頁以下)、果たして控訴審ではどうなるか、その判断が注目されるところです。

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■過去の韓国楽曲関連事案のブログ記事

「冬のソナタ」主題歌著作権管理事件(控訴審) 
知財高裁平成24.2.14平成22(ネ)10024損害賠償請求控訴事件
「冬のソナタ」主題歌著作権管理事件 
東京地裁平成22.2.10平成16(ワ)18443損害賠償請求事件

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■参考サイト

「KOMCA(韓国音楽著作権協会)との相互管理契約を締結」
2007年12月10日ジャスラックプレスリリース

KOMCA約款
英語版
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2012年05月26日

「暁の脱走」格安DVD事件(対東宝)差戻審−著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「暁の脱走」格安DVD事件(対東宝)差戻審

知財高裁平成24.5.9平成24(ネ)10013著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官      高部眞規子
裁判官      齋藤 巌

*裁判所サイト公表 2012.5.17
*キーワード:黙示の譲渡、過失、損害論

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■事案

「暁の脱走」「また逢う日まで」「おかあさん」映画作品の利用を巡り、格安DVD製造販売会社の損害賠償責任が争われた事案の差戻審

控訴人(1審被告) :格安DVD製造販売会社
被控訴人(1審原告):東宝株式会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法114条3項

1 1審原告の著作権
2 1審被告の損害賠償責任
3 1審原告の損害額

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■事案の概要

『1 本件は,被控訴人(以下「1審原告」という。)が,控訴人(以下「1審被告」という。)に対し,1審被告が原判決別紙被告商品目録記載の各商品(以下「本件商品」という。)を輸入し,頒布する行為について,別紙映画目録記載の各映画(以下,順に「本件映画1」などといい,本件映画1ないし3を「本件各映画」という。)の著作権を侵害すると主張して,(1)著作権法112条に基づき,本件商品の製造,輸入及び頒布の差止め並びに本件商品及びその原版の廃棄を求めるとともに,(2)民法709条,著作権法114条3項に基づき,損害賠償金1350万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年5月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2 訴訟の経過
(1)第1審は,上記1(1)の請求を認容し,上記1(2)のうち,108万円及びこれに対する平成20年5月21日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度でこれを認容し,その余を棄却する旨の判決を言い渡した(東京地方裁判所平成20年(ワ)第11220号)。
(2)1審被告がこれを不服として控訴したところ,差戻前控訴審は,上記1(1)に係る控訴を棄却し,上記1(2)については,1審被告に過失がないとして第1審判決を取り消し,上記部分に係る1審原告の請求を棄却する旨の判決を言い渡した(知的財産高等裁判所平成21年(ネ)第10050号)。
(3)1審原告がこれを不服として上告受理を申し立てたところ,最高裁判所は,上告を受理した上,1審被告の上記行為について,1審被告が本件各映画の著作権の存続期間が満了したと誤信していたとしても,1審被告に少なくとも過失があったというほかはないとして,上記1(2)に係る部分を破棄し,知的財産高等裁判所に差し戻す旨の判決を言い渡した( 最高裁判所平成22年(受)第1884号)。
(4)1審被告は,上記(2)の差戻前控訴審判決に対し上告又は上告受理申立てをしておらず,上記1(1)に係る部分は,上記(3)の最高裁判決の言渡しとともに確定したから,差戻審である当審の審理の対象は,上記1(2)に係る部分(ただし,上記(1)の第1審判決が認容した金額が不服の限度)である。そして,上記(3)の最高裁判決は,本件商品を輸入し,頒布する1審被告の上記行為について,1審被告に少なくとも過失があったことを破棄の理由としているから,その旨の判断は当審を拘束する(民事訴訟法325条3項)。』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 1審原告の著作権

本件各映画の著作権の帰属については、1審原告である被控訴人が単独で有していると判断されています(7頁以下)

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2 1審被告の損害賠償責任

1審被告が本件各映画を複製した本件商品を輸入し、頒布する行為について、1審原告の著作権を侵害するものとみなされ(著作権法113条1項3号)、1審被告に少なくとも過失があったというべきであるとして、1審原告に当該著作権の使用料相当額の損害が生じており、1審被告は1審原告に対して著作権侵害による損害賠償を支払うべきであると判断されています(11頁)。

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3 1審原告の損害額

DVD1本当たりの小売価格1800円×使用料率20%×輸入数3000本=108万円

本件各映画の使用料相当額を上記計算式で算定の上、1審原告の損害相当額と認定されています(11頁以下)。

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■コメント

同一業者に対する別件訴訟は、損害賠償請求を内容とする訴訟では、被告の過失が認定され損害賠償が認められていました。
差戻前控訴審となる知財高裁第1部(塚原裁判長)の判断だけが同種案件で唯一、過失否定の判断となっていましたが、今回の控訴審は、上告審の過失肯定、破棄差戻しを受けての判断となります。
結論としては、損害額について1審と同額となっています。

【損害賠償を内容とする訴訟の結果】

チャップリン「モダンタイムス」事件
東京地裁平成19.8.29平成18(ワ)15552 過失肯定
知財高裁平成20.2.28平成19(ネ)10073  原審維持
最高裁平成20.10.8平成20(受)889

黒澤明監督作品格安DVD事件(対松竹)(損害賠償請求附帯控訴)
知財高裁平成21.1.29平成20(ネ)10025等 過失肯定

黒澤明監督作品格安DVD事件(対角川)
東京地裁平成21.4.27平成20(ワ)6848 過失肯定
知財高裁平成21.9.15平成21(ネ)10042 原審維持

格安DVD事件(対東宝)
「暁の脱走」(谷口千吉監督)「また逢う日まで」(今井正監督)
「おかあさん」(成瀬巳喜男監督)
東京地裁平成21.6.17平成20(ワ)11220 過失肯定
知財高裁平成22.6.17平成21(ネ)10050 過失否定
最高裁平成24.1.17平成22(受)1884   過失肯定
知財高裁平成24.5.9平成24(ネ)10013  (本件)

「姿三四郎」(黒澤明監督)格安DVD事件(対東宝 損害賠償)事件
東京地裁平成21.7.31平成20(ワ)6849  過失肯定

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■過去のブログ記事

2012.1.23記事 上告審
2010.6.28記事 差戻前控訴審
2009.7.21記事 一審

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2012年05月24日

マンモスCT画像3DCG事件(控訴審)−著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

マンモスCT画像3DCG事件(控訴審)

知財高裁平成24.4.25平成23(ネ)10089著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官      高部眞規子
裁判官      齋藤 巌

*裁判所サイト公表 2012.05.17
*キーワード:著作物性、著作者、複製権、譲渡権、著作者人格権、同一性保持権、氏名表示権、使用許諾、出版

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■事案

マンモス標本のCT画像を加工した3DCG画像の著作物性、使用許諾の有無などが争点となった事案の控訴審

控訴人 :出版社
被控訴人:研究者

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、19条、20条、21条、26条の2

1 本件各画像の著作物性、被控訴人の著作者性及び著作権の帰属
2 本件各画像の著作権侵害性の成否
3 本件各画像の著作者人格権侵害の成否
4 被控訴人の損害額

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■事案の概要

『1 本件は,控訴人が,原判決別紙1ないし3記載の各画像(控訴人各画像)が掲載された原判決別紙書籍目録記載の書籍(以下「控訴人書籍」という。)を発行及び頒布した行為は,原判決別紙3記載の各画像(本件各画像)に係る被控訴人の著作権(複製権,譲渡権)及び著作者人格権(同一性保持権,氏名表示権)の侵害に当たる旨主張して,(1)著作権法112条1項に基づき,控訴人各画像を削除しない控訴人書籍の発行又は頒布の差止めを,(2)同条2項に基づき,控訴人書籍からの控訴人各画像の削除を求めるとともに,(3)不法行為に基づく損害賠償として,400万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払ずみまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
2 原判決は,控訴人各画像は,いずれも被控訴人の許諾なく本件各画像を複製したものであり,控訴人の上記行為は,被控訴人が本件各画像について有する著作権(複製権,譲渡権)及び著作者人格権(本件各画像についての同一性保持権,本件画像1についての氏名表示権)を侵害した旨判示して,被控訴人の請求のうち,上記(1)(2)をいずれも認容し,上記(3)を50万円及び遅延損害金の支払の限度で認容し,その余の請求を棄却した。そこで,控訴人がこれを不服として控訴した。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 本件各画像の著作物性、被控訴人の著作者性及び著作権の帰属

本件マンモスの頭部について、CT装置(コンピュータ断層撮影装置)による撮影(CT撮影)によって得られた断層像のX線CTデータ(本件CTデータ)を基にして作成された本件画像1と、本件CTデータを3次元画像として再構築したボリュームレンダリング像(本件三次元再構築モデル)を基にして作成された本件画像2の各3DCG画像の著作物性(著作権法2条1項1号)について、裁判所は、「美術的又は学術的観点からの作者の個性が表現されているものということができる」と判断しています(16頁以下)。
また、本件各画像の著作者、著作権者は、被控訴人であると認定されています(18頁以下)。

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2 本件各画像の著作権侵害性の成否

控訴人各画像は、本件各画像に依拠して作成されており、本件各画像を有形的に再製していること、また利用許諾もない、として控訴人が控訴人各画像を掲載した控訴人書籍を発行及び頒布する行為は、本件各画像の著作権(複製権、譲渡権)を侵害すると判断されています(19頁以下)。

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3 本件各画像の著作者人格権侵害の成否

本件各画像をカラー画像から白黒画像などにする改変が著作者の許諾がない中で行われており、著作者の意に反する改変(20条1項)に該当するとして、控訴人各画像を掲載した控訴人書籍を発行する控訴人の行為は、被控訴人が本件各画像について有する同一性保持権の侵害にあたると判断されています(24頁以下)。
また、控訴人書籍の表紙カバーに掲載された控訴人画像3には、本件画像1の著作者である被控訴人の氏名が表示されておらず、この点について氏名表示権(19条3項)侵害にあたると判断されています。

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4 被控訴人の損害額

控訴人による不法行為の成立を認めた上で、著作者人格権侵害による慰謝料として30万円、弁護士費用相当額の損害として20万円の合計50万円が認定されています(26頁以下)。

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■コメント

原審の結論が維持された内容となっています。

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■過去のブログ記事

2011.12.8記事 原審

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2012年05月14日

「縁切り・縁結び碑」石碑事件−著作権 著作権侵害差止請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「縁切り・縁結び碑」石碑事件

大阪地裁平成24.4.26平成23(ワ)12933著作権侵害差止請求事件PDF

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 山田陽三
裁判官      西田昌吾
裁判官      達野ゆき

*裁判所サイト公表 2012.5.8
*キーワード:同一性保持権、題号、展示権、所有権

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■事案

金比羅宮の境内に設置された縁切り祈願の石碑の題号を無断で改変したなどとして、同一性保持権侵害の成否等が争点とされた事案

原告:石碑制作業者
被告:宗教法人

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法20条、25条、45条

1 本件碑の題号は、「断叶の碑」であるか
2 被告は、本件碑の所有権を有するか
3 本件札の題号は、「神札」であるか
4 本件被告札の作成・頒布による同一性保持権侵害の成否
5 被告の行為は原告の名誉、声望を毀損するものであるか
6 原告は、本件印鑑等の所有権を有するか

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■事案の概要

『原告は,被告の行為により本件碑及び本件原告札に関する著作権,著作者人格権を侵害されたとして,被告に対し,(1)本件碑に関する同一性保持権(著作権法20条)に基づき,本件碑の題号として,「縁切り・縁結び碑」の名称を使用することの差止めを,(2)本件碑に関する展示権(同法25条)に基づき,本件碑を展示することの差止めを,(3)本件原告札に関する同一性保持権に基づき,本件札の題号として「形代」の名称を使用することの差止めを,(4)本件原告札に関する同一性保持権に基づき,本件札を頒布することの差止めを,(5)原告の名誉,声望が毀損されたことを理由に,上記(1)ないし(4)の各差止めを,(6)所有権に基づき,本件印鑑等の引渡しを,それぞれ求めている』事案(3頁)

<経緯>

S55 被告が原告に石碑の製作を依頼
H23 被告が原告に紛争解決金として100万円を送金

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■判決内容

<争点>

1 本件碑の題号は、「断叶の碑」であるか

原告は、製作した石碑の題号は、「断叶の碑」であって、被告が無断で「縁切り・縁結びの碑」に改変したとして、同一性保持権侵害を理由に本件碑の題号として「縁切り・縁結びの碑」の名称を使用することの差止めを主張しました。
しかし、裁判所は、本件碑の題号が「断叶の碑」であるとの証拠がないとしてこれを認めていません(8頁以下)。

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2 被告は、本件碑の所有権を有するか

原告は、本件碑の展示権(25条)に基づき本件碑の展示の差止めを主張しましたが、裁判所は、本件碑の所有権は被告に帰属するとして、所有者による展示あるいは経緯などから原告の許諾があったとして(45条1項)、原告の主張を認めていません(9頁以下)。

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3 本件札の題号は、「神札」であるか

原告製作による御幣(幣束)を描いた護符である本件札の題号について、原告は題号は「神札」であって、被告が無断で「形代」に改変したとして、同一性保持権侵害を理由に本件札の題号として「形代」の名称を使用することの差止めも主張しました。
しかし、裁判所は、本件札の題号が「神札」であることを裏付ける証拠が全くなく、また「神札」は一般名称であるとして、原告の主張を認めていません(10頁以下)。

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4 本件被告札の作成・頒布による同一性保持権侵害の成否

本件札の御幣の重なりが、本来、向かって右重ね(左前)であるに、それを被告が左重ね(右前)に改変して頒布しているとして原告は本件札の頒布の差止めを求めましたが、裁判所は、本件札の表現の実質的同一性が損なわれているとはいえないこと、また差止めの必要もないとして、原告の主張を認めていません(11頁以下)。

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5 被告の行為は原告の名誉、声望を毀損するものであるか

本件碑の題号として「縁切り・縁結びの碑」の名称を使用すること、本件碑を公に展示すること、本件札の題号として「形代」の名称を使用すること、本件札を頒布すること、といった被告の行為が、原告の名誉、声望を毀損すると原告は主張しましたが、裁判所は認めていません(12頁)。

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6 原告は、本件印鑑等の所有権を有するか

札に押印された印影に係る印鑑の所有権について、裁判所は、製造請負契約に基づき本件印鑑等の引渡しを受けることにより被告が所有権を取得したとして、原告の本件印鑑等の引渡し請求を認めていません(12頁)。

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■コメント

30年前の石碑や護符の製作を巡って争われた事案ですが、発注者である金比羅宮も、紛争解決金として100万円を原告に送金するなどしていて、双方で過去、どのような経緯があったのか、前宮司との約定について本当のところがよく分からない事案です。
30年に亘って契約金を支払っていくという、息の長い契約だったとの原告側のお考えですが、裁判所に契約書の趣旨やその存在を理解させるまでに至りませんでした。
石碑
石碑(別紙1)

札画像
被告札(別紙2)


■2012.06.26訂正

■追記(2012.11.05)

原告の方が判決の内容を伝えておいでです。
平成24年10月13日記事
安井金比羅宮 著作権侵害差止請求事件について

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2012年05月02日

女性用ボレロ編み物編み図事件(控訴審)−著作権 損害賠償等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

女性用ボレロ編み物編み図事件(控訴審)

知財高裁平成24.4.25平成24(ネ)10004損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 塩月秀平
裁判官      真辺朋子
裁判官      田邉 実

*裁判所サイト公表 2012.4.27
*キーワード:著作物性、アイデア

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■事案

女性用ボレロの毛糸編み物や編み図の著作物性が争点となった事案の控訴審

控訴人 (一審原告):手編み物作家
被控訴人(一審被告):毛糸等繊維会社、編物教室主宰者

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号

1 原告編み物及び原告編み図の著作物性

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■事案の概要

『 控訴人は,原判決別紙原告作品目録記載1及び2の原告編み物,同目録記載3及び4の原告編み図の制作者である。被控訴人Yは被控訴人会社に原判決別紙被告作品目録記載1の被告編み物及び同目録記載2の被告編み図を納入し,被控訴人会社は被告編み物を下請業者に製作させて展示,販売し,被告編み物を写真撮影して雑誌等に掲載して使用し,かつ,被告編み図を複製して顧客や販売店等に頒布するなどした。
 控訴人は,被告編み物及び編み図は原告編み物又は原告編み図を複製,翻案したものであり,被控訴人会社撮影に係る原判決別紙被告作品目録記載3の写真は原告編み物又は原告編み図を翻案したものであり,被告編み物及び被告編み図の展示は展示権を侵害するなどと主張し,被告編み物,被告編み図及び上記写真の展示,販売,販売の申出の差止め,侵害品の廃棄を求めるとともに,被控訴人らは,故意又は過失により,共同して上記各行為に及んだものであるとして,著作権及び著作者人格権侵害の共同不法行為責任に基づき,損害賠償金合計660万円及び遅延損害金の連帯支払を求め,さらに,著作権法115条に基づき,謝罪広告の掲載を求めた。
 原審は,原告編み物及び原告編み図に著作物性を認めることはできないとして,原告の請求をいずれも棄却した。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 原告編み物及び原告編み図の著作物性

手編みによって作成された女性用のベストである原告編み物及びその編み図の著作物性(著作権法2条1項1号)について、控訴審においても、『「形の最小単位は直角三角形であり,この三角形二つの各最大辺を線対称的に合わせて四角形を構成し,この四角形五つを円環的につなげた形二つをさらにつなげた形」と表現される原判決最末尾別紙図面記載の構成は,表現ではなく,そのような構成を有する衣服を作成する抽象的な構想又はアイデアにとどまるものと解されるから,上記構成を根拠として原告編み物に著作物性を認めることはできず,原告編み図についても著作物性を認めることはできない』(5頁以下)と判断されています。

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■コメント

毛糸編み物とその編み図の著作物性について、原審の判断が維持されていて、控訴審でも否定されました。
なお、原審が「念のため」検討した本件構成を含む編み図全体(各2枚目)の美術の著作物性あるいは図面の著作物性については、控訴審は判断していません。

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■過去のブログ記事

2012年1月30日記事 原審
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2012年04月16日

幼児教育教材絵本事件−著作権 出版差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

幼児教育教材絵本事件

東京地裁平成24.3.29平成23(ワ)8228出版差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官    山門 優
裁判官    志賀 勝

*裁判所サイト公表 2012.04.12
*キーワード:黙示的譲渡、買取り、出版、挿絵、増刷

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■事案

幼児教育教材絵本の挿絵として使用された原画の著作権の帰属が争点となった事案

原告:画家ら
被告:教育教材等製造販売会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法21条、112条1項、114条3項

1 被告は原告らから本件原画の著作権を譲渡されたか
2 原告らの損害

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■事案の概要

『原告らは,いずれも画家であり,被告が平成17年に発行した別紙第1書籍目録記載の書籍(以下「本件第1書籍」という。)の挿絵に用いられている別紙第1著作物目録記載の絵画(以下「本件第1原画」という。),及び,被告が平成20年に発行した別紙第2書籍目録記載の書籍(以下「本件第2書籍」といい,本件第1書籍と併せて「本件書籍」という。)の挿絵に用いられている別紙第2著作物目録記載の絵画(以下「本件第2原画」といい,本件第1原画と併せて「本件原画」という。)の著作者である。
 本件は,原告らが,(1)被告は,原告らに無断で本件第1書籍を増刷し,増刷した書籍を販売しており,本件第1原画に係る原告らの著作権(複製権及び譲渡権)を侵害している,(2)上記のような被告の態度に照らすと,被告は,本件第2書籍についても,今後,原告らに無断でこれを増刷し,本件第2原画に係る原告らの著作権(複製権)を侵害するおそれがある,と主張して,被告に対し,著作権(複製権ないし譲渡権)に基づき,本件第1書籍の印刷,出版,販売又は頒布の差止め及び本件第2書籍の印刷,出版の差止め(著作権法112条1項)を求めるとともに,不法行為に基づく損害賠償として,前記「第1 請求」記載の金員の支払を求める事案である。』(5頁)

<経緯>

H16.11 原被告らが絵本出版企画会合開催
H17    被告が幼児向け教育絵本を1万部出版
H19    原告の一部が原画を再制作
H20.04 第1書籍の増刷
H22.03 原告が増刷を認識、被告に禁止通告

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■判決内容

<争点>

1 被告は原告らから本件原画の著作権を譲渡されたか

幼児向け教育教材絵本のために制作された原告らの挿絵原画について、被告は、本件原画の引渡しを受けた際、原告らから本件原画の著作権及び同原画の所有権を黙示的に譲受けたものであり、原告らは、本件書籍の増刷について被告の随意に委ねていた、また、本件画料は、譲渡の対価として被告から原告に支払われたものであると主張しました(13頁以下)。
しかし、裁判所は、増刷に至る経緯を検討した上で、原告らが被告に対して原画の著作権を黙示的に譲渡したと認めることはできないと判断。本件第1原画の著作権者である原告らの許諾を得ることなく本件第1書籍を増刷し、これを販売したことは、原告らの著作権(複製権及び譲渡権)を侵害するものであるとして、結論として第1書籍の印刷、出版、販売、頒布の差止め、第2書籍の印刷又は出版の差止めが認められています。

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2 原告らの損害

裁判所は被告の過失を認めた上で、第1書籍が合計26万9000冊増刷されていることを前提に、本件第1原画の制作に至るまでの経緯、石井式漢字教育における絵本(漢字仮名交じり絵本)の役割(絵本の文章部分の重要性)、本件第1書籍の販売価格(430円)、本件第1書籍における本件第1原画の重要性、本件画料には原画の制作料の意味合いも含まれているとうかがえること等の事情を総合的に考慮して、1冊あたりの著作権料相当額を30円として、原告14名の複製権侵害についての損害額を算定しています。また、弁護士費用についても、その損害額の1割に相当するものとして算定しています。

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■コメント

絵本向けの原画制作発注の際の著作者と発注元との間で著作権の取り扱いや書籍増刷の際の取り決めがないまま、増刷などが重ねられてしまった結果、紛争が生じた事案となります。社内に出版に詳しい人材がいなくて、外部の出版エージェントを介したものの、権利処理をしっかりしなかったという内容です。
被告サイト(後掲)を拝見すると、幼児の漢字教育のために絵本に「本物の美術作品の手触りを感じてもらえるような原画」を使用しているということで、原画が単なる挿絵ではなく、書籍において重要な地位を占めるものであることが分かります。

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■参考サイト

被告サイト:石井式の幼児教育『石井式国語教育研究会』
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2012年04月12日

ホームページ制作不正競業事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ホームページ制作不正競業事件

東京地裁平成24.3.28損害賠償請求事件平成21(ワ)5848PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 岡本 岳
裁判官      坂本康博
裁判官      寺田利彦

*裁判所サイト公表 2012.04.02
*キーワード:営業秘密、秘密保持契約、著作物性

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■事案

銀行融資の際の事業計画書などの著作物性が争点となった事案

原告:経営コンサルティング会社、原告代表取締役
被告:原告元従業員、元従業員親族、元アルバイト、外国為替取引業会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、27条、不正競争防止法2条1項4号、7号、8号、9号、6項

1 不正競業、兼職
2 横領、背任
3 営業妨害、業務懈怠
4 情報管理義務違反
5 著作権侵害
6 営業秘密の侵害
7 原告らの被害回復に対する妨害行為
8 契約の不当破棄に該当する行為
9 無形損害

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■事案の概要

『本件は,被告らが,(1)不正競業,兼職,(2)横領,背任,(3)営業妨害,業務懈怠,(4)情報管理義務違反,(5)著作権侵害,(6)営業秘密の侵害,(7)原告らの被害回復に対する妨害行為,(8)契約の不当破棄に該当する行為を行ったとして,
(1)原告らが,被告Y1(以下「被告Y1」という。),被告Y3(以下「被告Y3」という。),被告Y4(以下「被告Y4」という。),被告マネースクウェア・ジャパン(以下「被告会社」という。)に対し,上記(1),(3),(4),(7)の行為が同被告らの共同不法行為に当たるとして,不法行為に基づく損害賠償金,
(2)原告イーグルワンエンタープライズ(以下「原告会社」という。)が,被告Y1,被告Y4に対し,上記(2)の行為が同被告らの共同不法行為に当たるとして,不法行為に基づく損害賠償金,
(3)原告会社が,被告Y1,被告Y4に対し,上記(1),(2),(3),(4),(7)の行為が債務不履行に当たるとして,債務不履行に基づく損害賠償金(この請求と上記(1),(2)の被告Y1,被告Y4に対する請求は選択的併合の関係にある。),
(4)原告会社が,被告会社に対し,上記(8)の行為が不法行為又は債務不履行に当たるとして,不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償金(両請求は選択的併合の関係にある。),
(5)原告会社が,被告Y1,被告Y3,被告Y4,被告会社に対し,上記(5),(6)の行為が不法行為に当たるとして,不法行為に基づく損害賠償金,
(6)原告会社が,被告Y2(以下「被告Y2」という。)に対し,身元保証契約に基づく保証債務の履行としての損害賠償金,
及び上記(1)−(6)の各損害賠償金に対する平成20年7月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める事案』(4頁以下)

<経緯>

H18.5 被告Y4が焼肉店でアルバイト
H18.6 被告Y1が原告会社の業務に従事
H19.12原告会社と被告会社がコンサル契約

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■判決内容

<争点>

1 不正競業、兼職

ホームページ制作業務などに係わる不正競業や兼職禁止違反に関して、まず、被告Y1については、裁判所は、(1)原告会社との間の本件秘密保持の合意違反の有無が問題となるのは平成18年6月頃より後の行為であり、(2)競業避止義務違反、兼職禁止義務違反の有無が問題となるのは、原告会社との雇用契約締結(平成19年12月21日頃)後の行為であると認定した上で、結論的には不法行為又は債務不履行を構成する具体的な事実が明らかではないと判断されています。

また、アルバイトに係る業務とは別に個別の請負契約に基づいて原告会社が経営する飲食店の制作物やホームページ制作を行っていた被告Y4についても、原告会社に対して競業避止義務、兼職禁止義務、秘密保持義務を負うと認めることはできず、原告らの被告Y4の不正競業行為、兼職行為に基づく請求は、いずれもその前提を欠き、理由がないと判断されています(31頁以下)。

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2 横領、背任

被告Y1、Y4の横領、背任の事実は認められていません(35頁以下)。

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3 営業妨害、業務懈怠

原告らは、被告Y1が原告会社が経営する飲食店が利用する「ぐるなび」の上位検索PRキャンペーンについて、営業妨害を行ったなどと主張しましたが、いずれも認められていません(36頁以下)。

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4 情報管理義務違反

被告Y1が被告Y4に原告会社のウェブに関する管理IDとパスワードを教えたことなどが本件秘密保持の合意に反するものと認められたものの、具体的な損害が生じたと認められず、その他の点も含め情報管理義務違反に基づく不法行為責任、債務不履行責任の成立は認められていません(41頁以下)。

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5 著作権侵害

原告らは、原告X2らが作成した文書の無断複製、翻案による著作権侵害性を争点としました。しかし、裁判所は、

・原告会社のウェブサイトのリニューアル作業に係るプレゼン資料の被告会社への提供については、複製、翻案について原告会社の包括的な合意があった。

・無料ディレクトリ登録サイト、携帯サイト向け検索エンジン、キーワード等をリスト化文書の被告会社への提供については、それが表現上の創作性を有するものとも、素材の選択、配列に創作性を有するものとも認めることはできない。また、情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものということもできないため、データベースの著作物に当たるということもできないとして、著作物性を否定。

・業務上の課題、改善事項等を箇条書きした文書については、一般的な表現で箇条書きしたものにすぎない。文書の表現と同一性、類似性を有するのは、「経営面」、「運営面」、「季節飾りつけ」、「ビラ撒きマニュアル」等の項目やタイトルなどであって、事実やアイデアなど表現それ自体ではない部分又は表現上の創作性がない部分で共通するにすぎない。

・ディレクトリ登録向けの単語、キーワード、キーワードを使用して一定の文字制限内でまとめられた一般的な紹介文案、対象店舗のURLやメールアドレスなどについては、一般的な表現で箇条書きされたものにすぎない。また、文書の表現と同一性、類似性を有するのは、「タイトル」、「15文字まで」、「長文(150まで)〜中文(80文字)」、「キーワード」等の項目やタイトル、キーワードを使用して一定の文字制限内でまとめられた一般的な紹介文案などであって、事実やアイデアなど表現それ自体ではない部分又は表現上の創作性がない部分で共通するにすぎない。

・銀行への融資のために作成された事業計画書については、一般的な事業計画書にすぎず、表現上の創作性を有するものということはできない。また、文書の表現と同一性、類似性を有するのは、「基本事項」、「計画因子」、「客単価」、「売上」、「初期投資内訳」等の項目やタイトル、表の形式や書式などであって、事実やアイデアなど表現それ自体ではない部分又は表現上の創作性がない部分で共通するにすぎない。

・店舗の開業までにやるべきことを箇条書きでまとめたリストについては、一般的なリストにすぎず、表現上の創作性を有するものということはできない。また、文書の表現と同一性、類似性を有するのは、「やること」、「コンセプト」、「メニュー確定」、「仕入先の選定」等の項目やタイトルの一部、店舗の所在地や営業時間のみであって、事実やアイデアなど表現それ自体ではない部分又は表現上の創作性がない部分で共通するにすぎない。

などとして、著作権侵害に基づく原告らの主張を認めていません(43頁以下)。

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6 営業秘密の侵害

別紙D記載の各情報の営業秘密性を前提に、これを被告Y1、被告Y4が不正に取得した、又は図利加害目的で利用、開示したと原告らは主張しました。
しかし、営業秘密性その他の要件を認めるに足りる的確な証拠はないとして、裁判所は営業秘密侵害性を否定しています(49頁以下)。

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7 原告らの被害回復に対する妨害行為

原告らは、被告Y1、被告Y4、被告Y3、被告会社の代表者等が、被告らが行った不正行為に係る事実関係や責任を否定し、原告X2を愚弄して原告らの被害回復を拒否したことが不法行為に当たると主張しましたが、裁判所はこうした主張を容れていません(50頁)。

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8 契約の不当破棄に該当する行為

被告会社が、被告Y1が業務を担当することができなくなったことを理由に申し出た本件業務委託契約の解消には、正当な理由があるとして、契約の不当破棄との原告らの主張を容れていません(50頁以下)。

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9 無形損害

原告らの精神的損害に関する主張についても裁判所は認めていません(51頁)。

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■コメント

HPリニューアル業務やWebマーケティングに関するアドバイザリー業務に能力がある人材を巡っての紛争となります。
主要な論点は、秘密保持契約や営業秘密管理ですが、事業計画書の著作物性などに言及されている点が参考になります。

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■参考サイト

被告会社IR情報
株式会社 マネースクウェア・ジャパン 平成23年3月期決算短信(10頁以下)
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2012年04月09日

SL映像テレビ番組事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

SL映像テレビ番組事件

東京地裁平成24.3.22平成22(ワ)34705損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官    山門 優
裁判官    志賀 勝

*裁判所サイト公表 2012.3.27
*キーワード:テレビ放送、映像制作、黙示の許諾、複製権、氏名表示権、過失相殺、使用料相当額

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■事案

蒸気機関車(SL)を撮影したビデオ映像放映の著作権侵害性などが争われた事案

原告:紀行作家
被告:テレビ番組制作会社、前代表取締役ら

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法21条、23条、26条、18条、19条、20条、114条3項

1 原告は被告らに対し本件ビデオ映像を編集して放送番組を制作すること及びテレビ局を通じて同番組を放送することを黙示に許諾したか
2 被告らは、本件テレビ番組に原告の氏名表示を省略すること(著作権法19条3項)ができるか
3 被告らの故意又は過失の有無
4 過失相殺の成否
5 原告の損害

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■事案の概要

『世界各地の蒸気機関車(SL)を撮影したビデオ映像の著作者及び著作権者である原告が,上記ビデオ映像が被告らによってテレビ放送用の番組に編集され,テレビ局に販売されてテレビで放映されたことにより,同ビデオ映像に係る原告の著作権(複製権,頒布権及び公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権,氏名表示権及び公表権)が侵害されたと主張して,被告らに対し,不法行為に基づく損害賠償金の内金として,各自2000万円及びこれに対する不法行為の後である平成22年10月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案』(2頁以下)

<経緯>

H12 原告が世界各地でSLを撮影
H16 被告らが本件ビデオ映像を利用したテレビ番組制作を企画、制作、放送
H19 百円ショップでDVD販売
H22 別件訴訟に被告会社が補助参加、控訴審確定

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■判決内容

<争点>

1 原告は被告らに対し本件ビデオ映像を編集して放送番組を制作すること及びテレビ局を通じて同番組を放送することを黙示に許諾したか

原告撮影の本件ビデオ映像が編集されて放送番組が制作されること及び同番組がテレビ局を通じて放送されることについて、原告が被告に対して黙示の許諾を与えていたかどうかが争点となっています。

この点、原告が平成16年5月28日に被告企画会社の専属映像ディレクターCから本件ビデオ映像の説明書の作成を依頼された際、被告らにおいて本件ビデオ映像を利用した放送番組を制作するという企画を検討中であることが伝えられており、その時点では同企画及び本件説明書を作成することについて原告は特段異議を述べず、むしろCに対して、本件説明書を作成するために必要であるとして本件ビデオ映像のコピーを渡して欲しいと求めるなど、本件説明書の作成に応じるかのような対応をとっていたことが認められています。

しかし、裁判所は、Cが原告に対し本件ビデオ映像を利用した放送番組制作の企画を検討していることを伝えた段階では、本件ビデオ映像を使用して実際に放送番組を制作することができるか否かは、まだ判断ができない状態であって、当該企画自体が明確に確定していたわけではなく、当然、被告らにおいて、どのような方針で本件ビデオ映像を編集し、具体的にどのような内容の番組を制作するのかという点や、制作された番組を誰に対してどのような条件で販売し、いつどのような形で放送されるのかという点についても確定していなかったものであり、これらの事項について、被告らから原告に対して説明したり、原告の許諾を求めたりしたことはなく、原告においてこれらの事項を認識していたものでもなかったこと、その後に別件訴訟が提起されるまでの間に、被告らがこれらの事項を原告に説明するなどして許諾を求めたことはないと判断。

原告による黙示の許諾は認められず、結論として、被告らが原告の意に反して本件ビデオ映像を編集し、本件ビデオ映像の一部を利用して本件テレビ番組を制作したことにより、本件ビデオ映像に係る原告の著作権(複製権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害したこと、また、本件テレビ番組がテレビで放送されることを目的として同番組をテレビ局に販売され、その後同番組がテレビで放送されたことにより本件ビデオ映像に係る原告の著作権(頒布権及び公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権及び公表権)を侵害したことが認められています(22頁以下)。

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2 被告らは、本件テレビ番組に原告の氏名表示を省略すること(著作権法19条3項)ができるか

被告らは、本件ビデオ映像と本件テレビ番組の作品としての質的相違などを根拠に氏名表示省略の正当性(著作権法19条3項)を主張しましたが、裁判所は容れていません(31頁以下)。

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3 被告らの故意又は過失の有無

被告らの故意又は過失について、裁判所は、被告らが本件テレビ番組を制作したことや本件テレビ番組を販売したことにつき、少なくとも過失があったと認定しています(32頁以下)。

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4 過失相殺の成否

被告らは、原告の対応に問題があったとして過失相殺を主張しましたが、裁判所は容れていません(32頁以下)。

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5 原告の損害

原告の損害額について、使用料相当額として50万円(114条3項)、著作者人格権を侵害したことに対する慰謝料として50万円、弁護士費用相当額として10万円の合計110万円が認定されています(34頁以下)。

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■コメント

著作権侵害性が認められたものの、原告の思うような損害額が認定されない結果となっています。

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■過去のブログ記事

2010年11月15日記事 「SL世界の車窓」DVD事件(控訴審)

2010年5月14日記事 原審
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2012年04月05日

片手鍋握り部デザイン事件−著作権 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

片手鍋握り部デザイン事件

知財高裁平成24.3.22平成23(ネ)10062損害賠償請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官      池下 朗
裁判官      武宮英子

*裁判所サイト公表 2012.3.27
*キーワード:実用品、著作物性、応用美術、美術工芸品、意匠、設計図、商品化実施契約

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■事案

片手鍋の握り部のデザインの著作物性が争点となった事案

控訴人 (一審原告):デザイナー
被控訴人(一審被告):商品企画製造販売会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、2項、民法709条

1 本件商品化実施契約に基づく請求
2 本件鍋シリーズに係るデザイナー表示に関連した請求
3 著作権侵害に基づく請求
4 本件三徳包丁等への本件デザイン1の使用行為が不法行為を構成することを理由とする請求

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■事案の概要

『控訴人は被控訴人に対し,被控訴人が控訴人の提案したデザインを使用した本件三徳包丁等を製造,販売した行為に関して,本件三徳包丁等が,控訴人及び被控訴人間で締結した本件商品化実施契約に係る対象商品に含まれると主張して,ロイヤルティ相当額である損害金364万8000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成22年1月15日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求め』るなどした事案(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件商品化実施契約に基づく請求

控訴人(一審原告)提案のデザインを使用した本件三徳包丁等を被控訴人が製造、販売した行為に関して、本件三徳包丁等が、控訴人及び被控訴人間で締結した本件商品化実施契約に係る対象商品に含まれると主張して、ロイヤルティ相当額である損害金364万8000円等を控訴人は請求しました。また、被控訴人が、本件三徳包丁等のデザイナーとして、控訴人ではなく第三者(A)を表示した上でグッドデザイン賞に応募等をしたことが本件商品化実施契約の付随債務に違反すると主張して、損害金100万円等を請求しました。
結論としては、控訴審は原審の判断を維持して控訴人の主張を認めていません(8頁)。

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2 本件鍋シリーズに係るデザイナー表示に関連した請求

被控訴人が、控訴人提案のデザインを使用して商品化し販売した本件鍋シリーズについて、デザイナーとして控訴人及び被控訴人担当者(B)の両名を表示した上でデザイナー協会のコンテストに応募等をしたことは、本件業務委託契約の付随債務の不履行に当たると主張して、控訴人が損害金100万円等の請求をした点についても、原審の判断を維持して否定しています(8頁以下)。

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3 著作権侵害に基づく請求

著作権侵害に基づく請求として、控訴人は、

(1)本件三徳包丁等を製造、販売した被控訴人の行為は、本件デザイン1(片手鍋用のデザイン)について控訴人が有する複製権、翻案権(なお、控訴審では、譲渡権を追加)を侵害する

(2)被控訴人が、本件三徳包丁等のデザイナーとして、控訴人ではなく、第三者(A)を表示した上でグッドデザイン賞に応募等をしたことは、本件デザイン1について控訴人が有する氏名表示権(著作権法19条)を侵害する

(3)被控訴人が、控訴人提案のデザインを使用して商品化し販売した本件鍋シリーズについて、デザイナーとして控訴人及び被控訴人担当者(B)の両名を表示した上でデザイナー協会のコンテストに応募等をしたことは、本件デザイン1について控訴人が有する氏名表示権(著作権法19条)を侵害する

以上の諸点を主張しました(9頁以下)。

この点について、裁判所は、

『著作権法は,著作物について,「思想又は感情を創作的に表現したものであつて,・・・美術・・・の範囲に属するものをいう。」と規定するが,さらに「この法律にいう『美術の著作物』には,美術工芸品を含むものとする。」と重ねて規定する(2条1項1号,2項)。また,意匠法は,「この法律で『意匠』とは,物品・・・の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて,視覚を通じて美感を起こさせるものをいう」と規定する(2条1項)。上記の規定振りなどに照らすならば,産業上利用されることを予定して製作される商品等について,その形状,模様又は色彩の選択により,美的な価値を高める効果がある場合,そのような効果があるからといって,その形状,模様又は色彩の選択は,当然には,著作権法による保護の対象となる美術の著作物に当たると解すべきではなく,その製品の目的,性質等の諸要素を総合して,美術工芸品と同視できるような美的な効果を有する限りにおいて,著作権法の保護の対象となる美術の著作物となると解すべきである。』

と説示した上で、

実用品である鍋の持ち手のデザインである本件デザイン1は、美的な観点から選択された面もあるが、実用品である鍋等の取っ手としての持ちやすさ、安定性など、機能的な観点から選択されたものであって、そのような点を勘案すると、本件デザイン1は、美術工芸品と同視できるような美的な効果を有するものとまではいえず、著作権法の保護の対象となる美術の著作物に当たるとすることはできないと判断。
本件デザイン1が著作権法による保護の対象となるとは認められないとしています(なお、立体のデザインモデルについても同様の理由により否定)。

また、別紙原立体図面、別紙原デザイン図面、平面の製作図面についても、美術工芸品と同視できるような美的な効果を有するものとはいえないから、著作権法の保護の対象となる美術の著作物に当たるとすることはできないなどとして原告の主張を容れていません。

結論として、原告主張の制作物に基づく著作権、著作者人格権侵害性はすべて否定されています。

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4 本件三徳包丁等への本件デザイン1の使用行為が不法行為を構成することを理由とする請求

控訴人は、「被控訴人のした本件三徳包丁等への本件デザイン1の使用行為」及び「被控訴人のした三徳包丁等のデザイナーとして第三者の名を表示した行為」がいわゆる一般不法行為(民法709条)を構成すると主張しました。
しかし、裁判所は、特段の事情のない限り不法行為を構成しないとして、特段の事情に関する主張立証のない本件での一般不法行為の成立を否定しています(12頁)。

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■コメント

片手鍋のグリップ部分のデザインが、三徳包丁等のグリップのデザインに流用されているとして著作権侵害性などが争点となった事案です。
原審の判断が最高裁判所サイトに掲載されていないので、事案の経緯の詳細が分かりませんが、原審の棄却の判断が維持される結果となっています。

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■最近の応用美術に関連する判例

スペースチューブ事件(控訴審)
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2012年04月04日

クレジットカード決済承認用ソフト事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

クレジットカード決済承認用ソフト事件

東京地裁24.3.23平成22(ワ)30222損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 岡本 岳
裁判官      鈴木和典
裁判官      坂本康博

*裁判所サイト公表 2012.3.26
*キーワード:譲渡権、公衆性、業務委託契約

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■事案

ソフトをインストールしたサーバを無断譲渡したとして著作権(譲渡権)侵害が争点となった事案

原告:通信機器開発製造販売会社
被告:電気通信事業会社、システム開発会社、クレジットカード決済情報配信会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法26条の2第1項

1 譲渡権侵害の成否
2 本件プログラムが「DSL回線対応クレジットカード決済システムの製品評価・機能評価のために一時的に使用させる目的」で本件サーバにインストールされたか
3 詐欺による不法行為の成否

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告らの構築するクレジットカード決済システム(DSL回線対応クレジットカード決済システム)の製品評価,機能評価のために一時的に使用させる目的で,被告エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社(以下「被告NTTコム」という。)が運営するデータセンター内のサーバ(ターミナルゲートウェイ〈T−GW〉サーバ)用コンピュータ(以下「本件サーバ」という。)2台にプログラム(サーバとクレジットカードの決済端末の認証を行い,TCP/IPプロトコル対応の決済端末からDSL回線経由で送られてきた暗号化された電文を復号化し,既存のレガシーシステムが電文を受け付けられるようにソケット変換して,決済認証用のホストコンピュータに送信するアプリケーションソフト。以下「本件プログラム」という。)をインストールしたにもかかわらず,被告NTTコムが被告株式会社ジー・ピー・ネット(以下「被告GPネット」という。)に本件プログラムがインストールされた本件サーバ2台を無許諾で譲渡し(被告アイエヌエス・ソリューション株式会社〈以下「被告INSソリューション」という。〉は,これを知りながら原告に告知せず,当該譲渡を幇助した。),被告らにおいて上記目的が終了した後(平成20年9月4日以降)も本件プログラムを継続的に使用していることが不法行為,債務不履行又は不当利得に該当すると主張して,被告らに対し,次の請求をする事案である。』(2頁以下)

<経緯>

H17.05 東京ソフトと原告がカード決済端末事業基本契約書締結
H17.08 被告がソフトをインストールしたサーバを納品
H17.10 被告らが本件協業スキームの商用化に向けた覚書を作成
H17.11 被告らがSSL−VPNサーバセグメント設計・建設委託契約締結
H18.03 被告NTTコムが被告GPネットに対し本件サーバ2台を引き渡し
H19.03 原告がターミナルゲートウェイ(T−GW)サーバー納入仕様書交付
H19.07 「OCNクレジット加盟店パック」販売開始
H20.09 協業各社がサービスの終了に向け協力することを合意

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■判決内容

<争点>

1 譲渡権侵害の成否

原告は、被告NTTコムが被告GPネットに対して本件プログラムがインストールされた本件サーバ2台を譲渡したことが、本件プログラムに係る原告又は韓国KDEの譲渡権(著作権法26条の2第1項)を侵害する旨主張しました。
しかし、裁判所は、『譲渡権は,著作物(映画の著作物を除く。)をその原作品又は複製物の譲渡により公衆に提供する権利をいい,「公衆」には「特定かつ多数の者」も含まれるが(同法2条5項),特定少数の者に対する譲渡について譲渡権は及ばない』と判示した上で、本件において、被告NTTコムは本件プログラムがインストールされた本件サーバを被告GPネットに譲渡したにすぎず、同譲渡は公衆に提供する行為には該当せず、本件プログラムに係る譲渡権を侵害するものということはできないと判断しています(42頁以下)。
また、裁判所は、原告が、被告NTTコムから被告GPネットに対して本件プログラムがインストールされた本件サーバが譲渡され、被告GPネットにおいて使用していることを認識し、これを了承していたことや本件プログラムの使用許諾の対価が支払われていたことなどを併せて認定しています。

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2 本件プログラムが「DSL回線対応クレジットカード決済システムの製品評価・機能評価のために一時的に使用させる目的」で本件サーバにインストールされたか

原告は、債務不履行の成否、みなし著作権侵害(著作権法113条2項)の成否、不当利得の成否の各争点において、いずれも本件プログラムが、「DSL回線対応クレジットカード決済システムの製品評価・機能評価のために一時的に使用させる目的」で本件サーバにインストールされたことを前提とする主張をしました。
しかし、裁判所は、原告の見積もりやターミナルゲートウェイ(T−GW)サーバー納入仕様書などで使用条件の制限等に関する事項の提示がないと判断。原告各争点はいずれもその前提を欠くとして原告の主張を認めていません(44頁以下)。

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3 詐欺による不法行為の成否

原告は、被告らが実際には被告GPネット独自の決済認証サービスに本件プログラムを使用する意思を有していたにもかかわらず、その意思を秘匿し、あたかも本件プログラムが本件協業スキームにおいてKDE製端末を大量導入する前提でその性能等を検証する目的で使用されるものであり、本件協業スキームが商用化された場合にはKDE製端末が被告INSソリューションや東京ソフトを介して被告NTTコムから原告に大量発注されるものと騙した旨主張しました(45頁以下)。
しかし、裁判所は、被告GPネットが本件プログラムを使用することについて、目的や期限の制限を受けるものではなく、また、原告は、KDE製端末の販売の対価のほか、同端末に関連して多額の金員を取得しているなどとして、原告の詐欺の成立の主張を認めていません。

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■コメント

サーバとクレジットカードの決済端末の認証などを行うアプリケーションソフトの使用許諾契約を巡って争われた事案となります。原告側の認識としては、期間限定の試験評価のみの使用許諾でしたが、裁判所はそうした限定を認めませんでした。
事案の概要については、後掲原告サイトに詳しいです。

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■参考サイト

原告サイト
原告2010年8月9日付配付資料

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2012年03月30日

「Shall we ダンス?」振り付け事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「Shall we ダンス?」振り付け事件

東京地裁平成24.2.28平成20(ワ)9300損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官      山門 優
裁判官      小川卓逸

*裁判所サイト公表 2012.3.15
*キーワード:ダンス、振り付け、舞踏、著作物性

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■事案

映画「Shall we ダンス?」のダンスシーンで用いられたダンスの振り付けの著作物性が争点となった事案

原告:ダンス振付け師
被告:映画会社
被告補助参加人:映画制作会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、10条1項3号

1 本件映画のダンスの振り付けに著作物性が認められ、同振り付けが本件映画に複製されているといえるか

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■事案の概要

『映画「Shall we ダンス?」のダンスシーンで用いられたダンスの振り付けを創作したと主張する原告が,被告による上記映画のビデオグラムの販売・貸与,テレビでの放映等の二次利用によって,原告の有する上記ダンスの振り付けに係る著作権(複製権,上映権,公衆送信権及び頒布権)が侵害されたと主張して,被告に対し,主位的に民法709条に基づく損害賠償を請求し,予備的に民法703条に基づく不当利得の返還を請求する事案』(2頁)

<経緯>

H8.01 映画の劇場公開
H8.09 レンタル開始
H8.12 レーザーディスク販売開始
H9.01 ビデオ販売開始
H9.03 地上波放送
H20.04本件訴訟提起

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■判決内容

<争点>

1 本件映画のダンスの振り付けに著作物性が認められ、同振り付けが本件映画に複製されているといえるか

アマチュアの社交ダンスを題材とした劇場映画「Shall we ダンス?」(本件映画)において原告が考案し指導した振り付けについて、原告はその著作物性を前提として著作権を主張しました(25頁以下)。

社交ダンスの振り付けの著作物性(著作権法2条1項1号、10条1項3号)について、裁判所は、既存のステップの著作物性をごく短いものでありかつ、ごくありふれたものであるとして否定した上で、

『社交ダンスの振り付けとは,基本ステップやPVのステップ等の既存のステップを組み合わせ,これに適宜アレンジを加えるなどして一つの流れのあるダンスを作り出すことである。このような既存のステップの組合せを基本とする社交ダンスの振り付けが著作物に該当するというためには,それが単なる既存のステップの組合せにとどまらない顕著な特徴を有するといった独創性を備えることが必要であると解するのが相当である。なぜなら,社交ダンスは,そもそも既存のステップを適宜自由に組み合わせて踊られることが前提とされているものであり,競技者のみならず一般の愛好家にも広く踊られていることにかんがみると,振り付けについての独創性を緩和し,組合せに何らかの特徴があれば著作物性が認められるとすると,わずかな差異を有するにすぎない無数の振り付けについて著作権が成立し,特定の者の独占が許されることになる結果,振り付けの自由度が過度に制約されることになりかねないからである。このことは,既存のステップの組合せに加えて,アレンジを加えたステップや,既存のステップにはない新たなステップや身体の動きを組み合わせた場合であっても同様であるというべきである。』(28頁)

と判示。そして、原告の振り付け(21点)を詳細に検討した上で、そのうちの本件映画に再製されていないもの(1点)のほかは、いずれも独創性がなく著作物性が認められないとしています。

また、原告はダンス同士の組合せに関して、いくつかの振り付けの組合せ等についての著作権を主張しましたが、裁判所は、振り付け自体などにおいて原告が主張するそれぞれの振り付けの印象が表現されているとは認められず、著作物性の認められない振り付けや著作物性が認められない振り付けの一部分の組合せや配列によって、独創性が認められるほどの顕著な特徴を有することになるということも困難であるとして、原告の主張を容れていません。

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■コメント

バレエ作品の振付師を著作者と認定した事案としては、後掲ベジャール「アダージェット」事件がありますが、より身近な舞踏である社交ダンスの振付けの著作物性を争点とした事案として先例的価値があるものと思われます。

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■参考判例

振り付けの創作性にかかわる過去の判例としては、以下のようなものがあります。

・バレエ作品振付け著作権事件(ベジャール「アダージェット」事件)
東京地裁平成10.11.20平成8(ワ)19539損害賠償等請求事件

・日本舞踊家元事件
福岡高裁平成14.12.26平成11(ネ)358著作権確認等請求控訴事件
判決文
福岡地裁小倉支部平成11.3.23平成7(ワ)240、1126

・手あそび歌出版差止事件
東京地裁平成21.8.28平成20(ワ)4692出版差止等請求事件
判決文

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■参考文献

田村善之「上演権侵害の主体―バレエ作品振付け著作権事件」『著作権判例百選3』(2001)130頁以下
著作権法令研究会編『著作権関係法令実務提要1』265頁以下
知的所有権問題研究会編「最新著作権関係判例と実務」(2007)533頁以下[團 潤子]

下記の論文では、著作権法第10条1項3号の立法趣旨や「固定」と「演劇性」の要件性、舞踏のアイデアと創作性、「パ」(バレエのステップ)の著作物性について述べられています。

藤本 寧「「舞踊の著作物」の立法経緯とバレエの創作性について」『大学院研究年報 法学研究科篇』(中央大学 2006.2)35号337頁以下
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2012年03月29日

「釣りゲータウン2」事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「釣りゲータウン2」事件

東京地裁平成24.2.23平成21(ワ)34012著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官      山門 優
裁判官      志賀 勝

*裁判所サイト公表 2012.03.14
*キーワード:創作性、編集著作物、商品等表示性、一般不法行為論

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■事案

携帯電話向けインターネット釣りゲームの類否や誤認混同惹起行為性が争点となった事案

原告:インターネット情報提供会社
被告:インターネット情報提供会社、システム開発会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、12条1項、21条、23条、114条2項、不正競争防止法2条1項1号、民法709条

1 被告作品における「魚の引き寄せ画面」は、原告作品における「魚の引き寄せ画面」に係る原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものか
2 被告作品における主要画面の変遷は、原告作品における主要画面の変遷に係る原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものか
3 被告らのウェブページに被告作品の魚の引き寄せ画面を掲載する行為は、他人の商品等表示として周知のものと同一又は類似の商品等表示を電気通信回線を通じて提供し、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為(不競法2条1項1号)に当たるか
4 被告作品を製作し公衆に送信する行為は、原告の法的保護に値する利益を侵害する不法行為に当たるか
5 原告の損害
6 被告らによる謝罪広告の要否

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告らに対し,(1)被告らが共同で製作し公衆に送信している携帯電話機用インターネット・ゲームソフト「釣りゲータウン2」(以下「被告作品」という。)は,原告が製作し公衆に送信している携帯電話機用インターネット・ゲームソフト「釣り★スタ」(以下「原告作品」という。)と,魚を引き寄せる動作を行う画面の影像及びその変化の態様や,ユーザーがゲームを行う際に必ずたどる画面(主要画面)の選択及び配列並びに各主要画面での素材の選択及び配列の点等において類似するので,被告作品を製作してこれを公衆送信する行為は,原告の原告作品に係る著作権(翻案権,公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害する,(2)被告らが,別紙影像目録1及び2記載の影像を被告らのウェブページに掲載し,被告作品の自他を識別する商品等表示として用いる行為は,不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号の「混同惹起行為」に当たる,(3)被告らが,原告に無断で原告作品に依拠して被告作品を製作し,これを配信した行為は,原告作品の価値にただ乗り(フリー・ライド)するものであり,原告の法的保護に値する利益を違法に侵害する(民法709条,719条1項),と主張して,(1)著作権及び著作者人格権侵害を理由とする被告作品の公衆送信等の差止め及び被告作品の影像の抹消(上記請求1),(2)不競法2条1項1号違反を理由とする別紙影像目録1及び2記載の影像の抹消(請求2,3),(3)著作権侵害,不競法2条1項1号違反及び共同不法行為に基づく損害賠償として,被告作品の配信開始日である平成21年2月25日から本件第9回弁論準備手続期日である平成23年7月7日までの損害金9億4020万円及びこれに対する同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払(請求4),及び(4)著作権法115条,不競法14条又は民法723条に基づく謝罪広告の掲載(請求5,6)を求める事案』(3頁以下)

<経緯>

H19.05 原告作品のGREEでの配信開始
H20.08 被告旧作品のモバゲータウンでの配信開始
H21.02 被告作品のモバゲータウンでの配信開始


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■判決内容

<争点>

1 被告作品における「魚の引き寄せ画面」は、原告作品における「魚の引き寄せ画面」に係る原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものか

原告作品と被告作品の「魚の引き寄せ画面」の類否について裁判所は、

(1)水面及びその上の様子は画面から捨象され、水中のみが真横から水平方向の視点で描かれている
(2)水中の画像には、中心からほぼ等間隔である三重の同心円が描かれ、同心円の中心が画面のほぼ中央に位置し、最も外側の円の大きさは、水中の画像の約半分を占める
(3)水中の画像の背景は、水の色を含め全体的に薄暗い青で、水底の左右両端付近に、上記同心円に沿うような形で岩陰が描かれ、水草、他の生物、気泡等は描かれていない
(4)水中の画像には、一匹の黒色の魚影が描かれており、魚の口から画像上部に向かって黒い直線の糸(釣り糸)が伸びている
(5)釣り針にかかった魚影は、頻繁に向きを変えながら水中全体を動き回り、その際、背景画像は静止しており(ただし、被告作品では、同心円の大きさや配色、中心の円の画像が変化する。)、ユーザーの視点は固定されている
(6)上記同心円中の一定の位置に魚影がある場合にユーザーが決定キーを押すと、魚を引き寄せやすくなっている

といった諸点などにおいて共通すると判断。
また、原告作品以前に公表された携帯電話機用釣りゲームにおいて、上記共通点をいずれも備えるゲームは存在しなかったと認めています。

これに対して、相違点として、

(1)被告作品では、同心円が表示される前に、水中の画面を魚影が移動する場面が存在する
(2)同心円の配色
(3)魚影の描き方及び魚影と同心円との前後関係
(4)魚影が動き回っている間、被告作品では、同心円の大きさ、配色及び中央の円の部分の画像が変化する
(5)同心円のどの位置に魚影がある際に決定キーを押すと魚を引き寄せやすくなっている
(6)被告作品では、中央の円の部分に魚影がある際に決定キーを押すと、円の中心部分の表示に応じてアニメーションが表示され、その後の表示も異なってくる

などにおいて相違することが認められると判断。

共通点である(2)と(6)に原告作品の製作者の個性が強く表れているとした上で、原告作品の魚の引き寄せ画面の表現上の本質的な特徴といえる、(1)(2)(3)(6)についての同一性は、被告作品の中に維持されていると判断。被告作品は、原告作品に依拠して翻案され公衆送信されたものと認めています(86頁以下)。

結論として、著作権(翻案権、公衆送信権)侵害、著作者人格権(同一性保持権)侵害を認め、複製及び公衆送信の差止め(112条1項)と記録媒体の廃棄(112条2項)を認めています。

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2 被告作品における主要画面の変遷は、原告作品における主要画面の変遷に係る原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものか

ゲームの画面と画面とをどのように遷移させるか、主要画面の選択と配列などの類似性についても争点とされています(94頁以下)。
この点について、裁判所は類似点はあるものの相違点もある上、5つの場面を設け、配列したこと自体は、ありふれたものであるとして、その点での創作性を否定。被告作品が原告作品の翻案物であることを否定しています。

また、主要画面に用いられている素材の選択や配列の類似性について、利用者によるリンクの発見や閲覧の容易性、操作性等の利便性の観点からの制約があることなどを勘案した上で、アイデアないし表現上の創作性のない部分での類似にすぎないと判断しています。

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3 被告らのウェブページに被告作品の魚の引き寄せ画面を掲載する行為は、他人の商品等表示として周知のものと同一又は類似の商品等表示を電気通信回線を通じて提供し、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為(不競法2条1項1号)に当たるか

原告は、原告作品の引き寄せ画面は原告の商品等表示として周知性を有するとして、被告作品の利用について、混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)にあたると主張しました。
しかし、裁判所は、原告による電車内広告やテレビコマーシャル、新聞・雑誌等の宣伝広告によって、魚の引き寄せ画面が周知の商品等表示性を獲得したと認めることはできないと判断。不正競争行為性を否定しています(101頁以下)。

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4 被告作品を製作し公衆に送信する行為は、原告の法的保護に値する利益を侵害する不法行為に当たるか

原告はさらに被告らの行為が原告作品の価値にフリーライドするものであるとして一般不法行為論の成立を主張しましたが、裁判所は、著作権侵害が認められる部分を超えて被告らの行為が自由競争の範囲を逸脱し原告の法的に保護された利益を侵害する違法な行為であるということはできないとして、民法の一般不法行為の成立を否定しています(105頁以下)。

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5 原告の損害

損害額の算定については、著作権法114条2項(侵害者利益推定)の適用を認めた上で、被告作品による被告らの限界利益を7億1200万円と認定。被告製品の売上げに対する被告作品の魚の引き寄せ画面の寄与度を30%として、被告らが被告作品の配信により受けた利益の額は2億1360万円(7億1200万円×0.3)と判断しています(106頁以下)。そのほか弁護士費用相当額として、2100万円が認定されています。

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6 被告らによる謝罪広告の要否

被告らが被告作品を製作し配信したことによる原告作品の魚の引き寄せ画面に係る原告の著作権の侵害の内容、態様等に照らし、差止め及び損害に対する賠償金に加えて原告の名誉、声望を回復するために適当な措置として、原告の請求する謝罪広告を掲載する必要性はないと判断されています(113頁)。

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■コメント

ソーシャルゲームとして人気のある携帯電話端末向けゲーム作品が争点となって注目を集めた事案です。
映画著作物としてのゲームやゲームのプログラム部分ではなくて、画面デザインやゲームの流れにおける著作権侵害性などが争点となっています。

著作権侵害が肯定された魚の引き寄せ画面のデザインですが、上が原告サイトで下が被告サイトとなります(7頁)。
作品1





















また、たとえば画面トップのデザインは、このような対比になりますが(23頁)、
原告トップ
(原告作品)

被告トップ
(被告作品)
全体として類似の印象を与えるものの、同心円でのターゲットでタイミングを図る部分の具体的な表現についてだけ類似性が肯定されるにとどまりました。
ゲーム業界はクリエーターの移動が多いので、あるいは原告作品の制作担当者が、被告会社に転職して被告作品の制作担当をしていた可能性もあるのかな、とも思いましたが、その点についての言及はありませんでした。いずれにしても、ゲームの新規性・独創性をどう保護するかやアイデアと表現の区別の難しさが伝わる事案で、知財高裁の判断が注目されます。
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2012年03月24日

マンション設計図書事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

マンション設計図書事件

東京地裁平成24.2.28平成23(ワ)29828損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官      志賀 勝
裁判官      小川卓逸

*裁判所サイト公表 2012.3.13
*キーワード:工事請負契約、解除、設計図書、完成予想パース、複製、創作性

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■事案

マンション工事請負契約が解除されたにも関わらず無断で設計図書などが複製されたとして不法行為の成否が争点とされた事案

原告:建築請負工事会社
被告:運送事業会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 民法709条、民事訴訟法114条1項

1 不法行為の成否

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■事案の概要

『本件は,建築の設計,請負工事及び工事監理等を業とする原告が,被告から店舗付きマンションの設計,建築工事及び監理を請け負い,設計図書や完成予想パースを完成させた上で,これらを被告に引き渡して着工したところ,被告が設計・監理の報酬を支払わないため,原告が請負契約を解除したにもかかわらず,被告が設計図書や完成予想パースを複製するなどして使い続けるとともに,各種検査申請書に原告の氏名・印影を使い,原告の著作権,著作者人格権,所有権及び名誉権が侵害されたとして,被告に対し,不法行為に基づき,損害賠償を求める事案である。』(1頁以下)

<経緯>

H21後半  原被告間でマンション工事請負契約締結
H21.12 1050万円支払い
H22.02 2205万円支払い
H22.04 工事着手
H22.04 9350万円支払い
H22.11 4185万5971円支払い
H23.02 原告が解除の意思表示
H23.09 請負代金請求事件(東京地裁平成23(ワ)5172)で原告敗訴

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■判決内容

<争点>

1 不法行為の成否

原告は、マンション建設工事請負契約において設計・監理相当の報酬額が支払われておらず、請負契約を解除したとして、解除の効果が生じた後の被告による本件建物の設計図書・完成予想パースを複製する行為などの著作権侵害性等の不法行為性を争点としました。
しかし、裁判所は、別訴となる請負代金請求事件訴訟で請負契約における3億2550万円の報酬に設計・監理料等の代金が含まれるとの判断が確定しており、後訴となる本件訴訟で設計・監理料の請負代金請求権を有している旨再度原告が主張することは確定判決の既判力(民事訴訟法114条1項)に抵触する上、前訴での請求及び主張を実質的に蒸し返すものであり許されないと判断。設計・監理料の未払いがあることを前提とする原告の主張を容れていません(6頁以下)。

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■コメント

マンション工事請負契約の際の報酬内容の判断で終わってしまっており、設計図書や完成予想パースの著作物性(著作権法2条1項1号)などが争点となるまでに至っておらず残念です。

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■参考文献

高部眞規子『実務詳説著作権訴訟』(2012)317頁以下
三山裕三『著作権法詳説第8版』(2010)81頁以下
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2012年03月23日

「冬のソナタ」主題歌著作権管理事件(控訴審)−著作権 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「冬のソナタ」主題歌著作権管理事件(控訴審)

知財高裁平成24.2.14平成22(ネ)10024損害賠償請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所 第1部
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官      東海林保
裁判官      矢口俊哉

*裁判所サイト公表 2012.3.8
*キーワード:信託譲渡、信託契約、使用料規程、カラオケ、注意義務

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■事案

韓国楽曲の著作権管理に関して、著作権等管理事業法に基づく文化庁届出使用料規程の合理性やカラオケ事業者の注意義務違反性が争点となった事案の控訴審

A事件控訴人・B事件被控訴人(一審原告):音楽著作権管理団体
A事件被控訴人・B事件控訴人(一審被告):通信カラオケ事業者

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■結論

A事件:控訴棄却
B事件:原判決変更


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■争点

条文 著作権法21条、23条、114条3項、著作権等管理事業法13条、旧信託法63条

1 一審原告による本件著作権の管理権限の有無
2 損害論

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■事案の概要

『1 本件は,平成14年4月15日に設立され同年6月28日に文化庁長官から著作権等管理事業者の登録を受けた一審原告が,日本において通信カラオケ業を営む一審被告に対し,原著作権者(以下「原権利者」という。)である韓国内の作詞家・作曲家・音楽出版社等が権利を有する音楽著作物に関し,韓国法人である「株式会社ザ・ミュージックアジア」(日本語訳)・「The Music Asia」(英語訳)(以下「TMA社」という。ただし,平成18年10月4日に解散決議がなされ,平成19年3月28日に清算結了登記済み)を通じ又は原権利者から直接に,著作権の信託譲渡を受けた等として,平成14年6月28日から平成16年7月31日までの著作権(複製権,公衆送信権)侵害に基づく損害賠償金又は不当利得金9億7578万6000円及びこれに対する平成16年9月9日(訴状送達の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
 これに対し一審被告は,一審原告が譲り受けた楽曲の範囲を争うほか,韓国法人で原権利者から信託譲渡を受けて更に一審原告に上記信託譲渡をしたTMA社は本件訴訟係属中の平成18年7月に一審原告に対する信託譲渡契約を解除し,平成18年10月4日に解散決議をして平成19年3月28日に清算結了登記もしているから,一審原告は本件訴訟を追行する権限を有しない等と,争った。
2 平成22年2月10日になされた原判決(一審判決)は,原権利者らが一審原告に対し信託の清算事務として訴訟を追行することを認めるとの意思を表明している場合に限って一審原告の原告適格が認められる等として,その表明をしない原権利者に係る請求部分につき訴えを却下し,本件訴訟係属中の平成19年4月から6月にかけて書面(確認書B)によりその表明がなされた部分及び直接契約に係る部分に関しては,JASRAC規程の個別課金方式によって一審原告の損害額を算定して,一審被告に対し2300万5495円及び遅延損害金の支払を命じたものである(詳細は原判決のとおり)。
3 当事者双方は,上記一審判決にいずれも不服であったため,本件各控訴(A事件,B事件)を提起した。ただし,一審原告のなした控訴は,本訴請求の一部である2億2500万5495円と遅延損害金の支払を求める限度でなした一部控訴である。
 なお,一審原告は,当審係属中の平成22年7月6日に至り,前記確認書Bと同様の趣旨で別の原権利者からの確認書D(甲145の1の1等)を提出した。』(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 一審原告による本件著作権の管理権限の有無

一審原告の本訴請求は、(1)韓国内の原権利者から韓国法人であるTMA社を通じて信託譲渡を受けた著作権及び(2)原権利者から直接に信託譲渡を受けた著作権に基づき、日本法人である一審原告が同じく日本法人である一審被告に対して著作権侵害に基づく損害賠償金9億7578万6000円と平成16年9月9日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を求めるものでした。
控訴審裁判所は、原判決同様、上記(2)は概ね理由があるものの、原判決と異なり、上記(1)のTMA・原告契約によるものは、本件著作権の管理権限について本件訴訟の対象たる損害賠償請求権も含め、一審原告はこれを一切有しないとして理由がないものと判断しています(101頁以下)。

2 損害論

一審原告が著作権の管理権限を有すると認められる直接契約に関する楽曲は、作詩37楽曲、作曲123楽曲と判断した上で日本の法律(民法、著作権法)に基づき損害額を算定。
通信カラオケ事業に関しては、JASRAC規程が合理性も担保されているとして、個別課金方式よる損害額算定が行われています。
1楽曲当たり作詩、作曲それぞれにつき、基本使用料は月額各100円、利用単位使用料を各20円として作詩37曲、作曲123曲。アクセス回数を勘案した上で基本使用料相当損害金、利用単位使用料相当損害金の合計として642万6464円と認定しています(112頁以下)。

結論として、一審原告の本訴請求のうち、直接契約に係る部分については、直接契約の締結が認められた部分につき請求を認容し、TMA社を介した部分については、一審原告が対象楽曲の著作権の管理権限を失ったものと認められるため、この部分に関する請求を棄却しています。

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■コメント

TMA社を介した部分について一審原告が対象楽曲の著作権の管理権限を失ったものと認められたため、原審と比べると損害額が減少する結果となっています。

一審原告は、本件では、残存信託財産中に未収財産のある原信託の受益者が帰属権利者に該当するから訴訟係属中か否かを問わず、本件での各信託契約が終了した後の法定信託は「復帰信託」ではなく「原信託の延長」となり、その場合、受託者の職務権限は、通常の信託契約とほぼ同様である旨主張しましたが、控訴審裁判所は、一審原告は、契約が終了した平成19年3月31日以降、TMA・原告契約に基づく本件著作権と一審被告に対する損害賠償債権(請求権)の管理権限を全て失ったと認めるのが相当であり、信託契約が終了した後の法定信託の性質をどのように解するかによって、上記結論に直ちに影響が及ぶものとは解されないと判断しています。

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■過去のブログ記事

2010年03月17日
 原審記事
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2012年03月16日

プログラム利用許諾契約違反事件(控訴審)−著作権 プログラム著作権使用料等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

プログラム利用許諾契約違反事件(控訴審)

知財高裁平成24.2.29平成23(ネ)10063プログラム著作権使用料等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官      高部眞規子
裁判官      齋藤 巌

*裁判所サイト公表 2012.3.8
*キーワード:プログラム著作権、利用許諾契約、解除、損害論

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■事案

プログラム著作権の利用許諾契約解除後の無断使用について損害論が争点となった事案の控訴審

控訴人(一審原告) :サーバ管理会社
被控訴人(一審被告):ホームページ制作会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

1 損害論

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■事案の概要

『控訴人が,被控訴人に対し,本件プログラムの著作権を侵害されたとして,(1)著作権法112条1項に基づき,本件プログラムの複製物の譲渡及び公衆送信の差止めを求めるとともに,(2)不法行為に基づき,70万円の損害賠償及びこれに対する最初の不法行為の後である平成22年5月28日から支払済みまで本件契約所定の年14.5%の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
 原判決は,(1)被控訴人が本件プログラムに係る控訴人の著作権を侵害するおそれがあると認められるとして,本件プログラムの複製物の譲渡及び公衆送信の差止請求を認容するとともに,(2)不法行為に基づく損害賠償請求については,10万円並びにうち5万円に対する平成22年5月28日から及びうち5万円に対する平成23年3月28日から各支払済みまで年5%の割合による金員の限度で認容したが,その余を棄却したことから,控訴人は,これを不服として控訴した。』事案(1頁以下)

<経緯>

H18.3 控訴人が本件プログラムを作成
H18.5 控訴人被控訴人間で本件プログラム利用許諾契約締結
H22.5 本件契約が控訴人の解除により終了
H22.5 本件プログラムの利用中止等の通告
H23.3 本件プログラムの利用中止等の通告

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■判決内容

<争点>

1 損害論

損害額について、原判決が認容した10万円を超えるものではないとして損害額70万円との控訴人の主張を容れていません(4頁以下)。

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■コメント

控訴審では専ら損害論が争点とされましたが、結論は変わりませんでした。

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■過去のブログ記事

2011年09月01日 原審記事

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■参考サイト

原告サイト プログラム著作権侵害訴訟経緯
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2012年03月15日

スペースチューブ事件(控訴審)−著作権 損害賠償等請求反訴控訴、同附帯控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

スペースチューブ事件(控訴審)

知財高裁24.2.22平成23(ネ)10053損害賠償等請求反訴控訴、同附帯控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官      井上泰人
裁判官      荒井章光

*裁判所サイト公表 2012.3.6
*キーワード:著作物性、創作性、純粋美術、応用美術、複製権、同一性保持権、誤認混同惹起行為性、形態模倣行為性、営業秘密、秘密保持義務、一般不法行為

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■事案

体験型展示物であるイベント用装置の著作物性が争点となった事案の控訴審

控訴人兼附帯被控訴人(反訴原告):ダンス集団主催者
被控訴人兼附帯控訴人(反訴被告):映像制作会社

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■結論

被控訴人敗訴部分取消し

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、2条2項、21条、20条、不正競争防止法2条1項1号、3号、7号、14号、民法709条

1 控訴人は控訴人装置につき著作権を有するか
2 被控訴人装置の複製権又は同一性保持権侵害性
3 被控訴人事業の誤認混同惹起行為性
4 被控訴人事業の形態模倣行為性
5 被控訴人事業の営業秘密不正使用行為性
6 本件契約に基づく秘密保持義務違反の成否
7 本件仮処分申立ての違法性の有無
8 被控訴人装置を用いた営業活動による不法行為の成否


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■事案の概要

原判決別紙反訴原告装置目録記載の装置(控訴人装置)の制作者である控訴人が、原判決別紙反訴被告装置目録記載の装置(被控訴人装置)を用いてイベントへの出展等の事業を行っている被控訴人に対し、以下の請求を行った。
(1)控訴人装置について控訴人が著作権を有することの確認を求める請求
(2)被控訴人事業に対する差止め及び被控訴人装置の廃棄請求
(3)金銭請求

原判決の判断としては、
(1)著作権の確認請求について、控訴人が控訴人装置の著作権を有することの確認請求を認容した。
(2)被控訴人事業に対する差止め及び被控訴人装置の廃棄請求については、これを棄却した。
(3)金銭請求についても、これを棄却した。

控訴審における審理の対象
『控訴人は,原判決が控訴人装置に係る控訴人の著作権確認請求を除く控訴人の請求を棄却した点について,これを不服として控訴に及ぶとともに,当審において,被控訴人が被控訴人装置を用いて営業活動を行ったことは,競業相手である控訴人の信用や労力を違法に無断使用する行為であって,不法行為を構成するものであると主張して,民法709条に基づく請求を追加した。
 これに対し,被控訴人は,原判決が控訴人装置に係る控訴人の著作権確認請求を認容した点について,これを不服として附帯控訴に及んだ。』(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 控訴人は控訴人装置につき著作権を有するか

控訴人装置の創作性として、控訴人は、

1.「閉じた空間・やわらかい空間」であること
2.「浮遊を可能にする空間(宙吊り)」であること
3.「見た目の日本的美しさをもつ空間」であること
4.軽さや色、大きさ

という諸点を上げていましたが、裁判所は、控訴人装置は『実用に供され,又は産業上利用されることを目的とする応用美術に属するものというべきであるから,それが純粋美術や美術工芸品と同視することができるような美的特性を備えている場合に限り,著作物性を認めることができるものと解すべきである』として応用美術との区別も踏まえて各要素を検討しています(21頁以下)。
そして、1については、空間の性質に関する思想ないしアイデアである、2については、控訴人装置の機能等を示すものにすぎない、3についても、具体的な表現ではなかったり、制作者の個性が表現されたものとはいえない、4についても、素材の性質などであるとして、結論として控訴人装置の創作性を否定しています。

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2 被控訴人装置の複製権又は同一性保持権侵害性

控訴人装置の創作性が否定されたことから、被控訴人装置の複製権又は同一性保持権侵害性の争点はその前提を欠くと判断されました(26頁)。
なお、控訴人装置の著作権に係る確認請求については、訴えの利益がなく不適法却下との判断がされています。

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3 被控訴人事業の誤認混同惹起行為性

被控訴人事業が、控訴人の商品等表示として周知性を有する控訴人装置と同一のものを使用して控訴人の商品又は営業と混同を生じさせる行為(不正競争防止法2条1項1号)に該当するかどうかについて、「需要者」が具体的にどのような者をいうかについて明らかでなく、また「形態」についても体験型装置において機能上不可避の形態であって控訴人の商品等表示であるとまでは認められないと判断。1号該当性を否定しています(27頁以下)。

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4 被控訴人事業の形態模倣行為性

被控訴人事業が、控訴人の商品形態である控訴人装置を模倣した商品である被控訴人装置を譲渡等のために展示する行為(不正競争防止法2条1項3号)に該当するかどうかについて、被控訴人装置の形態は機能上不可避の形態の限度で控訴人装置に類似するものにすぎないというべきであり、当該形態は不正競争防止法2条1項3号かっこ書の「同種の商品が通常有する形態」に該当すると判断。3号該当性も否定しています(29頁以下)。

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5 被控訴人事業の営業秘密不正使用行為性

被控訴人事業が、控訴人の開示した控訴人装置に関する営業秘密を不正の利益を得る目的をもって使用する行為(同法2条1項7号)に該当するかどうかについて、控訴人が営業秘密であると主張する控訴人装置に関する情報(1控訴人装置の長さ及び高さ、2布の強度と伸縮性、3布の張り具合、4二重化構造、5布及びロープの総重量)は、いずれもその性質上、展示されている控訴人製品の中に入り、又はこれに触れ、あるいは外部から観察した者が容易に認識し得る情報であるということができるものであり、非公知性を欠くと判断。7号該当性を否定しています(30頁以下)。

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6 本件契約に基づく秘密保持義務違反の成否

本件契約書6条に定める秘密保持義務について、非公知性を欠く情報などは秘密の対象にならないとして秘密保持義務違反性を否定しています(31頁以下)。

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7 本件仮処分申立ての違法性の有無

本件注意書のアップロードが、被控訴人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知又は流布する行為(不正競争防止法2条1項14号)に該当するかの点について、虚偽の事実を含むものであり被控訴人の営業上の信用を害するものであったとして、14号該当性を肯定しています。結論として、被控訴人の本件仮処分命令の申立てを相当と認め、被控訴人に150万円の担保を立てさせて本件注意書の削除を命じた本件仮処分命令それ自体に違法な点はないと判断しています(32頁以下)。

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8 被控訴人装置を用いた営業活動による不法行為の成否

控訴人は、被控訴人が控訴人との共同事業が破綻するや直ちに控訴人から教えられた技術的手法に基づいて控訴人装置を模倣し、これと少なくとも実質的同一性を有する被控訴人装置を制作し、これを展示する等の営業活動を行ったことは、競業相手である控訴人の信用や労力を違法に無断使用する行為であって、不法行為を構成するものであると主張しました。
しかし、裁判所は、前記各争点で検討されたように著作権法や不正競争防止法で保護されない被控訴人装置を用いて事業を行ったからといって、控訴人装置ないし同装置に関する情報について著作権侵害、不正競争防止法及び本件契約に違反する行為が認められない本件において、それ以外に控訴人の具体的な権利ないし利益が侵害されたと認められない以上、不法行為が成立する余地はないと判断しています(37頁以下)。

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■コメント

体験型イベント構造物が単なる実用品(応用美術)なのか、応用美術作品ではあるが美術工芸品(純粋美術、鑑賞美術)なのか区別が難しい著作物でしたが、著作物性を肯定した原審から一転、控訴審ではその著作物性が否定され著作権法での保護を認めませんでした。
著作権法による保護の必要性は意匠法、商標法、不正競争防止法といった知的財産制度全体を俯瞰して検討されるべきですが(後掲書217頁以下、259頁以下等参照)、本事例についてみれば不競法での保護も否定されており、価値判断的にも著作権法での保護を否定する結論は妥当ではないかと思われます。

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■過去のブログ記事

2011年09月20日 原審記事

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■参考文献

「特集1:応用美術の法的保護」『知財年報2009』(2009)209頁以下
written by ootsukahoumu at 05:22|この記事のURLTrackBack(0)