知財判決速報2011

2011年09月02日

「キミへ続く空」歌詞無断改変事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「キミへ続く空」歌詞無断改変事件

東京地裁平成23.6.29平成22(ワ)16472損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀滋
裁判官      菊池絵理
裁判官      森川さつき

*裁判所サイト公表 2011.8.31
*キーワード:著作者性、作詞、作曲、翻案、包括的許諾、著作者人格権、氏名表示権、同一性保持権

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■事案

エイズチャリティコンサートでの楽曲の使用に関して歌詞の翻案を含めた包括的許諾があったかどうかが争点となった事案

原告:シンガーソングライター
被告:芸能プロダクション会社、歌手B

原告楽曲:「キミへ続く空」(本件著作物)
被告楽曲:「僕たちにできる事−キミへ続く空−」

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項2号、22条、23条、19条、20条、115条

1 本件著作物の歌詞の著作者
2 本件著作物の楽曲の著作者
3 著作権及び著作者人格権侵害行為の成否(依拠性)
4 楽曲の使用に関して包括的許諾があったか
5 故意過失
6 損害
7 名誉回復等の措置請求の成否

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■事案の概要

『本件は,原告が,芸能プロダクションである被告有限会社エスジーケー(以下「被告会社」という。)及びその取締役かつ所属する歌手である被告B(以下「被告B」という。)に対し,原告が,作詞作曲し著作権・著作者人格権を有すると主張する音楽の著作物について,被告らが共同して,原告の許諾を受けずに,(1)同著作物を演奏,歌唱して,原告の演奏権(著作権法22条)を侵害した,(2)被告Bの管理するブログに同著作物を掲載し,原告の公衆送信権(送信可能化権を含む)(同法23条)を侵害した,(3)同掲載に当たり,作詞作曲者を「C」と表示し,原告の氏名表示権(同法19条)を侵害した,(4)同掲載に当たり,題名・歌詞の一部を改変し,原告の同一性保持権(同法20条)を侵害したと主張して,著作権及び著作者人格権の侵害に基づく損害賠償請求(民法709条,710条,719条,著作権法114条3項)として,連帯して,(1),(2)について使用料相当額5万円,(3),(4)について慰謝料95万円及び弁護士費用10万円の合計110万円並びにこれに対する最終の不法行為日である平成21年11月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,被告Bに対し,名誉回復等の措置(同法115条)として,上記ブログへの謝罪文の掲載を求める事案』(2頁)

<経緯>

H18.8 原告が本件著作物をライブハウスで歌唱
H18.10原告、被告会社代表者等で本件著作物の使用に関する協議
H18.12被告Bがチャリティコンサートで被告楽曲を演奏、歌唱
H21.11被告B名義のサイトに被告楽曲の演奏の映像等を掲載

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■判決内容

<争点>

1 本件著作物の歌詞の著作者

まず、本件音楽著作物の作詞の著作者性について、裁判所は、原告が作詞者であると認定しています(10頁以下)。

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2 本件著作物の楽曲の著作者

次に原告は楽曲制作にあたり訴外Eに対してパソコンソフトへの打ち込みなどを依頼しており、楽譜の署名表示とともに楽曲の著作者性に疑義が生じました。
しかし、この点についても裁判所は、原告が楽曲の著作者であると認定しています(11頁以下)。

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3 著作権及び著作者人格権侵害行為の成否(依拠性)

本件著作物の著作権及び著作者人格権侵害行為の成否について、依拠性が争点となっています(12頁以下)。
この点について、裁判所は、被告楽曲の歌詞37行のうち21行が本件著作物の歌詞と同一又はほぼ同一であること、楽曲が同一であること、本件著作物の音源の複製物などが資料として提供されていたこと等から被告楽曲が本件著作物に依拠していることを肯定しています。
その上で、被告楽曲の楽曲部分については、本件著作物を複製し、作詞部分については翻案したものであると認めています。

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4 楽曲の使用に関して包括的許諾があったか

被告らは、本件著作物の使用に関してエイズチャリティコンサートでの使用や同コンサートの性質に応じた歌詞の改変を含む包括的な承諾を得ていたと反論しました(17頁以下)。
結論としては、原告は被告会社に対してコンサートのエンディングにおいて、メロディラインのない伴奏部分を使用することについて許諾したものの、それ以外は何ら許諾をしなかったとして、本件著作物の使用に関する原告による包括的許諾の事実は認められていません。

以上から、(1)被告らによる被告楽曲のコンサートでの演奏、歌唱による演奏権侵害、(2)被告ブログへの演奏映像や歌詞の掲載による公衆送信権侵害、(3)別人名の記載による氏名表示権侵害、(4)題名、歌詞の一部改変による同一性保持権侵害、が認められています。

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5 故意過失

芸能プロダクションとしての注意義務違反などが認められ、被告会社、被告Bいずれについても過失が肯定されています(19頁以下)。

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6 損害

(1)演奏権侵害による損害 2万円
(2)公衆送信権侵害による損害 3万円
(3)氏名表示権、同一性保持権侵害による損害 50万円
(4)弁護士費用 5万円

以上の合計60万円が損害額として認定されています(20頁以下)。

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7 名誉回復等の措置請求の成否

損害賠償が認められていることや本件訴訟手続前に被告会社において原告に対して謝罪文が送付されていることなどの事情から、名誉回復措置(115条)としての被告ウェブサイトへの謝罪文掲載は認められていません(22頁)。

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■コメント

被告芸能プロダクションに所属する被告歌手Bが主催メンバーの「世界エイズデーチャリティーコンサート−僕たちにできる事−」で使用する楽曲の外部者からの提供に関して、その使用態様に関して楽曲提供者と事前の確認がしっかりされておらず紛争になった事案です。

原告である楽曲提供者は他人が本件著作物を歌唱することに抵抗を感じ使用を当初は断りましたが、被告側との協議の結果としてメロディラインのない伴奏部分だけの使用許諾といった、極めて限定的な使用態様での許諾をしましたが(15頁参照)、その趣旨が被告側に充分理解されなかった結果となっています。
歌詞を翻案したり、氏名表示を違える取扱い(二次的著作物の著作者の氏名の表示方法)をする以上は、特に慎重な事前の原著作者との確認作業が必要になるところです。

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■参考サイト

世界エイズデーチャリティーコンサート 〜僕たちにできる事〜 (一部修正済)|小泉真也オフィシャルブログ「やっぱり犬が好き」Powered by Ameba(2009−11−16 23:00:11記事)
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2011年09月01日

プログラム利用許諾契約違反事件−著作権 プログラム著作権使用料等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

プログラム利用許諾契約違反事件

大阪地裁平成23.8.25平成23(ワ)6526プログラム著作権使用料等請求事件PDF

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 山田陽三
裁判官      達野ゆき
裁判官      西田昌吾

*裁判所サイト公表 2011.8.31
*キーワード:サーバレンタルサービス契約、プログラム利用許諾契約

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■事案

サーバレンタルサービスに付帯して許諾されたプログラムの利用に関して、契約解除後も利用されたとして著作権侵害性が争点となった事案

原告:レンタルサーバ会社
被告:ホームページ制作会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法23条、26条の2、112条1項

1 本件プログラムに係る著作権侵害のおそれの有無
2 損害額等

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■事案の概要

『原告は,被告に対し,本件プログラムの著作権を侵害されたとして,著作権法112条1項に基づき,本件プログラムの複製物の譲渡及び公衆送信の差止めを求めるとともに,不法行為に基づき,70万円の損害賠償及びこれに対する最初の不法行為の後である平成22年5月28日から支払済みまで本件契約所定の年14.5%の割合による遅延損害金の支払を求めている』事案(3頁)

<経緯>

H18.5 原被告間で専用サーバレンタルサービス契約締結
H22.5 解除により契約終了
       被告による本件プログラムの無断利用に対し利用中止等通告
H23.3 被告による再度の無断利用に対して利用中止等通告

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■判決内容

<争点>

1 本件プログラムに係る著作権侵害のおそれの有無

別紙原告ソフト・プログラムコード一覧記載のプログラム(本件プログラム)の利用契約解除後の再利用について、被告は無断利用の警告を受けて利用を中止したものの、再度、無断で利用した事実経緯から、裁判所は、被告が本件プログラムの無断利用を再開し、原告の著作権を侵害するおそれは十分にあると認め、本件プログラムの複製物の譲渡及び公衆送信の差止(著作権法112条1項)を肯定しています(5頁)。

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2 損害額等

裁判所は、本件プログラムの月額利用料や他の同機能のプログラムの提供価格、また、被告による本件プログラムの利用態様や利用期間など一切の事情を考慮した上で平成22年5月28日頃と平成23年3月28日頃のそれぞれの無断利用について、各5万円の限度で損害が発生したと認定しています(5頁)。

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■コメント

被告は契約終了後の本件プログラムの無断利用の事実自体は争っておらず、差止の必要性と損害論が争点となっています。
レンタルサーバ契約に付帯してプログラムの利用許諾がされていますが、どのようなプログラムだったのか、判決文からは分かりません。原告会社のサイトを拝見すると、ECショップ運営に関するソフトの提供なども行っているようですので、あるいはそうした種類のものだったかもしれません。
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2011年08月16日

「あたたかい場所」CD原盤制作契約事件−著作権 損害賠償請求事件、レコード複製・譲渡禁止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「あたたかい場所」CD原盤制作契約事件

東京地裁平成23.7.21平成21(ワ)37303損害賠償請求事件、レコード複製・譲渡禁止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官      上田真史
裁判官      石神有吾

*裁判所サイト公表 2011.8.15
*キーワード:原盤制作契約、ジャケットデザイン制作契約、原盤権、著作隣接権

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■事案

音楽CDの原盤制作契約やCDジャケットデザイン制作契約の成否や報酬額が争点となった事案

原告(反訴被告):音楽家
原告        :イラストレーター
被告(反訴原告):個人

本件CD:「あたたかい場所」(全11曲)

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■結論

請求一部認容(本訴/反訴)

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■争点

条文 民法415条

1 原告X1の本件CDの原盤の制作代金請求
2 原告X2のジャケットデザインの制作代金請求
3 反訴請求について

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■事案の概要

『本訴原告(反訴被告)(以下「原告X1」という。)が,本訴被告(反訴原告)(以下「被告」という。)との間で,被告が作詞作曲し,歌唱した楽曲についてCDの原盤を制作する旨の制作契約を締結し,別紙CD目録記載のCD(以下「本件CD」という。)の各収録曲をマスタリングした音源の記録媒体である原盤(以下「本件CDの原盤」という。)を制作し,これを被告に引き渡した旨主張して,被告に対し,その制作代金の支払を求め(主位的請求),仮に原告X1主張の制作契約の成立が認められない場合には,原告X1が本件CDのレコード製作者としての著作隣接権(譲渡権)及び本件CDの原盤の所有権を有する旨主張して,被告に対し,著作権法112条1項に基づき,本件CDの販売の差止めを求めるとともに,所有権に基づき,本件CDの原盤の引渡しを求め(予備的請求),本訴原告(以下「原告X2」という。)が,被告から本件CDのジャケットデザインの作成の発注を受け,その作成を行った旨主張して,被告に対し,その作成代金の支払を求めた事案』

『また,本件反訴は,被告が,本件CDのレコード製作者としての著作隣接権(複製権及び譲渡権)を有し,また,原告X1が保管する本件CDの複製物(282枚)の所有権は被告に帰属する旨主張して,原告X1に対し,著作権法112条1項に基づき,本件CDの複製等の差止めを求めるとともに,所有権に基づき,本件CDの上記複製物の引渡しを求めた事案』(2頁以下)

<経緯>

H20.4 原告X1と被告が面会
       原告X1がCD原盤制作開始
       歌入れ33回実施
H20.11被告が原告X2にジャケットデザイン制作を依頼
H21.1 本件CD原盤制作完了
       30万円の領収書を被告が受領
H21.2 印刷業者からCD1000枚の引渡し
       CD発売記念ライブ開催
H21.3 原告X1が被告に書面通知
H21.3 被告代理人が原告X1に内容証明書通知
H21.9 本訴提起
H21.12反訴提起

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■判決内容

<争点>

1 原告X1の本件CDの原盤の制作代金請求

被告が作詞作曲した楽曲11曲の原盤制作に関して、原告X1と被告との間で契約の成否やその内容について争点となっています(19頁以下)。

(1)原盤制作契約の成否、内容

この点について、裁判所は、販売目的のないCD原盤制作の場合は制作代金60万円で、販売目的のCD制作の場合は、プロデュース料等が1曲当たり30万円、エンジニア料が1曲当たり5万円とする内容の制作契約(本件制作契約(1))が締結されていることを否定。
制作の経緯や当事者の合理的意思解釈から、「原告X1が,被告が作詞作曲し,歌唱した楽曲についてアレンジ,演奏,レコーディング,トラックダウン,マスタリングをして,CDの原盤を制作し,被告が原告X1に対し相当な額の報酬を支払う旨の契約(本件制作契約(2))」が成立していると判断しています(25頁以下)。

(2)相当な報酬額

その上で本件制作契約(2)に基づく相当な報酬額について判断(26頁以下)。
結論としては、8万円(1曲当たりの編曲料、各演奏料、コンピュータープログラミング料、トラックダウン料の合計額)×11曲+マスタリング料5万円+レコーディング料30万円の合計123万円と認定。

既に支払済みの30万円を差し引いた残額93万円について請求が認められています。

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2 原告X2のジャケットデザインの制作代金請求

次に原告X2と被告との間で代金10万円の約定で本件CDのジャケットデザインを制作する旨の契約(本件ジャケットデザイン契約)が締結されていたかどうかについて争点とされています(28頁以下)。

この点について、裁判所は、原告X2の主張を容れて本件ジャケットデザイン契約の成立を肯定しています。
結論として、ジャケットデザインのデータを納品した事実があり、制作代金10万円の請求が認められています。

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3 反訴請求について

(1)レコード製作者(著作隣接権者)としての差止請求について

被告(反訴原告)は、原告X1(反訴被告)との間で原盤や演奏等に関する著作権、著作隣接権等の一切の権利を被告に帰属させる旨の合意(本件合意)をした旨主張しましたが、本件合意の成立は認められていません(30頁以下)。

(2)本件複製CDの所有権に基づく引渡請求について

本件複製CDを製造した印刷会社への支払は、すべて被告がしていること、また、1000枚の引渡しの際に量が多かったことから被告が700枚、原告X1が300枚を保管することになった経緯などから、本件複製CDの所有権を被告に認めた上で、原告X1占有のCD282枚の被告への引渡請求が認められています(31頁以下)。

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■コメント

原盤制作の内容が変遷したことから、制作契約の成否や内容が争点となった事案です。

レコード製作者(原盤制作者)側は、発注者側で制作費の支払が困難であればと、原盤権(レコード製作者の著作隣接権)や音源の売上分配を折半する譲歩案(契約書案)を提案しましたが(16頁以下)、発注者側と折り合いませんでした。

判決文にもあるように、CD原盤の制作費については、「インディーズ系とか、ピンからキリまで」(23頁)となりますが、本件での、被告が作詞作曲した11曲について、編曲し、「オケ録り」し、33回に亘って「歌入れ」した上でトラックダウン(ミキシング)しマスタリングする、といった一連の作業が果たしていくらの報酬になるものだったのか。

原被告間で当初から制作費について詰めた話をする機会が持たれておらず、「良いモノを創る」ということと同じ位に「お金の話し」が重要であることを再認識する事案となりました。

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■過去のブログ記事

最近の音楽制作を巡る紛争事案として、

2011年8月15日記事
TBS「愛の劇場」オープニングテーマ曲不当利得返還請求事件(控訴審)

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■参考文献

安藤和宏『よくわかる音楽著作権ビジネス基礎編 4th Edition』(2011)81頁以下
written by ootsukahoumu at 19:57|この記事のURLTrackBack(0)

2011年08月15日

TBS「愛の劇場」オープニングテーマ曲不当利得返還請求事件(控訴審)−著作権 不当利得返還請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

TBS「愛の劇場」オープニングテーマ曲不当利得返還請求事件(控訴審)

知財高裁平成23.8.9平成23(ネ)10030不当利得返還請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官      八木貴美子
裁判官      知野 明

*裁判所サイト公表 2011.8.10
*キーワード:音楽著作権、委嘱楽曲、買取り、使用料、制作費、著作権譲渡、信託契約、ジャスラック

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■事案

昼ドラのオープニングBGM楽曲制作委託が買取り(著作権譲渡)だったかどうかが争点となった事案の控訴審

原告(控訴人) :作曲家ら
被告(被控訴人):TBSテレビ

楽曲名:「愛の劇場」オープニングテーマ ―ホワイトチャイム―

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 民法703条、704条

1 原告らは、被告に対して本件楽曲の使用を許諾したか

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■事案の概要

『原告らは,東京放送の製作するテレビ番組のオープニングテーマとして使用された楽曲の作曲者である。原告らは,同楽曲の使用が開始された平成16年1月1日から平成18年3月31日までの間,原告らの許諾を得ずに本件楽曲が使用されたと主張して,会社分割により東京放送の権利義務を包括的に承継した被告に対し,上記楽曲の上記期間における使用に対する使用料相当額の不当利得の返還及びこれに対する民法704条所定の法定利息の支払を求めた。
 原審が原告らの請求を全て棄却したため,これを不服とした原告らが,原判決の取消しを求めて,本件控訴を提起した。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 原告らは、被告に対して本件楽曲の使用を許諾したか

原審の棄却の判断を維持しています(4頁以下)。

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■コメント

原告らが20万円を対価として本件オープニング映像に本件楽曲を使用することを許諾していたとして、原告らの使用料の請求を認めなかった原審の判断が控訴審でも維持されています。

原告側は、楽曲制作のための実費の内訳を示したりしながら(別紙実費一覧表参照)、短い楽曲(7秒程度)であっても相応の対価(制作費と使用料)の支払の必要があることを主張しましたが、控訴審でも理解を得ることができませんでした。

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■過去のブログ記事

2011年4月8日記事(原審)
TBS「愛の劇場」オープニングテーマ曲不当利得返還請求事件


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2011年08月04日

「合格!行政書士 南無刺青観世音」入れ墨事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「合格!行政書士 南無刺青観世音」入れ墨事件

東京地裁平成23.7.29平成21(ワ)31755損害賠償請求事件PDF

別紙1

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 岡本 岳
裁判官      坂本康博
裁判官      寺田利彦

*裁判所サイト公表 2011.8.1
*キーワード:著作物性、著作者人格権、出版社の責任、人格権、プライバシー権

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■事案

自らの左大腿部に施した十一面観音立像の入れ墨の画像を彫り師に無断で自著の書籍やホームページに掲載するなどしたとして著作者人格権侵害性が争点となった事案

原告:彫り師
被告:出版社、執筆者

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、18条、19条、20条

1 本件入れ墨の著作物性
2 著作者人格権侵害の成否
3 人格権及びプライバシー権侵害の成否
4 損害及びその額

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■事案の概要

『(1) 第1の1の請求
 原告は,被告Y(以下「被告Y」という。)が執筆し,被告株式会社本の泉社(以下「被告本の泉社」という。)が発行,販売した「合格!行政書士 南無刺青観世音」と題する書籍(平成19年7月1日初版第1刷発行。以下「本件書籍」という。)について,
ア 被告らが原告の許諾を得ずに原告が被告Yの左大腿部に施した十一面観音立像の入れ墨(以下「本件入れ墨」という。)の画像(ただし,陰影が反転し,セピア色の単色に変更されている。以下「本件画像」という。)を本件書籍の表紙カバー(別紙の1。以下「本件表紙カバー」という。)及び扉(別紙の2。以下「本件扉」という。)の2か所に掲載したことは,原告の有する本件入れ墨の著作者人格権(公表権,氏名表示権,同一性保持権)を侵害する,
イ 原告の人格,名誉を傷付ける記述及び原告のプライバシーに関する記述がされており,これらの記述は原告の人格権及びプライバシー権を侵害する,
として,被告らに対し,(1)著作者人格権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき損害賠償金77万円(慰謝料70万円,弁護士費用7万円)及びうち70万円に対する不法行為の後の日である平成19年7月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,並びに(2)人格権及びプライバシー権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき損害賠償金33万円(慰謝料30万円,弁護士費用3万円)及びうち30万円に対する前同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求めている。
(2) 第1の2の請求
 原告は,被告Yが平成19年7月1日以降インターネット上の自己のホームページ(以下「本件ホームページ1」という。)に本件表紙カバーの写真を掲載していることは,原告の有する本件入れ墨の著作者人格権(公表権,氏名表示権,同一性保持権)を侵害するとして,被告Yに対し,著作者人格権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき損害賠償金35万円(慰謝料30万円,弁護士費用5万円)及びうち30万円に対する不法行為の後の日である平成21年5月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。
(3) 第1の3の請求
 原告は,被告本の泉社が平成19年7月1日以降インターネット上の自社のホームページ(以下「本件ホームページ2」といい,本件ホームページ1と併せて「本件各ホームページ」という。)に本件表紙カバーの写真を掲載していることは,原告の有する本件入れ墨の著作者人格権(公表権,氏名表示権,同一性保持権)を侵害するとして,被告本の泉社に対し,著作者人格権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき損害賠償金35万円(慰謝料30万円,弁護士費用5万円)及びうち30万円に対する不法行為の後の日である平成22年2月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。なお,原告は,本件訴訟において,本件入れ墨の著作権(複製権,翻案権,公衆送信権〔送信可能化権を含む。〕)侵害に基づく損害賠償は請求しないとの意思を明らかにしている。』
(2頁以下)

<経緯>

H13.11 原告が被告Yに入れ墨の施術
H19.7  被告Yが執筆した書籍を被告出版社が刊行

本件書籍:「合格!行政書士 南無刺青観世音」

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■判決内容

<争点>

1 本件入れ墨の著作物性

原告が被告Yの左大腿部に施術した十一面観音立像の入れ墨の著作物性(著作権法2条1項1号)がまず争点となっています(19頁以下)。

この点について裁判所は、入れ墨の制作過程を検討。その上で入れ墨の下絵作成の際の参考とされた「日本の仏像100選」(主婦と生活社刊行)掲載の向源寺観音堂(滋賀県)の十一面観音立像の写真と本件入れ墨を対比検討し、

『本件入れ墨(甲8の3)は,本件仏像写真をモデルにしながらも,本件仏像の胸部より上の部分に絞り,顔の向きを右向きから左向きに変え,顔の表情は,眉,目などを穏やかな表情に変えるなどの変更を加えていること,本件仏像写真は,平面での表現であり,仏像の色合いも実物そのままに表現されているのに対し,本件入れ墨は,人間の大腿部の丸味を利用した立体的な表現であり,色合いも人間の肌の色を基調としながら,墨の濃淡で独特の立体感が表現されていることなど,本件仏像写真との間には表現上の相違が見て取れる。』

『そして,上記表現上の相違は,本件入れ墨の作成者である原告が,下絵の作成に際して構図の取り方や仏像の表情等に創意工夫を凝らし,輪郭線の筋彫りや描線の墨入れ,ぼかしの墨入れ等に際しても様々の道具を使用し,技法を凝らして入れ墨を施したことによるものと認められ,そこには原告の思想,感情が創作的に表現されていると評価することができる。したがって,本件入れ墨について,著作物性を肯定することができる。』

本件入れ墨の著作物性(2条1項1号)を肯定しています。

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2 著作者人格権侵害の成否

原告彫り師が本件入れ墨の著作者とされ著作者人格権が認められた上で、著作者人格権侵害性が次に検討されています(25頁以下)。

(1)公表権侵害の成否

本件入れ墨を撮影した写真を被告Y及び被告出版社が本件書籍や本件各ホームページで公開している点が、原告の本件入れ墨に関する公表権(18条)を侵害しているかどうかが争点となっています。

この点について、裁判所は、本件画像が本件入れ墨の複製物であるとした上で、原告は本件入れ墨の写真を被告らが公表する以前に自ら複数の雑誌の広告欄に掲載していたとして、本件入れ墨は未公表の著作物とは言えないと判断。
公表権侵害性は否定されています。

(2)氏名表示権侵害の成否

本件書籍や本件各ホームページでは原告彫り師の氏名が表示されておらず、この点について氏名表示権(19条)の侵害性が肯定されています(26頁以下)。
被告らは、利用目的や当事者意思などから19条3項の氏名の表示を省略することができる場合にあたると反論しましたが、裁判所に容れられていません。

(3)同一性保持権侵害の成否

本件画像は、陰影が反転し、セピア色の単色に変更されていることから、原告の意に反する改変であり本件入れ墨について有する原告の同一性保持権(20条)を侵害すると裁判所は認定しています(28頁以下)。

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3 人格権及びプライバシー権侵害の成否

原告は、本件書籍の記述が本件入れ墨に対する負の評価をしたものであり、専門技能者としての原告の人格権を侵害する、また、私生活上の事実が記載されているとしてプライバシー権侵害を主張しましたが、裁判所にいずれも認められていません(29頁以下)。

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4 損害及びその額

出版社の不法行為責任について、被告出版社にも少なくとも過失が認められるとして不法行為責任が認められています。
本件書籍への本件画像の掲載行為については、被告出版社と被告Yとの共同不法行為が認められた上で、損害額については、

(1)本件書籍による損害

著作者人格権侵害に係る慰謝料 20万円
弁護士費用相当額           4万円

(2)ホームページによる損害

被告Yによる著作者人格権侵害に係る慰謝料 10万円
弁護士費用相当額                   2万円
被告出版社による著作者人格権侵害に係る慰謝料 10万円
弁護士費用相当額                       2万円

以上の損害額が認定されています(33頁以下)。

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■コメント

入れ墨(刺青)の著作物性(著作権法2条1項1号)が正面から争点とされた事案として先例性がある判例と思われます。

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本件書籍表紙カバー(別紙1より)

本件では下絵制作の過程で、原案となる仏像の写真があったことから、入れ墨がその写真の機械的な複製に過ぎないのではないかという点もありましたが、表情や色合いを変更し、技巧を凝らして施術していたことから入れ墨の著作物性が肯定されています。

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■追記(2011.8.9)

企業法務戦士の雑感
彫り師のプライド
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2011年08月01日

ウルトラマン海外ライセンス契約事件(控訴審)−著作権 譲受債権請求承継参加申立控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ウルトラマン海外ライセンス契約事件(控訴審)

知財高裁平成23.7.27平成22(ネ)10080譲受債権請求承継参加申立控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官      池下 朗
裁判官      武宮英子

*裁判所サイト公表 2011.7.28
*キーワード:ライセンス契約、損害、損失、補助参加

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■事案

ウルトラマンキャラクターの海外ライセンス契約に関して従前の独占的利用許諾契約との抵触が争われた事案の控訴審

控訴人・被控訴人(第1審脱退原告承継参加人)
                     :キャラクター企画デザイン会社
被控訴人・控訴人(第1審被告):円谷プロダクション
上記補助参加人          :株式会社バンダイ

第1審脱退原告           :タイ王国人

被参加事件 平成18年(ワ)10273損害賠償請求事件

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■結論

第1審被告敗訴部分取消し、請求棄却

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■争点

条文 民訴法248条、民法415条、703条

1 本件訴訟の国際裁判管轄
2 本件の準拠法
3 本件契約の成否、効力及び存否
4 本件契約に基づく被告の債務の内容
5 被告の債務不履行及び不当利得の有無
6 当審における当事者の主張についての判断(脱退原告と補助参加人との契約について)

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■事案の概要

『参加人が,別紙第二目録記載の各著作物(本件著作物)の著作権者である被告に対し,(1)第1審脱退原告(脱退原告)は,別紙第一目録添付の契約書(本件契約書)に記載された内容の契約(本件契約)に基づき,被告から,本件著作物の日本以外の国における独占的利用権(本件独占的利用権)の許諾を受けた,(2)被告は,日本以外の国において,第三者に対し,本件著作物や,同著作物の製作後に被告が製作したいわゆるウルトラマンキャラクターの登場する映画作品及びこれらを素材にしたキャラクター商品の利用を許諾している,(3)上記(2)の被告の行為は,本件契約に違反するものであり,被告は,脱退原告に対し,本件契約の債務不履行に基づく損害賠償義務ないし上記(2)の第三者から得た許諾料につき不当利得返還義務を負う,(4)参加人は,脱退原告から,上記の損害賠償請求権及び不当利得返還請求権を譲り受けた,と主張して,上記損害賠償請求権の一部請求又は上記不当利得返還請求権の一部請求(選択的請求)として,1億円及びこれに対する平成18年5月26日(被参加事件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金(不当利得返還請求の場合は,民法704条前段所定の年5分の割合による法定利息。)の支払を求めた事案である。
 原判決は,参加人主張の被告の債務不履行のうち,被告が,バンダイ(当審における被告補助参加人。以下「補助参加人」という。)に対し,平成8年9月1日から平成9年12月31日まで,別紙一覧表記載(1)の各キャラクター(旧ウルトラマンキャラクター)に属する5個のキャラクターについて韓国等の外国における利用権をライセンスし,当該ライセンス期間を現在に至るまで更新している行為が本件契約の債務不履行に当たり,脱退原告にライセンス料相当額の損害が発生しており,かつ,当該ライセンス料相当額について脱退原告に損失が生じ,被告が利得したと認定した上,本件契約の債務不履行に基づく損害賠償請求権については一部商事消滅時効が成立するため,不当利得返還請求権に基づく認容額の方がより高額であるとして,参加人の請求のうち,被告に対する不当利得返還請求に基づき1636万3636円及びこれに対する平成18年5月26日から支払済みまで年5分の割合による法定利息の支払を求める限度で認容し,その余の請求を棄却した。
 参加人及び被告は,それぞれ控訴し,控訴の趣旨記載の判決を求めた。なお,参加人の控訴の趣旨(上記第1の1)は,原判決中参加人敗訴部分である損害賠償金又は不当利得金8363万6364円及びこれに対する年6分の割合による遅延損害金(不当利得返還請求の場合は,年5分の割合による法定利息。)の請求のうちの一部である3400万円及びこれに対する年5分の割合による金員の支払請求についてのみ控訴するというものである。』(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件訴訟の国際裁判管轄
2 本件の準拠法
3 本件契約の成否、効力及び存否
4 本件契約に基づく被告の債務の内容
5 被告の債務不履行及び不当利得の有無

争点1から5について、控訴審も原審の判断を維持して、被告が補助参加人との間で本件ライセンス契約(1)を締結し更新したことが債務不履行に当たると認定。
ただ、損害論については原審と異なり、

『上記各ライセンス契約のライセンス対象物の一部に本件著作物又は旧ウルトラマンキャラクターが含まれるとしても,それらの内容,ライセンス対象物全体に占める割合,ライセンス期間,ライセンス料等について明らかにする証拠はない。そうすると,脱退原告がいかなるライセンス料を得る機会を失ったのかが不明であり,脱退原告に損害が生じたとの事実自体を認定するに足りないというべきである。したがって,民事訴訟法248条に基づいて相当な損害額を認定すべきであるとの参加人の主張は採用できない。』(19頁)

として、損害の発生を否定しています。

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5 当審における当事者の主張についての判断(脱退原告と補助参加人との契約について)

被告と補助参加人は、補助参加人が脱退原告らと権利行使放棄を内容とする契約(平成10年契約)を締結しており、脱退原告に損害・損失がなく、また、債務不履行の違法性を欠くと主張しました(19頁以下)。

この点について控訴審は、平成10年契約について、

『平成10年契約第2.3条の内容からすると,脱退原告は,同契約時以降,本件契約上の一切の権利に関し,補助参加人との間で,平成10年契約とは別にライセンス契約を締結してライセンス料を得ることはできないと解されるのみならず,仮に,平成10年契約以前に,補助参加人が脱退原告の承諾なく本件契約上の権利を利用したために脱退原告がライセンス料を得る機会を逸していたとしても,平成10年契約において,そのライセンス料相当額の損害ないし損失を全て精算する意思の下に,平成10年契約を締結したものと解される。そして,平成10年契約に基づいて脱退原告が受領した1億円は,同契約の有効期間中,脱退原告が原則として本件契約上の権利に基づく商品の製造,使用,販売をせず,いかなる国・地域においても,同権利のライセンス,譲渡,質入等の処分をしないことの対価であるほか,同契約以前に,補助参加人の行為により脱退原告の本件契約上の権利に関し何らかの損害ないし損失が発生していた場合は,その補償をも含む趣旨であったと考えるのが合理的である』(23頁)

として、こうした平成10年契約の内容から、脱退原告は、補助参加人との間で別途ライセンス契約を締結してライセンス料を得る機会を有しないと判断。そうであれば被告が補助参加人との間で本件ライセンス契約(1)(そのライセンス期間の更新を含む)を締結したとしても、脱退原告に債務不履行による損害又は被告のライセンス料取得による損失が発生したことを認めることはできない、としています。

結論として、債務不履行が認められた部分についても脱退原告の損害・損失の発生が否定され、第1審脱退原告承継参加人の主張は認められませんでした。

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■コメント

円谷プロがバンダイと締結した「ウルトラマン」や「ウルトラセブン」など旧ウルトラマンキャラクターに関する海外ライセンス契約が、円谷側と脱退原告との間で締結していた海外独占利用許諾契約に抵触するとして一審では損害も認定されていました。
しかし、控訴審ではバンダイの補助参加も得て損害論で否定されて円谷プロ勝訴の結果となりました。

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■過去のブログ記事

2010年11月4日記事
ウルトラマン海外ライセンス契約事件

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■追記(2011.8.12)

参考文献
中国におけるウルトラマン関連訴訟の上訴審(中国広州高級人民法院2010年12月30日判決)についての論考として、

夏 雨「中国における7件の初代『ウルトラマン』作品の著作権独占使用権の帰属とその根拠」『マーチャンダイジングライツレポート』610号(2011)64頁以下
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2011年07月19日

データ入力装置プログラム事件−著作権 特許権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

データ入力装置プログラム事件

東京地裁平成23.7.12平成20(ワ)33440特許権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官      大西勝滋
裁判官      上田真史

*裁判所サイト公表 2011.7.13
*キーワード:創作性、複製権

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■事案

製品環境規制に対応する情報管理・評価システムに関するソフトウェアの複製権侵害性などが争点となった事案

原告:ソフトウェア制作販売業者
被告:電気機械器具製造販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、特許法101条2号

1 本件特許権の間接侵害の有無
2 プログラムの著作物の著作権(複製権)侵害の有無

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■事案の概要

『発明の名称を「データ入力装置」とする特許第3289645号の特許(以下,この特許を「本件特許」,この特許権を「本件特許権」という。)の特許権者である原告が,被告が別紙被告ソフト目録1ないし4記載のソフトウェア(以下,それぞれを「イ号ソフト」,「ロ号ソフト」,「ハ号ソフト」,「ニ号ソフト」といい,これらを総称して「被告各ソフト」という。)をインストールしたサーバを製造,販売する行為が,本件特許権についての特許法101条2号所定の間接侵害に当たり,又は原告が著作権を有するプログラムの著作物の著作権(複製権)侵害に該当する旨主張して,被告に対し,特許法100条1項及び2項に基づき,被告各ソフトをインストールしたサーバの製造,譲渡等の差止め及び廃棄を求めるとともに,特許権侵害又は著作権侵害の不法行為による損害賠償及び遅延損害金の支払を求める事案』(1頁以下)


被告ソフト目録

1 部品表ソリューション“BOMMARS”
2 製品情報統合管理システム“[Eco&PLM] RH−BOM”
3 製品含有化学物質管理システム“EcoAssistPro”
4 製品環境適合評価システム“Design for Environment
  System for ENOVIA SmarTeam”

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■判決内容

<争点>

1 本件特許権の間接侵害の有無

被告各ソフトをインストールしたサーバの製造・販売行為に関する特許権侵害性の争点について、裁判所は、被告ソフト(イ号ソフト)をインストールしたサーバの機能等について検討したうえで(26頁以下)、ネットワーク接続したイ号サーバシステムの構成要件充足性、また間接侵害(特許法101条2号)の有無について判断しています(32頁以下、48頁以下)。

結論として、本件特許権の間接侵害を理由とする原告の差止請求、廃棄請求及び損害賠償請求は、いずれも容れられていません。

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2 プログラムの著作物の著作権(複製権)侵害の有無

原告は、

『(1)本件プログラムはコンピュータを機能させて,一定の結果を得ることができるようにして表現したものであり,本件プログラムの構成中の別紙プログラム目録記載のCないしGの構成部分に創作性を有するから,本件プログラムは著作物に当たる,(2)被告が本件プログラムを複製した被告各ソフトを製造する行為は,原告の保有する本件プログラムの著作権(複製権)の侵害行為に該当する』(49頁)

旨、主張しました。しかし、裁判所は、

『しかし,原告が著作物であると主張する本件プログラムは,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の「データ入力装置」の文言を「プログラム」又は「コンピュータのネットワークにおけるコンピュータ装置のためのプログラム」の文言に置き換えて特定したものにすぎず,原告は,本件プログラムの具体的な内容及びその表現上の具体的な創作性を主張立証していない(なお,原告は,原告が作成したとする本件プログラム又はその複製物が存在すること自体の立証をしていない。)。
 したがって,本件プログラムが著作物に当たるものと認めることも,被告が本件プログラムを複製した被告各ソフトを製造したものと認めることもできないから,原告の上記主張は理由がない。』(49頁以下)

として、原告の著作権侵害の主張についても容れていません。

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■コメント

プログラムの著作権(複製権)侵害性については、原告はプログラムの機能面での特徴を指摘するにとどまり、プログラムの表現上の具体的な創作性部分を特定しておらず、実質的な争点とはなっていません。

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2011年07月13日

CADソフトライセンス契約事件(控訴審)−著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

CADソフトライセンス契約事件(控訴審)

知財高裁平成23.6.29平成22(ネ)10045著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官      知野 明
裁判官      中平 健

*裁判所サイト公表 2011.7.11
*キーワード:ライセンス契約、複製、翻案、権利濫用

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■事案

CADソフトウェアやマニュアルの販売に関して著作権侵害性や商標権侵害性が争われた事案の控訴審

控訴人兼被控訴人          :ソフト開発会社
(原審第1事件原告・第2事件被告)
控訴人  (第1事件被告)       :ソフト開発会社
被控訴人(第2事件原告)      :ソフト開発会社(米国法人)

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法21条、27条、114条2項、商標法38条3項、4項

1 国際裁判管轄の有無
2 訴えの変更の許否
3 Vellum3.0コードのプログラム著作権の帰属
4 Vellum2.7コード、Extensionsコードのプログラム著作権の帰属
5 被告コムネットが使用するマニュアルの著作権及びその侵害の有無
6 被告コムネットによるVellum3.0コードのプログラム著作権侵害の有無
7 原告コンセプトによるVellum2.7コード、Extensionsコードのプログラム著作権侵害の有無
8 商標権侵害
9 原告コンセプトの損害
10 原告アシュラの損害

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■事案の概要

『〔原審第1事件〕
 第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,CAD(コンピュータ支援デザイン)ソフトウェア(32ビットアプリケーションソフトウェア)であるAshlar−Vellum3.0のプログラムに係る著作権及びマニュアル(使用説明書)の著作権並びに別紙商標目録記載1,2の商標権(コンセプト商標1,2)に基づき,第1事件被告コムネットが販売する製品(別紙「被告コムネット商品目録」記載1,2のソフトウェア),マニュアルの販売等の差止め,廃棄等を求めるとともに,不法行為(著作権侵害,商標権侵害)による損害賠償請求権に基づき,第1事件被告コムネットに対し,第1事件原告・第2事件被告コンセプトに発生した損害の一部請求として,1億2264万2447円の支払を求めた。』

『〔原審第2事件〕
 第2事件原告アシュラが,CADソフトウェア(英語版の16ビットアプリケーションソフトウェア)であるAshlar−Vellum2.7及びこれを32ビット化(32ビットOS環境に搭載できるようにソースコードを書き換えること)する際に作成されたExtensionsのプログラムに係る著作権並びに別紙商標目録記載3の商標権(アシュラ商標)に基づき,第1事件原告・第2事件被告コンセプトが販売する製品(別紙「原告コンセプト商品目録」記載1〜3のソフトウェア),マニュアルの販売等の差止め,廃棄等を求めるとともに,不法行為(著作権侵害,商標権侵害)による損害賠償請求又は不当利得(第2事件原告アシュラの著作権,商標権の使用料相当額の不当利得)返還請求として,第1事件原告・第2事件被告コンセプトに対し,合計1億6186万9597円の支払を求めた。』

『〔原審の判断〕
 原審は,第1事件について,第1事件被告コムネットは,Vellum3.0のプログラムに係る著作権及びマニュアル(使用説明書)の著作権を侵害しているとして,別紙「被告コムネット商品目録」記載1,2のソフトウェアの複製等の差止め及び廃棄,並びに454万5079円の損害賠償請求を認め,その余の請求を棄却した。
また,原審は,第2事件について,第1事件原告・第2事件被告コンセプトは,Vellum2.7及びExtensionsのプログラムに係る著作権,アシュラ商標の商標権を侵害しているとして,別紙「原告コンセプト商品目録」記載3のCADソフトウェアの複製等の差止め及び廃棄,並びに5826万0284円の損害賠償請求を認め,その余の請求を棄却した。これに対し,第1事件原告・第2事件被告コンセプト及び第1事件被告コムネットは,原判決のうち各敗訴部分の取消しを求めて,本件控訴を提起した。』
(3頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 国際裁判管轄の有無
2 訴えの変更の許否
3 Vellum3.0コードのプログラム著作権の帰属
4 Vellum2.7コード、Extensionsコードのプログラム著作権の帰属
5 被告コムネットが使用するマニュアルの著作権及びその侵害の有無
6 被告コムネットによるVellum3.0コードのプログラム著作権侵害の有無
7 原告コンセプトによるVellum2.7コード、Extensionsコードのプログラム著作権侵害の有無
8 商標権侵害
9 原告コンセプトの損害
10 原告アシュラの損害

原審での各争点について、控訴審は原審の判断を基本的に維持しています(25頁以下)。

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■コメント

設計・製図分野で汎用性のある2D/3DCADソフトに関するマニュアル(使用説明書)やプログラムの著作権侵害性とアシュラ商標に関する商標権侵害性を肯定した原審の結論を控訴審でも維持しています。

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■過去のブログ記事

2010年4月13日記事(原審)
CADソフトライセンス契約事件
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2011年06月15日

バイナリーオートシステム図面事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

バイナリーオートシステム図面事件

東京地裁平成23.6.10平成22(ワ)31663損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 岡本 岳
裁判官      坂本康博
裁判官      寺田利彦

*裁判所サイト公表 2011.6.13
*キーワード:創作性、アイデア、図形、言語、連鎖販売取引

別紙1
別紙2
別紙3

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■事案

マルチレベルマーケティング(連鎖販売取引)の手法を説明した図面の著作物性が否定された事案

原告:個人
被告:健康器具販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、特商法37条2項

1 原告図面の著作物性

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■事案の概要

『2つの図及び説明文から成る「バイナリーオートシステム」との表題が付された別紙1記載の図面(ただし,赤字,赤枠部分を除く。同部分は原告主張の被侵害部分を特定するための表示であって,同図面を構成するものではない。以下,同図面を「原告図面」という。)について第一発行年月日の登録を得た原告が,被告のプラウシオン・エージェントクラブ契約書面(甲3。以下「被告契約書面」という。)は原告図面と同一又は類似の表現を用いており,これを作成,使用する被告の行為は原告が有する原告図面の著作権(複製権,二次的著作物の利用権)を侵害するとして,被告に対し,著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき逸失利益3億円のうち900万円及びこれに対する平成22年9月19日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案』(1頁以下)

【原告図面】
文化庁登録:第19287号−1「バイナリーオートシステム」(平成15年5月13日)

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■判決内容

<争点>

1 原告図面の著作物性

バイナリーオートシステム(本件システム)は、「ある物品やサービス等を購入又は販売する人の集団内における報酬の算出方法を定めたものであり,Aが紹介した2人の人物B,Cを必ず左右2つのグループに振り分け,更にB,Cを起点とする2つのグループにA,B又はCが紹介した人物D,E,F,G…を振り分けていき,各人の下に2つのグループの形成を繰り返していくことで,最初に形成された左右2つのグループを維持していき,最終的に同2グループ内のメンバー全員が一定期間内に購入して得られたポイントを合計し,同2グループを比較して合計の少ない方又は多い方のポイントを基準としてAに支払われる報酬額を決める」(3頁以下)といった概要のシステムでした。

本件システムを基に少ない方のポイントを基準にして報酬を算出する方法を採用するビジネスモデルを説明する図表(図A)と説明文(文A)について、被告がその契約書面(特商法33条1項、37条2項 連鎖販売取引における契約書面の交付)で使用したとして、その図表等の創作性(著作権法2条1項1号)が前提として争点となっています(12頁以下)。

原告図面(別紙1より)
A1







被告図面(別紙2より)
B1図表

被告図面(別紙3より)
文B2

被告図面(別紙3より)
図B2


原告は、本件システム、本件ビジネスモデルの内容や報酬の計算方法について、視覚的、直感的に感得できるように工夫されて表現されているとして図表等の創作性を主張しました。

この点について裁判所は、アイデアや着想自体は著作権法の保護の対象とならないことに言及した上で、組織図様の図形である図Aに関して、ありふれた表現形式であって何ら個性のある表現とはいえないとして図形の著作物(10条1項6号)としての創作性を否定しています。
また、文Aについても、「左右小数の方で計算し支払いを決める。」といった極めて短い1文であり、かつ、一般に使用されるありふれた用語で表現されたものであるとして、言語の著作物(10条1項1号)としての創作性を否定しています。

結論として、被告が被告契約書面を作成する行為が原告図面の複製権侵害等に当たるとすることはできないと判断されています。

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■コメント

特定商取引法の対象となる連鎖販売取引で、いわゆるネットワークビジネス、マルチレベルマーケティングの手法を説明した図表や説明文の著作物性が争点となった事案となります。
別紙のように極めて単純な内容になっており、これだけで著作権法上の創作性を肯定するには厳しい事案であったと考えられます。


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2011年06月13日

「おまかせ君プロVer.2.5」測量業務用ソフトウェア事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「おまかせ君プロVer.2.5」測量業務用ソフトウェア事件

東京地裁平成23.5.26平成19(ワ)24698損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官      山門 優
裁判官      柵木澄子

*裁判所サイト公表 2011.6.10
*キーワード:退職従業員、創作性、職務著作、複製、翻案、共同不法行為、限界利益

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■事案

測量業務用ソフトウェアの著作物性や退職従業員らによる複製権侵害性などが争点となった事案

原告:測量ソフトウェア開発販売会社
被告:工事測量サービス会社、建設工事会社、被告取締役A、原告元従業員B

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、15条2項、21条、27条、112条、114条2項

1 原告プログラムは創作性を有するか
2 原告プログラムは職務著作か
3 被告プログラムは原告プログラムを複製又は翻案したものか
4 被告らの共同不法行為の成否
5 原告の損害

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■事案の概要

『「おまかせ君プロVer.2.5」という名称の測量業務用のソフトウェア(以下「原告ソフト」という。)を製造し,これを使用して測量業務等を行っている原告が,別紙被告製品目録記載のソフトウェア(以下「被告ソフト」という。)を製造し,これを使用して測量業務等を行っている被告YKSC社,同社の関連会社である被告ワイケイズ社,被告YKSC社の代表取締役である被告A,及び原告の元従業員で被告YKSC社の従業員である被告Bに対し,被告ソフトに係るプログラム(以下「被告プログラム」という。)は,原告ソフトに係るプログラム(以下「原告プログラム」という。)の著作物を複製又は翻案したものであるから,共同して被告ソフトを製造し,これを複製,使用,譲渡する被告らの行為は原告の原告プログラムについての著作権(複製権又は翻案権)を侵害する旨主張し,被告YKSC社及び被告ワイケイズ社に対し,著作権法112条1項に基づく被告プログラムの製造等の差止め及び同条2項に基づく被告プログラムの複製物等の廃棄を求めるとともに,被告らに対し,著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として,6000万円及び内金3000万円に対する平成19年10月6日(訴状送達の日の翌日)から,内金3000万円に対する平成21年3月7日(訴え変更の申立書送達の日の翌日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うよう求める事案』(2頁以下)

<経緯>

S61.1 原告会社設立
H5.12 被告ワイケイズ社設立(被告Aが取締役)
H12.4 被告Bが原告会社入社
H17.5 被告Bが原告会社退社
       原告ソフト製造販売
H18.3 被告YKSC社設立(被告Aが代表取締役)
       被告ソフト製造、使用
H18.4 被告Bが被告YKSC社入社

原告商品:「おまかせ君プロVer.2.5」
被告商品:「位置郎」

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■判決内容

<争点>

1 原告プログラムは創作性を有するか

被告らは、原告プログラムは多くの制約がある中で記述されたものであり、作成者である原告元従業員Bの個性が表現される余地はなかったものであって創作性を有するものではない。また、原告が原告プログラムにおいてプログラムの作成者の個性が表現されていると主張する部分は、「解法」(著作権法10条3項3号)に当たり、著作権法上保護されるものではないなどと主張しました。

この点について、裁判所は、39個のソースコードから構成されている原告プログラムに関して、指令の組合せに多様な選択の幅があり得るなかで作成されていてプログラム作成者の個性が表れており、全体として創作性を有するものである、としてプログラム著作物性(2条1項1号、10号の2)を肯定。
また、原告プログラムにおけるファイル形式の区分の仕方や各ファイルを相互に関連付ける方法、サブルーチン群の取りまとめ方などは、「解法」に当たるものではないとして被告らの主張を容れていません(46頁以下)。

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2 原告プログラムは職務著作か

原告会社のソフト開発部長であった被告Bは、原告ソフトや旧原告ソフト(原告ソフトの前バージョン)の開発業務に従事していましたが、原告プログラムの著作権等の帰属について、職務著作性(15条2項)が肯定されています(49頁以下)。

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3 被告プログラムは原告プログラムを複製又は翻案したものか

次に、被告プログラムが原告プログラムを複製又は翻案したかどうかについて、両プログラムの構成が比較検討されています(52頁以下)。

(1)38個のファイルから構成されている被告プログラムは、36個のファイルでほぼ1対1で原告ファイルと対応している。
(2)対応するファイルのなかで、ソースコードの記載が全く同一あるいは実質的に同一の部分が大半である。

といった点から、両プログラムにはプログラムとしての表現において実質的な同一性ないし類似性が認められると裁判所は判断。
被告Bによる原告プログラムへの依拠性も肯定されて、被告プログラムが原告プログラムを複製又は翻案したものであることが認められています。

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4 被告らの共同不法行為の成否

(1)被告らの共同不法行為の成否

被告プログラムの開発経緯として、

・被告ワイケイズ社は、平成13年から16年頃まで原告と取引
・被告ワイケイズ社、被告Aが被告Bを通して原告にフランチャイズ加盟申入れ、交渉途絶
・被告Bが原告退職後、ごく短期間で被告ソフト完成
・被告YKSC社は、被告Aを代表取締役とする会社で被告ワイケイズ社から分社化

といった事実関係を踏まえ、裁判所は、被告ワイケイズ社及び同社の代表取締役であった被告Aが、被告Bに依頼して原告プログラムに依拠して、これと同一ないし実質的に同一である被告プログラムを制作させたことを認定。
被告YKSC社及び同社の代表取締役である被告Aは、被告Bから提供を受けた被告プログラムを基に被告ソフトを製造し、これを使用して測量業務等を行っていることが認められ、被告らは、これらの行為により原告プログラムに係る原告の著作権(複製権ないし翻案権)を侵害したものと認められると判断。
また、被告Aが行った上記著作権侵害行為は、被告YKSC社及び被告ワイケイズ社の代表者としての行為であるとともに、被告A個人としての行為でもあると評価することができると認めています。
 結論として、原告に対する不法行為について、被告ワイケイズ社、被告YKSC社、被告B及び被告Aは、共同不法行為責任を負うというべきであると判断しています(54頁以下)。

(2)差止請求及び廃棄請求の成否

被告ソフトの製造、使用のおそれが認められ、被告YKSC社及び被告ワイケイズ社に対する被告プログラムの製造、使用、譲渡の差止め(112条1項)が認められています(55頁以下)。
また、被告YKSC社に対する被告プログラムの複製物とそれを収納したCD−ROM等記憶媒体の廃棄が認められています(112条2項)。

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5 原告の損害

(1)被告YKSC社

被告ソフトの使用による利益について、114条2項(侵害者利益の損害みなし規定)により算定。同項の「利益」の意義を限界利益としたうえで売上高に占める変動経費(材料費、外注加工費、旅費交通費)の割合を30%として計算。測量業務やリース業務、成果業務での被告ソフトの売上高への貢献度を勘案した上で被告YKSC社の利益の合計額を2927万3664円と認定しています(57頁以下)。

(2)被告ワイケイズ社

被告ワイケイズ社において工事を施工するにあたり、同社が自ら被告ソフトを使用して測量等を行い、収入を得ていたと認めるに足りる証拠は無いとして、裁判所は被告ワイケイズ社の利益取得を認めていません(65頁以下)。

結論として、弁護士費用300万円との合計額3227万3664円が損害額として認められています。

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■コメント

ソフト開発部長であった従業員が退職後の就職先で同種のソフトの開発に係わった事案で、そのソフトは、ほぼデッドコピーだったとされた侵害事案となります。

なお、被告側は、本件の測量業務携帯端末用ソフトウェアの創作性(2条1項1号)に関連して、原告が携帯端末用のアプリケーション開発ソフト「ル・クローンmobile」を利用して原告プログラムを作成しており、ルクローン言語はC言語を簡略化したプログラム言語であって、複雑な記述にはなりにくいといった理由も創作性否定の根拠に挙げていましたが(10頁参照)、この点は裁判所に一顧だにされていません。プログラム著作物の登録実務からすると、エクセルやファイルメーカーで作成したからといって登録の対象にならない訳ではありません。

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■参考サイト

原告サイト
おまかせ君プロ|株式会社CSS技術開発

被告サイト
工事測量システム位置郎【製品情報】株式会社YKSC

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■参考判例

プログラムの創作性が争点となった事案として、

・システムサイエンス事件
東京高裁平成元.6.20平成元(ラ)327著作権侵害差止仮処分申請却下決定事件

・電車線設計用プログラム事件
東京地裁平成15.1.31平成13(ワ)17306著作権侵害差止等請求事件
判決文PDF

・新聞販売店向け顧客管理ソフト「さきがけ」事件
福岡地裁平成18.3.29平成14(ワ)3783損害賠償等請求事件
2006年08月25日記事

・ロケット制御データ解析プログラム(宇宙開発事業団)事件(控訴審)
知財高裁平成18.12.26平成18(ネ)10003著作権存在確認等請求控訴事件
判決文PDF

・グラブ浚渫施工管理プログラム事件
大阪地裁平成19.7.26平成16(ワ)11546損害賠償等請求事件
2007年08月19日記事

・虹彩占いゲーム機器プログラム事件
東京地裁平成20.2.27平成18(ワ)29359著作権確認等請求事件
2008年03月04日記事

・溶銑運搬列車制御プログラム事件
大阪地裁平成21.2.26平成17(ワ)2641著作権確認等請求事件
2009年03月05日記事

・増田足株価チャートソフト事件
東京地裁平成23.1.28平成20(ワ)11762著作権侵害差止等請求事件
2011年02月11日記事

・「恋愛の神様」ケータイコンテンツプログラム事件(控訴審)
知財高裁平成23.2.28平成22(ネ)10051損害賠償請求控訴事件
2011年03月28日記事



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2011年06月06日

小型USBフラッシュメモリ形態模倣事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

小型USBフラッシュメモリ形態模倣事件

東京地裁平成23.3.2平成19(ワ)31965損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀滋
裁判官      岩崎 慎
裁判官      坂本三郎

*裁判所サイト公表 2011.6.1
*キーワード:著作物性、複製、翻案、準拠法、商品形態模倣、営業秘密

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■事案

小型USBフラッシュメモリの商品形態模倣性や設計図の著作物性が争点となった事案

原告:電子機器製造販売会社(台湾法人)
被告:電子器具製造販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、27条、不正競争防止法2条1項3号、7号、民法709条、通則法17条、22条

1 原告と積智科技との同一性
2 不競法2条1項3号該当性
3 不競法2条1項7号該当性
4 著作権侵害性
5 一般法行為の成否

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■事案の概要

『台湾法人である原告が,小型USBフラッシュメモリを台湾の会社に製造委託してこれを輸入・販売する被告に対し,(1)当該小型USBフラッシュメモリは,原告が製造する商品の形態を模倣したものであって,被告による当該小型USBフラッシュメモリの輸入・販売は,不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項3号の不正競争行為に該当すること,(2)当該小型USBフラッシュメモリは,被告が原告から示された営業秘密を不正に使用して製造されたものであり,不競法2条1項7号の不正競争行為に該当すること,(3)被告による当該小型USBフラッシュメモリの製造は,台湾の著作権法上,原告の著作物である小型USBフラッシュメモリの設計図の著作権(翻案権)を侵害すること,(4)被告による当該小型USBフラッシュメモリの製造・販売は,原告の技術情報を使用して行われたものであり,不法行為(民法709条)に該当すること((1)ないし(4)につき選択的併合)を理由として,原告に生じた損害541億8000万円(逸失利益540億円及び弁護士費用1億8000万円)の一部である20億円(逸失利益19億円及び弁護士費用1億円)の損害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年2月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案』(1頁以下)

<経緯>

H16.11 被告とインベンテック社が実用新案出願
H17.3  被告社員らが積智科技らを訪問
H18.12 被告各商品を製造、輸入、販売

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■判決内容

<争点>

1 原告と積智科技との同一性

原告と積智科技との同一性について、会社名を変更したものであって、同一の会社であるとみとめられています(46頁)。

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2 不競法2条1項3号該当性

原告が開発した小型USBフラッシュメモリ(原告商品)について、USBフラッシュメモリである被告各商品における被告による商品形態模倣行為性(不正競争防止法2条1項3号)が争点とされています(46頁以下)。

結論としては、

・本件協議前に原告商品が開発済みであったとは認められない
・本件協議前に原告設計図1及び2が存在したとは認められない
・被告から原告に対して小型USBフラッシュメモリの形態及び寸法を記載したインベンテック社の設計図の送信があった

といった諸点から、原告商品について「他人の商品」要件を満たさないとして不正競争防止法2条1項3号該当性が否定されています。

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3 不競法2条1項7号該当性

原告から被告に提供された技術情報の内容や営業秘密不正使用行為性(不正競争防止法2条1項7号)についてさらに争点とされています(64頁以下)。

(1)営業秘密該当性

裁判所は、本件技術情報の特定の有無及び営業秘密該当性(2条6項)について、モックアップ、PCBAサンプル、別紙データ目録の情報、付随情報、補足情報その他の個別の情報に関し、特定性を欠いていたり、公知の情報であったり、有用性を欠くといった理由などから原告保有の営業秘密該当性を否定しています。

(2)不正使用行為性

裁判所はさらに、仮に本件技術情報に原告の保有する営業秘密が含まれており、被告が営業秘密に該当する技術情報を使用していたとしても、被告がこれを使用することは本件技術情報が被告の委託を受け、被告が提供した情報・条件を基礎として検討されたものであって、その使用は被告に対して提供された趣旨に合致するものであって、「不正の利益を得る目的」又は「損害を加える目的」が認められないとして不正使用行為性を否定しています。

結論として、2条1項7号該当性が否定されています。

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4 著作権侵害性

次に小型USBフラッシュメモリの斜視図、平面図、側面図といった内容の設計図の著作物性や設計図から工業製品を製造する行為の複製行為性や翻案行為性が争点となっています(79頁以下)。

(1)準拠法について

台湾法人である原告が著作者である著作物がTRIPS協定9条1項、ベルヌ条約3条(1)a、著作権法6条3号により日本の著作権法の保護を受けること、また、著作権侵害に基づく損害賠償請求権についての準拠法は、法性決定により不法行為として法例11条(不法行為地法)又は通則法17条(加害行為結果発生地法)により台湾法となると裁判所は判断。
そして、原告設計図1及び2から被告各商品を製造する行為が台湾法及び日本法上においても不法であるといえるかどうかを判断しています(法例11条2項、通則法22条1項)。

(2)原告が原告設計図1及び2につき著作権を有するか

インベンテック社製作の設計図と原告設計図1及び2との実質的同一性、インベンテック設計図への依拠性から、原告設計図1及び2はインベンテック設計図を複製したものであると認められ、「原告の」著作物性が否定されています。

(3)設計図から工業製品を製造する行為と複製、翻案

さらに、設計図から工業製品を製造する行為についても、台湾の著作権法上、複製や翻案などに該当せず、また、日本の著作権法上においても複製や翻案などに該当しないとして、著作権侵害性が否定されています。

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5 一般法行為の成否

原告は被告が「原告の技術力,開発に要した時間・費用・労力の結晶である技術情報を,被告が,その社会的地位・信用を不当に利用して,何らの対価なく取得し,取得した技術情報等を使用して同様の商品を製造・販売し,ただ乗り的にその販売利益を得ている」として、フリーライドを理由として一般不法行為の成立を主張しましたが、裁判所は認めていません(85頁)。

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■コメント

台湾の電子機器製造メーカーがソニーを訴えた事案です。
原被告間で3センチほどの小型USBフラッシュメモリの製造委託の協議の際に技術情報のやりとりがあって、この情報の取扱を巡って紛争になりました。なお、秘密保持契約は締結されていませんでした(78頁)。
ところで、2001年11月のWTO理事会において中国、台湾の加盟が承認され、12月に中国に対して、また、2002年1月に台湾に対して、TRIPS協定が効力を生じています。
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2011年06月03日

データSOS事件(控訴審)−著作権 損害賠償等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

データSOS事件(控訴審)

知財高裁平成23.5.26平成23(ネ)10006損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官      高部眞規子
裁判官      荒井章光

*裁判所サイト公表 2011.6.1
*キーワード:創作性、アイデア、複製権、翻案権、著作者人格権、一般不法行為論

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■事案

ウェブサイト上のタブメニュー配置や広告用文章の無断複製等が争点となった事案の控訴審

原告(控訴人) :PCデータ復旧請負会社
被告(被控訴人):コンピュータ機器開発販売会社

   --------------------

■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、19条、21条、27条、民法709条

1 著作権侵害の成否
2 著作者人格権侵害の成否
3 一般不法行為の成否

   --------------------

■事案の概要

『控訴人が,インターネット上に開設するウェブサイトにデータ復旧サービスに関する文章を掲載した被控訴人の行為は,主位的に,(1)控訴人が創作し,そのウェブサイトに掲載したデータ復旧サービスに関するウェブページのコンテンツ又は広告用文章を無断で複製又は翻案したものであって,控訴人の著作権(複製権,翻案権,二次的著作物に係る公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害し,又は,著作権法113条6項のみなし侵害に当たると主張して,被控訴人に対し,当該不法行為に基づき,著作権法114条2項,3項の規定による損害賠償金1650万3562円及びこれに対する不法行為の後の日である平成19年7月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,著作権法115条に基づく謝罪広告の掲載を求め,予備的に,(2)被控訴人の上記行為は,著作権侵害の不法行為に当たらないとしても,一般不法行為に当たると主張して,被控訴人に対し,当該不法行為に基づき,上記(1)と同額の損害賠償金及び遅延損害金の支払を求めるとともに,民法723条に基づく謝罪広告の掲載を求める事案である。
 原判決は,控訴人は,ウェブサイト掲載の本件コンテンツに係る著作権の侵害を主張するが,同コンテンツに係るどの部分の著作権を侵害したのかを具体的に主張しないから,同コンテンツに係る著作権侵害の成否を判断することはできず,また,ウェブサイト掲載の広告である控訴人文章と被控訴人文章とは,表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないから,共通点が存することをもって,複製又は翻案に該当するということはできない等として,著作権及び著作者人格権侵害を否定して,主位的請求を棄却し,一般不法行為についても,被控訴人文章が控訴人文章に依拠して作成されたものであったとしても,被控訴人が被控訴人文章をそのウェブサイトへ掲載した行為が,公正な競争として社会的に許容される限度を逸脱して不法行為を構成すると認めることはできないとして,予備的請求を棄却したため,控訴人が,これを不服として控訴に及んだ。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 著作権侵害の成否

複製権又は翻案権侵害の成否について、裁判所は複製と翻案の意義(著作権法21条、2条1項15号、27条)について言及した上で以下の各部分についての創作性(2条1項1号)について検討。

(1)本件コンテンツ

原告のウェブサイト全体(甲の1の3枚目から5枚目。さらに1枚目及び2枚目)をコンテンツ(本件コンテンツ)として見た場合について、創作性を否定しています(14頁以下)。

(2)原告文章全体の構成及び記述順序

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控訴人・被控訴人各文章対比表より(28頁以下)

No.1
控訴人文章
■ データ復旧って何?
被控訴人文章
■ データ復旧技術サービスとは?

No.2
(1)
控訴人文章
■ どんな時に利用されるの?
被控訴人文章
■ どのようなときに利用するサービスなのか?

(2)
控訴人文章
・バックアップを取っていない
・バックアップを戻せない
被控訴人文章
・バックアップを取っていない
・バックアップからシステムを復帰できない

(3)
控訴人文章
このような非常事態に遭遇した場合の有効な回復策の一つとして,データ復旧サービスの利用を検討します。
被控訴人文章
このような非常事態に遭遇した場合の有効な回復策の一つとして,データ復旧技術サービスの利用をご検討ください。

No.3
(1)
控訴人文章
■ 修理と何が違うの
被控訴人文章
■ データ復旧と修理サービスとの違いは?

(2)
控訴人文章
パソコン修理=パソコンの機能を取り戻すことに主眼を置きます。
たとえばハードディスクが故障した場合,新しいものに交換すればパソコンはその機能を取り戻します。
しかし,新しいものに交換すれば当然データは戻りません。
データは消えてもパソコンは直る。これが修理の基本的なスタンスです。
被控訴人文章
1.パソコン・機器等の修理
パソコンの動作的な機能を取り戻すことに主眼を置きます。
例えばハードディスクが故障した場合,新しいものに交換すればパソコンはその機能を取り戻します。
しかし,新しいものに交換すれば当然データは戻りません。
データは消えてもパソコン・機器は元に戻ります。これが修理サービスの基本的な考え方です。

(3)
控訴人文章
データ復旧
=データを取り戻すことに主眼を置きます。
データを取り戻すためなら,分解や破壊といった修理とはむしろ逆になることも行います。
たとえるなら
被控訴人文章
2.データ復旧技術サービスの場合
データを取り戻すことに主眼を置きます。
データを取り戻すためなら,分解や破壊といった修理とは逆行為になることも行います。
例えば,

(4)
控訴人文章
パソコンそのものはそれほど高価なものではなくなりました。しかし,パソコンに保存されているデータは一段と重要性を増しています。
パソコンに事故が起こった場合には,パソコンが大切なのか,データが大切なのかをよく見極めることが大切です。
被控訴人文章
パソコン・機器そのものはそれほど高価なものではなくなりました。しかし,パソコンに保存されているデータは文書のデジタル化や利便性を追求していく現代では,一段と重要性を増しています。
パソコンに事故が起こった場合には,パソコンが大切なのか,データが大切なのかをよく見極めることが大切です。

   --------------------

上記対比表記載部分について、原告は1つのまとまりとした全体的な構成、記載順序、配列、小見出し等の具体的な表現について、被告文章は原告文章と同一性を有し複製に当たると主張しました(12頁以下)。
この点について、裁判所は、
『確かに,控訴人文章と被控訴人文章とは,データ復旧サービスの概要について,その概念,利用が検討される状況,修理との相違,データ復旧の重要性の順序に従って,いわゆるQ&A方式で解説を加えるもので,その全体的な構成,記載の順序,小見出しを有する点について共通する。』
『しかしながら,控訴人文章は,データ復旧サービスについての一般消費者向けの広告用文章として,データ復旧サービスの基本的な内容を説明するものであるから,このような一般消費者向けの広告用文章においては,広告の対象となる商品やサービスを分かりやすく説明するため,平易で簡潔な表現を用いること,各項目ごとに端的な小見出しを付すこと,説明の対象となるサービスとはどのようなものか,どのような場合に利用するものなのか,異なる商品やサービスとの相違点は何かについて,上記各構成,順序で記載することなどは,広告用文章で広く用いられている一般的な表現手法にとどまり,控訴人主張の上記の全体的な表現に作成者の個性が現れているとまでいうことはできない。』

として、原告文章全体の構成及び記述順序についての創作性を否定。複製又は翻案に当たらないと判断しています。

(3)個別の文章について

上記対比表記載の各文章について、それぞれ対応する各文章の複製又は翻案の成否が問題となっています(16頁以下)。
結論としては、平凡かつありふれた表現であったり、事実といった表現それ自体でない部分において共通性を有するにすぎないとして、複製又は翻案に当たるものではないと判断しています。

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2 著作者人格権侵害の成否

争点1で著作権侵害の成立が否定されており、著作者人格権侵害(氏名表示権 19条)、侵害みなし行為(113条)についても否定されています(23頁以下)。

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3 一般不法行為の成否

原告は、『先行企業としての業務経験に基づき試行錯誤の上に完成させた自社のオリジナル広告文につき,同一サービスに新規参入する業務経験のない大手ライバル企業によって盗用されない利益は法的保護に値するものであるから,先行競合企業である控訴人の広告文言を盗用した被控訴人の行為は,社会的相当性を逸脱し控訴人の法的保護に値する利益を侵害した点で不法行為を構成する』(24頁)と主張しました。
裁判所は、被告文章の原告文章への依拠を推認し、原告が被告の行為を強く非難すること自体について「無理からぬこと」と原告側に理解を示しつつも、原告文章が著作権法によって保護される表現では無く、著作権以外に原告の具体的な権利ないし利益が侵害されたと認められない以上、不法行為が成立する余地はない、と判断しています。

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■コメント

控訴審でも原審同様、棄却の判断となっています。
ウェブサイトの広告文章や構成の創作性判断として知財高裁レベルでの重要な判断となります。一般不法行為論の部分についての知財高裁の説示部分は、通勤大学法律コース事件控訴審判決と比較すると、フリーライドがあった場合における法的保護に値する利益の侵害性について、違法性の有無の判断をするまでもなく原則論(著作権法で保護されない表現物は原則として自由に利用が可能)で形式的に切っており(26頁以下)、一般不法行為論否定の方向での判断であれば、原審と同様に違法性の有無の判断まで言及すべきではなかったか、検討の余地が残るものとなりました。

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■過去のブログ記事

2011年2月14日記事
データSOS事件(原審)

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■参考判例

一般不法行為論について
北朝鮮映画事件(対フジテレビ)控訴審
知財高裁平成20.12.24平成20(ネ)10011判決
通勤大学法律コース事件控訴審
知財高裁平成18.3.15平成17(ネ)10095等判決
ヨミウリオンライン事件控訴審
知財高裁平成17.10.6平成17(ネ)10049判決
木目化粧紙事件控訴審
東京高裁平成3.12.17平成2(ネ)2733判決

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■参考文献

田村善之編著「新世代知的財産法政策学の創成」(2008)3頁以下
中吉徹郎「著作物性のない情報と不法行為法」『著作権判例百選第四版』(2009)58頁以下


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2011年05月25日

吹きゴマ折り図事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

吹きゴマ折り図事件

東京地裁平成23.5.20平成22(ワ)18968損害賠償等請求事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官      大西勝滋
裁判官      上田真史

*裁判所サイト公表2011.5.24
*キーワード:著作物性、アイデア表現二分論、複製権、翻案権、公衆送信権、著作者人格権、一般不法行為論

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■事案

折り紙作家の「吹きゴマ」折り図を無断でTV局の番組ウェブサイトに改変掲載されたとして、折り図の著作物性や複製権、翻案権侵害性が争点となった事案

原告:創作折り紙作家
被告:株式会社TBSテレビ

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、27条、23条、19条、20条、民法709条

1 本件折り図の著作物性
2 複製ないし翻案の成否
3 著作者人格権侵害の有無
4 法的保護に値する利益の侵害を理由とする不法行為の成否等

   --------------------

■事案の概要

『折り紙作家である原告が,テレビドラマの番組ホームページに別紙2記載の「吹きゴマ」の折り図(説明文を含む。以下「被告折り図」という。)を掲載した被告に対し,主位的に,被告折り図は,「1枚のかみでおる おりがみ おって遊ぶ −アクションおりがみ−」と題する書籍(著者・原告,発行日・平成20年2月20日,発行所・株式会社誠文堂新光社。以下「原告書籍」という。)に掲載された別紙1記載の「へんしんふきごま」の折り図(説明文を含む。以下「本件折り図」という。)を複製又は翻案したものであり,被告による被告折り図の作成及び番組ホームページへの掲載行為は原告の著作物である本件折り図についての著作権(複製権ないし翻案権,公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)の侵害に当たる旨主張し,著作権侵害及び著作権人格権侵害の不法行為による損害賠償として285万円及び遅延損害金の支払と著作権法115条に基づき被告の運営するホームページに別紙謝罪文目録1記載の謝罪文の掲載を求め,予備的に,仮に被告の上記行為が著作権侵害及び著作権人格権侵害に当たらないとしても,原告の有する法的保護に値する利益の侵害に当たる旨主張し,上記利益の侵害の不法行為による同額の損害賠償及び遅延損害金の支払と民法723条に基づき上記ホームページに別紙謝罪文目録2記載の謝罪文の掲載を求めた事案』
(2頁以下)

原告書籍:「1枚のかみでおる おりがみ おって遊ぶ −アクションおりがみ−」

<経緯>

H20.2 原告書籍刊行
H21.6 被告制作ドラマ「ぼくの妹」の番組ホームページに被告折り図掲載
H21.7 原告が被告に削除要請、5日後に削除のうえ差し替え

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■判決内容

<争点>

1 本件折り図の著作物性

「吹きゴマ」折り紙の折り方を説明する折り図の著作物性について、まず裁判所は、折り図の一般的な特性として、

『折り方そのものは,紙に折り筋を付けるなどして,その折り筋や折り手順に従って折っていく定型的なものであり,紙の形,折り筋を付ける箇所,折り筋に従って折る方向,折り手順は所与のものであること,折り図は,折り方を正確に分かりやすく伝達することを目的とするものであること,折り筋の表現方法としては,点線又は実線を用いて表現するのが一般的であることなどからすれば,その作図における表現の幅は,必ずしも大きいものとはいい難い。また,折り図の著作物性を決するのは,あくまで作図における創作的表現の有無であり,折り図の対象とする折り紙作品自体の著作物性如何によって直接影響を受けるものではない』(22頁)

として折り図が表現の幅が狭い著作物であることを説示。その上で本件折り図については、

(1)32の折り工程の説明について選択の幅があること
(2)読み手が分かりにくいと考えた箇所について説明文や写真を用いて補充説明している
(3)全体として説明図の選択・配置、矢印、点線等と説明文、写真の組合せ等によって見やすく、分かり易く表現している

といった点から、本件折り図の著作物性(著作権法2条1項1号)を肯定しています。

   ------------------------------------

2 複製ないし翻案の成否

被告折り図が本件折り図を複製又は翻案したものかどうかについて、裁判所は、複製の意義(2条1項15号)及び翻案の意義(江差追分事件最高裁判例)に言及した上で被告折り図において、本件折り図の表現上の本質的特徴を直接感得することができるかどうかを比較検討(23頁以下)。

【共通点】
(1)10個の図面と完成形の図面で説明
(2)各説明図でまとめて選択した折り工程の内容
(3)各説明図は、折り筋を付ける箇所を点線で示す等している

【相違点】
(1)被告折り図には多くの説明文が付してある
(2)被告折り図は写真を用いず、色分けなどをしていない
(3)被告折り図では完成形に至ることができない

といった点などから、折り図としての見やすさの印象が大きく異なり、分かりやすさの程度においても差異があるものであって、本件折り図の本質的特徴を直接感得することはできないと判断。
複製あるいは翻案は否定されています。

   ------------------------------------

3 著作者人格権侵害の有無

被告によるホームページ掲載行為の著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)侵害性についても否定されています(30頁以下)。

   ------------------------------------

4 法的保護に値する利益の侵害を理由とする不法行為の成否等

原告は、予備的請求として被告のフリーライドなどを理由とした一般不法行為(民法709条)の成立を主張しましたが、裁判所は容れていません(31頁以下)。

   --------------------

■コメント

原告折り図の著作物性(著作権法2条1項1号)は認められたものの、被告折り図の複製物性あるいは翻案物性は否定された事案です。

同じ「吹きゴマ」折り紙作品の32の工程を10の手順に構成、まとめているところまで類似しているわけですが、裁判所は、その点はアイデア部分での類似にすぎないと判断しています(27頁参照)。
整然と整理された対比表(別紙3)での類否判断ですと、価値判断的には翻案権侵害性を肯定しても良いのではないかとも思うものの、原告サイト(後掲)の「へんしんふきごまのおりかた(吹きゴマ)」を拝見すると、写真もあり大変見やすい構成・レイアウトになっていて、10の手順というのは、アイデア部分にすぎないことになってしまうかな、という印象も持った次第で、微妙な判断です。

5月24日現在で、TBSの「ぼくの妹」番組サイトにアクセスすると、『2009年7月9日 「へんしんふきごま」の折り方』のニュースリリースがあって、折り方について原告のサイトへのリンクがあります。

TBS「ぼくの妹」

今回の事案では、TBSが番組やウェブサイトでの作品や折り図の利用について、事前に作家さんに監修などを依頼したのかどうか判決文からは判然としませんでしたので、原告の方にメールで不躾ですが伺ってみました。作家さんや出版社とTBSとの間で事前のやりとりはなくて、作家さんはあとから気が付かれたそうです。
また、作家さんは、「折り鶴の折り図を十数点並べてみて、どれ一つとして同じ手順、同じ形状、同じ向きは無い、つまり表現の本質自体」である旨伝えられたそうですが、裁判所には容れられなかった結果となりました。

作家さんとしては、今回一番許せないのが、完成できない折り図をウェブサイトに掲載した点ということで、TBSも始めから作家さんから許諾を得て折り図を転載するなり、作家さんのサイトへリンクを貼るなりしていれば良かったと感じる事案です。

なお、日本折紙学会では、折り紙作品を使用する場合のガイドライン文書(第1版)を2005年に公表しています。

折り紙の知的財産権研究−折紙探偵団
知的財産としての折り紙について(PDF)

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■参考サイト

原告サイト
ぼくの妹・・・吹きゴマ へんしんふきごま折り方作り方 おりがみ畑
5月20日は折り紙著作権の日−創作折り紙の折り方・・・(2011年4月1日付)

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2011年05月17日

保安用品総合カタログ事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

保安用品総合カタログ事件

大阪地裁平成23.4.28平成21(ワ)7781損害賠償等請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 森崎英二
裁判官      北岡裕章
裁判官      山下隼人

*裁判所サイト公表 2011.5.13
*キーワード:職務著作、共同著作物、信義則、複製権、翻案権、著作者人格権、営業誹謗行為、営業秘密、一般不法行為

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■事案

職務著作が成立し原被告各会社の共同著作物として位置付けられる保安用品総合カタログの利用関係について、原告による被告カタログの利用行為に関する差止請求が信義則により否定されるなどした事案

原告:繊維、雑貨等輸出入販売会社
被告:保安用品販売会社
    原告退職従業員ら

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法15条1項、64条、65条、21条、27条、19条、不正競争防止法2条1項14号、7号、2条6項、民法709条

1 被告らは原告の営業上信用を害する虚偽の別紙告知行為目録記載の各事実を第三者に告知したか
2 被告らは原告の営業秘密を開示し、あるいは使用しているか
3 被告らの不正競争により原告に生じた損害の額
4 被告らの行為は民法709条の不法行為を構成するか
5 被告らによる被告カタログの作成利用行為は、原告が原告カタログについて有する著作権ないし著作者人格権の侵害行為であるか

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■事案の概要

『1 本件は,原告が,かつて原告の取引先であった被告株式会社エース神戸(以下「被告会社」という。),原告のもと取締役である被告P1及びもと社員である被告P2に対し,下記請求をした事案である。
           記
(1)被告らが共同して原告の営業上の信用を害する虚偽の別紙告知行為目録記載の各事実を第三者に告知する同行為が不正競争防止法2条1項14号に該当することを理由とする同法3条1項に基づくその行為の差止請求(請求の第1項)
(2)上記(1)の事実関係に基づき,同法14条に基づく信用回復措置の請求(請求の第2項)
(3)上記(1)を原因とする信用毀損の不法行為に基づく損害賠償として300万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成20年9月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金請求(請求の第3項(一部))
(4)上記(1)のほか,原告が原告在職中の被告P1及び被告P2(以下,両名を合わせて「個人被告ら」という。)に対して原告の営業秘密である取引先情報を示したところ,個人被告らが,原告を退職後,不正の競業その他の不正の利益を得る目的で,又は原告に損害を与える目的で,その営業秘密を被告会社に開示し,被告会社はその事情を知ってその営業秘密を使用したとして,これら個人被告らの行為が不正競争防止法2条1項7号に,被告会社の行為は同項8号に該当することを理由とする同法4条,民法719条に基づく損害賠償として1978万円及びこれに対する平成20年9月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金請求(請求の第3項(一部))
(5)上記(4)が認められないとしても,被告らの行為が自由競争の枠を逸脱した違法な競業行為であることを理由とする民法709条,719条に基づく損害賠償として1978万円及びこれに対する平成20年9月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金請求(請求の第3項(一部))
(6)被告らの上記不正競争又は不法行為と因果関係のある弁護士費用相当の損害賠償として220万円及びこれに対する平成20年9月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金請求(請求の第3項(一部))
(7)被告らが営業に用いている別紙カタログ目録(ロ号)保安用品総合カタログ(被告)記載のカタログ(以下「被告カタログ」という。)は,原告の著作物である別紙カタログ目録(イ号)[保安用品](原告)記載のカタログ(以下「原告カタログ」という。)を利用するものであるとして,著作権(複製権,翻案権)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)侵害を理由とする著作権法112条1項に基づく,その複製・頒布の差止請求(請求の第4項)
(8)上記(7)の事実関係に基づく同条2項に基づく被告カタログの廃棄請求(請求の第5項)』
(2頁以下)

<経緯>

S56.9 被告P1が原告会社に入社
H10.5 被告P2が原告会社に入社
H16.9 P3が被告会社設立
H20.9 被告P1が原告会社退社、被告会社に入社
H20.10被告P2が原告会社退社、被告会社に入社

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■判決内容

<争点>

1 被告らは原告の営業上信用を害する虚偽の別紙告知行為目録記載の各事実を第三者に告知したか

被告らが原告会社を退職して被告会社に入社して以降、原告の取引先に対してFAXを送信したり、直接訪問したりして別紙告知行為目録記載の事実を述べるなどしたとして虚偽事実告知行為性(不正競争防止法2条1項14号)が争点となっています(15頁以下)。
結論としては、別紙目録記載の6つの事実のうち、「粉飾決算」についてのみ、14号該当性が肯定されています。但し、同行為を対象とする差止請求は認められていません。

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2 被告らは原告の営業秘密を開示し、あるいは使用しているか

原告の取引先の名称、郵便番号、住所又は所在地、電話番号及びファクシミリ番号のほか、保安用品の国内外の仕入先の名称、住所、電話番号、ファクシミリ番号及びその仕入商品に関する情報(認定顧客情報)の開示・使用行為について、そもそも認定顧客情報は、秘密管理性を欠き「営業秘密」(不正競争防止法2条6項)に該当しないと判断されています(21頁以下)。

   ------------------------------------

3 被告らの不正競争により原告に生じた損害の額

被告P1の「粉飾決算」告知部分について、原告に対する信用毀損の損害賠償額として10万円、弁護士費用相当損害額として3万円が認定されています(23頁以下)。

   ------------------------------------

4 被告らの行為は民法709条の不法行為を構成するか

原告はさらに退職従業員らによる取引先の獲得などの競業行為の不法行為性(民法709条)を争点としましたが、結論としては、裁判所は被告らの行為が社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法なものということはできないとして、不法行為の成立を否定しています(24頁以下)。

   ------------------------------------

5 被告らによる被告カタログの作成利用行為は、原告が原告カタログについて有する著作権ないし著作者人格権の侵害行為であるか

原告は、被告P1、P2がその職務として原告在職中に作成した商品写真や原告カタログといった著作物の著作権及び著作者人格権は、職務著作(著作権法15条1項)として原告会社に帰属するものであって、被告会社が被告カタログとしてこれを複製利用する行為は著作権等を侵害すると主張しました(30頁以下)。

この点について、被告会社は、原告と密接な関係を持って保安用品の取引を行っており、その取引関係の中で営業に用いるカタログとして、被告P1、被告P2、被告会社代表者が共同して商品の写真撮影をし、その写真データをカタログ用データに造り替えたりして共同で作成しており、この商品カタログを基本として、表紙の会社名だけを原告と被告会社で入れ替えて使用してきた経緯などを裁判所は検討。そして、商品カタログは、原告、被告各会社に職務著作物として両社の共同著作物に位置付けられると判断しています。
その上で両社の商品カタログの利用関係についての合理的意思解釈や商品カタログの性質などから、営業上の協力関係が終了した後であっても従前通りの使用は許されるものであるとして、被告会社に対して原告がその共同著作物の著作権者及び著作者人格権者としての権利を行使して被告カタログの利用行為の差止めを求めることは、信義に照らし、許されないと判断しています。

結論として、「粉飾決済」虚偽事実告知に基づく信用毀損の損害賠償請求についてのみ、認められているに留まっています。

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■コメント

本件は、退職従業員らの退職後の競業行為の営業誹謗行為性や営業秘密開示行為性といった不正競争防止法上の争点とともに、著作権法上の争点として職務著作(法人著作 著作権法15条1項)が成立し原被告各会社の共同著作物として位置付けられる保安用品総合カタログの利用関係について、原告による被告カタログの利用行為に関する差止請求が信義則で否定された事案となります。

問題となったカタログですが、原告サイトに掲載されている保安用品のPDFカタログによると、道路に設置するコーンや回転灯、合図灯などの道路保安用品のようです。

三ツ星貿易株式会社|電子カタログ(PDF)

こうした商品写真や商品説明文がそもそも著作権法上保護される著作物かどうか(著作権法2条1項1号)は、今回直接の争点とはなりませんでしたが、1点1点を個別に取り上げたような場合は微妙な判断となりそうです。
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2011年05月16日

廃墟写真事件(控訴審)−著作権 損害賠償等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

廃墟写真事件(控訴審)

知財高裁平成23.5.10平成23(ネ)10010損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 塩月秀平
裁判官      清水 節
裁判官      古谷健二郎

*裁判所サイト公表 2011.5.12
*キーワード:翻案権、アイデア・表現二分論、名誉棄損、一般不法行為

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■事案

廃墟を撮影した写真の類否が争点となった事案の控訴審

原告(控訴人) :写真家
被告(被控訴人):写真家

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法27条、2条1項1号、民法709条

1 翻案権侵害を中心とする著作権侵害の有無について
2 名誉毀損の成否について
3 法的保護に値する利益侵害について

   --------------------

■事案の概要

『1 控訴人(原告)は,「廃墟」を被写体とする写真(いわゆる「廃墟写真」)を撮影する写真家であるが,被控訴人(被告)が控訴人撮影の原告各写真と同一の被写体を撮影して被告各写真を作成し,これを掲載した被告各書籍を出版及び頒布するなどした行為は,控訴人の有する原告各写真の著作物の著作権(翻案権,原著作物の著作権者としての複製権,譲渡権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害する,あるいは,控訴人が「廃墟」を最初に被写体として取り上げた者と認識されることに伴って生じる法的保護に値する利益を侵害する,また,写真集「亡骸劇場」に記載された被控訴人の発言は控訴人の名誉を毀損するなどと主張して,被控訴人に対し,(1)著作権法112条1項,2項に基づく被告各書籍の増製及び頒布の差止め並びに一部廃棄,(2)著作権侵害,著作者人格権侵害,名誉毀損及び法的保護に値する利益の侵害の不法行為による損害賠償,(3)著作権法115条及び民法723条に基づく名誉回復等の措置としての謝罪広告を求めた。
2 原判決は,著作権侵害の主張については,被告写真1〜5から原告写真1〜5の表現上の本質的な特徴を直接感得することができないとして,被告写真1〜5が原告写真1〜5の翻案物であることを否定し,これによりその他の著作権侵害も成立しないとし,名誉毀損の不法行為については,名誉を毀損する事実の摘示がないとして否定し,法的保護に値する利益の侵害の不法行為についても,「廃墟」を最初に被写体として取り上げた者と認識されることによる営業上の利益は,法的保護に値する利益とはいえないなどとして否定し,控訴人の請求をいずれも棄却した。』
(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 翻案権侵害を中心とする著作権侵害の有無について

写真における翻案の意義について、控訴審裁判所は、翻案の意義に関する江差追分事件最高裁判決の判断が本件の写真の著作物についても基本的に当てはまるとしたうえで、

『本件の原告写真1〜5は,被写体が既存の廃墟建造物であって,撮影者が意図的に被写体を配置したり,撮影対象物を自ら付加したものでないから,撮影対象自体をもって表現上の本質的な特徴があるとすることはできず,撮影時季,撮影角度,色合い,画角などの表現手法に,表現上の本質的な特徴があると予想される。』と説示。

そのうえで、原告と被告の各写真を検討し、被告写真5点はいずれも原告写真の翻案であると認めていません(5頁以下)。

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2 名誉毀損の成否について

原判決の判断を維持しており、被告の発言について名誉毀損の成立を否定してます(6頁)。

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3 法的保護に値する利益侵害について

廃墟を作品写真として取り上げた先駆者として世間に認知されることによって派生する営業上の諸利益が法的に保護されるかどうかについて、

『廃墟写真を作品として取り上げることは写真家としての構想であり,控訴人がその先駆者であるか否かは別としても,廃墟が既存の建築物である以上,撮影することが自由な廃墟を撮影する写真に対する法的保護は,著作権及び著作者人格権を超えて認めることは原則としてできないというべきである』(7頁)

としたうえで、原判決の判断の通り、『「廃墟」の被写体としての性質,控訴人が主張する利益の内容,これを保護した場合の不都合等,本件事案に表れた諸事情を勘案することにより,本件においては,控訴人主張の不法行為は成立しない』と判断しています。

結論として、原審同様、控訴審でも原告の主張は認められませんでした。

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■コメント

原告側は、「廃墟写真」の写真ジャンルでの本質的特徴は、被写体及び構図ないし撮影方向にあるのであって、撮影に用いたフィルムやカメラのサイズ、カラーか白黒か、印刷の色付けの方法等はいわば味付け部分であって本質的要素ではないとまで、控訴審では言い切っています。その論拠として、デジタル時代の写真技術などをあげていますが(3頁参照)、デジタル技術のことをいってしまえば、構図や撮影方向でさえいくらでも修正可能で、残る本質的要素は被写体の選択しかないことになります。
風景写真(絵画的写真)と報道写真における色の意味合いの違いなども含め、写真美術論にまで踏み込んだ議論の展開が期待されましたが、その部分は判決文には表れておらず残念なところです。

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■過去のブログ記事

2011年1月10日記事
廃墟写真事件(原審)

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■追記(2011.5.17)

廃墟写真事件については、写真家や写真エージェントさんの他にイラストレーターさんや版画家さん、工芸作家さんなどにも感想を聞いてみました。
イラストレーターや版画家、工芸作家のみなさんとわたしとでは、どうにも議論がかみ合いませんでしたが、モノを創作するクリエイターとの違いを思い知らされました。

以下は、ある知人の工芸作家さんとのやりとりの抜粋です。


>色は本質的部分になると思うのですが。

モノクロかカラーかというのは現し方の要素のひとつでしかなくて写真(作品)の本質部分というのはそういったこととは違うものだと思います。

写真は、被写体があってそれを写してという行為なので分かりずらいかもしれませんが美術の作品(音楽でもそうかな)は見えない(聞こえない)ものを見えるもの(聞こえるもの)に作り上げる作業です。

本質というのは、その見えない部分のこと。

写真家であれば、その被写体に接してそこからインスピレーション(という言い方が適当かどうか分かりませんが)を得てそれ(得たインスピレーション)を表現するために撮影するという手段を使うわけです。


あるいは、何か表現したいものが自分の内側にあり、ある被写体に接した時、自分の中の何かとその被写体が共鳴して、この被写体で自分の中にあったイメージを表現しようとなるわけです。

要するに、その被写体を使って何を引き出すかで、その「何」が本質で重要な部分なのだと思います。

そのイメージを具体的にどうやって形にしていくかという作業工程の中で、どのアングルを選ぶか、白黒にするかカラーにするか、そういった選択が出てきます。
自分が表現したいもの(イメージとして持っているもの)をより効果的に表現するためには、どうすればよいかとの選択の結果にすぎないわけ。

またもし、モノクロのフィルムしか手元になかったとしても、自分と共鳴する被写体に出会って、今しか撮れないとなれば、本当はカラーで撮りたかったとしても、モノクロで十分に作品として成立するものが撮れるということなのだと思います。

作品として完成したものが提示された時、そこから表面的に表現として現れているものだけを読み取るかその作品の裏にある作者の内側を読み解く(あるいは、感じ取る)かの違いなのかもしれません。
後者の見方は、実際に自分も作っている人でないと見えずらい部分ではあるかも知れません。

自分もちょこっと作る側にいる人間の目で見ると被告の写真は、目に表現だけで成り立っていて、その後ろにある「これを表現したかった!」という作家自身の中にあるイメージが見えてこないで、なんとなく漠然と原告と同じような場所を同じようなアングルで撮っているように見えてしまうのです。

イラストレータさんも版画家さんもそうだと思うのですが、彼女達や私が言う「似ている」というのは、「本質的な部分が似ている」ではなくて、その部分が抜けているので、見える形での表現だけ模倣してあるように見えて「似ている」となるのだと思います。


>サルガドがどうしてここではカラーで、ここではモノクロで、ジャンルーシーフはどうしてカラーを選択するのか・・・

それは、本人にしか分からない部分なのかもしれません。

私も同じモチーフで金属と木という選択がありますが、同じモチーフを作ってもその中に何を見出し、自分の中の何を作りたいのかによって、金属と木のどちらがそれにより適した素材かという選択になります。

黒にしたかった場合、黒檀でも、ほかの素材を黒く染めても、そこから感じ取れる質感や印象は違ってきます。
また、作り手としては、彫りながらの感触なども違ってきます。
どちらが、より、その時の自分の作品に対する向い方に合っているか・・・、もう、そうなると第三者が立ち入る余地はなくなるかもしれませんね。


>残念ながら、著作権法は、「表現された部分」で議論をしなくてはいけないために、わたしもそこにひっぱられているのかもしれません。

法律は、それでいいのかもしれませんね。
どこかで線を引かなくてはならないわけで、そこが「見える部分」とか「金銭的な利害関係の部分」とか、第三者が見ても、公平と思える部分での判断をするのが法律の仕事なのだと思います。

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■追記(2011.5.22)

被告プレスリリース(2011年5月19日)
写真家小林伸一郎 オフィシャル ブログ 写真著作権等 控訴審 勝訴のご報告
PDF(2011年5月17日付)

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2011年05月12日

「模様入りおにぎり具」実用新案手続補正書編集著作物事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「模様入りおにぎり具」実用新案手続補正書編集著作物事件

東京地裁平成23.4.27平成22(ワ)35800損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 岡本 岳
裁判官      鈴木和典
裁判官      寺田利彦

*裁判所サイト公表 2011.5.9
*キーワード:言語、美術、図形の著作物性、創作性、編集著作物性

   --------------------

■事案

実用新案登録出願の際の手続補正書の文面等の著作物性が争点となった事案

原告:個人
被告:日用品雑貨販売会社

   --------------------

■結論

請求棄却

   --------------------

■争点

条文 著作権法2条1項1号、10条1項1号、4号、6号、12条1項、75条3項

1 本件手続補正書の編集著作物性
2 本件手続補正書の言語の著作物性
3 著作権法75条3項の推定の肯否

   --------------------

■事案の概要

『原告が,被告の商品台紙(乙1の1,2。以下「本件台紙」という。)の裏面に掲載した取扱説明文及び写真(別紙1被告説明目録記載1。以下「被告説明1」という。)並びに同商品のリーフレット(乙2の1,2。以下「本件リーフレット」といい,本件台紙と併せて「本件台紙等」という。)に掲載した取扱説明文及び写真(別紙1被告説明目録記載2〜5。以下「被告説明2〜5」という。)は,いずれも原告の著作物である「手続補正書」(甲6の2。原告が実用新案登録出願の願書に添付した明細書及び図面を補正するため特許庁に提出した同庁昭和57年1月7日受付の手続補正書。以下「本件手続補正書」といい,このうち明細書部分を「本件明細書」,図面部分を「本件図面」といい,その写しを別紙2として添付する。)を複製又は翻案したものであり,被告の上記各掲載行為は,原告の有する本件手続補正書の著作権(複製権,翻案権)及び著作者人格権(氏名表示権,公表権,同一性保持権)を侵害すると主張して,被告に対し,著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき逸失利益200万円及び著作者人格権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき慰謝料100万円,合計300万円の損害賠償の支払を求める事案』
(1頁以下)

特許庁 実開昭57−112736考案「模様入りおにぎり具」
文化庁 登録第31616号−1 題号「模様入りごはん」

被告商品:ポリスチレン製ご飯抜き型(熊の顔)「ふりかけフレーム ポポロ」

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■判決内容

<争点>

1 本件手続補正書の編集著作物性

原告は、被告商品の台紙とリーフレットに掲載した取扱説明文と写真が、原告の実用新案登録出願の際の手続補正書を複製、翻案しているとして被告の掲載行為の著作権侵害性及び著作者人格権侵害性を争点としました。
その前提として本件手続補正書の著作物性について、まず編集著作物性(著作権法12条1項)が検討されています(11頁以下)。

この点について、原告は、本件手続補正書は、「ごはん」、「おにぎり」、「ふりかけ」、「具」、「型当て板」の各素材を編集した編集著作物であり、その選択及び配列に創作性が認められると主張しましたが、裁判所は、

『編集著作物とは,編集物でその素材の選択又は配列によって創作性を有するもの(著作権法12条1項)をいうところ,本件手続補正書は,本件願書に添付した明細書及び図面を補正するために作成されたものであって,「ごはん」,「おにぎり」,「ふりかけ」,「具」,「型当て板」の各用語も,本件明細書の本文中において,使用する器具又は具材を示すものとして通常の意味,方法で用いられているにすぎず,それ以上に,何らかの編集方針に基づいて,上記各用語が編集の対象である素材として選択され又は配列されているとは認められない。したがって,本件手続補正書は編集著作物とは認められない』(11頁)

として、本件手続補正書の編集著作物性を否定しています。

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2 本件手続補正書の言語の著作物性

次に、本件手続補正書の言語等の著作物性(創作性)について検討がされています(12頁以下)。

(1)本件明細書A部分

例1 おにぎり(5’)の上に型当て板(1)を当て上からふりかけ,ごま,桜でんぶ,青のり等粒状の具(6)をくりぬき部(2)にうめ込んで型当て板(1)をとりのぞけばおにぎり(5’)に花や動物等の絵や模様や字がえがき出されて美しいおにぎりとなっている。

この点について、裁判所は、

『A部分は,実施例についての記述であり,実施例に表れた技術的思想や実施例に示された実施方法それ自体は,アイデアであって表現ではないから,それ自体は著作権法によって保護されるべき対象とならない』

とした上で、

『A部分の具体的表現も,(1)おにぎりの上に型当て板を当て,(2)上から,ふりかけ,ごま,桜でんぶ,青のり等の粒状の具をくり抜き部に埋め込んで,(3)型当て板を取り除くと,(4)おにぎりに花や動物等の絵,模様や,字が描き出されて,(5)美しいおにぎりができあがるということを,一般に使用されるありふれた用語で表現したものにすぎず,表現上の創作性を認めることはできない』

として、言語の著作物性(創作性)を否定しています。

(2)本件明細書B部分

「1:型当て板」,「5:ごはん」,「6:具」

この点について、裁判所は、

『B部分は,明細書中の図面の簡単な説明の部分であって,願書に添付した図面に図示された符号の説明を記載したものにすぎず,その具体的表現にも創作性を認めることはできない。』

として、言語の著作物性(創作性)を否定しています。

(3)本件図表C部分

本件図面のうち第5図〜第7図

JPU_1982112736_ページ_2


この点について、裁判所は、

『C部分のうち図自体は,言語若しくはそれに類する表現手段による表現がなされているものではないから,そもそも言語の著作物には当たらない。
 また,C部分の図について美術又は図形としての著作物性をみても,第5図は「模様を入れている側面透視図」,第6図は「模様入りおにぎりの正面図」,第7図は「模様入りおにぎりの側面図」であって,いずれもおにぎりの上に型当て板が載っている様子又はおにぎりの上に具が載っている様子を正面ないし側面から極めてありふれた手法で図示したにすぎず,何ら個性のある表現とはいえないから,創作性を認めることはできない。
 C部分のうち,日本語で「第5図」,「第6図」及び「第7図」と記載されている部分は,単に図の番号を記載したものにすぎず,創作性を認めることはできない。』

として、言語、美術又は図形としての著作物性を否定しています。

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3 著作権法75条3項の推定の肯否

原告は、本件手続補正書は、本件願書と実質的に同一の著作物であるところ、本件願書は著作物として登録がされているから、著作権法75条3項により著作物と推定されると主張しましたが、裁判所は、本件願書の登録は、著作権法76条の登録(第一発行年月日等の登録)であって、同法75条の登録(実名の登録)ではないこと、また、著作権法75条3項で推定されるのは、当該登録に係る著作物の著作者であること、同法76条2項で推定されるのは当該登録に係る年月日において最初の発行又は最初の公表があったことであって、登録に係る対象が著作物性を有することが推定されるものではないとして、原告の主張を容れていません(14頁以下)。

結論として、原告の請求は認められませんでした。

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■コメント

被告商品の「ふりかけフレーム ポポロ」は、お弁当のご飯にふりかけを掛けたりする際に枠を作ったり、型を抜いたりするのに役立つ道具で可愛らしい仕様です。

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ふりかけフレーム ポポロ-アーネスト株式会社

裁判では、この商品の台紙とリーフレットに掲載した取扱説明文や写真(使用上の注意、手入れ方法、使用方法、レシピ等)と本件手続補正書との類否判断に入ることなく、本件手続補正書の著作物性の部分で原告の主張が否定される判断となりました。
この種の道具の使用方法の記載例としては、似通った表現になりますし(8頁被告説明1参照)、著作権侵害性の争点について言えば、そもそも手続補正書への被告側の依拠性自体さえあったのかどうか、疑問となる事案でした。

なお、原告の実用新案登録出願(昭和56年)は、請求期間内での出願審査請求が無く、取下げたものとみなされています(3頁)。

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■過去のブログ記事

・ウェブサイトの説明文などの著作物性が争点となった事案
2011年2月14日記事
データSOS事件
・カタログ掲載説明図の著作物性が争点となった事案
2010年1月29日記事
マットレス形態模倣事件
・ウェブサイト上の写真や文章の著作物性が争点となった事案
2006年4月3日記事
スメルゲット事件
・商品に添付された取扱説明書の著作物性が争点となった事案
2005年12月29日記事
浴湯保温器取扱説明書著作権侵害事件
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2011年04月28日

中小企業診断士試験予備校教材事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

中小企業診断士試験予備校教材事件

東京地裁平成23.2.28平成21(ワ)23987損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀滋
裁判官      菊池絵理
裁判官      坂本三郎

*裁判所サイト公表 2011.4.20
*キーワード:依拠性、複製権、同一性保持権、講義資料、利用許諾

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■事案

中小企業診断士試験の予備校用の教材に関して著作権や著作者人格権侵害の成否について依拠性が争点となった事案

原告:中小企業診断士
被告:経営コンサルティング会社、資格予備校

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法21条、20条

1 第8回テキスト原稿及び被告LECテキスト(第8回)は、原告メモ等に依拠して作成されたものか

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■事案の概要

『被告株式会社東京リーガルマインド(以下「被告LEC」という。)の講座におけるビデオ講義を担当した原告が,講義のために作成した資料を被告経営戦略研究所株式会社(以下「被告経営戦略」という。)に提出したところ,被告らが,原告に無断でこれを複製,改竄し,被告LECの講義用のテキストとして作成し配布したと主張して,被告らに対し,著作権(複製権)侵害及び著作者人格権(同一性保持権)侵害に基づく損害賠償請求(著作権法114条,民法709条,710条)として,連帯して140万円の支払を求める事案』(1頁以下)

<経緯>

H13 被告LECが被告コンサル会社に教材作成を委託
    被告コンサル会社が原告に講義を依頼、ビデオ収録
    中小企業診断士試験「2001年度2次ストレート合格講座」開講
H18 別件訴訟一審判決
H19 第8回テキストと原告メモ等との関係について原告が通知
H21.7.13 本件訴訟を提起

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■判決内容

<争点>

1 第8回テキスト原稿及び被告LECテキスト(第8回)は、原告メモ等に依拠して作成されたものか

被告予備校で開講された中小企業診断士試験「2001年度2次ストレート合格講座」で使用された第8回「財務」の講義のテキスト原稿及びテキストが、原告の新規事業開発ビデオ収録メモ(原告メモ等)に依拠して無断で作成されたものであると原告は主張しました(37頁以下)。

この点について裁判所は、

(1)作成の経緯:テキストは、平成13年2月中には完成し、LECに納品されていた
(2)形式面:主要項目の項目立ては同一であるが、小項目などで非類似
(3)内容面:原告メモ等は簡潔な記載であったり、両者は表現が異なっていたりして非類似

といった点から、原告によるビデオ講義の収録後、平成13年3月上旬に被告コンサル会社に送付した原告メモ等に依拠してテキストを作成したとする原告の主張は否定されています。

なお、原告は予備的主張として、平成13年2月中の原告メモ等の送付の可能性を主張しましたが、仮にその時期に送付がありテキスト作成において依拠があったとしても、原稿料の受領があり原告メモ等の利用について許諾していたとして、裁判所は複製権侵害性を否定しています(49頁以下)。

結論として、著作者人格権(同一性保持権)侵害性の点を含め原告の主張は認められませんでした。

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■コメント

原被告らによる別件訴訟(予備教材事件 知財高裁平成19年2月28日)は、株式会社通産資料調査会から刊行予定の「中小企業診断士合格ポイントマスター(下)」の「第9章 助言理論1コンサルティング理論2.問題の発見3.問題解決策の立案」部分の執筆を被告コンサル会社からの依頼で執筆担当した原告が、その原稿を被告コンサル会社らが被告予備校の講座で無断使用したとして著作権侵害性を争った事案でした。
この別件訴訟では、被告予備校の注意義務違反も肯定されて被告らの著作権侵害性が認められましたが、今回の訴訟は、同時期の被告予備校のビデオ講義を担当した原告が、その講義のために作成した資料メモを被告らが無断で別の回の講義のテキストに複製などしたとして新たに訴えた事案です。
原告としては、第5回「新規事業開発」の講義ビデオ収録、資料メモとの認識があったようですが、実際には第8回「財務」のビデオ収録となっており、認識のズレがありました。

すでに10年前の事実関係ですが、経緯としては、別件訴訟の検討過程でテキスト原稿と原告のメモの関係性に原告が新たに着目したというものでした(41頁以下)。

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■過去のブログ記事

2006年11月18日記事 予備校教材事件(一審)
予備校教材事件

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■参考判例

予備校教材事件(控訴審判決PDF)
知財高裁平成19年2月28日平成18(ネ)10090損害賠償請求控訴事件

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2011年04月25日

住宅ローン商品金利情報図表事件(控訴審)−著作権 損害賠償等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

住宅ローン商品金利情報図表事件(控訴審)

知財高裁平成23.4.19平成23(ネ)10005損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 塩月秀平
裁判官      清水 節
裁判官      古谷健二郎

*裁判所サイト公表 2011.4.20
*キーワード:創作性、著作物性、図形の著作物、編集著作物、データベースの著作物、一般不法行為論

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■事案

住宅ローン金利の比較表中の図表の著作物性が争点となった事案の控訴審

原告(控訴人)  :金融情報サイト運営者
被告(被控訴人):財団法人住宅金融普及協会

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、10条1項6号、12条1項、12条の2第1項、民法709条

1 本件図表の図形の著作物性
2 本件図表の編集著作物性
3 本件図表のデータベース著作物性
4 一般不法行為論の成否

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■事案の概要

『1 被控訴人(被告)は自ら開設するウェブサイト上に「住宅ローン商品 金利情報」を掲載しているが,控訴人(原告)は,そのうちの,全国の金融機関の金利情報を整理した被告図表(原判決別紙Aにおいて示された図表部分)が,控訴人の著作物(図形,編集著作物又はデータベースの著作物)である本件図表(原判決別紙Bにおいて示された図表部分)を複製したものであり,被控訴人の上記掲載行為は控訴人の有する本件図表の著作権(複製権,公衆送信権)を侵害する旨主張し,被控訴人に対し,著作権法112条1項に基づく差止請求として上記「住宅ローン商品 金利情報」が掲載されたウェブページの閉鎖と,著作権侵害の不法行為による損害賠償の一部請求として706万4000円の支払を求めた。
2 原判決は,本件図表の著作物性(図形,編集著作物又はデータベースの著作物)を否定し,控訴人の請求をいずれも棄却した。
3 控訴人は,当審において,本件図表が著作物に当たらないとしても,被控訴人が本件図表の複製と同視し得る被告図表を掲載したウェブサイトの運営を行うことは,本件図表を掲載したウェブサイトの運営による控訴人の営業活動に対する侵害行為であり,かつ,公益法人による民業圧迫であるから,法的保護に値する利益の侵害による不法行為に当たると主張し,この不法行為に基づく請求を追加した。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 本件図表の図形の著作物性
2 本件図表の編集著作物性
3 本件図表のデータベース著作物性

平成20年4月から原告が開設している「銀行商品コム」という名称のウェブサイトに全国の金融機関が取扱う住宅ローンに関する金利の比較表が掲載されていました。
この金利比較表のうちの図表部分(本件図表)は、金融機関名、商品名、金利等といった項目から構成されていましたが、原審では本件図表について、図形の著作物性(著作権法10条1項6号)、編集著作物性(12条1項)、データベース著作物性(12条の2第1項)が争点とされました。

結論としては、3つの争点について控訴審でも原審の判断が維持されています(6頁以下)。

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4 一般不法行為論の成否

原告は、控訴審で追加請求として、被告図表を掲載したウェブサイトの運営は、原告の営業活動に対する侵害行為であり、かつ、公益法人(被告)による民業圧迫であるとして一般不法行為(民法709条)の成立を主張しました。
しかし、控訴審は、デッドコピーに当たらないこと、被告の法人の目的として住宅金融情報等に関する情報提供があって被告図表の作成等により情報提供することは、この目的に含まれ公益に合致するものであるなどとして不法行為の成立を否定しています(6頁以下)。

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■コメント

原告は、著作権侵害が成立しない場合の一般不法行為論の成立を控訴審で追加請求しましたが、認められませんでした。

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■過去のブログ記事

2010年12月28日記事 原審

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2011年04月08日

TBS「愛の劇場」オープニングテーマ曲不当利得返還請求事件−著作権 不当利得返還請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

TBS「愛の劇場」オープニングテーマ曲不当利得返還請求事件

東京地裁平成23.3.24平成21(ワ)43011不当利得返還請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官      山門 優
裁判官      柵木澄子

*裁判所サイト公表 2011.4.7
*キーワード:音楽著作権、委嘱楽曲、買取り、使用料、制作費、著作権譲渡、信託契約、ジャスラック

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■事案

昼ドラのオープニングBGM楽曲制作委託が買取り(著作権譲渡)だったかどうかが争点となった事案

原告:作曲家ら
被告:TBSテレビ

楽曲名:「愛の劇場」オープニングテーマ
     ―ホワイトチャイム―

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 民法703条、704条

1 原告らは、被告に対して本件使用を許諾したか

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■事案の概要

『原告らが,同人らの作曲した楽曲が株式会社東京放送(以下「東京放送」という。)の制作するテレビ番組のオープニングテーマとして長期間にわたって使用されたものの,一部の期間については原告らの許諾を得ずに上記使用がされたと主張して,会社分割により東京放送の権利義務を包括的に承継した被告に対し,上記楽曲の使用料相当額の不当利得の返還及びこれに対する民法704条所定の法定利息の支払を求めた事案』(2頁)

<経緯>

H15.11 東京放送がケネック社にドラマオープニング用CG映像制作を依頼
H15.12 ケネック社が原告Aに映像への音付け制作依頼
        原告A、Bが本件楽曲をケネック社に納品
H16.1  東京放送が本件楽曲を平成21年3月まで使用
H18.4  原告らが本件楽曲の著作権を日音に譲渡
        日音がジャスラックに信託譲渡
        日音はジャスラックから受領した使用料を原告らに再分配
H21.2  原告Aが被告に対して使用料支払い通知
H21.3  被告が原告Aに対して回答
H21.4  被告は会社分割により東京放送から権利義務を包括承継

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■判決内容

<争点>

1 原告らは、被告に対して本件使用を許諾したか

原告らが制作した楽曲の著作権について、原告らが音楽出版社である日音との間で著作権譲渡契約を締結した平成18年4月1日以前の期間(平成16年1月1日から18年3月31日)の楽曲使用料の支払いを被告TBSテレビに対して原告らは求めました(10頁以下)。

この点について裁判所は、
(1)東京放送とケネック社との間で権利処理されたうえで納品することが確認されている
(2)原告らは、楽曲使用の事実を知りながら5年間使用料を請求していない
(3)7秒程度のごく短い楽曲であり、20万円という金額は、使用料を含むものと考えても特段不自然ではない
(4)ジャスラックへの信託譲渡の経緯は着メロ配信のためで、東京放送が原告らに使用料の支払義務があることを前提としたものではなかった

などの諸点から、原告らは20万円を対価として本件オープニング映像に使用することを許諾していたとして、原告らの使用料の請求を認めていません。

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■コメント

2009年に40年の歴史の幕を閉じたテレビドラマシリーズ「愛の劇場」のオープニング楽曲の委嘱制作を巡って争われた事案です。
当初、依頼主である映像制作会社が買取り(とっぱらい)を念頭に取り扱っていた楽曲を、途中から着メロ配信処理を目的に音楽出版社からジャスラック経由の使用料分配のルートに変更、作曲家らに使用料が分配されるようになったことから、著作権の有り様について話がこじれました。

原告側の主張によると、音制作の内容としては、「候補曲4曲の作曲及び演奏,これらの候補曲の中からクライアントが選択した1曲についての,音色・楽器違いの5バージョンの制作,当該5バージョンの中から,クライアントが選択した最終候補である2バージョンについてのマスタリング作業,最終的に選択された1バージョンについてのMA作業(CG,音楽,ナレーションを合わせて編集する作業)への立会い」(6頁以下)といったものだったようですが、この作業がどの程度の量なのか、20万円では、手を動かした分(制作費)だけで、使用料までは含まれていない、という主張も一方では成り立つわけですが、詳細はわかりません。

そこで、音制作の現場の作家さん(作曲、編曲、実演、原盤制作)に本事案の感想を聞いてみました。
BGMなのか「ジングル(サウンドロゴ)」なのかの認識でも違うし(後者だと「買取り」が少なくない)、外部演奏者や外部スタジオを使ったかどうかによって制作費も違ってくる、また、媒体によって使用頻度も違う、さらに、編集立ち会いなどは、別途ディレクション料がある場合かどうか様々、作家の知名度、ということで、買取りか否かは、ケースバイケースのようです(1度限りのイベント使用目的なら20万円での買取りも現場感覚的にはおかしくない)。

私の取引先の音制作会社の例でいえば、有名どころの作家さんのCF委嘱楽曲であれば、委嘱費1000万、対して無名の作家さんだとあとから買取りの合意書を取り付けることもしばしば。音制作会社の権利処理調整の力量に掛かっています。

当初の楽曲買取りの権利関係の実態に合わせるのであれば、映像制作会社のケネック社を著作権者として、日音との間で使用料を分配してしまえば良かったわけで(原告らはジャスラックとは無信託関係。作品コード132−8226−3)、作曲家らへの配慮が逆に作曲家らに著作権があるように誤解させる、中途半端な結果を生じさせてしまっています。

楽曲委嘱制作契約が著作権譲渡の趣旨を含むのかどうか、双方にとって最初が肝心であることを印象付ける事案でした。

なお、原告のお一人は、ギタリストで独自の音楽理論で教育活動にも取り組まれ、特許出願されておいでです(特許公開2010−91993 発明の名称:音楽教習部材、音楽教習具、音楽教習装置、作曲支援具、作曲支援装置及びコンピュータプログラム)。
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2011年04月06日

「月刊ネット販売」編集著作物事件(対著者)(控訴審)−著作権 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「月刊ネット販売」編集著作物事件(対著者)(控訴審)

知財高裁平成23.3.22平成22(ネ)10059損害賠償請求控訴事件PDF

裁判長裁判官 塩月秀平
裁判官      真辺朋子
裁判官      田邉 実


*裁判所サイト公表 2011.3.29
*キーワード: 編集著作物性、一般不法行為、信用毀損

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■事案

月刊誌に掲載された図表の編集著作物性や複製行為の一般不法行為性の成否が争点となった事案の控訴審

原告(控訴人) :出版社
被告(被控訴人):執筆者

原告雑誌:月刊誌「月刊ネット販売」2007年9月号
被告執筆書籍:「図解入門業界研究 最新 通販業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本」

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法12条1項、21条

1 各原告図表の著作物性について
2 被告が本件書籍の表題中に「カラクリ」という言葉を使用したこと等が、原告の名誉・信用を毀損する不法行為であるといえるか

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■事案の概要

『 (1) 本件書籍中に掲載された各被告図表は各原告図表の複製物に当たり,被控訴人が本件書籍中に各被告図表を掲載した行為は,各原告図表に係る控訴人の著作権(複製権)を侵害する行為であるか,仮に,各原告図表が著作物であると認められないとしても,原告の財産権を侵害する行為であり,被控訴人には不法行為に基づく損害賠償として250万円の支払義務がある。
 (2) 被控訴人が,本件書籍の表題中に「カラクリ」という言葉を使用し,かつ,その著者の肩書きとして「株式会社通販新聞社,通販新聞・執行役編集長,月刊ネット販売・編集人」と,その経歴として「通販新聞社に入社し,記者を経て3年前から現職」と表記したことにより,控訴人の名誉・信用が毀損されたものであり,被控訴人には不法行為による損害賠償として250万円の支払義務がある。』(2頁)とする著作権侵害及び名誉・信用毀損等を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求訴訟

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■判決内容

<争点>

1 各原告図表の著作物性について

各原告図表が編集著作物(著作権法12条1項)に該当するかどうかについて、例えば、原告図表1については、原告がパソコン及び携帯とに限定した項目を中心として、横列(「増減率(%)」、「携帯売上高(百万円)」、「月刊アクセス数(PV:万)」、「累積会員数」、「決算期」、「主要商材」)を有機的に結び付けた図表は類例がなく、原告の創作性の表れであると主張した点に関して、控訴審は、売上高は基本的な営業情報であり、『項目を図表の中心として選定することは,特段の創意工夫なくなしうるありふれた発想に基づくものというべきであって,創作性があるとは認めがたい』と判断しています(8頁以下)。

結論として、原告各図表はいずれも特段の創意工夫なくなしうるありふれた発想に基づくものであり、創作性(著作物性)があるとは認められていません。

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2 被告が本件書籍の表題中に「カラクリ」という言葉を使用したこと等が、原告の名誉・信用を毀損する不法行為であるといえるか

本件書籍での「カラクリ」という言葉の使用について、控訴審は『表題を含め書籍の表紙の記述の意味内容が他人の客観的な信用や社会的評価を低下させるものであるかどうかは,当該記述についての一般読者の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従って判断すべきである。』(10頁)としたうえで、『通信販売業界の業者らに不快と感じたり不適切であると考える者がいるとしても,それは,自身だけが不快と感じている実態を踏まえてのうがった印象にすぎず,一般読者の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従って判断した場合には,本件書籍の表題が控訴人の主張するような悪印象を与えるものと認められない』などとして、原告の主張を認めていません。

結論として、名誉・信用毀損の点を含めすべての不法行為の成立が否定されています。

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■コメント

原審と同様、控訴審でも各原告図表の編集著作物性(著作権法12条1項)が否定され、不法行為の成立も否定されています。

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■過去のブログ記事

2010年6月30日記事 原審

・関連訴訟
2010年2月12日記事 「月刊ネット販売」編集著作物事件(対出版社)
2010年3月15日記事 「週刊通販新聞」編集著作物事件
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