知財判決速報2010

2010年09月13日

パンドラTV事件控訴審−著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

パンドラTV事件控訴審

知財高裁平成22.9.8平成21(ネ)10078著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官      本多知成
裁判官      荒井章光

*裁判所サイト公表 2010.9.10
*キーワード:侵害主体性、カラオケ法理、信義誠実の原則、プロバイダ責任制限法、損害論

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■事案

動画投稿・共有サイトの違法主体性が争われた事案の控訴審

原告(被控訴人):JASRAC
被告(控訴人) :株式会社パンドラTV(旧商号)
           代表取締役X

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法21条、23条、114条の5、プロバイダ責任制限法3条、著作権等管理事業法16条、民法1条2項


1 侵害行為の主体性
2 控訴人会社の損害賠償責任の有無
3 控訴人Xについての不法行為の成否
4 損害額


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■事案の概要

「音楽著作物の著作権等管理事業者である被控訴人が,動画投稿・共有サイトを運営する控訴人会社(旧商号・株式会社パンドラTV)が,運営主体となって提供する本件サービスにおいて,控訴人会社が開設した本件サイトのサーバに,各ユーザが投稿した被控訴人の管理する本件管理著作物の複製物を含む動画ファイルを蔵置し,これを各ユーザに送信していることが,本件管理著作物の著作権(複製権及び公衆送信権(送信可能化を含む。)を侵害し,かつ,不法行為が成立すると主張して,(1)控訴人会社に対しては,著作権(複製権及び公衆送信権(送信可能化を含む。))に基づいて,本件管理著作物を,本件サーバの記憶媒体に複製し又は公衆送信することの差止めを求めるとともに,(2)控訴人会社及びその代表者である控訴人Xに対しては,不法行為(著作権侵害)に基づいて,過去の侵害に対する損害賠償金及びこれに対する遅延損害金並びに将来の侵害に対する損害賠償金の連帯支払を求める事案」(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 侵害行為の主体性

控訴人会社(代表取締役X)は、動画投稿・共有サイト「パンドラTV」(その後「TVブレイク」)を開設、動画配信サービスを運営していましたが、ユーザのアップロードした動画ファイルにジャスラック(日本音楽著作権協会)が管理する音楽著作物が多数含まれていたことから、管理著作物の複製権、公衆送信権侵害性が争点となりました。
外形的には複製又は送信可能化をユーザが行っていることから、控訴人会社が直接関与していないとして侵害行為の主体性が争点となりました(23頁以下)。

結論としては、原審同様、控訴人会社の著作権侵害主体性を認め、控訴人会社に対する複製又は公衆送信の差止請求を肯定しています。

なお、控訴人会社は、控訴審で新たな補充主張として『本件サービスと同様のサービスを提供している事業者に対しては,適法な事業と認めて許諾契約を締結しながら,控訴人会社に対しては,明らかに不当な条件を提示し,契約を拒んだ』などとして著作権等管理事業法16条(利用の許諾の拒否の制限)、民法1条2項の観点から反論を展開しましたが、裁判所に容れられていません(28頁以下)。

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2 控訴人会社の損害賠償責任の有無

原審同様、控訴人会社の著作権侵害主体性、発信者性(プロバイダ責任制限法3条1項)が肯定され損害賠償責任が肯定されています(32頁以下)。

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3 控訴人Xについての不法行為の成否

原審同様、控訴人会社代表取締役Xは著作権侵害行為の主体と評価されています(34頁)。

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4 損害額

原審同様、8993万円余りの損害額が認定されています(34頁以下)。

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■コメント

原判決維持の判断となっています。

ところで、ツイッターに被告側の意見が述べられていました(ジャストオンライン株式会社)。

「対JASRACの裁判も、2008年8月からなので、丸2年が経った。サービス始めた当初、国内には決まりが無かった。JASRACが包括契約を出したのは、1年後。契約を断った事もない。削除要求を断った事もない。他の動画サービスと違うのは、数千万円以上の上納金を納めなかった事だ。 」
「金払えば見逃してやる。というのがJASRACのやり方。こんなんで資金のない企業が新しいチャレンジできるか。「儲かったらよこせ」というのならば筋は通る。そりゃ、払いますよ。「金払えば見逃してやる」というのは強いものには弱く弱いものに強いだけだ。 」
(2010.9.9)

「対JASRAC裁判。上告するなら2週間以内。次は最高裁か。どうしよう。損害賠償金額によって印紙代が決まるんだけど、損害賠償金額が9,000万円ってバカ高い金額ゆえに、印紙代も高いわ。 」
「上告しないと、Webサイト運営会社が全責任を負うって事が確定する。個人の情報発信を提供するWebサービスが主流になっていく中で、全コンテンツについて掲載の良し悪しをWebサイトが判断できるものなのだろうか。アーティスト自身が音楽のプロモーションを行う事すら出来ないじゃないか。 」
「インディーズのアーティストや作品は、それが、どこの著作権に抵触しているのかさえ、Webサイト側は分からんよ。レコード会社がアップした所属インディーズアーティストのビデオとか。有名じゃないから配信したいのに、JASRACと契約しても投稿サイトに流せないのだからメリットない。 」
「JASRACと契約しても動画投稿サイトはオリジナル音源の配信は認められていない。 JASRACにまとまった金を払えば、包括契約が出来てオリジナル音源の配信も目をつぶってもらえる。やっぱり、これっておかしいよな。 」
(2010.9.10)

発言の趣旨が不明の部分もありますが、「新しいことをやっていきたかった」との思いは伝わってきます。
ただ、そうした新規ビジネスもジャスラックなど著作権管理団体との権利処理が前提であることは自明のことで、被告側も交渉や提案を重ねる努力を続けていましたが、折り合いが付きませんでした。

控訴審では著作権等管理事業法の観点からの反論も被告によりされましたが(4頁以下)、被告の動画投稿サイトでのジャスラック管理著作物の著作権侵害率が控えめに見積もっても5割(30頁、33頁)という事実を前にして、控訴審でも被告側有責の判断を覆すまでには至りませんでした。

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■過去のブログ記事

原審記事(2009.12.19)パンドラTV事件

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■参考サイト

ジャスラックプレスリリース(2010年9月8日)
動画投稿(共有)サイトにおける著作権侵害 控訴審においても侵害差止めと損害賠償請求を認容

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2010年08月17日

「北朝鮮の極秘文書」図書館蔵本事件(控訴審)−著作権 損害賠償等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「北朝鮮の極秘文書」図書館蔵本事件(控訴審)

知財高裁平成22.8.4平成22(ネ)10033損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官      本多知成
裁判官      荒井章光

*裁判所サイト公表 2010.8.6
*キーワード:貸与権、侵害みなし行為、著作者人格権、一般不法行為性

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■事案

大学図書館などで収蔵している韓国版海賊本の閲覧、謄写、貸与が著作権や著作者人格権を侵害するかどうかが争われた事案の控訴審

原告(控訴人) :フリージャーナリスト
被告(被控訴人):大学ら

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法26条の3、113条1項2号、19条、20条、民法709条

1 本案前の抗弁の成否
2 著作権侵害の成否
3 著作者人格権侵害の成否
4 差止請求等の可否
5 一般不法行為の成否・損害額

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■事案の概要

『控訴人が,大韓民国の出版社である高麗書林が出版した韓国語の書籍である原判決別紙文献目録記載2の本件韓国語著作物が控訴人による同目録記載1の控訴人著作物に係る著作権を侵害するものであることを前提として,大学又は日韓の人的・文化交流事業を目的とする財団法人である被控訴人らに対して』差止請求、損害賠償請求等を行う事案(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本案前の抗弁の成否

被告大学側は、原告が一時は挙げていた複製権侵害(21条)に基づく主張を撤回し、貸与権侵害(26条の3)のみを原審で主張していたにもかかわらず、控訴審で複製権侵害等を主張することは時機に後れた攻撃防禦方法の提出に当たるとして、その却下を求めました。
しかし、裁判所は主張の追加により著しく訴訟手続を遅延させることや訴訟の完結を遅延させることになるともいうことはできないとして、大学側の主張を採用していません(9頁以下)。

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2 著作権侵害の成否

(1)貸与権、複製権侵害の成否

原審同様、貸与権侵害は認められていません。また、図書館等での複製は、31条1項(図書館等における複製)の権利制限規定に該当し違法なものということはできないとして複製権侵害も否定しています(11頁以下)。

(2)113条1項2号(侵害みなし行為)該当性

原審では、原告が別訴において本件韓国語著作物の著作権侵害性を争っているという事情を被告らは認識してはいるものの、本件韓国語著作物を原告の著作権を侵害する行為によって作成されたものであると知って所持しているものと認めることはできないとして、侵害みなし行為性(著作権法113条1項2号)の点につき裁判所は「付言」として否定していました。

控訴審では、「情を知って」の意義について、

著作権法113条1項2号の「情を知って」とは,取引の安全を確保する必要から主観的要件が設けられた趣旨や同号違反には刑事罰が科せられること(最高裁平成6年(あ)第582号同7年4月4日第三小法廷決定・刑集49巻4号563頁参照)を考慮すると,単に侵害の警告を受けているとか侵害を理由とする訴えが提起されたとの事情を知るだけでは,これを肯定するに足らず,少なくとも,仮処分,判決等の公権的判断において,著作権を侵害する行為によって作成された物であることが示されたことを認識する必要があると解されるべき』(15頁以下)

とした上で、本件においては本判決以前にそのような公権的判断が示された事情はうかがわれないとして、侵害みなし行為性を否定しています。

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3 著作者人格権侵害の成否

原審同様、著作者人格権侵害性(20条、19条1項)の成立も否定されています(16頁以下)。

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4 差止請求等の可否

大学側が直接的に侵害する主体と認められる者ではなく、また113条の侵害みなし行為に該当しない著作権等侵害の幇助者にすぎない者への差止等請求は法的安定性の点から認められないと判断しています(17頁)。

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5 一般不法行為の成否・損害額

原審同様、一般不法行為(民法709条)の成立が否定されています(17頁)。

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■コメント

原審の判断が維持された結果となっています。

侵害みなし行為(113条1項2号)の「情を知って」知情要件については、直接侵害者の事案としてはシステムサイエンス事件(東京地裁平成7.10.30)、ラストメッセージIN最終号事件(東京地裁平成7.12.18)、ダリ展覧会カタログ事件(東京地裁平成9.9.5)、四谷大塚四進レクチャー事件(東京高判平成10.2.12)など、仮処分決定や未確定の第一審判決等の中間的判断を含めた公権的判断の存在を知っている点に言及されたものがありますが、今回の事案のように幇助者的関わりでの知情要件として、知財高裁が公権的判断の認識を要求した点が参考になるものと思われます。

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■過去のブログ記事

原審に関する記事(2010年4月10日)
「北朝鮮の極秘文書」図書館蔵本事件

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■参考判例

著作権法違反、猥せつ図画頒布、同所持事件(海賊版ビデオ事件)
最高裁平成7.4.4平成6(あ)582決定PDF

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■参考文献

三山裕三『第8版 著作権法詳説-判例で読む16章』(2010)494頁
著作権法コンメンタール3』(2009)404頁以下
知的財産法最高裁判例評釈大系3』(2009)156頁以下
四谷大塚四進レクチャー事件(東京地裁平成8.9.27判決)について、
辻田芳幸「著作権法113条のいわゆる「知情の要件」に関する一事例」『清和法学研究』(1997)3巻2号132頁以下
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2010年08月10日

北見工業大学共同研究報告書職務著作事件(控訴審)−著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

北見工業大学共同研究報告書職務著作事件(控訴審)

知財高裁平成22.8.4平成22(ネ)10029著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

*裁判所サイト公表 2010.8.6
*キーワード:職務著作、創作性、一般不法行為性

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■事案

環境調査に関する産学共同研究報告書の職務著作(法人著作)性、一般不法行為性が争点となった事案の控訴審

原告(控訴人) :北見工業大学 准教授
被告(被控訴人):北見工業大学

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法15条1項、2条1項1号、民法709条

1 著作権及び著作者人格権に基づく請求
2 不法行為に基づく請求

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■事案の概要

『被控訴人が,原判決別紙研究報告書目録記載4ないし6の本件各平成16年度報告書及び同目録記載7ないし9の本件各平成17年度報告書を作成させ,「国立大学法人北見工業大学」の名義で印刷発行し,北見市等へ頒布した行為について,控訴人が,(1)控訴人が同目録記載1ないし3の本件各平成15年度報告書に関する著作権及び著作者人格権を有し,被控訴人の上記行為が控訴人の著作権(複製権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害する行為である旨主張して,被控訴人に対し,著作権法112条1項,2項に基づき,同目録記載4ないし9の各研究報告書の発行又は頒布の差止め並びに廃棄を求め,併せて,民法709条に基づき,著作者人格権(同一性保持権)侵害による損害賠償として1100万円(慰謝料1000万円及び弁護士費用相当損害金100万円)の支払を求め,(2)予備的に,本件各平成15年度報告書に著作物性が認められないとしても,被控訴人の上記行為は著しく反社会的な行為であり,不法行為を構成すると主張して,民法709条に基づき,損害賠償として1100万円の支払を求める事案』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 著作権及び著作者人格権に基づく請求

原審同様、本件各平成15年度報告書について被告大学側に法人著作(著作権法15条1項)の成立が肯定されており、原告の著作権及び著作者人格権に基づく請求は認められていません(21頁以下)。

なお、「付言」として、本件各平成15年度報告書の原判決別紙研究報告書対照表(1)ないし(3)記載の各部分の対比に関して、事象や用語等についての説明などであって、ありふれた説明にすぎない(2条1項1号)として、この点からも複製権侵害や同一性保持権侵害の対象とはならないと判断しています(29頁)。

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2 不法行為に基づく請求

原審同様、被告の報告書の作成頒布行為について、一般不法行為(民法709条)を基礎付ける違法性があるとは認められていません(29頁)。

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■コメント

原審同様、研究報告書の作成頒布行為の著作権侵害、一般不法行為の成立が否定された結果となっています。
原告研究者側は、大学の研究者が有する学問の自由の保障の観点から職務著作の適用についてより慎重かつ厳格な検討が要請されると原審と同じく主張しましたが、控訴審裁判所でも容れられていません。

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■過去のブログ記事

原審の記事(2010年2月26日)
北見工業大学共同研究報告書職務著作事件

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■追記2010.8.17

企業法務戦士の雑感
[企業法務][知財]大学における研究活動と職務著作(上)(2010.8.12付)
[企業法務][知財]大学における研究活動と職務著作(下)(2010.8.14付)
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2010年08月05日

女子プロレスCS放送事件−著作権 報酬金請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

女子プロレスCS放送事件

東京地裁平成22.7.30平成20(ワ)34464報酬金請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官      大西勝滋
裁判官      石神有吾

*裁判所サイト公表 2010.8.3
*キーワード:実演家報酬請求権、ライセンス契約

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■事案

女子プロレスの映像素材の利用について無償提供の合意があったかどうかが争点となった事案

原告:写真集制作業者
被告:フジテレビ、スカパー

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法94条2項、民法423条1項

1 本件各映像素材の無償の放送利用の合意の成否

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■事案の概要

『全日本女子プロレス興業株式会社(以下「全女」という。)に対して前払金返還請求権を有する債権者である原告が,全女との間の放送契約に基づき,全女が主催した女子プロレス興行を中継するテレビ番組を制作し,これを地上波で放送した被告株式会社フジテレビジョン(以下「被告フジテレビ」という。)及び上記番組を収録した映像素材(録画物)を編集して通信衛星デジタル放送(通信衛星(CS)を利用したデジタル放送。以下「CS放送」という。)をした被告株式会社スカパー・ブロードキャスティング(以下「被告スカパー」という。)に対し,(1)全女は被告フジテレビとの間の放送契約において上記女子プロレス興行を地上波で放送することを許諾したが,CS放送することについては許諾していない,(2)女子プロレス興行は女子レスラーによる実演(著作権法2条1項3号)に当たり,全女は実演家である女子レスラーから実演家の放送権(著作権法92条1項)及び報酬請求権の包括的譲渡を受けていたところ,被告スカパーによる上記番組のCS放送は,実演を地上波で放送することの許諾を得た被告フジテレビから録画物の提供を受けてする放送(著作権法94条1項2号)に当たるから,当該実演がCS放送されたことに基づいて実演家の被告フジテレビに対する著作権法94条2項所定の相当な額の報酬請求権が発生し,これが全女に帰属するなどと主張し,民法423条1項の債権者代位権に基づき,全女に代位して,被告らに対し,女子レスラーの実演がCS放送されたことに基づく著作権法94条2項所定の相当な額の報酬請求(被告スカパーに対しては被告フジテレビの報酬支払債務の併存的債務引受に基づく。)又は全女が有する女子プロレス興行の興行権の内容を構成する「放送許諾権」侵害の共同不法行為による損害賠償(被告フジテレビにおいては放送契約の債務不履行に基づく損害賠償を含む。)として160万円及び遅延損害金の連帯支払を求めた事案』(2頁以下)

<経緯>

H14.3 フジテレビでの女子プロレス興行の地上波放送終了
H14.3 全女とサムライTVがCS放送に関する基本契約締結
H15.4 サムライTVがフジテレビの映像素材をCS放送
H17.1 全女と原告が写真集及びDVD出演契約締結、前払金160万円を全女に支払い
H17.4 全女が興行活動停止
H20.8 原告が全女に対して債務不履行解除
H20.10スカパーがサムライTVを吸収合併
       原告が全女に返還請求訴訟提訴、請求認容

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■判決内容

<争点>

1 本件各映像素材の無償の放送利用の合意の成否

女子プロレスラーBの写真集やDVDへの出演契約が不履行解除され、また全日本女子プロレス興行(全女)が無資力となったことから、写真集制作業者(原告)は全女に対する前払金160万円の返還請求権を被保全債権として、全女の放送会社に対する報酬請求権に代位して放送会社らに請求しました。
原告は、全女は被告フジテレビとの間の放送契約において女子プロレス興行を地上波で放送することを許諾したものの、CS放送することについては許諾していないなどとして、全女保有の女子プロレスラーの実演家報酬請求権(著作権法94条2項)の存在を根拠に代位請求を行いました(17頁以下)。

これに対し、被告らは、被告フジテレビが保管している全女主催の過去の女子プロレス興行を中継した映像素材(テープ)を利用してCS放送することについて、全女側と無償とする旨の合意があったと反論しました。

無償提供の合意の成否について、裁判所は、契約書その他の書面がないものの、証人(全女の渉外業務担当者)の供述から、
(1)女子プロレスの人気が低迷しており、過去作品を放送することで人気回復につながる
(2)テープの維持費や保管費等は放送会社側で負担する
という無償での提供の交渉内容、また、
(3)CS放送後、全女から何らかの異議が述べられるなどしたという経緯が認められない

ということから、全女と放送会社との間で映像素材の無償提供の合意があったと認定しています。

結論として、実演家(女子プロレスラー)の報酬請求権は発生せず、また、被告らの行為が不法行為等にあたることもないとして原告の主張を否定しています。

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■コメント

平成17年に解散興行を後楽園ホールで行って興行活動を停止した全日本女子プロレス興行(全女)は無資力であったことから、写真集制作業者は契約前払金160万円の返還請求権を被保全債権として、全女の権利に代位して放送会社らに請求しましたが、この代位債権の成立自体が認められなかった事案です。

ビューティ・ペア(ジャッキー佐藤、マキ上田)など懐かしい名前も出てきて(18頁)、当時の女子プロレスブームを思い出します。

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2010年08月03日

三菱信販商号使用差止事件(控訴審)−不正競争防止法 商号使用禁止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

三菱信販商号使用差止事件(控訴審)

知財高裁平成22.7.28平成22(ネ)10021商号使用禁止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官      清水節
裁判官      古谷健二郎

*裁判所サイト公表 2010.8.2
*キーワード:著名表示冒用行為、商号、黙示の許諾、権利失効の抗弁

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■事案

「三菱」標章を会社の商号に使用した行為の著名表示冒用行為性が争点となった事案の控訴審

原告(被控訴人):三菱商事株式会社ほか
被告(控訴人)  :三菱信販株式会社


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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項2号、商標法36条

1 著名表示冒用行為性(不正競争防止法2条1項2号)
2 被告商号の使用に対する黙示の許諾の有無及び権利失効の抗弁の成否

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■事案の概要

『いわゆる三菱グループに属する被控訴人ら(一審原告ら)が,同グループに属せずかつ下記のとおり「三菱信販株式会社」の商号(被告商号)による商業登記を有する控訴人(一審被告)に対し,不正競争防止法2条1項1号(周知表示との混同)・2号(著名表示の使用)又は被控訴人三菱商事の原判決商標権目録記載の商標権(ただし,原判決26頁6行の「指摘役務」を「指定役務」と改める。)侵害を理由とする各差止請求として,不正競争防止法3条(一審原告全員)又は商標法36条(一審原告三菱商事のみ)に基づき,被告商号の使用禁止と上記商業登記の商号登記部分の抹消登記手続を求めた事案』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 著名表示冒用行為性(不正競争防止法2条1項2号)

「三菱信販株式会社」を商号とする会社(昭和43年5月23日設立)に対して、三菱グループに属する4社(一審原告、被控訴人)が商号の使用差止、商号登記の抹消登記手続などを求めました。
被告会社の商号使用の著名表示冒用行為性(不正競争防止法2条1項2号)について、控訴審においてもその成立を認容した原審の判断を維持しています(6頁)。

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2 被告商号の使用に対する黙示の許諾の有無及び権利失効の抗弁の成否

控訴審では、主に被告商号の使用に対する黙示の許諾の有無及び権利失効の抗弁の成否が争点となりました(6頁以下)。

被告は、昭和63年当時、取引関係などから原告らが被告の存在及び被告商号の使用を認識していたと反論しましたが、裁判所に容れられていません。

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■コメント

控訴審でも原審の判断が維持された結果となっています。

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■過去のブログ記事

2010年4月8日記事三菱信販商号使用差止事件(原審)

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2010年08月02日

「シルバーヴィラ」商標権侵害事件−不正競争防止法 商標権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「シルバーヴィラ」商標権侵害事件

東京地裁平成22.7.16平成20(ワ)19774商標権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀滋
裁判官      坂本三郎
裁判官      岩崎慎

*裁判所サイト公表 2010.7.26
*キーワード:営業主体誤認混同行為、先使用権、慣用商標、権利濫用

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■事案

老人介護施設の名称を巡って標章の周知性、先使用、慣用商標(普通名称)性などが争点となった事案

原告:有料老人ホーム経営会社
被告:介護施設運営医療法人

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号、19条1項1号、3号、商標法32条、26条1項4号、民法1条3項

1 商標権侵害:原告登録商標と被告各標章の類否
2 商標権侵害:指定役務との類似性
3 商標権侵害:先使用(商標法32条)の成否
4 商標権侵害:原告登録商標が慣用商標といえるか
5 商標権侵害:被告の過失
6 不正競争防止法違反:原告標章の周知性
7 不正競争防止法:原告登録商標と被告各標章の類否
8 不正競争防止法:誤認混同のおそれの有無
9 不正競争防止法:営業上の利益の侵害の有無
10 不正競争防止法:先使用(19条1項3号)の成否
11 不正競争防止法:原告登録商標が慣用商標といえるか
12 原告の請求が権利の濫用にあたるか
13 差止請求について
14 損害賠償請求について

   --------------------

■事案の概要

『登録商標を「シルバーヴィラ」とする商標権を有し,かつ,「シルバーヴィラ向山」との名称の老人ホームを運営する原告が,「シルバーヴィラ揖保川」及び「シルバーヴィラ居宅介護支援事業所」(以下,これらを併せて「被告各標章」という。)の名称で介護保険に係る施設を開設・運営する被告に対し,(1)被告各標章の使用は,原告の商標権を侵害し,又は侵害するとみなされる(商標法37条1号)として,商標法36条に基づく「シルバーヴィラ」の標章の使用の差止め並びに民法709条及び商標法38条3項に基づく損害賠償金1160万3280円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年8月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,(2)被告各標章の使用は,不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号に該当するとして,不競法3条に基づく「シルバーヴィラ」の標章の使用差止め(商標権に基づく「シルバーヴィラ」の標章の使用差止めと選択的併合)を求める事案』(2頁)

<経緯>

S56 原告が有料老人ホーム「シルバーヴィラ向山」営業
H9  被告が介護老人保健施設「シルバーヴィラ揖保川」開設
H12 原告が「シルバーヴィラ」(標準文字)商標出願、登録(4921381号)

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■判決内容

<争点>

1 商標権侵害:原告登録商標と被告各標章の類否
2 商標権侵害:指定役務との類似性
3 商標権侵害:先使用(商標法32条)の成否
4 商標権侵害:原告登録商標が慣用商標といえるか
5 商標権侵害:被告の過失

商標権侵害の各論点について、結論としては、商標権侵害が肯定されています(24頁以下)。
なお、過失については、原告商標権に係る商標公報発行日である平成18年2月14日以降であると認定されています(35頁以下)。

   ------------------------------------

6 不正競争防止法違反:原告標章の周知性

不正競争防止法2条1項1号(営業主体誤認混同行為性)該当性について、まず周知性の成否が検討されています。
原告が昭和56年以降、東京都練馬区で原告施設を運営し、新聞記事、雑誌記事等に取り上げられ、都市型老人ホームの草分け的存在等として紹介されていることなどから、被告が「シルバーヴィラ揖保川」を開設決定した平成8年7月よりも前に全国の需要者の間に広く認識されていたと判断されています(36頁以下)。

   ------------------------------------

7 不正競争防止法:原告登録商標と被告各標章の類否

原告登録商標と被告各標章の類否について、日本ウーマン・パワー事件(最高裁昭和58年10月7日判決)に言及した上で、原告標章の要部を「シルバーヴィラ」と認め、被告各標章と対比。結論として類似性を肯定しています(42頁以下)。

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8 不正競争防止法:誤認混同のおそれの有無

両施設とも老人の養護に関する役務を提供していることから、両施設の運営主体に営業上の関係が存するものと誤信させるものと認められています(44頁以下)。

   ------------------------------------

9 不正競争防止法:営業上の利益の侵害の有無

営業上の利益の侵害性について、被告は入所者の居住地域の違いなどがあることを理由に侵害性がないと反論していました。しかし、原告施設が全国的に周知と認められ、東京近郊の居住者に入居者が限定されるということはできない等として侵害性(少なくともそのおそれ)が肯定されています(46頁以下)。

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10 不正競争防止法:先使用(19条1項3号)の成否

被告が被告各標章の使用を開始した時期は平成9年4月であり、それ以前から原告標章は周知性を獲得していたとして、先使用(19条1項3号)該当性が否定されています(47頁以下)。

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11 不正競争防止法:原告登録商標が慣用商標といえるか

「シルバーヴィラ」が使用された例が全国でも7件にすぎないこと、原告は「シルバーヴィラ」標章を使用している介護老人保険施設等に対してその使用の中止を求める等しており、自他役務識別標識としての機能が希釈化して、慣用商標化しているとは認めることはできないと判断しています(35頁、48頁)。

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12 原告の請求が権利の濫用にあたるか

被告は原告の主張を権利濫用であると反論していますが、裁判所に容れられていません(48頁以下)。

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13 差止請求について

商標法36条1項、不正競争防止法3条1項に基づく被告各標章の使用の差止請求が認められています(50頁以下)。

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14 損害賠償請求について

原告は、商標権侵害に限定して商標法38条3項の規定による使用料相当額の損害賠償を請求しています(52頁以下)。
結論としては、被告各施設の売上額の0.5%を原告登録商標の使用料相当額と認定しています(576万7557円)。

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■コメント

「シルバーヴィラ」というと、介護施設にありがちで、普通名称のような印象ですが、そうではないとの裁判所の判断がされています。

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2010年07月28日

「入門漢方医学」書籍表紙デザイン翻案事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「入門漢方医学」書籍表紙デザイン翻案事件

東京地裁平成22.7.8平成21(ワ)23051著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官      山門優
裁判官      柵木澄子

*裁判所サイト公表 2010.7.26
*キーワード:創作性、応用美術、複製権、翻案権、同一性保持権、出版社の責任

   --------------------

■事案

医学書の表紙デザインの翻案や同一性保持権侵害の成否が争点となった事案

原告:医学専門図書出版社
被告:医学専門図書出版社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、27条、20条、114条3項、115条、118条1項

1 原告図版は著作権法上の著作物か
2 被告図版は原告図版を複製又は翻案したものか
3 著作者人格権侵害の成否
4 被告の故意・過失の有無
5 差止請求の可否
6 損害論
7 謝罪広告の要否

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■事案の概要

『原告が,被告書籍の表紙に用いられた被告図版は原告図版のデザインを無断で複製又は翻案,改変したものであるなどと主張して,被告に対し,(1)著作権(複製権又は翻案権及び譲渡権)に基づき,被告図版を表紙に用いて被告書籍を印刷,出版,販売,頒布することの差止め,(2)著作権(複製権又は翻案権及び譲渡権)及び著作者人格権(同一性保持権)侵害の不法行為に基づく損害賠償として,760万1134円(著作権侵害について460万1134円,著作者人格権侵害について300万円)及びこれに対する不法行為の後である平成21年7月18日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,(3)著作権法115条又は民法723条に基づき,名誉又は声望を回復するための適当な措置として別紙謝罪広告目録記載の謝罪広告の掲載を求めた事案』(2頁)

<経緯>

H14.12 原告書籍発行
H20.12 被告書籍発行
H21.2  原告が被告に内容証明書通知、被告が回答
H21.5  原告が仮処分申立て、差止め仮処分決定
        原告が間接強制申立て、申立て認容
H21.6  被告が在庫50冊の表紙を廃棄

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■判決内容

<争点>

1 原告図版は著作権法上の著作物か

まず、原告書籍表紙デザインの著作物性(著作権法2条1項1号)が争点となっています(19条)。
この点について裁判所は、

原告図版は,単に,正方形と線(縦棒,横棒)を漫然と並べたにすぎないものではなく,(1)大小の正方形及び太さの異なる縦横の棒の配置ないし配色,(2)書名,編者名及び出版社名の配置,字体ないし文字の大きさ,(3)小さな正方形に描かれた木の葉や木の実等のイラスト,そこにちりばめられた丸い粒など,の具体的な表現方法において,制作者であるaの思想又は感情が創作的に表現されたものであると認められる』(21頁)

として、その著作物性を肯定しています。
なお、被告は、原告図版が書籍の表紙デザインとして用いられることから、応用美術であるとして反論していましたが、裁判所は純粋美術に当たるとして、被告の反論を容れていません。

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2 被告図版は原告図版を複製又は翻案したものか

次に、原告図版と被告図版の対比からその相違点、類否を検討しています(21頁以下)。
裁判所は、被告図版は原告図版の表現上の本質的な特徴といえる図形等の選択ないし配置の同一性を維持しながら、具体的な図形の形等の表記に変更を加えて、新たに被告図版の制作者の思想又は感情を創作的に表現したものであり、これに接する者が原告図版の表現上の本質的な特徴を直接感得することができると判断。
結論として、被告図版の原告図版への依拠性を前提に翻案権(27条)侵害性を肯定しています。

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3 著作者人格権侵害の成否

原告図版は外注会社によって制作されていましたが(原告図版の制作者の名前は公表されていない)、原告はその後外注先から図版に関する著作権の譲渡を受けていました。原告図版の著作者人格権に関する侵害の点については、原告が書籍の発行者として118条1項(無名又は変名の著作物に係る権利の保全)に基づいて主張しています(25頁以下)。
結論として、外注先の著作者人格権(20条1項 同一性保持権)を侵害していると判断されています。

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4 被告の故意・過失の有無

原告からの内容証明郵便による警告後の被告の書籍販売について、少なくとも被告に過失があると判断されています(26頁以下)。
また、内容証明郵便到達以前の被告の販売行為等についても、表紙のデザインについて被告は組版業者に外注していたところ、図版作成経緯等について調査を行うことなく販売等をしているとして、少なくとも過失があると判断されています。

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5 差止請求の可否

被告図版の表紙のままでの被告書籍の印刷、出版、販売、頒布の差止めの必要が認められています(28頁以下)。

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6 損害論

財産的損害として、15万円(114条3項 使用料相当額)、著作者人格権侵害に関する慰謝料として30万円、弁護士費用として5万円が損害として認定されています(29頁以下)。

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7 謝罪広告の要否

謝罪広告の要否について、被告の侵害行為により図版外注先及び原告の名誉、声望・信用が毀損されたと認めることはできないとして、謝罪広告の必要性は否定されています(32頁以下)。

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■コメント

原告サイトに問題となった書籍図版が掲載されています。

nyumonkanpou

nyumonnshika

(上が原告書籍、下が被告書籍 後掲原告サイトより)

被告出版社は、書籍表紙のデザインを外注していましたが、図版作成の経緯等を調査していなかったとして出版社としての注意義務違反を問われる結果となっています。

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■参考サイト

株式会社南江堂プレスリリース(平成21年6月1日)
ブレーン出版の「入門歯科東洋医学」に出版差止の仮処分命令が発令

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■最近の出版社の過失を巡る事案

「箱根富士屋ホテル物語」事件  *過失肯定
東京地裁平成22.1.29平成20(ワ)1586著作権侵害差止等請求反訴事件
八坂神社祇園祭ポスター事件   *過失肯定
東京地裁平成20.3.13平成19(ワ)1126損害賠償請求事件
東京アウトサイダーズ事件(控訴審)  *過失肯定
知財高裁平成19.5.31平成19(ネ)10003等出版差止等請求控訴事件等
サライ写真著作権事件      *過失肯定
東京地裁平成19.5.30平成17(ワ)24929損害賠償請求事件
共同執筆論文著作権侵害事件   *過失否定
東京地裁平成19.1.18平成18(ワ)10367著作権侵害差止等請求事件

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2010年07月26日

「サーキットの狼」DVD事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「サーキットの狼」DVD事件

東京地裁平成22.7.16平成21(ワ)3188損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官      大西勝滋
裁判官      石神有吾

*裁判所サイト公表 2010.7.20
*キーワード:ライセンス契約、ワンチャンス主義、製作請負契約

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■事案

テレビ番組のDVD商品化許諾を巡って下請製作会社と著作権管理会社との間で争われた事案

原告:テレビ番組製作下請会社、ナレーション実演家
被告:映像製作会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 民法415条、709条、著作権法91条2項

1 原告会社の請求(請負代金の追加請求)
2 原告Xの請求(出演料の追加請求等)
3 口頭弁論終結後の準備書面について

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■事案の概要

『漫画「サーキットの狼」を題材にしたテレビ番組の製作業務の下請をした原告株式会社てんこもり(以下「原告会社」という。)及び同テレビ番組でナレーションの実演を行った原告X(以下「原告X」という。)が,同テレビ番組がDVD化されることについての承諾をしていないのに,同テレビ番組製作の発注者である株式会社ジャパンイメージコミュニケーションズ(以下「JIC」という。)から同テレビ番組をDVD等の表現媒体に二次利用することを他に許諾する権利(サブライセンス権)の設定(許諾)を受けた被告が,株式会社交通タイムス社(以下「交通タイムス社」という。)に同テレビ番組のDVD化を許諾するライセンス契約を締結し,交通タイムス社を通じて同番組のDVDを製作販売したなどと主張し,被告に対し,原告会社においては同テレビ番組の製作業務に関する追加の請負代金として105万円の支払を,原告Xにおいては同テレビ番組の追加の出演料として315万円及び上記実演に係る実演家の録音権(著作権法91条1項)侵害の不法行為による損害賠償として315万円の合計630万円の支払を求めた事案』(1頁以下)

<経緯>

H18.4 JICとソニアがテレビ番組製作請負契約締結
       ソニアとディハウスボスが番組製作請負契約締結
       ディハウスボスと原告会社が番組製作請負契約締結
       原告会社が納品
H18.11JICと被告がDVDライセンス契約締結
       被告と交通タイムス社がDVD付録販売ライセンス契約締結
H19.3 交通タイムス社が書籍12冊に付録DVDを添付して販売

池沢早人師(漫画家)
 ↓
被告会社(版権管理)→交通タイムス社(DVD付録販売ライセンス)
 ↓ ↑
(番組利用ライセンス、DVD利用ライセンス)
 ↓ ↑
JIC(ケーブルTV番組運営会社)
 ↓
(番組製作下請け)
 ↓
ソニア→ディハウスボス→原告会社

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 原告会社の請求(請負代金の追加請求)

原告会社は、被告に対してDVD製造販売に関して請負代金の追加請求を主張しましたが、原被告間に番組製作請負契約など債務負担の原因となり得る特段の事実が認められず、原告の主張は容れられていません(10頁以下)。

   ------------------------------------

2 原告Xの請求(出演料の追加請求等)

番組のナレーションを担当した原告Xは、DVD製造販売に関して追加の出演料を請求しましたが、Xと被告の間に出演契約など債務負担の原因となる特段の事実が認められず、Xの主張は容れられていません(11頁以下)。
また、実演家の録音権(著作権法91条1項)の侵害による損害賠償請求についても、DVDの録音行為、製作、販売をしたのは、被告ではなく交通タイムス社であるとして、Xの主張は認められていません。

   ------------------------------------

3 口頭弁論終結後の準備書面について

原告らが口頭弁論終結後に提出した準備書面記載の内容について、原告Xの録音権や人格権の侵害、また原告会社に対する被告会社の下請け会社らとの共同不法行為が主張されましたが、いずれも裁判所に容れられていません(14頁以下)。

   --------------------

■コメント

原告が口頭弁論終結後に訴訟代理人弁護士を選任して新たに準備書面が提出されるといった経緯もありますが、契約関係などについて十分な検討が加えられた原告側の争点内容となっておらず残念な事案です。

なお、テレビ番組のナレーションを担当した実演家(原告X)については、ワンチャンス主義(著作権法91条2項)が適用されれば収録されたテレビ番組のDVD化については、後から文句が言える立場ではないことになります。もっとも、劇場用映画以外にテレビ放送番組もワンチャンス主義の適用範囲に含まれるか解釈論的に争点となり得るところです(後掲コンメンタール14頁以下)。

余談ですが、私が小学生の頃はスーパーカーブームで、池沢さとしさんの「サーキットの狼」は愛読した漫画。読売ランドで開催された「サーキットの狼」関連イベントでスーパーカー試乗抽選があって、私はハズれて一緒に行った友達がポルシェ911カレラに同乗できて、悔しい思いをした懐かしい記憶があります。

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■参考文献

半田正夫、松田政行編『著作権法コンメンタール3』(2009)12頁以下
田村善之『著作権法概説第2版』(2001)483頁

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■参考サイト

(音が出るので注意)
サーキットの狼 池沢早人師(池沢さとし) オフィシャルウェブサイト

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■追記2011.1.8

控訴審
2011年1月8日記事

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2010年07月23日

「箱根富士屋ホテル物語」事件(控訴審)−著作権 著作権侵害差止等反訴請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「箱根富士屋ホテル物語」事件(控訴審)

知財高裁平成22.7.14平成22(ネ)10017等著作権侵害差止等反訴請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官      高部眞規子
裁判官      井上泰人

*裁判所サイト公表 2010.7.16
*キーワード:創作性、複製権、翻案権、アイデア表現二分論、氏名表示権、同一性保持権、出版社の責任

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■事案

現職神奈川県知事が執筆した書籍の記述部分の複製権、翻案権侵害性が争点となった事案の控訴審

原告(非控訴人兼附帯控訴人):著述業
被告(控訴人兼附帯被控訴人):神奈川県知事、出版社

原告書籍:「箱根富士屋ホテル物語【新装版】」(2002)
被告書籍:「破天荒力 箱根に命を吹き込んだ「奇妙人」たち」(2007)

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■結論

被告敗訴部分取消し/附帯控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、15号、21条、27条、19条、20条、112条1項、114条3項

1 複製権又は翻案権侵害の成否
2 氏名表示権及び同一性保持権侵害の成否

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■事案の概要

『原判決別紙書籍目録2記載の書籍(以下,「被控訴人書籍」といい,原判決にいう「原告書籍」を「被控訴人書籍」と読み替える。ただし,原判決と同様,「物語」ともいう。)の著作者である被控訴人が,控訴人Xが同目録1記載の書籍(以下,「控訴人書籍」といい,原判決にいう「被告書籍」を「控訴人書籍」と読み替える。ただし,原判決と同様,「破天荒力」ともいう。)を執筆し,控訴人会社がこれを発行,販売した行為が,被控訴人書籍について被控訴人が有する著作権(複製権又は翻案権)及び著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)を侵害する旨主張して,控訴人らに対し,(1)著作権法112条1項に基づく控訴人書籍の印刷,発行又は頒布の差止めと,(2)民法709条に基づく損害賠償とを求める事案』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 複製権又は翻案権侵害の成否

裁判所は、複製や翻案の意義について最高裁判決(ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件、江差追分事件)に言及した上で、原告と被告の各書籍記述部分の対比を検討。
各書籍記述の共通部分は、事実又は思想であったり、ごくありふれた言葉で表現されたものであるとして、表現それ自体ではない部分又は表現上の創作性のない部分において同一性を有するにすぎず複製又は翻案に当たらないと判断。侵害性を否定しています(7頁以下)。

ところで、原審では、唯一No.71部分について原告書籍記述部分の創作性を認めた上で依拠性と実質的同一性を認めて被告書籍記述部分が複製(再製)に当たると判断していました。

原告書籍記述部分
 「正造が結婚したのは,最初から孝子というより富士屋ホテルだったのかもしれない。」
被告書籍記述部分
 「彼は,富士屋ホテルと結婚したようなものだったのかもしれない。」

しかし、控訴審では、

「(特定の事業又は仕事)と結婚したようなもの」との用語は,特に配偶者との家庭生活を十分に顧みることなく特定の事業又は仕事に精力を注ぐさまを比喩的に表すものとして広く用いられている,ごくありふれたものといわなければならない。しかも,「だったのかもしれない」との用語も,特定の事実に関する自己の思想を婉曲に開陳する際に広く用いられている,ごくありふれた用語である。』(12頁以下)

として、創作性を否定しています。

なお、事実の取捨選択、配列等に関する複製又は翻案(別紙対比表2、3、章全体)についても裁判所は侵害性を否定する判断をしています(15頁以下)。

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2 氏名表示権及び同一性保持権侵害の成否

被告書籍が原告書籍の複製又は翻案したものにあたらないと判断されたことから、著作者人格権侵害性についても否定されています(33頁)。

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■コメント

原審では、本文239頁の書籍のわずか2行のごく短い文章(ページ数で言えば、1/239=0.4%にあたる部分)について、著作権侵害、著作者人格権侵害が認められていましたが、控訴審ではこの点も否定され松沢知事完全勝訴となりました。

詳しくは、下記の企業法務戦士の雑感さんのブログをご覧戴けたらと思いますが、アイデアと表現の関わり合いを考えさせる事案でした。

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■過去のブログ記事

原審記事(2010年2月8日)
「箱根富士屋ホテル物語」事件

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■参考判例

原審
判決文PDF

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■参考サイト

企業法務戦士の雑感(2010−07−15記事)
[企業法務][知財]一審判決取消は妥当。だが・・・

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2010年07月16日

デントリペア機密保持誓約書事件(トータルサービス競業避止義務事件)−損害賠償等請求控訴事件判決(労働事件裁判例集)−

最高裁判所HP 労働事件裁判例集より

デントリペア機密保持誓約書事件(トータルサービス競業避止義務事件)

東京高裁平成22.5.27平成21(ネ)356損害賠償等請求控訴事件PDF

東京高等裁判所第9民事部
裁判長裁判官 大坪丘
裁判官      宇田川基
裁判官      尾島明

*裁判所サイト公表 2010.7.5
*キーワード:営業秘密、機密保持契約、競業避止義務、就業規則、フランチャイズ

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■事案

自動車外装のリペアのノウハウについて営業秘密にあたるかどうかや退職従業員の競業避止義務違反性が争点となった事案

原告(被控訴人):家具・車両リペア業フランチャイザー
被告(控訴人) :原告元従業員

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■結論

控訴人敗訴部分取り消し

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■争点

条文 民法415条、709条

1 元従業員が競業避止義務を負うか

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■事案の概要

「被控訴人が,かつてその従業員であった控訴人に対して,就業規則並びに在職中及び退職時に締結した機密保持契約に基づく競業避止義務に違反して,被控訴人が実施し,又はフランチャイズ事業化している自動車の外装のへこみを修復する事業(以下「デントリペア事業」という。)又は家具や自動車の内装の修復や色替えを行う事業(以下「インテリアリペア事業」という。)を行ったこと及び被控訴人の顧客を奪ったことを理由に,債務不履行及び不法行為に基づく損害賠償1208万円並びにこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払並びに日本国内における上記競業避止義務に違反する行為の差止めを請求する訴訟である。
 原判決は,被控訴人の請求を,債務不履行に基づく674万円の損害賠償及びこれに対する平成18年10月20日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払請求並びに日本国内において,判決確定から2年間,原判決別紙目録1及び2記載の各技術と同一内容の技術を用いた車両外装のへこみを修復する事業及び家具・車両内装の修復や色替えを中心とした事業の実施の差止請求の限度で認容し,その余の請求を棄却したところ,控訴人が控訴をした」(1頁以下)

<経緯>

H2  被告が原告に入社
H7  原告がリペア事業を導入、被告を米国研修に派遣
H15 被告が原告を退社
     被告がリペア業を開業

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■判決内容

<争点>

1 元従業員が競業避止義務を負うか

被告元従業員は、原告との間で機密保持誓約書を原告リペア事業の開始時及び被告従業員の退職時に取り交わすとともに原告の就業規則にも機密保持規定がありました。
元従業員が退職後、原告のリペア事業と競業する事業を個人事業として開業したことから、機密保持義務・競業避止義務違反として損害賠償請求及び差止請求がされていました。

原審では、被告のリペア技術の営業秘密性を肯定したうえで、競業避止義務違反を認定。損害賠償と差止請求を認めていました。
しかし、控訴審は、リペア技術が原告だけが保有・利用できるような特殊な技術ではなく、これを習得しようとする者はだれでも原告以外のリペア事業者が提供する講習を受講して得ることができる技術であるとして営業秘密性を否定。原審の判断に反して原告の主張を認めていません(4頁以下)。

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■コメント

自動車のキズやヘコミを修復するリペア業務については、フランチャイズ展開されていて街中でも色々な業者の看板を目にします。特殊工具を利用して内側からヘコミを回復する技術などがカー雑誌の記事で紹介されていたりします。

競業避止契約の有効性については、裁判例の集積があるわけですが(後掲書参照)、営業秘密性の判断についても、不正競争防止法2条6項の解釈論を足掛かりに検討が加えられることになります。

本件では、原審では元従業員に対して米国研修を受けさせるなど、原告会社としても元従業員の技術取得に多額の費用を掛けているという点にも配慮して元従業員の競業避止義務違反性を肯定しましたが、控訴審では機密事項の営業秘密性自体を否定して元従業員の職業選択の自由、営業の自由を重視する結果となっています。

控訴審では競業避止契約の有効性まで進んで判断されていませんが、営業地域や制限期間、職種の範囲の限定もなく、また自社フランチャイザーにならない限りリペア業務が一切行えないとする代償措置の内容の契約では、従業員向けの縛りとしてはきついものがあります。

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■参考判例

原審
東京地裁平成20.11.18平成18(ワ)22955損害賠償等請求事件

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■参考文献

永野周志ほか『営業秘密と競業避止義務の法務』(2008)247頁以下

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2010年07月15日

健康飲料営業誹謗事件−不正競争防止法 求償金等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

健康飲料営業誹謗事件

東京地裁平成22.7.2平成21(ワ)5988求償金等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 岡本岳
裁判官      鈴木和典
裁判官      坂本康博

*裁判所サイト公表 2010.7.7
*キーワード:営業誹謗行為、競業禁止特約

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■事案

「原告らに会社を乗っ取られた」などの虚偽の事実を告知又は流布して原告らの営業上の信用を害したかどうかが争点となった事案

原告:栄養飲料製造販売会社ら
被告:栄養飲料製造販売会社ら

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項14号、会社法21条1項

1 本件覚書の趣旨、効力
2 原告らによる譲渡代金及び被告会社の債務の弁済
3 原告Xによる本件商標権移転登録手続請求の当否
4 被告会社による製品ヤングの製造、販売等の差止め
5 被告会社による営業誹謗行為の差止め及び謝罪広告の必要性
6 被告Y1、Y2、Y3の責任
7 被告会社の競業、営業誹謗による原告らの損害

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■事案の概要

「(1) 被告ヤング株式会社(以下「被告会社」という。)の事業全部の譲渡を受けたと主張する原告X(以下「原告X」という。)が,事業譲渡契約の約定(被告会社の負債の整理に関しては被告会社が責任をもって処理し,原告Xには何ら関係させないとする約定)にもかかわらず,被告会社の債務の弁済(第三者弁済)を余儀なくされたとして,被告会社に対しては,(1)民法650条1項若しくは702条1項の規定に基づく償還請求(一部請求)として,又は(2)債務不履行若しくは不法行為による損害賠償請求(一部請求)として,7617万9729円及びこれに対する平成21年3月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金又は利息の支払を求め,被告Y1(被告会社の代表取締役。以下「被告Y1」という。),被告Y2(被告会社の取締役。以下「被告Y2」という。)及び被告Y3(被告会社の取締役。以下「被告Y3」という。)に対しては,会社法429条1項,430条の規定に基づき,被告会社と連帯(不真正連帯)して同額の損害の賠償を求め(上記第1,1),
(2) 原告Xが,被告会社に対し,上記事業譲渡契約(平成19年12月28日付け)に基づき,別紙商標目録記載1,2の商標権について,移転登録手続をすることを求め(上記第1,2),
(3) 上記事業譲渡契約には競業禁止特約(会社法21条2項)が含まれているにもかかわらず,被告会社が同契約後も別紙製品目録記載の製品(以下「製品ヤング」という。)を製造,販売,頒布するなどして原告らと競業したほか,「原告らに会社を乗っ取られた」などの虚偽の事実を告知又は流布して原告らの営業上の信用を害したとして,原告らが,被告会社に対し,(1)上記競業禁止特約に基づき,製品ヤングの製造,販売,頒布の差止め(上記第1,3),(2)不正競争防止法2条1項14号,3条に基づき,原告らに対する営業誹謗行為の差止め(上記第1,4),(3)不正競争防止法2条1項14号,14条に基づく信用回復措置として,別紙謝罪広告目録記載の謝罪広告の掲載(上記第1,5)をそれぞれ求め,
(4) 原告らが,被告会社に対しては,債務不履行,不法行為又は不正競争防止法4条に基づき,被告Y1,被告Y2及び被告Y3に対しては,会社法429条1項,430条に基づき,連帯(不真正連帯)して,被告会社の上記(3)の競業及び営業誹謗行為によって原告らが受けた損害の賠償として,原告Xについては220万円(慰謝料200万円,弁護士費用20万円),原告ヤングブレイン株式会社(以下「原告会社」という。)については550万円(信用毀損による損害500万円,弁護士費用50万円)及びこれらに対する平成21年3月30日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求め(上記第1,6及び7)る事案」(3頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件覚書の趣旨、効力
2 原告らによる譲渡代金及び被告会社の債務の弁済
3 原告Xによる本件商標権移転登録手続請求の当否
4 被告会社による製品ヤングの製造、販売等の差止め

栄養飲料に関する事業譲渡について原被告間で覚書が締結されており、その趣旨が単なる株式譲渡契約なのか、債務を承継させずに事業再生を図る趣旨の事業譲渡契約なのかが争点となりました(26頁以下)。
結論としては、原告の主張の通り、事業譲渡契約と認定されています。
そのうえで、原告会社らの支出した被告会社の債務に関する費用について、その償還請求を裁判所は肯定しています(民法702条1項)。また、本件商標権移転登録手続請求についても、本件商標が譲渡の対象になっているとして、これを肯定しています。
もっとも、譲渡会社の競業禁止規定(会社法21条1項)の趣旨を含む本件事業譲渡契約に基づく差止についてはその必要性が認められていません。

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5 被告会社による営業誹謗行為の差止め及び謝罪広告の必要性

被告会社が複数の顧客に対して、「悪徳人間がピラミッド工場(判決注:別紙物件目録記載の工場・事務所をいうものと認められる。)に不法侵入し,被告Y1が出入りできないように警備会社をだまして鍵を変更して,立てこもっている。」、「原告会社や原告Xが行っていることは,詐欺であり,製品ヤングの窃盗であり,売上金の横領であり,近く刑事処罰,民事処罰される。」などの事実を記載した文書を配布した行為について、営業誹謗行為性(不正競争防止法2条1項14号)が肯定されています(31頁以下)。
そのうえで、営業誹謗行為について差止請求(3条)は認めたものの、信用回復措置(14条)としての謝罪広告の必要は認めていません。

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6 被告Y1、Y2、Y3の責任

被告Y1については、被告会社の代表者として、会社法429条1項により原告に生じた損害に関して賠償する責任があると認められています(32頁以下)。

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7 被告会社の競業、営業誹謗による原告らの損害

被告会社の営業誹謗行為により原告Xに対する慰謝料として100万円、原告会社の信用毀損による損害額として250万円が認定されています。また弁護士費用として合計35万円が認めれています(34頁以下)。

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■コメント

栄養飲料の製造販売事業の譲渡契約を巡って生じた紛争です。
この栄養飲料は、20種類の乳酸菌と酵母菌で製造された濃縮液(製品紹介|ヤングブレイン株式会社【健康はピラミッド】)となります。
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2010年07月11日

電話占い営業秘密事件−不正競争防止法 不正競争行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

電話占い営業秘密事件

大阪地裁平成22.6.8平成20(ワ)7756等不正競争行為差止等請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官      北岡裕章
裁判官      山下隼人

*裁判所サイト公表 2010.6.23
*キーワード:営業秘密、不正取得行為、占い、業務請負契約

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■事案

電話占い業における顧客名簿の営業秘密性や持ち出し行為の不正競争行為性が争点となった事案

原告:電話占い業会社
被告:占い鑑定者ら

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■結論

第1事件:請求棄却/第2事件:一部認容

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■争点

条文 不正競争防止法2条6項、2条1項5号、6号、8号、9号

1 本件顧客情報が営業秘密に該当するか
2 HER−BER−SUらによる不正競争行為の有無
3 被告らによる不正競争行為の有無
4 原被告間の業務請負契約の成否及びその内容
5 被告らの契約違反の有無
6 原告の被告Aに対する鑑定料の未払額
7 被告Aが原告に自己の写真の返還を求められるか

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■事案の概要

第1事件
「第1事件は,電話占い業を営む原告が,(1)原告の受付業務等に従事していた分離前第1事件被告E及び原告と業務請負契約を締結して原告の顧客に対して電話による占い鑑定をしていた被告らが共謀して,Eにおいて不正競争防止法2条6項所定の「営業秘密」に該当する原告の顧客情報(別紙営業秘密目録記載の情報,以下「本件顧客情報」という。)を持ち出した上,Eが代表を務める分離前第1事件被告HER−BER−SU合同会社(以下「HER−BER−SU」という。)が本件顧客情報を用いて電話占い業を営み,被告らもHER−BER−SUと業務請負契約を締結してHER−BERSUの顧客に対して電話による占い鑑定をしているとして,被告らに対し,不正競争防止法3条(2条1項5号,6号,8号又は9号)に基づき,本件顧客情報を用いた営業の差止め及び本件顧客情報が記録された記録媒体等の廃棄を求め,(2)被告らが原告との間の業務請負契約上の顧客接触・顧客情報漏洩禁止義務,相互連絡禁止義務及び引抜禁止義務に違反したとして,被告らに対し,業務請負契約で定められた違約金各200万円及びこれに対する第1事件の訴状送達の日の翌日(被告A及び被告Bは平成20年6月30日,被告C及び被告Dは平成20年7月2日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求めるとともに,被告Aに対し,予備的に,200万円の違約金請求債権と第2事件における被告Aの原告に対する16万9860円の未払鑑定料請求債権とを相殺した残額である183万0140円及びこれに対する第1事件の訴状送達の日の翌日である平成20年6月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案」

第2事件
「第2事件は,原告と電話占い鑑定に関する業務請負契約を締結していた被告Aが,原告に対し,(1)業務請負契約に基づき,未払鑑定料16万9860円及びこれに対する第2事件の訴状送達の日の翌日である平成20年3月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,(2)原告との業務請負契約が終了したとして,ホームページ掲載用に原告に交付した写真の返還を求める事案」(3頁以下)

<経緯>

H12  原告代表者が「フリーダム」で電話占い業開始
H13  被告B、Cがフリーダムの顧客の鑑定に従事
H14  原告会社設立
H14  被告Dが原告の顧客の占い鑑定に従事
H18  被告Aが原告の顧客の占い鑑定に従事
H19  HER−BER−SU合同会社設立
H19  被告らがHER−BER−SUの顧客の鑑定に従事

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■判決内容

<争点>

1 本件顧客情報が営業秘密に該当するか

原告は、顧客情報を専用の顧客情報管理ソフトを導入して管理していました。本件顧客情報の営業秘密性(2条6項)について、

(1)秘密管理性

・スタッフが閲覧すること自体は制限されず
・閲覧できたスタッフは6名程度
・ソフトを起動するためのPWは一部のスタッフのみ
・データのコピーやプリントアウトは困難
・DM用のタックシールの管理も施錠、ノート記載管理
・情報流出の際の高額の違約金規定がある業務請負契約の締結

以上の事情から、スタッフあるいは占い師は、原告が顧客情報を他の情報とは区別して秘密として管理していたと十分に認識することができたとして、秘密管理性を肯定しています(15頁以下)。

(2)有用性
(3)非公知性


秘密管理性の他、有用性、非公知性も肯定され、本件顧客情報の「営業秘密」(不正競争防止法2条6項)該当性が認められています。

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2 HER−BER−SUらによる不正競争行為の有無

原告会社を退社したE(分離前被告)は、HER−BER−SU社(分離前被告)を立ち上げ、競業関係になる電話占い業を行っていました。
Eが、DM作成作業等に従事していたこと、HER−BER−SU社の顧客89名のうち、61名が原告顧客と一致すること、会社立ち上げの時期などから、Eの行為は、保有営業秘密の不正開示行為(2条1項7号)に該当していると判断。また、Eから顧客情報を開示されたHER−BER−SU社の勧誘等の行為は、不正開示行為の悪意者の使用行為(同項8号)に該当するとしています(20頁以下)。

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3 被告らによる不正競争行為の有無

原告は、被告らがEと共謀してHER−BER−SU社を立ち上げ、顧客情報を無断持ち出しして利用していると主張しました(23頁以下)。

しかし、被告らとEとの共謀の事実が認められず、また、DMの送付はHER−BER−SU社が行っており、被告らは占い鑑定をしているだけであって、HER−BER−SU社と被告らを一体として捉えて被告らが顧客情報を使用しているとするのは相当でないと裁判所は判断。
結論として、被告らの不正競争行為性(2条1項5号、6号、8号、9号)を否定してます。

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4 原被告間の業務請負契約の成否及びその内容

原告と被告との間での業務請負契約の成否とその内容について一部疑義がありましたが、契約の成立等が認められています(26頁以下)。

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5 被告らの契約違反の有無

請負業務契約上、以下の4つの義務が規定されていました。

(1)顧客接触禁止義務
(2)情報漏洩禁止義務
(3)相互連絡禁止義務
(4)引抜禁止義務

裁判所は、違約金の対象は、(1)(2)(4)の義務についてであるとしたうえで、各義務違反の有無を検討。
結論としては、被告らに義務違反はないと判断されています(30頁以下)。

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6 原告の被告Aに対する鑑定料の未払額

第2事件について、原告の被告Aに対する鑑定料の未払い金16万9860円を認定しています(38頁以下)。

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7 被告Aが原告に自己の写真の返還を求められるか

請負業務契約終了に伴うHP掲載用の写真の返還について、写真の所有権などに関する主張立証が尽くされていないとして、被告Aの返還請求は認められていません(39頁)。

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■コメント

占いの市場はそこそこ動いている印象で、わたしも占い業者の契約書や利用規約(モバイルコンテンツ、ゲーム、占い流派フランチャイズ契約など)を取扱うことがあります。
占い師の移籍や顧客への私的接触など、会社としては課題山積のようですが、現実問題として対応が難しいものがあります。
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2010年07月09日

日本拳法名称事件−不正競争防止法 不正競争行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

日本拳法名称事件

大阪地裁平成22.6.17平成21(ワ)2948不正競争行為差止等請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官      北岡裕章
裁判官      山下隼人

*裁判所サイト公表 2010.6.23
*キーワード:周知性、誤認混同行為性

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■事案

「日本拳法」などの表示の営業表示としての周知性の有無が争点となった事案

原告:NPO日本拳法会、日本拳法会全国連盟
被告:公益財団法人全日本拳法連盟、代表理事A

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号

1 原告各表示の営業表示性及び周知性の有無
2 被告らの不正競争行為の有無

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■事案の概要

『(1)拳法の普及等の活動をしている原告らが,「日本拳法」との名称が原告らの営業を表示するものとして,「日本拳法会」との名称が原告特定非営利活動法人日本拳法会の営業表示として,「日本拳法全国連盟」との名称が原告日本拳法全国連盟の営業表示としてそれぞれ周知性を獲得しているから,「日本拳法」の名称を使用して拳法の普及活動等を行う被告らの行為及び被告公益財団法人全日本拳法連盟が「全日本拳法連盟」との名称を使用する行為は不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当するとして,被告らに対し,同法3条に基づき,拳法の普及活動等において「日本拳法」の名称を使用することの差止め及び「日本拳法」の文字を使用した允許状用紙等の廃棄を求め,被告公益財団法人全日本拳法連盟に対し,同法3条に基づき,「全日本拳法連盟」の名称の使用の差止め及び同名称の登記の抹消登記手続を求め,被告Aに対し,同法14条に基づき,信用回復の措置として,別紙記載の通知文の送付を求め,(2)原告日本拳法全国連盟が,被告Aが「日本拳法」の名称を使用して允許活動をしたことによって損害を受けたとして,被告Aに対し,同法4条に基づき,損害金36万円及びこれに対する不正競争行為の後の日である平成21年3月15日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案』(2頁以下)

<経緯>

S7   Bが「大日本拳法」考案、「大日本拳法会」設立
S22  「日本拳法会」に改称
S28  Cが派遣され東京に支部が設立
S30  Cが「日本拳法協会」設立
H1   日本拳法会、日本拳法連盟、中部支部で「日本拳法全国連盟」設立
H21  被告Aらが「全日本拳法連盟」設立

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■判決内容

<争点>

1 原告各表示の営業表示性及び周知性の有無

被告Aらが設立した「全日本拳法連盟」での「日本拳法」名称の使用が、原告「日本拳法会」らの営業主体の誤認混同行為(不正競争防止法2条1項1号)となるかどうかが争点となっています。

結論としては、「日本拳法」の名称の周知性は肯定されたものの、原告ら(そのグループも含め)の営業表示として周知性を獲得しているとは認められていません(20頁以下)。

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2 被告らの不正競争行為の有無

原告の「日本拳法会」、「日本拳法会全国連盟」の各名称については、全体が不可分のものとして使用されることにより識別性を有し、原告らの営業表示として周知性を獲得するに至っていると判断されたものの、被告が「全日本拳法連盟」の名称を使用する行為については、「日本拳法」部分に識別力がないこと、外観及び称呼において相違があるして原被告の名称は非類似として不正競争行為性を否定しています(25頁以下)。

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■コメント

技芸の家元・流派の名称を巡る紛争は散見されるところで、日本舞踊(音羽流事件、花柳流事件)や尺八(都山流尺八楽会事件)、華道(華道専正池坊事件)、武道では少林寺や極真空手、沖縄古武道(日本躰道協会関連)などが思い浮かびます。

それぞれに歴史的な経緯があって複雑な事情があるため、単純なフランチャイズ関係では割り切れない部分があるところです。

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■過去のブログ記事

「華道専正池坊家元」事件
武道と商標権

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2010年07月06日

「弁護士のくず」事件(控訴審)−著作権 著作権翻案物発行禁止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「弁護士のくず」事件(控訴審)

知財高裁平成22.6.29平成22(ネ)10008著作権翻案物発行禁止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官      齊木教朗
裁判官      武宮英子

*裁判所サイト公表 2010.6.30
*キーワード:翻案権、創作性、アイデア表現二分論、著作者人格権、一般不法行為性

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■事案

ノンフィクション小説を参考に執筆された漫画の翻案権侵害性が争点となった事案の控訴審

原告(控訴人) :弁護士
被告(被控訴人):出版社
            漫画家

原告書籍:「懲戒除名 ”非行”弁護士を撃て」
被告書籍:「弁護士のくず」『蚕食弁護士』

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法27条、20条、2条1項1号、民法709条

1 翻案権侵害の有無
2 著作者人格権侵害の有無
3 一般不法行為の成否

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■事案の概要

『原告は,(1)被控訴人株式会社小学館(1審被告)発行の雑誌「ビッグコミックオリジナル」に掲載され,被告Yにより執筆された漫画「弁護士のくず『蚕食弁護士』」(以下「被告書籍」という。)を出版し,頒布する行為は,原告執筆のノンフィクション小説「懲戒除名“非行”弁護士を撃て」(以下「原告書籍」という。)について原告が有する著作権(翻案権)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権,著作者の名誉声望)を侵害する,又は,(2)被告書籍は,原告書籍を無断で利用して作成されたものであり,被告書籍を出版し,頒布する行為は,社会的な許容限度を超えた違法な行為であるから,民法上の一般不法行為(709条)が成立すると主張して,被告らに対し,著作権及び著作者人格権侵害の停止又は予防として被告書籍の出版等の差止めを求めるとともに,著作権及び著作者人格権侵害の不法行為損害賠償請求権(主位的請求原因)又は民法上の不法行為損害賠償請求権(予備的請求原因)に基づき,損害金500万円及びその遅延損害金の支払を求めた。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 翻案権侵害の有無
2 著作者人格権侵害の有無
3 一般不法行為の成否

結論としては、原審の判断を維持、各論点について原告の主張を否定しています(11頁以下)。

当裁判所は,(1)原告書籍各部分は,表現においてありふれたものであって創作性がないか,創作性があったとしても表現上の特徴はないこと,そして,被告書籍各部分と原告書籍各部分とは,取り上げられたエピソードやアイデアにおいて共通する部分があるものの,原告書籍各部分の表現上の本質的な特徴を直接感得するものとはいえないから,被告書籍各部分は,原告書籍各部分を翻案したものとはいえない,(2)被告書籍を出版,販売する行為は,原告の有する著作者人格権(同一性保持権等)を侵害するとはいえない,(3)被告書籍を出版,販売する行為は,不法行為を構成しない,と判断する。その理由は,次のとおり付加変更するほかは,原判決の「第3 当裁判所の判断」(原判決30頁1行目から44頁16行目まで)の記載と同じであるから,これを引用する。

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■コメント

被告側の代理人弁護士に福井健策先生が就いておいでで、控訴審の判決を受けて福井先生はTwitterで報道被害の回復についてコメントを寄せられています。

『「弁護士のくず」2審判決の報道は通信社・スポーツ紙。全国紙は「盗作疑惑」と書き立てた2年前とうって変わり、読売の速報を除いて皆無。』
『元が実話だという決定的な事実すら当初は報じられず、井浦さんは「盗作漫画家」となる。「疑惑」の時は書きたて、2年間の真剣な裁判で明らかになった「真相」は、一片も報じない。』
『判決は複雑?事件は風化した?なるほどそうだ。だが、本人はこの2年間苦しんで来たのだ。たとえ短信でも興味を持ってもらえるように書くのが、プロだろう。』
『私はこれまで、「メディアの公共性」という議論を支持して(少なくともその理念に期待して)来た。だが今日は、その話は少々色あせて見える。』(7月2日付)

マスコミの著作権関連事件の報道のありかたに一石を投じるものです。

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■過去のブログ記事

2010年3月3日記事
「弁護士のくず」事件(原審)

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■参考サイト

プレスリリース 平成22年6月29日 小学館広報室
<『弁護士のくず』訴訟の高裁判決について>
『弁護士のくず』訴訟、一審に続いて知財高裁でも全面勝訴! お知らせ 小学館
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2010年07月02日

音楽CD見本品販売事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

音楽CD見本品販売事件

東京地裁平成22.6.2平成21(ワ)36373損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀滋
裁判官      坂本三郎
裁判官      岩崎慎

*裁判所サイト公表 2010.6.29
*キーワード:複製権、譲渡権、レコード製作者、著作隣接権

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■事案

音楽CDの出来上がり見本を無断販売した行為の複製権侵害性などが争点となった事案

原告:作詞作曲者
被告:音楽CD制作会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法21条、26条の2、97条の2

1 被告によるCDの無断複製・販売の有無
2 原告の販売許諾の有無
3 損害論

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■事案の概要

『別紙物件目録記載のCDのレコード製作者であり,当該CDのジャケット等についての著作権者である原告が,被告が無断で当該CD及びジャケット等を複製・販売し,CDにつき原告の著作隣接権(レコード製作者の複製権及び譲渡権)及びジャケット等につき原告の著作権(複製権及び譲渡権)を侵害したとして,民法709条に基づき,損害賠償金510万円及びこれに対する被告による最後の不法行為の日である平成19年12月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案』(1頁以下)

<経緯>

H15.3 原告が被告にCD500枚制作を依頼
H15.4 原告が被告にCD500枚制作を依頼
H17.1 原告が被告にCD500枚制作を依頼
H18.1 原告が被告にCD300枚制作を追加依頼
H18.2 原告が被告にCD500枚制作を依頼

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■判決内容

<争点>

1 被告によるCDの無断複製・販売の有無

原告が作詞作曲、実演するなどした音源や、原告に著作権が帰属するCDジャケット等のデザインを提供して原告は被告に販売用CDの制作を依頼しました。被告は、CDプレス業者から発注分のほかに出来上がり見本としてCD4作品について各3枚ずつ、合計12枚の見本盤の提供を受け、このうちの数枚を被告が販売していました。

(1)被告によるCDの無断複製の有無

出来上がり見本の制作が無断複製にあたるかどうかについて、裁判所は、本件のようなCD複製品の作成を依頼する取引においては見本作成は通常のことであって、原告の依頼と無関係に作成されたものであると認められないとして、違法に複製したものではないと判断しています(8頁以下)。

(2)被告による各複製CDの販売枚数

被告による本件複製CDの販売枚数については、出来上がり見本12枚のうち、合計7枚と認定されています(9頁)。

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2 原告の販売許諾の有無

原被告間で本件各CDの複製品の卸販売について契約締結に向けた交渉が持たれた経緯がありましたが、販売許諾の合意の成立が認められず、原告の販売許諾に基づいた販売であったとの被告の主張は容れられませんでした(9頁以下)。

結論として、CDの無断販売としてジャケット等の著作権(譲渡権)侵害とレコード製作者の譲渡権侵害が認められています。

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3 損害論

CDの無断販売について被告に少なくとも過失があること、また、原被告間で卸販売について定価の7割で卸すという点については合意していたことを前提に、

定価3000円×7割×販売数7枚=14700円

が原告の財産的損害であると認定されています(10頁以下)。

なお、慰謝料等その他の請求については認められていません。

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■コメント

音楽CDの無断販売行為について、譲渡権侵害だけ肯定された事案となります。

原告の楽曲はフィットネス・エクササイズ用途の音楽で、こちらのサイトで視聴することができます。

LET’S! ENJOY EXERCISE No,2 おとやトレーディング

原告は、自ら策定した原盤使用料規程やジャケット印刷物使用料規程などに基づいて400万円以上の損害額を主張していますが、これでは非のある被告としてもどうにも折り合いようがないところです。
原告としても、損害額として認容されたのが卸価格相当額ですし、訴訟費用も99/100で、なかなかに厳しい結果となっています。

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■参考サイト

原告レーベル
MARKY in sky-pro
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2010年06月30日

「月刊ネット販売」編集著作物事件(対著者)−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「月刊ネット販売」編集著作物事件(対著者)

東京地裁平成22.6.17平成21(ワ)27691損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官      柵木澄子
裁判官      小川卓逸

*裁判所サイト公表 2010.6.25
*キーワード:編集著作物性、一般不法行為、信用毀損

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■事案

月刊誌に掲載された図表の編集著作物性や複製行為の一般不法行為性の成否が争点となった事案

原告:出版社
被告:執筆者

原告雑誌:月刊誌「月刊ネット販売」2007年9月号
被告執筆書籍:「図解入門業界研究 最新 通販業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本」

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法12条1項、21条、民法709条

1 著作権侵害の成否(編集著作物性)
2 財産権侵害の成否(一般不法行為性)
3 名誉・信用毀損の成否

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■事案の概要

『別紙対照表記載の原告図表1ないし9(以下,まとめて「各原告図表」という。)について著作権を有すると主張する原告が,別紙書籍目録記載の書籍(以下「本件書籍」という。)の執筆者である被告に対し,(1)本件書籍中に掲載された別紙対照表記載の被告図表1ないし9(以下,まとめて「各被告図表」という。)は各原告図表の複製物に当たり,被告が本件書籍中に各被告図表を掲載した行為は,各原告図表に係る原告の著作権(複製権)を侵害する行為であるか,あるいは,仮に,各原告図表が著作物であると認められないとしても,原告の財産権を侵害する行為であるとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,金250万円の支払を求めるとともに,(2)被告が,本件書籍の表題中に「カラクリ」という言葉を使用し,かつ,その著者の肩書きとして「株式会社通販新聞社,通販新聞・執行役編集長,月刊ネット販売・編集人」と,その経歴として「通販新聞社に入社し,記者を経て3年前から現職」と表記したことにより,原告の名誉・信用が毀損されたとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,金250万円の支払を求める事案』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 著作権侵害の成否(編集著作物性)

被告が執筆した書籍に掲載された図表9点が、原告雑誌に掲載された図表の無断複製に該当するかどうかについて、そもそも原告図表に編集著作物性(著作権法12条1項)が成立しているかどうかが争点となっています。

原告各図表は、ネット通販での上位50社の売上高や増減率、取扱商品を表にしたものなどでしたが、裁判所は、各図表は素材の選択、配列いずれもありふれたものであり、創作性を有するものであるということはできないとして、編集著作物性を否定しています(9頁以下)。

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2 財産権侵害の成否(一般不法行為性)

原告各図表は、原告が膨大な費用を掛けてアンケートを実施するなどして作成した原告の財産であって、無断複製は原告の財産権を侵害する不法行為(民法709条)に該当すると原告は主張しました。
しかし、原告各図表の体裁をそのままに写したものではなく、また、出典元を掲載しており、掲載行為が図表の利用方法として相当性を欠くものではなく、違法な行為であるとはいえないと裁判所は判断。一般不法行為性の成立を否定しています(18頁)。

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3 名誉・信用毀損の成否

被告書籍表題において「カラクリ」という言葉を使用したことが、原告に対する信用を毀損しあるいは社会的信用を低下させたと原告は主張しました。
しかし、「カラクリ」が「しかけ」(広辞苑)といった意味として理解するものとして悪印象を与える意味に理解するとは認めることはできないとして、裁判所は原告の主張を容れていません(18頁以下)。

結論として、原告の主張はすべて棄却されています。

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■コメント

被告書籍については、被告書籍を出版した秀和システム社を被告とする別訴が2件あって、そのいずれでも原告各図表の編集著作物性は否定されていました。

編集物でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、著作物として保護されますが(著作権法12条1項)、本件でも原告各図表はいずれの点においてもありふれたものと判断されています。

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■過去のブログ記事

対秀和システム事件
2010年2月12日記事
「月刊ネット販売」編集著作物事件
2010年3月15日記事
「週刊通販新聞」編集著作物事件

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■追記(2010.6.30)

被告が提訴していた解雇無効確認訴訟について、6月29日東京地裁(松田典浩裁判官)は解雇無効、謝罪広告、慰謝料200万円を発行元の通販新聞社に命じる判決を言い渡した。
「「カラクリ」執筆解雇は無効」朝日新聞6月30日付朝刊東京版13版37頁

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2010年06月28日

「暁の脱走」格安DVD事件(対東宝)控訴審−著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「暁の脱走」格安DVD事件(対東宝)控訴審

知財高裁平成22.6.17平成21(ネ)10050著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官      東海林保
裁判官      矢口俊哉

*裁判所サイト公表 2010.6.21
*キーワード:映画の著作物、著作者、旧著作権法、保護期間、過失論

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■事案

「暁の脱走」「また逢う日まで」「おかあさん」映画作品の保護期間を巡り、映画の著作者が各監督なのか映画会社であるのかが争われた事案の控訴審

原告(被控訴人):東宝株式会社
被告(控訴人) :格安DVD製造販売会社

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■結論

一部取消し、取消し部分請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項2号、21条、113条1項1号、旧法6条、民法709条

1 各映画の著作権の存続期間の満了時期
2 原告は各映画の著作権を有するか
3 被告の侵害行為の有無
4 被告の故意又は過失の有無

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■事案の概要

『本件は,映画の著作物の著作権を有すると主張する被控訴人(1審原告。以下「原告」という。)が,控訴人(1審被告。以下「被告」という。)に対し,被告が同映画を複製したDVD商品を海外において作成し,輸入・販売しており,被告の同輸入行為は原告の著作権(複製権)を侵害する行為とみなされる(著作権法113条1項1号)として,著作権法112条1項及び2項に基づき同DVD商品の製造等の差止め及び同商品等の廃棄を求めるとともに,民法709条及び著作権法114条3項に基づき損害賠償金1350万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年5月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 各映画の著作権の存続期間の満了時期

原判決部分を引用してその判断を維持しています(9頁以下)。
結論として、本件各映画の著作権は存続していると判断されています(旧著作権法3条、52条1項等)。

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2 原告は各映画の著作権を有するか

本件各映画の著作権は、本件各監督を含む多数の自然人に発生したとした上で、映画監督に限っては映画公開までの間に原告又は新東宝に対し監督を務めることとなった法律関係に基づいて、自己に生じた著作権を譲渡したものと認定することができると判断。
結論としては、原告が各映画の著作権を取得していると判断しています(13頁以下)。

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3 被告の侵害行為の有無

原判決部分を引用してその判断を維持しています(21頁以下)。
結論として、本件DVDの製造、輸入、頒布の差止、在庫品及び原版の廃棄が認められています(112条1項、2項)。

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4 被告の故意又は過失の有無

控訴審は、原審に反して被告業者の過失を否定しています(23頁以下)。

映画の著作物の著作権の存続期間が満了しているかどうか、業者は一般論として調査義務を負うことを認めつつも、高度の注意義務や特別の注意義務を負っているということはできないと説示。
旧著作権法における映画の著作物の著作者性については学説が分かれていること、また本論点については黒澤明監督作品事件をきっかけとして問題認識が本格的に提起されたこと、チャップリン監督作品事件と黒澤監督作品事件とでは、黒澤監督作品事件は黒澤監督以外に著作者が想定される点で最高裁判例の射程距離が大きく判断も難しい事件である。そして、本件各監督は、黒澤監督作品よりその著作者性はさらに低い。

そうであるとすれば,本件において,何人が著作者であるか,それによって存続期間の満了時期が異なることを考えれば,結果的に著作者の判定を異にし,存続期間の満了時期に差異が生じたとしても,被告の過失を肯定し,損害賠償責任を問うべきではない。原判決は,被告のような著作権の保護期間が満了した映画作品を販売する業者については,その輸入・販売行為について提訴がなされた場合に,自己が依拠する解釈が裁判所において採用されない可能性があることは,当然に予見すべきであるかのような判断をするが,映画の著作物について,そのような判断をすれば,見解の分かれる場合には,裁判所がいかなる見解を採るか予測可能性が低く,すべての場合にも対処しようとすれば,結果として当該著作物の自由利用は事実上できなくなるため,保護期間満了の制度は機能しなくなり,本来著作権の保護期間の満了した著作物を何人でも自由に利用することを保障した趣旨に反するものであり,当裁判所としては採用することはできない。』(24頁以下)

として、損害賠償請求を否定しています。

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■コメント

著作権保護期間満了映画作品の格安DVD事件で業者側の過失が否定されたケースとなります。知財高裁がパブリックドメイン(PD)作品の有効活用といった、著作権法の保護期間制度の趣旨を強調している点が印象的な判決です。

同一被告に対する訴訟は多数(最高裁サイト内検索で13件)あって、損害賠償請求を内容とする訴訟では、すべて被告の過失が認定され損害賠償が認められていました。知財高裁第2部(中野裁判長)担当の損害賠償請求附帯控訴事件でも過失が認定されています(下記の対松竹控訴審)。

本件の原審では、
(1)法的解釈が分かれていて確定した判例がない状況では、自らが依拠する解釈が裁判所において採用されない可能性のあることを当然に予見できる
(2)映画の著作物の著作者が自然人となり得、保護期間が死後38年間となり得ることも理解し得た
(3)専門家等の第三者に意見を求めるなど何ら調査をしなかった

といった諸点から被告の過失を認めていましたが、控訴審では、被告にとって酷であること、また保護期間満了制度の趣旨の尊重から、過失を否定する結論を採っています。

著作者が1人だけということが明白なチャップリン監督作品の場合と比較して著名な黒澤明が監督の場合と、有名な監督ではあるが黒澤監督よりネームバリューの低い谷口千吉、今井正、成瀬巳喜男の各監督の場合とで映画の著作物の著作者性判断に違いを認め、その点を過失の判断においてどう評価していくべきかについては議論が残りそうです。

いずれにしろ本件の控訴審では弁護士が辞任し、新たな訴訟代理人が委任されず、被告代表者は手術を伴う入院加療という事態(13頁)もあってでしょうか、知財高裁第1部(塚原裁判長)としては、歴史の評価に耐えられる審理を希求したとも感じられる判決内容ではありました。

【損害賠償を内容とする訴訟の結果】

チャップリン「モダンタイムス」事件
東京地裁平成19.8.29平成18(ワ)15552 過失肯定
知財高裁平成20.2.28平成19(ネ)10073  原審維持
最高裁平成20.10.8平成20(受)889

黒澤明監督作品格安DVD事件(対松竹)(損害賠償請求附帯控訴)
知財高裁平成21.1.29平成20(ネ)10025等 過失肯定

黒澤明監督作品格安DVD事件(対角川)
東京地裁平成21.4.27平成20(ワ)6848  過失肯定
知財高裁平成21.9.15平成21(ネ)10042 原審維持

格安DVD事件(対東宝)
「暁の脱走」(谷口千吉監督)「また逢う日まで」(今井正監督)
「おかあさん」(成瀬巳喜男監督)
東京地裁平成21.6.17平成20(ワ)11220 過失肯定
知財高裁平成22.6.17平成21(ネ)10050 過失否定(本件)
「姿三四郎」(黒澤明監督)
東京地裁平成21.7.31平成20(ワ)6849  過失肯定

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■過去のブログ記事

原審(2009年7月21日記事)
「暁の脱走」格安DVD事件(対東宝)

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■参考文献

旧法下における著作者の意義などの論点に関する知財高裁の見解について、
吉田正夫、狩野雅澄「旧著作権法下の映画著作物の著作者の意義と保護期間-チャップリン映画DVD無断複製頒布事件及び黒澤映画DVD無断複製事件の知財高裁判決-」『コピライト』573号(2009)30頁以下

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2010年06月11日

コンバース並行輸入品事件(控訴審)−不正競争防止法 商標権侵害差止等,商標権侵害不存在確認等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

コンバース並行輸入品事件(控訴審)

知財高裁平成22.4.27平成21(ネ)10058商標権侵害差止等,商標権侵害不存在確認等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官      中平 健
裁判官      上田洋幸

*裁判所サイト公表 2010.6.8
*キーワード:並行輸入、商標権、出所表示機能、品質保証機能、共同マーケティング契約、フレッドペリー事件、権利濫用、商品等混同惹起行為性、営業誹謗行為性、

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■事案

コンバース社製シューズの並行輸入品の商標権侵害性や不正競争行為性が争点となった事案の控訴審

原告(被控訴人、附帯控訴人):商社、版権管理会社、靴製造販売会社ら
被告(控訴人、附帯被控訴人):カジュアルシューズ等製造販売会社

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■結論

控訴棄却、附帯控訴認容

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■争点

条文 商標法25条、不正競争防止法2条1項1号、14号、独禁法19条

1 並行輸入の抗弁
2 権利濫用の抗弁
3 商標権無効の抗弁
4 故意過失の有無
5 損害論
6 不正競争防止法2条1項1号の成否
7 不正競争防止法2条1項14号の成否
8 独禁法に基づく請求の成否
9 濫訴による不法行為の成否

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■事案の概要

原審第1事件
『原告伊藤忠は,被告に対し,被告が(1)靴及びその包装に被告標章を付したものを輸入し,販売し,又は販売のために展示すること,(2)靴及びその包装に被告標章を付すること,(3)靴の商品に関する広告に被告標章を付して展示し,頒布し,又はこれを内容とする情報に被告標章を付して電磁的方法により提供することが原告商標権を侵害するものであると主張して,原告商標権に基づき,被告の上記行為((1)ないし(3))の差止め,(4)被告が占有する被告標章を付した靴及びその包装並びに靴の商品に関する広告の廃棄,(5)インターネット上の原判決別紙ウェブサイト目録1ないし3の各ウェブサイトの表示画面からの被告標章の抹消を求め』るなどした事案

原審第2事件
『(ア) 被告は,原告らが新米国コンバース社の商品に付された標章と同一の原告商標を付した靴を販売し,販売のために展示し,宣伝広告している行為は,原告らが製造する靴を,周知性のある新米国コンバース社の靴と誤認混同させる行為であり,不正競争防止法2条1項1号の不正競争に当たると主張して,原告らに対し,原告商標を付した靴の販売,販売のための展示,宣伝広告の差止めを求めた。
(イ) 被告は,原告らが,被告が米国コンバース社標章を付した靴及び包装を輸入し,販売し,販売のために展示し,宣伝広告をする権利を有していない旨の宣伝流布をすることは,不正競争防止法2条1項14号の虚偽の事実の告知又は流布による不正競争に当たると主張して,原告らに対し,上記の宣伝流布の差止めを求め』るなどした事案(6頁以下)

<経緯>

S39 旧米国コンバース社が日本で靴を販売開始(茶谷産業扱い)
S48 井上商事が輸入販売
S56 月星化成がライセンスを受けて国内で製造販売
H5  原告伊藤忠の子会社がライセンスを受けてタオル等を国内で製造販売
H11 原告伊藤忠が靴以外の商品の商標権を譲受け
H13 旧米国コンバース社が倒産
H13 新米国コンバース社と原告伊藤忠が株式取得・商標権契約・共同マーケティング契約
H13 新米国コンバース社が旧社から靴の商標権を取得、原告伊藤忠がこれらを譲受け
H14 原告伊藤忠が原告ビーエムアイに商標権独占的通常実施権付与
H15 被告が被告商品(新米国コンバース社製)を輸入、販売
H15 新米国コンバース社を米国ナイキ社が買収
H17 原告ビーエムアイが原告コンバースフットウェアに商標権独占的通常実施権付与

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■判決内容

<争点>

1 並行輸入の抗弁

形式的には真正商品の輸入行為が商標権侵害に該当するものの、実質的には違法性を阻却するかどうか(並行輸入の抗弁の成否)について、フレッドペリー事件最高裁判例の3要件を踏まえ同一人性の要件及び品質管理性の要件の点から原審同様、違法性を阻却しないと判断しています(43頁以下)。

   ------------------------------------

2 権利濫用の抗弁

従前の商標権者が培ってきた原告商標に化体したグッドウィルを積極的に便乗利用しつつ、かたや同一の信用の化体した被告標章を付した商品に対して原告商標権を行使することは矛盾する態度であるとした権利濫用の抗弁についても、原審同様、認められていません(60頁以下)。

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3 商標権無効の抗弁
4 故意過失の有無
5 損害論
6 不正競争防止法2条1項1号の成否
7 不正競争防止法2条1項14号の成否
8 独禁法に基づく請求の成否
9 濫訴による不法行為の成否

損害論については、請求の拡張があり損害額に変更がありましたが、それ以外は原審の判断を維持しています。

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■コメント

真正商品の並行輸入が商標権を侵害するかどうかについては、国内の商標権者の出所表示機能と品質保証機能が害されるかどうかといった実質的な観点から判断されます(後掲フレッドペリー事件最高裁判決参照)。
原審判決の意義については、同一人性の要件の詳細な検討を行い、解釈を加えている点にあるとされています(後掲泉論文参照)。
なお、並行輸入と著作権、特許権、商標権、また、不正競争防止法での考え方、さらに違法性阻却論とライセンス契約違反性の関係については、後掲「新商標法の論点」282頁以下参照。

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■参考判例

コンバース並行輸入品事件(原審)
東京地裁平成21.7.23平成19(ワ)15580商標権侵害不存在確認等請求事件PDF
原審の移送申立却下決定に関する抗告審決定
知財高裁平成19.4.11平成19年(ラ)10001移送申立却下決定に対する抗告事件PDF
最高裁平成15.2.27平成14(受)1100損害賠償、商標権侵害差止等請求事件判決
フレッドペリー事件PDF

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■参考文献

小松陽一郎「並行輸入と商標権の侵害」『新商標法の論点』(2007)281頁以下
小野昌延、三山峻司『新・商標法概説』(2009)313頁以下

   --------------------

■参考サイト

原審
LEX/DBインターネット TKC法律情報データベース
伊藤忠商事プレスリリース(2010年5月7日)
知的財産高等裁判所「コンバース」訴訟について
泉 克幸「商標権侵害と並行輸入との抗弁-「同一人性の要件」および「品質管理性の要件」」
速報判例解説 TKCローライブラリー

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■追記2010.6.14

名古屋の商標亭(弁理士廣田先生 2010.6.14記事)
コンバース事件の控訴審
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2010年06月10日

模造まつげケース事件−不正競争防止法 意匠権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

模造まつげケース事件

東京地裁平成22.5.14平成20(ワ)36851意匠権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 岡本 岳
裁判官      坂本康博
裁判官      中村 恭

*裁判所サイト公表 2010.5.26
*キーワード:容器、包装、商品等表示、商品・営業主体混同惹起行為

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■事案

模造まつげケースの意匠の類否や不正競争行為性が争点となった事案

原告:化粧用雑貨品等製造販売会社
被告:化粧品装飾品製造販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号、意匠法23条

1 本件登録意匠と被告商品の意匠との類否
2 不正競争防止法2条1項1号該当性

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■事案の概要

本件は,原告が,被告に対し,(1)被告の製造・販売する商品が原告の有する後記2(2)の意匠権を侵害する,(2)被告が上記商品を販売することは不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号の不正競争に該当するとして,意匠法37条1項,2項又は不競法3条1項,2項に基づき,上記商品の製造,販売,販売のための展示の差止め及び廃棄を求めるとともに,民法709条,意匠法39条2項又は不競法4条,5条2項に基づき,損害賠償金638万4000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年12月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』(2頁)

<経緯>

H17.7 原告が原告商品1を製造、販売
H20.5 被告が被告商品を製造、販売、展示
H21.1 原告が原告商品2を製造、販売

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■判決内容

<争点>

1 本件登録意匠と被告商品の意匠との類否

模造まつげケースに関する本件登録意匠(1262161号)と被告商品の意匠との類否について、意匠の構成、要部を検討した上で、類否を判断。
結論として、類似性を否定し、意匠権侵害を認めていません(33頁以下)。

   ------------------------------------

2 不正競争防止法2条1項1号該当性

原告は、原告商品1又は2について、不正競争防止法2条1項1号(商品・営業主体混同惹起行為)の

・模造まつげケース、上部カバー:「商品の容器」
・外部パッケージ:「商品の包装」
・台紙:「その他の商品又は営業を表示するもの」

にそれぞれ該当し、商品等表示に当たるとして被告の販売行為の不正競争行為性を問題としました(44頁以下)。

裁判所は、台紙が外部パッケージととともに容器を包むものであるとして、「商品の包装」に該当すると判断した上で、原告商品の容器・包装としての商品等表示性を検討しています。
この点について、『商品の容器や包装等が不競法2条1項1号の「商品等表示」に該当するためには,長期間にわたり使用,広告,宣伝等がされたり,短期間でも強力に宣伝広告されたりすること等の事情により,特定人の商品の出所を示す表示として需要者の間に広く認識され,自他識別機能ないし出所表示機能を獲得するに至っていることが必要というべきである。』(44頁)とした上で、原告商品の容器・包装には独自の特徴があると認められたものの、『その販売・広告期間が平成17年7月からの数年と比較的短期間であり,原告商品の販売数量,小売販売総額,宣伝広告費用の額,カタログの流通状況等が不明であること,原告商品の写真が掲載された雑誌も年間数冊発行された程度』(48頁)にすぎないと判断。
結論としては、自他識別機能ないし出所表示機能を獲得するに至っていたとまで認めることは困難であるとして、原告商品の容器・包装の商品等表示性を否定しています。

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■コメント

模造まつげや接着剤チューブといった小物を収納するためのケースの意匠の類否が問題となった事案です。
弁理士廣田先生の後掲ブログ記事に詳細な画像が掲載され、また意匠の論点について詳しく検討がされていますので、そちらをご覧いただけたらと思います。

本来、容器や包装は商品の出所を表示するものではありませんが、各事業者が販促目的で形状や模様などに工夫を凝らしており、それが長期間継続的に使用されたり、短期間でも強力に宣伝されると需要者に知れ渡り、容器や包装を見ただけで商品の出所が認識されるようになることがあります(小松一雄編「不正競業訴訟の実務」(2005)174頁以下参照)。

本件では、短期間での強力な宣伝力による特別顕著性付与が認められませんでした。

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■参考文献

小野昌延編著『新・注解不正競争防止法 新版 上巻』(2007)114頁以下

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■参考サイト

名古屋の商標亭(弁理士廣田先生執筆)
(2010年6月1日記事)
模造まつげ、すなわちアイラッシュ
(2010年6月2日記事)
まつげバシバシ
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2010年06月09日

「バッジを外せ!!リングを降りろ!!」出版契約事件(控訴審)−著作権 著作権使用料等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「バッジを外せ!!リングを降りろ!!」出版契約事件(控訴審)

知財高裁平成22.6.2平成22(ネ)10016著作権使用料等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官      本多知成
裁判官      荒井章光

*裁判所サイト公表 2010.6.3
*キーワード:出版契約、プロモート印税、名誉毀損

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■事案

元プロレスラーが寄稿した記事の原稿料の不払いの有無や名誉毀損の成否が争われた事案の控訴審

原告(控訴人) :元プロレスラー
被告(被控訴人):プロモーター
           出版社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 民法415条、709条

1 原稿料請求権の存否及びその額
2 名誉毀損等の不法行為の成否及びその賠償額

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■事案の概要

『本件は,プロレスラーである控訴人の出版関連事業を行っている被控訴人ら(その略称は,原審の審級に応じた部分を当審の審級に応じて読み替えるほか,以下,本判決において訂正する場合を除き,原判決に従う。)に対する次の(1)ないし(5)の請求からなる事案である。
(1) 控訴人が被控訴人スポーツに本件原稿を寄稿し,被控訴人インフォレストがこれを本件記事にして本件書籍に掲載して出版したことを原因として,原稿料として,被控訴人らに対して連帯して68万円及びその遅延損害金の支払を求める請求
(2) 本件書籍の表題中に「プロレス八百長伝説」との語句が入れられたことによって控訴人の名誉が毀損されたとして,不法行為(以下「不法行為1」という。)に基づく損害賠償として,被控訴人らに対して連帯して25万円及びその遅延損害金の支払を求める請求
(3) 本件書籍において,本件記事とともにA元議員のメールアドレス(以下「本件メールアドレス」という。)が掲載されたことにより,同人から控訴人を告訴したと発表され,控訴人の名誉が毀損される事態を招いたとして,不法行為(以下「不法行為2」という。)に基づく損害賠償として,被控訴人らに対して連帯して25万円及びその遅延損害金の支払を求める請求
(4) 被控訴人らが,被控訴人スポーツの虚偽の住所を控訴人に知らせることで訴訟提起を困難にしたとし,不法行為(以下「不法行為3」という。)に基づく損害賠償として,被控訴人らに対して連帯して10万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める請求
(5) 被控訴人インフォレストが,控訴人について「みずからの優柔不断を棚に上げ」と記載した書面を送付したことにより控訴人を侮辱したとして,不法行為(以下「不法行為4」という。)に基づく損害賠償として,同被控訴人に対して10万円及びその遅延損害金の支払を求める請求』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 原稿料請求権の存否及びその額

原稿料は既に支払い済みで、支払請求権は弁済により消滅していると判断されています(11頁以下)。

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2 名誉毀損等の不法行為の成否及びその賠償額

不法行為1〜4について、いずれもその成立が否定されています(13頁以下)。

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■コメント

ムック本「プロレス八百長伝説 ケーフェイ」の出版契約を巡る紛争の控訴審です。一審の判断が維持されています。
一審の判決が本年1月21日で、控訴審が6月2日判決ですので、4ヶ月程度での早い処理となっています。

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■過去のブログ記事

2010年2月15日記事(原審)
「バッジを外せ!!リングを降りろ!!」出版契約事件
written by ootsukahoumu at 10:07|この記事のURLTrackBack(0)