知財判決速報2009

2009年06月04日

シェ・ピエールワイン事件−不正競争防止法 不正競争行為差止請求事件判決(知的財産裁判例集)−


最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

シェ・ピエールワイン事件

東京地裁平成21.5.14平成20(ワ)2305不正競争行為差止請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官     山門優
裁判官     柵木澄子


*裁判所サイト公表 09/06/02

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■事案

ワインのラベルなどに使用された商品表示の周知性が争点となった事案

原告:フランス料理店
被告:サントリーワインインターナショナル

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号

1 各原告表示の周知性の有無

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■判決内容

<経緯>

S43  原告レストラン代表者のシェフAが来日
S48  青山にレストラン「シェ・ピエール」開店
S60  乃木坂に店舗移転
H5   フランス カステル社がフランスで「Chez Pierre」商標登録
H18.12.20 被告が「Chez Pierre」商標登録出願
     原告が特許庁に情報提供(商標法施行規則19条、商標法4条1項10号)
H19.3 被告がフランス カステル社からワインを輸入、販売
H19.9 被告の「Chez Pierre」商標登録(5077069号)
H20.9.2 原告による登録異議申立について登録維持決定


原告表示:「シェ・ピエール」「Chez Pierre」など
被告表示:「シェ・ピエール」「Chez Pierre」など

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<争点>

1 各原告表示の周知性の有無

被告表示の使用が不正競争防止法2条1項1号(商品・営業主体混同行為)に該当する不正競争行為に該当するかどうかについて、まず原告表示の周知性(需要者間に広く認識されていること)の有無が判断されています。


1.需要者

被告商品であるワインは、「家庭で気軽に楽しむワイン」という商品コンセプトの下に開発された商品であり、全国的で一般的な消費者を需要者とする商品である(43頁以下)。
そうすると、本件において各原告表示が周知であるといえるためには、被告商品の需要者である全国的な一般消費者に広く認識されているものであることを要する(なお、『原告は,「東京都心部に居住ないし通勤・通学し,フランス料理に関心がある一般人の間」における各原告表示の周知性を問題とするのではなく,各原告表示が全国の一般消費者に対する周知性を獲得している旨を主張しており,この点において原告の立場は上に説示したところと異ならないといえる。』としています。44頁参照)。

2.営業地域

原告のレストランは乃木坂店1店であること、またワインの提供はレストランの顧客にとどまっており、原告の営業地域はレストラン所在地及びその周辺地域に限定される(44頁)。

3.名称の識別力

顕著な特徴を有する語ではなく、レストラン名としてはありがちな名称である(44頁以下)。

4.レストランガイドや雑誌、TVでの記述や紹介

原告レストランがレストランガイドや雑誌、TV番組などで紹介されていましたが、多くのものが原告レストラン名について読者や視聴者の注意を強く惹くものとはいえない、として原告表示の周知性を立証するに足りる証拠であるとはいえないとされています(45頁以下)。


結論として、各原告表示に接する者の範囲はきわめて限定されており、各原告表示が被告商品の需要者である全国的な一般消費者の間に広く認識されているものであることを認めるに足りない、として周知性が否定されています。

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■コメント

自社の営業標識の保護にあたり、商標登録の重要性が伝わる事案です。
一見ありふれた標準文字のブランド名を保護するために不正競争防止法を争点として争うとなると、なかなかにハードルが高くなってしまいます。
なお、原告は「シェ・ピエール」ブランドについて地域密着型(東京都心部など)の周知性ではなく、全国的な周知性の獲得を前提に差止請求の範囲について地域的な範囲の限定をしていませんでした(7頁参照)。
判旨では、相手方の営業地域(全国)にまで周知性が及んでいないことは明らかにしていますが、東京乃木坂界隈での周知性についてもそもそもあったかどうか、微妙なところです。

ところで、不正競争防止法で周知性を要求している趣旨が、信用が化体した商品等表示についてその信用の限度で保護を与えるところにあるので、周知の範囲は、一定の地域で足りると判例上考えられています(小松後掲書201頁以下)。したがって、周知の地域外では当該商品等表示に信用が化体されていないので1号では保護されないことになります。
飲食店のように営業活動が地域的に制約を持っている場合は、表示が周知となっている地域的範囲が問題となりますが、一方で一流店については、グルメガイドなどを介して店舗のない地域でも知られやすい状況があります。そこでこうした一流店として知られた場合は、周知性の有無での判断よりも、「その周知の程度、表示の強弱(ありふれた名称か否か)、業種業態、顧客層などを含めて混同判断の問題として検討する方が、混同防止という法の趣旨に即するように思われる」(同書203頁)との指摘もされています。

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■参考文献

小松一雄編著「不正競業訴訟の実務」(2005)201頁以下
小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」(上)(2007)250頁以下
田村善之「不正競争法概説第二版」(2003)36頁以下

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■参考サイト

原告サイト
シェ・ピエール

被告関連サイト
サントリーワイン|特集|シェピエール


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2009年05月16日

「アルゼ王国の闇」出版営業誹謗事件−不正競争防止法 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「アルゼ王国の闇」出版営業誹謗事件

東京地裁平成21.4.27平成19(ワ)19202損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清水節
裁判官      坂本三郎
裁判官      國分隆文

*裁判所サイト公表 09/5/11

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■事案

書籍の出版・頒布による虚偽告知共同不法行為性が争われた事案

原告:パチスロ遊技機製造販売会社
被告:パチスロ遊技機製造販売会社ら

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項14号、民法719条、724条

1 不法行為の個数
2 被告らと出版社による共同不法行為の成否
3 消滅時効の成否

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■判決内容

<経緯>

H15.4.10 本件書籍1出版、頒布
H15.9.10 本件書籍2出版、頒布
H16.3.1  本件書籍3出版、頒布
H17.3.25 本件書籍4出版、頒布
H18.1.16 原告らが出版社に名誉毀損損害賠償請求(一部認容)
H18.7.4  出版社代表取締役兼編集長E名誉毀損刑事事件(有罪確定)
H18.9.13  名誉毀損損害賠償請求事件控訴審
H19.2.2  名誉毀損損害賠償請求事件上告棄却、確定


本件各書籍

本件書籍1「アルゼ王国の闇 巨大アミューズメント業界の裏側」
本件書籍2「アルゼ王国はスキャンダルの総合商社 続アルゼ王国の闇」
本件書籍3「アルゼ王国の崩壊 アルゼ王国の闇3」
本件書籍4「アルゼ王国地獄への道 アルゼ王国の闇4」

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<争点>

1 不法行為の個数

原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を記載した4点の書籍の出版、頒布行為について、原告は、本件各書籍の出版頒布行為は一連の行為であって包括して1個の不法行為が成立すると主張していました。

しかし、裁判所は、本件各書籍が当初から一連の出版を意図して出版されたものではないとして、当該書籍の具体的内容に即して個別に不法行為の成否が検討されるべきものと判断しています(34頁以下)。

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2 被告らと出版社による共同不法行為の成否

原告は、本件各書籍の出版頒布行為が被告らと出版社による不正競争防止法違反の共同不法行為が成立すると主張しました。

この点、出版社は原告と競争関係にないことから出版社に不正競争防止法違反が成立せず、こうした場合にも被告らと出版社による不正競争防止法違反の共同不法行為が成立するかどうかが争点となりました(36頁以下)。

裁判所は、まず出版行為について、被告らの取材対応や書籍買取り合意などは自ら出版行為を行ったと評価することはできず、出版社の出版行為を幇助したにすぎないと判断。
そのうえで出版社の出版行為は不正競争防止法違反の出版行為とされないことから共同不法行為の成立要件を満たさないとして、被告らの不正競争防止法違反の共同不法行為の成立を否定しています。

つぎに、書籍を全国のパチンコ店等に頒布した行為について、被告ら及び出版社が共同して行ったものと一部について認められています(37頁以下)。
しかし、出版行為での判断と同様、出版社の行為が不正競争防止法違反とならないことから、裁判所は頒布行為についても不正競争防止法違反の共同不法行為の成立を否定しています。

結論として、被告らと出版社による不正競争防止法違反の共同不法行為は否定されました。

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3 消滅時効の成否

なお、本件書籍1ないし3の出版頒布行為に基づく被告SNKに対する損害賠償請求権は、被告SNKの時効の援用によって消滅時効により消滅したと認められています(民法724条 39頁以下)。

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■コメント

原告は、被告ら単独の不正競争防止法違反や被告らと出版社による信用毀損の民法上の不法行為(民法710条)を根拠とした共同不法行為を争点としていませんでした。

共同不法行為(民法719条)の成立要件としては、「共同行為者各自の行為が客観的に関連し共同して違法に損害を加えた場合において、各自の行為がそれぞれ独立に不法行為の要件を備える」(最判昭和43.4.23昭和39(オ)902損害賠償請求事件)必要があります。
共同行為者である出版社も原告と「競争関係」にある事業者(不正競争防止法2条1項14号)である必要があるとすると、出版社はパチスロ遊技製造販売事業とは関係がなく競争関係には立たないことから、出版社の出版頒布行為に不正競争行為性が認められない以上、被告らには出版社との共同行為者もしくは教唆者・幇助者として不正競争防止法上の不正競争行為の共同不法行為性は認められない結果となります。

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■参考文献

不正競争防止法2条1項14号の損害について、

寒河江孝允(監)永野周志・矢野敏樹(編)『知的財産権訴訟における損害賠償額算定の実務』(2008)107頁以下

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■参考サイト

アルゼ株式会社 公式サイト
2007.07.27 訴訟提起のお知らせ[PDF:101KB]
2006.09.14 「アルゼ王国はスキャンダルの総合商社−続・アルゼ王国の闇」出版に係る鹿砦社等に対する名誉毀損等による損害賠償請求事件控訴審判決の件[PDF:93KB]
株式会社鹿砦社
トピックス
ウィキペディア
鹿砦社 - Wikipedia

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2009年05月14日

黒澤明監督作品格安DVD(対角川)損害賠償請求事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

黒澤明監督作品格安DVD(対角川)損害賠償請求事件

東京地裁平成21.4.27平成20(ワ)6848損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清水節
裁判官      坂本三郎
裁判官      松井俊洋

*裁判所サイト公表 09/5/11

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■事案

黒澤明監督「羅生門」「静かなる決闘」映画作品の保護期間をめぐり映画の著作者が黒澤監督なのか映画会社であるのかが争われた事案の損害賠償請求別訴

原告:角川映画株式会社
被告:格安DVD製造販売会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項2号、21条、113条1項1号、114条3項、旧法6条

1 映画の存続期間の満了時期-映画の著作者はだれか
2 原告は映画の著作権を有するか
3 被告の故意又は過失による侵害行為の有無
4 損害の有無及びその額

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■判決内容

<争点>

1 映画の存続期間の満了時期-映画の著作者はだれか

1.本件各映画の著作者

「羅生門」「静かなる決闘」の著作者が監督であれば、映画の著作権保護期間は平成48年12月31日までとなり、逆に映画製作会社の著作名義となると平成12年までには保護期間が満了しているので、平成19年頃の被告による本件DVD輸入行為が保護期間内に行われたものかどうかが問題となります(15頁以下)。

この点について、裁判所は、

旧著作権法における著作物とは,新著作権法と同様,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいい,また,旧著作権法における著作者とは,このような意味での著作物を創作する者をいうと解される

そして,思想又は感情を創作的に表現できるのは自然人のみであることからすると,旧著作権法においても,著作者となり得るのは,原則として自然人であると解すべきである

としたうえで、

旧著作権法においても,新著作権法16条と同様,制作,監督,演出,撮影,美術等を担当して映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者は,当該映画の著作物の著作者であると解するのが相当である』(20頁)

と説示。
結論として、黒澤監督が本件映画の監督を務め、脚本の作成に参加するなどしていることが認められることから、本件各映画の全体的形成に創作的に寄与している者と推認される、として少なくとも黒澤監督が本件各映画の著作者の一人であると認められています。

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2.本件各映画の著作名義

本件各映画には、映画を製作した旧大映の表示「大映株式會社製作」とあったことから、旧著作権法6条(団体名義の著作物の保護期間)の適用があるかどうかが次に問題とされています(21頁以下)。

結論としては、「監督A」との表示があり、著作者であるA(黒澤明)の実名が表示されたものであり、創作者が判別できない著作物ではないとして旧著作権法6条の団体名義の著作物には該当せず、本条の適用はないと判断されています。

本件各映画の著作権の保護期間はしたがって、黒澤監督が死亡した平成10年の翌年から起算して38年後の平成48年12月31日までと判断されました。

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2 原告は映画の著作権を有するか

映画を製作した旧大映が本件各映画の公表されたころまでに黒澤監督から本件映画の著作権を承継取得し、その後原告がこれら著作権を全部取得していると認定されています(25頁以下)。

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3 被告の故意又は過失による侵害行為の有無

被告が本件DVDを国内で頒布する目的でもって輸入した行為は、原告の著作権を侵害する行為とみなされ(著作権法113条1項1号)、過失についても、

被告は,本件各映画の著作権が存続している可能性があることを予見することができ,これについて十分調査すべきであったにもかかわらず,十分な調査を行うことなく,著作権の存続期間について自己に都合のよい独自の解釈に基づき本件DVDの輸入を行ったものと認められるから,被告には,少なくとも過失があったというべきである

として、これが肯定されています(26頁以下)。

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4 損害の有無及びその額

1.損害の有無

被告が本件DVDを輸入する行為は、原告の著作権を侵害するものとみなされる(著作権法113条1項1号)から、原告には使用料相当額の損害が生じていると判断されています(31頁)。

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2.損害の額

原告は、原告DVDの標準小売価格4700円(/1本)、4万本輸入、使用料率20%の合計3760万円を損害額として主張しました(著作権法114条3項)。

しかし、裁判所は被告の本件DVD1本あたりの使用料相当額として、本件DVD小売価格の20%に相当する額とされ、2000本の輸入販売(小売価格1800円/1本)とされたことから、合計72万円が損害額と認定するにとどまっています(31頁)。

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■コメント

すでに角川映画は、被告に対して著作権侵害差止請求控訴事件で勝訴していて(知財高裁平成20.7.30平成19(ネ)10082)、本訴は損害賠償請求訴訟となっています。

著作権法114条(損害の額の推定等)の規定は、単純化すると

1項:侵害者の譲渡数量×著作権者等の利益の額
2項:侵害者の譲渡数量×侵害者の利益額
3項:侵害者の譲渡数量×使用料相当額

と表現されますが(「著作権法コンメンタール3」439頁参照)、114条3項の判断にあたって格安DVDのように正規品と販売価格に差がある商品での基礎価格をどうするか、使用料率をどう算定するかの点が実務上参考となります。

この点、チャップリンの「モダンタイムス」など9作品の格安DVD販売が問題となった後掲チャップリン事件では、裁判所は使用料相当額についてライセンス料率25%、被告DVDの販売価格500円を基礎に算定しています。

なお、後掲対松竹差止請求事件控訴審では、損害賠償請求附帯控訴部分で著作権法114条1項により損害額の算定が行われています。

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■過去のブログ記事

2008年3月8日記事
モダンタイムス事件(控訴審)
2008年8月2日記事
対角川事件(控訴審)
2009年2月19日記事
対松竹事件(控訴審)

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■参考判例

同一被告が関係する事案

チャップリン事件
東京地裁平成19.8.29平成18(ワ)15552
知財高裁平成20.2.28平成19(ネ)10073

対角川差止請求事件
東京地裁平成19.9.14平成19(ワ)11535
知財高裁平成20.7.30平成19(ネ)10082

対東宝差止請求事件
東京地裁平成19.9.14平成19(ワ)8141
知財高裁平成20.7.30平成19(ネ)10083

対松竹差止請求事件
東京地裁平成20.1.28平成19(ワ)16775
知財高裁平成21.1.29平成20(ネ)10025等

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■参考文献

寒河江孝允(監)永野周志・矢野敏樹(編)『知的財産権訴訟における損害賠償額算定の実務』(2008)179頁以下
吉田正夫、狩野雅澄「旧著作権法下の映画著作物の著作者の意義と保護期間-チャップリン映画DVD無断複製頒布事件及び黒澤映画DVD無断頒布事件の知財高裁判決-」『コピライト』(2009)573号30頁以下

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2009年05月10日

アークエンジェルズ名称使用差止事件−不正競争防止法 不正競争行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

アークエンジェルズ名称使用差止事件

大阪地裁平成21.4.23平成19(ワ)8023不正競争行為差止等請求事件PDF

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 山田陽三
裁判官      島村雅之
裁判官      北岡裕章

*裁判所サイト公表 09/5/7

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■事案

NPO法人による動物愛護活動の不正競争防止法上の事業者性や名称、ドメイン使用差止が争点となった事案

原告:NPO法人
被告:団体代表者

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号、2条9項

1 商品等表示性の有無
2 著名性又は周知性の有無
3 類似性の有無
4 誤認混同のおそれの有無
5 名称使用許諾の有無
6 差止の可否、範囲
7 損害論

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■判決内容

<経緯>

S44    原告代表P2が来日、動物愛護活動開始
H2     原告P2が団体「ARK」を創立
H7     「ARK」が阪神淡路大震災で600頭の動物を保護
H11.9.6  P2が原告NPO法人設立
H17.8   被告P1が原告の活動に関与
H17.10  被告P1の妻の活動「ドッグドリーム」名称を「ARK-ANGELS」に変更
       フォスターホームプログラム開始
H17.12.9 原被告仲裁ミーティング
H18.2.9  名称使用を議題としたミーティング
H18.5.18 原告が名称使用差止の内容証明書を送付
H18.10.3 原告がさらに名称使用差止の内容証明書を送付
H18.10  被告が閉鎖されたテーマパーク「広島ドッグぱーく」で寄付活動
H19.2.15 被告が恐喝未遂の嫌疑で告訴受理
H19.7   本訴提起
H19.9.10 第1回口頭弁論

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原告各表示

1 ARK
2 アーク
3 ARK/アーク

被告各表示

1 ARK−ANGELS
2 Ark−Angels
3 アーク・エンジェルズ
4 アークエンジェルズ

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<争点>

1 商品等表示性の有無

1.原被告の事業者性

被告は、動物愛護活動や動物愛護活動に密接不可分なグッズの販売等は不正競争防止法上の事業活動とみなされるべきではないと主張していました。
しかし、裁判所は、

不正競争防止法1条の「事業者」であるためには,その者が営利目的を有する必要はなく,経済上の収支計算の上に立った事業であれば足りると解される。』(19頁)

としたうえで、原告被告ともに経済上の収支計算上に立った事業を行っていると認められるとして、不正競争防止法1条の「事業者」にあたると判断しています(19頁以下)。

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2.原告各表示の商品等表示性

原告は、原告各表示(「ARK」、「アーク」)を各種物品販売等により商品表示及び営業表示として使用していたと認定されています(20頁)。

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3.被告各表示の商品等表示性

被告は、被告各表示を被告の名称として使用していましたが、Tシャツなどの物品に付して販売していたり看板等で使用していて商品表示や営業表示としても使用している。また、ドメイン名(ark-angels.jp)も被告の営業表示として機能しているとして被告各表示の使用及びドメイン名の使用は、不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」の使用に該当すると裁判所は判断しています(20頁)。

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2 著名性又は周知性の有無

平成7年阪神大震災での原告の活動が新聞、雑誌に頻繁に掲載されるようになってから原告において「ARK」、「アーク」の名称が使用されるようになっており、被告が被告各表示を使用し、積極的に活動を行うようになった平成17年10月頃までには、原告の活動領域である関西地域において原告の活動を識別表示する原告の表示(略称)として、周知性を獲得していたと認められるのが相当であると裁判所は判断しています(21頁以下)。

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3 類似性の有無

不正競争防止法2条1項1号の他人の商品等表示の類否判断について、裁判所は、

取引の実情の下において,取引者又は需要者が,両者の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準に判断するべきである。』(27頁)

と最高裁昭和58.10.7判決(マンパワー事件)を踏襲したうえで、被告各表示の要部を「ARK」「Ark」「アーク」と認定し、原被告各表示の要部の対比として、称呼及び観念等において類似又は同一であるとして、いずれも類似すると判断しています(27頁以下)。

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4 誤認混同のおそれの有無

裁判所は、原被告の各表示が類似しており、しかも活動目的が動物愛護と同じであることから誤認混同のおそれが高く、しかも閉鎖された「広島ドッグぱーく」での被告の募金取扱いに関連して一般市民から原告に対して問い合わせが多数寄せられた事実から混同が生じたことを一つの資料として誤認混同のおそれを肯定しています(29頁以下)。

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5 名称使用許諾の有無

裁判所は、原告が被告に対して被告独自の活動についてアークエンジェルズの名称の使用を許諾していたということはできないと判断しています(30頁以下)。

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6 差止の可否、範囲

結論として、被告各表示及び「ark-angels.jp」ドメイン名の使用差止、被告各表示を付した物品等の廃棄、被告ウェブサイトなどからの被告各表示の抹消の必要が肯定され、動物を扱う事業及びこれに付帯する事業の範囲での差止が認められています(不正競争防止法3条1項、2項 37頁以下)。

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7 損害論

原告に対する信用毀損(無形損害)の損害額として100万円、弁護士費用相当の損害額として10万円の合計110万円が損害賠償額として認められています(不正競争防止法4条、民法709条 38頁以下)。

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■コメント

被告も20年以上にわたって動物保護活動を行っていましたが、閉鎖されたテーマパーク「広島ドッグぱーく」での寄付活動での問題もあって、名称変更した「アークエンジェルズ」の名称使用の点で原告名称「アーク」との誤認混同のおそれが比較的容易に認められた結果となっています。

ところで、わたしの事務所がある世田谷区駒沢公園付近は、DOGショップがたくさんあって、そのなかには犬の里親活動を熱心に行っているショップがあります。また、Dog Shelterもあります。
そんな地縁もあってか犬グッズの商品企画開発、ライセンス契約案件などにもかかわりますが、彼ら(わんこ)にとって少しでも心落ち着ける環境が提供されればと願って止まないところです。

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■参考文献

小松一雄編著「不正競業訴訟の実務」(2005)218頁以下
小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」(上)(2007)149頁以下、183頁
武智克典「著名商品等表示(2)-ドメイン名関係〔J-PHONE事件〕」『商標・意匠・不正競争判例百選』(2007)164頁以下

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■参考判例

・営業表示の使用による信用損害について、
歌謡スナックシャネル事件参照。
東京地裁平成6.4.27平成4(ワ)19111判決PDF

・ドメイン名の営業識別機能性について、以下参照。
ジャックス事件
名古屋高裁金沢支部平成13.9.10平成12(ネ)244判決PDF
富山地裁平成12.12.6平成10(ワ)323判決PDF(原審)
j-phone事件
東京高裁平成13.10.25平成13(ネ)2931判決PDF
東京地裁平成13.4.24平成12(ワ)3545判決PDF(原審)

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■参考サイト

原告サイト
アニマルレフュージ関西-ARK - NEW

ニュースリリース(アニマルレフュージ関西-ARK [ニュース&イベント])
「アークエンジェルズ」について

被告サイト
動物愛護団体 ARK-ANGELS
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2009年05月08日

中国ドラマ「苦菜花」スカパー事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

中国ドラマ「苦菜花」スカパー事件

東京地裁平成21.4.30平成20(ワ)3036損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官      関根澄子
裁判官      古庄研

*裁判所サイト公表 09/5/7

   --------------------

■事案

テレビ番組の著作権の移転に関する対抗要件の要否や通信衛星放送会社の注意義務違反性が争点となった事案

原告:放送事業者(中国法人)
被告:衛星テレビ専門会社
    スカパーJSAT株式会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法23条、77条、旧法例7条、11条、民法709条

1 準拠法
2 著作権譲渡の有無
3 対抗要件欠缺の抗弁の成否
4 被告スカパーの過失の有無
5 損害論
6 差止めの要否

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■判決内容

<経緯>

H14     北京華録がドラマ「苦菜花」(本件ドラマ)を製作
H14.4.30  被告衛星テレビ専門会社(被告亜太)と被告スカパーが
        業務委託契約締結
H16.7    ドラマ「苦菜花」が中国で公開される
H16.9.30  被告亜太と湖南影視が番組提携契約締結
H16.10.26 北京華録が湖南影視と放送権譲渡契約締結
H17.3.25  北京華録と原告がテレビ番組著作権譲渡契約締結
H17.5.3   被告スカパー785チャンネルで本件ドラマ全20話を各2回放送
        (11日間)
H17.8.4   北京華録が中国国家版権局から著作権登記証書交付
H17.8.30  原告が仮処分命令申立て
H17.9    原告が被告スカパーに通知書をFAX
H17.11.1  仮処分決定
H20.2.6   本訴提起

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<争点>

1 準拠法

原告が中国法人であること、中国製テレビドラマを巡る紛争である点で渉外的要素を含むものであることから、まず準拠法の決定がされています(22頁以下)。

1.著作権侵害に基づく差止請求

本件ドラマは、ベルヌ条約上日本の著作権法の保護を受ける。
その上で、著作権侵害に基づく差止請求は、ベルヌ条約5条(2)により日本の著作権法が適用される。

   --------------------

2.著作権侵害に基づく損害賠償請求

著作権侵害に基づく損害賠償請求関係は不法行為との法性決定の上、改正前の法例11条(不法行為地法)により日本法が適用される。

   --------------------

3.著作権譲渡の有無

(1)譲渡の原因関係である法律行為
 譲渡の原因関係である法律行為の成立及び効力については、旧法例7条(当事者意思による又は行為地法)によって準拠法を決定する。

(2)目的である著作権の物権類似の支配関係の変動
 著作権の譲渡の第三者に対する効力に係る物権類似の支配関係の変動については、日本の著作権法が適用される(東京高判H13.5.30 キューピーイラスト著作権事件)。

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2 著作権譲渡の有無

1.準拠法

原告とテレビ番組を製作し著作権を有していた北京華録との著作権譲渡契約について、その成立及び効力についての準拠法は、当事者意思により中国の法律による(23頁)。

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2.著作権譲渡契約の有無

そして、本件譲渡契約書(甲2)の内容について検討がされています(23頁以下)。その上で平成17年3月25日、原告と北京華録との間で本件ドラマを含む合計6本のドラマ作品について韓国、シンガポール、日本及びマレーシアにおける著作権を代金50万人民元で譲渡する旨の契約が締結されていることが認められています。

なお、中国法における「譲渡」の用語の意義などから、原告は本件譲渡契約において本件ドラマの非独占的利用権の譲渡を受けたにすぎないと被告は反論しましたが、容れられていません(25頁以下)。

結論として、原告が北京華録から本件ドラマの著作権の譲渡を受けていたことが認められました。

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3 対抗要件欠缺の抗弁の成否

本件ドラマを製作し著作権を有していた北京華録と湖南地域の放送事業者である湖南影視との間で放送権譲渡契約が締結されていました。

そして、被告亜太は湖南影視と番組提携契約を締結していたことから、被告亜太は本件ドラマのCS放送権を有しているとして原告主張の本件著作権の移転につき日本における登録の欠缺について正当な利益を有するものであって、著作権法77条の「第三者」に被告亜太は該当すると主張しました(30頁以下)。

しかし、北京華録と湖南影視との間で締結された放送権譲渡契約が、本件ドラマの「湖南地域における放送権」の利用許諾契約にすぎず日本での放送権(公衆送信権)の譲渡の合意まで含むものではないと裁判所は認定。
被告亜太は、対抗要件欠缺を主張するについて正当な利益を有しておらず、著作権法77条「第三者」に該当しないことから、原告は被告亜太に対して本件著作権の登録なくして対抗することができると判断しています。

結論として、被告亜太による11日間にわたる本件ドラマ全20話各2回のCSデジタル放送(本件放送)は、原告の本件著作権(公衆送信権)の侵害にあたると判断されました。

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4 被告スカパーの過失の有無

CSデジタル放送サービスの一連の流れ(番組制作・編集→機械的圧縮符号化→高次元多重化処理→衛星へアップリンク→ダウンリンク→各家庭での受信・視聴)のなかでの被告スカパーの業務内容を裁判所は検討(4頁以下、34頁以下)。

スカパーが被告亜太が提供する放送番組の制作・編集等に関与していなかったことやスカパーの放送番組送出業務は機械的な処理であることから、スカパーが本件放送の主体であると解することはできない。また、運用業務(顧客管理業務、広告宣伝業務等)を受託していたが個々の放送番組の具体的な内容やその著作権の帰属等について十分に知り得る立場にあったとまでいうことはできないとして、

被告スカパーは,個別の放送番組の放送前に,その内容に著作権侵害等の法令違反が存在することを現に認識し,あるいは,著作権者等関係者からの警告等を受けるなどして著作権侵害等の法令違反が存在する具体的な可能性を認識していた事情がある場合であれば格別,そのような事情のない場合には,個別の放送番組ごとに,その放送前に,当該放送番組が放送された場合に著作権侵害となるかどうかを調査,確認すべき注意義務を負うものではないと解される。』(40頁)

と裁判所は判断。

結論として、被告スカパーは本件放送前に、本件ドラマが放送された場合に著作権侵害となるかどうかを調査、確認すべき注意義務を負っていたものということはできず、過失はないとされました。

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5 損害論

原告は、使用料相当額として5600万円、弁護士費用相当額として1120万円の合計6720万円を損害額として主張していました。
結論としては、使用料相当額として本件ドラマ1話当たり6万円(2回放送分)、全20話の合計120万円と認定。弁護士費用相当損害額として15万円の合計135万円を被告亜太による著作権侵害の損害額と判断しています(41頁以下)。

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6 差止めの要否

被告亜太に対して、本件ドラマの放送の差止めの必要性が認められています(43頁)。

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■コメント

問題となった中国製作のテレビドラマは、抗日闘争が舞台となったドラマでした。

衛星放送サービスプラットホーム事業会社の著作権侵害事案における注意義務の有無、内容に関する判断部分が先例として重要と考えられます。

スカパーの立ち位置としては、番組の「単なる導管的な役割」にすぎないとして放送行為の主体性を自ら否定していますが(15頁参照)、本件被告が過去にアテネオリンピック放送で問題を起こしていたこと(40頁参照)などからすると、スカパーが今後も従前通りのプラットホーム事業者としての取引態度で本件被告と接すれば済むかどうかは微妙なところです。

仕事柄、中国語圏で利用する著作権契約書などにも接しますが、日本法が準拠法の場合であっても相手先起案の契約書の場合、独特の言い回しもあるので文言の取扱いには注意したいところです。
また、中国国家版権局版権保護センターへの日本からのアクセスが容易になれば、中国でのビジネスや中国製コンテンツの取扱いについて対抗問題(対抗要件具備の必要性)も今後増えてくるかもしれません。

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■参考サイト

ドラマ「苦菜花」
苦菜花-二十話テレビ連続ドラマ(DVD BOX7枚組)、中国語映画DVD JChere.com

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■参考判例

著作権侵害事案における準拠法について、

キューピーイラスト著作権事件
東京高判平成13.5.30平成11(ネ)6345著作権侵害差止等請求控訴事件

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■参考文献

中国著作権法24条、25条(ライセンス契約、譲渡契約)について、

IPトレーディング・ジャパン株式会社編著『中国知的財産管理実務ハンドブック』(2006)106頁
文化庁『中国における著作権侵害対策ハンドブック』(2005)
PDF122頁以下参照

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■追記

控訴審関連記事(2009年10月30日)
中国ドラマ「苦菜花」スカパー事件(控訴審)
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2009年04月25日

アイブロウトリートメント営業秘密事件−不正競争防止法 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

アイブロウトリートメント営業秘密事件

大阪地裁平成21.4.14平成18(ワ)7097等損害賠償等請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官      西理香
裁判官      北岡裕章

*裁判所サイト公表 09/4/23

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■事案

退職従業員による眉の美容施術(アイブロウメイク)に関する技術の使用について競業避止義務違反性が争点となった事案

原告:化粧品製造販売会社
    眉サロン(化粧品製造販売会社の子会社)
被告:原告元従業員ら8名

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 不正競争防止法2条6項、民法415条、709条

1 誓約書の対象となる技術の範囲
2 被告A、Bは誓約したか
3 競業避止義務の公序良俗違反性
4 被告A、Bは原告技術を使用したか
5 被告Aらは機密情報を使用したか
6 従業員引き抜き行為の不法行為性
7 損害論
8 被告Dらは原告技術を使用したか(第2事件)

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■判決内容

<経緯>

H14     被告Aが訪米、アナスタシア社の施術を体験
H15.6    原告が被告Aをアナスタシア社へ派遣
H15.12.23  原告とアナスタシア社が技術導入契約締結(日本地域)
H16.2.21  被告A,Bがアナスタシア事業の責任者に就任
H16.4.12  被告A,Bがアナスタシア社で研修
H16.5.10  被告Aが研修報告、事業プラン提案
H16.7.2   被告A,Cがプレスツアー企画、参加
        被告Bが研修帰国後に原告技術を完成
H17.3    被告らは甲7誓約書を原告に差し入れる
H18.1.30  原告とアナスタシア社が購入契約締結(アジア地域)
H18.2.2   被告Aらが会社設立
H18.4.24  被告Aが退職
H18.5.17  被告Aらが被告サロンを開設
H18.5.31  被告Bが懲戒解雇

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<争点>

1 誓約書の対象となる技術の範囲

被告Dらが勤務を開始した時に原告に差し入れた誓約書(甲5誓約書)には、退職後に自らの仕事に関連して「アナスタシアアイブロウトリートメント技術」を使用しない旨の規定がありました。

この誓約書で制限対象となる技術が、眉美容サービスに関するライセンサーである米国アナスタシア社の技術を指すのか、あるいはアナスタシア社の技術を基礎として原告らにおいて独自に考案・付加した内容を含む技術(原告技術)を含むのかについて、まず争点となっています(37頁以下)。

この点について、裁判所は、誓約書の趣旨がライセンシーである原告が退職後の原告技術の使用を禁じることによる独占的利益を確保することにあることから、甲5誓約書の対象となる技術の範囲に原告技術が含まれると判断しています。

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2 被告A、Bは誓約したか

被告A,Bは原告に甲5誓約書を差し入れていませんでしたが、被告A,Bがこの誓約書を起案したり、研修者に署名を求めるなどアナスタシア事業の責任者であった経緯を踏まえ、裁判所は被告A,Bが甲5誓約書の誓約をする旨の黙示の意思表示をし、原告と合意を成立させていたと判断しています(47頁以下)。

   ----------------------------------------

3 競業避止義務の公序良俗違反性

裁判所は、アイブロウメイクについて退職後の競業を禁止することは退職従業員の職業選択の自由を制約することになることから、不当な誓約の場合は公序良俗違反となり誓約は無効となりうる、としたうえで、原告技術が世の中で一般的に用いられる技術であったかどうかを検討しています(48頁以下)。

まず、原告技術の内容としてその中核となる作業を4つの作業(3点決め作業、描く作業、ワックス脱毛作業、仕上げ作業)と認定。
そして、平成18年当時眉に関する美容施術者であれば容易に取得ないし習得できる技術であったかどうかを検討。

結論として、描く作業や仕上げ作業などについては、習得容易性を認めてこの点についても不使用を誓約させる趣旨であれば不当な制約として公序良俗に違反すると判断。
これに対し、退職後に眉山の位置決めの仕方及びワックス脱毛作業を含む全体としての原告技術を使用しない旨誓約させる部分は、原告の正当な利益の保護を目的とするものであると判断しています。

そのうえで、被告らの設立会社の事業内容を勘案して、眉山の位置決めの仕方及びワックス脱毛作業を制限する趣旨の誓約は、被告らの就業の機会を不当に奪うことにならないとして公序良俗違反性を否定しています(74頁)。

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4 被告A、Bは原告技術を使用したか

被告A、Bが開設した被告サロンで原告技術を使用していましたが、被告A、Bは事業主体でもなく、また、自ら施術しているわけではありませんでした。
しかし、被告A、Bは被告サロンの取締役として取締役会における意思決定を通じて原告技術を使用しているものと認められています(75頁以下)。

結論として、原告に対する甲5誓約書記載の誓約違反の債務不履行及び不法行為が認められ、本件技術の一部(別紙1、別紙2参照)の営業上の使用の差止請求が求められています。

なお、原告子会社に対する不法行為の成立は、認められていません(79頁以下)。

   ----------------------------------------

5 被告Cは機密情報を使用したか

裁判所は、甲7誓約書で使用が禁止されている機密情報に原告技術が該当するとしたうえで、被告Cは被告サロンの取締役として取締役会における意思決定を通じて原告技術を使用しているとして、原告に対する甲7誓約書記載の誓約違反の債務不履行及び不法行為を認めています(76頁以下)。

   ----------------------------------------

6 従業員引き抜き行為の不法行為性

被告Aらの従業員引き抜き行為について、違法性が認められるまでに至っていません(77頁以下)。

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7 損害論

被告Aらが原告技術を使用したことによる原告の損害について、

(1)被告A,Bの米国研修参加費用分
(2)アナスタシア事業に係る独占的権利の価値減少分
(3)弁護士費用


を原告は主張しましたが、(3)弁護士費用相当損害金として150万円の損害を被ったものと認められるにとどまっています(80頁以下)。

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8 被告Dらは原告技術を使用したか(第2事件)

被告サロンで施術者として働いている被告Dらの行為について、甲5誓約書記載の誓約違反の債務不履行が認められ、本件技術の一部(別紙1参照)の営業上の使用の差止請求が肯定されています(82頁以下)。

   --------------------

■コメント

美容サロン独立の際の技術の持ち出しや引き抜き行為、競業行為が問題となった事案です。
退職して新しく美容サロンを開設した被告A,Bはアナスタシア社へ技術指導を受けるために米国研修派遣されたりと、原告の眉美容サービス事業の中核を担う人たちでした。

競業避止義務が課された誓約書(契約書)の有効性(公序良俗違反性)が争点となりましたが、競業避止義務の内容(裏を返せば、ノウハウとして保護できる範囲=差止ができる範囲)を詳しく検討している点が参考となる判例です。

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■参考文献

永野周志、砂田太士、播磨洋平「営業秘密と競業避止義務の法理」(2008)247頁以下
フランチャイズシステムにおけるノウハウ保護、秘密保持規定や競業避止義務規定について、
川越憲治「フランチャイズ・システムの法理論」(2001)313頁以下
金井高志「フランチャイズ契約裁判例の理論分析」(2005)483頁以下
小塚荘一郎「フランチャイズ契約論」(2006)183頁以下

   --------------------

■参考サイト

アナスタシア|アイブロウトリートメントのANASTASIA

アナスタシアビバリーヒルズ

アイブロウトリートメントサロン『LyuVie』
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2009年04月16日

携帯電話らくらくホン営業主体商品混同行為事件-不正競争防止法 仮処分命令申立事件

携帯電話らくらくホン営業主体商品混同行為事件

東京地裁平成21.4.15仮処分命令申立事件(和解)


■事案

ソフトバンク携帯端末(東芝製)とドコモらくらくホン携帯端末
(富士通製)の外観等の類否が争点となった事案

債権者:ドコモ、富士通
債務者:ソフトバンクモバイル、東芝

   --------------------

■結論

和解

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号

1 携帯電話の外観、機能等の類否

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■和解内容

<経緯>

H20.3.17 東京地裁に製造、販売などの差止仮処分申立て
H21.4.15 和解成立

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和解内容:非公開

ただし、問題となった東芝製携帯電話「かんたん携帯 SoftBank 821T」の
販売について、顧客に影響がないということなので、現行品はそのまま
許容される内容となったと思われます。

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■コメント

シニア向けでユーザビリティを求めた携帯電話端末の場合、あるいはそのほかの家電商品でもそうでしょうが、ユニバーサルデザインを追求すれば、どうしても同じようなインターフェイス、ボタン操作形状になってしまうのかもしれません。
今回、らくらくホンの特徴であるディスプレイ下部の[1][2][3]ボタンや十字の方向決定キー、メニュー体系などが似ているということでドコモ側は問題を重視、仮処分という民事手続での処理となったようです。
とはいえ、そうした制約が多いところでデザインの優劣を競うところがまた端末開発会社の開発の醍醐味でしょうから、今後の携帯端末のデザイン展開を楽しみにしたいところです。

   --------------------

■参考サイト

ソフトバンク「かんたん携帯」への仮処分申立事件で各社が和解 携帯 マイコミジャーナル(2009.4.15記事)
ドコモ、ソフトバンク“かんたん携帯”の製造・販売等差し止めを求める仮処分命令を申し立て - ITmedia +D モバイル(2008.3.17記事)
ドコモ、ソフトバンク「821T」製造-販売差止で仮処分申請 ケータイWatch(2008.3.17記事)



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2009年04月10日

読売「押し紙」著作権事件−著作権 著作権に基づく侵害差止請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

読売「押し紙」著作権事件

東京地裁平成21.3.30平成20(ワ)4874著作権に基づく侵害差止請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清水節
裁判官      佐野信
裁判官      國分隆文

*裁判所サイト公表 09/4/8

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■事案

新聞社の法務部員が通知した著作権侵害警告書(催告書)の
作成者や創作性が争点となった事案

原告:読売新聞西部本社法務室長
被告:フリージャーナリスト

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、18条

1 本件催告書を作成したのは原告か
2 本件催告書は創作的な表現といえるか

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■判決内容

<経緯>

H19.12.19 原告が別件訴訟の代理人弁護士へ回答書をFAX送信
H19.12.21 原告が被告サイトに回答書が掲載されているのを発見
        原告が被告に催告書をメール送信

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<争点>

1 本件催告書を作成したのは原告か

原告が別件(押し紙問題:新聞社から販売店に配達されたが、販
売されていない新聞紙の問題)で第三者にFAXした回答書を被告
が無断で被告サイトに掲載したとして、原告は被告に対して回答書
の著作権に基づいて本件催告書(著作権侵害警告通知書)をメール
に添付して送信しました。

本件催告書についても、被告サイトに掲載したとして、本件催告書
の著作者人格権、著作権に基づいて本件催告書の被告サイトからの
削除を求めました。

この催告書の内容は、

1.中止を求める被告の行為の指摘
2.原告が有する権利の主張
3.上記の被告の行為が原告の上記権利を侵害する旨の主張
4.上記の被告の行為の中止の要求
5.同要求に従わなかった場合、法的手段に訴えることの通告


という構成のものでした(32頁、34頁参照)。

催告書の作成にあたり、原告室長は弁護士(本件訴訟の代理人
弁護士)に相談していたことから、そもそもこの催告書の作成者
が室長なのか、弁護士なのかがまず争点となっています。

結論としては、本件催告書は原告室長が作成したものではない
とされています(27頁以下)。

   ----------------------------------------

2 本件催告書は創作的な表現といえるか

争点1で原告室長には本件催告書について著作者性がないと判断
されましたが、仮に原告が本件催告書の作成者であるとした場合
に、本件催告書に創作性(著作権法2条1項1号)があるかどうかが
さらに判断されています。

裁判所は、創作性の判断について、

 著作権法2条1項1号所定の「創作的に表現したもの」というためには,作成者の何らかの個性が発揮されていれば足り,厳密な意味で,独創性が発揮されたものであることまでは必要ないが,作成者の個性が何ら現れていない場合は,「創作的に表現したもの」ということはできないと解すべきところ,言語からなる表現においては,文章がごく短いものであったり,表現形式に制約があるため,他の表現が想定できない場合や,表現が平凡かつありふれたものである場合は,作成者の個性が現れておらず,「創作的に表現したもの」ということはできないと解すべきである。
(33頁以下)

としたうえで、本件催告書の表現内容について、裁判所は以下
のように検討し、結論として本件催告書の創作性を否定してい
ます。

1.中止を求める被告の行為の指摘(第1文)

被告サイトに本件回答書の本文が全文記載されているという
事実の表現部分:
その表現方法の選択の幅は狭く、また平凡な表現方法によっ
ており、ありふれたものである。

2.原告が有する権利の主張(第2文)

本件回答書について原告が公表権を有しているという主張を
表現した部分:極めて簡潔な表現であったり、創意工夫が認
められず、著作者の個性が現れているということはできない。

3.上記の被告の行為が原告の上記権利を侵害する旨の主張(第3文)

本件回答書を被告サイトに掲載することが原告の公表権を侵
害する違法行為であるという主張部分:ありふれたものであり、
原告の個性が現れていない。

4.上記の被告の行為の中止の要求(第4文)

被告サイトから本件回答書の削除を求める表現部分:
表現内容の一般性や表現方法がありふれたものである点など
から、原告の個性が現れていない。

5.同要求に従わなかった場合、法的手段に訴えることの通告(第5文)

本件催告書による原告の催告に被告が従わない場合、法的手
段に訴えるとの表現部分:表現方法はありふれており、原告の
個性が現れていない。

6.催告書全体の構成

本件催告書全体の構成:原告の個性が現れていない。


以上から、原告の著作権に基づく差止請求は棄却されています。

   --------------------

■コメント

法務部室長の肩書きで相手方に通知された催告書なら、業務上の書類ですから、そうした催告書にも著作権があるというなら、職務著作物(法人著作)となりそうです(17頁参照)。
わざわざ、室長個人の著作物として著作権侵害性を論難するのは、新聞社本体を原告とする裁判にはしたくなかったという配慮からでしょうか、新聞社の法務部員の対応としてよく分からない事案処理です。
もっと早い段階から、室長がグループ本社の法務部に相談していれば違った対応になったかもしれません(後掲被告サイト 2月16日記事参照)。

ところで、契約書草案や法律関連の書籍について、その著作物性が否定された事例が過去にありますが(後掲判例参照)、実務的なもの、ひな型的な書類の著作権上の保護の要否については、それらの独占による不当な弊害の防止という実質的理由が働きます(中山後掲書参照)。

今回、東京地裁民事29部清水コートが催告書の著作物性を否定した判断は重要で、紛争当事者間でやりとりされる催告書の類に著作物性が認めらない(著作権法上の保護は与えない)との裁判所の判断は、もちろん、営業誹謗行為(不正競争防止法2条1項14号)や名誉毀損、プライバシー権侵害は別論ですが、紛争事案がネットで公表される機会が増えることを後押しするものとなります。

本件は控訴されたようなので知財高裁による催告書の著作物性の争点部分にかかわる判断が待たれます。

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■参考判例

・土地売買に関する契約書案の著作物性が否定された
事案について、

土地売買契約書事件
東京地裁昭和61.5.14(ワ)8498契約書返還等請求事件(Netlaw)

・債権回収や契約、手形小切手などの法律問題に関して
一般人向けに解説した書籍の表現の著作物性(創作性)
が否定された事案について、

法律書籍著作権侵害事件控訴審
知財高裁平成18.3.15判決平成17(ネ)10095損害賠償等請求控訴事件(2006年3月29日記事)

・手紙の内容が単なる時候のあいさつ等の日常の通信文
の範囲にとどまるものではないとして著作物性が肯定さ
れた事案について、

「三島由紀夫−剣と寒紅」事件
東京高裁平成12.5.23平成11(ネ)5631著作物発行差止等請求控訴事件PDF
東京地裁平成11.10.18平成10(ワ)8761著作物発行差止等請求事件PDF(原審)

   --------------------

■参考文献

中山信弘「著作権法」(2007)40頁以下
独自の船荷証券の用紙の著作物性が否定された
事案(東京地判昭和40.8.31)について、
耳野皓三「船荷証券の用紙」『著作権判例百選』(1987)52頁以下

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■参考サイト

被告サイト
新聞販売黒書
(本件回答書については、3月24日付記事参照)

関連記事
黒藪さん勝利判決!読売新聞の言論封殺の目論見を粉砕(レイバーネット日本)
「押し紙裁判」フリー記者が読売に勝訴(JanJanニュース 2009.3.31記事)
読売新聞がジャーナリストを“言いがかり”で言論封殺(前編) エキサイトニュース(2008年4月12日)

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■追記 09.4.20

企業法務戦士の雑感
[企業法務][知財]恥の上塗り・・・。

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■追記09.9.18

知財高裁平成21.9.16平成21(ネ)10030著作権に基づく侵害差止請求控訴事件
2009年9月18日記事
読売「押し紙」著作権事件(控訴審)

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2009年04月09日

LPガス退職従業員営業誹謗事件−不正競争防止法 不正競争行為差止等判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

LPガス退職従業員営業誹謗事件

東京地裁平成21.3.27平成20(ワ)652不正競争行為差止等PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官      大竹優子
裁判官      中村恭

*裁判所サイト公表 09/4/7

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■事案

会社の元従業員による「会社はもうつぶれた」などの告知行為の
営業誹謗行為性(不正競争防止法2条1項14号)が争点となった
事案

原告:LPガス販売会社
被告:元従業員

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項14号

1 虚偽事実の告知性
2 営業上の利益の侵害性
3 損害論

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■判決内容

<経緯>

S38.4.1   被告が原告会社に入社
H18.8.21  正社員から嘱託契約へ変更
H18.11.1  原告がサイサンに買収される
H19.3.31  被告が退社
H19.7.1   被告は日本瓦斯と販売代理業務委託契約締結
H19.12.21 原告が被告を相手として仮処分申立て

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<争点>

1 虚偽事実の告知性

被告は原告会社を退職後、以前担当していた銚子市一帯の原告の
顧客約70世帯に対して、LPガスの供給契約の日本瓦斯への切替え
勧誘営業活動を行い、そのうち26世帯が切替え手続を行いました。

被告は、勧誘の際に数名の顧客に対して、
「原告はもうつぶれた。」「原告は,もう営業していない。」
「原告は身売りしたので,もうすぐなくなる。」「被告が退職した
ので,原告には,工事を担当する社員はもういだれもいない。」

と述べていました。

(1)競争関係

被告は、退職後原告と同業である日本瓦斯との間でLPガス需要者
との供給契約1件成約ごとに成果報酬を受け取る業務委託契約を
締結していました。
こうした業務委託契約の締結が、代理店類似の契約にあたるとし
て、原告と被告は不正競争防止法上の競争関係にあると判断され
ています(15頁以下)。

(2)虚偽事実の告知の有無

「原告はもうつぶれた。」「原告は,もう営業していない。」
「原告は身売りしたので,もうすぐなくなる。」「被告が退職した
ので,原告には,工事を担当する社員はもういだれもいない。」
などの告知内容について、事実の虚偽性が認められています
(16頁以下)。

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2 営業上の利益の侵害性

被告による虚偽告知行為によって、原告の信用毀損、顧客喪失の
おそれがあるとして営業上の利益の侵害が認定されています(16
頁以下)。

結論として、原告の顧客に対する虚偽告知、流布行為の差止が認
められています。

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3 損害論

被告の故意が認められており、損害賠償額としては、逸失利益は
認められず、信用毀損部分(無形損害)として30万円、弁護士費
用として6万円の合計36万円が認定されています(17頁以下)。

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■コメント

19歳で入社以来44年間働いた従業員の退職に際して、会社と
の間でうまく意思疎通ができなかったことが紛争の遠因として
あるようです(11頁以下参照)。
原告会社は平成18年に別会社に買収されており、創業家関係
者らが役員から退任するなど内部事情のごたごたがいろいろ
あったのかもしれません。

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2009年04月02日

精肉石川屋産地偽装刑事事件−不正競争防止法 刑事被告事件判決(下級裁判所判例集)−

最高裁判所HP 下級裁判所判例集より

精肉石川屋産地偽装事件

仙台地裁平成21.2.25平成20(わ)707等不正競争防止法違反等被告事件PDF

仙台地方裁判所第2刑事部
裁判長裁判官 山内昭善
裁判官      小池健治
裁判官      佐藤彩香

*裁判所サイト公表 09/3/28

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■事案

精肉会社の代表取締役であった被告人が,外国産豚肉の加工品を,
国産である旨表示した上,複数の学校給食センターに対し販売,
納品し,仙台市教育委員会からその代金を交付させた不正競争防
止法違反及び詐欺の事案につき,懲役3年執行猶予4年の判決を
言い渡した事例(判示事項の要旨より)

被告:食肉加工品類販売会社代表取締役

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■主文

懲役3年(執行猶予4年)

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■罰条

条文 不正競争防止法2条1項13号、21条2項1号、
   刑法60条、246条1項


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■判決内容

犯罪事実

被告人は、従業員らと共謀の上、不正の目的をもって、外国産豚肉
加工品を「宮城県米山町」と記載させてその原産地を誤認させる
ような表示をし、学校給食センターに納品するという、一連の不
正競争行為などを行いました。

量刑の理由

小中学校関係者、児童生徒、保護者に与えた不安は大きいとの指
摘もされています(4頁参照)。

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■コメント

産地偽装豚肉の販売代金437万円余りの詐取の点も含めて、不正
競争防止法違反と詐欺罪で有罪となっています。

裁判所サイトに登載された不正競争防止法違反にかかわる産地偽
装刑事事件としては、本件のほかにミートホープ挽肉偽装刑事事
件と日本ライス刑事事件があります。

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■過去のブログ記事

2008年4月10日記事
ミートホープ挽肉偽装刑事事件
2008年5月15日記事
日本ライス事件


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2009年03月31日

もっこりBOMBER形態模倣事件〜不正競争防止法 不正競争行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

もっこりBOMBER形態模倣事件

東京地裁平成21.3.27平成20(ワ)5826不正競争行為差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官      杉浦正典
裁判官      古庄研

*裁判所サイト公表 09/3/27

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■事案

携帯電話用ストラップなどのファンシーグッズの
発案者や商品の形態模倣性が争われた事案

原告:日用雑貨輸出入販売会社
被告:土産品製造販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項3号

1 「他人の商品」該当性

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■判決内容

<経緯>

H18    他社製品「まりもっこり」が流行
H19.3   原告と被告が商談、取引
H19.6   原告が「もっこりBOMBER」を販売
       被告が原告に「ご当地物」商品化を提案
H20.3.14 原告が「もっこりBOMBER」商標登録
H20.2   被告が「もっこりトゥカター」を販売
H20.2.14 原告が被告に内容証明郵便で販売中止を通知
H20.3.5  原告が本件訴訟を提起

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<争点>

1 「他人の商品」該当性

(1)原告商品の発案者はだれか

原告商品である「もっこりBOMBER」は、

1.頭部にラメ入りボンボンが複数取付け
2.目がボタン状
3.厚い唇(いわゆる「たらこ唇」)
4.股間部分にラメ入りボンボンが1個取付け

などの特徴を持ったファンシーグッズでした。

もともとタイの民俗人形を原型にした商品でしたが、
ボンボンで股間部分を強調するというアイデアを取
り入れた原告商品の発案者が、原告代表者なのか、
それとも被告従業員なのかが争われています。

この点について、商品開発に関する原告と被告のや
りとりの経緯を踏まえたうえで結論的には、原告商
品の発案者が原告代表者なのか被告従業員なのか、
決することはできないと判断されています(12頁以
下)。

(2)股間部分のボンボンの形態的特徴性

頭部のボンボンを股間部分に取り付けた点が、原告
商品に特有の形態的特徴であるかどうかも争われて
いますが、この点についても他社製品に同様のもの
があったことなどからその形態的特徴性が否定され
ています(22頁)。

結論として、原告商品が原告による独自開発商品と
いうわけではなく、不正競争防止法2条1項3号所定
の「他人の商品」に該当しないと判断されています。

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■コメント

契約で明示的にでも縛らないと商品開発上のアイ
デアはなかなか保護できないということがわかる
事案です。
もっこり、というと、下ネタ系ですが、グッズとしては
ファンキーで意外と人気があるようです。

原告商品と被告商品の画像がないので、よく分か
らないのですが、被告商品には「大根」のような
付属品が付いていたり、手足が短かったりと多少
の違いはあったようです(8頁以下)。

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■参考サイト

原告サイト
もっこりBOMBER

まりもっこり
まりもっこり オフィシャルサイト オンラインショップかなやま

もっこりボンバー
どデカい!願いを叶える!超もっこりボンバーストラップ(ラメ入り) - 携帯ストラップの専門店ストラップヤ!本店


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2009年03月29日

「マンション読本」イラストキャラクター事件〜著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「マンション読本」イラストキャラクター事件

大阪地裁平成21.3.26平成19(ワ)7877著作権侵害差止等請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官      西理香
裁判官      北岡裕章

*裁判所サイト公表 09/3/27

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■事案

マンション広告宣伝物に無断でイラストキャラクターが使われたかどうかが争われた事案

原告:イラストレーター
被告:住宅建設会社
    広告代理店

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法21条、27条

1 複製権、翻案権侵害性
2 著作者人格権侵害性

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■判決内容

<経緯>

H16.2 原告が「独り暮らしをつくる100」を刊行
H17.5 被告住宅建設会社が「マンション読本」冊子を作成(合計2.2万部)
H18.3 被告住宅建設会社がイラストをネット掲載
H18.4 被告住宅建設会社がイラストを雑誌掲載
H18.5 被告住宅建設会社がイラストを案内パネルに掲載

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<争点>

1 複製権、翻案権侵害性

被告がマンション販促物のために作成したイラスト39点について、原告書籍掲載のイラストの被告による複製権又は翻案権侵害性が争点となっています。

(1)依拠性の立証と著作物の特定

原告イラストに対する被告の依拠性については、被告広告代理店から委託を受けて被告イラストを制作したデザイナーが、原告のデザインを無断で参考にして被告イラストを作成した旨のお詫びのメールを原告に送信してきており、結論的には依拠性が肯定されています(22頁以下)。

なお、原告書籍には127点と多数のイラストが掲載されており、原告イラストのキャラクターのどの作品が被告イラストの個々のイラストに対応するのか、その依拠性の主張立証の内容も争われましたが、キャラクターモノの特殊性などから、裁判所は、

原告としては個々の被告各イラストについて,原告各イラストのうち被告らが実際に依拠したイラストを厳密に特定し,これを立証するまでの必要はなく,原告各イラストのうちのいずれかのイラストに依拠し,そのイラストの内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製し又はそのイラストの表現上の本質的な特徴を直接感得することができる別の著作物を創作したことを主張立証することをもって,原告各イラストの著作権侵害の主張立証としては足りるというべきである。
(23頁)

として、著作物の厳密な特定は不要としています。

(2)複製権、翻案権侵害性

裁判所は、複製権、翻案権侵害の判断について、

 著作物の複製とは,既存の著作物に依拠し,その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいい,著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,原著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる別の著作物を創作することをいう。したがって,被告各イラストが原告各イラストを複製又は翻案したものというためには,被告各イラストが原告各イラストの特定の画面に描かれた女性の絵と細部まで一致することを要するものではないが,少なくとも,被告各イラストに描かれた女性が原告各イラストに描かれた女性の表現上の本質的な特徴を直接感得することができることを要するものというべきであり(最高裁昭和53年9月7日第一小法廷判決・民集32巻6号1145頁,同平成9年7月17日第一小法廷判決・民集51巻6号2714頁参照),その結果,被告各イラストの女性が原告各イラストの女性を描いたものであることを想起させるに足りるものであることを要するものというべきである。

 したがって,原告各イラストの著作権者である原告において,被告各イラストが原告各イラストを複製又は翻案したと主張している本件においては,被告各イラストが原告各イラストに依拠して作成されたことを前提として,それが原告各イラストを複製したものか又は翻案したものかを区別することに実益はなく,少なくとも,原告各イラストのうち本質的な表現上の特徴と認められる部分を被告各イラストが直接感得することができる程度に具備しているか否かを検討することをもって足りるというべきである。
(21頁以下)

複製か翻案かの区別の実益を否定したうえで、原著作物の本質的な表現上の特徴の直接感得性を判断基準とし、

個々の被告各イラストが個々の原告各イラストを複製又は翻案したか否かを判断するためには,最低限,個々の被告各イラストが依拠したと考えられる原告各イラストを選択し,特定した上で,個々の被告各イラストが,このように特定された個々の原告各イラストの本質的な表現上の特徴を直接感得することができるか否かを検討する必要がある。

直接感得性判断については、対比のための著作物の特定性を要求。
そして、同一コンセプトの下に描かれた127点の多数に及ぶ原告イラストであることから、

個々のイラストを他のイラストとは切り離してそれ自体からその本質的な特徴は何かを検討するのではなく,原告各イラスト全体を観察し,原告各イラストを通じてそのキャラクターとして表現されているものを特徴付ける際だった共通の特徴を抽出し,これをもとに個々の原告各イラストの本質的な表現上の特徴がどこにあるかを認定すべきものと解される。

として、キャラクターとしての共通する特徴の抽出を要求。
原告各イラストを特徴づける本質的な表現上の特徴は、顔面を含む頭部に現れた特徴である、と判断しています(27頁参照)。

こうした点を踏まえ、被告各イラストが原告各イラストを特徴づける本質的な表現上の特徴を直接感得できるかどうかを検討。
結論として、裁判所は、いずれも直接感得性を否定し、複製権又は翻案権侵害性を否定しています。

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2 著作者人格権侵害性

原告イラストの被告による複製、翻案が否定されたことから、同一性保持権、氏名表示権侵害性も否定されています(72頁)。


結論として、原告の請求は棄却されています。

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■コメント

被告イラストと原告イラストがどのようなものだったか、その対応関係別表資料や画像が添付されていないので、どんな感じだったのかよく分かりません。

著作権に関する事案の判決文としては、異例なことかもしれませんが、和解の試みがうまくいかず、上級審での適切な解決へ双方の努力を裁判所が期待する内容が付言されています(72頁以下)。類否判断の限界事例だったことを伺わせます。

もともと、広告代理店から委託を受けて被告デザインの制作に携わったデザイナーが、原告に対してイラストのいわば「盗用」を認めてお詫びのメールをしてきており(23頁)、原告もそれを端緒に著作権侵害状況を認識したという事案ですから、このメールがなければ、依拠性の点からしても否定されていた事例だったかもしれません。

ところで、同一コンセプトの下で描かれたイラストキャラクターの複製権、翻案権侵害の判断では、どのイラストに依拠したのか、またどのイラストと類否対比すればいいのかといった、主張立証の内容として著作物の特定性の問題が出てきます(ポパイネクタイ事件、サザエさん事件参照)。

今回の事件では、裁判所は、依拠性判断でイラストの厳密な特定性は不要としているものの、直接感得性判断については、最低限の特定性を要求しています(24頁参照)。
権利の終期や原著作物と二次的著作物の区別などが問題となっている事案ではありませんでしたが、原告側がイラストを具体的に特定して対比検討を行っているという事案であることや抽象的概念であるキャラクターは保護しないという前提からの原則論としては最低限の特定性を要求する点は理解できますが、仮に、キャラクターイラストの特質から原告が具体的な特定をしない場合(最低限の特定が困難な場合)はどうなるのか、なお検討の余地がありそうです。

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■参考判例

ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件
最高裁昭和53.9.7昭和50(オ)324著作権不存在等確認及び著作権損害賠償判決

ポパイネクタイ事件
東京高裁平成4.5.14平成2(ネ)734
最高裁平成9.7.17平成4(オ)1443著作権侵害差止等判決

サザエさん事件
東京地裁昭和51.5.26昭和46(ワ)151

サンリオカエルキャラクター事件
東京高裁平成13.1.23平成12(ネ)4735

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■参考文献

・依拠性の構成要素について、
西田美昭「複製権の侵害の判断の基本的考え方」
      『裁判実務大系27巻知的財産関係訴訟法』(1997)127頁以下
山本隆司「複製権侵害の成否」『新・裁判実務大系22巻著作権関係
      訴訟法
』(2004)319頁以下
前田哲男「「依拠」について」
      『紋谷暢男教授古稀記念知的財産権法と競争法の現代的展開
      (2006)766頁以下
・依拠の立証、著作物の特定について、
金井=小倉編『著作権法コンメンタール上巻』(2000)209頁
牛木理一「著作権法におけるキャラクターと商品化権」
      『民法と著作権法の諸問題-半田正夫教授還暦記念論集-
      (1993)558頁以下
田村善之『著作権法概説第二版』(2001)52頁以下
牛木理一『デザイン、キャラクター、パブリシティの保護
      (2005)378頁以下
中山信弘『著作権法』(2007)150頁以下
・翻案について、
「裁判官から見た著作権法」『著作権研究』30巻(2004)2頁以下
「翻案」『著作権研究』34巻(2008)2頁以下
横山久芳「翻案権侵害の判断構造」『現代社会と著作権法 斉藤博先生
      御退職記念論集
』(2008)281頁以下
半田=松田編『著作権法コンメンタール2』(2009)73頁以下

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■参考サイト

原告サイト
川上ユキ公式サイト

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■追記2011.5.22

参考文献

丁 文杰「キャラクターの絵画的表現の保護範囲 ―マンション読本事件―」『知的財産法政策学研究』(2010)30号201頁以下
論文PDF
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2009年03月26日

BRAHMAN事件(控訴審)〜著作権 実演家の権利侵害差止請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

BRAHMAN事件(控訴審)

知財高裁平成21.3.25平成20(ネ)10084実演家の権利侵害差止請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官      中平健
裁判官      上田洋幸

*裁判所サイト公表 09/3/26

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■事案

ロックバンドBRAHMAN(ブラフマン)がCD原盤を製作したインディ
レーベルに対してCDの製造、販売の差止を求めた事案の控訴審

原告(被控訴人):BRAHMANバンドメンバー4名
被告(控訴人) :有限会社イレブンサーティエイト(レーベル)

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法91条1項、95条の2第1項、112条1項

1 原告らと被告との間で、原告らが本件レコードに対する
   実演家の著作隣接権を譲渡又は放棄することを内容と
   する合意が成立したか

2 著作権者の意向に反して、著作隣接権に基づく差止は
   認められないか

3 原告らの差止請求権の行使は権利濫用にあたるか
4 弁論再開の許否

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■判決内容

<経緯>

H8.5   原告が本件楽曲の著作権をヴァージン・ミュージック・ジャパンに譲渡
      その後、ヴァージンと被告が共同出版契約締結、被告が原盤製作
H9.10.1 ミニアルバム「Wait And Wait」発売
       (イレブンサーティエイト/ホイップ・レコード)
H10.9.1 アルバム「A MAN OF THE WORLD」発売(イレブンサーティエイト)
H11    TOY'S FACTORYと契約
       シングル「deep/arrival time」でメジャーデビュー
H11     「原盤供給契約書」ドラフト交付、未締結
H19.2.5  原告から被告に対して契約解除の通知
H19.3.23 被告が原告に「回答書兼支払要求書」送付
H19.4   タクティクスレコーズより被告に内容証明書送付

原審、控訴審判旨のほか、ウィキペディア「BRAHMAN」参照。

*アルバム「A MAN OF THE WORLD」のパッケージ表示
 制作・発売 TACTICS RECORDS/1138 CO,.LTD
 PRODUCED&ARRANGED BY BRAHMAN
 A&R  1138CO,.LTD

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<争点>

1 原告らと被告との間で、原告らが本件レコードに対する
  実演家の著作隣接権を譲渡又は放棄することを内容と
  する合意が成立したか


本件レコード(2つのCD)に関して原告らと被告との間で、原告らが
本件レコードに対する実演家の著作隣接権を譲渡又は放棄することを
内容とする合意(口頭契約)が成立していたかどうかが争点となって
います。

この点について、裁判所は、被告レーベル代表者の陳述書提出にみら
れる訴訟活動の経緯や原告からの内容証明郵便、被告からの通知書の
内容などから合意の成立を認めていません(5頁以下)。

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2 著作権者の意向に反して、著作隣接権に基づく差止は
  認められないか


控訴審でも原審同様、被告レーベルの主張を認めていません(7頁)。

 被告は,演奏家は,当該楽曲の著作権者に演奏契約上の顕著な違反又は人格権の侵害がない限り,当該楽曲の著作権者の意向に反して,著作隣接権の行使として,演奏を固定したレコードの製造の差止めを求めることはできないと主張する。
 しかし,演奏したことにより有する演奏家の著作隣接権と著作したことにより有する著作権とは,それぞれ別個独立の権利であるから,演奏家の著作隣接権が,当該レコードに係る楽曲について有する著作権によって,制約を受けることはない。実演家は,当該楽曲の著作権者等から演奏の依頼を受けて演奏をした場合であっても,著作隣接権に基づいて,当該楽曲の著作権者に対して,当該演奏が固定されたレコードの製造,販売等の差止めを求めることができることは明らかであり,被告の上記主張は,主張自体失当である。


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3 原告らの差止請求権の行使は権利濫用にあたるか

権利濫用の点についても、原審同様被告レーベルの主張は認められて
いません(7頁以下)。

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4 弁論再開の許否

被告レーベルは、本件口頭弁論終結後に「被告が原告らの有する著作
隣接権に基づいてレコードの製造,販売につき許諾を受けた」趣旨の
抗弁を追加するため口頭弁論の再開を求める趣旨の上申書(平成21年
1月29日付)を提出していましたが、結論的には、裁判所は弁論の再開
を認めていません(8頁以下)。

なお、原告側から被告との間のレコードの製造、販売等に関する許諾
契約を承継した有限会社タクティスレコーズ(平成11年設立 原告Aが
代表者)は、被告から印税が支払われなかったため許諾契約を解除し
たことなどを主張して印税の支払を求める別訴を提起しており、東京
地方裁判所に係属しているようです(12頁参照 東京地裁平成20年
(ワ)5569、同年(ワ)33049)。

結論として、レーベルの控訴は棄却となりました。

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■コメント

原審の判決内容が薄くて(5頁)、原審の段階では紛争の状況がよく
分かりませんでしたが、控訴審で提出された被告レーベル代表者の
陳述書(乙4号証、5号証)やアーティスト側の反論(3頁以下)から、
原盤製作契約書の取り交わしや口頭での契約の存否に関する経緯
について、事情が少しみえてきました。

以前、メジャーレーベルで発表しているシンガーソングライターの
アーティストさんとわたしが話をした際に、「音楽出版社も僕の原盤
に関する契約書は作ってない」と言っていましたので、比較的大手
でもアーティスト印税を含めて原盤まわりは口約束で回っていると
いったところでしょうか。

原盤製作契約書面を作成するのであれば、そこでは、プロデューサ
ー印税やアーティスト(実演家)さんにアーティスト印税(歌唱印税)
をいくら支払うとかを想定して、CD増刷(増製)の場合の印税率や原
盤権の持分とかを規定したりするわけですが、アーティスト印税が著
作隣接権譲渡の対価なのか、利用許諾の対価なのかはアーティスト
さんとレーベルとの間の契約内容の全体(原盤製作契約のほかにマ
ネジメント契約/専属契約の内容も勘案)から判断されます。

インディだったら、著作隣接権も事務所(レーベル)にざっくり譲渡
していて、その結果として、アーティスト印税は著作隣接権譲渡の
対価としての性質として捉えることになりますが、そうでなければ、
著作隣接権はアーティストさんの手元に残っていて、アーティスト
印税は原盤の利用許諾の対価となり、アーティストさんはCD増刷
に対するコントロールも準物権的にできることになります。

ただ、現実問題としては、事務所移籍などで原盤を残して旧事務所
(レーベル)を去る場合、原盤製作契約について書面でのやりとり
がないからといって、過去にレーベルが原盤製作費用を負担して制
作されたCD原盤の利用にまで縛りをかける(極端な場合は、廃盤と
なってしまう=レーベルは投下した費用が回収できない)となると
どうにも移籍問題解決について双方落としどころがなくなるので、
アーティストさんにも原盤の取扱いについては譲歩が求められる場
面が出てくるかとは思われます。
(なお、被告レーベルは、アーティスト側の契約解除通知に対して、
「回答書兼支払要求書」を送付しているので、原盤買取りなどの要
求をレーベルはしていたのかもしれません。)

今回、原審、控訴審ともにアーティストさんの実演家としての主張が
認められていて、レーベルが原盤についてなんらかの権利(原盤に関
するレコード製作者としての著作隣接権その他)を保有していてもア
ーティストさんの許諾(実演家の著作隣接権)がない限りこれら2枚の
CD原盤は使えず事実上廃盤となってしまうわけですが、レーベルが原
盤製作の費用を負担していたとすれば(3頁参照)、裁判の結果は、そ
の後の影響も考えると(特にリクープ前だと)アンバランスにも思えます。
(但し、利用許諾の存否については、別訴での判断の余地を控訴審は
ちゃんと残しています。12頁参照。)
レーベルが平成16年分以降のアーティスト印税を不払にしていた(4頁、
12頁参照)ということが紛争の背景にあるのかもしれませんが、なお
現状では事情がよく分からないところです。

アーティスト印税不払に関する別訴の行方も注目したいところです
(特に継続的契約の性質をもつ原盤利用許諾契約の解除によって
原盤権自体のゆくえがどうなるか(そもそもレコード製作者は誰なの
か、原盤権の「内実」も含めてアーティストさんが「原盤権を戻せ」と
いえるか)は、その点も争点となっていれば裁判上先例がない点か
もしれません)。

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■過去のブログ記事

2008年10月27日記事
BRAHMAN事件(原審)

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■参考文献

福井健策編、前田哲男・谷口元著「音楽ビジネスの著作権」(2008)177頁以下
佐藤雅人「音楽ビジネス著作権入門」(2008)52頁以下
安藤和宏「よくわかる音楽著作権ビジネス実践編3rdEdition」(2005)15頁以下

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■追記09/06/16

BRAHMAN TOSHI-LOW インタヴュー
New Audiogram PREMIUM BRAHMAN

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大塚法務行政書士事務所サイト-音楽著作権-
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2009年03月21日

復刻版歴史資料事件〜著作権 謝罪広告等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

復刻版歴史資料事件

東京地裁平成21.2.27平成18(ワ)26458等謝罪広告等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官      中村恭
裁判官      宮崎雅子

*裁判所サイト公表 09/3/19

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■事案

「特高警察関係資料集成」「朝鮮軍概要史」などの歴史資料に関する復刻本の編集著作物性や著作権侵害性、版面権侵害性が争点となった事案

平成18年(ワ)第26458号謝罪広告等請求事件(第1事件・名誉毀損事件)
平成19年(ワ)第24160号損害賠償請求事件(第2事件・著作権侵害事件)

原告:出版社(第1事件原告・第2事件被告)
    A   (第2事件被告/原告元代表取締役)
被告:出版社(第1事件被告・第2事件原告)
    B   (第1事件被告/弁護士)

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■結論

第1事件:請求棄却
第2事件:請求一部認容


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■争点

条文 著作権法12条、113条1項2号、民法709条

1 被告「特高警察関係資料集成」の編集著作物性
2 著作権侵害性(著作権法113条1項2号)
3 版面権侵害性(民法709条)
4 損害論

*第1事件(名誉毀損事件)は略

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■判決内容

<経緯>

【被告書籍】
S61  被告「百五人事件資料集」出版
S63  被告「高等外事月報」出版
H1   被告「朝鮮軍概要史」出版
H2   被告「思想彙報」出版
H3   被告「朝鮮思想運動概況」出版
H4   被告「特高警察関係資料集成」出版

H15.4.30 原告出版社代表取締役をAが辞任
       Aの息子Cが代表取締役就任
H15.5   原告が韓国書籍を輸入、販売
H17.12  被告ほか4社が無断複製販売を原告に指摘
H18.7.11 被告と代理人弁護士Bが刑事告訴について記者会見
H18.7.13 被告と代理人弁護士Bが報道機関にFAX送信
H19.11  被告が被告書籍の編著者から著作権譲渡を受ける
H20.2   被告が被告書籍の編著者から損害賠償請求権を譲受ける

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<争点>

1 被告「特高警察関係資料集成」の編集著作物性

名誉毀損事件(第1事件)で被告となった出版社が筆者らと資料収集などしたうえで出版された「特高警察関係資料集成」は、特高警察に関係する資料を広く所収し復刻したものでした。

裁判所は、歴史資料編纂復刻書籍の編集著作物性(著作権法12条1項)について、

被告「特高警察関係資料集成」は,特定の官署部局が作成した文書などその範囲が一義的に定まる資料を単に時系列に従って並べて復刻したというものではなく,様々な官署部局が作成した文書を,なるべくこれまで知られていなかったり公刊されていなかった文書,なるべく個々の運動,事件に関する直接的な記述があるものという一定の視点から選択し,これを運動分野又は文書の種類別に配列したものであるから,全体として,素材たる原資料の「選択」及び「配列」に編者の個性の発露がみられる。したがって,被告「特高警察関係資料集成」は,編集著作物というべきである。

として、編集著作物性を肯定しています(39頁以下)。

そのうえで、原告が韓国から輸入し販売した書籍(韓国書籍)である韓国「特高警察関係資料集成」について、

韓国「特高警察関係資料集成」は,被告「特高警察関係資料集成」全体ではなく,その一部である10巻から24巻のみを複製したものであるが,その分量及び複写対象巻からみて,それらの部分のみの複製であっても,被告「特高警察関係資料集成」の編集著作物としての創作性を再現しているものと認められる。

と複製性(無断複製物性)を肯定しています(43頁)。

なお、被告が出版した6点の復刻本のうち、「特高警察関係資料集成」については編集著作物性が肯定されていますが、その他の書籍については否定されていて、復刻本中の解説部分(解題・解説)などについて各筆者の著作権が肯定されるにとどまっています(57頁以下)。

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2 著作権侵害性(著作権法113条1項2号)

原告元代表者A及び原告代表者Cは、韓国書籍が被告書籍の無断複製物であることを知りながら販売したのか、著作権侵害みなし行為である著作権法113条1項2号の「情を知つて」頒布したかどうかが争点となりました。

この点について裁判所は、

?我が国で出版されている専門書と同名で,しかも日本語で解説,解題等が記載された書籍が韓国でも出版されていれば,書籍の輸入販売業者としては,その同一性の有無及び複製についての許諾の有無を確認することが通常であると解されるし,そのように行動することは,日本の「朝鮮史研究会」の会員であり,日本の近現代史の資料等につき相当程度の知識を有している被告Aにとって,極めて容易なことであること,?無断複製物の輸入がごくわずかであれば,原告高麗書林の主張も採用する余地があるが,前記(2)ア,イ,エ並びにオ(ア)a及びbのとおり,同原告が取り扱った無断複製物は,被告不二出版のものに限定されずに他種類に及び,その数量も相当数に上ること,?平成14年4月には,夏の書房「北朝鮮の極秘文書」に関して,韓国高麗書林発行の書籍につき注意を促されているにもかかわらず,無断複製の事実について何らかの調査,対応策などを講じた形跡はうかがわれず,その後も韓国「北朝鮮の極秘文書」の販売を継続していること』(55頁参照)

などから、著作権法113条1項2号該当性を肯定しています(46頁以下)。

(なお、被告出版社は、編著者らから著作権譲渡及び著作権侵害に基づく損害賠償請求権の譲渡を受けています。)

結論として、原告は復刻本の編集著作権や復刻本中の解題・解説文などの著作権を侵害している(著作権法113条1項2号)と判断されています。

なお、原告が知情頒布を超えて韓国書籍の無断複製行為自体について韓国高麗書林と共謀又は幇助していた(民法719条)とまでは認定されていません(57頁)。

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3 版面権侵害性(民法709条)

被告は、原告が被告書籍の版面を複写した韓国書籍を販売した行為が、いわゆる版面権を侵害するとして一般不法行為(民法709条)の成立を予備的に主張していました。

この点について、裁判所は、

他の出版社の版面をそのまま複写して出版物を製作する行為は,出版業に携わる者として道義にもとるものであることは明らかである。しかし,法はそのような場合でもこれを直ちに違法なものと評価しているわけではなく,著作権等の存在を前提に,かつ,一定範囲の類型に限って違法であると明示的に規定しているものであり(著作権法113条参照), 著作権法で違法とされていない行為を一般不法行為により違法と判断することは,謙抑的にされるべきである。

としたうえで、

この観点からすると,被告「百五人事件資料集」,被告「高等外事月報」,被告「思想彙報」,被告「朝鮮軍概要史」及び被告「朝鮮思想運動概況」については,一部の資料の入手に困難があったことは認められ(乙39の8の解題11頁,乙41の6の解題1頁),しかも,その無断複製物を被告書籍の顧客層がいる日本市場向けに製作するものであるが,他方,資料の修復等(オペーク作業等)に格段の困難を要した等の事情はうかがわれないから,その製作をもって,一般不法行為を構成するものと認めることはできない。

しかも,前記4で判示したとおり,原告高麗書林が被告書籍の無断複製行為自体に関与したとは認められないところ,販売のみに関与する者につき「版面権」侵害を認めることは,更に謙抑的にされるべきであるから,販売に関与したことのみをもって,一般不法行為を構成するものと認めることはできない。

として、版面の複写行為にかかわる一般不法行為の成立を否定しています(60頁以下)。

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4 損害論

原告会社の元代表取締役Aについては、著作権侵害行為(著作権法113条1項2号)に基づき、また原告会社については、会社法350条に基づき損害賠償責任を負うことになりましたが、損害論としては、韓国書籍の平均販売価格、販売セット数量、利益率などから合計119万円余り、弁護士費用は25万円と認定されています(62頁以下)。

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■コメント

被告らが刑事告訴について記者会見などをしたことを理由とする原告に対する名誉毀損行為については、違法性などを欠くとして、その成立が否定されています(第1事件請求棄却)。

原告の取扱っていた韓国書籍は、被告書籍の全版面を複写して製作されたいわば「海賊版」で、原告は韓国高麗大学に納入するとして被告から被告書籍である「特高警察関係資料集成」を購入していましたが、高麗大学には、この「海賊版」はあっても被告の書籍は無いという状況でした(46頁以下)。

ところで、版面権については、旧著作権法改正来議論がされていますが、いまのところ著作権法上は認められていません。
版面権は、出版物の版面を構成する際の出版者の準創作的な行為に着目して設けられる権利で、著作隣接権として構成することができる版面に関する利用権となります。
なお、版面権に係わる事件としては、昭和50年代の漱石復刻版事件に関する和解部分(復刻出版に関する商慣習の存在の確認)が参考になります(*)。版面権保護の必要性については、半田後掲書参照。

今回、版面の複写に関して、後行出版社は、先行する復刻版にフリーライドしていたわけですが、主位的請求として著作権侵害が肯定されており、事例判断(予備的請求)としては侵害品を輸入販売した出版社には一般不法行為の成立が肯定されるまでに至っていません。

復刻本刊行の努力にフリーライドする場合には、不正競争防止法での対応も考えられますが、一般不法行為の成立の検討も重要であることがよく分かる事案でした。


(*)文化庁平成2年6月「著作権審議会第八小委員会(出版 者の保護関係)報告書」を読むと、報告書作成当時の平成2年まで復刻版の作成については、不法行為法適用の判例はないようです。なお、知恵蔵事件(東京地裁平成10.5.29平成7(ワ)5273)参照。

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■関連事件

復刻版歴史資料「海賊版」流布事件
東京地裁平成20.8.29平成19(ワ)4777損害賠償等請求事件PDF

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■参考判例

知恵蔵事件
東京地裁平成10.5.29平成7(ワ)5273著作権使用料等請求事件PDF

控訴審
東京高裁平成11.10.28平成10(ネ)2983著作権使用料等請求控訴事件PDF

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■参考文献

版面権、漱石復刻版事件について、

作花文雄『著作権法講座第二版』(2008)99頁以下
半田正夫「著作隣接権とは」第二東京弁護士会知的財産権法研究会編
      『エンターテインメントと法律』(2005)81頁以下
田村善之『著作権法概説第二版』(2001)519頁以下
鈴木一誌、知恵蔵裁判を読む会編『知恵蔵裁判全記録』(2001)114頁、
       323頁以下
著作権判例研究会編『最新著作権関係判例集2(1)』(1980)30頁以下
阿部浩二「覆刻・復刻・複刻-漱石初版本復刻セット事件」
      『著作権とその周辺』(1983)170頁以下
美作太郎「復刻本の出版-「漱石復刻版」事件」『著作権判例百選
      (1987)180頁以下
大瀬戸豪志「復刻本の出版-漱石復刻版事件」
      『著作権判例百選第二版』(1994)196頁以下

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■参考サイト

統一日報(2007年1月17日発行版)
海賊版問題 高麗書林 告訴される

不二出版株式会社(2009年3月5日プレスリリース)
「海賊版」刊行問題について

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■著作権法改正論議関連

著作権情報センター(CRIC)
文化庁審議会報告書(平成2年6月)
「著作権審議会第八小委員会(出版者の保護関係)報告書」
審議会報告書

文化庁(平成15年7月31日)
文化審議会著作権分科会 法制問題小委員会(第2回)
議事要旨

benli(2008.2.2記事)
「版面権」の例に倣う

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■追記2010.4.9

「韓国図書専門店の高麗書林(東京)が無断複製物を販売していた問題で高麗書林は海賊版販売を認め、編集著作権者の不二出版は11月18日、知的財産高裁第二部で高麗書林と和解した。」
http://news.onekoreanews.net/print_paper.php?number=50480
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2009年03月19日

足袋カバー包装デザイン事件〜不正競争防止法 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

足袋カバー包装デザイン事件

東京地裁平成21.2.27平成20(ワ)12092損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官      大竹優子
裁判官      中村恭

*裁判所サイト公表 09/3/19

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■事案

足袋カバーの包装デザインについて不正競争防止法上の
商品等表示性が争われた事案

原告:足袋、靴下製造販売会社
被告:繊維製品販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号

1 原告包装の商品等表示性
2 原告包装と被告包装との類似性

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■判決内容

<争点>

1 原告包装の商品等表示性

原告包装は、被告商品が販売された平成19年当時、約8年の
使用実績があること、原告商品の販売数量が年間1〜2万足で
あって、おおむね全国にわたって販売されていました。

もっとも、

1.大きな販売数量ではない
2.原告が宣伝広告していたのは、自社のホームページ上だけ
3.取扱業者らがネットで取扱い始めて1〜2年と短期間

こうしたことから、裁判所は、平成11年頃においても、その後
被告が販売をした平成19年6月から同年10月にかけて、また
口頭弁論終結時においても、原告包装は、原告商品を表示す
るものとして需要者に広く認識されていたものと認めることは
できないと判断しています(13頁以下)。

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2 原告包装と被告包装との類似性

原告包装と被告包装との類似性について、

1.表面下側が緑色であり、緑色の色調もほとんど同じ
2.表面下側の緑地にピンク色の花があしらわれ、ピン
 ク色の色調もほとんど同じ

という類似性がありましたが、そのほかの類似点については、
極めてありふれた構成方法、表現手法であったり、独創性、
新規性のない部分であったりして出所識別機能を有し得る部
分ではないとして、結論としては、

被告包装は,表面下側の「緑地の上にピンク色の花」の点で,原告包装に類似するが,表面中央部に記載された商品名及びロゴマークを含め,離隔的に,かつ全体的に観察すれば,被告担当者が原告包装を参考にして被告包装を作成したことを併せ考慮したとしても,原告包装に類似するとは認められない。

として、裁判所は原告包装と被告包装の類似性も否定してい
ます(15頁以下)。

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■コメント

原告被告ともに戦前からの歴史のある足袋製造メーカー
でしたが、足袋の汚れを防ぐため足袋の上から着付ける
足袋カバー商品の包装パッケージデザインの類否につい
て紛争となっています。

原被告パッケージデザイン(「優美足袋」と「美装足袋」)
の正確なところは分からないのですが、原告サイトを見
ると原告パッケージは、ピンクのデンファレ(蘭)をあしら
ったものだったかもしれません。

原告社員が退職後、ライバル会社である被告会社に就職
し、原告と取引関係のあった会社に営業活動を行ってい
たこと(9頁参照)などが、あるいは今回の民事訴訟の発
端かもしれません。

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■参考サイト

原告製品
優美足袋カバー

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■参考文献

小松一雄編『不正競業訴訟の実務』(2005)174頁以下

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2009年03月17日

印鑑基材特許権営業誹謗事件(控訴審)〜不正競争防止法 特許権に基づく差止請求権不存在確認等,売掛代金等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

印鑑基材特許権営業誹謗事件(控訴審)

知財高裁平成21.3.11平成19(ネ)10025特許権に基づく差止請求権不存在確認等,売掛代金等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官      本多知成
裁判官      田中孝一

*裁判所サイト公表 09/3/13

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■事案

装飾印鑑基材に関する特許権紛争について営業誹謗行為性
(不正競争防止法2条1項14号)が問題となった事案の控訴審

原告(被控訴人):印鑑製造販売会社
被告(控訴人)  :印章製造販売会社ら

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■結論

原判決取消し

なお、特許権に基づく差止請求権不存在確認請求部分は弁論
分離のうえ原判決取消し、請求棄却されており、上告棄却及び
上告不受理決定が確定(平成20.9.30平成20(オ)877、平成20
(受)1057)。

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項14号

1 特許権侵害性
2 営業誹謗行為性
3 過失の有無
4 特許権侵害に基づく損害賠償の有無

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■判決内容

<争点>

1 特許権侵害性

原告の製品(1)(2)が本件発明1〜3の構成要件のすべてを充
足し、本件発明1〜3の技術的範囲に属するものであるとして、
原告の製品(1)(2)を製造販売する行為は、被告らの本件
特許権を侵害するものであると判断されています(34頁以下)。

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2 営業誹謗行為性

原審とは異なり原告による特許権侵害が肯定されたことから、
被告Xの「被控訴人製品の製造,譲渡,貸渡し並びに譲渡及び
貸渡しの申出が,本件特許権を侵害する」との告知又は流布
行為は、不正競争防止法2条1項14号の営業誹謗行為に当た
らないと判断されています(53頁)。

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3 過失の有無

被告の告知行為に関する過失の有無について、

被控訴人製品が本件特許権の技術的範囲に属するものであることなどからすると,控訴人X が,被控訴人製品の販売は,本件特許権についての実施品である控訴会社製品の形態を模倣した商品の譲渡であって不正競争防止法2条1項3号に該当する不正競争であると考え,控訴人X が,控訴人らにおいて,この不正競争によって営業上の利益を侵害され,又は侵害されるおそれがあるものとして販売の中止を求められると判断してその旨を告げたことにつき,過失があるともいえない。
(57頁)

と判断されています。

なお、出願中の本件特許権に基づいて販売中止を求められる
(差止可能)と考えてその旨の内容の告知をしていたとしても、
不正競争行為のある状況では無理からぬところであるとして、
違法とまでは判断されていません(57頁以下)。

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4 特許権侵害に基づく損害賠償の有無

原告による被告の本件特許権侵害が肯定されており、原告の
未払預り金債権、保証金返還請求権と被告の売掛代金債権、
損害賠償請求権との相殺が認められ、原告の債権はすべて消
滅すると判断されています(58頁以下)。

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■コメント

控訴審(弁論分離の上告審も含め)では、1審とは反対に
装飾印鑑の特許権を侵害していると判断されたことから虚
偽告知行為性(不正競争防止法2条1項14号)についての
判断にも影響が出た結果となっています。

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■過去のブログ記事

2007年2月28日記事(原審)
印鑑基材特許権営業誹謗事件

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■参考

「印鑑基材および印鑑」特許3630660

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2009年03月11日

ニンテンドーDSマジコン事件〜不正競争防止法 不正競争行為差止請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ニンテンドーDSマジコン事件

東京地裁平成21.2.27平成20(ワ)20886等不正競争行為差止請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官      大竹優子
裁判官      宮崎雅子

*裁判所サイト公表 09/3/9

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■事案

携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」、「ニンテンドーDS Lite」本体
とDSカードの組合せ以外での使用を可能にする機器(マジコン)
の輸入等の不正競争行為性が争われた事案

原告:任天堂
    ソフトウェア制作会社ら56社
被告:ソフトウェア等取扱業者ら5社

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■用語

*被告装置(R4 Revolution for DS / マジコン):
本件吸い出しプログラムや自主制作ソフト等をmicroSDカード
に格納し,microSDカードを挿入した被告装置をDS本体のス
ロットに挿入すると,DS本体は,これらのプログラム等を実行
する(4頁)。

*吸い出しプログラム:
DSカードのゲームソフトの複製物(3頁)。
吸い出しとは、ゲームのデータをDSカードから読み取ること。
吸い出しに使われるソフトはダンパー(dumper)などと云われ
る。

*マジコン/マジックコンピューター:
マジコンとは、テレビゲームのROMイメージをバックアップ
したり、またそのバックアップをゲーム機で起動させるため
の機械の総称。
語源の由来は、スーパーファミコン用のバックアップツール
「マジックコンピューター」。これはフロッピーディスクにデータ
を移すもので、パソコンによってセーブデータのバックアップ
を管理したり、同人ゲームのベースに流用したりなどもされ
た(ウィキペディア(Wikipedia)より)。

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項10号、2条7項

1 「技術的制限手段」(2条1項10号、2条7項)の意義
2 「のみ」(2条1項10号)の意義
3 営業上の利益の侵害

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■判決内容

<争点>

1 「技術的制限手段」(2条1項10号、2条7項)の意義

任天堂の携帯型ゲーム機は、DS本体とDSカードから構成され
ていて、DS本体にDSカードを挿入すると、DSカードに記録され
ている本件特定信号1〜4を本体が受信し、それぞれの信号ご
とに特定の反応をしてDSカードのプログラムを実行するような
仕組みになっていました。
DSカードのゲームソフトの複製物を使用しても反応を得ること
ができず、本体において使用することができないことになります。
こうした、DS本体とDSカードの組になって本件特定信号1〜4
を使用してプログラムの実行を制限していることが(この仕組み
を「原告仕組み」といいます)、不正競争防止法2条1項10号、
2条7項の「技術的制限手段」に該当するかどうかが争点と
なっています。

被告側は、「技術的制限手段」には、自主制作ソフト等の実行
も制限する結果となる「検知→可能方式」(信号を検知した
場合にプログラム等実行を制限する方式)のものは含まれず、
「検知→制限方式」(信号を検知した場合にプログラム等の
実行を可能にする方式)のものに限られると主張しました。

裁判所は、(1)平成11年改正法の立法趣旨、(2)平成11年改
正著作権法との比較、(3)平成11年改正当時の技術的制限
手段などについて検討のうえ、

上記(1)〜(3)によれば,不正競争防止法2条1項10号は,我が国におけるコンテンツ提供事業の存立基盤を確保し,視聴等機器の製造者やソフトの製造者を含むコンテンツ提供事業者間の公正な競争秩序を確保するために,必要最小限の規制を導入するという観点に立って,立法当時実態が存在する,コンテンツ提供事業者がコンテンツの保護のためにコンテンツに施した無断複製や無断視聴等を防止するための技術的制限手段を無効化する装置を販売等する行為を不正競争行為として規制するものであると認められる。

そして,上記(3)のとおり,不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」は,「(a)コンテンツに信号又は指令を付し,当該信号又は指令に機器を一定のルールで対応させる形態」と「(b)コンテンツ自体を暗号化する形態」の2つの形態を包含し,前者の例として「無許諾記録, 物が視聴のための機器にセットされても,機器が動かない(ゲーム)」が挙げられているが,この例は,本判決の分類では,検知→可能方式である。そして,同立法当時,規制の対象となる無効化機器の具体例としてMODチップが挙げられているが,このMODチップは,本判決の分類にいう検知→可能方式のものを無効化するものであり,当初から特殊な信号を有しない自主制作ソフト等の使用も可能とするものであった。

以上の不正競争防止法2条1項10号の立法趣旨と,無効化機器の1つであるMODチップを規制の対象としたという立法経緯に照らすと,不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」とは,コンテンツ提供事業者が,コンテンツの保護のために,コンテンツの無断複製や無断視聴等を防止するために視聴等機器が特定の反応を示す信号等をコンテンツとともに記録媒体に記録等することにより,コンテンツの無断複製や無断視聴等を制限する電磁的方法を意味するものと考えられ,検知→制限方式のものだけでなく,検知→可能方式のものも含むと解される。
(25頁以下)

結論として、「検知→可能方式」により本件吸い出しプログラム
の実行を制限している原告仕組みも不正競争防止法2条7項
の技術的制限手段に該当し、同法2条1項10号の営業上用い
られている技術的制限手段によりプログラムの実行を制限する
との点にも該当すると判断されています。

   ----------------------------------------

2 「のみ」(2条1項10号)の意義

被告側は、自主制作ソフト等の実行を可能とする装置を規制
することは、「成長の著しいコンテンツ提供事業における不正
な取引を防止するための必要最小限の規制を導入するとい
う観点に立って」(後掲改正解説書202頁)制定された不正競
争防止法2条1項10号の趣旨に反すると主張しました。

この点について、裁判所は、

不正競争防止法2条1項10号の「のみ」は,必要最小限の規制という観点から,規制の対象となる機器等を,管理技術の無効化を専らその機能とするものとして提供されたものに限定し,別の目的で製造され提供されている装置等が偶然「妨げる機能」を有している場合を除外していると解釈することができ,これを具体的機器等で説明すると,MODチップは「のみ」要件を満たし,パソコンのような汎用機器等及び無反応機器は「のみ」要件を満たさないと解釈することができる。

としたうえで、被告装置(マジコン)の使用実態もあわせて考
慮されたうえで、結論として被告装置は不正競争防止法2条
1項10号の「のみ」要件を充足していると判断されています
(26頁以下)。

   ----------------------------------------

3 営業上の利益の侵害

原告らには、本来販売できたであろうDSカードが販売できな
くなったり、任天堂には、DS本体の製造販売業者としてマジ
コン対策にあたらなくてはならないとして現実に営業上の利
益が侵害されていると判断。
被告装置の輸入・販売等の差止、廃棄の必要性が認められ
ています(30頁以下)。

   --------------------

■コメント

被告側は、自主制作ソフトなどの利用を不当に制限しない
ような不正競争防止法上の条文解釈を求めましたが、被害
総額が全世界で3000億円以上との報道(MSN産経ニュース
「ニンテンドーDS 被害は3000億円超との試算も」
2009.2.27 13:35記事)もされるなか、裁判所は、違法な複
製物の流通の現状を前に現実的な判断を下しています。

ところで著作権法改正案として、著作権を侵害する自動公
衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、そ
の事実を知りながら行う場合は、私的使用のための複製に
あたらない、という方向で検討がされていますが、

無断配信コンテンツのダウンロードは違法に - 著作権法改正案を閣議決定
(マイコミジャーナル(2009/03/10記事)

不正競争防止法の改正議論(今回は営業秘密保護関連で
すが)やさらに今後の著作権法での違法ソフトのダウンロード
違法化議論(録音録画物以外)とあわせて立法での違法
複製物の流通阻止への対応を注視したいところです。

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■参考ブログ記事

被告代理人弁護士小倉秀夫先生のブログ
Benli
(2009.2.27記事)
条文の文言など気にしない裁判官
(2009.3.9記事)
早熟の天才は不要
(2009.3.10記事)
プログラム開発の自由を阻害する動きに対する寛大さ
(2009.3.10記事)
著作権法改正案2009

任天堂プレスリリース(2009.2.27)
ニンテンドーDS用機器に対する差止訴訟に関する東京地裁判決について

   --------------------

■参考文献

文化庁著作権法令研究会、通産省知財政策室編
著作権法不正競争防止法改正解説 デジタル・コンテンツの法的保護
(1999)190頁以下
田村善之「不正競争防止法概説 第二版」(2003)394頁以下

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■追記(09.3.11)

アンチパテント(2009.3.11記事)
■[知財]マジコンの件

第171回国会における文部科学省提出法律案
(国会提出日平成21年3月10日)
著作権法の一部を改正する法律案:文部科学省

第171回通常国会経済産業省提出法律案
不正競争防止法の一部を改正する法律案について

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■追記(09.5.6)

企業法務戦士の雑感
■[企業法務][知財]マジ?こんな判決あり?と叫びたくなる瞬間。

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■追記09.12.04

松島淳也「IT法務ライブラリ」[2009/12/02記事]
IT事業と知的財産権法[14]著作権法上の技術的保護手段と不正競争防止法上の技術的制限手段:ITpro
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2009年03月05日

溶銑運搬列車制御プログラム事件〜著作権 著作権確認等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

溶銑運搬列車制御プログラム事件

大阪地裁平成21.2.26平成17(ワ)2641著作権確認等請求事件PDF

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 山田知司
裁判官      村上誠子
裁判官      高松宏之

*裁判所サイト公表 09/3/4

   --------------------

■事案

溶融状態の銑鉄を運搬する列車のブレーキ制御プログラムの著作物性が争われた事案

原告:通信機器製造販売会社
被告:鉄鋼会社
    物流会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項10号の2

1 本件プログラムの著作物性
2 本件プログラムの著作権の承継の有無
3 対抗要件の要否・信義則違反の有無
4 本件使用料支払契約1の成否
5 本件使用料支払契約2の成否
6 本件第三者のためにする契約の成否
7 不当利得の成否

   --------------------

■判決内容

<経緯>

S60〜61 湯浅通信機が本件プログラムを作成
S61.2   本件プログラムのロムを本件装置に設置して被告へ納入、使用
H5.11.26 本件装置について原被告ら特許権(登録1804586)
H6.10.21 電気制御装置について原被告ら実用新案権(登録2036129)
H11    本件プログラムを湯浅通信機が原告に譲渡

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<争点>

1 本件プログラムの著作物性

製鉄所で溶融状態の銑鉄を運搬する列車(動力車、貨車)の「混銑車自動停留ブレーキ及び連結解放装置」(本件装置)に組込まれた制御プログラムの著作物性について、ありふれたものかどうかが争点となりました。

この点について、裁判所は、

プログラムに著作物性があるというには,指令の表現自体,その指令の表現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅が十分にあり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性が表れていることを要する。
(46頁)

としたうえで、

本件プログラムの内容は,DHL車から連結されている複数のTC車に対し,任意の連結操作番号を付与し,常時電気信号を送信し,その受信状態により,連結状況・異常の有無を確認したり,ブレーキの解放・緊締のための信号を送信するもので,作業自体は,複数の種類がある上に,その作業の一つ一つについて相当程度の数の段階・順序を踏むものであり,その方法も,各車両の対向する部分に設置された搬送コイルの電磁信号送受信装置を用いるもので,非接触方式であり,搬送コイルによる非接触方式によるこのような車両の連結・解放・ブレーキ操作の方法・装置は,特許を取得する程度に新規なものであったことから,これに対応するプログラムも,当時およそ世の中に存在しなかった新規な内容のものであるということができる。したがって,本件プログラムは,DHL車の部分及びTC車の部分を併せた全体として新規な表現であり,しかも,その分量(ソースリストでみると,DHL車の部分は1300行以上,TC車の部分は約1000行)も多く,選択配列の幅が十分にある中から選択配列されたものということができるから,その表現には全体として作成者の個性が表れているものと推認することができる。

として、本件プログラムの著作物性を肯定しています(39頁以下)。

   ----------------------------------------

2 本件プログラムの著作権の承継の有無

湯浅通信機が制作した本件プログラムを原告が譲り受けていたかどうかが争点となりましたが、結論として肯定されています。
この点について、被告は、第一次契約書(甲214)に押印された湯浅通信機の代表者印の印影や貼付された収入印紙、使用されたワープロの文字、取引関係者の供述などから疑義を主張しましたが、容れられていません(50頁以下)。

   ----------------------------------------

3 対抗要件の要否・信義則違反の有無

(1)対抗要件の要否

著作物性本件プログラムの著作権について、湯浅通信機と原被告らの共有とする合意がなかったと認定されたことから、湯浅通信機から被告らへ著作権の持分の譲渡があったわけではなく、原被告らは、著作権譲渡について二重譲渡の関係にない。
したがって原被告は対抗関係(著作権法77条)に立つものではないとして、原告の対抗要件具備は不要と判断されています(56頁以下)。

(2)信義則違反の有無

被告は、原告が本件プログラムに修正を加えたうえで(著作者人格権侵害)取得しているとして、その権利主張がクリーンハンズの原則に反し信義則違反であると主張しましたが、容れられていません(57頁)。

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4 本件使用料支払契約1の成否

被告らが原告に対して本件プログラムの使用料を支払わない代替措置として以下の内容の使用料支払契約(本件使用料支払契約1 本件5項目)が成立していたかどうかが争点となっています。

 1) 本件装置完成後のメンテナンスにつき,原告は,
 被告スチールと外注契約を結んだうえ,被告物流の
 下請けとして,常駐体制でメンテナンスを行う。
 2) 被告スチールが外注契約先に出している成果還
 元金の支給を,原告が受けられるように配慮する。
 3) 本件装置が故障した場合の修理作業及び補修部
 品もすべてJFE電制等を介して原告に発注する。
 4) 被告物流の起重機部門の取引を増やすよう配慮
 する。
 5) 被告物流の計画中の省力化設備工事の相当部分
 を原告に発注するよう配慮する。
 (17頁)

議事録、決裁書、見積書などの書証、人証、原被告間の取引状況などから、

被告物流による利益供与の約束はあったとしても,それが具体的にいかなる内容であったか,それが履行されないときは代わりに被告らにより金銭による使用料を支払うという支払約束があったのか(開発費の支払にすぎないのか),それが被告らの会社としての意思決定によるものであって,原告に対して被告物流により(被告スチールの代理人として)意思表示がされたもので,原告と被告らとの間に利益供与の約束が不履行になった場合の金銭による使用料の支払合意についての意思表示の合致があったといえるのかについて的確に認定することができず,利益供与の不履行の場合の被告らによる金銭での使用料の支払契約があったと認定することができない
(81頁)

として、結論としては本件使用料支払契約1の成立を裁判所は否定しています(57頁以下)。

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5 本件使用料支払契約2の成否

原告は、本件使用料支払契約1の成立が認められなかったとしても被告スチールと本件プログラムの使用につき相当額の使用料の支払の合意(本件使用料支払契約2)があったと主張しました。
しかし、結論としては、本件使用料支払契約2の成立についても否定されています(82頁以下)。

   ----------------------------------------

6 本件第三者のためにする契約の成否

原告は、被告スチールの本件プログラムの使用について、被告物流が相当額の使用料を支払うという合意(第三者のためにする契約)が成立していたと主張しましたが、認められていません(83頁)。

   ----------------------------------------

7 不当利得の成否

原告は、被告スチールが法律上正当な理由がないのに相当額の対価を支払うことなく本件プログラムを使用し、使用料相当額の利得を得ているとして不当利得が成立していると主張しました。
しかし、被告スチールは適法に複製された本件プログラムの複製物を本件装置において使用しているにすぎないなどとして、不当利得の成立を否定しています(83頁以下)。


結論として、原告の本件プログラムの著作権の帰属の確認請求については認められましたが、金銭請求については棄却されています。

   --------------------

■コメント

装置そのものの購入代金の支払以外に装置に組込まれたのプログラム部分の使用料の支払が必要だったかどうかが争われました。

昭和60年当時ですと、ハードとソフトである著作権を切り離してプログラムの著作権の使用料が発生するという発想自体が一般的ではなかったという被告側の主張も、理解できるところではあります(21頁以下)。

いずれにしても、20年以上前の取引関係を証明することの困難さが伝わる事案です。
当時使用されたであろうワープロ機器の印字文字なども検討されていて、書面の真正性について考えさせられる内容です。

なお、関連訴訟として、特許を受ける権利や実用新案登録を受ける権利の譲渡代金請求を巡る訴訟も提起されていましたが、消滅時効が援用されて棄却されています。

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■関連訴訟

大阪地裁平成21.2.26平成19(ワ)1479特許を受ける権利等譲渡代金請求事件判決PDF

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■追記(2012.3.6)

控訴審PDF
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2009年03月02日

大阪市路線案内図事件〜著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

大阪市路線案内図事件

大阪地裁平成21.2.24平成20(ワ)12703著作権侵害差止等請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官      西理香
裁判官      北岡裕章


*裁判所サイト公表 09/2/25

   --------------------

■事案

大阪市営地下鉄路線案内図などの著作物性が争われた事案

原告:個人
被告:大阪市

   --------------------

■結論

請求棄却

   --------------------

■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、27条、民法709条

1 原告書面等の著作者
2 本件著作物の著作物性
3 被告路線案内図が本件著作物を複製・翻案したものか
4 一般不法行為の成否

   --------------------

■判決内容

<経緯>

S50.1.15 原告が「交通ガイド革命(交通ガイド自由自在システム)」小冊子
       出版
S61    「兵庫県神戸・姫路・宝塚国際観光モデル地区整備実施計画書」に
       引用
H9.8.5   原告が被告に本件システムを提案
H9.10.16  全国紙に本件システムが報道される
H16.7    大阪市交通局が案内図を配布・実施

   ------------------

本件著作物((1)(2))

(1)交通ガイド革命(交通ガイド自由自在システム)(甲1)
機屮丱后づ監札イド自由自在システム」
A 概要説明書
B 具体例
C 以上による効果1,2
「通し番号付停車場名表示に依るバス,鉄道ガイド自由自在シ
 ステム」構造図(案)(ただし住所氏名は除く)
「バス,鉄道ガイド自由自在システム」実施に伴う応用例,すな
 わち要件機豊供豊掘豊検豊后法ぁ味押様弖鎰掘砲療監察淵丱后肪録
 を使用した場合,応用例及び要件掘砲領秧

(2)「大阪市地下鉄デジタルインフォーメイションシステム(計画案)1997」(甲5)
1)路線案内図2枚
2)利用方法イ)駅名,ルート別駅番号標示(御堂筋線,四つ橋線,
  千日前線)


路線図:

「鉄道などの鉄道利用者が現在地点(現在駅)と
目的地点(目的駅)との関係を合理的に容易,的
確に理解できるよう,大阪市営地下鉄(鉄道)の
各路線毎に独自の路線記号を付け,各路線上に存
在する全停車場に起点停車場から終点停車場に向
かって順次に各停車場相互間に一定の関連性を持
った万国共通の独自記号を付け,停車場名と併用
するとしたことを基本とした各路線の概略図や標示
などしたもの」(6頁)


本件システム:

「交通機関利用者に分かりやすく,誰でも容易かつ
確実に目的地に達せしめる交通ガイド方式でバス
や鉄道や鉄道の停車場の表記方法として,
「 全バス,鉄道路線の各路線毎に独自の路線
記号を付ける。 各路線上に存在する全停車場
に起点停車場から終点停車場に向かって順次に各
停車場相互間に一定の関連性を持った独自記号を
付け,停車場名と併用する。」方法」(2頁以下)

----------

<争点>

1 原告書面等の著作者

まず、原告著作物である、
小冊子「交通ガイド革命(交通ガイド自由自在システム)」と
「大阪市地下鉄デジタルインフォーメイションシステム(計画
案)」書面の作成名義について、それぞれ

「『交通ガイド自由自在システム』普及会代表X」
「(交通ガイド自由自在システム)会会長X」

との表示がありましたが、団体は実態が無く、また被告も
原告による作成等争わないとして、原告がこれら著作物の
著作者と認定されています(10頁以下)。

   ------------------

2 本件著作物の著作物性

(1)被告路線案内図への再製性

原告が主張する原告著作物(文章や甲第1号証5頁左図)の著作
物性について、裁判所は、まず原告著作物が再製されたとする
被告路線案内図に関する判断として、


原告が著作権を侵害すると主張する被告路線案内図(甲7)は,路線図の各駅名表示部分を丸で囲い,その中に「M16」「T20」等というように,アルファベット(路線記号)と2桁の数字(駅番号)を表示したものである。

したがって,被告路線案内図は,原告が著作物性を主張する部分のうち文章部分を複製したものでないことは明らかであるし,甲第1号証の5頁の左図も,そもそも被告路線案内図において再製されていると認める余地がないものである。したがって,これらの部分が著作物性を有するか否か検討の対象とする必要がない(このことは英文,和文を問わない。)。
(11頁)

として、そもそも被告路線案内図への原告著作物の再製が認めら
れないとして、原告著作物の著作物性の検討は不要としています。


(2)本件システム自体の保護

甲第1号証5頁右図路線図(甲1路線図)について、裁判所は、
甲1路線図の模式的な路線図において、番号や案内表示を具体的
に表現している点について、著作権法の保護の対象(図形の著作
物)となりうるものの、抽象的なアイデアについては保護されない
ことを前提としたうえで、本件システム自体は、具体的な表現を
伴わない単なるアイデアに属する事項であるとして、保護の対象
にならないとしています(11頁以下)。


(3)被告作成の路線図への原告書き込みによる新たな創作性の成否

被告が作成した路線図に原告が独自に記号などを書き込んだ甲第
5号証路線図(甲5路線図)の著作物性について、裁判所は、

路線図そのものは,被告が平成9年8月ころに作成した路線案内図(被告路線案内図の旧バージョン)に原告が上記各番号及び記号を書き込んだものであり(争いがない。),上記書き込み部分の著作物性が問題となるところ,このような単なる番号や記号及びその組合せに創作性を認める余地はないというべきである。
(12頁以下)

として、甲5路線図の原告による新たな創作性付与を否定してい
ます。

   ------------------

3 被告路線案内図が本件著作物を複製・翻案したものか

原告甲1路線図が図形の著作物として保護される場合(なお、裁判
所は、原告甲1路線図の創作性の有無は「しばらくおく」としています。)、
被告路線案内図が原告路線図の複製もしくは翻案とならないかど
うかが検討されています。
裁判所は、複製と翻案に関する2つの最高裁判決(S53.9.7ワン レイ
ニー ナイト イン トーキョー事件、H13.6.28江差追分事件)に触れた
うえで、

被告路線案内図を甲1路線図と対比すると,両者は,路線の形状をはじめ,各駅を特定するための数字及び記号の配し方等の表現において全く異なることが明らかであり,被告路線案内図が甲1路線図の内容及び形式を覚知させるに足りるものということはできないことはもとより,甲1路線図の本質的特徴を直接感得することができるものということもできないことが明らかである。したがって,被告路線案内図は甲1路線図を複製又は翻案したものということはできない。
(13頁以下)

として、結論的には裁判所は、複製あるいは翻案(著作権法21条、
27条)による著作権侵害の成立を否定してます。

   ------------------

4 一般不法行為の成否

被告による路線図の導入・実施が、原告路線図作成等へのフリー
ライドなどにあたるかどうか、一般不法行為(民法709条)の成否が
問題となっています。この点について、裁判所は、

路線と駅に番号その他の記号を付して目的の駅を特定するという本件システムのアイデア自体は,駅の特定手段としては単純なものであり,その内容に照らして,上記アイデア自体が特許権,実用新案権等の知的財産権と離れて,不法行為法上法的保護に値するものとはいい難い。
また、
被告路線案内図を作成した被告の行為が原告に対する民法709条の不法行為を構成するような違法な行為と認めることはできない。
(14頁以下)

と判断しています。

   --------------------

■コメント

交通システム関連の著作権事件としては、後掲の浜松市バス
路線設計図事件(知財高裁平成19.3.27)が最近ではありまし
たが、今回の事案も原告から当局(大阪市交通局)へアイデア
の提案があったことから、アイデアを盗用された、との受け止
め方を原告が強く持った事案だったのかもしれません。

なお、番号、記号、駅案内表示などを記載した原告路線図の
「図形の著作物」(著作権法10条1項6号)該当性(創作性の
有無)については、明確な判断を示すまでに至っていません
(11頁以下参照)。

   --------------------

■過去のブログ記事

バス路線の設計方法を表現した設計図の著作物性について
2007年3月29日記事
バス路線設計図事件

国際空港案内図の著作物性について
2006年6月2日記事
空港案内図事件(控訴審)

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2009年02月21日

「フランスの運河を巡って」事件〜著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「フランスの運河を巡って」事件

東京地裁平成21.2.19平成20(ワ)21343損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官      平田直人
裁判官      柵木澄子

*裁判所サイト公表 09/2/20

   --------------------

■事案

ウェブサイト上に掲載された紀行文が海外視察報告書に無断転載
された事案

原告:個人
被告:NPO法人、建設会社、同社取締役B

   --------------------

■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法112条、114条、115条、民法715条

1 被用者の侵害行為について使用者責任が成立するか
2 提訴前の被告らの対応について一般不法行為が成立するか
3 損害額
4 差止及び廃棄の要否
5 謝罪広告の要否

   --------------------

■判決内容

<経緯>

H16.9   被告らがNPO法人のサイトに南仏海外調査報告書を掲載
H20.5.27 原告がNPO法人のサイトへの紀行文の無断転載を発見
       原告がNPO法人に連絡
H20.6.11 NPO法人が原告に回答
H20.6.12 取締役Bの同日付回答を原告にメール送信
H20.8.6  被告らに訴状送達

   ----------------------------------------

(前提となる事実及び法律関係)

原告は、自らが執筆したフランスの運河を巡る紀行文を自ら開設する
ウェブサイト(後掲サイト参照)に掲載していました。
被告建設会社取締役(副社長)Bは、被告NPO法人(Bの会社が会員
となっている環境系NPO法人)が主宰した海外研修調査に参加し、
帰国後、Bは研修調査参加報告書をNPO法人に寄稿していました。
Bの著作物が掲載された南仏海外調査報告書は、NPO法人のウェブサ
イトに平成16年10月から平成20年5月までの間掲載されていました。

裁判所は、Bの報告書は、原告の紀行文をほぼそのままに引き写し
たか、要約したりしたものにすぎないとして原告著作物の複製又は
翻案を認め、依拠性もあるとしてBの著作権侵害行為を認定。
改変行為についても同一性保持権侵害を認めています。
公衆送信権侵害についてもNPO法人とBとの共同不法行為を認めて
います(4頁以下)。

   ----------------------------------------

<争点>

1 被用者の侵害行為について使用者責任が成立するか

原告は、被告取締役Bの報告書作成、ウェブサイト掲載行為が被告
建設会社の「事業の執行について」(民法715条1項)行われた行為
であるとして、被告建設会社の指揮監督責任として使用者責任の成
立を主張しました。

しかし、裁判所は、Bの報告書が個人的な感想を紹介する内容のも
のにすぎず、いわば「紀行文」の作成、提出行為であるとして、
被告会社の事業の執行についてされたものであるとは認めず、被
告会社について民法715条の使用者責任の成立を否定しています
(23頁以下)。

なお、原告は会社法350条(代表者の行為についての損害賠償責任)
の類推適用も主張していましたが、取締役Bには代表権がなく、また
報告書作成、提出行為が職務行為とは認められなかったことから
この点についても容れられていません(26頁)。

   ----------------------------------------

2 提訴前の被告らの対応について一般不法行為が成立するか

著作権侵害とは別に、フリーライドによる一般不法行為の成立やB
によるメールでの回答による名誉毀損行為の成立を原告は争点とし
ています(23頁以下)。

結論としては、裁判所は、原告において著作権侵害では評価し尽く
されない法的に保護された権利ないし利益の侵害があることを認め
ず、また名誉毀損行為も認められないとして、この点についての原
告の主張は容れられていません。

   ----------------------------------------

3 損害額

損害額について、著作権侵害(財産的損害)について10万円、著作
者人格権侵害(精神的損害)について30万円、弁護士費用5万円の
合計45万円と認定されています(28頁以下)。

   ----------------------------------------

4 差止及び廃棄の要否

被告NPO法人と取締役Bに対して複製等の差止と報告書、データの
廃棄の必要性が認められています
(31頁以下)。

   ----------------------------------------

5 謝罪広告の要否

被告NPO法人のウェブサイトに謝罪広告を掲載する点については、
NPO法人側も認めていたことからこれが認められましたが、全国紙の
新聞紙面上における謝罪広告についてはその必要性が認められま
せんでした(32頁以下)。

   --------------------

■コメント

報告書の無断転載自体を被告側は争っていないので、原告の主張
する損害額や使用者責任の成否などが争点の中心となっています。

視察旅行の報告書の無断転載問題は、地方議会議員が学術論文
を盗用するなどしてしばしば話題となりますが、和解等でうまく収ま
らないと、被告側(今回の事案では、一部上場の建設会社)のイメー
ジダウンは計り知れないとの印象を受ける事案です
(なお、原告の損害額の主張は500万円余り。被告側の和解提示案
では100万円でした)。

取締役Bは、会社の費用負担で視察旅行へ出かけて、職務として海
外研修調査を行っていたので、紀行文(感想文)とはいえ「海外調査
報告書」の一章として会社の肩書付きでNPO法人に寄稿している
わけですから、会社の責任もあながち否定できないところです(なお、
紀行文の職務著作性(著作権法15条)を争点とする余地もあったかも
しれません)。

ところで、今回の事案では、NPO法人は自らの責任を争わなかった
わけですが(12頁、14頁参照)、報告書の作成依頼について原稿料
の支払い関係もない本事案において、裁判所は、

 被告リサイクルソリューションは,その業務として,会員からの入会申込みを受け付け,原稿の執筆を依頼しているのであるから,当該原稿が,第三者の著作権を侵害するものではないか否かを確認すべき注意義務を負う。
 それにもかかわらず,被告著作物について上記注意義務を怠ったのであるから,被告リサイクルソリューションには,過失が認められる。

(8頁)

と、発注元の注意義務違反を明言している部分は、著作物制作発注
元の監督責任について裁判所が厳しいスタンスをとっている(最近で
も後掲の八坂神社祇園祭ポスター事件での八坂神社の責任や「写真
で見る首里城」事件おける財団法人の責任などがあります)ことが
よく伝わる部分です。

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■過去のブログ記事

2008年3月16日記事
八坂神社祇園祭ポスター事件
2008年11月13日記事
「写真で見る首里城」事件

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■参考サイト

ゴロネコの写真館にようこそ
フランスの運河を巡って(美しい田舎風景を求めて)

特定非営利活動法人リサイクルソリューション
ようこそリサイクルソリューションへ

written by ootsukahoumu at 05:44|この記事のURLTrackBack(0)