知財判決速報2008
2008年05月02日
四国八十八ヶ所霊場会写真事件〜不正競争防止法 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
四国八十八ヶ所霊場会写真事件
★東京地裁平成20.4.25平成19(ワ)29381損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 宮崎雅子
■事案
原告が撮影した仏像画の写真の写真集を基に
四国八十八ヶ所霊場会が御札を無断で製作、
販売したとして不正競争行為性が争われた事案
原告:写真家
被告:四国八十八ヶ所霊場会ら
■結論
請求棄却
■争点
条文 改正前不正競争防止法2条1項3号 民法709条 著作権法2条1項1号
1 不正競争行為性の肯否
2 一般不法行為性
■判決内容
<経緯>
H13.8 Dが霊場会とお砂踏本尊の製作契約(著作権譲渡)を締結
H13.9.4 原告とNHK出版が出版契約
H14.5 Dが大師御影とお砂踏本尊88点を納品(「D著作物」)
H14.5 原告がD著作物を撮影
H14.6 NHK出版から書籍2冊が出版される
H16.12 被告霊場会が87ヶ所の御影を御札として各1万部印刷
H18.6 さらに8万部増刷
<争点>
1 不正競争行為性の肯否
原告は、原告写真集の被告による複写行為等
について不正競争防止法2条1項3号の商品形態
模倣行為性(いわゆるデッドコピー)を争点と
しています。
しかし、裁判所は、
(1)
被告霊場会が製作した御札が、出版物である
別冊「四国八十八ヶ所 お砂踏本尊」の模倣
(実質的同一)をしたものとはいえない
(2)
原告は、営業上の利益を侵害される者にあた
らない
(3)
仮に写真集の画像が「他人の商品」性に該当
するとしても、忠実な再現を目指す性質から
すると画像に表現された線や色は同種の商品
が通常有する形態である
(改正前3号「通常有する形態」に該当)
(4)
仮に出版物がDの「心」と「魂」を伝えるもの
であり画像に表現された線や色が「通常有する
形態」ではないとしても、御札は再現において
粗雑であるからDの「心」と「魂」を伝えるもの
ではなく、模倣(実質的同一)の点を満たさない
(15頁以下)
という諸点から、原告の主張を退けました。
2 一般不法行為性
被告霊場会の担当者は、御影作品が縦1.4m、
横0.5m程度の大きさであり、原告の出版物の
画像(縦14.2cm、横5.5cm)から作品を複写
したほうが一から撮影するのに比し、作業が
楽であったという理由で原告の了解を得るこ
となくカメラで複写し、御札を製作しました。
この点について、裁判所は、原告の機材の準
備、労力、写真家の経験により得られた成果
への被告霊場会のただ乗りを認めつつも、
(1)
被告霊場会が御影作品の著作権、所有権を
保有していて御札を製作し販売すること自
体は何ら問題がないこと
(2)
2冊の出版物の発行は、被告霊場会の協力
があって可能となったものであること
という点から、被告霊場会の複写行為と御札
製作、販売行為の不法行為性を否定しました。
(16頁以下)
■コメント
四国八十八ヶ所霊場会というのは、四国にある
88ヶ所の弘法大師の霊場寺院の住職を正会員と
して組織された権利能力なき社団です。
原告が撮影した御影(おみえ)とは本尊などを
描いた絵画ですが、平面的な作品を忠実に撮影
した写真であったことから、その撮影された写
真には著作物性(著作権法2条1項1号)がないこ
とを原告も争っていません。
(5頁以下)
著作権をめぐる攻防ではなく、原告は不正競争
防止法も争点とはしていますが、被告霊場会が
同種の書籍を無断出版したわけではないですし、
争点としてあげるには厳しい印象です。
ともかく、御影の著作権が霊場会に帰属している
ので、写真家さんも問題をこじらせればこの写真
集以外に撮影した画像を二次使用するのは許諾が
得られず不可能となるわけで、そうしたリスクを
負ってまで提訴に踏み切ったというのは、よほど
思うところがあったのでしょう。
霊場会は、御札の販売にあたって、1から御影の
撮影をするのが面倒だったので写真家さんには黙
って写真集に掲載された御影の画像を複写したわ
けですが、ひとこと事前に写真家さんに説明があ
れば、その諾否も含め防げた紛争でした。
なお、今年は3月の八坂神社祇園祭ポスター事件
もあって、神社や霊場会まで被告にされてしまう
現状をみるにつけ、著作物の利用について馴れ合
いでは済まされなくなっているという印象を強く
します。
■原告写真集
「四国遍路 秘仏巡礼」(【別冊】「四国八十八ヶ所 お砂踏本尊」)
NHK出版 Online Shop
■追記(08.5.7)
名古屋の商標亭
5月6日記事
書籍に掲載された写真の複製
5月7日記事
書籍に掲載された写真は商品か
四国八十八ヶ所霊場会写真事件
★東京地裁平成20.4.25平成19(ワ)29381損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 宮崎雅子
■事案
原告が撮影した仏像画の写真の写真集を基に
四国八十八ヶ所霊場会が御札を無断で製作、
販売したとして不正競争行為性が争われた事案
原告:写真家
被告:四国八十八ヶ所霊場会ら
■結論
請求棄却
■争点
条文 改正前不正競争防止法2条1項3号 民法709条 著作権法2条1項1号
1 不正競争行為性の肯否
2 一般不法行為性
■判決内容
<経緯>
H13.8 Dが霊場会とお砂踏本尊の製作契約(著作権譲渡)を締結
H13.9.4 原告とNHK出版が出版契約
H14.5 Dが大師御影とお砂踏本尊88点を納品(「D著作物」)
H14.5 原告がD著作物を撮影
H14.6 NHK出版から書籍2冊が出版される
H16.12 被告霊場会が87ヶ所の御影を御札として各1万部印刷
H18.6 さらに8万部増刷
<争点>
1 不正競争行為性の肯否
原告は、原告写真集の被告による複写行為等
について不正競争防止法2条1項3号の商品形態
模倣行為性(いわゆるデッドコピー)を争点と
しています。
しかし、裁判所は、
(1)
被告霊場会が製作した御札が、出版物である
別冊「四国八十八ヶ所 お砂踏本尊」の模倣
(実質的同一)をしたものとはいえない
(2)
原告は、営業上の利益を侵害される者にあた
らない
(3)
仮に写真集の画像が「他人の商品」性に該当
するとしても、忠実な再現を目指す性質から
すると画像に表現された線や色は同種の商品
が通常有する形態である
(改正前3号「通常有する形態」に該当)
(4)
仮に出版物がDの「心」と「魂」を伝えるもの
であり画像に表現された線や色が「通常有する
形態」ではないとしても、御札は再現において
粗雑であるからDの「心」と「魂」を伝えるもの
ではなく、模倣(実質的同一)の点を満たさない
(15頁以下)
という諸点から、原告の主張を退けました。
2 一般不法行為性
被告霊場会の担当者は、御影作品が縦1.4m、
横0.5m程度の大きさであり、原告の出版物の
画像(縦14.2cm、横5.5cm)から作品を複写
したほうが一から撮影するのに比し、作業が
楽であったという理由で原告の了解を得るこ
となくカメラで複写し、御札を製作しました。
この点について、裁判所は、原告の機材の準
備、労力、写真家の経験により得られた成果
への被告霊場会のただ乗りを認めつつも、
(1)
被告霊場会が御影作品の著作権、所有権を
保有していて御札を製作し販売すること自
体は何ら問題がないこと
(2)
2冊の出版物の発行は、被告霊場会の協力
があって可能となったものであること
という点から、被告霊場会の複写行為と御札
製作、販売行為の不法行為性を否定しました。
(16頁以下)
■コメント
四国八十八ヶ所霊場会というのは、四国にある
88ヶ所の弘法大師の霊場寺院の住職を正会員と
して組織された権利能力なき社団です。
原告が撮影した御影(おみえ)とは本尊などを
描いた絵画ですが、平面的な作品を忠実に撮影
した写真であったことから、その撮影された写
真には著作物性(著作権法2条1項1号)がないこ
とを原告も争っていません。
(5頁以下)
著作権をめぐる攻防ではなく、原告は不正競争
防止法も争点とはしていますが、被告霊場会が
同種の書籍を無断出版したわけではないですし、
争点としてあげるには厳しい印象です。
ともかく、御影の著作権が霊場会に帰属している
ので、写真家さんも問題をこじらせればこの写真
集以外に撮影した画像を二次使用するのは許諾が
得られず不可能となるわけで、そうしたリスクを
負ってまで提訴に踏み切ったというのは、よほど
思うところがあったのでしょう。
霊場会は、御札の販売にあたって、1から御影の
撮影をするのが面倒だったので写真家さんには黙
って写真集に掲載された御影の画像を複写したわ
けですが、ひとこと事前に写真家さんに説明があ
れば、その諾否も含め防げた紛争でした。
なお、今年は3月の八坂神社祇園祭ポスター事件
もあって、神社や霊場会まで被告にされてしまう
現状をみるにつけ、著作物の利用について馴れ合
いでは済まされなくなっているという印象を強く
します。
■原告写真集
「四国遍路 秘仏巡礼」(【別冊】「四国八十八ヶ所 お砂踏本尊」)
NHK出版 Online Shop
■追記(08.5.7)
名古屋の商標亭
5月6日記事
書籍に掲載された写真の複製
5月7日記事
書籍に掲載された写真は商品か
hayabusa9999 at 09:47|この記事のURL
│TrackBack(0)
2008年04月29日
人工漁礁事件(控訴審)〜不正競争防止法 不正競争行為差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
人工漁礁事件(控訴審)
★知財高裁平成20.4.23平成19(ネ)10096不正競争行為差止等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 森義之
裁判官 澁谷勝海
★原審
東京地裁平成19.10.23平成19(ワ)11136不正競争行為差止等請求事件PDF
■事案
人工漁礁の形態の商品等表示性(不正競争防止法2条1項1号)が
争われた事案の控訴審
原告(控訴人) :魚礁場設計製造会社
被告(被控訴人):人工漁礁等製造販売会社ら
■結論
控訴棄却
■争点
条文 不正競争防止法2条1項1号
1 商品形態の商品等表示性
2 形態の類否
3 特許権侵害性(略)
■判決内容
<争点>
1 商品形態の商品等表示性
2 形態の類否
不正競争行為該当性について、控訴審は原判決の判断を
維持しています。
(12頁)
結論として、特許権侵害性の争点の判断も含め原判決を
相当として請求を棄却しました。
■コメント
不正競争行為該当性について、原判決をそのまま
引用(原判決19頁〜25頁)して判断を維持してい
ます。
■過去のブログ記事
2007年11月03日記事
「人工漁礁」事件〜不正競争防止法 不正競争行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
hayabusa9999 at 14:03|この記事のURL
│TrackBack(0)
2008年04月28日
ネットワーク研修教材事件〜著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
ネットワーク研修教材事件
★東京地裁平成20.4.18平成18(ワ)26738損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 平田直人
裁判官 瀬田浩久
■事案
CCNA技術者認定資格試験対策のためのネットワーク
研修教本を元従業員らが無断で複製したことについて
元請け会社のみなし侵害行為性が争われた事案
原告:システム、人材開発会社
被告:ナレッジツール事業会社甲
一般労働者派遣業会社乙(元請け)
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法第15条、21条、19条、20条、113条1項2号
1 原告教本の職務著作性
2 被告甲による著作権侵害性
3 被告甲に対する差止の要否
4 被告甲に対する損害賠償の可否
5 被告乙に対する差止の可否
6 被告乙に対する損害賠償の可否
■判決内容
<経緯>
H14 被告乙がNTTラーニングと講師派遣契約
原告と被告乙間で講師派遣契約
原告がパワポ資料「平成14年資料」を作成
H15 被告乙がNTTラーニング、原告とH14と同一内容で契約
被告乙がNTTラーニングと教材販売契約
原告と被告乙間で教本制作販売契約
原告が「平成15年教本」を作成
H16 被告乙がNTTラーニング、原告とH15と同一内容で契約
原告と被告乙間で教本制作販売契約
原告が「平成16年教本」を作成
H16.2 Aらが教本「ネットワーク基礎」(第1版)作成
H16.5 教本「ネットワーク基礎」(第2版)作成
H17.6.20 Aが退社
H17.7 教本「ネットワーク基礎」(第3版)作成
H17.8 被告乙がNTTラーニングと講師派遣契約
被告乙と被告甲間で講師派遣契約
被告乙とNTTラーニング間で教本制作販売契約
H17.9.7 Aが被告甲を設立、代表取締役に就任
B,C,Dが被告甲の取締役に就任、その後原告を退社
被告甲が「別件被告教本」を作成、販売
H18.1.19 原告が被告甲に「別件被告教本」販売中止通知書送付
H18.1.26 被告甲が原告に回答
H18.2.2 原告が被告甲に対して「別件被告教本」について提訴
(東京地裁平成18(ワ)2012)
H18.3.3 損害賠償金100万円で訴訟上の和解成立
------------------------------
平成14年〜16年の取引状況
NTTラーニング(CCNA資格試験対策研修開催)
↓委託(講師派遣委託)
被告乙(元請け)
↓委託(講師派遣委託)
原告
・原告社員を講師として派遣
・教材作成
------------------------------
<争点>
1 原告教本の職務著作性
被告甲は、原告に著作権が帰属していることを
認めているので争点とはなっていません。
裁判所は、原告のネットワーク研修に関する業
務を担当する部署であるシステム技術部に所属
する社員らによって作成された原告教本の職務
著作性を認めています。
(22頁以下)
2 被告甲による著作権侵害性
原告会社の退社社員である被告甲の代表取締役及び
取締役のAらは、原告に無断で原告教本に依拠し、
かつこれを複製して被告教本を作成したことを認め
ており、複製権侵害、著作者人格権(同一性保持
権、氏名表示権)侵害が認められています。
(23頁以下)
3 被告甲に対する差止の要否
被告甲は、現在被告教本を作成、販売していない
こと、今後も作成、販売行為による著作権侵害等
のおそれがあるとは認められないとして差止の必
要性が否定されています。
(24頁以下)
4 被告甲に対する損害賠償の可否
被告甲に著作権侵害等についての故意が認められ、
著作権侵害部分として21万円余り(販売数79冊)、
人格権侵害部分として50万円が損害額として認定
されています。
(25頁以下)
5 被告乙に対する差止の可否(113条1項2号)
被告乙が、著作権侵害物である被告甲の教本を情
を知って販売していたかどうか(みなし侵害行為
113条1項2号)が争点となっています。
裁判所は、被告乙に教本の著作権の帰属関係につ
いて、明確な認識を有していたと認めることはで
きないとしてみなし侵害性を否定、差止請求は理
由がないと判断しています。
(27頁以下)
6 被告乙に対する損害賠償の可否
被告乙については、みなし侵害行為(113条1項2号)
が否定されていることもあって、教本販売行為の
不法行為性が否定されています。
(29頁以下)
結論として、被告甲には71万円余りの損害賠償が
認められ、被告乙に対する請求は棄却されています。
■コメント
退職従業員による研修教材流用事案です。
別の教本に関する別訴で和解が成立している経緯
もあって、今回の教本でも著作権侵害性の部分で
は大きな争点とはなっていません。
見るべきところとしては、研修講師派遣業務の元
請けとなった乙の責任です。
原告会社を退職した従業員らが立ち上げた新会社
がいままで原告会社が行ってきた研修業務を実質
的に引継いで担当するカタチになったわけですが、
元請けの乙が原告との従前の取引関係を踏まえど
の程度教本の著作権関係などに注意をしなければ
ならなかったのか。
今回の事案では、詳細な検討に至っていませんが
(27頁以下)、クライアント先に納品する教材の
著作権関係について、元請けが無関心でいられる
訳にもいかないので、事例判断とはいえ参考とし
たいところです。
■過去のブログ記事
15条関係
2008年1月16日記事
「メンタリングトレーニング職務著作」事件〜著作権 不正競争行為差止等請求事件判決
2006年10月22日記事
「講習会資料職務著作」事件(控訴審)〜著作権 損害賠償等請求事件判決
2006年3月4日記事
「講習会資料職務著作」事件(原審)
21条関係
2007年9月3日記事
「営業ノウハウ書籍」事件〜著作権 著作権侵害差止等請求事件判決
■参考文献
岡邦俊「職務著作以外の業務上の文書を会社が複製できる条件
「計装士講習資料」事件」
『最新判例62を読む 著作権の事件簿』(2007)60頁以下
ネットワーク研修教材事件
★東京地裁平成20.4.18平成18(ワ)26738損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 平田直人
裁判官 瀬田浩久
■事案
CCNA技術者認定資格試験対策のためのネットワーク
研修教本を元従業員らが無断で複製したことについて
元請け会社のみなし侵害行為性が争われた事案
原告:システム、人材開発会社
被告:ナレッジツール事業会社甲
一般労働者派遣業会社乙(元請け)
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法第15条、21条、19条、20条、113条1項2号
1 原告教本の職務著作性
2 被告甲による著作権侵害性
3 被告甲に対する差止の要否
4 被告甲に対する損害賠償の可否
5 被告乙に対する差止の可否
6 被告乙に対する損害賠償の可否
■判決内容
<経緯>
H14 被告乙がNTTラーニングと講師派遣契約
原告と被告乙間で講師派遣契約
原告がパワポ資料「平成14年資料」を作成
H15 被告乙がNTTラーニング、原告とH14と同一内容で契約
被告乙がNTTラーニングと教材販売契約
原告と被告乙間で教本制作販売契約
原告が「平成15年教本」を作成
H16 被告乙がNTTラーニング、原告とH15と同一内容で契約
原告と被告乙間で教本制作販売契約
原告が「平成16年教本」を作成
H16.2 Aらが教本「ネットワーク基礎」(第1版)作成
H16.5 教本「ネットワーク基礎」(第2版)作成
H17.6.20 Aが退社
H17.7 教本「ネットワーク基礎」(第3版)作成
H17.8 被告乙がNTTラーニングと講師派遣契約
被告乙と被告甲間で講師派遣契約
被告乙とNTTラーニング間で教本制作販売契約
H17.9.7 Aが被告甲を設立、代表取締役に就任
B,C,Dが被告甲の取締役に就任、その後原告を退社
被告甲が「別件被告教本」を作成、販売
H18.1.19 原告が被告甲に「別件被告教本」販売中止通知書送付
H18.1.26 被告甲が原告に回答
H18.2.2 原告が被告甲に対して「別件被告教本」について提訴
(東京地裁平成18(ワ)2012)
H18.3.3 損害賠償金100万円で訴訟上の和解成立
------------------------------
平成14年〜16年の取引状況
NTTラーニング(CCNA資格試験対策研修開催)
↓委託(講師派遣委託)
被告乙(元請け)
↓委託(講師派遣委託)
原告
・原告社員を講師として派遣
・教材作成
------------------------------
<争点>
1 原告教本の職務著作性
被告甲は、原告に著作権が帰属していることを
認めているので争点とはなっていません。
裁判所は、原告のネットワーク研修に関する業
務を担当する部署であるシステム技術部に所属
する社員らによって作成された原告教本の職務
著作性を認めています。
(22頁以下)
2 被告甲による著作権侵害性
原告会社の退社社員である被告甲の代表取締役及び
取締役のAらは、原告に無断で原告教本に依拠し、
かつこれを複製して被告教本を作成したことを認め
ており、複製権侵害、著作者人格権(同一性保持
権、氏名表示権)侵害が認められています。
(23頁以下)
3 被告甲に対する差止の要否
被告甲は、現在被告教本を作成、販売していない
こと、今後も作成、販売行為による著作権侵害等
のおそれがあるとは認められないとして差止の必
要性が否定されています。
(24頁以下)
4 被告甲に対する損害賠償の可否
被告甲に著作権侵害等についての故意が認められ、
著作権侵害部分として21万円余り(販売数79冊)、
人格権侵害部分として50万円が損害額として認定
されています。
(25頁以下)
5 被告乙に対する差止の可否(113条1項2号)
被告乙が、著作権侵害物である被告甲の教本を情
を知って販売していたかどうか(みなし侵害行為
113条1項2号)が争点となっています。
裁判所は、被告乙に教本の著作権の帰属関係につ
いて、明確な認識を有していたと認めることはで
きないとしてみなし侵害性を否定、差止請求は理
由がないと判断しています。
(27頁以下)
6 被告乙に対する損害賠償の可否
被告乙については、みなし侵害行為(113条1項2号)
が否定されていることもあって、教本販売行為の
不法行為性が否定されています。
(29頁以下)
結論として、被告甲には71万円余りの損害賠償が
認められ、被告乙に対する請求は棄却されています。
■コメント
退職従業員による研修教材流用事案です。
別の教本に関する別訴で和解が成立している経緯
もあって、今回の教本でも著作権侵害性の部分で
は大きな争点とはなっていません。
見るべきところとしては、研修講師派遣業務の元
請けとなった乙の責任です。
原告会社を退職した従業員らが立ち上げた新会社
がいままで原告会社が行ってきた研修業務を実質
的に引継いで担当するカタチになったわけですが、
元請けの乙が原告との従前の取引関係を踏まえど
の程度教本の著作権関係などに注意をしなければ
ならなかったのか。
今回の事案では、詳細な検討に至っていませんが
(27頁以下)、クライアント先に納品する教材の
著作権関係について、元請けが無関心でいられる
訳にもいかないので、事例判断とはいえ参考とし
たいところです。
■過去のブログ記事
15条関係
2008年1月16日記事
「メンタリングトレーニング職務著作」事件〜著作権 不正競争行為差止等請求事件判決
2006年10月22日記事
「講習会資料職務著作」事件(控訴審)〜著作権 損害賠償等請求事件判決
2006年3月4日記事
「講習会資料職務著作」事件(原審)
21条関係
2007年9月3日記事
「営業ノウハウ書籍」事件〜著作権 著作権侵害差止等請求事件判決
■参考文献
岡邦俊「職務著作以外の業務上の文書を会社が複製できる条件
「計装士講習資料」事件」
『最新判例62を読む 著作権の事件簿』(2007)60頁以下
hayabusa9999 at 20:12|この記事のURL
│TrackBack(0)
2008年04月25日
スターボ広告代理店事件〜著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
スターボ広告代理店事件
★東京地裁平成20.4.18平成18(ワ)10704損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 宮崎雅子
■事案
クライアントの製品広告に使用されたイラストのラ
イセンス契約関係について、製作・取次を担当した
広告代理店の著作権処理に関する責任が認められた
事案
原告:カー用品製造販売会社
被告:広告代理店
■結論
請求一部認容
■争点
条文 民法415条、709条
1 原告被告間の契約内容
2 被告の履行の有無
3 損害および過失相殺
■判決内容
<経緯>
S60〜 原告被告間で取引開始
H5.9 原告製品「スターボ」(RS-12)のリーフレット製作委託
H5.11 原告製品(RS-12)の自動車雑誌用広告原稿の製作、
広告掲載取次を委託
H5.12 被告が原告に本件イラストのデュープを交付
H6.9 原告製品(RS-50)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H8.9 原告製品(RS-60)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H10.6 原告製品(RS-651)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
原告製品のパッケージデザイン製作を委託
H10.8 原告製品(RS-601)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
原告製品(RS-701)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H11.9 原告製品(RS-2000)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H12.2〜H14.5
原告新製品について、他社へデザイン製作を依頼、
広告掲載取次ぎは被告へ依頼
H14.3 本件イラストを作成したCが著作権侵害の問い合わせ
H14.7 原告は社内デザイナーによりデザインを製作、
被告が広告取次ぎ
H15.10 Cが原告に対してイラストの使用中止などの通告書送付
H15.10.24 C代理人弁護士による通告書送付
H16.1.10 Cが原告に対してイラスト使用差止等を求め提訴
(東京地裁平成16年(ワ)1398)
H17.5.16 原告とCが損害金1200万円、パッケージ廃棄で和解
------------------------------------------
平成5年9月の契約状況
クライアント(原告) 代表取締役D
↓デザイン製作依頼、印刷取次依頼
広告代理店(被告) 担当者A
↓デザイン発注
デザイン会社 代表取締役B
↓イラスト発注
イラスト製作 C
------------------------------------------
<争点>
1 原告被告間の契約内容
1.イラストの著作権譲渡の有無
原告が被告に対してデザイン製作を依頼した際、本件
イラストの著作権や著作者人格権について取決めた契
約書はありませんでした。
また、取引の経緯からも原告被告間での著作権譲渡の
口頭の合意も認定されるに至っていません。
(20頁以下)
2.契約内容に関する黙示の合意
平成12年4月以降は、原告はデザイン製作を他社に依頼
したり、自社で製作し、広告掲載の取次ぎのみ被告に
依頼していました。
この平成12年以前の原告被告間での合意内容としては、
被告に品番ごとに著作権者との翻案の許諾、著作者人格
権不行使のための権利処理が求められていたこと、また、
12年以降は、被告による権利処理について黙示の合意
がされていたと認定しています。
(21頁以下)
3.被告の契約義務内容
被告としては、著作権、著作者人格権についての権利
処理が求められ、権利処理が行われていなかったこと
を認識し又は認識し得たときは契約による信義則上、
原告への連絡など被害拡大防止義務を負っていたもの
である、とされています。
(22頁)
2 被告の履行の有無
1.被告による権利処理の有無
イラストを作成したCのことを被告担当者Aは当初か
ら知らなかったことから、権利処理は行われていませ
んでした。
(23頁)
2.被告による連絡義務の履行の有無
Cからの苦情の取扱いについて、被告社員Aは積極的
な対応をとっていませんでした。
『平成14年4月当時,原告は,既に,本件イラストをキャラクター的に使用していたものであるから,Aがその使用の中止を求めたとすれば,原告は,その宣伝広告の方法を根本から見直す必要があり,当然,そのことによって原告に生じる損害の補償問題や,それがこじれた場合の取引関係の解消の問題が生じることになり,被告として補償に応じるのか否かを真剣に検討せざるを得ない状況になる。しかしながら,Aが,このような点まで十分考慮し,以後責任を負えないことを明確に伝え,本件イラストの使用中止を強く求めることをうかがわせる状況を認めるに足りる証拠はないものである。C前訴が提起された後においても,C前訴の提起後の原告による使用は原告の自己責任である旨を伝える内容証明を原告に送付したり,被告の担当役員がD社長と面談して,上記の旨を伝えたことがうかがわれないことは,AがCからの苦情につき,明確な態度を採らなかったことをうかがわせるものである。』
(23頁以下)
結論として、被告は原告に対する連絡義務(先行行為
による通知義務)を果たしていないとされています。
3.被告の責に帰すべき事由(過失)
『被告にCが著作者であるとの認識がなかったとしても,広告代理店である被告として,自己の履行補助者の立場にあるゼル社に製作過程等を確認するなどして,著作権法上問題が生じないように権利処理を行う義務を有していたことは当然であるところ,被告がこの義務を履行していないことは明らかである。』
(25頁以下)
裁判所は、広告代理店として著作権法上の権利処理を行
う義務があることを明確に示しています。
3 損害および過失相殺
1.C前訴での和解金
Cと原告が別訴で和解をしていて和解金が1200万円(著
作権侵害800万円、慰謝料400万円)となっていましたが、
この1200万円が被告の債務不履行行為と相当因果関係が
ある損害と判断されています。
(26頁以下)
2.パッケージ廃棄、差替費用など
パッケージの廃棄、差替費用として発生した1979万円余
りの費用が損害として認定されています。
また、原告とCとの訴訟についての弁護士費用420万円も
損害として認定されています。
(27頁)
3.過失相殺
原告がCからの苦情を知った平成15年10月以降について
は、原告にも損害拡大防止が期待されていたとして結論
的には過失割合を原告:被告=4:6と認定しています。
(28頁以下)
結論としては、本訴の弁護士費用とあわせて3000万円余
りが損害額として認められました。
■コメント
被告の広告代理店は、交通広告に実績がある総合広
告代理業社で、戦前からの歴史のある会社です。
広告代理店の担当者は、イラストの使用中止をクラ
イアント先に強く求めることが長年の取引がある大
口取引先に対して出来なかったのかもしれません。
こと著作権侵害事案においては、書籍出版社の責任
にみられるように、取次業、仲介業社に注意義務違
反が認められ易い昨今の状況があるかもしれません。
広告代理店が著作権管理について末端の下請け先ま
で工程管理しなければならないと説示された点は重
要です。
ところで、下請けのデザイナーさんとデザイン製作
会社の間では、イラストの使用範囲を自動車雑誌用
の広告までと考えていたようです(8頁以下参照)。
なお、イラストの作成対価は25万円でした。
パッケージなどの他の媒体での二次使用は別途協議、
イラスト(キャラクター)の髪型や体型、衣装の色
彩を変更する場合はデザイナーさんに話を通せ、勝
手にやるな、ということだったと思われます。
昨年の「おりがみあそび」イラスト事件でもそうで
すが、筋を通さないと末端の制作者さんは黙っては
いません。
とはいえ、エンジンスターター用の遠隔リモコンを
手に持つミニスカートの女性の後ろ姿のイラストだ
けで4桁、5桁の損害賠償をデザイナーさんから請求
されたら正直なところ、ちょっとどうかな?という
感じですが、これがキャラクター展開(「スターボ
ねえちゃん」)していたとなると話が違うのかもし
れません。
■参考判例
・イラスト使用関係で広告代理店の責任が争点となった事例
恐竜イラスト事件(原審)
東京地裁平成10.10.26平成8(ワ)3385損害賠償請求事件
日本ユニ著作権センター/判例全文・1998-10-26
・イラストの無断改変について出版社に責任が認められた事例
「おりがみあそび」イラスト事件
東京地裁平成19.11.16平成19(ワ)4822損害賠償等請求事件PDF
■参考サイト
原告会社製品
リモコンエンジンスターター[STARBOシリーズ]|サンヨーテクニカ
スターボRS-1500パッケージデザイン
isshiy's room エンジンスターター・スターボ装着
■参考文献
斉藤博ほか「シンポジウム 広告と著作権・著作隣接権」
『著作権研究』21号(1995)71頁以下
■追記(08.5.7)
企業法務戦士の雑感 5月7日記事
■[企業法務][知財]「スターボねえちゃん」をめぐる騒動の果てに。
*企業法務戦士の雑感さんの記事にイラストレーターさんの
訴状のリンクの紹介があります。
訴状
参考サイト
著作権その可能性の中心(弁護士 柳原敏夫先生)
陳述書(1)
*イラストレーターさんの原告側陳述書も掲載されています。
スターボ広告代理店事件
★東京地裁平成20.4.18平成18(ワ)10704損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 宮崎雅子
■事案
クライアントの製品広告に使用されたイラストのラ
イセンス契約関係について、製作・取次を担当した
広告代理店の著作権処理に関する責任が認められた
事案
原告:カー用品製造販売会社
被告:広告代理店
■結論
請求一部認容
■争点
条文 民法415条、709条
1 原告被告間の契約内容
2 被告の履行の有無
3 損害および過失相殺
■判決内容
<経緯>
S60〜 原告被告間で取引開始
H5.9 原告製品「スターボ」(RS-12)のリーフレット製作委託
H5.11 原告製品(RS-12)の自動車雑誌用広告原稿の製作、
広告掲載取次を委託
H5.12 被告が原告に本件イラストのデュープを交付
H6.9 原告製品(RS-50)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H8.9 原告製品(RS-60)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H10.6 原告製品(RS-651)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
原告製品のパッケージデザイン製作を委託
H10.8 原告製品(RS-601)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
原告製品(RS-701)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H11.9 原告製品(RS-2000)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H12.2〜H14.5
原告新製品について、他社へデザイン製作を依頼、
広告掲載取次ぎは被告へ依頼
H14.3 本件イラストを作成したCが著作権侵害の問い合わせ
H14.7 原告は社内デザイナーによりデザインを製作、
被告が広告取次ぎ
H15.10 Cが原告に対してイラストの使用中止などの通告書送付
H15.10.24 C代理人弁護士による通告書送付
H16.1.10 Cが原告に対してイラスト使用差止等を求め提訴
(東京地裁平成16年(ワ)1398)
H17.5.16 原告とCが損害金1200万円、パッケージ廃棄で和解
------------------------------------------
平成5年9月の契約状況
クライアント(原告) 代表取締役D
↓デザイン製作依頼、印刷取次依頼
広告代理店(被告) 担当者A
↓デザイン発注
デザイン会社 代表取締役B
↓イラスト発注
イラスト製作 C
------------------------------------------
<争点>
1 原告被告間の契約内容
1.イラストの著作権譲渡の有無
原告が被告に対してデザイン製作を依頼した際、本件
イラストの著作権や著作者人格権について取決めた契
約書はありませんでした。
また、取引の経緯からも原告被告間での著作権譲渡の
口頭の合意も認定されるに至っていません。
(20頁以下)
2.契約内容に関する黙示の合意
平成12年4月以降は、原告はデザイン製作を他社に依頼
したり、自社で製作し、広告掲載の取次ぎのみ被告に
依頼していました。
この平成12年以前の原告被告間での合意内容としては、
被告に品番ごとに著作権者との翻案の許諾、著作者人格
権不行使のための権利処理が求められていたこと、また、
12年以降は、被告による権利処理について黙示の合意
がされていたと認定しています。
(21頁以下)
3.被告の契約義務内容
被告としては、著作権、著作者人格権についての権利
処理が求められ、権利処理が行われていなかったこと
を認識し又は認識し得たときは契約による信義則上、
原告への連絡など被害拡大防止義務を負っていたもの
である、とされています。
(22頁)
2 被告の履行の有無
1.被告による権利処理の有無
イラストを作成したCのことを被告担当者Aは当初か
ら知らなかったことから、権利処理は行われていませ
んでした。
(23頁)
2.被告による連絡義務の履行の有無
Cからの苦情の取扱いについて、被告社員Aは積極的
な対応をとっていませんでした。
『平成14年4月当時,原告は,既に,本件イラストをキャラクター的に使用していたものであるから,Aがその使用の中止を求めたとすれば,原告は,その宣伝広告の方法を根本から見直す必要があり,当然,そのことによって原告に生じる損害の補償問題や,それがこじれた場合の取引関係の解消の問題が生じることになり,被告として補償に応じるのか否かを真剣に検討せざるを得ない状況になる。しかしながら,Aが,このような点まで十分考慮し,以後責任を負えないことを明確に伝え,本件イラストの使用中止を強く求めることをうかがわせる状況を認めるに足りる証拠はないものである。C前訴が提起された後においても,C前訴の提起後の原告による使用は原告の自己責任である旨を伝える内容証明を原告に送付したり,被告の担当役員がD社長と面談して,上記の旨を伝えたことがうかがわれないことは,AがCからの苦情につき,明確な態度を採らなかったことをうかがわせるものである。』
(23頁以下)
結論として、被告は原告に対する連絡義務(先行行為
による通知義務)を果たしていないとされています。
3.被告の責に帰すべき事由(過失)
『被告にCが著作者であるとの認識がなかったとしても,広告代理店である被告として,自己の履行補助者の立場にあるゼル社に製作過程等を確認するなどして,著作権法上問題が生じないように権利処理を行う義務を有していたことは当然であるところ,被告がこの義務を履行していないことは明らかである。』
(25頁以下)
裁判所は、広告代理店として著作権法上の権利処理を行
う義務があることを明確に示しています。
3 損害および過失相殺
1.C前訴での和解金
Cと原告が別訴で和解をしていて和解金が1200万円(著
作権侵害800万円、慰謝料400万円)となっていましたが、
この1200万円が被告の債務不履行行為と相当因果関係が
ある損害と判断されています。
(26頁以下)
2.パッケージ廃棄、差替費用など
パッケージの廃棄、差替費用として発生した1979万円余
りの費用が損害として認定されています。
また、原告とCとの訴訟についての弁護士費用420万円も
損害として認定されています。
(27頁)
3.過失相殺
原告がCからの苦情を知った平成15年10月以降について
は、原告にも損害拡大防止が期待されていたとして結論
的には過失割合を原告:被告=4:6と認定しています。
(28頁以下)
結論としては、本訴の弁護士費用とあわせて3000万円余
りが損害額として認められました。
■コメント
被告の広告代理店は、交通広告に実績がある総合広
告代理業社で、戦前からの歴史のある会社です。
広告代理店の担当者は、イラストの使用中止をクラ
イアント先に強く求めることが長年の取引がある大
口取引先に対して出来なかったのかもしれません。
こと著作権侵害事案においては、書籍出版社の責任
にみられるように、取次業、仲介業社に注意義務違
反が認められ易い昨今の状況があるかもしれません。
広告代理店が著作権管理について末端の下請け先ま
で工程管理しなければならないと説示された点は重
要です。
ところで、下請けのデザイナーさんとデザイン製作
会社の間では、イラストの使用範囲を自動車雑誌用
の広告までと考えていたようです(8頁以下参照)。
なお、イラストの作成対価は25万円でした。
パッケージなどの他の媒体での二次使用は別途協議、
イラスト(キャラクター)の髪型や体型、衣装の色
彩を変更する場合はデザイナーさんに話を通せ、勝
手にやるな、ということだったと思われます。
昨年の「おりがみあそび」イラスト事件でもそうで
すが、筋を通さないと末端の制作者さんは黙っては
いません。
とはいえ、エンジンスターター用の遠隔リモコンを
手に持つミニスカートの女性の後ろ姿のイラストだ
けで4桁、5桁の損害賠償をデザイナーさんから請求
されたら正直なところ、ちょっとどうかな?という
感じですが、これがキャラクター展開(「スターボ
ねえちゃん」)していたとなると話が違うのかもし
れません。
■参考判例
・イラスト使用関係で広告代理店の責任が争点となった事例
恐竜イラスト事件(原審)
東京地裁平成10.10.26平成8(ワ)3385損害賠償請求事件
日本ユニ著作権センター/判例全文・1998-10-26
・イラストの無断改変について出版社に責任が認められた事例
「おりがみあそび」イラスト事件
東京地裁平成19.11.16平成19(ワ)4822損害賠償等請求事件PDF
■参考サイト
原告会社製品
リモコンエンジンスターター[STARBOシリーズ]|サンヨーテクニカ
スターボRS-1500パッケージデザイン
isshiy's room エンジンスターター・スターボ装着
■参考文献
斉藤博ほか「シンポジウム 広告と著作権・著作隣接権」
『著作権研究』21号(1995)71頁以下
■追記(08.5.7)
企業法務戦士の雑感 5月7日記事
■[企業法務][知財]「スターボねえちゃん」をめぐる騒動の果てに。
*企業法務戦士の雑感さんの記事にイラストレーターさんの
訴状のリンクの紹介があります。
訴状
参考サイト
著作権その可能性の中心(弁護士 柳原敏夫先生)
陳述書(1)
*イラストレーターさんの原告側陳述書も掲載されています。
hayabusa9999 at 06:09|この記事のURL
│TrackBack(0)
2008年04月14日
堤人形事件〜著作権 不正競業行為差止等請求事件判決(下級裁判所判例集)〜
裁判所HP 下級裁判所判例集より
堤人形事件
★仙台地裁平成20年01月31日平成15(ワ)683不正競業行為差止等請求事件PDF
仙台地方裁判所第3民事部
裁判長裁判官 小野洋一
裁判官 伊澤文子
裁判官 小川貴紀
■事案
宮城県の伝統工芸品である堤(つつみ)人形の意匠等
をめぐって著作権、商標権侵害性、不正競争行為性が
争われた事案
原告:堤人形作家A、人形制作会社B
被告:人形製造販売業者C、原告会社元従業員D
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法第2条1項1号
商標法25条、26条
不正競争防止法2条1項1号、2号、4号、13号
1 人形に著作権が発生しているか
2 商標権侵害性の有無
3 不正競争行為性の有無
■判決内容
<経緯>
S30.3.31 被告Dが原告Aの父である先代Eの元に弟子入り
S54 被告Dが被告Cに絵付けの技術指導
S63.1.12 原告Aが原告会社Bを設立
H15.4.28 原告会社Bが被告Dを懲戒解雇
H15.6.9 被告Dが労働委員会に労使紛争のあっせん申立て
H18.10.18 「堤人形/つつみのおひなやっこや」被告登録商標
無効審判確定
H19.4.10 「つつみのおひなやっこや」被告登録商標
知財高裁審決取消事件、上告中
原告登録商標「つゝみ」
第2354191号
原告登録商標「堤」
第2365147号
<争点>
1 人形に著作権が発生しているか
牛乗天神、滝登り、鯉かつぎ、副神川越などの23点の
堤人形に原告の創作行為による著作権が発生している
かどうかが争われました。
裁判所は、堤人形が江戸時代から制作されてきた伝統
工芸品であることから原告商品に独自の著作権を認め
るためには「高度な創作性」(18頁)があることが必要で
あるとしています。
そのうえで、いずれの作品にも形状や彩色について原
告によって新たな創作性が付与されたとは認められな
いとして原告の著作権の発生を否定しています。
(17頁以下)
2 商標権侵害性の有無
被告Cは屋号や看板、広告などに「堤人形」、「つつみ
のおひなやっこや」などの標章を使用していましたが、
自他商品識別機能を果たす態様での使用ではないとし
て、被告の表示行為は原告の商標権を侵害する行為と
は認められませんでした。
(40頁以下)
3 不正競争行為性の有無
1.混同惹起行為性(2条1項1号)
被告による「宮城県伝統工芸品」、「堤」、「つつみ」、
「つゝみ」という表示の使用、また作品の形態そのもの
の商品等表示性を根拠とする商品販売行為について、
不正競争防止法の誤認混同惹起行為にあたるかどうか
が争われました。
結論的には、被告の表示行為や商品形態自体が商品出所
表示、自他商品識別機能を果たす態様での使用ではない
ことから1号に該当しないとされています。
(44頁以下)
2.著名表示冒用行為性(2条1項2号)
原告は、作品そのものの著名商品表示性を前提として
被告商品形態の2号不正競争行為性を争点としました。
しかし、この点についても被告商品の形態そのものが
出所表示性、自他商品識別機能を果たす態様で用いら
れているとはいえないとして、不正競争行為性が否定
されています。
(47頁以下)
3.営業秘密侵害行為性(2条1項4号)
5点の被告作品の石膏型について検証がおこなわれた結
果として、裁判所は、
『原告ら商品の型を被告らが何らかの方法で盗用して石膏型を作成し(・・・),それに基づき制作したものであると認めることができる。被告らがどのような方法を用いてこれらの型を盗用したのかについて,これを認めるに足りる証拠はないが,不正競争防止法2条1項4号の不正取得行為によって取得した営業秘密であるということができ,被告Cはこれにより原告らの営業上の利益を侵害するおそれがある。』
(50頁)
として、営業秘密の不正取得行為性を肯定しています。
(48頁以下)
4.品質等誤認惹起行為性(2条1項13号)
被告による「宮城県伝統工芸品」表示行為について、
伝統工芸品の指定は、工芸品の制作者にではなく、工
芸品そのものに対してなされるものであるとして、被
告制作の堤人形に「宮城県伝統工芸品」表示をするこ
とは品質誤認混同惹起行為にはあたらないとされてい
ます。
(51頁)
■コメント
23点のつつみ人形のうち、5点について原告商品の型
の盗用行為が認められ、その結果として、その型から
作成された石膏型での被告商品の製造販売禁止、商品
の廃棄が肯定されています。
ところで、原告商品の型(原告商品の土型である石膏型)
が果たして秘密管理性などの営業秘密の要件を充足し
ていたものなのか、不正取得行為認定の前提となる営
業秘密性について詳細な判断がされていません。
「原告商品の型」自体が秘密とされるようなものだ
ったとすると5点以外の18点の作品の型から作成され
た現に被告が量産用に所持しているであろう石膏型
はどうだったのでしょうか。
今回の事案について、知人の工芸作家さんに感想を聞
いてみました。
たいへん丁寧に解説してくれました。
下記掲載の参考サイト(*注1、注2)から問題となっ
ている作品「鯉かつぎ」「鯛の滝登り」と思われるも
のの対比です。

上段の3点が被告商品(A群)
下段の2点が原告商品(B群)
『もし、自分がA群の人形の型から
B群の人形を作れといわれた場合
まず、Aの型から人形Aを作り
それを削ったり粘土を付け足したり
などの加工を加えて人形Bを作ります。
そして、出来上がった人形Bから、
新たな型を取ります。
その型を使って量産します。』
この作家さんのお話を前提とすると、原告商品を入
手して3Dモデリングすることが可能で、原告の素焼
用の土型(石膏型)そのものを盗用する必要はあり
ません。
原告商品を入手した者であれば誰でも石膏型を作成
できる程度の形状のものである、あるいは商品を持っ
ていなくても技能があれば目視で型を再現できる
程度の形状のものであるとすると、原告の土型(石膏
型)はそもそも秘密性(非公知性)を持つものといえ
るのか。
とくに、今回の堤人形では著作権が認められない著
作物であるわけで、その人形の土型(石膏型)である
ことも考えあわせると、土型(石膏型)の持ち出しなど
盗取行為の具体的な違法行為の立証があって初めて
一般不法行為などが認められるにとどまるのではな
いか。
いずれにしても、検証の結果として認識された「型」
がどのようなものだったのか、乾燥による縮みや前後2枚
の土型(石膏型)の製造誤差、被告による加工がどう認
識されたのか、今後控訴審でどのような説示内容となる
か注目したいところです。
■過去のブログ記事
2005年09月09日記事
日本人形の著作権保護
■関連裁判
商標“つつみのおひなっこや”侵害事件
知財高裁平成19.4.10平成18(行ケ)10532審決取消請求事件PDF
■参考文献
木村 豊「応用美術の保護-現行著作権法制定の経緯を中心として」
『民法と著作権法の諸問題 半田正夫教授還暦記念論集』
(1993)580頁以下
生駒正文「応用美術の著作物性に関する研究-とくに独法による若干の比較検討」
同598頁以下
満田重昭「著作権と意匠権の累積」
同616頁以下
同 「デザインと美術の著作物」斉藤博、牧野利秋編
『裁判実務大系 知的財産関係訴訟法 第27巻』
(1997)83頁以下
田村善之「著作権法概説 第二版」(2001)31頁以下
牛木理一「デザイン、キャラクター、パブリシティの保護」
(2005)103頁以下、209頁以下
内藤裕之「応用美術と美術の著作物性」牧野利秋・飯村敏明編
『新・裁判実務大系 著作権関係訴訟法』
(2004)155頁以下
本山雅弘「応用美術の保護をめぐる著作権の限界づけと意匠権の保護対象」
『牛木理一先生古稀記念 意匠法及び周辺法の現代的課題』
(2005)469頁以下
中山信弘「著作権法」(2007)138頁以下
・博多人形事件
牛木理一「彩色素焼人形-博多人形事件」
『著作権判例百選第二版』(1994)22頁以下
松尾和子「彩色素焼人形-博多人形事件」
『著作権判例百選第三版』(2001)24頁以下
・ファービー事件
岡 邦俊「育成型ぬいぐるみ人形の複製と著作権違反罪の成否」
『著作権の事件簿』(2007)144頁以下
小松一雄編「不正競業訴訟の実務」(2005)345頁以下
小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」(上)(2007)498頁以下、
同(下)781頁
■参考サイト
つゝみ人形製造所(*注1)
つゝみ人形製造所
堤人形/つつみのおひなっこや(*注2)
土人形の逸品を創業80年の老舗つつみのおひなっこやがお届けします。
写真 思い出 日記(2007-03-24記事)
仙台 つつみ人形 -仙台のつつみ人形工房を訪ねて
博多陶遊窯
陶器人形の作り方です。
京陶人形
(株)京都人形 工房拝見!
■参考判例
人工歯石膏原型営業秘密事件
京都地裁平成13.11.1平成11(ワ)903
別紙PDF
堤人形事件
★仙台地裁平成20年01月31日平成15(ワ)683不正競業行為差止等請求事件PDF
仙台地方裁判所第3民事部
裁判長裁判官 小野洋一
裁判官 伊澤文子
裁判官 小川貴紀
■事案
宮城県の伝統工芸品である堤(つつみ)人形の意匠等
をめぐって著作権、商標権侵害性、不正競争行為性が
争われた事案
原告:堤人形作家A、人形制作会社B
被告:人形製造販売業者C、原告会社元従業員D
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法第2条1項1号
商標法25条、26条
不正競争防止法2条1項1号、2号、4号、13号
1 人形に著作権が発生しているか
2 商標権侵害性の有無
3 不正競争行為性の有無
■判決内容
<経緯>
S30.3.31 被告Dが原告Aの父である先代Eの元に弟子入り
S54 被告Dが被告Cに絵付けの技術指導
S63.1.12 原告Aが原告会社Bを設立
H15.4.28 原告会社Bが被告Dを懲戒解雇
H15.6.9 被告Dが労働委員会に労使紛争のあっせん申立て
H18.10.18 「堤人形/つつみのおひなやっこや」被告登録商標
無効審判確定
H19.4.10 「つつみのおひなやっこや」被告登録商標
知財高裁審決取消事件、上告中
原告登録商標「つゝみ」
第2354191号
原告登録商標「堤」
第2365147号
<争点>
1 人形に著作権が発生しているか
牛乗天神、滝登り、鯉かつぎ、副神川越などの23点の
堤人形に原告の創作行為による著作権が発生している
かどうかが争われました。
裁判所は、堤人形が江戸時代から制作されてきた伝統
工芸品であることから原告商品に独自の著作権を認め
るためには「高度な創作性」(18頁)があることが必要で
あるとしています。
そのうえで、いずれの作品にも形状や彩色について原
告によって新たな創作性が付与されたとは認められな
いとして原告の著作権の発生を否定しています。
(17頁以下)
2 商標権侵害性の有無
被告Cは屋号や看板、広告などに「堤人形」、「つつみ
のおひなやっこや」などの標章を使用していましたが、
自他商品識別機能を果たす態様での使用ではないとし
て、被告の表示行為は原告の商標権を侵害する行為と
は認められませんでした。
(40頁以下)
3 不正競争行為性の有無
1.混同惹起行為性(2条1項1号)
被告による「宮城県伝統工芸品」、「堤」、「つつみ」、
「つゝみ」という表示の使用、また作品の形態そのもの
の商品等表示性を根拠とする商品販売行為について、
不正競争防止法の誤認混同惹起行為にあたるかどうか
が争われました。
結論的には、被告の表示行為や商品形態自体が商品出所
表示、自他商品識別機能を果たす態様での使用ではない
ことから1号に該当しないとされています。
(44頁以下)
2.著名表示冒用行為性(2条1項2号)
原告は、作品そのものの著名商品表示性を前提として
被告商品形態の2号不正競争行為性を争点としました。
しかし、この点についても被告商品の形態そのものが
出所表示性、自他商品識別機能を果たす態様で用いら
れているとはいえないとして、不正競争行為性が否定
されています。
(47頁以下)
3.営業秘密侵害行為性(2条1項4号)
5点の被告作品の石膏型について検証がおこなわれた結
果として、裁判所は、
『原告ら商品の型を被告らが何らかの方法で盗用して石膏型を作成し(・・・),それに基づき制作したものであると認めることができる。被告らがどのような方法を用いてこれらの型を盗用したのかについて,これを認めるに足りる証拠はないが,不正競争防止法2条1項4号の不正取得行為によって取得した営業秘密であるということができ,被告Cはこれにより原告らの営業上の利益を侵害するおそれがある。』
(50頁)
として、営業秘密の不正取得行為性を肯定しています。
(48頁以下)
4.品質等誤認惹起行為性(2条1項13号)
被告による「宮城県伝統工芸品」表示行為について、
伝統工芸品の指定は、工芸品の制作者にではなく、工
芸品そのものに対してなされるものであるとして、被
告制作の堤人形に「宮城県伝統工芸品」表示をするこ
とは品質誤認混同惹起行為にはあたらないとされてい
ます。
(51頁)
■コメント
23点のつつみ人形のうち、5点について原告商品の型
の盗用行為が認められ、その結果として、その型から
作成された石膏型での被告商品の製造販売禁止、商品
の廃棄が肯定されています。
ところで、原告商品の型(原告商品の土型である石膏型)
が果たして秘密管理性などの営業秘密の要件を充足し
ていたものなのか、不正取得行為認定の前提となる営
業秘密性について詳細な判断がされていません。
「原告商品の型」自体が秘密とされるようなものだ
ったとすると5点以外の18点の作品の型から作成され
た現に被告が量産用に所持しているであろう石膏型
はどうだったのでしょうか。
今回の事案について、知人の工芸作家さんに感想を聞
いてみました。
たいへん丁寧に解説してくれました。
下記掲載の参考サイト(*注1、注2)から問題となっ
ている作品「鯉かつぎ」「鯛の滝登り」と思われるも
のの対比です。
上段の3点が被告商品(A群)
下段の2点が原告商品(B群)
『もし、自分がA群の人形の型から
B群の人形を作れといわれた場合
まず、Aの型から人形Aを作り
それを削ったり粘土を付け足したり
などの加工を加えて人形Bを作ります。
そして、出来上がった人形Bから、
新たな型を取ります。
その型を使って量産します。』
この作家さんのお話を前提とすると、原告商品を入
手して3Dモデリングすることが可能で、原告の素焼
用の土型(石膏型)そのものを盗用する必要はあり
ません。
原告商品を入手した者であれば誰でも石膏型を作成
できる程度の形状のものである、あるいは商品を持っ
ていなくても技能があれば目視で型を再現できる
程度の形状のものであるとすると、原告の土型(石膏
型)はそもそも秘密性(非公知性)を持つものといえ
るのか。
とくに、今回の堤人形では著作権が認められない著
作物であるわけで、その人形の土型(石膏型)である
ことも考えあわせると、土型(石膏型)の持ち出しなど
盗取行為の具体的な違法行為の立証があって初めて
一般不法行為などが認められるにとどまるのではな
いか。
いずれにしても、検証の結果として認識された「型」
がどのようなものだったのか、乾燥による縮みや前後2枚
の土型(石膏型)の製造誤差、被告による加工がどう認
識されたのか、今後控訴審でどのような説示内容となる
か注目したいところです。
■過去のブログ記事
2005年09月09日記事
日本人形の著作権保護
■関連裁判
商標“つつみのおひなっこや”侵害事件
知財高裁平成19.4.10平成18(行ケ)10532審決取消請求事件PDF
■参考文献
木村 豊「応用美術の保護-現行著作権法制定の経緯を中心として」
『民法と著作権法の諸問題 半田正夫教授還暦記念論集』
(1993)580頁以下
生駒正文「応用美術の著作物性に関する研究-とくに独法による若干の比較検討」
同598頁以下
満田重昭「著作権と意匠権の累積」
同616頁以下
同 「デザインと美術の著作物」斉藤博、牧野利秋編
『裁判実務大系 知的財産関係訴訟法 第27巻』
(1997)83頁以下
田村善之「著作権法概説 第二版」(2001)31頁以下
牛木理一「デザイン、キャラクター、パブリシティの保護」
(2005)103頁以下、209頁以下
内藤裕之「応用美術と美術の著作物性」牧野利秋・飯村敏明編
『新・裁判実務大系 著作権関係訴訟法』
(2004)155頁以下
本山雅弘「応用美術の保護をめぐる著作権の限界づけと意匠権の保護対象」
『牛木理一先生古稀記念 意匠法及び周辺法の現代的課題』
(2005)469頁以下
中山信弘「著作権法」(2007)138頁以下
・博多人形事件
牛木理一「彩色素焼人形-博多人形事件」
『著作権判例百選第二版』(1994)22頁以下
松尾和子「彩色素焼人形-博多人形事件」
『著作権判例百選第三版』(2001)24頁以下
・ファービー事件
岡 邦俊「育成型ぬいぐるみ人形の複製と著作権違反罪の成否」
『著作権の事件簿』(2007)144頁以下
小松一雄編「不正競業訴訟の実務」(2005)345頁以下
小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」(上)(2007)498頁以下、
同(下)781頁
■参考サイト
つゝみ人形製造所(*注1)
つゝみ人形製造所
堤人形/つつみのおひなっこや(*注2)
土人形の逸品を創業80年の老舗つつみのおひなっこやがお届けします。
写真 思い出 日記(2007-03-24記事)
仙台 つつみ人形 -仙台のつつみ人形工房を訪ねて
博多陶遊窯
陶器人形の作り方です。
京陶人形
(株)京都人形 工房拝見!
■参考判例
人工歯石膏原型営業秘密事件
京都地裁平成13.11.1平成11(ワ)903
別紙PDF
hayabusa9999 at 07:56|この記事のURL
│TrackBack(0)
2008年04月11日
文芸社出版契約事件〜著作権 著作権使用料請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
文芸社出版契約事件
★東京地裁平成20.3.28平成20(ワ)913著作権使用料請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 宮崎雅子
■事案
著者と出版者が出版部数を巡って争った事案
原告:著作者
被告:出版者
■結論
請求棄却
■争点
条文 著作権法63条、79条
1 著作権使用料の支払義務の有無
■判決内容
<経緯>
H11.11.17 出版契約締結
H12.5.1 初版第1刷1200部発行
H14.4.8 本件出版契約に基づく著作権使用料支払請求事件
原告敗訴(別件訴訟1)
H17.10.28 本件出版契約に基づく著作権使用料(H12〜17年度分)
支払請求事件
原告敗訴(別件訴訟2)
H20 H17〜19年度分著作権使用料について本訴提起
<争点>
1 著作権使用料の支払義務の有無
増刷の事実を原告が立証できず、出版者側の支払
義務が認められず請求棄却となっています
(5頁以下)。
■コメント
自費出版を取扱う文芸社が被告となった事案です。
問題となった書籍は2000年5月刊行の小野沢荘次著
「世界初、大発見 地震予知確立」ですが、著者は
6万6667部発行したと主張しているのに対して、文
芸社は、初版の1200部しか発行していないと反論し
ています。
都合、3つめの提訴ですが、いずれも原告敗訴。
ところで、今回の件とは関係ありませんが以前、自
分の書籍の重版を疑った著者が知人を動員して実際
にアマゾンなどで購入して重版されているかどうか
こまめにチェックした、という話を直接聞いたこと
があります。
出版物の印刷部数の事後監査については、社団法人
日本書籍出版協会作成2005年版「出版契約書雛型
(一般用)」によれば、
第 17 条(発行部数の報告等)
乙は、本出版物の発行部数を証するため、甲に対し製本のつどその部数を報告する。甲の申し出があった場合には、乙はその証拠となる書類の閲覧に応じる。
とあるわけで、帳票類の提示を求めるほかは、本件
で乙号証として提出された印刷所の製作証明書(6頁)
の交付をせいぜい求めるといったところまででしょ
うか。
文芸社の出版契約書も第12条で出版協会雛型と同じ
ような体裁をとっていました(2頁)。
著者の疑念を払拭するためにどうすればいいのか。
出版契約もライセンス契約の一種ではありますが、
通常の出版契約の契約額からして印刷所への立入り
調査権限などまで著者に認めるのは、契約のうえで
バランスが悪い(著者に隠れてまで印刷したいほど
のベストセラーがよのなかどれほどあるのか)かも
しれません。
■参考サイト
契約書 刊行物/契約書 社団法人日本書籍出版協会
文芸社出版契約事件
★東京地裁平成20.3.28平成20(ワ)913著作権使用料請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 宮崎雅子
■事案
著者と出版者が出版部数を巡って争った事案
原告:著作者
被告:出版者
■結論
請求棄却
■争点
条文 著作権法63条、79条
1 著作権使用料の支払義務の有無
■判決内容
<経緯>
H11.11.17 出版契約締結
H12.5.1 初版第1刷1200部発行
H14.4.8 本件出版契約に基づく著作権使用料支払請求事件
原告敗訴(別件訴訟1)
H17.10.28 本件出版契約に基づく著作権使用料(H12〜17年度分)
支払請求事件
原告敗訴(別件訴訟2)
H20 H17〜19年度分著作権使用料について本訴提起
<争点>
1 著作権使用料の支払義務の有無
増刷の事実を原告が立証できず、出版者側の支払
義務が認められず請求棄却となっています
(5頁以下)。
■コメント
自費出版を取扱う文芸社が被告となった事案です。
問題となった書籍は2000年5月刊行の小野沢荘次著
「世界初、大発見 地震予知確立」ですが、著者は
6万6667部発行したと主張しているのに対して、文
芸社は、初版の1200部しか発行していないと反論し
ています。
都合、3つめの提訴ですが、いずれも原告敗訴。
ところで、今回の件とは関係ありませんが以前、自
分の書籍の重版を疑った著者が知人を動員して実際
にアマゾンなどで購入して重版されているかどうか
こまめにチェックした、という話を直接聞いたこと
があります。
出版物の印刷部数の事後監査については、社団法人
日本書籍出版協会作成2005年版「出版契約書雛型
(一般用)」によれば、
第 17 条(発行部数の報告等)
乙は、本出版物の発行部数を証するため、甲に対し製本のつどその部数を報告する。甲の申し出があった場合には、乙はその証拠となる書類の閲覧に応じる。
とあるわけで、帳票類の提示を求めるほかは、本件
で乙号証として提出された印刷所の製作証明書(6頁)
の交付をせいぜい求めるといったところまででしょ
うか。
文芸社の出版契約書も第12条で出版協会雛型と同じ
ような体裁をとっていました(2頁)。
著者の疑念を払拭するためにどうすればいいのか。
出版契約もライセンス契約の一種ではありますが、
通常の出版契約の契約額からして印刷所への立入り
調査権限などまで著者に認めるのは、契約のうえで
バランスが悪い(著者に隠れてまで印刷したいほど
のベストセラーがよのなかどれほどあるのか)かも
しれません。
■参考サイト
契約書 刊行物/契約書 社団法人日本書籍出版協会
hayabusa9999 at 20:08|この記事のURL
│TrackBack(0)
2008年04月10日
ミートホープ挽肉偽装刑事事件〜不正競争防止法 不正競争防止法違反,詐欺被告事件判決(下級裁判所判例集)〜
裁判所HP 下級裁判所判例集より
ミートホープ挽肉偽装刑事事件
★札幌地裁平成20.3.19平成19(わ)1454不正競争防止法違反,詐欺被告事件PDF
札幌地方裁判所刑事第1部
裁判長裁判官 嶋原文雄
裁判官 坂田威一郎
裁判官 石渡圭
■事案
(判示事項の要旨)
牛肉のみを原料とするかのような表示をし,他の畜肉を
加えた挽肉等を取引業者に引き渡した不正競争防止法違
反及び取引業者に対し,その事情を秘して代金を請求し,
交付させた詐欺被告事件
被告人:畜産食肉卸売業代表取締役
■結論
主文
懲役4年(求刑 懲役6年)
■罰条
不正競争防止法22条1項、21条2項1号、2条1項13号
刑法246条、45条前段、47条本文、10条
■判決内容
品質誤認表示行為の不正競争行為性
犯罪事実
社長は、畜産食肉卸売業代表取締役として同社の業務に関し、
不正の目的をもって牛肉以外の豚肉、鶏肉、羊肉、鴨肉等を
加えるなどして製造した挽肉やカット肉を梱包した段ボール
箱に牛肉のみを原料とする挽肉等であるかのように表記し、
商品の品質及び内容について誤認させるような表示をした上
で業者へ発送、引き渡しをしていました。
この点が、品質誤認表示行為(不正競争防止法2条1項13号)
として刑事罰の対象となりました。
量刑の理由
犯行態様、結果、犯情、犯行後の態様、社会的影響などから
刑事責任は相当重いとされています。
■コメント
2007年6月に発覚した北海道の食肉偽装ミートホープ事件
の刑事事件です。
いろいろな畜肉が入っているのに十勝産の牛肉ミンチで
あるかのように表示をしていたこの事件。
納入先取引業者に対する詐欺罪とあわせ不正競争防止法
違反として、刑事罰が併合罪科刑されています。
食品偽装事件での最近の不正競争防止法違反刑事事件と
しては2007年5月の日本ライス事件、10月の比内鶏事件、
11月船場吉兆事件があります。
ミートホープ挽肉偽装刑事事件
★札幌地裁平成20.3.19平成19(わ)1454不正競争防止法違反,詐欺被告事件PDF
札幌地方裁判所刑事第1部
裁判長裁判官 嶋原文雄
裁判官 坂田威一郎
裁判官 石渡圭
■事案
(判示事項の要旨)
牛肉のみを原料とするかのような表示をし,他の畜肉を
加えた挽肉等を取引業者に引き渡した不正競争防止法違
反及び取引業者に対し,その事情を秘して代金を請求し,
交付させた詐欺被告事件
被告人:畜産食肉卸売業代表取締役
■結論
主文
懲役4年(求刑 懲役6年)
■罰条
不正競争防止法22条1項、21条2項1号、2条1項13号
刑法246条、45条前段、47条本文、10条
■判決内容
品質誤認表示行為の不正競争行為性
犯罪事実
社長は、畜産食肉卸売業代表取締役として同社の業務に関し、
不正の目的をもって牛肉以外の豚肉、鶏肉、羊肉、鴨肉等を
加えるなどして製造した挽肉やカット肉を梱包した段ボール
箱に牛肉のみを原料とする挽肉等であるかのように表記し、
商品の品質及び内容について誤認させるような表示をした上
で業者へ発送、引き渡しをしていました。
この点が、品質誤認表示行為(不正競争防止法2条1項13号)
として刑事罰の対象となりました。
量刑の理由
犯行態様、結果、犯情、犯行後の態様、社会的影響などから
刑事責任は相当重いとされています。
■コメント
2007年6月に発覚した北海道の食肉偽装ミートホープ事件
の刑事事件です。
いろいろな畜肉が入っているのに十勝産の牛肉ミンチで
あるかのように表示をしていたこの事件。
納入先取引業者に対する詐欺罪とあわせ不正競争防止法
違反として、刑事罰が併合罪科刑されています。
食品偽装事件での最近の不正競争防止法違反刑事事件と
しては2007年5月の日本ライス事件、10月の比内鶏事件、
11月船場吉兆事件があります。
hayabusa9999 at 20:58|この記事のURL
│TrackBack(0)
2008年04月03日
退職取締役競業事件〜不正競争防止法 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
退職取締役競業事件
★知財高裁平成20.3.31平成19(ネ)10076損害賠償請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 今井弘晃
裁判官 田中孝一
★原審
東京地裁平成19.8.30平成18(ワ)10563、17150 裁判所サイト未登載
■事案
取締役の在職中の競業会社設立準備行為や
退職後の営業行為の忠実義務違反性や
不正競争行為性が争われた事案
原告(控訴人) :業務用服地販売会社
被告(被控訴人):原告元従業員兼取締役Y
原告取引先会社
■結論
控訴棄却
■争点
条文 不正競争防止法2条1項4号、7号 旧商法254条の3、264条1項
1 退職後の営業秘密侵害行為性
■判決内容
<争点>
1 退職後の営業秘密侵害行為性
原告は、原告の得意先への従業員兼取締役Yの
退職後の営業活動を営業秘密侵害行為として
主張していますが、得意先情報の秘密管理性
や情報使用の事実が認められず、裁判所には
容れられていません。
(6頁以下)
原告は、Yの在職中、退職後の競業行為について
取締役の忠実義務違反、競業避止義務違反や
労働契約上の信義則義務違反などを主張して
いましたが、いずれの点も認められていません。
なお、原告会社には退職後の競業を禁止する規定は
ありませんでした(6頁)。
■コメント
原審同様、請求棄却の判断です。
原審にあたれていないので、詳しくは
わかりませんが、原審も本人訴訟だった
のでしょうか、原告側主張は説得力が
ありません。
退職取締役競業事件
★知財高裁平成20.3.31平成19(ネ)10076損害賠償請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 今井弘晃
裁判官 田中孝一
★原審
東京地裁平成19.8.30平成18(ワ)10563、17150 裁判所サイト未登載
■事案
取締役の在職中の競業会社設立準備行為や
退職後の営業行為の忠実義務違反性や
不正競争行為性が争われた事案
原告(控訴人) :業務用服地販売会社
被告(被控訴人):原告元従業員兼取締役Y
原告取引先会社
■結論
控訴棄却
■争点
条文 不正競争防止法2条1項4号、7号 旧商法254条の3、264条1項
1 退職後の営業秘密侵害行為性
■判決内容
<争点>
1 退職後の営業秘密侵害行為性
原告は、原告の得意先への従業員兼取締役Yの
退職後の営業活動を営業秘密侵害行為として
主張していますが、得意先情報の秘密管理性
や情報使用の事実が認められず、裁判所には
容れられていません。
(6頁以下)
原告は、Yの在職中、退職後の競業行為について
取締役の忠実義務違反、競業避止義務違反や
労働契約上の信義則義務違反などを主張して
いましたが、いずれの点も認められていません。
なお、原告会社には退職後の競業を禁止する規定は
ありませんでした(6頁)。
■コメント
原審同様、請求棄却の判断です。
原審にあたれていないので、詳しくは
わかりませんが、原審も本人訴訟だった
のでしょうか、原告側主張は説得力が
ありません。
hayabusa9999 at 09:48|この記事のURL
│TrackBack(0)
2008年04月02日
中屋鋸替刃事件〜不正競争防止法 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
中屋鋸替刃事件
★知財高裁平成20.3.27平成19(ネ)10067等損害賠償請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 大鷹一郎
裁判官 嶋末和秀
★原審
新潟地裁三条支部平成17(ワ)65 裁判所サイト未登載
■事案
のこぎり替刃メーカーの標章を巡って商標権侵害、
不正競争行為性が争われた事案
原告(被控訴人):替刃式のこぎり等の製造・販売会社
被告(控訴人) :輸出会社、代表取締役
■結論
原判決一部変更
■争点
条文 不正競争防止法2条1項1号、5条3項1号 商標法36条 民法709条
1 鋸鍛冶「中屋」標章のローマ字表記「NAKAYA」に出所表示機能があるか
■判決内容
<経緯>
H7.10.31 原告標章イークスマークについて商標登録(第3088956号)
H15.5 原告と被告が商談
H16頃 被告が輸出行為を行う
H16.5.18 被告会社が「三倍速マーク」を商標出願申請
H17.5.13 商標登録
H18.3.30 審判で無効審決
H18.7.26 知財高裁が審決取消訴訟で請求棄却判決、確定
原告標章
イークスマーク(図形)
「NAKAYA」
「中屋」
<争点>
1 鋸鍛冶「中屋」標章のローマ字表記「NAKAYA」に出所表示機能があるか
原判決では、「中屋」の標章は江戸時代から
多数の鋸鍛冶が使用していた屋号であり、
この標章単独では原告の商品等表示として
需要者間に広く認識されているとはいえない、
とされ、
「NAKAYA」標章については
原告の商品等表示として需要者間に広く
認識されていると判断していました。
控訴審でもこの判断が維持されています。
『イークスマーク及び「NAKAYA」の標章は,原告の商品等表示,すなわち,原告の業務に係る商品「鋸」を表示するものとして,我が国のみならず,アメリカ,カナダ,イギリス,オーストラリア,南アフリカなど世界各国の需要者間に広く認識されており,遅くとも平成15年末ころまでには,中国の需要者間にも相当程度広く認識されるに至っていたことが認められる。これに対し,「中屋」の標章は,前記認定のとおり,江戸時代から多数の鋸鍛冶が使用していた屋号であり,この標章単独では,原告の業務に係る商品又は営業を表示するものとして需要者間に広く認識されているものとはいえない。』
(13頁)
この点、被告側は、
『被告会社が,需要者に被告会社の商品を原告の商品と混同させることを目的として「NAKAYA」の標章を付したのではなく,鋸の製造販売等を業とする者の間で広く用いられている「中屋」の標章の欧文表記として用いたにすぎ』
(15頁)
ない、などと反論していました。
しかし、控訴審は、
『上記剪定鋏の「NAKAYA/JAPAN」の刻印に接した需要者は,同刻印中の「NAKAYA」の標章をもって,商品の出所を表示するものと認識,理解することは明らかであるから,被告会社の行為は,原告が「NAKAYA」の標章により獲得した出所表示機能等を毀損する正に不正競争行為に当たるものというべきである』
(15頁)
と判断して「NAKAYA」標章の商品等表示性を
肯定しています。
結論としては、被告による原告商標権侵害、
不正競争行為性、信用毀損による不法行為性が
肯定されて損害賠償、輸出などの差止などが
認められています。
(12頁以下)
■コメント
原審の判断にあたれていないので、判決内容が
把握しきれませんでした。
被告は、剪定鋏や鋸替刃に原告標章を付して
中国向けに輸出していました。
被告は、原告会社製造製品よりも廉価な
日本他社製鋸替刃に原告標章を付して輸出したり、
現地で粗悪な柄を取付けさせていた(19頁以下)
ということで、ありがちな事案です。
剪定鋏の輸出行為については、立証が
難しかったようで(6頁、10頁以下)、
原告側の苦労が伝わってきます。
■関連判例
中屋三倍速商標事件
知財高裁平成18.9.20平成18(行ケ)10215審決取消請求事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 高野輝久
裁判官 佐藤達文
中屋鋸替刃事件
★知財高裁平成20.3.27平成19(ネ)10067等損害賠償請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 大鷹一郎
裁判官 嶋末和秀
★原審
新潟地裁三条支部平成17(ワ)65 裁判所サイト未登載
■事案
のこぎり替刃メーカーの標章を巡って商標権侵害、
不正競争行為性が争われた事案
原告(被控訴人):替刃式のこぎり等の製造・販売会社
被告(控訴人) :輸出会社、代表取締役
■結論
原判決一部変更
■争点
条文 不正競争防止法2条1項1号、5条3項1号 商標法36条 民法709条
1 鋸鍛冶「中屋」標章のローマ字表記「NAKAYA」に出所表示機能があるか
■判決内容
<経緯>
H7.10.31 原告標章イークスマークについて商標登録(第3088956号)
H15.5 原告と被告が商談
H16頃 被告が輸出行為を行う
H16.5.18 被告会社が「三倍速マーク」を商標出願申請
H17.5.13 商標登録
H18.3.30 審判で無効審決
H18.7.26 知財高裁が審決取消訴訟で請求棄却判決、確定
原告標章
イークスマーク(図形)
「NAKAYA」
「中屋」
<争点>
1 鋸鍛冶「中屋」標章のローマ字表記「NAKAYA」に出所表示機能があるか
原判決では、「中屋」の標章は江戸時代から
多数の鋸鍛冶が使用していた屋号であり、
この標章単独では原告の商品等表示として
需要者間に広く認識されているとはいえない、
とされ、
「NAKAYA」標章については
原告の商品等表示として需要者間に広く
認識されていると判断していました。
控訴審でもこの判断が維持されています。
『イークスマーク及び「NAKAYA」の標章は,原告の商品等表示,すなわち,原告の業務に係る商品「鋸」を表示するものとして,我が国のみならず,アメリカ,カナダ,イギリス,オーストラリア,南アフリカなど世界各国の需要者間に広く認識されており,遅くとも平成15年末ころまでには,中国の需要者間にも相当程度広く認識されるに至っていたことが認められる。これに対し,「中屋」の標章は,前記認定のとおり,江戸時代から多数の鋸鍛冶が使用していた屋号であり,この標章単独では,原告の業務に係る商品又は営業を表示するものとして需要者間に広く認識されているものとはいえない。』
(13頁)
この点、被告側は、
『被告会社が,需要者に被告会社の商品を原告の商品と混同させることを目的として「NAKAYA」の標章を付したのではなく,鋸の製造販売等を業とする者の間で広く用いられている「中屋」の標章の欧文表記として用いたにすぎ』
(15頁)
ない、などと反論していました。
しかし、控訴審は、
『上記剪定鋏の「NAKAYA/JAPAN」の刻印に接した需要者は,同刻印中の「NAKAYA」の標章をもって,商品の出所を表示するものと認識,理解することは明らかであるから,被告会社の行為は,原告が「NAKAYA」の標章により獲得した出所表示機能等を毀損する正に不正競争行為に当たるものというべきである』
(15頁)
と判断して「NAKAYA」標章の商品等表示性を
肯定しています。
結論としては、被告による原告商標権侵害、
不正競争行為性、信用毀損による不法行為性が
肯定されて損害賠償、輸出などの差止などが
認められています。
(12頁以下)
■コメント
原審の判断にあたれていないので、判決内容が
把握しきれませんでした。
被告は、剪定鋏や鋸替刃に原告標章を付して
中国向けに輸出していました。
被告は、原告会社製造製品よりも廉価な
日本他社製鋸替刃に原告標章を付して輸出したり、
現地で粗悪な柄を取付けさせていた(19頁以下)
ということで、ありがちな事案です。
剪定鋏の輸出行為については、立証が
難しかったようで(6頁、10頁以下)、
原告側の苦労が伝わってきます。
■関連判例
中屋三倍速商標事件
知財高裁平成18.9.20平成18(行ケ)10215審決取消請求事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 高野輝久
裁判官 佐藤達文
hayabusa9999 at 15:55|この記事のURL
│TrackBack(0)
2008年03月29日
ヴォンダッチ二重譲渡事件(控訴審)〜著作権 著作権譲渡登録抹消請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
ヴォンダッチ二重譲渡事件(控訴審)
★知財高裁平成20.3.27平成19(ネ)10095著作権譲渡登録抹消請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 大鷹一郎
裁判官 嶋末和秀
★原審
東京地裁平成19.10.26平成18(ワ)7424著作権譲渡登録抹消請求事件PDF
■事案
ヴォンダッチ(フォン・ダッチ/Von Dutch ケネス・ハワード)の
著作物の著作権譲渡の際の二重譲渡と対抗要件充足性が争点と
なった事案の控訴審
原告(控訴人) :被服等製造販売会社(アメリカ法人)
被告(被控訴人):被服等輸入販売者(韓国法人代表取締役)
■結論
原判決一部変更
■争点
条文 著作権法第77条
1 被告が原告への本件著作権の移転につき対抗要件の欠缺を
主張し得る法律上の利害関係を有する第三者であるか否か
2 真正な登録名義の回復を原因とする登録手続請求の可否
■判決内容
<争点>
1 被告が原告への本件著作権の移転につき対抗要件の欠缺を
主張し得る法律上の利害関係を有する第三者であるか否か
(1)被告の著作権譲渡契約の成否
著作権の二重譲渡状況において、契約関係としては
時間的には原告に劣後する被告人が、著作権の登録
については原告よりも先に受けていた本事案でしたが、
原審では原告と被告は対抗関係に立つものとして、
先に登録を受けていた被告が原告に優先するものと
判断されていました。
しかし、控訴審では、被告の著作権譲渡契約自体が
不成立、あるいは虚偽表示無効(民法94条1項)と
判断されて、原告と被告は著作権の二重譲渡の関係に
そもそも立たないものとされました。
(23頁以下)
(2)被告は背信的悪意者にあたるか
なお、「念のため、」として原告と被告が著作権の
二重譲渡の関係にあったと仮定した場合に、被告が
背信的悪意者に該当するかどうかも検討されています。
この点について、裁判所は、被告による著作権取得の
際の対価の支払がないこと、譲渡の意思が認められない
ことや原告取引先に高額な対価での売却を提案している
点などから、
『被控訴人は,控訴人が本件著作権の正当な承継者であることを熟知しながら,控訴人の円滑な事業の遂行を妨げ,又は,控訴人に対して本件著作権を高額で売却する等,加害又は利益を図る目的で,A及びBに働きかけて本件譲渡証明書及び単独申請承諾書に署名させ,本件譲渡登録を経由したものと推認することができ,したがって,被控訴人は背信的悪意者に該当するものと認めるのが相当である。』
(31頁)
被告は背信的悪意者に該当すると判断されています。
結論として、被告は、原告への本件著作権の移転に
つき対抗要件の欠缺を主張し得る法律上の利害関係
を有する第三者ではないこととなりました。
2 真正な登録名義の回復を原因とする登録手続請求の可否
原告は、主位的に本件著作物について原告に対する
真正な登録名義の回復を原因とする著作権譲渡登録
手続をすることを求め、予備的に本件譲渡登録の
抹消登録手続をすることを求めていました。
この主位的請求の点について、控訴審は、
『なお,控訴人は,著作権譲渡登録に関する主位的請求として,真正な登録名義の回復を原因とする著作権譲渡登録手続を求めているが,実体的な権利変動の過程と異なる登録を請求する権利は当然には発生しないところ,控訴人は,A及びB,並びに上野商会の承諾があることについて主張立証しないから,同請求は主張自体失当である。』
(15頁)
として、債権的(中間省略特約)さらには
実体的な権利の効力としての準物権的な
請求権(妨害排除請求)の可否などについて
踏み込んだ争点とはなっていません。
■コメント
一審(請求棄却)とは反対に、原告の実質勝訴と
なりました。
一審では、著作権の二重譲渡を前提に、
対抗問題(著作権法77条)として処理されて
いましたが、控訴審ではそもそも対抗問題に
ならないこと、仮になったとしても、
被告は背信的悪意者として保護されないとして、
原告の著作権の確認、著作権譲渡登録の
抹消手続請求が認められました。
一審と控訴審の判断を比べてみると、
控訴審ではカネの流れなどをより詳細に検討
した上で(23頁以下)、被告の譲渡契約が
譲渡の実質を伴わないものであると判断して
いることがわかります。
■過去のブログ記事
ヴォンダッチ二重譲渡事件〜著作権 著作権譲渡登録抹消請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
■参考文献
足立謙三「著作権の移転と登録」
『裁判実務大系27』(1997)260頁以下
*本事案とは逸れますが、著作権の登録に関連して、
岡邦俊「著作権の登録と第三者-「あゝ玉杯に花うけて」事件」
『著作権判例百選』(1987)150頁以下
塩澤一洋「著作者以外の者による著作者実名登録抹消請求の可否」
『著作権研究』25号(1999)191頁以下
同 「実名登録抹消請求-フジサンケイグループ事件」
『著作権判例百選第三版』(2001)190頁以下
菱沼剛「著作権の登録による権利の帰属に関わる一応の推定」
『知的財産法政策学研究』14号(2007)257頁以下
■参考判例
実名登録抹消請求について
智恵子抄事件(一審)
東京地裁昭和63.12.23昭和41(ワ)12563PDF
ヴォンダッチ二重譲渡事件(控訴審)
★知財高裁平成20.3.27平成19(ネ)10095著作権譲渡登録抹消請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 大鷹一郎
裁判官 嶋末和秀
★原審
東京地裁平成19.10.26平成18(ワ)7424著作権譲渡登録抹消請求事件PDF
■事案
ヴォンダッチ(フォン・ダッチ/Von Dutch ケネス・ハワード)の
著作物の著作権譲渡の際の二重譲渡と対抗要件充足性が争点と
なった事案の控訴審
原告(控訴人) :被服等製造販売会社(アメリカ法人)
被告(被控訴人):被服等輸入販売者(韓国法人代表取締役)
■結論
原判決一部変更
■争点
条文 著作権法第77条
1 被告が原告への本件著作権の移転につき対抗要件の欠缺を
主張し得る法律上の利害関係を有する第三者であるか否か
2 真正な登録名義の回復を原因とする登録手続請求の可否
■判決内容
<争点>
1 被告が原告への本件著作権の移転につき対抗要件の欠缺を
主張し得る法律上の利害関係を有する第三者であるか否か
(1)被告の著作権譲渡契約の成否
著作権の二重譲渡状況において、契約関係としては
時間的には原告に劣後する被告人が、著作権の登録
については原告よりも先に受けていた本事案でしたが、
原審では原告と被告は対抗関係に立つものとして、
先に登録を受けていた被告が原告に優先するものと
判断されていました。
しかし、控訴審では、被告の著作権譲渡契約自体が
不成立、あるいは虚偽表示無効(民法94条1項)と
判断されて、原告と被告は著作権の二重譲渡の関係に
そもそも立たないものとされました。
(23頁以下)
(2)被告は背信的悪意者にあたるか
なお、「念のため、」として原告と被告が著作権の
二重譲渡の関係にあったと仮定した場合に、被告が
背信的悪意者に該当するかどうかも検討されています。
この点について、裁判所は、被告による著作権取得の
際の対価の支払がないこと、譲渡の意思が認められない
ことや原告取引先に高額な対価での売却を提案している
点などから、
『被控訴人は,控訴人が本件著作権の正当な承継者であることを熟知しながら,控訴人の円滑な事業の遂行を妨げ,又は,控訴人に対して本件著作権を高額で売却する等,加害又は利益を図る目的で,A及びBに働きかけて本件譲渡証明書及び単独申請承諾書に署名させ,本件譲渡登録を経由したものと推認することができ,したがって,被控訴人は背信的悪意者に該当するものと認めるのが相当である。』
(31頁)
被告は背信的悪意者に該当すると判断されています。
結論として、被告は、原告への本件著作権の移転に
つき対抗要件の欠缺を主張し得る法律上の利害関係
を有する第三者ではないこととなりました。
2 真正な登録名義の回復を原因とする登録手続請求の可否
原告は、主位的に本件著作物について原告に対する
真正な登録名義の回復を原因とする著作権譲渡登録
手続をすることを求め、予備的に本件譲渡登録の
抹消登録手続をすることを求めていました。
この主位的請求の点について、控訴審は、
『なお,控訴人は,著作権譲渡登録に関する主位的請求として,真正な登録名義の回復を原因とする著作権譲渡登録手続を求めているが,実体的な権利変動の過程と異なる登録を請求する権利は当然には発生しないところ,控訴人は,A及びB,並びに上野商会の承諾があることについて主張立証しないから,同請求は主張自体失当である。』
(15頁)
として、債権的(中間省略特約)さらには
実体的な権利の効力としての準物権的な
請求権(妨害排除請求)の可否などについて
踏み込んだ争点とはなっていません。
■コメント
一審(請求棄却)とは反対に、原告の実質勝訴と
なりました。
一審では、著作権の二重譲渡を前提に、
対抗問題(著作権法77条)として処理されて
いましたが、控訴審ではそもそも対抗問題に
ならないこと、仮になったとしても、
被告は背信的悪意者として保護されないとして、
原告の著作権の確認、著作権譲渡登録の
抹消手続請求が認められました。
一審と控訴審の判断を比べてみると、
控訴審ではカネの流れなどをより詳細に検討
した上で(23頁以下)、被告の譲渡契約が
譲渡の実質を伴わないものであると判断して
いることがわかります。
■過去のブログ記事
ヴォンダッチ二重譲渡事件〜著作権 著作権譲渡登録抹消請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
■参考文献
足立謙三「著作権の移転と登録」
『裁判実務大系27』(1997)260頁以下
*本事案とは逸れますが、著作権の登録に関連して、
岡邦俊「著作権の登録と第三者-「あゝ玉杯に花うけて」事件」
『著作権判例百選』(1987)150頁以下
塩澤一洋「著作者以外の者による著作者実名登録抹消請求の可否」
『著作権研究』25号(1999)191頁以下
同 「実名登録抹消請求-フジサンケイグループ事件」
『著作権判例百選第三版』(2001)190頁以下
菱沼剛「著作権の登録による権利の帰属に関わる一応の推定」
『知的財産法政策学研究』14号(2007)257頁以下
■参考判例
実名登録抹消請求について
智恵子抄事件(一審)
東京地裁昭和63.12.23昭和41(ワ)12563PDF
hayabusa9999 at 12:39|この記事のURL
│TrackBack(0)
2008年03月24日
「ELLE対ELLEGARDEN」事件(控訴審)〜不正競争防止法 商標権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
「ELLE対ELLEGARDEN」事件(控訴審)
★知財高裁平成20.3.19平成19(ネ)10057等商標権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 森義之
裁判官 澁谷勝海
★原審
東京地裁平成19年05月16日平成18(ワ)4029商標権侵害差止等請求事件PDF
■事案
ロックバンド「ELLEGARDEN」関連商品の標章使用が「ELLE」の
商標権を侵害するかどうか、また不正競争防止法上の不正競争
行為となるかどうかが争われた事案の控訴審
原告(被控訴人・附帯控訴人):雑誌「ELLE」発行会社
被告(控訴人・附帯被控訴人):音楽事務所(ロックバンド所属事務所)
■結論
原判決一部変更
■争点
条文 商標法36条、不正競争防止法2条1項1号、2号
1 商標権侵害性
2 不正競争行為性
■判決内容
<争点>
1 商標権侵害性
原審では、ロックバンド「ELLEGARDEN」標章等を付した
グッズであるTシャツ、タオル、帽子、スコアブックの
一部とリストバンド、ステッカーの全部について
商標権侵害性が肯定されていました。
これに反して、控訴審ではいずれも商標権侵害性が
否定されています。
(43頁以下)
控訴審は、被告標章について、被告標章の体裁、
現実の使用態様におけるイメージ、実際の販売方法、
著名なロックバンドの名称として相当程度の期間使用
されていた事実等からして、原告登録商標の著名性を
考慮してもなお、「ELLE」部分と「GARDEN」部分を
分断すべきものと解することはできない。
そのうえで、一連一体としての「ELLEGARDEN」標章を
踏まえて原告商標「ELLE」と被告標章の類否を検討すると、
外観、観念、称呼のいずれにおいても類似するということは
できないと判断しています。
2 不正競争行為性
(1)Tシャツ、リストバンド、ステッカー、タオル、
帽子、スコアブックについて
これらグッズでの被告標章の使用については、原告商標と
被告標章との類否が否定されたことから、不正競争防止法上の
請求についても否定の結論となっています(3条、2条1項1号、2号)。
(64頁)
(2)音楽CDについて
音楽CDに付された被告標章(10)については、
ほかの標章と違って「ELLE」と「GARDEN」が二段での表示に
なっていて、「GARDEN」が「ELLE」の表示よりも小さいもの
となっていました。
被告標章(10)の要部については、「ELLE」部分と認定。
その上で類否について、外観、称呼及び観念の類似性を肯定、
結論的には音楽CDに被告標章(10)を付して使用する行為は、
不正競争行為性があるとされています(3条、2条1項1号、2号)。
(64頁以下)
■コメント
原審の判決文PDFとは違って、21個の被告標章(うち、控訴審
での拡張部分8個)画像がアップされていてどのようなもの
だったのかがよくわかります(70頁以下)。
とくに原告被告標章の類似性が認容されている標章(10)の
様子がほかの標章とは大きく違っているところが印象的です。
とはいえ、標章(10)がロックバンドの音楽CDに表示されて
いるのを見てブランド「ELLE」あるいは『これと経済的若しくは
組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品である』
(65頁)との商品主体の誤認混同がはたして生じるのか
(具体的危険の有無)、疑問なしとしないところです。
■過去のブログ記事
2007年05月22日記事
「ELLE対ELLEGARDEN」事件〜不正競争防止法 商標権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
■追記(08.3.27)
名古屋の商標亭
ELLEGARDENファンには朗報?びみょー?
一体型と分断型
■追記(08.4.3)
企業法務戦士の雑感(2008-04-02)
■[企業法務][知財]葬り去らされた地裁判決。
■追記(08.5.2)
ELLEGARDENが活動を休止するそうです。
ELLEGARDEN : 2008-05-02
ELLEGARDEN ELLEGARDEN、活動を休止 - BARKS ニュース
「ELLE対ELLEGARDEN」事件(控訴審)
★知財高裁平成20.3.19平成19(ネ)10057等商標権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 森義之
裁判官 澁谷勝海
★原審
東京地裁平成19年05月16日平成18(ワ)4029商標権侵害差止等請求事件PDF
■事案
ロックバンド「ELLEGARDEN」関連商品の標章使用が「ELLE」の
商標権を侵害するかどうか、また不正競争防止法上の不正競争
行為となるかどうかが争われた事案の控訴審
原告(被控訴人・附帯控訴人):雑誌「ELLE」発行会社
被告(控訴人・附帯被控訴人):音楽事務所(ロックバンド所属事務所)
■結論
原判決一部変更
■争点
条文 商標法36条、不正競争防止法2条1項1号、2号
1 商標権侵害性
2 不正競争行為性
■判決内容
<争点>
1 商標権侵害性
原審では、ロックバンド「ELLEGARDEN」標章等を付した
グッズであるTシャツ、タオル、帽子、スコアブックの
一部とリストバンド、ステッカーの全部について
商標権侵害性が肯定されていました。
これに反して、控訴審ではいずれも商標権侵害性が
否定されています。
(43頁以下)
控訴審は、被告標章について、被告標章の体裁、
現実の使用態様におけるイメージ、実際の販売方法、
著名なロックバンドの名称として相当程度の期間使用
されていた事実等からして、原告登録商標の著名性を
考慮してもなお、「ELLE」部分と「GARDEN」部分を
分断すべきものと解することはできない。
そのうえで、一連一体としての「ELLEGARDEN」標章を
踏まえて原告商標「ELLE」と被告標章の類否を検討すると、
外観、観念、称呼のいずれにおいても類似するということは
できないと判断しています。
2 不正競争行為性
(1)Tシャツ、リストバンド、ステッカー、タオル、
帽子、スコアブックについて
これらグッズでの被告標章の使用については、原告商標と
被告標章との類否が否定されたことから、不正競争防止法上の
請求についても否定の結論となっています(3条、2条1項1号、2号)。
(64頁)
(2)音楽CDについて
音楽CDに付された被告標章(10)については、
ほかの標章と違って「ELLE」と「GARDEN」が二段での表示に
なっていて、「GARDEN」が「ELLE」の表示よりも小さいもの
となっていました。
被告標章(10)の要部については、「ELLE」部分と認定。
その上で類否について、外観、称呼及び観念の類似性を肯定、
結論的には音楽CDに被告標章(10)を付して使用する行為は、
不正競争行為性があるとされています(3条、2条1項1号、2号)。
(64頁以下)
■コメント
原審の判決文PDFとは違って、21個の被告標章(うち、控訴審
での拡張部分8個)画像がアップされていてどのようなもの
だったのかがよくわかります(70頁以下)。
とくに原告被告標章の類似性が認容されている標章(10)の
様子がほかの標章とは大きく違っているところが印象的です。
とはいえ、標章(10)がロックバンドの音楽CDに表示されて
いるのを見てブランド「ELLE」あるいは『これと経済的若しくは
組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品である』
(65頁)との商品主体の誤認混同がはたして生じるのか
(具体的危険の有無)、疑問なしとしないところです。
■過去のブログ記事
2007年05月22日記事
「ELLE対ELLEGARDEN」事件〜不正競争防止法 商標権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
■追記(08.3.27)
名古屋の商標亭
ELLEGARDENファンには朗報?びみょー?
一体型と分断型
■追記(08.4.3)
企業法務戦士の雑感(2008-04-02)
■[企業法務][知財]葬り去らされた地裁判決。
■追記(08.5.2)
ELLEGARDENが活動を休止するそうです。
ELLEGARDEN : 2008-05-02
ELLEGARDEN ELLEGARDEN、活動を休止 - BARKS ニュース
hayabusa9999 at 16:47|この記事のURL
│TrackBack(0)
2008年03月18日
スナックシャネル事件(横須賀事件)〜不正競争防止法 不正競争行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
スナックシャネル事件(横須賀事件)
★東京地裁平成20.3.12平成19(ワ)33797不正競争行為差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 中村恭
■事案
飲食店が使用していた「スナック シャネル」「SNACK CHANEL」
の営業表示の不正競争行為性が争われた事案
原告:シャネル社
被告:飲食店
■結論
請求一部認容
■争点
条文 不正競争防止法2条1項2号
1 著名表示の冒用行為(2条1項2号)
■判決内容
<争点>
1 著名表示の冒用行為(2条1項2号)
被告は口頭弁論期日に出席せず、答弁書その他の準備書面も
提出しなかったことから擬制自白が成立しています。
(5頁以下)
原告の損害額については、飲食店の営業内容、規模、
営業表示の使用期間(2年余)等を考慮して200万円、
弁護士費用50万円の合計250万円と認定されています。
(6頁)
結論として、「シャネル」「CHANEL」表示の使用差止、
看板等からの表示の抹消が認められています。
■コメント
原告が被告に警告をしたあとも営業表示の使用を継続して
いたという事情があります。
中国地方の、とある市のマーク(市章、CとCの重ねたマーク)にも
シャネルは文句を言ったと人伝に聞いていますが、
シャネル社恐るべし、です。
■参考判例・文献
・平成5年改正2条1項2号適用以前の事案について
・ラブホテルシャネル事件
神戸地裁昭和62年03月25日昭和59(ワ)94PDF
・スナックシャネル事件(松戸事件)
上告審
最高裁第一小法廷平成10年09月10日平成7(オ)637PDF
控訴審
東京高裁平成6年09月29日平成6(ネ)571PDF
原審
千葉地裁松戸支部平成6年01月26日平成4(ワ)673PDF
大河原眞美「類似商標裁判の言語学的分析――スナックシャネル事件」
『地域政策研究』(2002.2)4巻3号29頁以下
高崎経済大学地域政策学会学会誌大河原論文PDF
三山峻司「平成5年改正後の不正競争防止法2条1項1号に規定する「混同を生じさせる行為」の意味と適用範囲-スナックシャネル上告事件-」
『知財管理』(1999.2)49巻12号1723頁以下
潮海久雄「広義の混同のおそれと著名標識の保護――スナックシャネル事件」
『平成10年度重要判例解説』(1999.6.10)1157号271頁以下
布井要太郎「シャネル飲食店事件最高裁判決」
『判例タイムズ』(1999.2.1)988号26頁以下
小野昌延編『新注解不正競争防止法新版』(上)
(2007)357頁以下(芹田幸子)
田村善之『不正競争防止法概説 第二版』
(2003)86頁以下、91頁以下
・歌謡スナックシャネル事件(中目黒事件)
控訴審
東京高裁平成7年03月01日平成6(ネ)2081PDF
原審
東京地裁平成6年04月27日平成4(ワ)19111PDF
■追記(08.03.20)
名古屋の商標亭(2008年03月20日)
スナックやバーが「シャネル」を使いたくなる理由は?
スナックシャネル事件(横須賀事件)
★東京地裁平成20.3.12平成19(ワ)33797不正競争行為差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 中村恭
■事案
飲食店が使用していた「スナック シャネル」「SNACK CHANEL」
の営業表示の不正競争行為性が争われた事案
原告:シャネル社
被告:飲食店
■結論
請求一部認容
■争点
条文 不正競争防止法2条1項2号
1 著名表示の冒用行為(2条1項2号)
■判決内容
<争点>
1 著名表示の冒用行為(2条1項2号)
被告は口頭弁論期日に出席せず、答弁書その他の準備書面も
提出しなかったことから擬制自白が成立しています。
(5頁以下)
原告の損害額については、飲食店の営業内容、規模、
営業表示の使用期間(2年余)等を考慮して200万円、
弁護士費用50万円の合計250万円と認定されています。
(6頁)
結論として、「シャネル」「CHANEL」表示の使用差止、
看板等からの表示の抹消が認められています。
■コメント
原告が被告に警告をしたあとも営業表示の使用を継続して
いたという事情があります。
中国地方の、とある市のマーク(市章、CとCの重ねたマーク)にも
シャネルは文句を言ったと人伝に聞いていますが、
シャネル社恐るべし、です。
■参考判例・文献
・平成5年改正2条1項2号適用以前の事案について
・ラブホテルシャネル事件
神戸地裁昭和62年03月25日昭和59(ワ)94PDF
・スナックシャネル事件(松戸事件)
上告審
最高裁第一小法廷平成10年09月10日平成7(オ)637PDF
控訴審
東京高裁平成6年09月29日平成6(ネ)571PDF
原審
千葉地裁松戸支部平成6年01月26日平成4(ワ)673PDF
大河原眞美「類似商標裁判の言語学的分析――スナックシャネル事件」
『地域政策研究』(2002.2)4巻3号29頁以下
高崎経済大学地域政策学会学会誌大河原論文PDF
三山峻司「平成5年改正後の不正競争防止法2条1項1号に規定する「混同を生じさせる行為」の意味と適用範囲-スナックシャネル上告事件-」
『知財管理』(1999.2)49巻12号1723頁以下
潮海久雄「広義の混同のおそれと著名標識の保護――スナックシャネル事件」
『平成10年度重要判例解説』(1999.6.10)1157号271頁以下
布井要太郎「シャネル飲食店事件最高裁判決」
『判例タイムズ』(1999.2.1)988号26頁以下
小野昌延編『新注解不正競争防止法新版』(上)
(2007)357頁以下(芹田幸子)
田村善之『不正競争防止法概説 第二版』
(2003)86頁以下、91頁以下
・歌謡スナックシャネル事件(中目黒事件)
控訴審
東京高裁平成7年03月01日平成6(ネ)2081PDF
原審
東京地裁平成6年04月27日平成4(ワ)19111PDF
■追記(08.03.20)
名古屋の商標亭(2008年03月20日)
スナックやバーが「シャネル」を使いたくなる理由は?
hayabusa9999 at 13:44|この記事のURL
│TrackBack(0)
2008年03月16日
「八坂神社祇園祭ポスター」事件〜著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
「八坂神社祇園祭ポスター」事件
★東京地裁平成20.3.13平成19(ワ)1126損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官 中島基至
裁判官 古庄研
■事案
原告が撮影した祇園祭の写真を被告が翻案して水彩画を
制作するなどしたとして風景写真の著作権侵害性が争われた事案
原告:アマチュア写真家
被告:八坂神社、印刷会社、雑誌出版社ら
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法第2条1項1号、27条、21条、19条、20条
1 原告は被告印刷会社代表取締役に使用許諾をしたか
2 水彩画の制作は写真の翻案権を侵害するか
3 写真ポスターの制作は写真の複製権を侵害するか
4 原告は八坂神社に使用許諾をしたか
5 写真ポスターの制作は原告の氏名表示権を侵害するか
6 八坂神社の過失の有無
7 雑誌出版社の責任
8 損害論
■判決内容
<経緯>
H09 原告が八坂神社から撮影許可書を受ける
H14.07.02 原告が八坂神社から再撮影許可書を受ける
H14.07.17 原告が本件写真を撮影
H15.06.15 原告が写真集を被告印刷会社で製版印刷
原告は八坂神社に100部寄贈
H15.07.01 被告印刷会社が本件写真ポスターを制作し
八坂神社が使用
H15.07.01 被告印刷会社代表取締役がポジを貸与し
被告出版社発行雑誌に本件写真を掲載
H15.07.17 被告印刷会社代表取締役が京都新聞へ
本件写真を広告掲載
H16.05.28 原告は被告出版社に対して解決金200万円を要求
H16.07.01 被告印刷会社が本件写真ポスターを制作し
八坂神社が使用
H16.07.17 被告印刷会社代表取締役が京都新聞へ本件写真を
広告掲載
H16.07.31 原告は八坂神社宮司に抗議
H17.06 被告印刷会社社員が本件水彩画を制作
H17.07.01 被告印刷会社が本件水彩画ポスターを制作し
八坂神社が使用
H17.07.17 被告印刷会社代表取締役が京都新聞へ本件水彩画を
広告掲載
<争点>
1 原告は被告印刷会社代表取締役に使用許諾をしたか
雑誌への掲載について、雑誌出版社を含め原告と被告ら
との間でやりとりがありましたが、原告への被告印刷会社
代表取締役からの詫び状の内容などから原告は本件
写真の雑誌掲載について許諾をしていないと認定
されています。
(24頁以下)
本件水彩画の制作や写真ポスターでの本件写真の使用に
ついても原告の使用許諾の存在が認められていません。
(33頁)
2 水彩画の制作は写真の翻案権を侵害するか
1.本件写真の著作物性について
江差追分事件(最高裁平成13年6月28日判決)で定立された
規範を前提に本件写真の被写体が祇園祭の風景写真という
ことから創作性のある部分について詳細に検討を加えて
います。
(29頁以下)
『本件写真の表現上の創作性がある部分とは,構図,シャッターチャンス,撮影ポジション・アングルの選択,撮影時刻,露光時間,レンズ及びフィルムの選択等において工夫したことにより表現された映像をいうと解すべきである 』
(30頁以下)
そのうえで本件写真の具体的な創作的表現について、
商店街アーケード上という撮影ポジション、神輿入れ込み
の構図、6×9判機材での絞りF11、シャッター1/15、
フィルム感度400の選択、広角レンズ使用などによる工夫
によって本件写真には神輿の差し上げ直前の厳粛な雰囲気
の感得性が認められるとして本件写真の著作物性を肯定
しています。
2.本件写真と本件水彩画との対比
平成17年度の祇園祭用のポスターには原告の撮影した写真
ではなく、それを水彩画に起こしたものが使用されて
いました。
この点について、裁判所は、本件写真に依拠して本件水彩画
が作成されたことを前提として、本件写真の表現上の本質的
な特徴を本件水彩画から直接感得することができるかどうか
(翻案したものかどうか)に関し、
『本件水彩画においては写真とは表現形式は異なるものの,本件写真の全体の構図とその構成において同一であり,また,本件写真において鮮明に写し出された部分,すなわち,祭りの象徴である神官及びこれを中心として正面左右に配置された4基の神輿が濃い画線と鮮明な色彩で強調して描き出されているのであって,これによれば,祇園祭における神官の差し上げの直前の厳粛な雰囲気を感得させるのに十分であり,この意味で,本件水彩画の創作的表現から本件写真の表現上の本質的特徴を直接感得することができるというべきである。』
(32頁)
として、本件水彩画が本件写真を翻案したものである
ことを認めています。
3 写真ポスターの制作は写真の複製権を侵害するか
平成15年度と16年度の祇園祭用のポスターについて、
被告印刷会社や同社代表取締役に対する原告の本件
写真の使用許諾の事実が認められないとして、
結論として複製権侵害性が肯定されています。
(33頁以下)
4 原告は八坂神社に使用許諾をしたか
被告印刷会社は八坂神社の依頼により写真ポスターを
制作したことから、念のため、原告が八坂神社に本件
写真の使用許諾をしていたかどうかについても
言及されています。
原告は、祇園祭の撮影に際して、八坂神社から撮影許可書
を受けています。
平成9年当初の許可書(5年間期限付)の内容には八坂神社側
が撮影写真を必要とした際には、無償でこれを提供するという、
「無償提供条項」がありました。
しかし、本殿内部などの撮影範囲が大幅に制限された内容と
なった平成14年の再許可書では「無償提供条項」が削除され
ていたことからその解釈が争われましたが、無償提供につい
ての黙示の合意もないとして八坂神社への原告の無償使用
許諾があったとは認められていません。
(34頁以下)
5 写真ポスターの制作は原告の氏名表示権を侵害するか
制作された写真ポスターに原告の氏名が表示されて
いなかったことから、氏名表示権侵害性が肯定されて
います。
(39頁以下)
結論的には、新聞やポスターへの写真掲載にあたって
原告の氏名が表示されていなかった点(氏名表示権侵害)や、
本件水彩画のポスターへの掲載にあたっての同一性保持権
侵害性が認められています。
(43頁以下)
6 八坂神社の過失の有無
祇園祭ポスターの制作を発注した発注元である八坂神社の
写真や水彩画の無許諾使用に関する過失の有無について、
裁判所は、
『被告八坂神社は,重要文化財,著作物その他文化的所産を取り扱う立場にある者であって,もとより著作権に関する知識を有するものであるから,著作物を使用するに際しては,当該著作物を制作した者などから著作権の使用許諾の有無を確認するなどして,著作権を侵害しないようにすべき注意義務があるというべきである。』
『本件写真を選択し,本件写真ポスターとすることを最終的に了解したのは,被告八坂神社であったと解するのが相当であるから,被告八坂神社は,その最終判断に当たり,被告サンケイデザインに対して,本件写真の著作者名や当該著作者名を表示しないことに対する承諾の有無を具体的に確認し,その状況次第では,更に著作者に当該承諾の有無を直接確認するなどして,著作者人格権を侵害しないようにすべき注意義務があったというべきである。』
『しかしながら,被告八坂神社は,このような確認行為をすべき注意義務を怠り,本件写真ポスターの制作を依頼した被告サンケイデザインが本件写真の著作者名を表示せずに本件写真ポスターに本件写真を掲載するのを漫然と容認したものであって,被告八坂神社には,この点において過失があるというべきである。』
(42頁以下)
八坂神社が撮影許可にあたって著作権に留意するよう
撮影者に求めていることなども勘案されて、八坂神社に
著作者に対する直接確認などの注意義務があったと
判断され、過失も認定されています。
7 雑誌出版社の責任
被告印刷会社代表取締役が保持していた本件写真の
ポジを被告雑誌出版社は借り受けたうえで雑誌に掲載
していましたが、雑誌出版社は本件写真の著作権者
である原告に対して確認行為をすべき注意義務を
怠ったとして複製権侵害についての過失が肯定されて
います。
(45頁以下)
8 損害論
著作権侵害に関する被告らの共同不法行為性(民法719条)
の争点については、ここでは省略しますが、
損害論について原告がアマチュア写真家であることを
踏まえて著作権使用料等を勘案のうえ、
写真掲載行為
・新聞、雑誌について各5万円、慰謝料3万円
・ポスターについて各10万円、慰謝料5万円
水彩画掲載行為
・新聞について5万円、慰謝料6万円
・ポスターについて10万円、慰謝料10万円
弁護士費用として、合計9万円
トータルで91万円余の損害額の認定となっています。
(47頁以下)
■コメント
1.発注元や出版社の責任を肯定
写真の無断使用についてポスター制作を請け負った印刷
会社だけでなく、ポスター発注元(八坂神社)の責任として、
発注元が直接著作権者へ著作物の使用確認をする必要が
認められてしまっていて、発注元には厳しい判断です。
また、雑誌掲載についても持ち込まれたポジについて
雑誌出版社が著作権者へ確認行為を怠ったとして
雑誌出版社の注意義務違反が認められています。
東京アウトサイダーズ事件(知財高裁平成19年05月31日
平成19(ネ)10003等出版差止等請求控訴事件、同附帯控訴事件)
でも出版社に注意義務について厳しい判断が下されていますし、
広告代理店があいだに入るような場合も含めてクライアント先
に迷惑を掛けないようにいっそうの権利処理への慎重さが
求められそうです。
2.風景写真の著作物性
今回の写真は商店街のアーケードの屋根上に登って撮影
されていて、ほかの写真にはないアングルであったのかも
しれません。
3年連続で祇園祭のポスターや新聞広告に使われたことからも
それなりに目を引く写真だったと思われます。
ところで、風景写真を撮影する際、撮影ポジションや
アングル、機材が同じような状況であれば、似通った写真が
簡単にできあがります。
しかしそうしたなかでも文字通り「以て非なる」ものが
出来上がるから写真はフシギです。
話は逸れますが、20年近く前になるでしょうか、
わたしは前田真三さんの写真が好きで写真集「上高地」の
1カットを真似てハッセルにコダクロームを詰めて
上高地で同じような被写体に同じような構図、同じような機材で
撮影をしてはみたものの、できあがってきたポジをみたとき
「これがプロとアマの違いか!」と愕然としたことを
今でも鮮明に覚えています。
いまから思えばまさに若気の至りですが、最近でもブツ撮りの
撮影現場に立ち会った際も、プロの仕事はアマとはまったく
次元が違っていて、
「誰にでも撮れそうだが、だれにもそうそうは撮れない」
という写真の奥深さを改めて感じたところです。
■過去のブログ記事
・スナップ写真の著作物性および出版社の注意義務について
2007年06月07日記事
「東京アウトサイダーズ」事件(控訴審)
2007年01月15日記事
「東京アウトサイダーズ」事件(原審)
■参考判例
・ブツ撮り写真の創作性について
「みずみずしい西瓜事件」
東京高裁平成13年06月21日平成12(ネ)750著作権侵害差止等請求控訴事件PDF
・アマチュア写真の著作物性について
「石垣調査写真事件」
仙台高裁平成09年01月30日平成7(ネ)207PDF
■参考文献
設楽隆一「複製ないし翻案について」
『著作権研究』30号(2004)2頁以下
日本写真家協会監修、日本写真家ユニオン編
「写真著作権2005改訂版」(2005)97頁以下
■追記(08.03.24)
企業法務戦士の雑感(2008-03-24)
■[企業法務][知財]一枚の写真が招いた「悲劇」
「八坂神社祇園祭ポスター」事件
★東京地裁平成20.3.13平成19(ワ)1126損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官 中島基至
裁判官 古庄研
■事案
原告が撮影した祇園祭の写真を被告が翻案して水彩画を
制作するなどしたとして風景写真の著作権侵害性が争われた事案
原告:アマチュア写真家
被告:八坂神社、印刷会社、雑誌出版社ら
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法第2条1項1号、27条、21条、19条、20条
1 原告は被告印刷会社代表取締役に使用許諾をしたか
2 水彩画の制作は写真の翻案権を侵害するか
3 写真ポスターの制作は写真の複製権を侵害するか
4 原告は八坂神社に使用許諾をしたか
5 写真ポスターの制作は原告の氏名表示権を侵害するか
6 八坂神社の過失の有無
7 雑誌出版社の責任
8 損害論
■判決内容
<経緯>
H09 原告が八坂神社から撮影許可書を受ける
H14.07.02 原告が八坂神社から再撮影許可書を受ける
H14.07.17 原告が本件写真を撮影
H15.06.15 原告が写真集を被告印刷会社で製版印刷
原告は八坂神社に100部寄贈
H15.07.01 被告印刷会社が本件写真ポスターを制作し
八坂神社が使用
H15.07.01 被告印刷会社代表取締役がポジを貸与し
被告出版社発行雑誌に本件写真を掲載
H15.07.17 被告印刷会社代表取締役が京都新聞へ
本件写真を広告掲載
H16.05.28 原告は被告出版社に対して解決金200万円を要求
H16.07.01 被告印刷会社が本件写真ポスターを制作し
八坂神社が使用
H16.07.17 被告印刷会社代表取締役が京都新聞へ本件写真を
広告掲載
H16.07.31 原告は八坂神社宮司に抗議
H17.06 被告印刷会社社員が本件水彩画を制作
H17.07.01 被告印刷会社が本件水彩画ポスターを制作し
八坂神社が使用
H17.07.17 被告印刷会社代表取締役が京都新聞へ本件水彩画を
広告掲載
<争点>
1 原告は被告印刷会社代表取締役に使用許諾をしたか
雑誌への掲載について、雑誌出版社を含め原告と被告ら
との間でやりとりがありましたが、原告への被告印刷会社
代表取締役からの詫び状の内容などから原告は本件
写真の雑誌掲載について許諾をしていないと認定
されています。
(24頁以下)
本件水彩画の制作や写真ポスターでの本件写真の使用に
ついても原告の使用許諾の存在が認められていません。
(33頁)
2 水彩画の制作は写真の翻案権を侵害するか
1.本件写真の著作物性について
江差追分事件(最高裁平成13年6月28日判決)で定立された
規範を前提に本件写真の被写体が祇園祭の風景写真という
ことから創作性のある部分について詳細に検討を加えて
います。
(29頁以下)
『本件写真の表現上の創作性がある部分とは,構図,シャッターチャンス,撮影ポジション・アングルの選択,撮影時刻,露光時間,レンズ及びフィルムの選択等において工夫したことにより表現された映像をいうと解すべきである 』
(30頁以下)
そのうえで本件写真の具体的な創作的表現について、
商店街アーケード上という撮影ポジション、神輿入れ込み
の構図、6×9判機材での絞りF11、シャッター1/15、
フィルム感度400の選択、広角レンズ使用などによる工夫
によって本件写真には神輿の差し上げ直前の厳粛な雰囲気
の感得性が認められるとして本件写真の著作物性を肯定
しています。
2.本件写真と本件水彩画との対比
平成17年度の祇園祭用のポスターには原告の撮影した写真
ではなく、それを水彩画に起こしたものが使用されて
いました。
この点について、裁判所は、本件写真に依拠して本件水彩画
が作成されたことを前提として、本件写真の表現上の本質的
な特徴を本件水彩画から直接感得することができるかどうか
(翻案したものかどうか)に関し、
『本件水彩画においては写真とは表現形式は異なるものの,本件写真の全体の構図とその構成において同一であり,また,本件写真において鮮明に写し出された部分,すなわち,祭りの象徴である神官及びこれを中心として正面左右に配置された4基の神輿が濃い画線と鮮明な色彩で強調して描き出されているのであって,これによれば,祇園祭における神官の差し上げの直前の厳粛な雰囲気を感得させるのに十分であり,この意味で,本件水彩画の創作的表現から本件写真の表現上の本質的特徴を直接感得することができるというべきである。』
(32頁)
として、本件水彩画が本件写真を翻案したものである
ことを認めています。
3 写真ポスターの制作は写真の複製権を侵害するか
平成15年度と16年度の祇園祭用のポスターについて、
被告印刷会社や同社代表取締役に対する原告の本件
写真の使用許諾の事実が認められないとして、
結論として複製権侵害性が肯定されています。
(33頁以下)
4 原告は八坂神社に使用許諾をしたか
被告印刷会社は八坂神社の依頼により写真ポスターを
制作したことから、念のため、原告が八坂神社に本件
写真の使用許諾をしていたかどうかについても
言及されています。
原告は、祇園祭の撮影に際して、八坂神社から撮影許可書
を受けています。
平成9年当初の許可書(5年間期限付)の内容には八坂神社側
が撮影写真を必要とした際には、無償でこれを提供するという、
「無償提供条項」がありました。
しかし、本殿内部などの撮影範囲が大幅に制限された内容と
なった平成14年の再許可書では「無償提供条項」が削除され
ていたことからその解釈が争われましたが、無償提供につい
ての黙示の合意もないとして八坂神社への原告の無償使用
許諾があったとは認められていません。
(34頁以下)
5 写真ポスターの制作は原告の氏名表示権を侵害するか
制作された写真ポスターに原告の氏名が表示されて
いなかったことから、氏名表示権侵害性が肯定されて
います。
(39頁以下)
結論的には、新聞やポスターへの写真掲載にあたって
原告の氏名が表示されていなかった点(氏名表示権侵害)や、
本件水彩画のポスターへの掲載にあたっての同一性保持権
侵害性が認められています。
(43頁以下)
6 八坂神社の過失の有無
祇園祭ポスターの制作を発注した発注元である八坂神社の
写真や水彩画の無許諾使用に関する過失の有無について、
裁判所は、
『被告八坂神社は,重要文化財,著作物その他文化的所産を取り扱う立場にある者であって,もとより著作権に関する知識を有するものであるから,著作物を使用するに際しては,当該著作物を制作した者などから著作権の使用許諾の有無を確認するなどして,著作権を侵害しないようにすべき注意義務があるというべきである。』
『本件写真を選択し,本件写真ポスターとすることを最終的に了解したのは,被告八坂神社であったと解するのが相当であるから,被告八坂神社は,その最終判断に当たり,被告サンケイデザインに対して,本件写真の著作者名や当該著作者名を表示しないことに対する承諾の有無を具体的に確認し,その状況次第では,更に著作者に当該承諾の有無を直接確認するなどして,著作者人格権を侵害しないようにすべき注意義務があったというべきである。』
『しかしながら,被告八坂神社は,このような確認行為をすべき注意義務を怠り,本件写真ポスターの制作を依頼した被告サンケイデザインが本件写真の著作者名を表示せずに本件写真ポスターに本件写真を掲載するのを漫然と容認したものであって,被告八坂神社には,この点において過失があるというべきである。』
(42頁以下)
八坂神社が撮影許可にあたって著作権に留意するよう
撮影者に求めていることなども勘案されて、八坂神社に
著作者に対する直接確認などの注意義務があったと
判断され、過失も認定されています。
7 雑誌出版社の責任
被告印刷会社代表取締役が保持していた本件写真の
ポジを被告雑誌出版社は借り受けたうえで雑誌に掲載
していましたが、雑誌出版社は本件写真の著作権者
である原告に対して確認行為をすべき注意義務を
怠ったとして複製権侵害についての過失が肯定されて
います。
(45頁以下)
8 損害論
著作権侵害に関する被告らの共同不法行為性(民法719条)
の争点については、ここでは省略しますが、
損害論について原告がアマチュア写真家であることを
踏まえて著作権使用料等を勘案のうえ、
写真掲載行為
・新聞、雑誌について各5万円、慰謝料3万円
・ポスターについて各10万円、慰謝料5万円
水彩画掲載行為
・新聞について5万円、慰謝料6万円
・ポスターについて10万円、慰謝料10万円
弁護士費用として、合計9万円
トータルで91万円余の損害額の認定となっています。
(47頁以下)
■コメント
1.発注元や出版社の責任を肯定
写真の無断使用についてポスター制作を請け負った印刷
会社だけでなく、ポスター発注元(八坂神社)の責任として、
発注元が直接著作権者へ著作物の使用確認をする必要が
認められてしまっていて、発注元には厳しい判断です。
また、雑誌掲載についても持ち込まれたポジについて
雑誌出版社が著作権者へ確認行為を怠ったとして
雑誌出版社の注意義務違反が認められています。
東京アウトサイダーズ事件(知財高裁平成19年05月31日
平成19(ネ)10003等出版差止等請求控訴事件、同附帯控訴事件)
でも出版社に注意義務について厳しい判断が下されていますし、
広告代理店があいだに入るような場合も含めてクライアント先
に迷惑を掛けないようにいっそうの権利処理への慎重さが
求められそうです。
2.風景写真の著作物性
今回の写真は商店街のアーケードの屋根上に登って撮影
されていて、ほかの写真にはないアングルであったのかも
しれません。
3年連続で祇園祭のポスターや新聞広告に使われたことからも
それなりに目を引く写真だったと思われます。
ところで、風景写真を撮影する際、撮影ポジションや
アングル、機材が同じような状況であれば、似通った写真が
簡単にできあがります。
しかしそうしたなかでも文字通り「以て非なる」ものが
出来上がるから写真はフシギです。
話は逸れますが、20年近く前になるでしょうか、
わたしは前田真三さんの写真が好きで写真集「上高地」の
1カットを真似てハッセルにコダクロームを詰めて
上高地で同じような被写体に同じような構図、同じような機材で
撮影をしてはみたものの、できあがってきたポジをみたとき
「これがプロとアマの違いか!」と愕然としたことを
今でも鮮明に覚えています。
いまから思えばまさに若気の至りですが、最近でもブツ撮りの
撮影現場に立ち会った際も、プロの仕事はアマとはまったく
次元が違っていて、
「誰にでも撮れそうだが、だれにもそうそうは撮れない」
という写真の奥深さを改めて感じたところです。
■過去のブログ記事
・スナップ写真の著作物性および出版社の注意義務について
2007年06月07日記事
「東京アウトサイダーズ」事件(控訴審)
2007年01月15日記事
「東京アウトサイダーズ」事件(原審)
■参考判例
・ブツ撮り写真の創作性について
「みずみずしい西瓜事件」
東京高裁平成13年06月21日平成12(ネ)750著作権侵害差止等請求控訴事件PDF
・アマチュア写真の著作物性について
「石垣調査写真事件」
仙台高裁平成09年01月30日平成7(ネ)207PDF
■参考文献
設楽隆一「複製ないし翻案について」
『著作権研究』30号(2004)2頁以下
日本写真家協会監修、日本写真家ユニオン編
「写真著作権2005改訂版」(2005)97頁以下
■追記(08.03.24)
企業法務戦士の雑感(2008-03-24)
■[企業法務][知財]一枚の写真が招いた「悲劇」
hayabusa9999 at 16:27|この記事のURL
│TrackBack(1)
2008年03月08日
「『モダンタイムス』格安DVD」事件(控訴審)〜著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
「『モダンタイムス』格安DVD」事件(控訴審)
★知財高裁平成20.2.28平成19(ネ)10073著作権侵害差止等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 宍戸充
裁判官 柴田義明
裁判官 澁谷勝海
★原審
東京地裁平成19.8.29平成18(ワ)15552著作権侵害差止等請求事件PDF
■事案
チャップリン『モダンタイムス』『独裁者』などの映画作品の
保護期間をめぐり映画の著作者がチャップリンなのか映画会社
であるのかが争われた事案の控訴審
原告(被控訴人):チャップリン映画管理会社
被告(控訴人) :映像ソフト企画製造販売会社ら
■結論
控訴棄却
■争点
条文 著作権法第2条1項2号、21条、26条
1 著作権存続期間満了の有無
(1)旧法3条〜6条の適用
(2)旧3条「著作者」の意義
(3)旧6条の意義
(4)本件9作品の著作者
(5)旧3条の「公表」
(6)旧法下での映画の著作者の解釈論
(7)「シェーン」事件判決との関係
(8)チャップリン作品の特殊性
(9)保護期間
2 損害論
■判決内容
<争点>
1 著作権存続期間満了の有無
(1)旧法3条〜6条の適用
チャップリンの9つの作品は、いずれも昭和45年改正法(昭和45年
法律第48号)施行前に公表された著作物でしたので、旧法の適用
関係が検討されています。
(12頁以下)
本件9作品はいずれも独創的な作品で、「独創性ヲ有スルモノ」
(旧22条ノ3 映画の著作権)に該当し、保護期間は旧法3条
(生前公表著作物)ないし6条(団体著作物)の適用を受ける。
(2)旧3条「著作者」の意義
旧3条の「著作者」の意義について、
『旧法3条の上記規定によれば,著作者の生死により保護期間を定めているから,旧法3条にいう「著作者」は,自然人を意味することが明らかである。』
(18頁以下)
として、自然人を意味するものとしています。
旧3条は、自然人である著作者が実名で公表される場合の
保護期間を規定したものと解釈されました。
(3)旧6条の意義
旧3条(生前公表著作物)、旧5条(無名・変名著作物)の意義から、
旧6条(団体著作物)は、団体の著作名義での著作物の公表の場合の
保護期間を規定したものと解するのが相当であるとしています。
(19頁以下)
この点、法人著作の可能性についても言及、知財高裁は
旧6条は『法人著作を認めた規定とはいいがたい。』と
判断しています。
(4)本件9作品の著作者
旧3条の「著作者」が現行法16条の著作者と同様に
捉えられることを前提に、チャップリンが映画著作物の
全体的形成に創作的に寄与した者であるとして
旧3条の「著作者」にあたると判断しています。
(20頁)
(5)旧3条の「公表」
本件9作品のうち6作品は、米国著作権局の登録でチャップリン
が著作者とされ、また、公表画像においても創作者としての
表示があったとして、旧3条の実名による著作者の公表があった
とされました。
その他3作品についても、米国著作権局での登録が法人名義の
著作者登録となっているので旧6条の適否が一応問題とされま
したが、旧6条は、3条や5条の場合に当たらない場面でのもの
なので、公表された画像にチャップリンの創作者としての表示
がある以上、旧3条の実名による著作者の公表があったと判断
されています。
(20頁以下)
(6)旧法下での映画の著作者の解釈論
旧法下での映画の著作者をめぐる論点について、
映画は映画製作者の単独著作物であるとの解釈論に立てば
団体の著作物である旧6条の適用の余地があるとDVD業者は
主張しました。
しかし、裁判所は旧法では「団体」の著作物に関する規定を
置いていないことから、原則に戻って、自然人が映画著作物
の著作者となるものと解すべきであると判断しています。
結論として、DVD業者の主張を容れていません。
(21頁以下)
(7)「シェーン」事件判決との関係
映画「シェーン」事件判決(東京地裁平成18年10月6日)では
旧6条の適用を前提としたうえで著作権法54条1項の適否が
争われていましたが、本件チャップリン事件とは事案が異にする
として、同列に論ずることはできないとされています。
(24頁)
(8)チャップリン作品の特殊性
なお、原審ではチャップリンが少なくとも本件映画の著作者の
1人であるとされた点について、控訴審では逆に
『著作物の本質である思想・感情の表現という側面からみると,本件9作品は,正にチャップリンによる映画というほかなく,この側面においてチャップリン以外に映画著作物の全体的形成に創作的に寄与した者がいるとの証拠を見いだすことができない。したがって,チャップリンが,単に本件9作品の著作者の1人にすぎないとはいえない。』
(25頁以下)
として、チャップリン映画の特徴を印象付けています。
(9)保護期間
チャップリンは1977年(昭和52年)に死亡していることから
1978年から起算して38年間の2015年12月31日までが旧法での
保護期間とされました。
そのうえで、昭和45年改正法、平成15年改正法54条、同法附則
規定などから7作品は2015年まで、「殺人狂時代」は2017年まで、
「ライムライト」は2022年まで保護期間が続くと判断されて
います。
(26頁以下)
結論として、本件9作品はなお保護期間が存続していることが
明かにされています。
2 損害論
原審の判断を維持しています。
(29頁以下)
DVD販売業者側の注意義務違反性については、
『控訴人らは,旧法及び昭和45年改正法を独自に解釈し,しかも,被控訴人の警告書における説明に対して,専門家の意見を聞くなどといった格別の調査をした形跡もないのであるから,控訴人らには少なくとも注意義務違反の過失があるものと認められる。』
として著作権の存続期間に関する調査義務を怠ったと
判断しています。
■コメント
古い映画の保護期間については、映画の公表名義が
自然人か法人かで旧法3条の適用(監督などの自然人)か
旧法6条の適用(映画会社などの法人)かを判断したうえで、
旧法6条の適用場面であれば、現行法54条1項の適用があるか
という最高裁判例(シェーン事件)の議論に流れていく
というのが、ざっくりしたところです。
チャップリン映画については控訴審では原審の判断が
維持されていて、残るは黒澤明監督作品の事案
(「羅生門」など)の控訴審の判断を待つばかりです。
■過去のブログ記事
2007年09月01日記事
「『モダンタイムス』格安DVD」事件〜著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜(原審)
2007年09月21日記事
「黒澤明監督作品格安DVD」事件(対角川事件)〜著作権 著作権侵害差止請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
2008年01月29日記事
「黒澤明監督作品格安DVD」事件(対松竹事件)〜著作権 著作権侵害差止請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
2006年07月12日記事
「ローマの休日」保護期間事件〜著作権 仮処分命令申立事件決定(知的財産裁判例集)〜
2006年10月07日記事
『シェーン』著作権保護期間満了事件〜著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
■参考ブログ
企業法務戦士の雑感(2008-02-29)
■[企業法務][知財]判例は固まりつつあるが・・・。
■参考文献
岡邦俊「自然人を著作者とする映画の保護期間延長 『羅生門』DVD事件」
『最新判例62を読む 著作権の事件簿』(2007)223頁以下
斉藤博「著作物の保護期間に関する考察」
『Law & Technology』(2007.4)35号4頁以下
駒田泰土「旧著作権法施行時に製作、公表された映画について、その著作権の存続期間が満了していないとされた事例(東京地方裁判所平成19年9月14日判決)」PDF
速報判例解説 LEX/DBインターネット TKC法律情報データベース
2008/2/12掲載
吉田正夫、狩野雅澄「旧著作権法下の映画著作物の著作者の意義と保護期間--チャップリン映画DVD無断複製頒布事件及び黒澤映画DVD無断頒布事件-東京地裁平成19.8.29判決、東京地裁平成19.9.14判決-」
『コピライト』(2008.2)562号49頁以下
■追記(08.03.20)
企業法務戦士の雑感(2008-03-19)
■[企業法務][知財]格安DVD事業者に勝ち目はないのか?
「『モダンタイムス』格安DVD」事件(控訴審)
★知財高裁平成20.2.28平成19(ネ)10073著作権侵害差止等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 宍戸充
裁判官 柴田義明
裁判官 澁谷勝海
★原審
東京地裁平成19.8.29平成18(ワ)15552著作権侵害差止等請求事件PDF
■事案
チャップリン『モダンタイムス』『独裁者』などの映画作品の
保護期間をめぐり映画の著作者がチャップリンなのか映画会社
であるのかが争われた事案の控訴審
原告(被控訴人):チャップリン映画管理会社
被告(控訴人) :映像ソフト企画製造販売会社ら
■結論
控訴棄却
■争点
条文 著作権法第2条1項2号、21条、26条
1 著作権存続期間満了の有無
(1)旧法3条〜6条の適用
(2)旧3条「著作者」の意義
(3)旧6条の意義
(4)本件9作品の著作者
(5)旧3条の「公表」
(6)旧法下での映画の著作者の解釈論
(7)「シェーン」事件判決との関係
(8)チャップリン作品の特殊性
(9)保護期間
2 損害論
■判決内容
<争点>
1 著作権存続期間満了の有無
(1)旧法3条〜6条の適用
チャップリンの9つの作品は、いずれも昭和45年改正法(昭和45年
法律第48号)施行前に公表された著作物でしたので、旧法の適用
関係が検討されています。
(12頁以下)
本件9作品はいずれも独創的な作品で、「独創性ヲ有スルモノ」
(旧22条ノ3 映画の著作権)に該当し、保護期間は旧法3条
(生前公表著作物)ないし6条(団体著作物)の適用を受ける。
(2)旧3条「著作者」の意義
旧3条の「著作者」の意義について、
『旧法3条の上記規定によれば,著作者の生死により保護期間を定めているから,旧法3条にいう「著作者」は,自然人を意味することが明らかである。』
(18頁以下)
として、自然人を意味するものとしています。
旧3条は、自然人である著作者が実名で公表される場合の
保護期間を規定したものと解釈されました。
(3)旧6条の意義
旧3条(生前公表著作物)、旧5条(無名・変名著作物)の意義から、
旧6条(団体著作物)は、団体の著作名義での著作物の公表の場合の
保護期間を規定したものと解するのが相当であるとしています。
(19頁以下)
この点、法人著作の可能性についても言及、知財高裁は
旧6条は『法人著作を認めた規定とはいいがたい。』と
判断しています。
(4)本件9作品の著作者
旧3条の「著作者」が現行法16条の著作者と同様に
捉えられることを前提に、チャップリンが映画著作物の
全体的形成に創作的に寄与した者であるとして
旧3条の「著作者」にあたると判断しています。
(20頁)
(5)旧3条の「公表」
本件9作品のうち6作品は、米国著作権局の登録でチャップリン
が著作者とされ、また、公表画像においても創作者としての
表示があったとして、旧3条の実名による著作者の公表があった
とされました。
その他3作品についても、米国著作権局での登録が法人名義の
著作者登録となっているので旧6条の適否が一応問題とされま
したが、旧6条は、3条や5条の場合に当たらない場面でのもの
なので、公表された画像にチャップリンの創作者としての表示
がある以上、旧3条の実名による著作者の公表があったと判断
されています。
(20頁以下)
(6)旧法下での映画の著作者の解釈論
旧法下での映画の著作者をめぐる論点について、
映画は映画製作者の単独著作物であるとの解釈論に立てば
団体の著作物である旧6条の適用の余地があるとDVD業者は
主張しました。
しかし、裁判所は旧法では「団体」の著作物に関する規定を
置いていないことから、原則に戻って、自然人が映画著作物
の著作者となるものと解すべきであると判断しています。
結論として、DVD業者の主張を容れていません。
(21頁以下)
(7)「シェーン」事件判決との関係
映画「シェーン」事件判決(東京地裁平成18年10月6日)では
旧6条の適用を前提としたうえで著作権法54条1項の適否が
争われていましたが、本件チャップリン事件とは事案が異にする
として、同列に論ずることはできないとされています。
(24頁)
(8)チャップリン作品の特殊性
なお、原審ではチャップリンが少なくとも本件映画の著作者の
1人であるとされた点について、控訴審では逆に
『著作物の本質である思想・感情の表現という側面からみると,本件9作品は,正にチャップリンによる映画というほかなく,この側面においてチャップリン以外に映画著作物の全体的形成に創作的に寄与した者がいるとの証拠を見いだすことができない。したがって,チャップリンが,単に本件9作品の著作者の1人にすぎないとはいえない。』
(25頁以下)
として、チャップリン映画の特徴を印象付けています。
(9)保護期間
チャップリンは1977年(昭和52年)に死亡していることから
1978年から起算して38年間の2015年12月31日までが旧法での
保護期間とされました。
そのうえで、昭和45年改正法、平成15年改正法54条、同法附則
規定などから7作品は2015年まで、「殺人狂時代」は2017年まで、
「ライムライト」は2022年まで保護期間が続くと判断されて
います。
(26頁以下)
結論として、本件9作品はなお保護期間が存続していることが
明かにされています。
2 損害論
原審の判断を維持しています。
(29頁以下)
DVD販売業者側の注意義務違反性については、
『控訴人らは,旧法及び昭和45年改正法を独自に解釈し,しかも,被控訴人の警告書における説明に対して,専門家の意見を聞くなどといった格別の調査をした形跡もないのであるから,控訴人らには少なくとも注意義務違反の過失があるものと認められる。』
として著作権の存続期間に関する調査義務を怠ったと
判断しています。
■コメント
古い映画の保護期間については、映画の公表名義が
自然人か法人かで旧法3条の適用(監督などの自然人)か
旧法6条の適用(映画会社などの法人)かを判断したうえで、
旧法6条の適用場面であれば、現行法54条1項の適用があるか
という最高裁判例(シェーン事件)の議論に流れていく
というのが、ざっくりしたところです。
チャップリン映画については控訴審では原審の判断が
維持されていて、残るは黒澤明監督作品の事案
(「羅生門」など)の控訴審の判断を待つばかりです。
■過去のブログ記事
2007年09月01日記事
「『モダンタイムス』格安DVD」事件〜著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜(原審)
2007年09月21日記事
「黒澤明監督作品格安DVD」事件(対角川事件)〜著作権 著作権侵害差止請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
2008年01月29日記事
「黒澤明監督作品格安DVD」事件(対松竹事件)〜著作権 著作権侵害差止請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
2006年07月12日記事
「ローマの休日」保護期間事件〜著作権 仮処分命令申立事件決定(知的財産裁判例集)〜
2006年10月07日記事
『シェーン』著作権保護期間満了事件〜著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
■参考ブログ
企業法務戦士の雑感(2008-02-29)
■[企業法務][知財]判例は固まりつつあるが・・・。
■参考文献
岡邦俊「自然人を著作者とする映画の保護期間延長 『羅生門』DVD事件」
『最新判例62を読む 著作権の事件簿』(2007)223頁以下
斉藤博「著作物の保護期間に関する考察」
『Law & Technology』(2007.4)35号4頁以下
駒田泰土「旧著作権法施行時に製作、公表された映画について、その著作権の存続期間が満了していないとされた事例(東京地方裁判所平成19年9月14日判決)」PDF
速報判例解説 LEX/DBインターネット TKC法律情報データベース
2008/2/12掲載
吉田正夫、狩野雅澄「旧著作権法下の映画著作物の著作者の意義と保護期間--チャップリン映画DVD無断複製頒布事件及び黒澤映画DVD無断頒布事件-東京地裁平成19.8.29判決、東京地裁平成19.9.14判決-」
『コピライト』(2008.2)562号49頁以下
■追記(08.03.20)
企業法務戦士の雑感(2008-03-19)
■[企業法務][知財]格安DVD事業者に勝ち目はないのか?
hayabusa9999 at 06:49|この記事のURL
│TrackBack(0)
2008年03月04日
「虹彩占いゲーム機器プログラム」事件〜著作権 著作権確認等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
「虹彩占いゲーム機器プログラム」事件
★東京地裁平成20.2.27平成18(ワ)29359著作権確認等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 中村恭
裁判官 宮崎雅子
■事案
虹彩識別技術を利用した虹彩占い機器のプラグラムの
著作物性や著作権の帰属が争われた事案
原告:映画、ビデオソフト企画・制作、発売会社
被告:衛星通信システム開発、販売会社
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法第2条1項1号、10号の2、民法704条
1 本件プログラムの著作物性
2 不当利得の成否
■判決内容
<経緯>
H13.04 米国会社が被告関連会社に対し虹彩識別技術について
実施許諾
関連会社が被告に再実施許諾
H14.11 原告と被告が機器の共同開発事業化を計画
H15.01.06〜 原告が本件プログラム、イラスト等を作成
H15.02.25 投資顧問会社、被告、被告関連会社、米国会社、原告ら
との間で5社「共同事業開発協定書」を締結
H15.03.30 本件機器6台を被告に納品
H15.04.30 被告とメディア・リンクス社が「販売権に関する基本合意書」締結
H15.05.02 メディア・リンクス社が被告にライセンス料の一部
1億7000万円を支払う
H15.05.23 5社協定書の合意解約覚書締結
H15.07.10 被告とメディア・リンクス社が「販売代理店契約」締結
H15.08 被告とメディア・リンクス社は基本合意書および
販売代理店契約を合意解約
H16.11 メディア・リンクス社 背任・粉飾決算事件摘発
H17.05 メディア・リンクス社社長に実刑判決
<争点>
1 本件プログラムの著作物性
原告の作成したプログラム(本件プログラム)は
アミューズメント機器(プリクラ類似の機器)である
「虹彩占いBOX」で使用されるイラストや占いの結果
を待受画面に表示したりプリントアウトするための
アウトプット用のプログラムでした。
(なお、虹彩識別技術に関する特許権やプログラムは、
米国会社に帰属していました。)
原告が制作したプログラムやイラストについて、
その著作物性が認められ、結論としては、原告の
著作権帰属についての確認請求が裁判所に
容れられています。
(14頁)
2 不当利得の成否
原告は、
『被告がメディア社から受領した1億7000万円は,本件プログラム及び本件イラスト等を含む本件機器全体について独占的販売権を設定したことによって得られたものである。
(・・・)したがって,本件機器における本件プログラム及び本件イラスト等の寄与割合について,被告に受益がある。』
という点から不当利得返還請求を行いました。
しかし、裁判所は、被告とメディア・リンクス社
(メディア社)との間の販売代理店契約関係では
提供製品の中に本件プログラムの組み込みまでも
認めたものとはいえず、そもそも本件プログラム
やイラストが独占的販売権の対象に含まれていな
かったとして、被告の受益を認めず不当利得は
成立しないと判断しました。
(14頁以下)
■コメント
架空循環取引事例として取り上げられることが多い
メディア・リンクス社の陰がちらついた著作権事案です。
著作権事案といっても、著作権はほとんど争点と
なっていません。
原告としては、プログラムを組んだりしたわけで
手を動かした労賃だけでもなんとか費用を回収したい
ところでしたが、メディア社に実際にゲーム機器が
供給されることもなく被告とメディア社との
販売代理店契約が頓挫していることから金銭の動きを
原告の業務と関連付けることができませんでした。
時系列を見ると、5社協定書の合意解約以前にメディア社が
登場しているので、被告の態度の評価も微妙(17頁)な
ところではあります。
■参考図書
高橋篤史「粉飾の論理」(2006)133頁以下
有森隆ほか「脱法企業 闇の連鎖」(2007)238頁以下
■参考サイト
虹彩占い
「虹彩占いゲーム機器プログラム」事件
★東京地裁平成20.2.27平成18(ワ)29359著作権確認等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 中村恭
裁判官 宮崎雅子
■事案
虹彩識別技術を利用した虹彩占い機器のプラグラムの
著作物性や著作権の帰属が争われた事案
原告:映画、ビデオソフト企画・制作、発売会社
被告:衛星通信システム開発、販売会社
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法第2条1項1号、10号の2、民法704条
1 本件プログラムの著作物性
2 不当利得の成否
■判決内容
<経緯>
H13.04 米国会社が被告関連会社に対し虹彩識別技術について
実施許諾
関連会社が被告に再実施許諾
H14.11 原告と被告が機器の共同開発事業化を計画
H15.01.06〜 原告が本件プログラム、イラスト等を作成
H15.02.25 投資顧問会社、被告、被告関連会社、米国会社、原告ら
との間で5社「共同事業開発協定書」を締結
H15.03.30 本件機器6台を被告に納品
H15.04.30 被告とメディア・リンクス社が「販売権に関する基本合意書」締結
H15.05.02 メディア・リンクス社が被告にライセンス料の一部
1億7000万円を支払う
H15.05.23 5社協定書の合意解約覚書締結
H15.07.10 被告とメディア・リンクス社が「販売代理店契約」締結
H15.08 被告とメディア・リンクス社は基本合意書および
販売代理店契約を合意解約
H16.11 メディア・リンクス社 背任・粉飾決算事件摘発
H17.05 メディア・リンクス社社長に実刑判決
<争点>
1 本件プログラムの著作物性
原告の作成したプログラム(本件プログラム)は
アミューズメント機器(プリクラ類似の機器)である
「虹彩占いBOX」で使用されるイラストや占いの結果
を待受画面に表示したりプリントアウトするための
アウトプット用のプログラムでした。
(なお、虹彩識別技術に関する特許権やプログラムは、
米国会社に帰属していました。)
原告が制作したプログラムやイラストについて、
その著作物性が認められ、結論としては、原告の
著作権帰属についての確認請求が裁判所に
容れられています。
(14頁)
2 不当利得の成否
原告は、
『被告がメディア社から受領した1億7000万円は,本件プログラム及び本件イラスト等を含む本件機器全体について独占的販売権を設定したことによって得られたものである。
(・・・)したがって,本件機器における本件プログラム及び本件イラスト等の寄与割合について,被告に受益がある。』
という点から不当利得返還請求を行いました。
しかし、裁判所は、被告とメディア・リンクス社
(メディア社)との間の販売代理店契約関係では
提供製品の中に本件プログラムの組み込みまでも
認めたものとはいえず、そもそも本件プログラム
やイラストが独占的販売権の対象に含まれていな
かったとして、被告の受益を認めず不当利得は
成立しないと判断しました。
(14頁以下)
■コメント
架空循環取引事例として取り上げられることが多い
メディア・リンクス社の陰がちらついた著作権事案です。
著作権事案といっても、著作権はほとんど争点と
なっていません。
原告としては、プログラムを組んだりしたわけで
手を動かした労賃だけでもなんとか費用を回収したい
ところでしたが、メディア社に実際にゲーム機器が
供給されることもなく被告とメディア社との
販売代理店契約が頓挫していることから金銭の動きを
原告の業務と関連付けることができませんでした。
時系列を見ると、5社協定書の合意解約以前にメディア社が
登場しているので、被告の態度の評価も微妙(17頁)な
ところではあります。
■参考図書
高橋篤史「粉飾の論理」(2006)133頁以下
有森隆ほか「脱法企業 闇の連鎖」(2007)238頁以下
■参考サイト
虹彩占い
hayabusa9999 at 19:40|この記事のURL
│TrackBack(0)
2008年03月01日
「融資覚書営業秘密」事件〜不正競争防止法 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
「融資覚書営業秘密」事件
★東京地裁平成20.2.27平成18(ワ)21248損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清水節
裁判官 山田真紀
裁判官 佐野信
■事案
融資条件として融資先に会社の内部資料を開示した行為の
営業秘密漏洩性が争われた事案
原告:ソフトウェア開発製造販売会社
被告:原告会社元従業員、原告業務委託先業者ら
■結論
請求棄却
■争点
条文 不正競争防止法2条1項4号、7号、民法415条
1 損害論
■判決内容
<経緯>
H16.11 原告と訴外KEL社がソフトウェア開発委託契約を締結
(委託料7000万円)
H18.03 原告は納期に完成できず、また資金繰り悪化のため
KEL社へ融資の申入れ
H18.04.07 原告とKEL社が1億円の融資覚書締結、実施
H18.06.09 原告とKEL社が追加1億3000万円の融資契約締結、実施
H18.09.03 被告らがKEL社に保守契約書情報を開示
H18.09.10 被告らがKEL社に営業情報を電子メールで送信
H18.09.22 被告らがKEL社に営業情報を電子メールで送信
H18.11.02 原告が民事再生手続を申請
原告は、KEL社からの融資額2億3000万円を未弁済
<争点>
1 損害論
裁判所は、不正競争防止法上の争点については触れず、
損害論について、
『原告も,本件情報の開示行為以前から,原告の売上高は減少している旨自認しており(弁論の全趣旨),これを前提とすると,仮に,本件情報の開示行為以降に原告の売上高が減少したという事実が認められたとしても,それは,本件情報の開示行為に起因するものではなく,原告の経営状況や市場の動向等の他の要因によるものと推測される。』
(20頁以下)
などとして、結論的には被告らによる
本件情報(顧客情報、取引金額、保守契約書情報等)の
開示行為によって原告に損害が発生したとは
認めませんでした。
なお、被告らの新会社設立構想に伴い、被告らが
なんらかの利益を得ていたかどうかという点に
ついても、裁判所は判断。
結論的には、新会社設立に至っていないことから
被告らの利益取得についても認めていません。
(21頁以下)
■コメント
原告は取引先のKEL社(プリンタ等販売・リース会社)から
原告が融資を受けるための条件として原告会社の会計帳簿
などの開示について覚書で締結。
その趣旨に沿って被告らは情報をKEL社へ開示しました。
被告らが、開示内容について事前に原告代表者に承諾を
得ていなかったことや退職後に競合する新会社を設立する
構想などがあったことから、一連の行為が背任的行為
として捉えられ、本件提訴に至っています。
もっとも、すでに原告は資金繰りが悪化していて
KEL社への返済計画がまったく履行されていない状況で、
被告らの情報開示行為と原告に生じた損害の因果関係が
明確なところではないわけで、判決では損害論という、
いわば「入り口論」でばっさりと切られて不正競争防止法
上の争点については言及されていません。
「融資覚書営業秘密」事件
★東京地裁平成20.2.27平成18(ワ)21248損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清水節
裁判官 山田真紀
裁判官 佐野信
■事案
融資条件として融資先に会社の内部資料を開示した行為の
営業秘密漏洩性が争われた事案
原告:ソフトウェア開発製造販売会社
被告:原告会社元従業員、原告業務委託先業者ら
■結論
請求棄却
■争点
条文 不正競争防止法2条1項4号、7号、民法415条
1 損害論
■判決内容
<経緯>
H16.11 原告と訴外KEL社がソフトウェア開発委託契約を締結
(委託料7000万円)
H18.03 原告は納期に完成できず、また資金繰り悪化のため
KEL社へ融資の申入れ
H18.04.07 原告とKEL社が1億円の融資覚書締結、実施
H18.06.09 原告とKEL社が追加1億3000万円の融資契約締結、実施
H18.09.03 被告らがKEL社に保守契約書情報を開示
H18.09.10 被告らがKEL社に営業情報を電子メールで送信
H18.09.22 被告らがKEL社に営業情報を電子メールで送信
H18.11.02 原告が民事再生手続を申請
原告は、KEL社からの融資額2億3000万円を未弁済
<争点>
1 損害論
裁判所は、不正競争防止法上の争点については触れず、
損害論について、
『原告も,本件情報の開示行為以前から,原告の売上高は減少している旨自認しており(弁論の全趣旨),これを前提とすると,仮に,本件情報の開示行為以降に原告の売上高が減少したという事実が認められたとしても,それは,本件情報の開示行為に起因するものではなく,原告の経営状況や市場の動向等の他の要因によるものと推測される。』
(20頁以下)
などとして、結論的には被告らによる
本件情報(顧客情報、取引金額、保守契約書情報等)の
開示行為によって原告に損害が発生したとは
認めませんでした。
なお、被告らの新会社設立構想に伴い、被告らが
なんらかの利益を得ていたかどうかという点に
ついても、裁判所は判断。
結論的には、新会社設立に至っていないことから
被告らの利益取得についても認めていません。
(21頁以下)
■コメント
原告は取引先のKEL社(プリンタ等販売・リース会社)から
原告が融資を受けるための条件として原告会社の会計帳簿
などの開示について覚書で締結。
その趣旨に沿って被告らは情報をKEL社へ開示しました。
被告らが、開示内容について事前に原告代表者に承諾を
得ていなかったことや退職後に競合する新会社を設立する
構想などがあったことから、一連の行為が背任的行為
として捉えられ、本件提訴に至っています。
もっとも、すでに原告は資金繰りが悪化していて
KEL社への返済計画がまったく履行されていない状況で、
被告らの情報開示行為と原告に生じた損害の因果関係が
明確なところではないわけで、判決では損害論という、
いわば「入り口論」でばっさりと切られて不正競争防止法
上の争点については言及されていません。
hayabusa9999 at 14:01|この記事のURL
│TrackBack(0)
2008年02月29日
「社保庁LAN公衆送信権侵害」事件〜著作権 著作権侵害行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
「社保庁LAN公衆送信権侵害」事件
★東京地裁平成20.2.26平成19(ワ)15231著作権侵害行為差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官 中島基至
裁判官 関根澄子
■事案
社会保険庁LANシステム中の電子掲示板に無断で
社保庁職員が原告の雑誌記事を掲載したことが複製権、
公衆送信権侵害となるかどうかが争われた事案
原告:ジャーナリスト
被告:社会保険庁
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法第42条、23条、2条1項7号の2、21条、114条3項
1 公衆送信権侵害の成否
2 損害論
3 差止請求の肯否
■判決内容
<争点>
1 公衆送信権侵害の成否
(1)公衆送信性(2条1項7号の2)の肯否
社保庁が管理運営する電子掲示板に無断で原告の記事が
職員によって掲載された点について、裁判所は、
『本件LANシステムは,社会保険庁内部部局,施設等機関,地方社会保険事務局及び社会保険事務所をネットワークで接続するネットワークシステムであり(前提となる事実),その一つの部分の設置の場所が,他の部分の設置の場所と同一の構内に限定されていない電気通信設備に該当する。』
『したがって,社会保険庁職員が,平成19年3月19日から同年4月16日の間に,社会保険庁職員が利用する電気通信回線に接続している本件LANシステムの本件掲示板用の記録媒体に,本件著作物1ないし4を順次記録した行為(本件記録行為)は,本件著作物を,公衆からの求めに応じ自動的に送信を行うことを可能化したもので,原告が専有する本件著作物の公衆送信(自動公衆送信の場合における送信可能化を含む。)を行う権利を侵害するものである。』
として、社保庁職員による電子掲示板への原告記事の記録行為が
送信可能化行為にあたり、原告の公衆送信権を侵害するもの
と判断しました。
(16頁以下)
(2)42条1項(行政目的複製)に該当するか
被告側は、電子掲示板への複製行為は行政目的のための
内部資料としての作成行為であり、42条や49条1項1号の
趣旨からすれば42条の目的以外の目的で当該複製物が
公衆送信されたものではない以上、著作権者の公衆送信権
を害さないと解すべきであると反論しています。
しかし、裁判所は、
『社会保険庁職員による本件著作物の複製は,本件著作物を,本件掲示板用の記録媒体に記録する行為であり,本件著作物の自動公衆送信を可能化する行為にほかならない。』
としたうえで、
『42条1項は,「著作物は・・・行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には,その必要と認められる限度において,複製することができる。」と規定しているとおり,特定の場合に,著作物の複製行為が複製権侵害とならないことを認めた規定であり,この規定が公衆送信(自動公衆送信の場合の送信可能化を含む。)を行う権利の侵害行為について適用されないことは明らかである。』
『また,42条1項は,行政目的の内部資料として必要な限度において,複製行為を制限的に許容したのであるから,本件LANシステムに本件著作物を記録し,社会保険庁の内部部局におかれる課,社会保険庁大学校及び社会保険庁業務センター並びに地方社会保険事務局及び社会保険事務所内の多数の者の求めに応じ自動的に公衆送信を行うことを可能にした本件記録行為については,実質的にみても,42条1項を拡張的に適用する余地がないことは明らかである。』
として、42条1項の形式面と実質面(許容性)から
被告の主張を容れませんでした。
(*なお、複製権侵害の点については、選択的請求原因として
公衆送信権侵害の点が先に判断されています。)
2 損害論
電子書籍として配信されている原告の書籍の配信料や
著作権使用料を参考とし、電子掲示板に掲載された記事
へのアクセス数を7000回としたうえで(114条の5)、
公衆送信権侵害による損害額を22万円余り、
弁護士費用を20万円の合計42万円余と認定しました。
(17頁以下)
3 差止請求の肯否
(1)削除請求(112条2項)
削除請求については、すでに社保庁が新聞報道用の掲示板を
閉鎖していることから必要性を認めませんでした。
(2)予防的差止(112条1項)
原告著作物の将来の掲載行為について、社保庁が掲載行為を
再開するおそれがあることを認めて予防的差止が肯定されて
います。
(21頁以下)
■コメント
「週刊現代」に掲載された原告執筆の記事4件について、
社会保険庁が管理運営する電子掲示板内に職員が無断で
アップして利用していたという事案です。
LANで結ばれている範囲が社会保険庁の内部部局課だけでなく
社会保険庁大学校や社会保険庁業務センター、
地方社会保険事務局、社会保険事務所と、広範囲にわたる
ものでしたので、「同一の構内」(2条1項7号の2)という
場所的範囲論は争点とはなっていません。
被告は42条1項と49条1項1号の解釈論で反論を
試みましたが、設楽コートに一蹴されてしまいました。
これで、国は「土地宝典」事件に続き、著作権侵害事案で
二連敗となってしまいました。
■参考ブログ
企業法務戦士の雑感
[企業法務][知財]社保庁の憂鬱
Matimulog
jugement:社保庁の著作権侵害事件
名古屋の商標亭
LANシステムの掲示板への無断転載(08/03/01)
社保庁の業務用の内部資料として?(08/03/03)
ピリ辛著作権相談室
Q22:議員立法の資料をウェブにアップしたんだけど…
■参考文献
加戸守行「著作権法逐条講義 五訂新版」(2006)32頁、289頁以下
■追記(08.03.21)
企業法務戦士の雑感(2008-03-21)
■[企業法務][知財]権利制限規定の限界(続・社保庁の憂鬱)
「社保庁LAN公衆送信権侵害」事件
★東京地裁平成20.2.26平成19(ワ)15231著作権侵害行為差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官 中島基至
裁判官 関根澄子
■事案
社会保険庁LANシステム中の電子掲示板に無断で
社保庁職員が原告の雑誌記事を掲載したことが複製権、
公衆送信権侵害となるかどうかが争われた事案
原告:ジャーナリスト
被告:社会保険庁
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法第42条、23条、2条1項7号の2、21条、114条3項
1 公衆送信権侵害の成否
2 損害論
3 差止請求の肯否
■判決内容
<争点>
1 公衆送信権侵害の成否
(1)公衆送信性(2条1項7号の2)の肯否
社保庁が管理運営する電子掲示板に無断で原告の記事が
職員によって掲載された点について、裁判所は、
『本件LANシステムは,社会保険庁内部部局,施設等機関,地方社会保険事務局及び社会保険事務所をネットワークで接続するネットワークシステムであり(前提となる事実),その一つの部分の設置の場所が,他の部分の設置の場所と同一の構内に限定されていない電気通信設備に該当する。』
『したがって,社会保険庁職員が,平成19年3月19日から同年4月16日の間に,社会保険庁職員が利用する電気通信回線に接続している本件LANシステムの本件掲示板用の記録媒体に,本件著作物1ないし4を順次記録した行為(本件記録行為)は,本件著作物を,公衆からの求めに応じ自動的に送信を行うことを可能化したもので,原告が専有する本件著作物の公衆送信(自動公衆送信の場合における送信可能化を含む。)を行う権利を侵害するものである。』
として、社保庁職員による電子掲示板への原告記事の記録行為が
送信可能化行為にあたり、原告の公衆送信権を侵害するもの
と判断しました。
(16頁以下)
(2)42条1項(行政目的複製)に該当するか
被告側は、電子掲示板への複製行為は行政目的のための
内部資料としての作成行為であり、42条や49条1項1号の
趣旨からすれば42条の目的以外の目的で当該複製物が
公衆送信されたものではない以上、著作権者の公衆送信権
を害さないと解すべきであると反論しています。
しかし、裁判所は、
『社会保険庁職員による本件著作物の複製は,本件著作物を,本件掲示板用の記録媒体に記録する行為であり,本件著作物の自動公衆送信を可能化する行為にほかならない。』
としたうえで、
『42条1項は,「著作物は・・・行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には,その必要と認められる限度において,複製することができる。」と規定しているとおり,特定の場合に,著作物の複製行為が複製権侵害とならないことを認めた規定であり,この規定が公衆送信(自動公衆送信の場合の送信可能化を含む。)を行う権利の侵害行為について適用されないことは明らかである。』
『また,42条1項は,行政目的の内部資料として必要な限度において,複製行為を制限的に許容したのであるから,本件LANシステムに本件著作物を記録し,社会保険庁の内部部局におかれる課,社会保険庁大学校及び社会保険庁業務センター並びに地方社会保険事務局及び社会保険事務所内の多数の者の求めに応じ自動的に公衆送信を行うことを可能にした本件記録行為については,実質的にみても,42条1項を拡張的に適用する余地がないことは明らかである。』
として、42条1項の形式面と実質面(許容性)から
被告の主張を容れませんでした。
(*なお、複製権侵害の点については、選択的請求原因として
公衆送信権侵害の点が先に判断されています。)
2 損害論
電子書籍として配信されている原告の書籍の配信料や
著作権使用料を参考とし、電子掲示板に掲載された記事
へのアクセス数を7000回としたうえで(114条の5)、
公衆送信権侵害による損害額を22万円余り、
弁護士費用を20万円の合計42万円余と認定しました。
(17頁以下)
3 差止請求の肯否
(1)削除請求(112条2項)
削除請求については、すでに社保庁が新聞報道用の掲示板を
閉鎖していることから必要性を認めませんでした。
(2)予防的差止(112条1項)
原告著作物の将来の掲載行為について、社保庁が掲載行為を
再開するおそれがあることを認めて予防的差止が肯定されて
います。
(21頁以下)
■コメント
「週刊現代」に掲載された原告執筆の記事4件について、
社会保険庁が管理運営する電子掲示板内に職員が無断で
アップして利用していたという事案です。
LANで結ばれている範囲が社会保険庁の内部部局課だけでなく
社会保険庁大学校や社会保険庁業務センター、
地方社会保険事務局、社会保険事務所と、広範囲にわたる
ものでしたので、「同一の構内」(2条1項7号の2)という
場所的範囲論は争点とはなっていません。
被告は42条1項と49条1項1号の解釈論で反論を
試みましたが、設楽コートに一蹴されてしまいました。
これで、国は「土地宝典」事件に続き、著作権侵害事案で
二連敗となってしまいました。
■参考ブログ
企業法務戦士の雑感
[企業法務][知財]社保庁の憂鬱
Matimulog
jugement:社保庁の著作権侵害事件
名古屋の商標亭
LANシステムの掲示板への無断転載(08/03/01)
社保庁の業務用の内部資料として?(08/03/03)
ピリ辛著作権相談室
Q22:議員立法の資料をウェブにアップしたんだけど…
■参考文献
加戸守行「著作権法逐条講義 五訂新版」(2006)32頁、289頁以下
■追記(08.03.21)
企業法務戦士の雑感(2008-03-21)
■[企業法務][知財]権利制限規定の限界(続・社保庁の憂鬱)
hayabusa9999 at 17:52|この記事のURL
│TrackBack(0)
2008年02月20日
「パズル」事件〜著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
「パズル」事件
★東京地裁平成20.1.31平成18(ワ)13803損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官 関根澄子
裁判官 古庄研
■事案
12個のパズルの著作物性、著作権(複製権又は翻案権)侵害性が
争われた事案
原告:パズル作家
被告:パズル作家
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法第2条1項1号、21条、27条、19条、114条2項
1 パズルの著作物性及び複製権・翻案権侵害性
2 損害論
■判決内容
<経緯>
H3 原告が「パズルの帝国」を執筆
H4 原告が「超脳パニックあるなし“クイズ”」を執筆
H6 原告が「頭がよくなる算数パズル事典」を執筆
H9 原告が「面白くてやめられない漢字パズル」を執筆
H11 原告がパズルAを季刊誌「さわやか」に寄稿
H11 被告が「なぞなぞ3・4年生」を執筆
H16 被告が「なぞなぞ1年2年生」を執筆
H17 被告が「右脳を鍛える大人のパズル」
「左脳を鍛える大人のパズル」を執筆
<争点>
1 パズルの著作物性及び複製権・翻案権侵害性
裁判所は、「複製」「翻案」「創作」(著作権法21条、27条、
2条1項1号)の意義について従来の判例を踏襲したうえで、
パズルの著作物性について、
『数学の代数や幾何あるいは物理の問題とその解答に表現される考え方自体は,アイデアであり,これを何らかの個性的な出題形式ないし解説で表現した場合は著作物として保護され得るとしても,数学的ないし物理的問題及び解答に含まれるアイデア自体は著作物として保護されないことは当然である。このことは,パズルにおいても同様であり,数学の代数や幾何あるいは物理のアイデア等を利用した問題と解答であっても,何らかの個性が創作的に表現された問題と解答である場合には,著作物としてこれを保護すべき場合が生じ得るし,これらのアイデアを,ありふれた一般的な形で表現したにすぎない場合は,何らかの個性が創作的に表現されたものではないから,これを著作物として保護することはできないというべきである。』
と一般論を説示のうえ、原告各パズルと被告各パズルの同一性
ないし共通性の対比と関連して著作物性及び複製権・翻案権
侵害性を併せて検討しています。
(36頁以下)
結論的には、原告パズルA〜Lの12個のうち、パズルA、E、Fの
3個について被告パズルA、E、Fの複製権あるいは翻案権の
侵害性を肯定しています。
たとえば、著作権侵害性が肯定された原告パズルAですが、
『原告パズルAは,1本の糸を用いて,この糸を上下に交差させた部分(以下「交点」という。)を6点有する形状のものをAないしDの4箇所にわたって設け,その糸の両端を引いた際に結び目がAないしDのいずれにできるかを当てさせる問題』
という「結び目問題」でした。
このような着想のパズルについては、任意の結び目の
ほどかれ方などが1920年代以降、トポロジストによって
数学的に研究されていること等を踏まえた上で、
パズルAの著作物性については、
各交点における糸あるいはひもの上下関係や複数の交点の
配置の選択の範囲が、少なくとも64通り(2の6乗)存在する
ところ、パズルの作者により様々な選択(組合せ)が
考えられるが、原告はパズルAにおいて合計4通りの特定の
形状の糸の選択(組合せ)をしており、
『特定のパズルを具体的に表現した点において,作者による個性的な創作的表現があると認められるから,これを編集著作物性を有する著作物として保護すべきものと認められる。』
(38頁以下)
と判断しています。
そのうえで、被告パズルAの依拠性と表現上の本質的な特徴の
直接感得性(翻案)を肯定し、著作権侵害性を認定しています。
(41頁以下)
著作権侵害性を肯定したそのほかのパズルとしては、
2枚の写真を利用したパズルEについては、48頁以下、
連立方程式の応用問題を天秤と3種類の缶でビジュアル化した
パズルFについては、51頁以下参照。
2 損害論
財産的損害については、著作権法114条2項により4万円余り。
精神的損害については、氏名表示権・同一性保持権侵害として
20万円が認定されています。
(62頁以下)
■コメント
著作物性が認められなかったパズルは、数学的解法や
物理法則のアイデアそのもののありふれた方法での
表現であるなどの理由から保護されませんでした。
原告は被告書籍の差止請求を立てていないので、
(出版社とはコトを荒立てたくなかった?)
被告に対するサンクションとしては穏便な印象です。
■参考サイト
原告サイト
電脳内革命
■参考文献
中山信弘「著作権法」(2007)42頁以下、58頁以下
渋谷達紀「自然科学上の法則-「発光ダイオード論文」事件」
『著作権判例百選』(1987)10頁以下
■参考ブログ
企業法務戦士の雑感(08.03.17)
■[企業法務][知財]著作権という名の難解なパズル
「パズル」事件
★東京地裁平成20.1.31平成18(ワ)13803損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官 関根澄子
裁判官 古庄研
■事案
12個のパズルの著作物性、著作権(複製権又は翻案権)侵害性が
争われた事案
原告:パズル作家
被告:パズル作家
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法第2条1項1号、21条、27条、19条、114条2項
1 パズルの著作物性及び複製権・翻案権侵害性
2 損害論
■判決内容
<経緯>
H3 原告が「パズルの帝国」を執筆
H4 原告が「超脳パニックあるなし“クイズ”」を執筆
H6 原告が「頭がよくなる算数パズル事典」を執筆
H9 原告が「面白くてやめられない漢字パズル」を執筆
H11 原告がパズルAを季刊誌「さわやか」に寄稿
H11 被告が「なぞなぞ3・4年生」を執筆
H16 被告が「なぞなぞ1年2年生」を執筆
H17 被告が「右脳を鍛える大人のパズル」
「左脳を鍛える大人のパズル」を執筆
<争点>
1 パズルの著作物性及び複製権・翻案権侵害性
裁判所は、「複製」「翻案」「創作」(著作権法21条、27条、
2条1項1号)の意義について従来の判例を踏襲したうえで、
パズルの著作物性について、
『数学の代数や幾何あるいは物理の問題とその解答に表現される考え方自体は,アイデアであり,これを何らかの個性的な出題形式ないし解説で表現した場合は著作物として保護され得るとしても,数学的ないし物理的問題及び解答に含まれるアイデア自体は著作物として保護されないことは当然である。このことは,パズルにおいても同様であり,数学の代数や幾何あるいは物理のアイデア等を利用した問題と解答であっても,何らかの個性が創作的に表現された問題と解答である場合には,著作物としてこれを保護すべき場合が生じ得るし,これらのアイデアを,ありふれた一般的な形で表現したにすぎない場合は,何らかの個性が創作的に表現されたものではないから,これを著作物として保護することはできないというべきである。』
と一般論を説示のうえ、原告各パズルと被告各パズルの同一性
ないし共通性の対比と関連して著作物性及び複製権・翻案権
侵害性を併せて検討しています。
(36頁以下)
結論的には、原告パズルA〜Lの12個のうち、パズルA、E、Fの
3個について被告パズルA、E、Fの複製権あるいは翻案権の
侵害性を肯定しています。
たとえば、著作権侵害性が肯定された原告パズルAですが、
『原告パズルAは,1本の糸を用いて,この糸を上下に交差させた部分(以下「交点」という。)を6点有する形状のものをAないしDの4箇所にわたって設け,その糸の両端を引いた際に結び目がAないしDのいずれにできるかを当てさせる問題』
という「結び目問題」でした。
このような着想のパズルについては、任意の結び目の
ほどかれ方などが1920年代以降、トポロジストによって
数学的に研究されていること等を踏まえた上で、
パズルAの著作物性については、
各交点における糸あるいはひもの上下関係や複数の交点の
配置の選択の範囲が、少なくとも64通り(2の6乗)存在する
ところ、パズルの作者により様々な選択(組合せ)が
考えられるが、原告はパズルAにおいて合計4通りの特定の
形状の糸の選択(組合せ)をしており、
『特定のパズルを具体的に表現した点において,作者による個性的な創作的表現があると認められるから,これを編集著作物性を有する著作物として保護すべきものと認められる。』
(38頁以下)
と判断しています。
そのうえで、被告パズルAの依拠性と表現上の本質的な特徴の
直接感得性(翻案)を肯定し、著作権侵害性を認定しています。
(41頁以下)
著作権侵害性を肯定したそのほかのパズルとしては、
2枚の写真を利用したパズルEについては、48頁以下、
連立方程式の応用問題を天秤と3種類の缶でビジュアル化した
パズルFについては、51頁以下参照。
2 損害論
財産的損害については、著作権法114条2項により4万円余り。
精神的損害については、氏名表示権・同一性保持権侵害として
20万円が認定されています。
(62頁以下)
■コメント
著作物性が認められなかったパズルは、数学的解法や
物理法則のアイデアそのもののありふれた方法での
表現であるなどの理由から保護されませんでした。
原告は被告書籍の差止請求を立てていないので、
(出版社とはコトを荒立てたくなかった?)
被告に対するサンクションとしては穏便な印象です。
■参考サイト
原告サイト
電脳内革命
■参考文献
中山信弘「著作権法」(2007)42頁以下、58頁以下
渋谷達紀「自然科学上の法則-「発光ダイオード論文」事件」
『著作権判例百選』(1987)10頁以下
■参考ブログ
企業法務戦士の雑感(08.03.17)
■[企業法務][知財]著作権という名の難解なパズル
hayabusa9999 at 16:54|この記事のURL
│TrackBack(0)
2008年02月19日
「ゴーストライター共同著作物」事件〜著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
「ゴーストライター共同著作物」事件
★東京地裁平成20.2.15平成18(ワ)15359損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 平田直人
裁判官 柵木澄子
■事案
「ゴーストライター共同著作物」事件
★東京地裁平成20.2.15平成18(ワ)15359損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 平田直人
裁判官 柵木澄子
■事案

