知財判決速報2007

2007年11月07日

「宅建取引営業秘密」事件〜不正競争防止法 不正競争行為差止請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「宅建取引営業秘密」事件

東京地裁平成19.10.30平成18(ワ)14569等不正競争行為差止請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官     平田直人
裁判官     柵木澄子


■事案

原告会社の元役員と従業員による営業秘密の持ち出しや
新会社の営業表示の類似性が争点となった事案


原告:宅建取引業者ら
被告:宅建取引業者、元取締役、元従業員


■結論

請求棄却


■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号、4号

1 営業主体混同惹起行為性
2 名刺の営業秘密性
3 引き抜き行為の不法行為性


■判決内容

<経緯>

H02.12    被告Bが原告会社に入社
H13.10     被告Aが原告会社に入社
H16.07.28  Aが原告会社の取締役に就任
H17.11.30  Aが取締役を辞任、退職
H17.12.14  Aが被告会社設立、代表取締役就任
H18.01.20  Bが原告会社を退職
H18.02.01  Bが被告会社に入社、取締役に就任


<争点>

1 営業主体混同惹起行為性

「仮住まい情報センター」などの原告営業表示の周知性について、
原告は、ちらし、顧客紹介用紙、下敷き、新聞広告等で使用して
いた旨の主張をしていましたが、その使用期間、使用頻度、使用
態様等についての主張立証を尽くしておらず認定されるに至って
いません。
(22頁以下)


2 名刺の営業秘密性

12社のハウスメーカーの営業担当者の氏名、所属部署、連絡先等の
情報の営業秘密性について、秘密管理性と非公知性に関して検討し
ています。

(1)秘密管理性

裁判所は、

秘密管理性が認められるためには,その情報を客観的に秘密として管理していると認識することができる状態にあることが必要であり,具体的には,当該情報にアクセスすることができる者が制限され,アクセスした者が秘密であると認識することができることが必要である。

としたうえで、

名刺の管理状況、就業規則の規定の解釈などから原告会社では名刺が
秘密情報として管理されていないこと、仮に原告が管理を徹底指導し
ていたとしてもアクセス制限性、認識可能性について何ら主張立証が
ない、と判断しています。
(24頁以下)

(2)非公知性

非公知性が認められるためには,当該情報が,保有者の管理下以外では一般的に入手することができない状態にあることが必要である。

としたうえで、裁判所は、営業活動上名刺交換で取得しうる情報であり、
一般的に入手することができない状態にあるとはいえないとしています。
(26頁)

よって、原告主張の情報は、営業秘密性を具備しないとされました。


3 引き抜き行為の不法行為性

原告は、Aによる社員B引き抜き行為が取締役の忠実義務違反、従業員と
しての誠実義務違反、自由競争逸脱行為にあたると主張しましたが、
容れられていません。
(26頁以下)

BのほうからAの会社への就職を申し入れしていたことなどもあって、
Bに対するAによる退職や入社の勧誘の事実が認定されていません。


■コメント

原告会社の社長とその息子の経営方針に反発して
袂を分かち競業する会社を始めた原告会社No.2のA。
そのAに原告会社でトップの営業成績を収めていた
社員を引き抜かれたとして原告は裁判を起しましたが、
結論的には、原告敗訴となりました。


■参考文献

小松一雄編著「不正競業訴訟の実務」(2005)331頁以下

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2007年11月04日

「モズライトギター」事件〜不正競争防止法 商標権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「モズライトギター」事件

東京地裁平成19.10.25平成19(ワ)5022商標権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官     間史恵
裁判官     古庄研


■事案

モズライト・ギター(エレキギター)の標章に関して
商標法4条1項10号該当性、原産地誤認表示性などが
争点となった事案

原告:楽器輸入製造販売会社
被告:木工製品製造・販売会社ら


■結論

請求棄却


■争点

条文 商標法4条1項10号、不正競争防止法2条1項13号

1 原告登録商標の無効性
2 被告標章の使用が原産地誤認表示行為にあたるか


■判決内容

<争点>

1 原告登録商標の無効性

原告登録商標「VIBRAMUTE」、「マルMマークmosrite of California」、
「mosrite」がいずれも商標法4条1項10号(未登録周知商標の保護)に
該当し無効であると判断されています。
(27頁以下)


2 被告標章の使用が原産地誤認表示行為にあたるか

被告製品のエレキギターに付された被告標章
「マルMマークmosrite of California」からすると、カリフォルニア
州で製作された表示になるが、被告商品は長野県で製作されたもので
あることから、こうした表示が原産地誤認表示にあたるのではないかが
争点となりました。

裁判所は、「of California」は、「カリフォルニア州製の」という意味
よりは、単に商品イメージを表す付加的表示にすぎないとして結論的には、
不正競争行為性を否定しています。
(31頁以下)


■コメント

モズライト・ギターへのあこがれは強く、ファンにはたまらないもの
かもしれません。

原告のサイトを見ると「USAモズライト製品総輸入・発売元」、
「国産モズライト製品総発売元」とあるわけですが、国内での原告の
立場は判旨を読む限り少なくとも国産製品に関する法律関係について
はよくわかりません。原告はモズライト社等からモズライト商標につ
いて譲渡や使用許諾を受けていません(28頁)。

原告商標が無効と判断されており、そのうえで原告が被告の不正競争
行為性を争うのは難しかったかもしれません。

なお、当事者間の過去の経緯については、本件原告側補佐人弁理士でも
ある牛木理一先生のサイト(下記)を拝見すると事情がよくわかります。


■参考サイト

牛木内外特許事務所
MOSRITE商標無効事件


■追記08/09/02

控訴審
知財高裁平成20.8.28平成19(ネ)10094PDF


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2007年11月03日

「人工漁礁」事件〜不正競争防止法 不正競争行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「人工漁礁」事件

東京地裁平成19.10.23平成19(ワ)11136不正競争行為差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官     間史恵
裁判官     古庄研


■事案

人工漁礁の形態の商品等表示性(不正競争防止法2条1項1号)が
争われた事案

原告:魚礁場設計製造会社
被告:人工漁礁等製造販売会社ら


■結論

請求棄却


■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号

1 商品形態の商品等表示性
2 形態の類否
3 特許権侵害性(略)


■判決内容

<争点>

1 商品形態の商品等表示性

裁判所は、2条1項1号の趣旨に続けて、

商品の形態は,本来的には,商品としての機能・効用の発揮や商品の美観の向上等のために選択されるものであり,商品の出所を表示する目的を有するものではない。しかし,特定の商品の形態が独自の特徴を有し,かつ,この形態が長期間継続的かつ独占的に使用されるか,又は短期間でも強力な宣伝等が伴って使用されることにより,その形態が特定の者の商品であることを示す表示であると需要者の間で広く認識されるようになった場合には,当該商品等の形態が,同号にいう「商品等表示」として保護されることになると解すべきである。

商品形態についても特別顕著性と周知性を獲得した場合は
「商品等表示」として保護される、とする従来の判例の一般
論を展開。

さらに「なお」書きとして、

なお,商品の形態における独自の特徴について補足すれば,この独自の特徴とは,商品の機能に由来するものであることから,ただちに独自の特徴を有することを否定されるべきではないものの,その形態が他の同種の商品と比べ,需要者等の感覚に端的に訴える独自の意匠的特徴を有し,需要者等が一見して特定の営業主体の商品であることを理解することができる程度の識別力を備えたものであることが必要であると解すべきである。この意味で,単に商品の機能に由来する形態の場合,独自の意匠的特徴を有し,出所表示機能を備えた商品表示とはなりにくいことが多いということはできるであろう。
(19頁以下)

と説示しています。そのうえで、

原告製品の魚礁の形態の商品等表示性について、裁判所は
設置場所や使用目的、対象とする魚介類によって形態が種
々異なり、その形態の全体的特徴が捉えにくい、形態の特
徴も人工漁礁としての目的、機能、効用に由来するもので
原告製品の意匠的特徴というよりは機能的特徴である。
さらに、需要者もデザイン性よりも機能性を重視して製品
を選択していることから原告製品の特徴は、それ自体が顧
客誘引力を有する周知商品表示であるとは認められない、と
判断しました。
(22頁以下)


2 形態の類否

争点1で原告製品の形態の商品等表示性が否定されていますの
で、原告製品と被告製品の形態の類否の判断は付言となります。

この点について、裁判所は、外観、形状が大きく異なる両製品
の形態の類似性について否定の判断を示しています。
(23頁以下)


■コメント

商品の形態が備える機能的な特徴部分が原告製品の出所表示機能を
持つものであるかどうかが争われた事案でした。

人工漁礁がどんなものか、たとえばAT漁礁|旭化成建材株式会社
日本大型人工魚礁協会|魚礁・増殖礁のご紹介などをみると
いろいろあることが分かります。


■過去のブログ記事

技術的(機能的)形態と商品等表示性について

「ロレックス類似商品」事件
東京地裁平成18年07月26日平成16(ワ)18090 不正競争行為差止等請求事件
2006年07月28日記事

「サンプリングチューブ」事件
大阪地裁平成18年07月27日平成17(ワ)11055不正競争行為差止請求事件
2006年07月29日記事

「耳かき形態」事件
東京地裁平成18年09月28日平成18(ワ)4933 不正競争行為差止等請求事件
2006年10月06日記事

「ガス式釘打機ストリップ形態」事件
大阪地裁平成19年04月26日平成17(ワ)2190特許権侵害差止等請求事件
2007年05月10日記事


■参考文献

小松一雄編著「不正競業訴訟の実務」(2005)194頁以下
小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」(上)(2007)
      122頁以下、144頁以下

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2007年11月01日

「ヴォンダッチ二重譲渡」事件〜著作権 著作権譲渡登録抹消請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「ヴォンダッチ二重譲渡」事件

東京地裁平成19.10.26平成18(ワ)7424著作権譲渡登録抹消請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官     平田直人
裁判官     柵木澄子


■事案

ヴォンダッチ(Von Dutch ケネス・ハワード)の著作物の著作権譲渡の
際の二重譲渡と対抗要件充足性が争点となった事案


原告:被服等製造販売会社(アメリカ法人)
被告:被服等輸入販売者(韓国法人代表取締役)


■結論

請求棄却


■争点

条文 著作権法第77条

1 準拠法
2 被告が原告への本件著作権の移転につき対抗要件の欠缺を
   主張し得る法律上の利害関係を有する第三者であるか否か



■判決内容

<経緯>

H4     ケネス・ハワード死亡    
       B、Cがケネス・ハワードの子として知的財産権を共同相続

H08.10.08 B、Cがダークホース社とライセンス契約
H11.04   ダークホース社がEに実施権を譲渡
        Eが原告会社を設立
H12.01.14 Eが被告とパートナーシップ契約締結
H12.03.31 上野商会がB、Cと全知的財産譲渡契約締結
H14.05.15 上野商会が原告会社と全知的財産譲渡契約締結
H16.08.05 Eと原告会社間で紛争、和解
H17.01.27 B、Cと被告がライセンス契約締結
H17.06.08 B、Cと被告が全知的財産譲渡契約締結
H17.11.25 被告が譲渡登録を受ける


<争点>

1 準拠法

裁判所は、本件の準拠法について、

本件著作権の譲渡について適用されるべき準拠法は,相続の準拠法ではない。
そして,著作権の譲渡について適用されるべき準拠法を決定するに当たっては,譲渡の原因関係である契約等の債権行為と,目的である著作権の物権類似の支配関係の変動とを区別し,それぞれの法律関係について別個に準拠法を決定すべきである。

(18頁)

としたうえで、後掲東京高裁の判例に沿って、


(1)著作権移転の原因行為である譲渡契約の成立及び効力に
   ついて適用されるべき準拠法


改正前法例7条1項の規定から当事者意思、その他諸般の事情を
斟酌したうえで、結論的には日本法が準拠法とされています。

(2)著作権の物権類似の支配関係の変動について適用されるべき
   準拠法


法例10条、ベルヌ条約3条、著作権法6条3項などの規定から本件著作物
の保護国である日本法が準拠法となるとしています。
(19頁)


2 被告が原告への本件著作権の移転につき対抗要件の欠缺を
   主張し得る法律上の利害関係を有する第三者であるか否か


(1)二重譲渡の関係に立つか

B、Cが上野商会に対してした著作権譲渡契約が有効であること、また
B、Cが被告に対してした著作権譲渡契約も有効であることから、
二重譲渡の関係にあり、上野商会・その転得者と被告とは対抗関係
に立つと判断。

被告が、原告への本件著作権の移転につき、対抗要件の欠缺を主張し
得る法律上の利害関係を有する第三者(著作権法77条)に該当する
として、原告は対抗し得ないとされました。
(21頁)


(2)背信的悪意者排除論

被告はB、Cと上野商会間の譲渡契約について認識していた(単純悪意者)
ものの、背信的悪意者ではないとして、「第三者」から排除されて
いません。
(21頁以下)


■コメント

著作権の二重譲渡が争点となった事案です。

田村先生は著作権の二重譲渡の場面について、民法177条の
伝統的理解が適用される場面ではないとして悪意者排除論に
立たれておいでです(後掲田村510頁)。

著作権の登録制度の問題点については、後掲コンメンタール
11頁以下(中山代志子)参照。


ケネスハワードという作家はまったく知らなかったのですが、
下書き無し、フリーハンドでアメ車にペインティングしたりする
「ピンストライピング」技法の確立者であったようです。


■参考判例

準拠法の争点について

キューピー事件
東京高裁平成13年05月30日平成12(ネ)7著作権侵害差止等請求、独立当事者参加控訴事件PDF
東京高裁平成13年05月30日平成11(ネ)6345著作権侵害差止等請求控訴事件PDF


「第三者」の争点について

複製許諾とジャスラック信託契約
東京地裁平成12年06月30日平成11(ワ)3101損害賠償請求事件PDF


■参考文献

田村善之「著作権法概説第二版」(2001)510頁以下
金井重彦、小倉秀夫編著「著作権法コンメンタール下巻」(2002)11頁以下


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2007年10月27日

「たこ焼きフランチャイズ契約」事件〜損害賠償請求事件,違約金等請求事件判決(下級裁判所判例集)〜

裁判所HP 下級裁判所判例集より

「たこ焼きフランチャイズ契約」事件

千葉地裁平成19.8.30平成16(ワ)1744損害賠償請求事件,違約金等請求事件PDF

千葉地方裁判所民事第5部
裁判長裁判官 仲戸川人
裁判官     三村義幸
裁判官     天野研司


■事案

たこ焼き店のフランチャイズ契約の締結に際して,フランチャイザーが,自営業を営んだことのない主婦のフランチャイジー候補者に対し,その自己資金だけでは開業することが困難となるであろうことを告げず,初期投資総額の見込額等を記載した文書を交付せずに,加入金等を入金させた後にその不返還を定めた契約書に署名押印させたことが,同候補者に対し同契約を締結してフランチャイジーになるか否かを判断するに足りる必要かつ十分な情報を適時かつ正確に提供・開示すべき信義則上の義務を尽くしたとはいえないとされた事例
(下級裁判所判例集判示事項の要旨より)

原告:A主婦(フランチャイジー)
   B夫(連帯保証人)
被告:Cたこ焼きフランチャイザー
   E建設工事会社


■結論

請求一部認容


■争点

条文 民法415条

1 契約締結上の義務違反の有無
2 営業指導義務違反の有無
3 業者選定義務違反の有無
4 店舗工事の瑕疵の有無
5 共同不法行為性
6 損害論
7 違約金請求の可否


■判決内容

<経緯>

H09.11   被告が屋台でたこ焼きを始める
H11.05   たこ焼き事業の法人化(フランチャイズ)

H14     原告Aが被告Cに問い合せ
H15.02     AがCと面接
H15.04.02 Aは加入申込金52万円を支払う
H15.05.05 Aは加入申込書に署名押印
H15.10.03 契約金268万円を支払う
H15.10.14 研修を受ける(〜11.17)
H15.10.15 基本契約書・個別契約書締結
H15.11.11 Eが店舗改装工事見積書提示
H15.11.15 Eが店舗改装工事着手
H15.11下旬 店舗の修補工事
H15.12.06 開店
        夫Bが連帯保証契約締結
H15.12.26 Aは改装工事費を支払う
H16.03.18 AがCに対して嘆願書を通知(第1通知書)
H16.04.09 Aが契約解除を通知(第2通知書)
H16.04.09 店舗閉鎖
H16.04.28 改装後別屋号で新店舗開店


<争点>

1 契約締結上の義務違反の有無

まず、Cの契約締結に向けた勧誘方法が詐欺的であったとまでは
評価できないとし、次に、契約締結上の義務違反性の有無について
検討しています。

AC間の基本契約および個別契約をフランチャイズ契約と性質決定
したうえで、

フランチャイザーとしては,契約締結に向けた段階においても,既に,フランチャイジー候補者に対し,契約を締結してフランチャイジーになるか否かを判断するに足りる必要かつ十分な情報を適時かつ正確に提供・開示し,同候補者に不測の損害を与えないように配慮すべき義務を信義則上負っているものというべきであり,さらに,上記の義務は,フランチャイジー候補者の判断過程に何ら不当または不適切な影響を与えるなどしていない状況のもとで履行されることが求められるものと解するのが相当である。
(31頁)

として、契約締結段階での信義則上の義務に言及。

そして、改装費用についての説明不足やAが自営業を営んだこと
がない主婦であること、契約調印前に入金をさせている点など
から、Cは適時かつ正確に情報を開示・提供すべき義務を尽くし
たものとは評価できないと認定しました。


2 営業指導義務違反の有無

研修内容の不十分性や店舗での漏水事故へのCの対応の無さから、
Cはフランチャイズ契約により課せられた営業指導義務を適切に
果たしたものとはいえないと判断されています。
(32頁以下)


3 業者選定義務違反の有無

基本契約の規定振りや業者選定までのAC間のやりとりの経緯から、
Cは適切な業者を選定する義務を契約上負うものであるとしたうえ
で、Cに義務違反があったと判断しています。
(35頁以下)


4 店舗工事の瑕疵の有無

店舗改修工事にあたって生じた漏水事故などについて、瑕疵があった
と認められています。
(36頁)


5 共同不法行為性

Eの過大な工事代金請求行為が不法行為となるとする主張については、
認められませんでした。
(36頁以下)


6 損害論

AがCに支払った加入金、開業準備金、販売促進費、設備費用、店舗
改装費用の合計566万円余がCの義務違反と相当因果関係のある損害
であるとしたうえで、Aに過失相殺7割と判断されています(169万円余)。
(37頁以下)

なお、過失相殺が認められた過去の事案では、かなりの高率になっ
ている現実があります(金井後掲書159頁以下、203頁以下)。


7 違約金請求の可否

Cが請求していた違約金の請求ですが、Aに契約条項上の違反は認め
られず請求は容れられませんでした。
(39頁以下)


■コメント

サティに出物の店舗候補地があったことなどから、Aがフランチャイズ
契約締結を急いだことも揉め事が生じる一因でした。
何事もタイミングは大切で、500万円にのぼる出費を伴う新規事業を
思い切る決断は(親族の反対もあったりして)いつでも難しいもので
しょう。

店舗改装工事が100万円で済むのか、200〜400万円掛かるのかで
双方に認識の相違が生じてしまっています。

とはいえ、加盟者に金を払わせてから契約書を交付しているところは、
フランチャイズに関するガイドラインにも抵触するもので看過できない
ところです。


■参考文献

川越憲治「フランチャイズ・システムの判例分析旧版」(1994)48頁以下
川越憲治「フランチャイズ・システムの法理論」(2001)104頁以下
金井高志「フランチャイズ契約裁判例の理論分析」(2005)29頁以下
小塚荘一郎「フランチャイズ契約論」(2006)145頁以下
日本フランチャイズチェーン協会「フランチャイズハンドブック」(2003)202頁以下
金光秀文「フランチャイズ・トラブル」(2006)34頁以下


■契約書関係(判旨5頁以下参照)

【共栄店加入申込書】

(ア)原告Aは,被告Cの共栄店に参加する意思を表示する (前文)。

(イ)原告Aは,店舗となる物件を探し,被告Cの承諾を得なければならない (2項)。

(ウ)原告Aは,共栄店加入申込みに際し,被告Cに加入準備金として52万5000円(税込)を支払う。加入準備金は,正式に契約締結に至った場合は加入金に充当する。(4項,5項)

(エ)加入準備金は,店舗となる物件を被告Cが承諾したにもかかわらず,原告Aの事情により契約締結に至らなかった場合は,一切返還しない。(7項)


【本件基本契約】

(ア)被告Cは,原告Aに対し,本件個別契約に定める場所において 「C運営システム」及び被告Cの商標等を使用した店舗(以下,単に「店舗」という )を営業することを許諾する。(1条,2条)

(イ)原告Aは,被告Cに対し,本件個別契約で定める額の加入金,開業準備費,設備費,販売促進費等を支払うものとし,うち加入金及び開業準備費は,本件基本契約の終了事由の如何を問わず一切返還しない。(4条)

(ウ)原告Aは,被告Cに対し,ロイヤリティ料月額3万円を,毎月20日限り翌月分として支払う。(5条)

(エ)店舗及び付属設備の設計・配置,店舗の建築・改築,改装及び備品等の取付けについては,原告Aは,被告C又は被告Cの指定する第三者をして行わせる。原告Aは,店舗に被告Cが指定する全ての備品及び造作を取り付け,また,被告Cが指定した以外の備品及び造作を取り付けてはならない。(6条,8条,10条)

(オ)店舗で用いられる食材,紙,樹脂製品,サービス用品,副資材,包装資材等については,原告Aは,被告C又は被告Cより斡旋を受けた業者から購入する。(16条)

(カ)被告Cは,店舗の営業に必要なマニュアルを作成している場合は,これを原告Aに提供して指導し,原告Aもこれに従わなければならない。(17条)

(キ)本件基本契約は平成15年12月6日から平成20年12月5日までの5年間,その効力を有し,2年ごとに自動更新される。当事者の一方が,他方の当事者に,有効期間もしくは更新期間満了の6か月前までに書面で契約更新拒絶の意思を表示した場合,本件基本契約は当該期間の満了により終了する。(44条,45条)

(ク)原告Aは,6か月以上の予告期間をおき,文書で解約の意思表示をすることにより,本件基本契約を解除することができる。この場合,原告Aは,違約金として,本件基本契約の残期間に対応するロイヤリティ料相当額を被告Cに支払う。(46条)

(ケ)以下の場合,被告Cは本件基本契約を解除することができる。(47条,48条)
a 原告Aが支払を停止した場合
b 原告Aが通算して1か年以内に3回以上本件基本契約及び関連する契約に基づく債務不履行の催告を受けるなど,債務不履行を繰り返した場合
c 本件基本契約及び関連する契約に基づく債務につき,被告Cが原告Aに対して履行を催告し,原告Aが正当な理由なくして20日以上当該債務を履行しない場合

(コ)原告Aは,被告Cの事前の承諾がない限り,店舗内外で,他の飲食事業に係る一切の宣伝広告を行ってはならない。(52条)

(サ) 原告Aが上記(エ),(オ)及び(コ)の定めに違反した場合,原告Aは被告Cに対して違約金として500万円を支払う。(59条)


【本件個別契約】

(ア)店舗の設置場所を千葉市a区bc−d−eとし,店名呼称を「Cbサティ店 (以下「本件店舗」という )とする (1項,2項)」 。

(イ)原告Aが被告Cに支払う加入金,開業準備費,設備費及び販売促進費の金額(消費税を含む )をそれぞれ以下のとおり定める (3項)。 。
a 加 入 金 105万円
b 開業準備費 21万円
c 設 備 費 157万5000円
d 販売促進費 31万5000円


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「釣り具商標権使用許諾契約」事件〜商標権 損害賠償等請求事件判決(下級裁判所判例集)〜

裁判所HP 下級裁判所判例集より

「釣り具商標権使用許諾契約」事件

山形地裁鶴岡支部平成19.5.25平成15(ワ)14損害賠償等請求事件PDF

裁判長裁判官 横山巌
裁判官     武宮英子
裁判官     藤原典子


■事案

釣りの仕掛けについて「クロスピーズ」という商標権を持つ原告が、「クロスピーズ」という標章を付して釣りの仕掛けを販売した被告の行為が、商標権の侵害であるとして、商標権に基づき、商標法36条による販売行為等の差し止め及び不法行為による損害賠償(商標使用許諾料相当損害金等)の支払を求め、また、原告Aから独占的通常使用権の設定を受けたとする原告会社が、被告の前記行為により、販売減少等の損害を受けたとして、独占的通常使用権に基づき、主位的に不法行為による損害賠償(販売減少損害金等)を、予備的に前記損害に加え、原告Aの上記商標使用許諾料相当損害金の請求が認容されなかった場合の商標使用許諾料相当損害金の支払を求めた事案
(下級裁判所判例集判示事項の要旨より一部修正)


原告:A(商標権者)
   釣り具製造販売会社(代表取締役A)
被告:釣り具製造販売会社


■結論

請求一部認容


■争点

条文 商標法31条、民法709条

1 商標使用許諾契約上の使用権限の性質
2 通常使用権と損害賠償請求
3 原告会社の損害論
    (以下略)
4 被告は,本件商標の指定商品に被告標章を商標として
  使用しているか

5 被告の過失の有無
6 原告Aの差止請求の可否
7 原告Aの被った損害の内容及び額
8 損害の填補の有無
9 消滅時効の成否


■判決内容

<経緯>

S63    Cがビーズを開発、実用新案登録申請
H01    AはCの許諾を得てビーズを独占的に製造販売        
      AはBに北海道での独占的販売権を付与
H08.9   Aが「クロスビーズ」商標登録申請
H10.7   Cが被告に侵害警告通知
H11.2.19 「クロスビーズ」商標登録完了
H11.4.30 Aを代表取締役とする原告会社に法人成り
H11.5.01 Aと原告会社間で商標使用許諾契約締結

H11.2.19〜H14.8
      被告が被告標章を付した被告商品を販売


 【使用許諾契約

私が権利を有する特許庁登録の商標登録書登録第4241276号の『クロスビーズ』及び商標登録書登録第4241277号の『クロスビーズの標章』に関し平成11年5月1日より,その実施を許諾する。
許諾期間は2年間とするが相互に異議なき場合は自動更新により継続するものとする。
許諾料とその支払い方法については別途定めるものとし,本日許諾書を作成する。


<争点>

1 商標使用許諾契約上の使用権限の性質

原告会社(ライセンシー)が商標使用許諾契約上、使用権限
として独占的通常使用権を持つものか、通常使用権に過ぎな
いのかが争点となりました。
裁判所は、A(ライセンサー)が北海道地域での商標使用を
他者に許諾していたことなどから、通常使用権にすぎないと
認定しています。
(28頁)


2 通常使用権と損害賠償請求

裁判所は、通常使用権の侵害の場合のライセンシーの損害
賠償請求の可否について、

原告ディバイスの本件商標についての使用権原は,通常使用権であるところ,通常使用権の法的性格は,物権ではなく,債権である。しかし,債権侵害についても,民法709条の不法行為は成立するのであるから,損害が生じた場合には当然に損害賠償請求権は発生する。

と判示しています(29頁)。


3 原告会社の損害論

被告商品の販売により原告会社の売上げに影響があったと
したうえで、原告会社の販売減少金額は被告の売上げ金額
を基準に判断するべきであるとしています。
(40頁)
結論的に、被告商品の売上げ金額の20%相当額を販売減少
損害金として認定しています。


このように、非独占的通常使用権と商標権侵害者との関係
について、民法709条の成立を認め、ライセンシーの損害を
肯定しています。


■コメント

通常使用権の侵害論(損害賠償請求、差止請求の可否)に
ついては、判例学説が多岐に分かれているようです
(小野昌延編「注解商標法新版」(上)(2006)780頁以下
(南川博茂)参照)。

独占的通常使用権の侵害については損害賠償請求権はほぼ認
められているようですが(前掲書780頁)、本判決が非独占的
通常使用権について(具体的妥当性はともかく)あっさり
損害賠償請求権を認めているところが、民法の債権侵害論や
無体財産権侵害と不法行為の成否の問題とも関連して今後の
議論を呼ぶところとなりそうです。


■参考文献

田村善之「商標法概説第二版」(2000)408頁以下、411頁注2参照
渋谷達紀「知的財産法講義3」(2005)315頁
大阪弁護士会知的財産実務研究会編
     「知的財産契約の理論と実務」(2007)525頁以下
牧野利秋飯村敏明ほか編
     「知的財産法の理論と実務3」(2007)210頁以下(島田康男)
椙山敬士ほか「ライセンス契約」(2007)117頁以下(三村量一)


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2007年10月25日

「大阪みたらし類似商標」事件(控訴審)〜不正競争防止法 不正競争行為差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜


裁判所HP 知的財産裁判例集より

「大阪みたらし類似商標」事件(控訴審)

大阪高裁平成19.10.25平成19(ネ)1229不正競争行為差止等請求控訴事件PDF

大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 若林諒
裁判官     小野洋一
裁判官     菊地浩明


★原審
大阪地裁平成19.3.22平成18(ワ)140不正競争行為差止等請求事件PDF



■事案

和菓子の標章に用いられていた「元祖」の表示が品質誤認混同行為、
虚偽事実告知といった不正競争行為となるかが争われた事案の控訴審

原告(控訴人) :和菓子製造販売業者
被告(被控訴人):和菓子製造販売会社


■結論

控訴棄却


■争点

条文 不正競争防止法2条1項13号、14号

1 「元祖」表示による品質誤認表示行為
2 「元祖」表示による営業誹謗行為


■判決内容

<争点>

1 「元祖」表示による品質誤認表示行為

控訴審も原審の判断を維持しています(7頁以下)。

「元祖」の意味を「ものごとを始めた者」とか「一家系の最初の人」
の意味と捉えても、「元祖」表示が直ちに商品の特定の品質に結び
ついて需要者の商品選定に影響するものとは認められないとされて
います。


2 「元祖」表示による営業誹謗行為

14号の点についても、原審維持の判断です(9頁以下)。

「元祖」表示は,自らについて説明するものといえても,他の同業者について何ら述べるものではないから,それのみでは他の同業者の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知又は流布したといえない
とされています(10頁)。


■コメント

原審同様、原告業者の主張は容れられませんでした。


■過去のブログ記事

2007年03月31日
「大阪みたらし類似商標」事件〜不正競争防止法 不正競争行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜


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2007年10月19日

「ごま豆腐レシピ営業秘密」事件〜不正競争防止法 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「ごま豆腐レシピ営業秘密」事件

大阪高裁平成19.10.18平成18(ネ)2431損害賠償請求控訴事件PDF

大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 若林諒
裁判官     小野洋一
裁判官     菊地浩明


★原審
裁判所サイト不掲載(大津地裁H16(ワ)351)


■事案
元従業員の在職時の新会社設立、ごま豆腐のレシピの不正持ち出しについて
取引先の共同不法行為性が争われた事案

原告(控訴人) :液体調味料製造販売会社
被告(被控訴人):食品製造販売業


■結論

原判決一部変更


■争点

条文 不正競争防止法2条1項4号、5号、民法719条

1 共同不法行為性
2 営業秘密侵害行為性
3 損害額の算定


■判決内容

<経緯>

・原審相被告C(元原告会社工場長)が原告会社に隠れて新会社設立
・新会社と被告会社が取引
・事実関係発覚後、新会社は事業等の打ち切り、精算
・原告会社被告会社間で取引再開
-----
・原審ではCの不法行為性を認定
・控訴審で第二回口頭弁論期日にCは請求認諾


<争点>

1 共同不法行為性
2 営業秘密侵害行為性
3 損害額の算定

結論的には、Cと被告会社との共同不法行為性が認められていて、
弁護士費用を含めて235万円余の損害賠償が認められています。


■コメント

原告会社の工場幹部職員であったCが在職中に新会社を設立して
原告会社に代わって取引先であった被告会社と取引をしていたと
いう事案です。

原審では、被告会社が新会社に援助していたことが認定されてい
たようですが(7頁)、営業秘密侵害行為性の争点についての判断
を含め原審にあたれていないので、詳しい内容がわかりませんで
した。

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2007年10月16日

「正露丸」事件(控訴審)〜不正競争防止法 不正競争行為差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「正露丸」事件(控訴審)

大阪高裁平成19.10.11平成18(ネ)2387不正競争行為差止等請求控訴事件PDF

大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 若林諒
裁判官 小野洋一
裁判官 冨田一彦


★原審
大阪地裁平成18.7.27平成17(ワ)11663不正競争行為差止等請求事件PDF



■事案

「ラッパのマーク」の正露丸を販売する大幸薬品が類似する
パッケージで正露丸を販売している他社を相手取って争った
事案の控訴審


原告(控訴人) :大幸薬品株式会社
被告(被控訴人):和泉薬品工業株式会社


■結論

控訴棄却


■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号、2号、19条1項1号 商標法26条1項2号

1 正露丸パッケージの「商品等表示性」
2 「ラッパの図柄」の類似性、誤認混同のおそれの有無
3 「正露丸」「SEIROGAN」の「商品等表示性」
4 商標権の効力制限(商標法26条1項2号)


■判決内容


<争点>

1 正露丸パッケージの「商品等表示性」
2 「ラッパの図柄」の類似性、誤認混同のおそれの有無
3 「正露丸」「SEIROGAN」の「商品等表示性」
4 商標権の効力制限(商標法26条1項2号)

各争点について、原審維持の判断です。


「ラッパの図柄」を度外視したパッケージ包装態様のみでは控訴人
の商品であるとの認識を取引業者はもとより一般消費者においても
持つことが出来ない(出所表示機能がない)とされています。
また、「正露丸」「SEIROGAN」の商品等表示性についても普通名称
性が覆されるに至っていません。
(22頁以下)


■コメント

31頁以下では、「一般大衆に対し問題とする名称を含め複数の
名称についてブランドか普通名称かを質問するアンケート調査」
の内容について検討されていて興味深いところです。
(パッケージ調査については、27頁以下。)

原告側が行ったインターネットを利用した調査ですが、質問項目
の立て方や調査対象者の適否について判断されていて、結論的に
は調査結果やそれに基づく鑑定意見が採用されるに至っていませ
ん。


■過去のブログ記事

2006年08月03日
「正露丸」事件〜不正競争防止法 差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜


■参考文献

アンケート調査について
青木博通「商標・不正競争事件における証拠としてのアンケート調査
    『知的財産権としてのブランドとデザイン』(2007)250頁以下参照

商標の普通名称化について
 同  「商標の普通名称化−そのプロセス、対応策、立法論−」前掲書1頁以下
 同  「商標の普通名称化と出版社への商標表示請求権
      ―日本,欧州,米国の比較法的考察と立法論―
パテント』60巻5号(2007)13頁以下


■プレスリリース

平成19年10月11日 和泉薬品工業株式会社に対する
不正競争行為差止等請求控訴事件の大阪高裁判決について
ニュースリリース - 大幸薬品株式会社

プレスリリースPDF

   --------------------

■追記08/7/6

新聞報道によると、2008年7月4日、最高裁第2小法廷(津野修裁判長)が
上告不受理決定。


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2007年10月03日

「ピーターラビットマルシーマーク」事件(控訴審)〜著作権 著作権に基づく差止請求権不存在確認請求控訴事件,同附帯控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「ピーターラビットマルシーマーク」事件(控訴審)

大阪高裁平成19.10.2平成19(ネ)713等著作権に基づく差止請求権不存在確認請求控訴事件,同附帯控訴事件PDF

大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 若林諒
裁判官     小野洋一
裁判官     菊地浩明


★原審
大阪地裁平成19.1.30平成17(ワ)12138著作権に基づく差止請求権不存在確認請求事件著作権民事訴訟


■事案

著作権保護期間を満了したベアトリクス・ポター作「ピーターラビット
のおはなし」の絵柄の一部を利用しようとした原告が、著作権管理会社
を被告として提起した差止請求権不存在確認の訴えの控訴審


原告(控訴人/附帯被控訴人):子供衣料品製造販売会社
被告(被控訴人/附帯控訴人):知財管理会社


■結論

控訴/附帯控訴棄却


■争点

条文 不正競争防止法2条1項13号、民法709条


1 確認の訴えの利益の有無
2 質量等誤認惹起行為の成否(不正競争防止法2条1項13号)
3 一般不法行為の成否(民法709条)


■判決内容

<争点>

1 確認の訴えの利益の有無

原審同様、差止請求権不存在確認の訴えの利益について、これを
肯定しています。
(11頁以下)


2 質量等誤認惹起行為の成否(不正競争防止法2条1項13号)

この点についても、被告ライセンス商品に被告表示を付することが
その商品の品質・内容を誤認させるものではないこと、役務の質・
内容の誤認の点においても原告と被告はそもそも競争関係に立たず
被告の行為により原告の営業上の利益が侵害されるおそれはないこ
となど、原審の判断を維持しています。
(13頁以下)


3 一般不法行為の成否(民法709条)

この点についても、結論的に原審同様、一般不法行為性を否定して
います。
(19頁)


結局、原審同様、原告の訴えの利益(著作権に基づく差止請求権の
不存在の確認)だけ認容されて、そのほかの部分は容れられません
でした。


■コメント

パブリックドメインとなった著作物をキャラクター商品化した際に
その商品に付すライセンス表示を巡り争われた事案の控訴審です。

控訴審も原審維持の判断です。
控訴審でも万国著作権条約との関係でパブリックドメインとなった
著作物に著作権表示を表示しても品質等誤認惹起行為とは言えない
とされています。
(17頁以下)
また、著作者名や最初の発行年が付されていない単なるマルシーマ
ーク記号「(C)」の表示が持つ著作権表示機能について検討が加え
られていますが(14頁)、原審同様積極的に捉えられるに至っていま
せん。


■参考

被告表示(添付別紙1)PDF
原審別紙1PDF


■過去のブログ記事

2007年02月05日
「ピーターラビット」マルシーマーク事件〜著作権に基づく差止請求権不存在確認請求事件判決(知的財産裁判例集)〜


■追記(07.10.04)

Matimulog
ピーターラビット著作権不存在確認請求事件

■追記(08.02.10)

坂田均「ピーターラビット著作権表示事件」『知財管理』58巻1号67頁以下(2008)


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2007年10月02日

「金属管継手意匠」事件(控訴審)〜意匠権 意匠権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「金属管継手意匠」事件(控訴審)

大阪高裁平成19.9.11平成19(ネ)790意匠権侵害差止等請求控訴事件PDF

大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 若林諒
裁判官     小野洋一
裁判官     冨田一彦


★原審(裁判所サイト不掲載)

大阪地裁平成17(ワ)11765〜11768
大阪地裁平成17(ワ)12094


■事案

原告(控訴人)が意匠権者である金属管継手の登録意匠と類似する
意匠の金属管継手を販売する被告(被控訴人)の行為の意匠権侵害
性、不正競争行為性が争われれた事案


原告(控訴人) :電気工事配管製造販売会社
被告(被控訴人):仮設機材開発製造販売会社


■結論

控訴棄却


■争点

条文 意匠法23条、不正競争防止法2条1項3号

1 意匠の類否
2 不正競争防止法2条1項3号の成否


■判決内容


<争点>

1 意匠の類否

原告登録意匠1〜3と被告意匠1〜3の類似性について、

(1)構成態様の認定
(2)要部の認定
(3)類似性の認定(共通点及び相違点、意匠の類否)

という流れにそって検討、いずれの意匠も非類似とされました。


2 不正競争防止法2条1項3号の成否

商品形態模倣行為に関する不正競争防止法2条1項3号の「模倣」性
について、その判断要素としては(1)他人の商品にアクセスすること、
(2)結果の実質的同一性があること、と一般的にされていますが、
(小松一雄編著「不正競業訴訟の実務」(2005)290頁以下参照)

本件の商品形態の模倣性について、控訴審裁判所は原告商品(1〜11)
と被告商品(1〜11)に実質的同一性はないとして被告の商品販売行
為に関する不正競争防止法2条1項3号上の不正競争行為性を否定して
います。
(18頁以下)


■コメント

不正競争防止法の争点は控訴審もおおむね原審維持なのですが、
原審に当たれていないため判断内容が判然としません。


■参考ブログ

最近の意匠法に関するブログ記事について

「知」的ユウレイ屋敷
[意匠]意匠類比判断基準へのニーズを探ってみた


■参考文献

牧野利秋他編「知的財産法の理論と実務4」(2007)397頁以下


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2007年10月01日

「マクドナルド フランチャイズ契約解除」事件(控訴審)〜不正競争防止法 不正競争行為差止等・損害賠償等反訴事件控訴審判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「マクドナルド フランチャイズ契約解除」事件(控訴審)

知財高裁平成19.9.27平成18(ネ)10032不正競争行為差止等・損害賠償等反訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 田中信義
裁判官     古閑裕二
裁判官     浅井憲


★原審(本訴)
東京地裁平成18.2.21平成17(ワ)14972不正競争民事訴訟PDF


■事案

マクドナルドの「直営店」での委託販売契約から「フランチャイズ店」
(フランチャイズ契約)への契約形態の移行の際の契約関係をめぐって
争われた事案


原告(被控訴人、反訴被告):日本マクドナルド株式会社
被告(控訴人、反訴原告) :フランチャイジー


■結論

控訴棄却


■争点

条文 民法90条

1 店舗の有形無形固定資産の売買契約の公序良俗違反性
2 買戻の債務不履行の成否
3 店舗価値維持による不当利得返還請求



■判決内容

<経緯>

H4末   原告-長崎屋 店舗建物無断転貸問題
H5.7.10  原告-被告間で本件店舗での委託販売契約締結
H5.8.24  被告が本件店舗建物賃借権を譲受ける
H6.12.1  フランチャイズ契約に向けたトレーニング開始
H8.5.31  原告-被告間で店舗の有形無形固定資産の売買契約締結
H8.6.1  フランチャイズ契約締結

H12.3   被告が納入業者への支払い遅延
H12.8   法人税等滞納を理由とする差押処分
H12.9〜
H15.3   数次に亘る審査、改善事項の提言
H15.5.29 原告が解除の意思表示(第1通知書)
H15.8.11 民事調停、不成立
H16.12.3 原告が解除の意思表示(第2通知書)
H17.3.23 原告が解除の意思表示(第3通知書)


<争点>

1 店舗の有形無形固定資産の売買契約の公序良俗違反性

原告直営店での被告による委託販売の契約形態からフランチャイズ
店としてのフランチャイズ契約形態への転換を望んでいた被告に対
して原告側が直営店舗の有形、無形(営業権)固定資産を買い取ら
せたのは優越的地位の濫用にあたり、この売買契約は公序良俗に反
して無効であると被告は主張していました。

しかし、無形固定資産(営業権)買取りの経済的合理性、委託販売
契約上のマージンの位置づけ、FC契約前の売買契約であって原告は
フランチャイザーとしての地位を利用したものでないことなどから、
被告の主張(不当利得返還請求)は認められませんでした。
(6頁以下)


2 買戻の債務不履行の成否

被告は、公序良俗違反性が認められない場合であってもフランチャ
イズ契約終了に伴い店舗の無形固定資産を買い戻す義務が覚書に基
づき原告にあると主張しました。

覚書第1項
「本契約終了後,乙が甲に対し本契約第2条第1項第1号記載の営業場所を賃貸し,甲が賃借する契約が成立することを条件として,甲は営業場所に存する乙の全資産を現状有姿のまま甲の計算による定率簿価価格で買い取るものとする。」

しかし、この買戻し条項は、
本件FC契約が終了し,フランチャイザーとフランチャイジーの関係が解消されたとしても,原告と被告会社間で本件店舗の建物の賃貸借契約が締結されることによって,原告が直営店に戻すなどして本件店舗における営業を継続することができるという利益が保証される場合には,本件店舗に残る被告会社の全資産を買い取るとの趣旨

であると認定されて、原告被告間の賃貸借契約が成立していないこと
から買戻しの条件が成就していないとされました。

よって、原告の買戻義務は否定されました。
(10頁以下)


3 店舗価値維持による不当利得返還請求

被告が店舗で営業をしていた間、店舗の価値を維持したから、原告が
再度店舗の営業実績を承継した以上、その対価を不当利得として支払
うべきであると被告は主張しましたが、容れられていません。

また、フランチャイズ契約が終了した場合、原告がのれん代等の無体
財産に対する対価を支払う必要がないことがフランチャイズ契約に明
示されていることから、この点からも被告の不当利得返還請求は成立
しないと言及されています。
(11頁以下)


■コメント

原審ではフランチャイズ契約の解除を軸に争われていましたが、
控訴審では大きく争点が整理されて(訴えの取下と交換的変更)
フランチャイズ契約前後の契約関係が新たな争点として争われて
います。

不正競争防止法の争点も取り下げられています。


■過去のブログ記事

2006年02月22日記事
「マクドナルド フランチャイズ契約解除」事件〜不正競争防止法 不正競争行為差止等請求事件判決(知財判決速報)〜



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2007年09月27日

「エーザイ商号」事件〜不正競争防止法 商号使用差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「エーザイ商号」事件

東京地裁平成19.9.26平成19(ワ)12863商号使用差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清水節
裁判官     佐野信
裁判官     国分隆文


■事案

魚の餌である赤虫等の商品について、「エーザイ」等を商品等表示に、
また「e-zai.com」ドメインを利用して販売していた業者に対して医薬
品メーカーのエーザイが使用差止を求めた事案

原告:医薬品開発製造会社 「エーザイ株式会社」
被告:釣餌、医薬品販売会社「有限会社エーザイ」


■結論

請求一部認容


■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号、2号、12号、3条

1 営業上の利益の侵害の有無



■判決内容


<争点>

1 営業上の利益の侵害の有無

原告表示の著名性、周知性、類似性、誤認混同のおそれ、図利加害目的
などの点について被告は争っていません。
被告会社解散後の営業活動継続のおそれがあるかどうか、原告の営業上
の利益の侵害またはそのおそれがなおあるかどうか(3条)が争点となり
ました。

被告会社は解散後も営業活動を継続している事実が認定されて、被告に
よる原告の営業上の利益の侵害が認められています。
(6頁以下)

結論として、被告の「エーザイ」「E-ZAI」などの表示、ドメイン名の使
用の差止、被告商号の抹消登記請求が肯定されています。

なお、ドメイン名の登録抹消申請手続請求部分については、ドメイン名
登録名義人が被告会社の前代表取締役個人であったことから認められま
せんでした。


■コメント

最近の医薬品メーカーの商号使用差止事件としては、「杏林製薬商号」事件
(東京地裁平成19年01月26日平成18(ワ)17405商号使用差止等請求事件)
が記憶に新しいところです。


2007年01月31日記事:
「杏林製薬商号」事件〜不正競争防止法 商号使用差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜


■追記(07.09.28)

ドメイン名の登録抹消申請手続請求部分の被告適格について

Matimulog
jugement:.comドメインの差し止め


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2007年09月23日

「パパイア発酵食品」事件〜不正競争防止法 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「パパイア発酵食品」事件

大阪地裁平成19.9.13平成18(ワ)7458損害賠償等請求事件PDF

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 山田知司
裁判官     西理香
裁判官     村上誠子



■事案

原告が、被告の販売するパパイア発酵食品(健康食品)に使用
されている標章が原告の販売するパパイア発酵食品の周知な商
品等表示である「PS−501」ないし「PS501」と類似するとして、
被告に対し、不正競争防止法2条1項1号等に基づき、被告の標
章の使用差止等及び損害賠償金の支払を求めた事案


原告:パパイア発酵食品販売会社
被告:食品販売代理店(元原告販売代理店)


■結論

請求棄却


■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号、商標法37条1号

1 本件表示と被告標章の類似性
2 PPC広告の商標権侵害性(予備的請求)


■判決内容

<争点>

1 本件表示と被告標章の類似性


(1)外観

原告表示「PS-501」「PS501」
被告標章「Papain PS-501」「Bio-86 PS-501」

結論:非類似

(2)称呼・観念

原告表示「ピーエス501」
被告標章「パパインピーエス501」「バイオ86ピーエス501」

結論:非類似


取引の実情を前提とすると、被告標章の要部が「PS-501」のみ
とは認められず、その点を勘案して両者の類似性は否定の判断
となっています。
(35頁以下参照)


2 PPC広告の商標権侵害性(予備的請求)

なお、原告は予備的に商標法36条、37条1号に基づく差止と損害
賠償を主張していましたが、容れられていません。

原告は,被告が広告を表示しているインターネット検索結果ページの広告スペースは,原告商品の名称及び原告商標をキーワードとして表示されるスペースであり,原告商品の名称及び原告商標と同一である。したがって,原告商品の名称及び原告商標を構成する文字を入力した結果表示されるインターネット上の検索エンジンの検索結果ページ内の広告スペースに被告が自社の広告を掲載することは,商標法37条1号に該当すると主張する。
 しかしながら,原告商品の名称及び原告商標をキーワードとして検索した検索結果ページに被告が広告を掲載することがなぜ原告商標の使用に該当するのか,原告は明らかにしない。のみならず,上記の被告の行為は,商標法2条3項各号に記載された標章の「使用」のいずれの場合にも該当するとは認め難いから,本件における商標法に基づく原告の主張は失当である。

(41頁以下)


原告の登録商標
「SAIDO―PS501」(第4566777号 指定区分29)


■コメント

予備的請求の部分ですが、最近グーグルなどを相手に提起
されている海外の訴訟が念頭にでも原告にはあったのでし
ょうか。


2007年08月18日 - ITmedia News
「Googleが商標侵害」-American Airlinesが訴え

2007年09月05日- ITmedia News
Google、American Blindとの商標侵害訴訟で勝利

2007/04/26- CNET Japan
「広告文での商標利用は権利の侵害」--検索キーワードの商標侵害訴訟で米地裁が判決

PPC広告と商標について、過去の記事のストックが
パテントサロンにあります。 

パテントサロン トピック Google 検索広告商標問題



■参考ブログ

Matimulog
jugement:検索連動型広告が商標法違反となるかどうかが争われた事例


■参考文献

ネットと商標権について、

青木博通「インターネットと商標権の侵害」第二東京弁護士会編『新商標法の論点』(2007)323頁以下(バナー広告について347頁)参照


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2007年09月22日

「地震対策装置特許権侵害虚偽告知」事件(控訴審)〜不正競争防止法 債務不存在確認等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「地震対策装置特許権侵害虚偽告知」事件(控訴審)

知財高裁平成19.9.12平成18(ネ)10080債務不存在確認等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官     宍戸充
裁判官     柴田義明


★原審
東京地裁平成18.10.11平成17(ワ)22834債務不存在確認等請求事件


■事案

地震対策装置に関する特許権侵害を巡る弁護士らによる
警告書送付行為の営業誹謗行為性が争われた事案


控訴人/被控訴人(一審被告):特許権者(弁理士)
被控訴人/控訴人(一審原告):金具類製造販売会社


■結論

一審被告控訴部分棄却/一審原告控訴部分一部認容


■争点

条文 不正競争防止法2条1項14号、民法709条

1 特許権の構成要件充足性(略)
2 虚偽告知性
3 過失の有無
4 不法行為性


■判決内容

<争点>

2 虚偽告知性

原審同様、特許権に無効理由があることから、警告書における
一審原告製品が本件特許権を侵害する旨の記載は、虚偽事実で
あると判断されています。
(34頁)

なお、原審では、警告書送付行為の違法性について、特許権者
の権利行使として社会通念上必要と認められる範囲を超えてい
るとまではいえない、として違法性が阻却されていました。
(原審33頁以下)

控訴審では原審の違法性論を採らず、通知行為の不正競争行為
性を前提として侵害告知を繰り返すおそれ(将来部分)につい
ての差止の要否について新たに検討が加えられ、

本件において,一審被告は,本件特許権が有効であり,一審原告製品が本件特許権の技術的範囲に属する可能性があることを前提とした本件警告書を送付したほか,本件訴訟において,本件特許権が有効であり,一審原告製品が本件特許権の技術的範囲に属する旨の主張,すなわち,上記内容の告知,流布を今後も適法に行うことができるとの趣旨の主張をしている。そして,これら一審被告の訴訟前の行動,訴訟における対応その他の訴訟に表れた事情を総合的に考慮すれば,一審被告については,本件特許権を無効とする審決が前記判決に対する上告が棄却されるなどして確定した場合を別として,上記内容の不正競争行為を行うおそれがないとはいえず,上記の差止請求を認めることが相当である。
(34頁以下)


将来部分についての差止が認められると控訴審は判断しました。


3 過失の有無

警告書送付行為による営業上の利益侵害に対する損害賠償請求に
ついて、裁判所は、

警告書送付時までの,警告書の内容が虚偽であると疑うべき事情や前記(6)エのような警告書の内容,配布時期,配布先に照らして一審被告に要求される調査義務の内容・程度に,技術的範囲の属否の判断や無効理由の存否についての上記の諸事情を総合考慮すると,警告書の送付時に,その警告書の内容が虚偽でなく,送付行為が不正競争行為でないと認識して,警告書の送付を行ったことにつき,一審被告に過失があったということはできない。
(35頁以下)

一審被告に過失がなかったと判断しています。


4 不法行為性

この点についても一審被告に故意・過失がないとして不法行為性
が否定されています。


■コメント

原審が違法性論での処理をしたのに対して、控訴審は過失論
で対応をしたところが参考になります。
(結論に差異が生じないと考えられる点について、
小松一雄編著「不正競業訴訟の実務」(2005)386頁参照)


なお、控訴審では、侵害警告書を送付した弁護士(一審被告)
は当事者から外れています。

■参考文献

相良由里子「虚偽事実の告知・流布行為の認定」
     『知的財産法の理論と実務第3巻』(2007)394頁以下参照


■過去のブログ記事

2006年11月02日
「地震対策装置特許権侵害虚偽告知」事件〜特許権 債務不存在確認等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜


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2007年09月21日

「黒澤明監督作品格安DVD」事件(対角川事件)〜著作権 著作権侵害差止請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「黒澤明監督作品格安DVD」事件(対角川事件)

東京地裁平成19年09月14日平成19(ワ)11535著作権侵害差止請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官     大竹優子
裁判官     中村恭


なお、同日同一コートでの同一被告に対する同種事案の
著作権侵害差止請求事件判決について、

対東宝事件
東京地裁平成19年09月14日平成19(ワ)8141著作権侵害差止請求事件PDF


■事案

黒澤明監督「羅生門」「静かなる決闘」映画作品の保護期間をめぐり
映画の著作者が黒澤監督なのか映画会社であるのかが争われた事案

原告:映画会社
被告:格安DVD製造販売会社


■結論

請求認容


■争点

条文 著作権法2条1項2号、21条、113条1項1号

1 映画の著作者は誰か
2 映画の著作権の存続期間



■判決内容

<経緯>

S24年 「静かなる決闘」公開
25年  「羅生門」   公開

24年〜 黒澤監督から旧大映へ著作権譲渡
46年  旧大映破産宣告
51年  新大映へ著作権譲渡
H10年  黒澤監督死去
14年  角川へ著作権譲渡
19年〜 被告がDVD商品を製造輸入販売


*参考:旧著作権法6条

「官公衙学校社寺協会会社其ノ他団体ニ於テ著作ノ名義ヲ以テ発行又ハ興行シタル著作物ノ著作権ハ発行又ハ興行ノトキヨリ三十年間継続ス」


<争点>

1 映画の著作者は誰か

映画の著作者が法人である映画会社かどうかという点について、
裁判所は、

確かに,映画の著作物は,映画製作者が,企業活動として,当初から映画の著作物を商品として流通させる目的で企画し,多額の製作費を投入して製作するものであり,その製作には脚本,音楽,制作,監督,演出,俳優,撮影,美術,録音,編集の担当者など多数の者が関与しており,その関与の範囲や程度も様々であるという特殊性を有する。しかし,著作者とは元来著作物を創作する者をいうから,映画利用の円滑化を図るために,映画製作者に著作権を帰属させる必要があるとしても,そのことから直ちに映画製作者が映画の著作物の著作者となると解することはできず,映画の著作物の著作者は,新著作権法16条と同様に,映画の制作,監督,演出,撮影,美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に関与した者であると解するのが相当である。
(ウ) そして,この解釈の正当性は,後記ウの立法者意思及びエの新著作権法の審議経過によっても裏付けられる。

(14頁以下)

旧著作権法下での創作物の著作者の認定についても現行法(16条)
と基本的には同じであると判断しています。

結論としては、黒澤監督が著作者の一人であると認定しています。


2 映画の著作権の存続期間

映画の冒頭部分には表題に続き、「監督 黒澤明」と表示され、
次に旧大映の社章とともに「大映株式會社製作」と表示されて
いました。
この点について、裁判所は、著作者の実名で公表されているこ
とから本件映画は旧著作権法6条にいう団体名義の著作物に当た
らないと判断しました。
(21頁)

結論として、監督が死亡した翌年の平成11年から起算して38年
間存続することになり(旧著作権法3条、9条、52条1項)、映画
の著作権は少なくとも平成48年12月31日まで存続するとされま
した。

最終的に被告のDVD複製行為、頒布目的輸入行為が著作権侵害行為
にあたり、差止請求も認められました。


■コメント

民事40部で角川(2作品)と東宝(「姿三四郎」ほか8作品)に
ついてほぼ同一内容での判断が出ています。


ところで、旧著作権法当時は、著作者は自然人のみという解釈
でした(判旨6頁以下)。

現実に創作行為を為したる者が著作者であるから,その著作を自己の発意で為したか又は他人から依頼を受けて為したるかは問ところでなく,創作行為さえあれば,何れの場合も著作者である。又被傭者がその職務上著作したものであっても同じであって,現実に創作行為を為したる者が著作者であって,現実に創作行為をしない依頼者又は雇傭主が著作者となることは有り得ない。同様の趣旨から,自然人でない法人が著作者となることは有り得ない。

なる程映画作成には大きな資本を必要とし,その資本が無くては如何に名監督,名俳優等が集っても名画は完成できないのであり,できあがった後も,資本がなければ,広く映画館を通じて上映することも難かしいから,映画会社を著作権者と認定することが,実際にも適合し且権利の安定上妥当のようにも思われた。しかし又本章第一節でも述べたように,著作者は自然人に限るとすることが正論であるとするならば,映画会社は法人であるから,これを著作者と断定することは妥当を欠く。そこで昭和6年の立法当時は著作者は映画監督であると一応断定し,完成された映画の著作権は映画監督が,原始取得するものであるが,彼は映画会社の被傭者乃至専属契約下に在る者であるから,契約に基き,映画著作権は映画完成と同時に映画会社に移るものとする意見に統一して,国会に臨んだ

また、旧著作権法6条の団体名義について、

法律は,単に団体名義だけで発行されて,自然人の著作者名が掲げられていない出版物が存立することを想定して,保護期間に関してのみ第6条の規定を設けたものと考える。
(判旨12頁)

原告主張の小林尋次「現行著作権法の立法理由と解釈」(1958)
からの引用部分ですが、立法者意思を尋ねることもまた、現行
法の理解を深めるためには不可欠のところといえます。


■参考ブログ

「知」的ユウレイ屋敷
[時事][著作権]黒澤作品の保護期間を巡って感じるちょっとした違和感


■過去のブログ

チャップリン作品格安DVD事件について

2007年09月01日記事
「『モダンタイムス』格安DVD」事件〜著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

東京地裁平成19年08月29日平成18(ワ)15552著作権侵害差止等請求事件PDF


■追記(09.10.01)

企業法務戦士の雑感
■[企業法務][知財]綱渡りの主張


■追記(08.02.15)

LEX/DBインターネット TKC法律情報データベース
速報判例解説 知的財産法 No.5
駒田泰土「旧著作権法施行時に製作、公表された映画について、その著作権の存続期間が満了していないとされた事例(東京地方裁判所平成19年9月14日判決)
PDF

岡邦俊「自然人を著作者とする映画の保護期間の延長」『最新判例62を読む 著作権の事件簿』(2007)223頁以下


■追記(08.03.08)

2008年01月29日記事
「黒澤明監督作品格安DVD」事件(対松竹事件)〜著作権 著作権侵害差止請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

2008年03月08日記事
「『モダンタイムス』格安DVD」事件(控訴審)〜著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

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2007年09月14日

「漫画ネット無断配信」事件〜著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「漫画ネット無断配信」事件

東京地裁平成19.9.13平成19(ワ)6415損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官     間史恵
裁判官     杉浦正典


■事案

漫画単行本を無断で裁断のうえスキャニングし画像データ化して
送信可能化し、ウエブサイト「464.jp」で自動公衆送信を行った事案

原告:漫画家ら11名
被告:コンテンツ企画制作会社ら4名


■結論

請求一部認容


■争点

条文 著作権法第23条、114条3項、114条の5

1 侵害行為の法人の幇助者性
2 損害論


■判決内容

<経緯>

H17.4     被告ネットカフェ経営会社(代表取締役L)がサーバーを購入
H17.8     被告コンテンツ企画会社(代表取締役M、取締役L)が
       ブロードバンド回線契約締結
H17.9     被告M,L2名(個人)が漫画単行本を裁断のうえ
       スキャニングして送信可能化し、自動公衆送信を行う
H18.1.23   被告等が会費の徴収を開始
H18.1.25   配信中止、(警察の捜索)


<争点>

1 侵害行為の法人の幇助者性

被告法人2社は著作権侵害行為に関与していないと反論していましたが、
漫画著作物の違法配信について事業内容を知りつつ回線契約やサーバー
を提供していたことなどから裁判所は著作権侵害行為について被告法人ら
の幇助行為性を認めて共同不法行為が成立すると判断しました。
(16頁以下)


2 損害論

漫画単行本の電子書籍化の際の販売価格や著作者印税を参考に1冊あたり
販売価格300円(税別)、利用許諾料35%として使用料相当額を計算。
アクセス数を推計したうえで損害額を算定しています。

結論としては、原告側の各自、一部請求部分200万円(一部の原告については
異なる)の主張が容れられています。
(19頁以下)

なお、被告側からは出版物貸与権管理センターの使用料規程を基礎とした
損害額の算定を主張していましたが、貸与権と公衆送信権の法的な違いな
どから裁判所はこれを認めませんでした。
(29頁)


■コメント

確信犯による漫画違法ネット配信の事案で、主たる争点は損害論
くらいでしょうか。
事案のなかで電子書籍化の際の作家さんの印税率やアドバンス支払
いなどに触れられていて、なかなか興味深いところです。

もっとも、こうした漫画作品の電子書籍化のなかでもつまはじきに
されるのが編集プロダクションの方達。ここで出てくるビッグネー
ムの作家さん達の印税率をみると羨ましい限りです。

販売価格のうちプロバイダーに○○、出版社に△△、作家さんには
□□、とすると編集プロダクションには・・・
もう少し何とかならないかというのが漫画編プロさんと接しての
実感です。


■関連サイト
464.jp

ACCS-ニュース(2005(平成17)年度の刑事事件参照)
■ ネットでコミックを無断送信、古本売買サイト運営者ら3人逮捕(2006年2月14日)


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2007年09月13日

「フランチャイズ契約解除」事件〜損害賠償金支払請求控訴事件判決(下級裁判所判例集)〜

裁判所HP 下級裁判所判例集より

「フランチャイズ契約解除」事件

福岡高裁平成19.7.19平成19(ネ)59損害賠償金支払請求控訴事件PDF

福岡高等裁判所第3民事部
裁判長裁判官 西理
裁判官     有吉一郎
裁判官     堂薗幹一郎


★原審
熊本地裁平成16(ワ)1085



■事案

ラーメン店のフランチャイズ契約上の「のれん料」の不払いが
契約解除事由となるかどうかが争われた事案

原告(本訴控訴人):フランチャイザー
被告(反訴原告) :フランチャイジー


■結論

破棄自判(本訴一部認容 反訴棄却)


■争点

条文 民法540条、709条

1 原告による契約解除の有効性
2 損害賠償額予定規定の解釈(略)


■判決内容

<経緯>

H13.9 原告被告間でラーメン店のフランチャイズ契約締結
H15.11 原告による麺の原産地虚偽表示が発覚
H16.2 原告が本店移転等に関する通知を被告にしていないことが発覚 
H16.7 被告は6ヶ月分ののれん料を不払い
H16.8 原告が解除の意思表示
    被告はのれん料未払い分を弁済
    被告が解除の意思表示
H17.2 原告が被告に対して店舗看板撤去を指摘


【フランチャイズ契約概要】

1.商標・システム使用許諾
2.ライセンス料
(1)加盟金(ノウハウ料)150万円(契約時)
(2)のれん料3万円(月額/税別、のちに5万円へ)
(3)原材料ルート使用料50万円(契約時)
3.指導援助義務
4.損害賠償規定
5.契約終了時資材等廃棄規定


<争点>

1 原告による契約解除の有効性

原告フランチャイザーは、麺の原産地について虚偽の指導をしていたり、
新メニューやラーメン価格の変更、本店移転等の事情を被告フランチャ
イジーに通知していないという事情がありました。
こうした事情のもとでフランチャイジーは半年分にあたるのれん料(30万円)
の支払いを遅延していました。

この点について、裁判所はこれらの事情はフランチャイジー側ののれん料
不払いの正当事由とはならないとし、結論として、フランチャイザーの契
約解除を有効と判断しました。


■コメント

フランチャイザーによるラーメン麺の原材料の原産地虚偽表示は、
(社)日本フランチャイズチェーン協会倫理綱領にも反するもので、
ミートホープ事件(北海道)を見るまでもなくのれん料などのライ
センス料の支払いについてはフランチャイジー側において不安の
抗弁権の対象となりうる事由だったでしょう。

原審にあたっていないので正確な判旨は分かりませんが、原審は
控訴審とはまったく逆の結論となっていたようですので、微妙な判
断であったことは間違いがないようです。



■参考文献

大阪弁護士会知的財産法実務研究会編「知的財産契約の理論と実務」(2007)559頁以下
JFA倫理綱領について、西口元ほか編「フランチャイズ契約の法律相談」(2004)349頁以下参照

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2007年09月06日

「化粧品ノウハウ契約解除」事件〜特許権 処方使用料等反訴請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「化粧品ノウハウ契約解除」事件

東京地裁平成19.8.29平成17(ワ)26738処方使用料等反訴請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清水節
裁判官     山田真紀
裁判官     国分隆文



■事案

化粧品の処方(化粧品の製造ノウハウ)に関する使用許諾契約書上の
解除条項の解釈等が争点となった事案

原告(反訴原告):化粧品等研究開発会社(OEMライセンサー)
被告(反訴被告):化粧品等製造販売会社(ライセンシー)


■結論

請求一部認容


■争点

条文 会社法356条1項2号(利益相反取引性)

1 合意書に基づく契約解除の有効性
2 原告による解除後の被告の不法行為性
3 損害論


■判決内容

<経緯>

  • H14.10 処方使用料支払契約、特許実施契約 締結

  • H15.11 解約条項に関する追加規定合意書 締結

  • H16.07〜原告・被告両方の代表取締役であるBがいずれも退任

  •   .12 被告が合意書に基づき契約解除の意思表示

  • H17.06 原告が債務不履行に基づく解除の意思表示

  •     
  • H17   被告が債務不存在確認本訴提起

  •     原告による本件反訴提起により本訴事件は取下終了



H14締結の処方使用料支払契約書、特許実施契約書では、
甲または乙は、甲乙両者の中で代表取締役を変更した場合は、
甲乙協議のうえ本契約を解約することができるものとする。

との規定がありました(甲が被告、乙が原告。42頁)。

H15締結の合意書では、さらに
なお,協議が調わない場合は,代表取締役が変更されて
いない方の会社は,相手方(代表取締役が変更された方の
会社)に対して通知することにより一方的に契約を解除す
ることができる。

との記載を追加することとしています。原告代表取締役Bと
被告代表取締役Aが作成名義人として記名捺印。
(42頁以下)


<争点>

1 合意書に基づく契約解除の有効性

合意書締結当時、原告及び被告の両方の代表取締役であったBが
原告を代表して行為し、Aが代表する被告との間で合意書を締結
していました。

この点について、裁判所は本件合意が原告取締役会の承認を経て
いない利益相反取引(会社法365条、356条1項2号)であるとして
無効となると判断しています。(43頁以下)

結局、被告による合意書に基づく解除も無効となり、さらに本件
ノウハウ使用許諾契約上の解除条項は合意解約の規定であり、契
約解消の合意が当事者間で無い以上、被告の解除の意思表示後も
ノウハウ使用許諾契約は存続し、使用料及び実施料を支払わなか
った被告は原告に対して債務不履行責任を負うと判断されました。


2 原告による解除後の被告の不法行為性

ノウハウの意義、内容、帰属性、ノウハウ使用製品を確定のうえ、
原告が被告の債務不履行を理由とする契約解除をしたH17.6以降の
被告による本件処方(ノウハウ)使用は不法行為にあたる部分が
あると判断されています。
(46頁以下)

なお、ノウハウのうち発明部分にかかわるノウハウ使用については、
特許権設定登録前の出願公開による公知情報の実施であり、直ちに
不法行為が成立するわけではないとされています(特許法66条1項、
65条参照)。
(50頁)


3 損害論


裁判所は、

本件ノウハウ部分を無断使用したことにより反訴原告が被った損害は,反訴被告による不法行為がなければ反訴原告が得られたであろう逸失利益,すなわち,反訴原告に帰属する各本件対象品目についての本件ノウハウ部分について,反訴被告が実際に使用したことにより反訴原告に対して支払うべき実施許諾料相当額であると解すべきである。

としたうえで、具体的な算定方法について

本件ノウハウ部分は,上記のとおり,特に,本件製造工程図において,本件対象品目の製品を製造するのに必要とされる詳細な内容を含んでおり,相当程度の経済的価値を有する一方,その価値は,一般的に,設定の登録がされた特許権よりは劣るといわざるを得ない。しかも,それによって示される製造工程は,製品によって難易度に差があると考えられ,その難易度の差は,本件ノウハウ部分の経済的価値に反映されるべきである。このような事情を総合考慮すれば,反訴原告の損害額については,実施許諾料率を3ないし5パーセントの範囲内で個々の製品ごとに決定し,それを純利益に乗じて実施許諾料相当額を算出すべきもの解される。
(53頁以下)

こうした前提の上で個々の製品の実施許諾料率と損害額を計算して
います。


■コメント

原告会社と被告会社の両方の代表取締役であるB(元資生堂学術部
長)が病気で経営から退くことになり、化粧品OEM事業のキーパー
ソンであったBが経営から退いた場合の懸念に対応するため合意書
などを用意したわけですが、合意書の有効性が認められませんでし
た。
原告会社の経営の実権を握るBの子Eの言動なども念頭にあったので
しょうか(合意書作成に至る経緯について10頁以下参照)、関係者
の懸念が現実化してしまったようです。

なお、損害論については、従前の契約上の月額許諾料(930万円)
と比較してもかなり低く損害額(月額24万円相当)が算定されて
しまっています。

ノウハウが「生モノ」として経済的価値が低下した場合(公知化
や代替可能化)の、契約終了前後のノウハウの取扱いについても
考えさせられる事案です。


■追記(07.09.15)

企業法務戦士の雑感
■[企業法務][知財]特許とノウハウの間に
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2007年09月03日

「電磁波吸収材ノウハウ」事件(控訴審)〜不正競争防止法 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「電磁波吸収材ノウハウ」事件(控訴審)

知財高裁平成19.8.30平成19(ネ)10035損害賠償請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 田中信義
裁判官     石原直樹
裁判官     杜下弘記


★原審
東京地裁平成19.3.16平成17(ワ)18066損害賠償請求事件PDF


■事案

電磁波吸収材製造技術に関して、ノウハウの無断使用があったとして、
不法行為性、営業秘密の不正使用行為性が争われた事案

原告(控訴人) :被告会社元技術本部長/顧問
被告(被控訴人):塗料製造販売会社


■結論

控訴棄却(原告側一審二審とも敗訴)


■争点

条文 不正競争防止法2条1項4号、2条6項

1 ノウハウの侵害性


■判決内容

<争点>

1 ノウハウの侵害性

「営業秘密」の特定性について、控訴審も基本的に原審判断を維持して
います。
(5頁以下)

なお、ノウハウ部分が具体的に明確化されていない点について、

控訴人は,本件ノウハウの内容は「ゴムシートの連続製造技術 」,「量産性とシート性能のための成分組成」,「ゴムボートのホットプレス用ポリエステルとの接着性」,「ゴムシートの製造規格」等で,十分に具体的であるとか,ノウハウは,特許技術と異なり,一種の技術秘訣であるから,文書で明確に明文化できるものではないなどと主張するが,たとえ,ノウハウが一種の技術秘訣であろうと,それが,不正競争防止法2条6項所定の「営業秘密」であり,その侵害が同条1項4号に当たるといい得るためには,法的保護に値するか否かを具体的に認定できる程度に「営業秘密」の内容が具体的であることを要するものというべきであり,逆に,そのような具体性を主張立証することのできないものは,ノウハウと呼ぶか否かは格別,不正競争防止法上の「営業秘密」に当たるものとは到底認めることができないし,この理は不法行為の成否の判断においても同様というべきである。そして,上記「ゴムシートの連続製造技術」,「量産性とシート性能のための成分組成」,「ゴムボートのホットプレス用ポリエステルとの接着性」,「ゴムシートの製造規格」等というだけでは,かかる具体性を具備するに至っていないことは極めて明白である。
(7頁)

として、やはり具体的に明らかにされていないと控訴審でも判断しています。


■コメント

控訴審も原審維持の判断です。


■過去のブログ記事

2007年03月21日記事
「電磁波吸収材ノウハウ」事件〜不正競争防止法 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

written by ootsukahoumu at 13:54|この記事のURLTrackBack(0)