知財判決速報2007

2008年01月16日

「メンタリングトレーニング職務著作」事件〜著作権 不正競争行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「メンタリングトレーニング職務著作」事件

知財高裁平成19.12.28平成18年(ネ)第10049号控訴事件

知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官     宍戸充
裁判官     柴田義明

*裁判所サイト未掲載


★原審
東京地方裁判所平成18年4月27日平成15年(ワ)第12130号不正競争行為差止等請求事件

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官     古河謙一
裁判官     吉川泉

*裁判所サイト未掲載


■事案

メンターによる指導方法(メンタリングトレーニングプログラム)のテキストの
著作物性や営業秘密性が争点となった事案の控訴審

原告:企業経営コンサルティング会社
被告:企業経営コンサルティング会社、役員ら


■結論

控訴棄却、一部認容


■争点

条文 著作権法2条1項1号、15条、不正競争防止法2条1項4号、7号、8号

1 原告各テキストの著作権が原告に帰属するか
2 原告と被告のテキストの類似性
3 著作者人格権侵害性
4 損害論
5 不正競争防止法に基づく請求
6 不当利得ないし競業避止義務違反性(略)
7 相殺の肯否(略)


■判決内容

<経緯>

S57      被告Y1が(株)日本能率協会コンサルティング入社
H11      被告Y1らがメンタリングプログラムを開発
H12.10   被告Y1が原告会社に従業員兼取締役として入社
H12.12   原告会社において「著作権の手引き」を作成
H14.07〜   原告各テキストの作成
H14      原告会社の就業規程改訂
H14.09    (社)日本能率協会が原告に研修業務を委託
H14.12.27   被告Y1が原告会社を解任される
H15.01    被告Y1らが被告テキストを作成
H15.02    被告Y1らが被告会社(米国法人)を設立


<争点>

1 原告各テキストの著作権が原告に帰属するか

1.各テキストの関係性

被告Y1は、原告会社に入社する以前にメンタリングトレーニングプロ
グラムに関するテキストを作成していました。
そこで、原告会社入社後に作成された原告各テキストとの関係性、
および被告会社作成のテキストとの関係性が問題となりますが、
原告会社入社前に作成したテキストが一次的著作物として位置づけられ、
被告テキストと原告各テキストが二次的著作物という位置づけと
判断されています。
(44頁以下)


2.原告テキストの著作物性

原告各テキストの一部分について著作物性が肯定されています。
(64頁以下)


3.職務著作物性

被告が原告会社に在職中作成したテキストの職務著作物性について検討
がされています。
結論的に、原告テキストの著作権は、職務著作として原告に帰属すると
判断されています。
(68頁以下)


2 原告と被告のテキストの類似性

原告テキストと被告テキストは実質的に同一あるいは同一であるとして
類似性を肯定、依拠性も認定したうえで著作権侵害性を認めています。
(71頁以下)


3 著作者人格権侵害性

被告テキストは、原告の意に反して原告テキスト部分を変更しており
原告の同一性保持権を侵害していると判断しています。
(77頁以下)


以上から、著作権侵害ならびに著作者人格権侵害が肯定され、被告テキ
ストの印刷、出版等の差止、損害賠償請求が認められています。


4 損害論

114条3項に基づいて使用料相当額が損害額として算定されています。
また、人格権侵害部分についても損害額が認定されています。
(78頁以下)


5 不正競争防止法に基づく請求

原審が原告テキストの秘密管理性を否定した判断を控訴審も維持して
います。
(83頁)


■コメント

原審判決文同様、裁判所サイトから消された判例です。

私がチェックしたときは最高裁判所サイトにすでに無かったことから
控訴審判決文はたぶん数時間のうちに消されてしまったものと思われます。
裁判所判例Watchからは、ほぼ半日でウエブサイト上の表示が
抹消されてしまっています(2008年1月10日表示確認)。

裁判所判例Watchの自動収集プログラムのおかげで判決文のhtmlと
テキストベースの内容はかろうじて確認、保存ができましたが、
企業向け研修教材の企画制作において、著作物の著作権譲渡や
法人著作が認められると、その後の講師ら著作者の執筆活動が
大きく制限される可能性があるという、いまどきの著作権事案の
知財高裁の判断であり、今回もウエブ上での公表が控えられて
しまってきわめて残念です。


■参考ブログ記事

2007年02月03日記事
消された判例


■参考書籍

マーゴ マリー(原著)「メンタリングの奇跡」PHP研究所

written by ootsukahoumu at 12:32|この記事のURLTrackBack(0)

2008年01月15日

「家庭用マッサージ治療器形態模倣」事件〜不正競争防止法 不正競争行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「家庭用マッサージ治療器形態模倣」事件

東京地裁平成19.12.26平成18(ワ)27454不正競争行為差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官     大竹優子
裁判官     宮崎雅子


■事案

類似する形態の家庭用マッサージ治療器(針付きバイブレーター)を
巡って不正競争行為性が争われた事案

原告:医療機器製造販売会社
被告:医療機器販売会社ら


■結論

請求一部認容


■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号、5条1項但書

1 商品等表示性
2 類似性
3 混同のおそれ
4 差止めの可否
5 故意過失
6 損害論


■判決内容

<争点>


1 商品等表示性

原告製品の本体の形態の特徴について、構成態様を検討の上、周知性も
あったと認定。ありふれた形態であるとの被告の主張も退けて結論的に
商品等表示性を肯定しています。
(29頁以下)


2 類似性

原告製品の本体と被告製品の本体を対比した上、類似性を肯定しています。
(33頁以下)


3 混同のおそれ

製品本体の類似性とともに混同を増大させる要因として製品を黒アタッシュ
ケースに格納する方法(パッケージ)や販売方法、販売場所(体験会開催)の
同一性がありました。
製品が20万円以上する高額商品であり、消費者はよく吟味するであろうことが
混同を減少させる要因として勘案されていますが、結論としては混同を生じる
おそれがあると判断されています。
(35頁以下)


4 差止めの可否

被告らに対する被告製品の製造、販売、販売のための展示の差止め、部品の
廃棄などが認められています。
(39頁以下)


5 故意過失

被告らに原告の営業上の利益の侵害につき、故意または重過失が認められて
います。
(40頁以下)


6 損害論

被告らの新たな販売網拡大(訪問販売など)による被告製品の販売という点を
とらえて、被告らが販売した数量のうち、7割については、
「被侵害者が販売することができないとする事情」(5条1項但書)にあたるとして、
損害額から控除しています。
(43頁以下)

5条1項但書の「事情」について、小野昌延編「新注解不正競争防止法新版
(下)(2007)936頁以下参照。


■コメント

被告らは、被告製品の開発・製造にあたって中国のメーカーに部品設計を
委託しましたが、その際、原告製品を交付し中国メーカーはデジタイジング
による複写または電鋳による転写を行い、被告製品製造用の金型を作成して
いました。

被告製品本体の形態は原告製品本体の形態のコピーであったわけですが、
製品部分品や金型の廃棄などはともかくとして、損害論では損害額が低く
抑えられてしまっています。




■参考サイト

シンアツシン 専門店 『シンアツシン・ショップ』

楽らく針



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2008年01月13日

「ウイルスソフト回収誓約書」事件〜その他 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「ウイルスソフト回収誓約書」事件

東京地裁平成19.12.21平成19(ワ)16458損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官     大竹優子
裁判官     宮崎雅子



■事案

合意文書の規定を削除線で削除した行為の解釈を巡って争われた事案


原告:ソフトウエア製造販売会社
被告:ソフトウエア製造販売会社


■結論

請求棄却


■争点

1 回収約束の有無


■判決内容

<経緯>

H17.07    原告が「ウイルスセキュリティZERO」を発売
H18.05.15  原告が「ウイルスセキュリティZERO、ゼロ」で商標出願
H19.02.28  拒絶査定
H19.03.02  被告が「ウイルスキラーZERO(ゼロ)」を発売
H19.03.23  被告保有はがき作成ソフト「筆王」の著作権及び商標権を
         原告に売却
H19.03.28  原告が不服審査請求
同日      原告被告代取が会食したうえで本件誓約書を作成


「ウイルスセキュリティZERO」
開発:K7 Computing Private Ltd
著作権・販売:原告

「ウイルスキラーゼロ」
開発:Rising technology Corp(中国/瑞星)
販売:被告


<争点>

1 回収約束の有無

原告被告は被告が発売しているアンチウイルスソフトの名称の一部
を使用しないことに合意し、「誓約書」(被告が差し出す形式)の
体裁で文書を作成していました。

(合意内容)
・被告アンチウイルスソフトについて、ローマ字表記「ZERO」をしない
・「ZERO」を使用した被告商品の回収指示期限を「4月末日」とする


なお、回収義務を定める規定に2本の斜め線で大きな×が付されていて、
2本の斜め線上には、被告代表取締役の署名がありました。

原告は、「ZERO」標章の使用の取り止め(新たな出荷の中止)だけで
なく、「ZERO」が付された製品の回収についても合意が成立していると
主張しました。

この点、原告は、2本の斜め線の上に被告が署名をしたのをとらえて、
いったん記載した2本の削除線を削除した』(4頁)としています。

しかし、裁判所は、

ビジネス上の合意の解釈に当たっては,そこで取り決められた事項が大きな経済的影響を有し,さらに,合意事項を明確に書面化しておくことが可能であり,また,取引の実務においても重要事項は書面で明確に規定されていることが多いものであるから,合意内容の裁判上の認定においても,書面の有無及び規定内容が重視される。
(イ) 本件では,回収義務を明示した本件誓約書(甲4)の第2項が2本の斜め線で削除されているから(前提事実(3)イ),本件誓約書からは,回収義務は定められなかったと解釈する方が自然である。
(ウ) 原告は,Aが2本の斜め線上に「A」の署名をしたことをもって,2本の削除線を削除した旨主張するが,そのように解することは到底できない。

(6頁)

として、原告の主張を一蹴しています。


■コメント

原告の11期有価証券報告書と12期中半期報告書を見ると、
「ウイルスセキュリティZERO」に営業資源を集中させていて、
このソフトが売上はむろん取扱ソフトの平均販売単価を押し上げる
といった貢献をしたヒット商品であることがわかります。

原告は、「コモディティ化戦略」「製品ブランド管理の重視」といった
経営方針のもとで、「ZERO」ブランド保護への焦りでもあったので
しょうか、あるいは、はがき作成ソフト「筆王」を8億円で被告から
購入する側として強い立場に立つと思ったのか、話合いで商品名の
使い方に折り合いを付けようとしたのは良かったのですが、
どうしたわけか、原告の役員らは雑な文書を作ってしまいました。

判決文からは背景事情がよくわかりませんが、民事40部の市川コート
をして争点の判断部分は数行の判示(判決文全体でもわずか7ページ)
ですから、「なんだかなあ」という訴訟です。


■関連サイト

ソースネクスト IR情報 IRファイリング

ソースネクスト・スタイル・セキュリティ

ウイルスキラーゼロ



cf.ソースネクスト対日本IBM事件(ホームページビルダー11訴訟)について

平成19年12月25日付IR情報PDF
訴訟の経過に関するお知らせ


written by ootsukahoumu at 14:40|この記事のURLTrackBack(0)

2008年01月11日

「プラスチックシート形成刃営業誹謗」事件〜不正競争防止法 不正競争行為差止請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「プラスチックシート形成刃営業誹謗」事件

東京地裁平成19.12.20平成18(ワ)13013不正競争行為差止請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官     中島基至
裁判官     古庄研


■事案

被告による原告の取引先に対する特許権侵害警告書通知行為の
営業誹謗行為性(不正競争防止法2条1項14号)が争われた事案


原告:プラスチックシート折曲部用形成刃製造販売会社
被告:プラスチックシート製造販売会社代表取締役(特許権者)


■結論

請求棄却


■争点

条文 不正競争防止法2条1項14号

1 原告と被告は競争関係にあるか
2 告知事実の内容
3 告知事実の虚偽性


■判決内容


<争点>

1 原告と被告は競争関係にあるか


原告の業務がもっぱら形成刃の製造販売であるのに対して、被告を
代表取締役とする会社はもっぱらシートを製造販売するものでした。

もっとも、シートが形成刃を用いて製造されるものでシートと
形成刃は裏腹の関係にある製品でした。

原告の形成刃を使用して製造されたシートの製造販売業者の信用が
毀損されれば形成刃に係る原告の信用が毀損されることになるとして、
結論として、原告被告の競争関係を認めています。
(46頁)


2 告知事実の内容

特許権侵害事実についての告知行為でしたが、被告が本件シートの
製造販売行為のみならず本件形成刃についても告知内容としていたと
いえるかどうかが争点となりましたが、

この点、「本件シートを製造販売若しくは使用し又は本件形成刃を使用
する行為が本件特許権を侵害するというものである」と判断されています。
(46頁以下)


3 告知事実の虚偽性

結論的には、
本件シート及び本件形成刃は,いずれも,本件特許発明の技術的範囲に属するものと認められ,かつ,本件特許発明には無効理由がないから,被告が告知した事実は虚偽であるとは認められない。

として、原告のプラスチックシート及びプラスチック折曲部用形成刃の
製造販売使用行為が被告の特許権を侵害するという事実の虚偽性が否定
されています。
(48頁以下)

警告書通知事実が虚偽事実の告知とならない以上、不正競争防止法
2条1項14号の不正競争行為性は成立しないこととなりました。


■コメント

原告の取引先5社への警告書通知行為の営業誹謗行為性が
争われた事案でした。



written by ootsukahoumu at 11:34|この記事のURLTrackBack(0)

2008年01月08日

「汎用スタッキングチェア意匠権侵害」事件〜不正競争防止法 意匠権に基づく差し止め請求権不存在確認請求事件判決等(下級裁判所判例集)〜

裁判所HP 下級裁判所判例集より  

「汎用スタッキングチェア意匠権侵害」事件

名古屋地裁平成19.8.30平成18(ワ)2709意匠権に基づく差し止め請求権不存在確認請求,同反訴請求PDF

名古屋地方裁判所民事第9部
裁判長裁判官 中村直文
裁判官     前田郁勝
裁判官     片山博仁


■事案

スタッキング(積み重ね)可能なパイプ椅子の製造販売行為が意匠権を
侵害し、また不正競争防止法2条1項1号等の不正競争行為に当たるか
どうかが争われた事案

原告(反訴被告):椅子、机製造販売会社
被告(反訴原告):椅子、机製造販売会社

本訴:被告の警告書通知行為に基づく損害賠償等請求(2条1項14号)
反訴:原告の意匠権侵害行為に基づく差止等請求(2条1項1号等)


■結論

請求棄却


■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号、2号、3号、14号、民法709条

1 意匠権侵害性
2 不正競争防止法2条1項1号、2号、3号該当性
3 不正競争防止法2条1項14号該当性
4 民法709条該当性


■判決内容

<経緯>

H15.10〜  被告は被告登録意匠に基づく製品を製造販売
          2003年度グッドデザイン賞受賞
          2003年東京国際家具見本市銀賞受賞
H16.01〜   原告が原告製品を製造販売
H16.01.23  被告意匠登録(1199425号、1199085号)
H16.01.23  被告が原告の取引先に対して警告書を通知(本件書面1)
H16.06.09  被告が原告の取引先に対して再度警告書通知(本件書面2)


<争点>

1 意匠権侵害性

被告登録意匠と原告製品の各構成態様、要部、類否判断という流れで
判断しています。
(22頁以下)

結論的には、
本件登録意匠1・2と原告製品の差異点がいす全体に与える美感の違いは,背もたれの上下辺が上下対称な円弧状に湾曲している等の両意匠の共通点が美感に与える効果を優に超えるものであり,意匠全体として需要者に別異の美感を与えるものと認められるから,原告製品は,本件登録意匠1・2と類似するものとはいえない。

意匠権侵害性は認められませんでした。


2 不正競争防止法2条1項1号、2号、3号該当性

被告製品と原告製品の構成の比較,両製品の意匠の類否については,争点(1)アで検討した本件登録意匠1・2と原告製品の意匠の類否についての判断がそのまま当てはまるから,被告製品の形態と原告製品の形態とは類似するものではないというべきである。』(27頁)

という点から、原告製品と被告製品は類似するものでもなくまた、
模倣したものでもないとして2条1項1号ないし3号の不正競争行為性
を否定しました。


3 不正競争防止法2条1項14号該当性

原告の取引先に対して、被告が行った警告行為(書面2通)の営業誹謗
行為性について、いずれも不正競争行為性を否定しています。
(28頁以下)

原告商品と被告商品は類似しないことから、警告内容は虚偽事実となる
わけですが、原告の取引先は原告の製造に係る原告製品を自社製品として
販売するいわゆるOEM供給取引であったことから、
意匠権を侵害する旨の警告書を発することは,くろがね工作所に対する権利行使の前提として行う交渉行為として社会通念上許容されると解することができる。
(32頁)
として、警告書の内容も勘案した上で不正競争行為性を否定しています。


4 民法709条該当性

被告による警告書送付行為の一般不法行為性も否定されています。
(33頁)


■コメント

14号の営業誹謗行為性については、いわゆる違法性阻却論による処理と
なっています。


■参考文献

小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」(上)(2007)718頁
小松一雄編著「不正競業訴訟の実務」(2005)384頁以下


■参考サイト

2003年度グッドデザイン賞作品
Good Design Award

原告会社製品一覧
商品データー


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「間取図作成ソフト」事件〜著作権 編集著作権侵害差止等請求事件判決(下級裁判所判例集)〜

裁判所HP 下級裁判所判例集より

「間取図作成ソフト」事件

名古屋地裁平成19.6.28平成18(ワ)3944編集著作権侵害差止等請求事件PDF

名古屋地方裁判所民事第9部
裁判長裁判官 中村直文
裁判官     前田郁勝
裁判官     片山博仁


■事案

間取図作成ソフトが間取図パーツの選択について創作性を有する
編集著作物に当たらないとされた事例(判示事項の要旨より)


原告:ソフト開発会社
被告:建築技術コンサルタント会社
    不動産取引業組合


■結論

請求棄却


■争点

条文 著作権法第12条1項、2条1項1号

1 原告ソフトはパーツの選択に創作性を有する編集著作物か


■判決内容

<経緯>

     原告は訴外会社から原告ソフトの著作権を譲受け販売
H16   被告コンサル会社が被告ソフトを作成
     被告コンサル会社が被告組合に有償で提供
H17〜  被告ソフトバージョンアップ

同種の間取図作成ソフトは、原告ソフト、被告ソフトのほかに
8社が販売ないし頒布している。


<争点>

1 原告ソフトはパーツの選択に創作性を有する編集著作物か


原告ソフト及び被告ソフトは,いずれも,間取図を簡便に作図することを目的とした間取図作成ソフトで,居室,柱,トイレ等の各種類に応じ,サイズ・形状の異なる複数の間取りパーツ(単に「パーツ」という。)が準備されており,ユーザーは,このパーツの中から必要なものを選び出し,これを図面に組み合わせることによって,間取図を作成するもの
(2頁)でした。

原告は、原告ソフトと被告ソフト以外の他社ソフトを比較すると
そのパーツの共通率は全体で5割前後にすぎないが、原告ソフトと
被告ソフトでは、その共通率が90%を優に超える(6頁)として、
パーツの選択に創作性があることを前提として、複製による編集
著作権侵害性を主張しました。


原告ソフトの編集著作物性について裁判所は、

選択の対象となるパーツは,種類,サイズ,形状の3つの要素しか持たず,それぞれが個性・特徴のないものであって,しかもその数はかなり限られている上,そうしたパーツの候補の中から間取図作成ソフトにあらかじめ用意しておくべきものを選択するについては,間取図を作成する際の便宜という甚だ実用的な観点からなされるのが通常であることを考えると,そうしたパーツの選択行為とその成果は,編集者の創作的活動という要素が希薄であり,その成果についても個別の個性を有するものとしての評価になじみにくい性質のものというべきである。
(13頁)

として、原告ソフトは創作性を有する編集著作物に当たるとは
いえない、と判断しています。


なお、住宅地図の編集著作物性について、その性質上地図一般に
比してさらに制限されたものになると判示した裁判例に関し
後掲判例参照。


■コメント

下級裁判所判例集への掲載で半年遅れでの裁判所サイトへの
アップとなっています。

本事案で問題となった間取図作成ソフトは、
設計について知識のない者が,プラモデルのように既成の部品を組み合わせる要領で,CADソフトのような設計ソフトを用いるよりも簡便に,一般的な住宅の間取図を作成することを目的としたもの
(4頁)でした。

あらかじめ、和室、洋室、フローリングなどの種類ごとに
数種類のパーツが用意されていて、ユーザーはその中から
マウス操作で間取り配置を完成させていくというものです。

原告ソフトのパーツは、総数で150点ほど、和室や洋室など
種類ごとに用意されたパーツは3点〜13点程度のものでした。

裁判所の認定事実によると、原告ソフトの独自パーツは全体
の20%にとどまっていて、独自パーツについても他社パーツ
との違いを印象付けるような特殊な間取りというものでも
なかったということですから、そうした点もふまえた上で
原告はパーツ自体の著作権侵害性を争点とはせずに編集著作
物性の点で争ったのでしょうが、間取図作成ソフトの機能や
実用面といった性質から、パーツの選択に個性が表現されて
いるとまではいえないとしてその主張は容れられませんでした。


■参考判例

富岡市・高岡市住宅地図事件
富山地裁昭和53年9月22日昭46年(ワ)33号、71号著作権侵害排除等請求事件判決


■参考文献

田村善之「著作権法概説 第二版」(2001)23頁以下、80頁以下
中山信弘「著作権法」(2007)114頁以下
最新著作権関係判例集2-1」(1980)560頁以下
清水幸雄「住宅地図」『著作権判例百選』(1987)22頁以下


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2007年12月31日

「人材派遣業営業秘密」事件(控訴審)〜不正競争防止法 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「人材派遣業営業秘密」事件(控訴審)

大阪高裁平成19.12.20平成19(ネ)733損害賠償請求控訴事件PDF

大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 若林諒
裁判官     小野洋一
裁判官     冨田一彦


★原審
大阪地裁平成19年02月01日平成17(ワ)4418損害賠償請求事件PDF


■事案

会社の顧客情報を再雇用先の会社に開示したとして
営業秘密の開示行為性などが争われた事案の控訴審

原告(控訴人) :人材派遣会社
被告(被控訴人):元従業員ら
         再雇用先会社


■結論

原判決一部変更


■争点

条文 不正競争防止法2条1項7号、8号、民法709条

1 本件情報の秘密管理性
2 不法行為性


■判決内容


<争点>

1 本件情報の秘密管理性

原審同様、顧客情報、派遣スタッフ情報の管理の不十分性、秘密保持
誓約書の内容の抽象性などから情報の秘密管理性が否定されています。
(30頁以下)


2 不法行為性

シフト配置漏れ、スタッフの一斉退職などによってシフト配置が混乱し、
原告において派遣先との人材派遣契約打ち切りという損害が生じた
として被告側の不法行為責任を控訴審では一転して認めています。
(34頁以下)

退職した従業員3名については、

被控訴人ら4名が派遣会社の変更を実現したことについては,自ら故意又は重過失により作り出した平成16年12月のシフト漏れ,一斉に退職したことによる平成17年1月のシフト配置の混乱に乗じたものであり,信義則に反する態様であって,その際,被控訴人ら4名が本件情報から適宜の態様で顧客情報,スタッフ情報の少なくとも一部を得,これを利用して派遣スタッフの勧誘を行い,派遣先に関する営業活動を行ったということができ,これにより,控訴人に登録する派遣スタッフの被控訴人会社への登録がなければ取得し得なかった派遣先を被控訴人会社のものとし得たのであり,控訴人はこれに伴い,同派遣先を失うという損害が生じたということができ,被控訴人3名につき不法行為が成立する。

転職先会社の責任については、

そして,被控訴人会社は,平成16年12月1日付けで従前なかった人材派遣部門を設置したところ,同部門に所属する営業社員は被控訴人C,同E及びFのみで,平成17年1月1日,被控訴人Dがこれに加わったのみであり,被控訴人会社は,同人ら4名の認識,決定をそのまま受容し,これをそのまま同社の認識,決定としたものと評価し得るのであって,同人らと共同して上記不法行為に及んだということができる。
(42頁以下)

と判断しています。

そのうえで、損害回復までの期間を3ヶ月と見越して217万円余り
の逸失利益と弁護士費用50万円を損害額として認定しています。
(43頁以下)


■コメント

原審同様、顧客情報の秘密管理性が否定され不正競争防止法上の
不正競争行為性は否定されています。ざっと見ても情報管理の
「不十分」「不徹底」「杜撰」という趣旨の判断が目につきます。

もっとも、一般不法行為については一転、被告らの営業活動など
一連の行為が信義則に反する態様下でのものであるとして
その責任が肯定されています。

被告らの行為の不法行為性を否定した原審の判断(原審36頁以下)
と比較すると、控訴審では被告らがフォロー業務を行ったことも
重視されず、退職前後の派遣シフト配置の混乱状況が重く受け止
められた結果となっています。


■過去のブログ記事

2007年02月12日記事
「人材派遣業営業秘密」事件


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2007年12月30日

「生ゴミ処理機営業誹謗」事件〜不正競争防止法 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「生ゴミ処理機営業誹謗」事件

東京地裁平成19.12.26平成18(ワ)18283損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清水節
裁判官     山田真紀
裁判官     国分隆文


■事案

生ゴミ処理機販売代理店契約終了に伴い競業禁止合意の効力も
終了したかどうかに関連して、被告によるホームページ表示行為
の営業誹謗行為性が争われた事案


原告:生ゴミ処理機製造販売会社
被告:生ゴミ処理機製造販売会社


■結論

請求一部認容


■争点

条文 不正競争防止法2条1項14号

1 虚偽事実告知性


■判決内容

<経緯>

H05.08  被告製品の販売代理店契約を原告代表者と被告間で締結、
       あわせて競業禁止誓約書を締結
H05.08.25 原告会社設立により販売代理店契約、誓約書上の競業禁止
        義務を原告会社が承継
H13.06  原告パンフレット作成
H14.04  販売代理店契約終了
H14.09  原告開発の製品の製造、販売
H16.06  被告が原告製品に関する検分報告書を作成
H18〜H19.07.10
       被告が自社ホームページで原告が偽造品を製造販売している
       旨を掲載



<争点>

1 虚偽事実告知性

被告ホームページで掲載された内容(原告製品が偽造品である旨)の
虚偽事実性が問題となりましたが、結論的には虚偽であると判断され
ています。
(13頁以下)

原告被告間の販売代理店契約が終了したのに伴い、誓約書上の合意も
終了し、その競業禁止義務も効力を失うことから原告による契約終了
後の原告製品の製造販売行為は契約義務違反にはあたらないと判断さ
れています。

原告の行為が契約義務違反とはならないことから、原告製品が偽造品
であるとの事実は虚偽であり、その旨の被告ホームページでの掲載は
虚偽事実の流布にあたるとされました。

なお、検分報告書については、告知または流布の事実が認められていま
せん(16頁以下)。


ホームページでの掲載について、すでに表示が削除されていることから
差止の必要性が認められず、掲載による原告の信用の毀損について
100万円の損害額が認定されるにとどまっています
(訴訟費用は、29/30を原告負担)。


■コメント

「この会社は弊社製品,生ゴミ処理装置,ゴミサーの偽造品を製造販売
しています,ご注意をして頂きたい事を通知致します。」
「この会社は弊社製品,生ゴミ処理機ゴミサーを偽造し販売しています」


という表示を被告は自社サイトに掲載していましたが、被告主張の
契約の解釈論が容れられず虚偽の事実の流布行為となってしまいました。

もともと、本件誓約書の競業禁止の内容は抽象的で、期間の限定もない
ものだった(10頁以下にその内容が掲載されています)ことから契約
終了後も競業禁止の効力を持ちうると判断するのは難しかったかも
しれません。


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「スーパーフコイダン」事件〜不正競争防止法 損害賠償等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「スーパーフコイダン」事件

知財高裁平成19.12.25平成19(ネ)10065損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官     今井弘晃
裁判官     田中孝一


★原審
東京地裁平成19.7.26平成18(ワ)28323損害賠償等請求事件PDF


■事案

モズク加工食品に付された「スーパーフコイダン」標章が
商標権侵害にあたるかどうかに関連して不正競争行為性が
新たに争われた事案


原告(控訴人) :健康食品製造販売会社
被告(被控訴人):食品販売会社


原告商標 
登録番号4862117号
「自然健康館/スーパーフコイダン」(二段併記)
29、32類

被告標章
「SUPER」「FUCOIDAN」「スーパーフコイダン」の
文字と図形の組み合わせたもの


■結論

控訴棄却


■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号

1 商標権侵害性
2 不正競争行為性


■判決内容


<争点>

1 商標権侵害性

(1)要部性

原告は、「自然健康館 スーパーフコイダン」(二段併記)全体、
「自然健康館」、「スーパーフコイダン」の3部分それぞれが
独立して自他商品識別力があり、要部となると主張しました。

この点について、控訴審は「スーパーフコイダン」という用語が、
高品質の「フコイダン」であること(高品質な海草類に含有され
ている硫酸化多糖類が含有されていること)の記述にすぎず、
それ自体では出所識別力を有しない、「自然健康館スーパーフコ
イダン」全体が要部であるとする原審の判断を維持しています。
(18頁以下)

(2)類否

結論としては、原告商標の要部が「自然健康館スーパーフコイダン」
であり、被告標章は「SUPER FUCOIDAN」であって称呼、観念、外観
いずれの点においても誤認混同が生じないとした原審判断を維持して
います。


2 不正競争行為性

控訴審における新たな請求として、原告は不正競争防止法に基づく
差止および損害賠償を主張しました。

結論としては、容れられていません。
商標権侵害性が否定されたのと同様、「スーパーフコイダン」それ
自体では出所識別力を有せず商品等表示性を具備しないと判断され
ています。
(28頁以下)


■コメント

商標権侵害性が否定されていて不正競争行為性を認めるのも難しい
状況でした。



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2007年12月21日

「カーテンランナー形態模倣」事件〜不正競争防止法 意匠権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「カーテンランナー形態模倣」事件

大阪地裁平成19.12.11平成18(ワ)14144意匠権侵害差止等請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官     高松宏之
裁判官     西理香


■事案

カーテンランナー(カーテンレールのランナー部分)の形態の類似性が
争われた事案


原告:カーテンレール製造販売会社
被告:インテリアファブリック開発輸入販売会社


原告登録意匠 1218001号(カーテンランナー)


■結論

請求棄却


■争点

条文 意匠法37条、不正競争防止法2条1項1号、3号

1 登録意匠との類否(意匠権侵害性)
2 不正競争行為性(技術的形態と商品等表示の調整)


■判決内容


<争点>

1 登録意匠との類否(意匠権侵害性)

原告登録意匠と被告製品意匠の類否について、構成態様を認定のうえ
(22頁以下)、要部を検討。
本件登録意匠のうちのランナー部及び支軸部の構成は、要部とはいえず
要部はランナー部とフック部とを組合わせるうえでの具体的構成の点に
あると判断しています。
(24頁以下)

そのうえで、登録意匠と被告意匠の共通点と相違点を検討。
結論として、共通点はありふれた構成で、相違点は本件登録意匠の特徴
点に関するもので、全体として相違点が共通点を凌駕し、被告意匠は本
件登録意匠とは美感を異にすると判断しています。
(25頁以下)

原告の意匠権に基づく請求は認められませんでした。


2 不正競争行為性(技術的形態と商品等表示の調整)


(1)商品等表示性(1号該当性)

商品形態自体の「商品等表示」性要件具備の可能性を前提として原告商品
の形態の「商品等表示」性を検討。
結論的には、「商品等表示」に該当しないと判断しています。


 1.基本的形態と商品等表示性

ランナー部とフック部の組み合わせは従来のカーテンランナーにはない
新規な形態的特徴を有しているとされましたが、

ランナー部とフック部とを組み合わせた基本的形態とすることは,カーテンランナーが,カーテンをカーテンレールにS字状フックを用いることなくワンタッチで装着できるという機能や効用を有するものとするために不可避的な形態であるといえる。そして,このように同種の商品の機能や効用を発揮するために不可避の形態をもって不正競争防止法2条1項1号の周知な商品表示とする場合には,同号が保護の目的とする出所表示機能の保護を超えて,当該種類の商品の機能や効用を独占することを認めることとなるから,そのような同種の商品の機能や効用を発揮するために不可避の形態については,同号にいう「商品等表示」に該当しないと解するべきである。
(32頁)

として、ランナー部とフック部の組み合わせといった基本的形態の点に
ついては「商品等表示」性が否定されています。


 2.具体的形態と商品等表示性

フック部の形態についてなお独自の形態的特徴から「商品等表示」性が
認められる余地を肯定していますが、原告商品はその販売・宣伝広告の
状況などから商品出所性を獲得しておらず、結論的には「商品等表示」性
が具体的形態の点においても否定されています。
(32頁以下)


(2)周知性

周知性についても認められていません。
(33頁以下)


(3)類似性

「なお念のため」として、原告商品の形態が周知な商品等表示性を具備
していると仮定しての判断が行われています。
(34頁以下)

技術的形態であって不可避の形態部分以外の部分での類否が判断されて
いて、結論的には原告各商品と被告各商品の類似性が否定されています。


(4)模倣性(3号該当性)

原告商品と被告商品とは実質的同一性がないとして、3号該当性も否定
されています。
(35頁以下)


■コメント

原告登録意匠(1218001号)をみてみると、フック部分に登山用具で
よく目にするカラビナ風の器具が利用されていて、カーテン取付の際
にS字状の金属フック金具(Sカン)を使わないで済む点で作業場など
では便利そうな商品であることがわかります。


■参考文献

小松一雄編著「不正競業訴訟の実務」(2005)194頁以下


■関連サイト

原告商品「ワンタッチランナー」
岡田装飾金物株式会社|商品紹介|大型機能レール・間仕切ポール



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2007年12月20日

「北朝鮮映画」事件(対フジテレビ)〜著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「北朝鮮映画」事件(対フジテレビ)

東京地裁平成19.12.14平成18(ワ)6062著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官     平田直人
裁判官     瀬田浩久


対日本テレビ事件
東京地裁平成19.12.14平成18(ワ)5640著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官     平田直人
裁判官     瀬田浩久


■事案

我が国が国家として承認していない北朝鮮国民の著作物の
著作権が我が国の著作権法上でも保護されるかどうかが
争われた事案


原告:北朝鮮行政機関
    映像企画制作仲介会社
被告:フジテレビ


■結論

請求棄却


■争点

条文 著作権法第6条3号

1 北朝鮮行政機関の当事者能力の有無
2 北朝鮮著作物の我が国における著作権法上の保護の可否


■判決内容


<争点>

1 北朝鮮行政機関の当事者能力の有無

原告の朝鮮映画輸出入社は北朝鮮文化省傘下の行政機関でした。
こうした外国の行政機関の訴訟における当事者能力性について
その準拠法がまず問題となっています。

裁判所は、法性決定として当事者能力は手続法上の概念であって、
手続については法廷地法によることとなり、法廷地であるわが国
の民事訴訟法が適用されることになる。

そのうえで行政機関の権利能力の準拠法に関しては、法適用通
則法(法の適用に関する通則法)等に直接の定めがないので条
理により当該行政機関と最も密接な関係がある国である当該行
政機関が設立された国の法律(本国法)によるべきである。

そこで北朝鮮の法律によることとなるが、北朝鮮法上行政機関
についても権利能力が付与されていることから我が国民事訴訟
法28条により原告の朝鮮映画輸出入社も当事者能力を有するこ
とになると判断しています。
(13頁以下)


2 北朝鮮著作物の我が国における著作権法上の保護の可否

1.準拠法について

(1)差止請求

差止請求の準拠法については、著作物の著作権に基づく請求で
あり渉外的要素を含むとの法性決定のうえで、

ベルヌ条約第5条(2)
・・・保護の範囲及び著作者の権利を保全するため著作者に
保障される救済の方法は、この条約の規定によるほか、専ら、
保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる。


とあることから、わが国の著作権法が適用されると判断して
います。(16頁)


(2)損害賠償請求

被侵害利益が著作物の著作権ないしその利用許諾権であり渉外的
要素を含むとしたうえで不法行為との法性決定のうえで、法例11条
(法適用通則法附則3条4項)により民法709条が適用されると判断
しています。
(16頁以下)


2.著作権法6条3号の著作物にあたるか

我が国が国家として承認していない北朝鮮がベルヌ条約に加入
(H15.01.28)したことにより、我が国と北朝鮮との間でベルヌ
条約上の権利義務関係が生じるか否かが争点となりました。

裁判所は、

現在の国際法秩序の下では,国は,国家として承認されることにより,承認をした国家との関係において,国際法上の主体である国家,すなわち国際法上の権利義務が直接帰属する国家と認められる。逆に,国家として承認されていない国は,国際法上一定の権利を有することは否定されないものの,承認をしない国家との間においては,国際法上の主体である国家間の権利義務関係は認められないものと解される。

としたうえで、

我が国は,北朝鮮を国家として承認しておらず,我が国と北朝鮮との間に国際法上の主体である国家間の権利義務関係が存在することを認めていない。したがって,北朝鮮が国家間の権利義務を定める多数国間条約に加入したとしても,我が国と北朝鮮との間に当該条約に基づく権利義務関係は基本的に生じないから,多数国間条約であるベルヌ条約についても,同様に解することになる。

ただ、

もっとも,未承認国であっても,国際社会において実体として存在していることは否定されないから,国際法上の主体である国家間の権利義務関係が認められないからといって,未承認国との関係において条約上の条項が一切適用されないと解することが妥当でない場合があり得る。
(25頁以下)

として、ジェノサイド条約のような普遍的な国際公益の実現を目的
とした条約もあり、こうした普遍的な価値は未承認かどうかという
問題から離れて保護の対象となりうるが、著作権については、

著作権の保護は,国際社会において,擁護されるべき重要な価値を有しており,我が国も,可能な限り著作権を保護すべきであるということはできるものの,ベルヌ条約の解釈上,国際社会全体において,国家の枠組みを超えた普遍的に尊重される価値を有するものとして位置付けることは困難であるものというほかない。

としています。

結論として我が国と北朝鮮との間でベルヌ条約上の権利義務関係が
生じず、北朝鮮著作物は我が国著作権法上保護されないと判断しました。


■コメント

日テレやフジテレビがニュース番組のなかで北朝鮮映画の一部を
番組で利用したことについて、北朝鮮側からクレームがついたわ
けですが、裁判所はわが国の著作権法上北朝鮮の著作物が当然に
は保護されないとの判断を下しました。

北朝鮮外務省は、相互遵守が出来ないのであれば北朝鮮でも日本
の著作権を保護しないとの見解を表明しているので(22頁以下)、
北朝鮮経由での日本のコンテンツの海賊版などの広がりが今後
どう生じるか注意が必要です。



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2007年12月18日

「『シェーン』著作権保護期間満了」事件(上告審)〜著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(最高裁判所判例集)〜

裁判所HP 最高裁判所判例集より

「『シェーン』著作権保護期間満了」事件(上告審)

最高裁判所第三小法廷平成19.12.18平成19(受)1105著作権侵害差止等請求事件PDF


★原審
知財高裁平成19.3.29平成18(ネ)10078著作権侵害差止等請求控訴事件PDF



■事案

パブリックドメインとなった映画を格安DVDとして製造・販売していた
業者に対して、映画会社が、著作権保護期間はいまだ満了していない
として著作権侵害などを理由に損害賠償、差止を請求した事案の上告審


原告(上告人) :映画会社ら
被告(被上告人):格安DVD販売会社ら


■結論

上告棄却


■裁判要旨

「シェーン」を含め,昭和28年に公表された映画は,平成16年1月1日から施行された著作権法の一部を改正する法律(平成15年法律第85号)による保護期間の延長措置の対象とならず,その著作権は平成15年12月31日の終了をもって存続期間が満了した


■争点

条文 著作権法第54条1項、附則2条1項

1 附則経過規定は文言の一般的用法によっているか


■判決内容


<争点>

1 附則経過規定は文言の一般的用法によっているか

上告人らの『本件経過規定中の「この法律の施行の際現に」という文言は,当該法律の施行の直前の状態を指すものと解すべきであるのに,これを「この法律の施行の日において」と同義に理解し,本件改正後の著作権法54条1項の適用を否定した原審の判断には,本件経過規定の解釈適用を誤った法令違反がある』との主張に対し、第三小法廷は、


本件経過規定中の「・・・の際」という文言は,一定の時間的な広がりを含意させるために用いられることもあり,「・・・の際」という文言だけに着目すれば,「この法律の施行の際」という法文の文言が本件改正法の施行日である平成16年1月1日を指すものと断定することはできない。しかし,一般に,法令の経過規定において,「この法律の施行の際現に」という本件経過規定と同様の文言(以下「本件文言」という。)が用いられているのは,新法令の施行日においても継続することとなる旧法令下の事実状態又は法状態が想定される場合に,新法令の施行日において現に継続中の旧法令下の事実状態又は法状態を新法令がどのように取り扱うかを明らかにするためであるから,そのような本件文言の一般的な用いられ方(以下「本件文言の一般用法」という。)を前提とする限り,本件文言が新法令の施行の直前の状態を指すものと解することはできない。所論引用の立法例も,本件文言の一般用法によっているものと理解できるのであり,上告人らの主張を基礎付けるものとはいえない。
 したがって,本件文言の一般用法においては,「この法律の施行の際」とは,当該法律の施行日を指すものと解するほかなく,「・・・の際」という文言が一定の時間的な広がりを含意させるために用いられることがあるからといって,当該法律の施行の直前の時点を含むものと解することはできない。


 本件経過規定における本件文言についても,本件文言の一般用法と異なる用いられ方をしたものと解すべき理由はなく,「この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物」とあるのは,本件改正前の著作権法に基づく映画の著作物の保護期間が,本件改正法の施行日においても現に継続中である場合を指し,その場合は当該映画の著作物の保護期間については本件改正後の著作権法54条1項が適用されて原則として公表後70年を経過するまでとなることを明らかにしたのが本件経過規定であると解すべきである。そして,本件経過規定は,「この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物については,なお従前の例による」と定めているが,これは,本件改正法の施行日において既に保護期間の満了している映画の著作物については,本件改正前の著作権法の保護期間が適用され,本件改正後の著作権法の保護期間は適用されないことを念のため明記したものと解すべきであり,本件改正法の施行の直前に著作権の消滅する著作物について本件改正後の著作権法の保護期間が適用されないことは,この定めによっても明らかというべきである。

したがって,本件映画を含め,昭和28年に団体の著作名義をもって公表された独創性を有する映画の著作物は,本件改正による保護期間の延長措置の対象となるものではなく,その著作権は平成15年12月31日の終了をもって存続期間が満了し消滅したというべきである。
(4頁以下)

と判示しています。


■コメント

第三小法廷全員一致の判断です。

これで附則経過規定に関する解釈論にかかわる昭和28年問題については
一応の決着をみることになりました。


■過去のブログ記事

2007年03月30日記事
『シェーン』著作権保護期間満了事件〜著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜


■追記(07.12.19)

企業法務戦士の雑感
■[企業法務][知財]さらばシェーン。

池田信夫 blog
民主党は著作権政策を示せ


■追記(08.03.08)

2008年03月08日記事
「『モダンタイムス』格安DVD」事件(控訴審)〜著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

2006年07月12日記事
「ローマの休日」保護期間事件〜著作権 仮処分命令申立事件決定(知的財産裁判例集)〜


■参考文献

岡邦俊「1953年公表の映画の著作権保護期間は延長されたか-1 『ローマの休日』DVD事件」
    「1953年公表の映画の著作権保護期間は延長されたか-2 『シェーン』DVD事件」
    『最新判例62を読む 著作権の事件簿』(2007)214、219頁以下

作花文雄「「シェーン」事件最高裁判決の残した課題」
     『コピライト』(2008.2)562号40頁以下

   --------------------

■追記(08/6/14)

今村哲也「昭和28 年に団体の著作名義をもって公表された独創性を有する映画の著作物の著作権は平成15年12月31日の終了をもって存続期間が満了し消滅するとされた事例」LEX/DBインターネット TKC法律情報データベース速報判例解説
PDF

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2007年12月17日

「放電プラズマ焼結機設計図」事件(第2訴訟)〜著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「放電プラズマ焼結機設計図」事件(第2訴訟)

東京地裁平成19.12.12平成19(ワ)17959損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清水節
裁判官     佐野信
裁判官     国分隆文


■事案

原告作成の図面が被告によって破棄されたとして著作権侵害性が
争われた事案

原告:油圧制御装置、輸送装置設計製造会社
被告:石炭、採石、建機材事業会社


■結論

請求棄却


■争点

条文 民法709条

1 著作物の毀損行為と著作権侵害性


■判決内容


<争点>

1 著作物の毀損行為と著作権侵害性


裁判所は、

原告の本訴請求の当否について判断するに,本件において,原告が著作権侵害と主張する行為は,本件図面の毀棄行為である(原告は,本訴において,上記毀棄行為に関し,その他の法益の侵害を主張するものではない。)ところ,仮に本件図面に著作物性が認められたとしても,著作物が固定された有形物である本件図面の毀棄行為は,その著作物についての著作権を侵害することにはならないから,原告の主張はそれ自体失当である。
(3頁)

として、原告の主張を一蹴しています。

所有権と著作権の関係については、古くは顔真卿自書建中告身帖事件
(最判昭和59年1月20日)があって、両者の区別は判例上明かなところです。

もっとも、スイス著作権法第15条1項では

他に作品のない原著作物の所有者は、著作物の維持に関する著作者の正当な利益を認めなければならないときは、その著作物につき、著作者に対して予め取り戻しを申し出ることなく、それを破壊するすることはできない。その者は対価として材料分を超えるものを請求することはできない。
(著作権関係法令実務提要(2)3697の5頁)

とあるように、著作物の破壊からの保護規定を著作権法に置く法制もあり
ます。

わが国の著作権法にも所有権との調整規定はありますが(著作権法45条、
47条、47条の2)、いずれにせよ有体物の毀損行為が所有権侵害となった
としても、無体物である著作物の侵害とはならないところです。


■コメント

同日同一法廷で原告被告間の確定した先行訴訟に関して起された原告による
別訴損害賠償請求についても判決があって、そちらも棄却となっています。

東京地裁平成19年12月12日平成19(ワ)22834損害賠償請求事件PDF


■過去のブログ記事

2006年10月26日記事
「放電プラズマ焼結機設計図」事件〜特許権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)〜


■参考文献

盛岡一夫「著作権と所有権の関係」『村林楼貔萓幻典記念 判例著作権法』(2001)939頁以下


■追記(2008年1月29日)

別訴損害賠償請求判決PDFが2008年1月29日に裁判所サイトに
再アップされました。
平成19(ワ)22834

関連裁判(2008.02.25)
東京地裁平成20年02月22日平成19(ワ)23460損害賠償請求事件

■関連ブログ

法律使いになる方法
まだ終わらない放電焼結装置事件

   --------------------

■追記08.7.17

13件目の訴訟となります。

知財高裁平成20.7.16平成20(ネ)10034損害賠償請求控訴事件

   --------------------

■追記08.7.23

知財高裁平成20.7.23平成20(ネ)10040損害賠償請求控訴事件PDF

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2007年12月12日

「プリペイドカード代金決済システム営業秘密」事件〜不正競争防止法 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「プリペイドカード代金決済システム営業秘密」事件

東京地裁平成19.11.27平成17(ワ)23171損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官     関根澄子
裁判官     古庄研


■事案

プリペイドカードのカードレス発券事業に関し、相手方が有する秘密情報の
取扱いについて不正競争行為性が争われた事案

原告:カードレスシステム企画設計運営会社
被告:携帯電話等販売、代理店業務会社


■結論

請求棄却


■争点

条文 不正競争防止法2条1項4号、7号、14号、民法709条

1 不正競争防止法2条1項7号の成否
2 秘密保持契約違反の有無
3 黙示の合意に基づく守秘義務違反の有無
4 売買基本契約違反の有無
5 不正競争防止法2条1項4号の成否
6 情報詐取としての不法行為性
7 継続的契約関係破棄の不法行為性
8 不正競争防止法2条1項14号の成否
9 信用毀損としての不法行為性



■判決内容

<経緯>

H15.12.15 原告被告間で事業提携を検討
H16.02.16 原告と被告が秘密保持契約を締結
H16.03    原告と被告は提携事業のチラシを作成し配布、営業活動
H16.10    被告は別会社の同種システムの情報を入手
H16.11.01 原告社員が退職後、被告へ入社
H16.12.13 業務提携検討終了を確認のうえ秘密保持契約終了合意の覚書を
       締結
H16.12.15 原告被告は秘密情報一覧に捺印
H17.01.17 原告の特許出願に係る発明の技術的範囲について被告が鑑定
H17.02.15 原告と被告がPIN商品売買基本契約を締結
H17.04.28 被告がコンビニ会社に特許報告文書を手交
H17.07    被告は別会社とともにサービスを提供開始


<争点>

1 不正競争防止法2条1項7号の成否

原告は、サーバシステムの構成などの技術情報や商品別販売手数料率など
の情報の営業秘密の要件充足性などを主張しましたが、裁判所は

しかし,本件において,原告は,被告において,原告の本件営業秘密のうちどの情報を本件被告サービスのどの部分に使用したのか,具体的に特定した主張も立証もしていない。また,本件営業秘密が本件被告サービスの構築に有用であるとはいえるとしても,本件営業秘密を使用しなければ,本件被告サービスを構築することが不可能であることを示す証拠は見当たらない。
(54頁)

として、秘密の使用の点から7号の不正競争行為性を否定しています。


2 秘密保持契約違反の有無

上記1で営業秘密の使用が認められていないので、秘密保持契約違反性も
否定されています。
(55頁)


3 黙示の合意に基づく守秘義務違反の有無

秘密保持契約上の秘密情報に該当しない営業秘密について、秘密保持契約と
同様の守秘義務に服するという黙示の合意が成立しているとする原告の主張
は容れられていません。
(55頁以下)

とくに当事者間で秘密保持契約上の対象となる秘密を限定的に取扱っていた
経緯もあって黙示の合意というものを認めるのは難しい状況となっています。


4 売買基本契約違反の有無

PIN(Personal Identification Number プリペイド式で提供されるサービス
の利用権を当該サービスの提供事業者から購入した者を識別する番号)の
売買契約上の秘密保持義務違反性も原告は主張しましたが、秘密の特定性、
使用性の立証が尽くされておらず容れられていません。
(56頁)


5 不正競争防止法2条1項4号の成否

被告が架空の事業提携を持ち出すなどして原告から営業秘密を不正に取得し
これを使用するといった目的が被告にあたっとは認められていません。
(56頁以下)


6 情報詐取としての不法行為性

営業秘密の不正使用の目的が無く、また使用したことを認めるに足りる証拠
もないと判断されています。
(57頁以下)


7 継続的契約関係破棄の不法行為性

10ヶ月に及ぶ提携交渉を経たうえで秘密保持契約を合意解除させて提携交渉
を打ち切った被告の行為は、継続的な契約関係の不当な破棄であるとして
不法行為にあたると原告は主張しました。
しかし、裁判所は、秘密保持契約書に事業提携を行わなかった場合の競業避
止義務規定がないことから、競業の意図が被告にあったとしても提携交渉打
ち切りが違法であるということはできないと判断しています。
(58頁以下)


8 不正競争防止法2条1項14号の成否

被告がコンビニ会社側に報告文書(特許出願の特許性についての文書)を
手交した行為の営業誹謗行為性が争われています。
結論的には先行特許出願部分については虚偽事実の告知性が肯定された
ものの、文書交付について差止の必要性がなく、また具体的な損害が原告
に生じていないとして原告の主張は容れられていません。
(59頁以下)


9 信用毀損としての不法行為性

上記8のほかに被告による報告文書配布によって原告の社会的評価が低下
して損害が生じていると原告は主張しましたが、この点についても容れら
れていません。
(63頁以下)


■コメント

事業提携交渉にあたって秘密保持契約を締結し、取得情報の事後処理も
それなりに行われている(51頁以下参照)にもかかわらず紛争になって
しまっています。

提携事業の正式契約締結前の交渉の成熟度合いをひとまず措くとしても、
営業秘密保護の不正競争防止法からのアプローチについては立証の困難性
がつきまといました。


■当事者サイト

原告会社ニュースリリース
(特になし)

被告会社IR情報
(特になし)

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2007年12月11日

「『めしや食堂』店舗外観」事件(控訴審)〜不正競争防止法 不正競争行為差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「『めしや食堂』店舗外観」事件(控訴審)

大阪高裁平成19.12.4平成19(ネ)2261不正競争行為差止等請求控訴事件PDF

大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 若林諒
裁判官     小野洋一
裁判官     菊地浩明


★原審
大阪地裁平成19.7.3平成18(ワ)10470不正競争行為差止等請求事件PDF


■事案

フランチャイズチェーンの外食店舗の外観などが類似する
として不正競争行為性が争われた事案の控訴審

原告(控訴人) :飲食店経営会社
被告(被控訴人):飲食店経営会社


■結論

控訴棄却


■争点

条文 不正競争防止法2条1項2号、1号、民法709条

1 営業表示の類似性
2 店舗外観全体の類似性


■判決内容


<争点>

1 営業表示の類似性

原告店舗表示は「ごはんや まいどおおきに ○○食堂」、
被告店舗表示は「めしや食堂」などでした。

裁判所は、「食堂」部分は特定の営業主体を表示する識別標識では
なく、識別力があるのは「まいどおおきに」「めしや」部分としたうえで、
外観、称呼において相違が大きいとして営業表示の類似性を認めて
いません。(10頁以下)


2 店舗外観全体の類似性

原告は、原審の判示をうけて控訴審では「日本家屋風平家建店舗」
(郊外立地型独立店舗/フリースタンディングタイプ)について
より詳細に店舗外観全体の類似性を比較検討しています。


店舗外観全体の類似性について裁判所は、

両者が類似するというためには少なくとも,特徴的ないし主要な構成部分が同一であるか著しく類似しており,その結果,飲食店の利用者たる需要者において,当該店舗の営業主体が同一であるとの誤認混同を生じさせる客観的なおそれがあることを要すると解すべきである
(15頁)

そのうえで、

双方の店舗外観において最も特徴がありかつ主要な構成要素として需要者の目を惹くのは,店舗看板とポール看板というべきであるが,いずれも目立つように設置された両看板に記載された内容(控訴人表示又は被控訴人表示)が類似しないことなどにより類似せず(前記(1)参照),かかる相違点が,控訴人店舗外観及び被控訴人店舗外観の全体の印象,雰囲気等に及ぼす影響はそもそも大きいというべきである。
(15頁)

として、店舗外観の主要構成部分である店舗看板とポール看板の
非類似性とその点が店舗外観に及ぼす影響を指摘しています。

また、店舗看板とポール看板以外の外装について、軽視し得ない
相違点があり、内装についてもありふれたものであるとして、これら
の構成要素の類似性を否定しています。
(15頁以下)

こうした点から、原審同様、店舗外観の類似性を否定しています。


ところで、トレードドレスについて、

控訴人は,店舗デザインについての米国法下でのトレードドレスの保護法理を参考にすれば,控訴人店舗外観が営業表示にあたるなどとも主張するところ,同法理を日本法下において直ちに採用ないし斟酌することの適否はともかくとして,本件における店舗外観において最も特徴がありかつ主要な構成要素というべき部分とその相違の程度からすれば,被控訴人店舗外観が控訴人店舗外観全体に類似するとすることはできない。
(17頁)

として、トレードドレス法理の適否が結論を左右するに至って
いません。

なお、一般不法行為についても原審同様認められていません。
(17頁)


■コメント

原審同様、控訴審でも店舗外観の類似性が否定されています。


■過去のブログ記事

2007年7月5日記事
「『めしや食堂』店舗外観」事件〜不正競争防止法 不正競争行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜


■当事者サイト

原告会社IR情報
(現時点では特になし)

被告会社IR情報(平成19年12月4日)
訴訟の判決に関するお知らせ

   --------------------

■追記(07.12.12)

日経金融記事に関連して、興味深いブログ記事がありました。

◆CFOのための最新情報◆
企業不祥事と、その後の株価の関係

経営の視点から考える「知財発想法」
不祥事?

非財務情報も積極的に開示していく姿勢が原告にも欲しいところです。

   --------------------

■追記(07.12.17)

名古屋商標亭
ちょっと無理が?

   --------------------

■追記(08.6.21)

平成20年5月26日、上告不受理となったようです。

株式会社ライフフーズプレスリリース(平成20年5月29日)

訴訟の判決に関するお知らせPDF

   --------------------

*付記

まいどおおきに食堂 全国被害者連絡会

   --------------------

■追記09/6/30

企業法務戦士の雑感(2009-06-29記事)
■[企業法務][知財]外食業界における「知財」


written by ootsukahoumu at 16:34|この記事のURLTrackBack(0)

2007年12月08日

「日めくりカレンダー」事件〜著作権 慰謝料請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「日めくりカレンダー」事件

東京地裁平成19.12.6平成18(ワ)29460慰謝料請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官     中島基至
裁判官     杉浦正典


■事案

携帯待受画面用「日めくり」カレンダーのためのデジタル写真について
著作者人格権(同一性保持権)侵害性が争われた事案


原告:写真家
被告:富士通株式会社


■結論

請求棄却


■争点

条文 著作権法第20条

1 本件配信行為について、原告の明示又は黙示の合意があったか


■判決内容

<経緯>

H14頃     原告が365枚の花の写真で構成されるデジタル写真集を作成
H14.10     原告が被告に「日めくり」携帯待受配信企画案を提案
H15.04頃    訴外富士通パレックスを通して「花」画像の著作権全部譲渡
H15.06.18  納品、代金すべて支払い完了(273万円余/1枚7500円)
H15.06.27〜 被告が携帯電話待受画面用として配信(週1回/1枚)
H15.07.15  
H15.07.22  原告が2セット目の「風景」画像購入についての契約交渉申入れ
H15.07.30  原告が「花」画像が「日めくり」にならない点などにクレーム
H15.08.06  被告は契約内容として「日めくり」にはなっていないと回答
H15.08.15  原告が再クレーム
H15.11.16  被告が「風景」画像購入を正式に断る
H15.12.22  原告が「花」画像の販売代金再交渉を要求


<争点>

1 本件配信行為について、原告の明示又は黙示の合意があったか

原告は、原告が制作した携帯待受画面用の「花」のデジタル画像を
企画案提案当初から「日めくり」(1日1枚更新)で提供するよう交渉
していましたが、被告側は技術的には「日めくり」が可能であるとし
つつも現実には週一回1枚更新の配信としてこれを実施しました。

こうした状況のなか、原告は写真集の編集著作物性や原告の同一性保
持権侵害性(写真集としての同一性の侵害)を争点として提起してい
ます。

裁判所は、これらの争点の前提となる配信行為についての合意の有無
があったかどうかを検討しています。

結論的には、裁判所は、被告との交渉の経緯などから週一回の割合で
更新して配信することについて遅くとも本件著作権譲渡行為の時点まで
には原告は黙示に合意していたと判断しています。
(16頁以下)

合意があった以上、契約内容に沿う配信行為となるので写真集の編集
著作物性の判断を裁判所がするまでに及んでいません。


■コメント

原告の写真家さんには「日めくり」形式での携帯待受配信について
強い思い入れがあったようですが、そうした内心事情はこの裁判
では保護されるに至りませんでした。

2セット目となる「風景」画像の売り込みに失敗して、その売り
込みとリンクさせて「花」画像の「日めくり」を論難している
メールなどの存在が、原告側に不利に認定されてしまっています。
(19頁以下)

この写真家さんの知名度がわかりませんが、写真1枚7500円の買取り
価格の相場観なども含め、写真家さんが提訴に至るまでの判決文に
現れない背景事情としてどのようなことがあったのか、考えさせられ
るところです。


ところで、被告代理人のなかに同級生の名前がありました。
早くから企業内弁護士として活躍などしていましたが
がんばってるようでちょっとうれしくなります。


■追記(07.12.22)

参考ブログ

企業法務戦士の雑感
■[企業法務][知財]世の中そんなに甘くない。

written by ootsukahoumu at 13:03|この記事のURLTrackBack(0)

2007年12月04日

「オービック商号使用差止」事件(控訴審)〜不正競争防止法 不正競争行為差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜


裁判所HP 知的財産裁判例集より

「オービック商号使用差止」事件(控訴審)

知財高裁平成19.11.28平成19(ネ)10055不正競争行為差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官     宍戸充
裁判官     柴田義明


★原審
東京地裁平成19.5.31平成18(ワ)17357不正競争行為差止等請求事件PDF


■事案

コンピューターのシステムインテグレーターとして著名なオービック
の商号に類似した標章を使用している会社に対する商号、標章等の使
用差止が争われた事案の控訴審


原告(被控訴人):株式会社オービック
被告(控訴人) :有限会社オービックス


■結論

控訴棄却


■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号、4条、5条

1 混同惹起行為性
2 損害論
3 権利濫用・信義則違反性
4 憲法違反性


■判決内容

<争点>

1 混同惹起行為性

被告は、不正競争防止法が不正な競争行為について損害賠償請求権
のみならず差止請求権も認めていることから、混同惹起行為は
「具体的危険性を有する不正なもの」であるべきであると主張しましたが、
裁判所は、最判昭59.5.29(フットボール・チームマーク事件)、
最判昭44.11.13(摂津冷蔵事件)を前提に、本件では法的評価として
混同を生じさせるおそれがあると判断しています。
(9頁以下)


2 損害論

被告は、過失の有無などを争いましたが、容れられていません。
(15頁以下)


3 権利濫用・信義則違反性

大企業が零細企業を倒産に追い込むような権利行使は正義に反すると
被告は主張していますが、容れられていません。
(18頁)


4 憲法違反性

不正競争防止法1条、5条の規定があいまいかつ抽象的表現であり
零細企業の商品等表示に制約を加え、ひいては職業選択の自由を
制限するとして憲法22条に、また零細企業の表現活動の自由を制
限するとして憲法21条に違反すると被告は主張しましたが、
容れられていません。
(18頁以下)


■コメント

原審維持の判断となっています。


■過去のブログ記事

「オービック商号使用差止」事件〜不正競争防止法 不正競争行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜


■参考文献

小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」(上)(2007)367頁、375頁以下
小松一雄編著「不正競業訴訟の実務」(2005)226頁以下


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2007年12月01日

「筆耕プログラム著作権侵害」事件〜著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「筆耕プログラム著作権侵害」事件

東京地裁平成19.11.28平成19(ワ)7380損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清水節
裁判官     山田真紀
裁判官     国分隆文


■事案

百貨店向け筆耕用アプリケーションプログラムに関する
使用許諾契約解約時の合意の有無が争われた事案

原告:システム開発業者
被告:情報処理サービス業者ら


■結論

請求棄却


■争点

条文 著作権法第21条

1 契約解約時の合意の不履行の有無
2 著作権侵害の有無


■判決内容

<経緯>

H12.05   原告が本件プログラムを制作
H12.11.01  原告は被告会社と使用許諾契約締結
H14.01.31  原告によるデータ削除により合意解約


*『本件プログラムは,”寛濺硬から渡される名簿等を基に,
顧客及び送り先の住所及び氏名並びに商品名等のデータ
( 以下「顧客等データ」という。)の入力作業を行うAPP シ
ステム(以下「本件入力システム」という。),↓,離如
タ入力作業に加え,入力されたデータを加工して,百貨店等
が希望する発送伝票等の帳票に印字するAPS システム(以下
「本件出力システム」という。)及びこれらの作業を効率
的に行うためのシステムテーブル類から構成される。

(3頁)


<争点>

1 契約解約時の合意の不履行の有無

使用許諾契約書には、契約終了時の規定として、被告会社が本件プ
ログラムのすべてを原告に返却する、とありました。
(10頁)

原告と被告は使用許諾契約の解約の方向のもと、原告が自ら被告
立ち会いの下で被告会社のコンピュータのハードディスクに収納
されていた本件プログラムと外部記憶媒体に保管されていたバック
アップ用のデータ等を復元不可能な形で削除する作業を行っています。

こうした一連の作業から裁判所は、事実上契約が終了したとしましたが、
解約の際に契約終了後の義務等について定める合意が本件契約書上の
取決め以上に形成されたとは認められないと判断しました。
(10頁以下)

結果として、原告による契約解約時の合意(複製物の完全削除・返却)の
不履行を理由とする主張は容れられていません。


2 著作権侵害の有無

被告会社は、本件契約解約後も百貨店向けに筆耕業務を継続して提
供していましたが、本件プログラムの複製物を使用して筆耕業務を
行っているかどうかを含め原告の主張立証が尽くされておらず、
被告らの著作権侵害性は認められていません。
(12頁以下)


結論として、本件プログラム複製物の使用差止、廃棄請求は認めら
れませんでした。


■コメント

契約終了時に、ライセンサー自らがライセンシー側に出向いてバック
アップを含めデータを削除しているので、プログラムのライセンス
契約の事後処理としては、それなりの対処を双方でしている印象です。

ライセンシーが別のシステムに切り替えて従前と同一の業務を継続
する場合、以前のシステムを一部でも使用していないか、その検証
はライセンサーとしては使用許諾契約書に事後処理規定を置くか、
終了時に新たな覚書を取り交わすしか実効性のある監査が出来ません。
(現実問題として、秘密保持契約も含め後継のライセンス契約との
絡みも出てきて、いろいろな問題を孕みます。)

原告は、被告会社が筆耕業務自体を解約後は行わないことを要望し
ていたようですが(4頁)、本件契約とはかかわらないところです。
また、合意の有無の争点はたいした問題ではなく、そもそも被告側
の契約終了後のプログラム使用状況が原告側で把握出来ていないの
で(13頁)、判決文を読む限り原告側には不利な状況でした。


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2007年11月19日

「『おりがみあそび』イラスト」事件〜著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「『おりがみあそび』イラスト」事件

東京地裁平成19.11.16平成19(ワ)4822損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官     平田直人
裁判官     瀬田浩久


■事案

書籍に使われたイラストが使用許諾の範囲を超えて使用されたか
どうかが争われた事案


原告:イラストレーター
被告:出版社、書籍編集会社ら


■結論

請求一部認容


■争点

条文 著作権法第21条、19条、20条

1 イラストを書籍表紙に使用することについての許諾の有無
2 著作者人格権侵害の有無
3 損害論


■判決内容

<争点>

1 イラストを書籍表紙に使用することについての許諾の有無

折り紙と紙遊びに関するムックのプロセスカット、遊び方のイラストの
制作を被告が原告に依頼、原告は57点を制作して納品し合計86000円が
原告に対して支払われていました。

これらイラストが、プロセスカット(折り紙の作成過程を示すため折り
方についての説明部分に付されるイラスト)や遊び方のイラスト(完成
した折り紙の遊び方を読者に説明するため折り紙の完成図に付されるイ
ラスト)以外に書籍の表紙に使われていたことから、原告は使用許諾の
範囲を超えるものとしてイラストの著作権の複製権侵害を主張しました。

結論的には、原告の主張が容れられて、複製権侵害が認められています。
(10頁以下)


2 著作者人格権侵害の有無

(1)氏名表示権侵害性

原告イラストレーターの氏名が書籍に一切表示されておらず、氏名表示
権の侵害が認定されています。
(12頁)

(2)同一性保持権侵害性

被告から2色での作画指定があったうえでの納品物に被告が複数の色を
着色している点、イラストの大きさを改変している点について、いずれ
も人格的利益にかかわる改変であるとして結論的に同一性保持権侵害を
認めています。
(12頁以下)


3 損害論

複製権侵害に関する損害額としては、表紙使用許諾料相当額として3万円、
著作者人格権侵害に関する損害額としては、慰謝料として30万円が認定
されています。
(14頁以下)


■コメント

結論的に、出版の差止(頒布の禁止)と損害賠償として33万円が認め
られました。
出版社としては、表紙にも使いながらイラストレーターさんの名前を
一切書籍に掲載しなかったミスがありますから、こうした結論も仕方の
ないところでしょう。

もっとも、仮に争点が使用許諾の範囲論だけだったら結論はどうだった
でしょうか。
書籍本文でイラストを使用するという取り決めを超えて表紙で使った、
という逸脱行為が著作権侵害行為(著作権侵害行為なら出版の差止も可能)
となるのか、たんなる契約違反にとどまるのか、難しい判断だったかも
しれません。

ところで、書籍・雑誌の編プロをしている知人に今回の事案の感想を
聞いてみました。

「誰がいろ塗ったんだろ??ありえない。装丁のひとがやったか?」
「表紙に転用するのはよくあること。」
「イラストの大きさ?そんなの気にするか?」
「イラストレーターさんはクレジットのことは校正刷りで確認するべきだった」

「厳しい世の中になってきたなあ・・・」


■参考文献

平嶋竜太「特許ライセンス契約違反と特許権侵害の調整法理に関する一考察」
知的財産法の理論と現代的課題-中山信弘先生還暦記念論文集
(2005)233頁以下

角田政芳「実施許諾契約と製造販売数量制限条項-マンホール鉄蓋事件-」
知財管理』57巻10号(682号)(2007)1675頁以下


■参考サイト-折り紙作家

折紙創作丹羽兌子さんのサイト
パピヨン折紙

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2007年11月08日

「液晶テレビ営業誹謗」事件〜不正競争防止法 特許権侵害差止請求権不存在確認等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜

裁判所HP 知的財産裁判例集より

「液晶テレビ営業誹謗」事件(アクティブマトリクス型表示装置事件)

知財高裁平成19.10.31平成18(ネ)10040特許権侵害差止請求権不存在確認等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官     大鷹一郎
裁判官     嶋末和秀


★原審
東京地裁平成18.3.24平成17(ワ)3089特許権侵害差止請求権不存在確認

   --------------------

■事案

特許権に基づく差止請求権を被保全権利とし、本件製品を販売する
原告の顧客を相手方として、販売禁止等の仮処分を申し立てる被告
の行為等が不正競争防止法2条1項14号の営業誹謗行為に当たるかど
うかが争点となった事案の控訴審

原告(被控訴人・附帯控訴人):液晶パネル製造販売会社(台湾法人)
被告(控訴人・附帯被控訴人):液晶ディスプレイ研究開発会社

   --------------------

■結論

請求一部変更

   --------------------

■争点

条文 不正競争防止法2条1項14号

1 仮処分申立て及び記者発表の不法行為性
2 仮処分申立て及び記者発表の営業誹謗行為性(14号該当性)

   --------------------

■判決内容


<争点>

1 仮処分申立て及び記者発表の不法行為性


被告がした仮処分申立てと記者発表が不法行為となるかどうかについて、

法的紛争の解決を求めて訴えを提起することは,原則として正当な行為であって,不法行為を構成することはない。しかし,提訴者が当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,同人がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したなど,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合には,違法な行為として不法行為を構成するというべきである(最高裁昭和60年(オ)第122号同63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁参照)

としたうえで、この理は仮処分の申立においても同様であり、

権利の行使に藉口して,競業者の取引先に対する信用を毀損し,市場において優位に立つこと等を目的として,競業者の取引先を相手方とする仮処分申立てがされたような事情が認められる場合には,同仮処分の申立ては違法な行為として不法行為を構成するというべきである。

そして当該仮処分の申立が違法な行為となるかどうかは、競業者との交渉
の経緯、相手方の対応等を総合して判断するべきであると説示。
(52頁)

あてはめとしては、特許権に無効理由が存在すること、調査の不十分性、
警告内容の不十分性、販売店への事前予告無しの申立てであったこと、
販売店の対応予測などから、本件仮処分申立ては、原告に圧力をかけ被
告に有利な内容のライセンス契約を締結させるための手段として行われ
たものであり、著しく相当性を欠くものであるとされました。
(52頁以下)

また、記者発表についても、仮処分申立てと同様に有利なライセンス契約
の締結のための手段として用いられたもので、著しく相当性を欠くとされ
ています。
(59頁)

以上から、被告がした仮処分申立てと記者発表は不法行為を構成すると
されました。


2 仮処分申立て及び記者発表の営業誹謗行為性(14号該当性)


原審では、被告の特許権に無効事由があることを前提に仮処分申立て
により東京地裁をしてその申立書を販売店に送達させた行為は告知行
為に該当する。
記者発表については流布行為に該当するが、「虚偽」要件を具備しな
いとして、結論的には仮処分申立てについてだけ不正競争防止法2条1項
14号の営業誹謗行為にあたると判断していました。
(原審28頁以下)

これに対して、控訴審では、仮処分の申立てについて、

仮処分の申立てが権利者が義務者に対して権利を実現するために設けられた仮の救済制度であって,かかる救済制度の利用及びこれに当然随伴する行為を差し止めることは不競法の予定するところではない点に鑑みれば,特許権侵害等を理由とする差止の仮処分など仮の地位を定める仮処分の申立てに伴って,申立書の内容を相手方に知らしめることを,不競法2条1項14号所定の告知行為であるとすることはできない。
(59頁以下)

として、仮処分申立ての告知行為性を否定しています。

そして、記者発表については、

1審被告は,本件記者発表により,本件仮処分申立ての事実や本件仮処分事件における自己の申立内容や事実的主張,法律的主張の内容を説明したものであり,その公表自体について,虚偽の事実を告知・流布したものと評価することはできない
(60頁)

と判断しています。

なお、記者発表と「虚偽の事実」性についての判例状況に関し、
小野昌延編「新注解不正競争防止法新版」(上)(2007)700頁
以下参照。

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■コメント

原審と控訴審とでは、仮処分申立ての営業誹謗行為性(14号該当性)
について判断が分かれる結果となっています。

侵害訴訟・仮処分の提起、追行が不法行為となるかどうかの
争点は以前にもいくつかの事案に現れていましたが、仮処分
申立て自体の営業誹謗行為性が正面から争点となった事案は
珍しいかもしれません。
なお、後掲「医薬品特許権侵害営業誹謗」事件判例参照。

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■参考文献

田村善之「著作権法概説第二版」(2001)440頁以下

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■参考判例

「医薬品特許権侵害営業誹謗」事件
大阪地裁平成19年02月15日平成17(ワ)2535損害賠償請求事件PDF
PDF116頁以下参照

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■関連サイト

原審に関する原告プレスリリース
平成18年4月3日発表「日本でのSEL社LCD特許にかかる勝訴判決について」PDF

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■追記(09/7/18)

洪 振豪「知的財産権の侵害警告と「正当な権利行使」(1)-アクティブマトリクス型表示装置事件-」『知的財産法政策学研究』23号(2009)285頁以下


written by ootsukahoumu at 05:33|この記事のURLTrackBack(0)