知財判決速報2005

2005年10月30日

「選撮見録」クロムサイズ社著作権侵害差止等請求事件(知財判決速報)

事案は、集合住宅向けにテレビ放送を対象としたハードディスクビデオレコーダーシステム(商品名「選撮見録(よりどりみどり)」)の販売を行っていた被告会社に対し、民放5社が放送番組制作者としての著作権(複製権及び公衆送信権)、放送事業者としての著作隣接権(複製権及び送信可能化権)の侵害を理由として上記商品の使用と販売の差止廃棄著作権法第112条)を求めたものです。

H17.10.24 大阪地裁 平成17(ワ)488 著作権 民事訴訟事件


争点としてはいくつかありますが、著作隣接権侵害性判断での「送信可能化性」「公衆性」、「侵害行為主体性」そして「差止の成否」などが争われました。


本判例は間接侵害事例で差止請求を認めた判例といえるので、ここでは特に間接侵害事例での「差止の成否」についての学説状況だけ簡単に整理しておきたいと思います。



2000年「スターデジオ事件」地裁判決、2001年「ときめきメモリアル事件」「ビデオメイツ事件」両最高裁判決という判例状況、またプロバイダー責任制限法制の検討というなかで寄与侵害・間接侵害委員会(社団法人著作権情報センター附属著作権研究所)が2000年に開催され、7回にわたる審議の結果として「寄与侵害・間接侵害に関する研究」(著作権研究所叢書4号 2001年3月)報告書を公表しています。

委員会の委員には角田政芳教授や田中豊弁護士が名前を連ねており、角田教授は1993年に「著作権の間接侵害論ー序論ー」と題する論文を発表されています(特許研究16号18頁以下)。
角田教授は「特許研究」で米英における寄与侵害、間接侵害、わが国における知財法上の間接侵害のありかたについて一般的に検討されています。
さらに同教授は「インターネットと著作権の間接侵害理論」と題する講演を行っておいでです(コピライト500号2頁以下 2002)。
この講演録では、わが国の判例の考え方がイギリスやアメリカの寄与侵害、間接侵害の理論に近づきつつあるという認識を示されています。

田中豊弁護士はビデオメイツ事件に弁護人として関与されていて、「著作権侵害とこれに関与する者の責任」と題して「コピライト」485号2頁以下(2001)に講演録を公表されています。
田中弁護士は問題の所在として情報のデジタル化・ネットワーク化があるとされ、また国内の裁判例を細かく検討されています。



著作権法第112条1項では「著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。」と差止請求権を規定しているわけですが、この「侵害する者又は侵害するおそれがある者」に直接侵害者のみならず教唆者や幇助者のような間接侵害者も含めるか、議論があります。


間接侵害については立法的措置を待つべきであるという見解を消極説、解釈論的に含めることを肯定する見解を積極説としますと以下のようになります。


[積極説]

1 角田政芳教授「インターネットと著作権の間接侵害理論」(コピライト500号2頁以下 2002)
2 田中豊弁護士「寄与侵害・間接侵害に関する研究」(著作権研究所叢書4号 36頁以下 2001)
3 鎌田薫教授 「寄与侵害・間接侵害に関する研究」(著作権研究所叢書4号 58頁以下 2001)
4 山本隆司弁護士「プロバイダ責任制限法の機能と問題点ー比較法の視点からー」(コピライト495号12頁以下 2002)
5 作花文雄教授「民法法理と著作権制度の体系及び構造ー著作物利用・著作権侵害に係る行為・行為者・行為地ー」(コピライト500号16頁以下 2002)
         『「ときめきメモリアル」事件最高裁判決』(判例時報1755号判例評論512号33頁以下 2001)
        「通信カラオケリース業者著作権侵害差止請求事件」(コピライト505号46頁以下 2003)
6 牧野利秋弁護士「ファイルローグ事件仮処分決定と複数関与者による著作権侵害(下)」(NBL751号47頁以下 2002)
7 小松一雄判事「著作権侵害行為の差止請求権」(新裁判実務大系22著作権関係訴訟法523頁以下 2004)


[消極説]

1 上野達弘教授 「メモリ−カードの使用と著作者の同一性保持権侵害等」(民商法雑誌125巻6号753頁以下 2002)
2 高部真規子判事「最高裁判所判例解説」(法曹時報54巻10号2742頁以下 2002)
3 辰巳直彦教授 「専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるカラオケ装置につきリース業者がリース契約を締結して引き渡す場合の注意義務」(判例時報1767号判例評論516号36頁 2002)
4 大瀬戸豪志教授「カラオケ装置のリース業者の注意義務」(平成13年度重要判例解説ジュリスト1224号291頁 2002)


従来、著作権法が特許法のような間接侵害規定を置いていないこと等から消極説が通説的見解といえましたが(牧野「新裁判実務大系22著作権関係訴訟法」360頁)、学説状況としては積極説も台頭しているわけです(ただし、積極説の内容も様々で幅があります)。

判例としては大阪地裁平成15年2月13日「ヒットワン事件」(判例タイムズ1124号285頁以下 2003 判例時報1842号120頁以下 2004)で幇助者に対する差止請求が間接侵害理論に立って認められています。
(なお最近では、ウエブサイト掲示板管理人の責任を巡って差止請求が認められていますが、この事案では管理人に直接的な関与責任を認めています(「2ちゃんねるVS小学館事件」東京高裁平成17年3月3日 平成16(ネ)2067)。)



今回の判決では、侵害主体性の判断において間接侵害理論の適用の余地を認めつつも被告会社の侵害主体性を明確に否定し、なお販売行為について法112条1項を「類推」するという論理で差止請求を肯定しています。

従来、間接侵害理論の導入のメリットが幇助者等の間接侵害者に対する差止請求の肯定にあり、幇助者等に対する差止請求の法的基礎付けを与えるために学説判例上議論が重ねられてきました。
ところが、差止請求の前提議論であった侵害主体性を否定したにもかかわらず差止の必要性と利益考量論から差止請求を肯定しています。

本判決は、著作権保護のために差止制度を柔軟に解釈しその実効性を最大限に確保しようとする政策的価値判断に立つもので、あるいは直接行為者の違法性を問題とすることなく関与者の独自の著作権侵害行為を認める場合(狭義の間接侵害類型)の差止の可能性を肯定する鎌田教授の見解(著作権研究所叢書4号 58頁以下)と同じ範疇にあると捉えることができるかもしれません。
しかし、この見解でも侵害行為の実質(法第30条の解釈論なども含めて)が検討されなければなりません。

本判決の評価についてはさらに検討する必要があると思われます。


■追記(06.2.20)

文化審議会著作権分科会報告書(文部科学省)

第1章法制問題小委員会(PDF:1,696KB)
第5節司法救済ワーキングチーム(139頁以下)に
「間接侵害論」に関して、比較法上の
検討も加えられた報告が掲載されています。

文化審議会著作権分科会報告書



■追記(06.4.29)

参考文献

高部眞規子「著作権侵害の主体について(連載・知的財産法の潮流<著作権法編2>)」
      ジュリスト1306号(2006.2.15)114頁以下

佐藤豊「著作物利用のための手段を提供する者に対する差止め
   知的財産法政策学研究2号(2004)77頁以下

以下のサイトで
知的財産法政策学研究(北海道大学大学院)所収の
論文がPDFで読むことができます。

知的財産法政策学研究/21世紀COEプログラム:「新世代知的財産法政策学の国際拠点形成」研究プロジェクト

佐藤論文PDF
佐藤豊「著作物利用のための手段を提供する者に対する差止め」PDF


written by ootsukahoumu at 08:12|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2005年10月19日

読売新聞記事見出し著作権訴訟について(補足)

先日の読売オンライン記事見出しの著作物性を争った控訴審判決について。

「企業法務戦士の雑感」さんの16日付のブログ記事、「marinesはチャンネル?」さんの14日付ブログ記事に触発されて不法行為の成否に関する争点について、私的補足・備忘録として参考となる判決をここに掲示しておきたいと思います。

企業法務戦士の雑感

marinesはチャンネル?

*そのほかのブログ記事として、弁護士壇先生の記事参照。

壇弁護士の事務室


H13.5.25 東京地裁 平成08(ワ)10047等 著作権 民事訴訟事件中間判決


3 争点(3)について
民法709条にいう不法行為の成立要件としての権利侵害は,必ずしも厳密な法律上の具体的権利の侵害であることを要せず,法的保護に値する利益の侵害をもって足りるというべきである。そして,人が費用や労力をかけて情報を収集,整理することで,データベースを作成し,そのデータベースを製造販売することで営業活動を行っている場合において,そのデータベースのデータを複製して作成したデータベースを,その者の販売地域と競合する地域において販売する行為は,公正かつ自由な競争原理によって成り立つ取引社会において,著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値する営業活動上の利益を侵害するものとして,不法行為を構成する場合があるというべきである。
 これを本件についてみると,上記1認定のとおり,本件データベースは,自動車整備業を営む者に対し,実在の自動車に関する情報を提供する目的で,官報,年製別型式早見表,車検証等の種々の資料をもとに,原告が実在の自動車と判断した自動車のデータを収録したものであるが,証拠(甲25)と弁論の全趣旨によると,このような実在の自動車のデータの収集及び管理には多大な費用や労力を要し,原告は,本件データベースの開発に5億円以上,維持管理に年間4000万円もの費用を支出していることが認められる。
 また,弁論の全趣旨によると,原告と被告は,共に自動車整備業用システムを開発し,これを全国的に販売していたことが認められるから,自動車整備業用システムの販売につき競業関係にあり,証拠(証人B)によると,実際に,富士モータースにおいて,従前は原告システムを導入していたものの,その後,被告システムに変更したことが認められる。
 また,被告は,上記認定のとおり,本件データベースの相当多数のデータをそのまま複製し,これを被告の車両データベースに組み込み,顧客に販売していたものである。
 以上の事実によると,被告が本件データベースのデータを被告データベースに組み込んだ上,販売した行為は,取引における公正かつ自由な競争として許される範囲を甚だしく逸脱し,法的保護に値する原告の営業活動を侵害するものとして不法行為を構成するというべきである。
 したがって,被告は,原告に対し,上記不法行為により原告が被った損害を賠償する責任を免れない。
』(最高裁HPより)


自動車データベース事件」として有名。
データベースの著作物性が争点となりこの点は否定されましたが、不法行為は成立するとされた判例です。



H16.2.13最高裁第二小法廷判決 平成13(受)866、867 製作販売差止等請求事件


(2) 現行法上,物の名称の使用など,物の無体物としての面の利用に関しては,商標法,著作権法,不正競争防止法等の知的財産権関係の各法律が,一定の範囲の者に対し,一定の要件の下に排他的な使用権を付与し,その権利の保護を図っているが,その反面として,その使用権の付与が国民の経済活動や文化的活動の自由を過度に制約することのないようにするため,各法律は,それぞれの知的財産権の発生原因,内容,範囲,消滅原因等を定め,その排他的な使用権の及ぶ範囲,限界を明確にしている。
 【要旨】上記各法律の趣旨,目的にかんがみると,競走馬の名称等が顧客吸引力を有するとしても,物の無体物としての面の利用の一態様である競走馬の名称等の使用につき,法令等の根拠もなく競走馬の所有者に対し排他的な使用権等を認めることは相当ではなく,また,競走馬の名称等の無断利用行為に関する不法行為の成否については,違法とされる行為の範囲,態様等が法令等により明確になっているとはいえない現時点において,これを肯定することはできないものというべきである。したがって,本件において,差止め又は不法行為の成立を肯定することはできない。
 (3) なお,原判決が説示するような競走馬の名称等の使用料の支払を内容とする契約が締結された実例があるとしても,それらの契約締結は,紛争をあらかじめ回避して円滑に事業を遂行するためなど,様々な目的で行われることがあり得るのであり,上記のような契約締結の実例があることを理由として,競走馬の所有者が競走馬の名称等が有する経済的価値を独占的に利用することができることを承認する社会的慣習又は慣習法が存在するとまでいうことはできない。
 (4) 以上によれば,1審原告らは,1審被告に対し,差止請求権はもとより,損害賠償請求権を有するものということはできない。
』(最高裁HPより)


ギャロップレーサー事件
競走馬にパブリシティ権が認められるか、物のパブリシティ権が争点となった判例です。
結論的には物のパブリシティ権を否定。さらに原審では認められていた不法行為についても否定しました。
下級審レベル(名古屋事件、東京事件)では物のパブリシティ権の成否、不法行為の成否について判断が分かれていました。

なお、本最高裁判決の不法行為論、射程については議論があります(作花文雄「詳解著作権法第三版」174頁以下、本橋光一郎ほか「要約著作権判例212」277頁参照)。
不法行為論における違法性判断、権利侵害性判断について、より詳細な検討が加えられることが求められています。


written by ootsukahoumu at 00:11|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2005年10月12日

新聞記事見出しの著作物性〜読売新聞VSデジタルアライアンス事件控訴審判決〜

新聞記事見出しの著作物性が争点となった訴訟の控訴審判決が
知財判決速報に掲載されました。

H17.10.6 知財高裁 平成17(ネ)10049 著作権 民事訴訟事件PDF

原審 H16.3.24 東京地裁 平成14(ワ)28035 著作権 民事訴訟事件PDF

ITmediaニュース:新聞見出し無断ネット利用に賠償命令 著作物性は再び否定 記事2005/10/06 20:00


原審では新聞記事見出しは、著作権法第10条2項の「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。」にあたるとして著作物性を否定
被告会社の電光掲示板方式による記事見出し配信行為の不法行為性も否定して、読売新聞東京本社側全面敗訴の結果となっていました。

控訴審では、一部変更
審理で取り上げられた具体的な記事見出しの著作物性については否定しましたが、配信サービスについて不法行為責任は肯定しました。


原審では争点は
1記事見出しの著作物性
2配信サービスの不法行為性(違法性、損害の有無)

でした。

控訴審では、読売側は上記に追加して
3記事自体の著作権侵害性
4不正競争防止法第2条1項3号の不正競争行為性

などを主張しました。



控訴審では、次のような判断を下しています。


1 記事見出しの著作物性について

原審のように20字程度でまとめられる新聞記事見出しがただちに著作権法第10条2項に当たるものとはせず、あくまで個別具体的にその創作性の判断をしなければならない、として個別具体的に検討した上でそのすべてについて著作物性を否定しています。

(2) 一般に,ニュース報道における記事見出しは,報道対象となる出来事等の内容を簡潔な表現で正確に読者に伝えるという性質から導かれる制約があるほか,使用し得る字数にもおのずと限界があることなどにも起因して,表現の選択の幅は広いとはいい難く,創作性を発揮する余地が比較的少ないことは否定し難いところであり,著作物性が肯定されることは必ずしも容易ではないものと考えられる。
 しかし,ニュース報道における記事見出しであるからといって,直ちにすべてが著作権法10条2項に該当して著作物性が否定されるものと即断すべきものではなく,その表現いかんでは,創作性を肯定し得る余地もないではないのであって,結局は,各記事見出しの表現を個別具体的に検討して,創作的表現であるといえるか否かを判断すべきものである。
』(知財判決速報より規範定立部分)


2 不法行為性(違法性、損害の有無)について

原審と異なり配信サービスの違法性を認めました。

(2) 不法行為(民法709条)が成立するためには,必ずしも著作権など法律に定められた厳密な意味での権利が侵害された場合に限らず,法的保護に値する利益が違法に侵害がされた場合であれば不法行為が成立するものと解すべきである。』(知財判決速報より)
としたうえで、読売新聞記事見出しも法的保護に値する利益となりうるものであると認定。

そして、
前認定の事実によれば,被控訴人は,控訴人に無断で,営利の目的をもって,かつ,反復継続して,しかも,YOL見出しが作成されて間もないいわば情報の鮮度が高い時期に,YOL見出し及びYOL記事に依拠して,特段の労力を要することもなくこれらをデッドコピーないし実質的にデッドコピーしてLTリンク見出しを作成し,これらを自らのホームページ上のLT表示部分のみならず,2万サイト程度にも及ぶ設置登録ユーザのホームページ上のLT表示部分に表示させるなど,実質的にLTリンク見出しを配信しているものであって,このようなライントピックスサービスが控訴人のYOL見出しに関する業務と競合する面があることも否定できないものである。
 そうすると,被控訴人のライントピックスサービスとしての一連の行為は,社会的に許容される限度を越えたものであって,控訴人の法的保護に値する利益を違法に侵害したものとして不法行為を構成するものというべきである。
』(知財判決速報より)
として違法性を肯定しました。


損害については、立証の困難性等から民訴法248条趣旨に照らして月1万円の損害額としました。


3 記事自体の著作権侵害(複製権侵害)の成否について

読売側は控訴審において、記事自体の著作権に関連した主張もしていますが、本気で争うつもりもなくこの点の審理は尽くされていません。
ここではキャッシュデータと「複製」リンク行為と著作権侵害性に係わる重要な問題を孕んでいますが、結果的には争点化されませんでした。


4不正競争防止法第2条1項3号の不正競争行為の成否について

不正競争防止法第2条1項3号の不正競争というためには、「商品の形態」にかかわる不正競争行為でなければなりませんが、新聞記事見出しの模倣行為は「商品の形態」にかかわる模倣ではないとして否定されています。



以上簡単に述べてきましたが、結論について言えば原審に較べると控訴審判決はバランスのとれたものだと思います。

電光掲示板のようなカタチで記事見出しの配信サービスをしている同業他社(判決文によれば楽天の「インフォシーク・ティッカー」)がありますし、利用許諾契約をした上で記事見出しを利用し自社サイトの販促ツールとして役立てているビジネスモデルがある以上、まったくタダで記事見出しを利用するのは困難だと思えるからです。

判決では読売側の主張を受けて「情報の鮮度が高い時期での利用行為」であることにも特に言及していますから、記事見出し無断利用行為が広範に違法と判断されないとも考えられますが、実際問題として販促ツールとして利用価値の高い記事見出しは鮮度の高い最新のものとなるはずです。

現在新聞記事見出しを自社サイトの販促ツールあるいは記事配信事業の一環として利用している事業者は利用許諾契約を締結する、あるいは最新ニュースについては独自見出しを作るなど、対応を迫られることになると思います。


デジタルアライアンス ライントピックス

読売新聞社サイトポリシー


追記:
企業法務戦士の雑感」さんのブログ記事『「読売新聞記事見出しフリーライド事件」判決の衝撃』参照(05.10.17)

企業法務戦士の雑感

追記:10月25日までに双方上告せず控訴審判決が確定。(05.10.31)

written by ootsukahoumu at 19:24|この記事のURLComments(0)TrackBack(2)

2005年10月11日

高島易断著作権侵害出版差止事件〜知財判決速報より〜

一家に一冊はある?かもしれないほど有名な高島開運暦(運勢暦)本。易に関する何冊かの著作物を巡って関係者が訴訟をしています。
争点は書籍の著作者、職務著作の成否、編集著作物性といった点で事実認定が中心の事案です。

結論的には原告の全面敗訴


ここでは吉凶が書かれた方位盤の著作物性あるいは編集著作物性について触れた部分を紹介したいと思います。

本件各方位盤は,方位の吉凶を示す図であり(甲3,37),気学では方位を特に重要視し,人の動きによって受ける吉凶の影響を前もって知っておくことの重要性を教えている(甲3,37)というのであるから,方位の吉凶に関係のある要素を方位盤に織り込むことはありふれた表現にすぎない。また,方位盤が方位を示すものであることからすれば,これを八角形で表すこと自体はありふれた表現であるし,上記のように方位を八分割した八角形の図に吉凶を示す事項を記載することは,本件類似書籍にも見られるところである(甲5ないし7)。方位,八卦のマーク,火の場所,十二支及び九星の5つの要素を織り込んだ点についても,本件各方位盤におけるそれらの表現は,同様にありふれたものである。
したがって,本件各方位盤は,原告の思想又は感情を創作的に表現したものとはいえず,素材の選択又は配列によって創作性を有するものともいえないから,著作物あるいは編集著作物とは認められない。
』(知財判決速報より)


著作権法で保護される著作物として必要な創作性の有無の判断は「ありふれた」ものかどうかが判断基準となります。
一見すると工夫を凝らしたデザインをもつ方位盤もありふれたものだと著作権の成立が否定されるわけです。


どうしてこんなにハナシがこじれたのか、一緒に仕事をしてきた者同士が何をきっかけとして仲たがいするようになったのか。
判文からははっきりとは伺えないそうした事情こそ知りたい事案です。

H17. 9.28 東京地裁 平成16(ワ)4697 著作権 民事訴訟事件



written by ootsukahoumu at 05:17|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2005年10月06日

「韓流」石鹸をめぐる不正競争防止法に係わる紛争(知財判決速報より)

韓国製石鹸の日本における販売代理店どうしで営業に関して誹謗中傷行為を行ったという事案。

判決は営業誹謗行為が信用毀損にあたるとして原告の請求を一部認容しました。
もっとも、不正競争防止法の「不正競争」は認めませんでした

H17.9.26 大阪地裁 平成17(ワ)12713等 不正競争 民事訴訟事件


ここでは、不正競争防止法2条1項1号に係わる判断のうち「周知性」に関する規範部分とその前後について参考と思われるので知財判決速報より引用したいと思います。

原告商品の売上は、平成16年7月28日までの約1年8か月間に希望小売価格にして千数百万円相当であり、一日平均の売上個数は20個以下、売上価格(希望小売価格)は3万円以下ということになる。
 そして、石鹸は安価な消耗品であって、消費する度に購入の必要が生じるから一人の顧客がいれば年間複数個販売できるものであり、しかも、良いという評判を知った場合に試みに一度買って使ってみることが躊躇されるほどの価格のものではないことを考えると、原告商品の評判を知る需要者は多くないことが推認されるところである。
 もっとも、例えば飲食店のように、その店舗に行かなければ役務の提供を受けられない営業の商品等表示であれば、その店舗のある地方の需要者の間で、当該商品等表示の名声がよく知られている場合には、当該商品等表示を認識している需要者の数が日本全国の需要者との比較では少数であっても、当該商品等表示は、当該地方においては周知となっているというべきときがある。しかし、甲第6号証の記載では、原告の販売先は、札幌、東京、大阪、広島等全国に散在していることになるから、前記の程度の販売量の石鹸について、その商品名「バイオセリシン」が日本全国の需要者の間に「広く認識」されていたものとすることはできない。換言すれば、不正競争防止法2条1項1号所定の混同行為の規制は、本件の場合では、商標登録にもよらずに、日本全国における特定の営業表示の独占を認めることにつながるものであるから、その周知商品等表示は、独占を認めるだけの実績のあるものでなければならないところ、原告商品にそれだけの周知性を認めることはできないのである。



先日紹介した自衛隊饅頭・せんべい事件(H17. 9.15 知財高裁 平成17(ネ)10022 不正競争 民事訴訟事件)でも周知性が問題となりましたが、いずれにしろ微妙な判断となります。

written by ootsukahoumu at 06:16|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2005年10月05日

「自衛隊饅頭」不正競争行為差止等請求事件(知財判決速報より)

知財判決速報より自衛隊限定商品である饅頭やせんべいのパッケージデザインを巡る争いの控訴審判決が出ています。

H17.9.15 知財高裁 平成17(ネ)10022 不正競争 民事訴訟事件

H16.12.15 東京地裁 平成16(ワ)3173 不正競争 民事訴訟事件


原告は不正競争防止法や著作権法、民法709条(控訴審では予備的請求として415条)を根拠として販売等の差止、損害賠償請求をしていましたが原審に引き続き認められませんでした。

不正競争防止法の点では、2条1項1号の原告の商品等表示性の有無、周知性の存否などが争点となりました。
この点については、原告の商品等表示とはいえない、周知性もないと判断されました。


著作権に係わる争点については、控訴審は原審を支持していて特に言及していません。
原審では、包装紙のデザインについて意匠法との関係から著作物性が否定されています。

(1) 本件標章の著作物性
ア 原告は,本件標章はAが作成した著作物であり,職務著作の規定により,原告がその著作権を取得した旨主張する。
 著作権法2条1項1号は,著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定し,さらに同条2項は,「この法律にいう『美術の著作物』には,美術工芸品を含むものとする。」と規定している。これらの規定は,意匠法等の産業財産権制度との関係から,著作権法により著作物として保護されるのは,純粋な美術の領域に属するものや美術工芸品であって,実用に供され,あるいは産業上利用されることが予定されている図案やひな型など,いわゆる応用美術の領域に属するものは,鑑賞の対象として認められる一品製作のものを除いて,特段の事情のない限り,これに含まれないことを示しているというべきである。
イ 本件標章は,‥初から本件饅頭の商品名を示すものとして作成され,包装紙に商品名を表示する態様で使用されている(甲1)から,正に産業上利用される標章であること,∧婿翩絃鰐槝慎載のとおり,漢字の「撃」に欧文字の「GEKI」を一部重ねたものであるが,「GEKI」は「撃」の音読みをゴシック体の欧文字でローマ字表記したものにすぎず,「撃」部分も,社会通念上,鑑賞の対象とされる文字と解するのは相当でないことから,本件標章は,著作物とは認められない。
(2) 小括
 したがって,原告の著作権に基づく請求は,理由がない。
』(以上、原審判決より)


「小学生の書いた作文や絵画でも著作権は成立する」と言われますが、文字を含んだロゴやこのような意匠法との関係が問題となる領域の著作物では著作権の成立の判断は微妙なものとなります。


written by ootsukahoumu at 04:20|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2005年09月16日

キューピー著作物「権利濫用」事件〜知財判決速報〜

知財判決速報より

H17.9.9 東京地裁 平成17(ワ)7875 著作権 民事訴訟事件

キューピーに関するイラスト等の著作権の譲渡を受けた原告(仮に甲とします)が著作権侵害を根拠として被告(仮に乙とします)に対して損害賠償を請求した事案。

結論は請求棄却で原告甲の敗訴


裁判所による求釈明が何度も行われたにもかかわらず、侵害されたとする著作権や侵害行為、損害の内容が原告甲側において特定されないというもので、甲には訴訟代理人も付いていない濫訴的な訴訟


今回、原告甲は
本件訴訟は,損害金の獲得を目的とするものではなく,被告代表者の著作権に関する訴訟で言い渡された判決(東京高等裁判所平成11年(ネ)第6345号,同平成12年(ネ)第7号等)を正確にすることが主たる目的であるから,被告代表者の著作権の存否について改めて審理をして,国民の前にその疑問について真実を糾す必要がある」(本件判決文より)

との義侠心?から訴訟を提起したようです。

事の発端としては上記の平成13年に高裁判決の出ている2つの訴訟があります。本件の被告乙はこの2つの裁判では原告でした。
もっとも、今回の原告甲はこの2つの裁判に関係ありません。

そして、判決は
上記認定のとおり,ローズ・オニールの著作物に係る著作権の保護期間及び本件契約の内容並びに本件訴訟に至る経緯等によれば,原告は,少なくともローズ・オニールの著作物に係る著作権を業として利用する目的はなかったのであって,むしろ,原告は,被告が著作権の侵害行為を行って利益を得ていたと指摘する判決に目を付けて,その利益を損害賠償金として取得しようとして,これに関する著作権を取得しようとしたものと推認することができる。そうすると,このような原告の請求は,司法機関を利用しつつ不当な利益を追求するものであって,文化的所産の公正な利用を目的とする著作権法の趣旨に反するものであるから,原告の主張に係る著作権に基づく請求は,権利濫用として許されないというべきである。

と判示しました。


結局、裁判所は原告甲の請求はつまるところカネ目当て(6億円の損害があると主張。賠償額のうちの一部1000万円を請求しました。)の脱法行為であり「権利濫用」として許されない、と判断したわけです。


参考

被告乙とキューピー株式会社との訴訟

H13. 5.30 東京高裁 平成11(ネ)6345 著作権 民事訴訟事件

原審 H11.11.17 東京地裁 平成10(ワ)13236 著作権 民事訴訟事件

なお、平成14年10月29日上告棄却。


被告乙と日本興業銀行との訴訟

H13. 5.30 東京高裁 平成12(ネ)7 著作権 民事訴訟事件

原審 H11.11.17 東京地裁 平成10(ワ)16389 著作権 民事訴訟事件


ところで、被告乙とキューピー株式会社との間では上記の東京地裁に提起された訴訟(第一次訴訟)のほかに、大阪地裁にその後提起された訴訟もあります。
いくつかあるイラスト作品のうち、第一次訴訟とは異なるイラスト作品などの著作権に関して訴訟物とされたものです。
もっとも、乙が主張した点のうちの一部は実質的な第一次訴訟の蒸し返しであるとして信義則違反禁反言の法理から退けられています。

H17. 2.15 大阪高裁 平成16(ネ)1797 著作権 民事訴訟事件

原審 H16. 4.27 大阪地裁 平成15(ワ)6255 著作権 民事訴訟事件




written by ootsukahoumu at 07:38|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2005年09月07日

CATV事業者著作権使用差止等請求事件〜知財判決速報より〜

CATV(ケーブルテレビ)事業者によるCS再送信やBS、地上波再送信での著作物利用関係にかかわる紛争について控訴審判決が出ています。

訴訟は大きく分けて
1 ジャスラック Vs CATV事業者3社
2 ジャスラック、日本脚本家連盟、日本シナリオ作家協会、日本芸能実演家団体協議会、日本文芸家協会 Vs CATV事業者3社

という二つに分けられます。

1について
H16. 5.21 東京地裁 平成13(ワ)20747等 著作権 民事訴訟事件

H17.8.30 知財高裁 平成17(ネ)10012 著作権 民事訴訟事件


2について
H16.5.21 東京地裁 平成13(ワ)8592等 著作権 民事訴訟事件など

H17.8.30 知財高裁 平成17(ネ)10009等 著作権 民事訴訟事件


ケーブルテレビ事業者は、NHKや民放などの放送会社から有線放送での同時再送信による番組使用許諾を得たうえで番組を配信します。この場合の著作権使用料は放送会社との間で処理されるのではなく、ジャスラックなど著作権管理団体と行われます。その際の契約書は(社)日本ケーブルテレビ連盟とジャスラックなどとの間で合意された包括的な契約書(5団体契約)が利用されています。

本件で被告となったケーブルテレビ事業者は前記ケーブルテレビ連盟加盟の会員ですが、この使用許諾契約書の解釈、取扱いについて疑義が生じたことから紛争が訴訟にまで及んだものです。


結果的にはCATV事業者側の主張は控訴審ではことごとく容れられませんでした。


1について

従前の使用許諾契約(5団体契約)に新しい放送形態であるCS放送(平成元年4月サービス開始)が含まれるかどうかという事実認定が主な争点となりました。
原審ではCS放送についても5団体契約の内容に含まれるとして、原告ジャスラック側が主張していたCS放送についての別個の契約締結の必要性を認めませんでした。
ところが、控訴審では逆にCS放送は5団体契約の内容には含まれず、したがって不当利得請求や使用料請求が可能であると判断しました。

実はCS放送の取扱いについては、当初ケーブルテレビ連盟は被告側と同様のスタンスに立っていました。ただ現在ではジャスラックとは利用料率などについて毎年暫定的合意をしてその都度確認書取り交わしている状況です。
なお、ジャスラック以外の4団体はCS放送に関してケーブルテレビ事業者に対して5団体契約とは別に権利行使していません


2について

被告となったCATV事業者は5団体契約を締結していたので、5団体は被告に対してこの契約に基づき著作権使用料の支払いを請求しました。

(1)これに対してCATV事業者(有線放送事業者)は、地上波、BS放送に関する同時再送信行為が放送事業者の著作物の利用の範囲に含まれ、ジャスラックなど5団体とそもそも契約を結ぶ必要はなかったと反論していました。
この点に関しては、原審、控訴審ともに被告CATV事業者の主張は容れられませんでした。

著作権法上、公衆送信において放送事業者と有線放送事業者は別個の存在であるというのが主な理由です。両者は放送主体も放送態様も違う別個のものであるということです。

(2)なお、再送信についてワンチャンス主義から著作隣接権を持たない実演家(日本芸能実演家団体協議会)との契約関係について契約の有効性が争われていましたが、金銭の支払いは「補償金」名目のもので契約自由の原則から有効である、として控訴審では原審とは逆に契約は有効と判断されました。

著作隣接権者のワンチャンス主義を規定した著作権法の規定(第92条2項1号)の意義と契約法理にかかわる判断で興味深い点です。



二つの裁判の判決文を読むと、ケーブルテレビ事業と衛星放送の発展史(地上波からBSアナログ、CSアナログさらにBSデジタル、CSデジタルへ)、それに伴う著作権権利者団体との交渉の経緯(昭和40年代からもたれていた)が良く分かります。

それぞれの思惑があってCS放送の取扱いや使用料率など未確定な部分がありましたが、今回の判決でCS放送の取扱いに関する未確定な部分についてはある程度「白黒」がついたことになり、ジャスラック以外の権利者団体にとっても意味のある判決になると思われます。

追記:被告CATV3社が9月8日上告しました。
(05.9.10)


■追記(06.10.11)

日経11日付記事より

10日、上告棄却の決定。

■追記(07.02.15)

ジャスラックプレスリリース
「2007年2月14日
知財高裁の判決を無視するCATV事業者に対し間接強制の申立て
−JASRACと利用許諾契約を締結せずにケーブルテレビ放送を継続−」

プレスリリース


written by ootsukahoumu at 00:01|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2005年08月28日

死刑囚著作権侵害裁判〜知財判決速報より〜

H17.8.25 東京地裁 平成16(ワ)26420 著作権 民事訴訟事件

事案は、昭和55年に発生した埼玉県宮代町での強盗殺人、放火事件の死刑囚(最高裁で平成10年死刑確定)が、自己の執筆した著作物の著作権等を侵害されたとしてテレビ朝日の番組ディレクター並びにキャスターに対して損害賠償等を請求したものです。

結論的には原告敗訴。


この強殺事件については、こちらのサイトに経緯が掲載されています。

事件史探求「埼玉・宮代町、母子殺人事件」

嫌疑をかけられた兄弟のうち死刑、弟が無期懲役の判決を受けています(いずれも確定)。この兄が今回の民事訴訟の原告。


死刑囚の無実(冤罪事件)の主張をきっかけとしてテレビ朝日は取材を始めて番組を制作、放送した(H4年放送)。その後この事件を番組ディレクターら被告が書籍化したのですが(H6年出版)、その際死刑囚が執筆した本(H3年発行)の内容などを引用しました。
ところで、番組や番組書籍は冤罪事件の可能性を示唆する内容となっていて死刑囚の主張と対立するものではなかった。また、死刑囚は取材活動に対して協力もしていました。それにもかかわらず死刑囚は、自己の許諾なくして番組や書籍に自分が執筆した本などが利用されたと主張、提訴に及んだのです。
なお、書籍が出版されたことを原告が知って(H6年認識)から提訴まで(H16年12月)すでに10年が経過していますが、それまで一度も抗議を申し立てたことはありませんでした。

判決は、こうした経緯を踏まえて死刑囚の執筆による著作物の利用等について死刑囚の事後的な黙示の承諾があったと認定、著作権侵害はないと判断しています。


なお、今回の民事訴訟事件の原告となった死刑囚は、弁護士を付けない本人訴訟を行っているため主張内容が精査されておらず、また損害賠償の額が200億円(そのうちの1000万円の一部請求)と主張していたりしています。
こうしたこともあって、請求のいくつかは訴訟要件を欠き不適法であるとして「却下」と、あっさり退けられています。

判決文を読む限りいったいこの死刑囚はなにが不満だったのか、判然としません。
こんな訴訟を受けざるを得なかった被告側の労苦については同情を禁じ得ません。

■追記(06.3.12)
H18.2.28 知財高裁 平成17(ネ)10110 著作権 民事訴訟事件

控訴棄却(原告死刑囚側敗訴)



written by ootsukahoumu at 00:03|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2005年08月07日

バナー著作権侵害事件 =H17. 6.30 名古屋地裁判決=

下級裁主要判決情報より

H17.6.30 名古屋地方裁判所 平成16年(ワ)第3697号,同第4834号 著作権侵害行為差止等請求事件


事案は、ウエブサイト内のバナーを無断でコピーして利用したというもので公衆送信権侵害として争われています。
バナーの著作物性などは争点になっていません。個人的には最小サイズで文字と色彩だけの「バナー1」の著作物性を争点にしても良かったのではないかと思うのですが、本件では損害額の算定が中心となりました。

無断使用されたバナーは2種類。「バナー1」は88×31ピクセルの「言語と美術の複合的著作物」。「バナー2」は動画バナーで「写真及び言語の複合的著作物」。「バナー2」では、バナーをクリックしてリンク先にサイトが移動することにより広告料が発生する広告契約が締結されていました。


結論的には、著作権法第114条3項(使用料相当額)の損害額を認定。

前記認定事実によれば,本件バナー1については,その制作費見積額,バナーの形状・機能,これ自体によって利益が発生するものではないこと,被告による侵害状況,侵害期間が約6か月間であること等を総合考慮すれば,原告が著作権の行使について受けるべき金銭の額は,総額で3万円であると認めるのが相当であり,本件バナー2については,そのバナーの形状・機能,収入状況,侵害状況,延べ侵害期間が約11か月間であること等を総合考慮すれば,原告が著作権の行使について受けるべき金銭の額は,総額で44万円と認めるのが相当である。」(名古屋地裁判決より抜粋)


著作権法第114条3項は、通常の使用料相当額が最低限の損害賠償額として保証される法定規定で、権利者がどのような損害を受けたかの立証は不要で社会的な相場の使用料金額を立証しさえすればその額が無条件で確保される(侵害者の反証不可)という被害者保護を趣旨とする規定(みなし規定)です(加戸守行「著作権法逐条講義四訂版」2003 662頁以下参照)。
したがって、本条項を適用する場合は使用料について社会的な相場が形成されている場合、たとえば音楽ならジャスラックの使用料規程であったり、出版物なら定価の10%(印税相当額)などが相場となります。
著作権者は本条2項と異なり侵害者の利用形態を現に行っていなくても本条項の適用を主張することができるので裁判例でも3項によるものが多いようです(早稲田祐美子「著作権侵害による損害」牧野利秋ほか編『新・裁判実務大系 著作権関係訴訟法』2004 540頁以下参照、作花文雄「詳細著作権法第三版」2004 482頁参照)。
本条項の適用に際しては客観的にみて相当な使用料相当額を追求することになるはずですが、法改正の経緯も踏まえ判例上寄与度により損害額が算定されていて当事者間の具体的な事情を踏まえた上での損害額認定となっています(金井重彦・小倉秀夫編「著作権法コンメンタール下巻」(岡村久道)2002 255頁参照)。

本条の趣旨からすると使用料について社会的な相場が形成されない場合は適用が困難となるはずですが、本事案のようなバナー無断使用の場合にも適用されていますから(バナーのライセンス契約は通常行われないと思われます)かなり柔軟な運用です。


ところで、知人のWebデザイナーにバナーの制作費用の大まかなところを聞いてみたところ、「バナバナネットを参照してみては」ということでした。サイズなどの問題もありますが、「バナー1」のような最小サイズでシンプルなものなら1万円かからないということで、制作費用15万円という原告の主張は理解しがたいところです。また、「バナー2」のほうが制作費用はかかっていそうですが、原告はこの点について主張していません。いずれにしろ原告において想定困難な使用料についての社会的な相場額を立証し切れてはいません。

結局、本件では広告料収入が生じないバナーについては制作費が、これに対して広告料収入が発生しているバナーについては広告料収入が損害額算定要素として重視されたといえます。

なお、著作権法第114条2項の規定に基づく請求もなされていましたが、原告に損害の発生はないとして受け容れられませんでした。


上記参考文献のほか、松田政行「通常受けるべき金銭の額(2)」『著作権判例百選第三版』2001 204頁以下参照。
written by ootsukahoumu at 00:36|この記事のURLComments(1)TrackBack(0)

2005年08月01日

すごすぎる「妖怪根付」の世界=知財判決より(その2)=

昨日ブログに書いた海洋堂のフィギア模型原型の著作物性(著作権)を巡る訴訟。早速知人の根付作家さんとこの裁判を話題にしました。


「 控訴審では妖怪根付だけ著作物性が認められたんです。
  動物やアリスものは否定。どうしてでしょうね? 」

「 動物ものは図鑑とかから持ってきたんでしょ?
  アリスはジョン・テニエルの原画のコピーだからじゃない?
  それに対して妖怪根付はなかなかのものですよ。
  私も知り合いから教えられて参考に一個買い求めましたが、
  この値段でこれだけの出来というのはスグレもの。
  紐も付属していたし『根付』の範疇に含まれるものでした。 」


象牙加工の現代根付作家も評価する海洋堂原型製作の形彫根付「妖怪シリーズ・妖怪根付」。

「 ネットでもいろいろ紹介されてますよ。
  造形作家さんの個人サイトもあります。 」


と教えられて今回検索してみたら、あるある!しかもそのクオリティの高いこと!驚きました。


以下は「妖怪根付」を扱ったサイトの一部です。


妖怪根付

妖怪根付ー表紙

妖怪根付陰の巻の紹介

フィギア造形師 竹谷隆之さんのサイト



そこで、控訴審裁判所の「妖怪根付」に対する判断部分を以下に改めて掲載しておきたいと思います。


『(ウ) 本件妖怪フィギュア
本件妖怪フィギュアは,本件動物フィギュアと異なり,空想上の妖怪を造形したものである。
確かに,前記認定のとおり,本件妖怪フィギュアのなかには,石燕の「画図百鬼夜行」を原画とするものもある。
しかし,平面的な絵画をもとに立体的な模型を制作する場合には,制作者は,絵画に描かれた妖怪の全体像を想像力を駆使して把握し,絵画に描かれていない部分についても,描かれた部分と食い違いや違和感が生じないように構成する必要があるから,その制作過程においては,制作者の想像力ないし感性が介在し,制作者の思想,感情が反映されるということができる。
そして,前記認定のとおり,本件妖怪フィギュアは,石燕の原画を忠実に立体化したものではなく,随所に制作者独自の解釈,アレンジが加えられていること,妖怪本体のほかに,制作者において独自に設定した背景ないし場面も含めて構成されていること(特に,前記認定の「鎌鼬」,「河童」や,「土蜘蛛(つちぐも)」が源頼光及び渡辺綱に退治され,斬り裂かれた腹から多数の髑髏(どくろ)がはみ出している場面(甲第52号証)などは,ある種の物語性を帯びた造型であると評することさえも可能であって,著しく独創的であると評価することができる。),色彩についても独特な彩色をしたものがあることを考慮すれば,本件妖怪フィギュアには,石燕の原画を立体化する制作過程において,制作者の個性が強く表出されているということができ,高度の創作性が認められる。
また,本件妖怪フィギュアのうち,石燕の「画図百鬼夜行」を原画としないものについては,制作者において,空想上の妖怪を独自に造形したものであって,高度の創作性が認められることはいうまでもない。
そして,前記認定のとおり,本件妖怪フィギュアは,極めて精巧なものであり,一部のフィギュア収集家の収集,鑑賞の対象となるにとどまらず,一般的な美的鑑賞の対象ともなるような,相当程度の美術性を備えているということができる。
以上によれば,本件妖怪フィギュアに係る模型原型は,石燕の「画図百鬼夜行」を原画とするものと,そうでないもののいずれにおいても,一定の美的感覚を備えた一般人を基準に,純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるものと認められるから,応用美術の著作物に該当するというのが相当である。』(H17. 7.28 大阪高裁 平成16(ネ)3893 著作権 民事訴訟事件)

(なお、スペースなど原文を変更した部分があります)


原審では大量・安価に製造されるお菓子の「おまけ」のフィギア模型原型であることが重視されて「純粋美術に準じるものとまではいえない」と判断されていましたが、控訴審裁判所では「妖怪根付」について著作物性を認めました。
控訴審裁判所の判断もこれで納得!というところです。



written by ootsukahoumu at 05:57|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2005年07月31日

海洋堂フィギア模型原型著作権民事訴訟判決〜知財判決速報より〜

数年前ですが秋葉原ラジオ会館へPC関連サプライを探しに行った際、ラジオ会館の店子が大きく様変わりしていることに驚いた記憶があります。フィギアや玩具専門店が数店出店していました。
フィギア製作会社として有名な海洋堂がラジオ会館に店舗を構えたことが大きな要因。その海洋堂製作のフィギア模型(食玩)原型(大量生産する複製品の原型となるもので、造形師によって製作され塗装担当者が色彩したもの)の著作物性が争われた訴訟の控訴審判決が先日下されました。


H17.7.28 大阪高裁 平成16(ネ)3893 著作権 民事訴訟事件

原審はこちら
H16.11.25 大阪地裁 平成15(ワ)10346等 著作権 民事訴訟事件


事案は、お菓子の「おまけ」(いわゆる食玩)として海洋堂がフィギア模型原型を製作し、お菓子メーカーがその複製品を食玩として利用する内容の著作権使用許諾契約が両社の間で締結されていました。金型の製作、複製品の製造はお菓子メーカー側で行われていました。お菓子の小売希望価格の2.5〜3.2%がロイヤリティ単価でそれに商品販売数量を掛けた金額がロイヤリティ許諾料)と取り決められていました。
なお、違約金は食い違う個数部分についてロイヤリティ単価の2倍とされていました。

ところで、お菓子メーカー側が商品の製造数量を過小虚偽報告(1000万個あまり。税務調査により製造個数が判明。)するなどしたことから海洋堂が未払い分の許諾料(ロイヤリティ)、違約金の支払いを求めるに至ったというものです。



・・・と、ここまで読むと単なる債務不履行事案なのですが、被告がどうしてフィギア模型原型の著作物性自体を争ったのか?

被告としてはいままでロイヤリティとして4億円あまり支払ってきましたが、さらに今回2億円近い支払いの必要が生じたことから、なんとか契約それ自体を反故にできないものかと考えたようです。著作権使用許諾契約ですから、そもそも許諾者側はフィギア模型原型についての著作権を有しておらず著作権を管理していない、となるのであれば、契約の基礎が崩れる(契約の要素錯誤があったとの主張)、ロイヤリティ算定でも別の考え方ができるのではないかと考えたわけです。

結論的には一審、控訴審ともお菓子メーカー側の敗訴


ここではフィギア模型原型の著作物性判断に触れた部分についてだけ取り上げたいと思います。

原審では動物、妖怪、キャラクター(不思議の国のアリス)いずれの種類の食玩原型についても著作物性を否定。これに対して控訴審では一部の食玩原型(妖怪)については肯定しました。
(なお、著作物性否定の判断が契約書の効力や規定の判断には影響しませんでした。)

控訴審では著作物性判断として

1 食玩原型は創作物か
2 創作物としても実用目的の応用美術となるか(純粋美術と応用美術の区別)
3 著作権法の保護の対象となる程度の美的創作性を有するのか(純粋美術と同視し得る程度の美的創造性の有無)


という判断の流れに乗っています。


本件模型原型は,実在する動物や,絵画に描かれた妖怪ないし人物等を立体的に表現するに当たって,誰が制作しても同じような表現にならざるを得ないような類型的な表現方法を用いたとはいえず,一定の限度で制作者の個性が表れているといえるから,思想又は感情を創作的に表現したものであるということができる
本件模型原型は,前記(ア)のとおり思想又は感情を創作的に表現したものではあるけれども,制作者が,当該作品を専ら鑑賞の対象とする目的ではなく,実用目的で制作したものであり,かつ,一般的平均人が,実用目的で制作されたものと受け取るものというべきであるから,純粋美術には該当しないものと解するのが相当である。そして,上記制作目的及び一般的平均人の認識からすれば,本件模型原型は,応用美術に該当するものというのが相当である
本件動物フィギュアは,実際の動物の形状,色彩等を忠実に再現した模型であり,動物の姿勢,ポーズ等も,市販の図鑑等に収録された絵や写真に一般的に見られるものにすぎず,制作に当たった造形師が独自の解釈,アレンジを加えたというような事情は見当たらない(なお,甲第51号証によれば,本件動物フィギュアの中には,あえて実際の動物と異なる形状等を採用しているものも存在するが,これは,美術性を高めるためにデフォルメしたというよりも,主に,型抜きの都合や,カプセルに収まる寸法を確保するなどの製造工程上の理由によるものと認められる。)。したがって,本件動物フィギュアには,制作者の個性が強く表出されているということはできず,その創作性は,さほど高くないといわざるを得ない。
してみると,本件動物フィギュアに係る模型原型は,一定の美的感覚を備えた一般人を基準に,純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるとまではいえず,著作物には該当しないと解される
」(以上、控訴審判決より抜粋)

なお、妖怪フィギア模型原型については、控訴審は原審と異なり著作物性を認めました。
本件妖怪フィギュアに係る模型原型は,石燕の「画図百鬼夜行」を原画とするものと,そうでないもののいずれにおいても,一定の美的感覚を備えた一般人を基準に,純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるものと認められるから,応用美術の著作物に該当するというのが相当である。



フィギア模型原型製作依頼は通常でしたら一体十数万円という請負契約の形で買取製作されていたのが、今回は海洋堂も「模型開発リスクを負う」、「より優れた模型原型を制作する」ためのインセンティブとする、ということで買取ではなくロイヤリティ支払い方式の契約となりました。
思いもかけず、「おまけ」企画がヒットして莫大な利益が生じたことからお菓子メーカーとしても思惑が違ってきたのかもしれません。

はからずも海洋堂のフィギア模型原型について著作物性が否定されてしまいましたが、その点は訴訟の筋としては傍論であくまで

≪契約書で合意していることはちゃんと履行をしなければならない≫

という至極常識的な判断に落ち着いたように思います。
著作権使用許諾契約書にはフィギア模型原型について著作物である旨記載されていました。また、訴訟に至る経緯を見てもお菓子メーカー側がフィギア模型原型の著作物性についてクレームをつけるという事実もありませんでしたから。

なお、著作権法での保護を否定されたフィギア模型原型の法的保護は、別途意匠法不正競争防止法一般不法行為法で図るということになります。


海洋堂のサイトはこちら
海洋堂


応用美術と純粋美術、「美術の著作物」について、三山雄三新版改訂 著作権法詳説」(2005)51頁以下、作花文雄詳解著作権法第三版」(2004)132頁以下参照。



written by ootsukahoumu at 06:19|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2005年07月23日

Rope Picnic広告素材著作権侵害事件〜知財判決速報より〜

知財判決速報に掲載された、著作権侵害損害賠償等請求事件についてのものです。

H17.7.20 東京地裁 平成17(ワ)313 著作権 民事訴訟事件


事案はROPEブランドで有名なJUN社(訴外)のブランド、「Rope Picnic」の商品広告で使用されていたデザイナー(原告)の著作物である図柄が、バッグ製造販売会社(被告)に勝手に手提げ鞄の装飾にコピーされて製造・販売されていたというものです。

原告であるデザイナーは製造販売会社に対して、損害賠償請求並びに謝罪広告掲載を請求しました。

結論的には一部認容。147万円余の請求額に対して21万円余が認められるにとどまりました。


争点としては
1 図柄の著作物性
2 損害額
 ア 複製権侵害に基づく相当対価額の賠償額
 イ 複製権侵害に基づく慰謝料
 ウ 氏名表示権侵害に基づく慰謝料
 エ 弁護士費用相当の損害額
3 謝罪広告の必要性

というものでした。

訴訟に至るまでに、侵害物件であるバッグを被告会社は回収、また「図案無断使用のお詫び」と題する書面も送付しており不法行為、著作権侵害行為を行ったという認識が被告側にあったと思われます。
ところが、実際訴訟になると、図案の著作物性自体から争うわけですから容赦のない話です。

問題になったマトリョーシカ人形の図柄がどのようなものか、分かりませんが(雑誌「Olive」などに広告が掲載されたようですのでご覧になった方もいらっしゃるかもしれません)、著作物性判断についてはさておき、本判決では損害額の認定内容について見てみたいと思います。

判決は、実際に販売された部分についてはバッグの小売価格(4900円)の10%に販売個数分を乗じた金額、未販売分部分については小売価格の2%をその個数に乗じて合算した額を複製権侵害による相当対価額の賠償額として認定しました。
この計算ですと、損害額は5万円余り。

次に慰謝料ですが、複製権侵害に基づく慰謝料請求については、
「侵害された財産権が当該被害者にとって特別の精神的価値を有し,そのため,単に侵害の排除又は財産的損害の賠償だけでは償い得ないような重大な精神的苦痛を被ったと認められる特別の事情がなければならないと解されるところ,そのような特別の事情の存在を認めることはできない。」
として退けました。

これに対して氏名表示権侵害に基づく慰謝料請求については、損害額を15万円と認定、事案の経緯を踏まえバランスをとっています。

弁護士費用相当損害額として1万円が認められましたので、合計で21万円余り。訴訟費用等を考えると原告にとっては全くのマイナスです。
遅延損害金として不法行為時である平成15年から5%(民法)つきますので、低金利時代としては2万円位つくのは大きいかもしれません。もちろん、原告には雀の涙ですが。


付記:「ROPE」「Rope Picnic」のEにはアクサン記号があります。テキスト文字では表現できませんでしたのであしからず。
written by ootsukahoumu at 00:04|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2005年07月18日

セコム不正競争防止法違反差止等請求事件

知財判決速報より
H17.7.12 東京地裁 平成17(ワ)11271 不正競争 民事訴訟事件

事案は、消火器の訪問販売会社が民間警備保障会社「セコム」の名称に類似した名称(「セコム防災設備」「セゴムサービス」)を使用して顧客に誤認・混同を生じさせたというものです。
被告側は口頭弁論期日に出頭せず、また答弁書等を提出していなかったことから擬制自白が成立しています。


名称などの不正使用については、著作権による対応ばかりでなく、商標法、不正競争防止法、民法上の不法行為などの検討も欠かすことができません。
本判決は不正競争防止法を根拠とする差止請求(2条1項1号、同2号、3条)での出訴を考える際の参考になるものと思います。



written by ootsukahoumu at 06:00|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2005年07月16日

理論名と著作権(続報)=知財判決速報掲載=

トレーニング理論「初動負荷」を巡る紛争について、大阪地裁の判文が知財判決速報に掲載されました。

H17.7.12 大阪地裁 平成16(ワ)5130 著作権 民事訴訟事件


原告であるトレーナー側は著作権法不正競争防止法、民法上の不法行為責任、以前被告出版社と取り交わした原稿執筆契約に基づく付随義務違反(債務不履行責任)と、ありとあらゆる法律構成を駆使してトレーナー創出によるこの運動理論の経済的利益を確保しようとしましたが、認められませんでした。

原告トレーナーは被告出版社の週刊誌に執筆依頼を受けて2年近くのあいだ記事を執筆していたのに、契約が終了した翌月には被告会社は自社で出版している別の隔月誌へ「初動負荷理論」をトレーナー氏名すら紹介することなく掲載したのでした。
平成6年に同理論を発表、その普及に努めてきた原告にとって、こうした被告出版社のやり方は納得がいかないものであったのでしょう。

原告側訴訟代理人として6名の弁護士が就いており(知財に詳しい、あるいは知財関連訴訟経験のある弁護士が含まれています)、原告側の思いの強さが伝わってくるようです。

written by ootsukahoumu at 04:42|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2005年07月10日

岩波新書出版差止等請求事件判決=知財判決速報=

戦時中の朝鮮半島にいた日本人たちを描いた著作を巡る紛争について、知財判決速報に判決が掲載されています。

H17.7.1 東京地裁 平成16(ワ)12242 著作権 民事訴訟事件

原告は韓半島にあった小学校の卒業生たち。卒業生たちは戦後になって小学校記念文集を編集しましたが、その文集が朝鮮近代史等研究者である大学教授の著作(岩波新書刊)において引用されました。その引用のされ方、文集への論評が問題となりました。

事案を簡単に言いますと、原告らは文集を当時を懐かしむ戦争の悲惨さを後世に残す異文化への敬愛というコンセプトで編集したつもりでしたが、被告の大学教授は植民地支配における「草の根の侵略」の代表例として引用・論評しており、このことが原告らの感情を害することになったというものです。

請求内容としては、販売差止、損害賠償、謝罪広告の掲載

結論的には、請求棄却。原告の敗訴となりました。


論点の一つに編集にかかわった人が、個々の記述の引用の当否について編集著作権を理由として主張することができるかというものがありました。

この点判例は、
編集著作物は,編集物でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものをいい(著作権法12条1項),編集著作物の著作者の権利は,当該編集物の部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない(同条2項)。同条は,既存の著作物を編集して完成させたにすぎない場合でも,素材の選択方法や配列方法に創作性が見られる場合には,かかる編集を行った者に編集物を構成する個々の著作物の著作権者の権利とは独立して著作権法上の保護を与えようとする趣旨に出たものである。
そうすると,編集著作物の著作者の権利が及ぶのは,あくまで編集著作物として利用された場合に限るのであって,編集物の部分を構成する著作物が個別に利用されたにすぎない場合には,編集著作物の著作者の権利はこれに及ばないと解すべきである。
この点につき,原告らは,編集著作物を構成する個々の著作物が編集著作物の著作者の特定の思想,目的に反して第三者に利用された場合に,上記著作者が何らの手立てを取ることもできないのは不当であるなどと主張する。しかし,編集著作物はその素材の選択又は配列の創作性ゆえに著作物と認められるものであり,その著作権は著作物を一定のまとまりとして利用する場合に機能する権利にすぎず,個々の著作物の利用について問題が生じた場合には,個々の著作物の権利者が権利行使をすれば足りる。また,編集物の一部分を構成する個々の著作物の利用に際しても編集著作物の著作者の権利行使を許したのでは,個々の著作物の著作者の権利を制限することにもなりかねず,著作権法12条2項の趣旨に反することになるといわざるを得ない。


と、判示しました。

著作権を根拠とする主張は、本事案では理論的に難しいところがあるように思われます。
被告著作における記述が原告らの名誉を毀損するかどうか、また名誉感情を侵害するかどうかという民法上の不法行為の成否が主たる争点となるわけですが、この点も判決において認められませんでした。
written by ootsukahoumu at 00:21|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2005年07月08日

ジョン万次郎銅像事件判決=知財判決速報より=

土佐清水市に建立されているジョン万次郎銅像と、銀行頭取の銅像の創作者を巡る事件の判決が知財判決速報に掲載されています。

H17.6.23 東京地裁 平成15(ワ)13385 著作権 民事訴訟事件

原告は銅像の台座などに表示されている製作者の氏名が被告の通称名であることから、著作者人格権氏名表示権)が自己に有することの確認等を求めました。


争点としては、
(1) 原告が本件各銅像について著作者人格権(氏名表示権)を有することの確認請求について確認の利益はあるのか。
(2) ジョン万次郎像の著作者は原告か被告のいずれか。
(3) 銀行頭取像の著作者は原告か被告のいずれか。
(4) 本件各銅像についての著作者名の通知訂正請求の可否
(5) 謝罪広告請求の適否
(6) 著作者人格権に基づく上記各請求について,消滅時効が成立しているか,あるいは,権利失効の原則が適用されるか。

というものでした。

結論としては、一部認容。確認の利益、当事者適格が原告にあるとした上で原告が各銅像の創作者であることが認められ、被告に対する関係者への訂正通知を内容とする請求も認められました(著作権法115条)。
もっとも、謝罪広告は認められませんでした。

原告被告ともに彫刻家で、各銅像の製作経緯にあたってはいずれも密接に係わっていて、また彫刻「業界」のしがらみ(師弟関係など)、金銭問題、身内の問題などもあって揉めに揉めてしまい30年を経てついには訴訟となってしまった事案です。


1 今回の判決では、ブロンズ像製作における創作者の認定について言及しているところが参考になると思われます。
著作物とは,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいい,著作者とは,著作物を創作する者をいうのであるから(著作権法2条1項1号,2号),本件各銅像についても,本件各銅像を創作した者をその著作者と認めるべきである。
ジョン万次郎像は,ブロンズ像であり,ブロンズ像は,塑像の作成,石膏取り,鋳造という工程を経て製作されるものである。そして,ブロンズ像の顔の表情,全体の構成,体格やポーズなどにおける表現が確定するのは塑像の段階であるから,塑像を制作した者,すなわち,塑像における創作的表現を行った者が当該銅像の著作者であることは明らかである。


今回の銅像製作でもその完成までに多くの人がかかわっていて石膏取りや鋳造は別の人が担当していますが、創作者はあくまで塑像を製作した人であるということです。

ところで、原告と被告のどちらが創作者かという点の事実認定については、鑑定意見書が6名の彫刻家から6通提出されていてそれが裁判所の創作者認定に当たってきわめて重要な判断材料となったものと思われます。
裁判所が採用した鑑定書では、ジョン万次郎像と銀行頭取像の各銅像には顕著な彫刻的同一性があること、原告、被告の過去の作品の作風との対比などから本件各銅像が原告の創作によるものであるとされていました。


2 また、著作権法115条の「適当な措置」として通知請求する点についての裁判所の判断も実務上参考になると思われます。
原告は,著作権法115条に基づき,被告が,本件各銅像の所有者等である土佐清水市及び駿河銀行に対し,別紙「通知目録(3)」及び同「通知目録(4)」の内容に記載のとおり,本件各銅像について,その制作者が被告ではなく原告であるとの通知をすること,及び,その制作者として原告の氏名を表示することを申し入れをすること(以下「本件通知請求」という。)を求めている。
前記認定の事実によれば,本件各銅像の所有者等は,本件各銅像の著作者は被告であると認識しているはずである。しかし,本件各銅像の著作者は,前記認定のとおり,原告である。このことと前記に認定した本件の経緯を考慮すれば,原告は,著作権法115条の「著作者・・・であることを確保・・・するために適当な措置」として,本件各銅像にその制作者であると表示されている被告に対し,本件各銅像の所有者等宛に,本件各銅像の著作者が原告であることを通知させることを請求することができるというべきである。すなわち,このような通知は,本件においては,原告が本件各銅像の著作者であることを確保し,原告と本件各銅像の所有者との紛争を未然に防止することにもつながることであり,同条にいう「適当な措置」に当たると認められる。



3 消滅時効の成否あるいは権利失効原則の適否について、判例は氏名表示権(19条)には真実に即した著作者氏名を表示するという公益上の要請があること等を理由として被告の主張を認めませんでした。


ところで、今回の裁判のことを知人の彫刻家に話してみました。

なんで原告はサインを入れなかったのか?
原告はエスキースをどうして作らなかったのか??
30年も経ってから名前を消すことにどうしてそんなにこだわるのか???

と疑問だらけのようでした。

なかなか事案の細かい経緯や原告の主張を説明しきれなかったので、裁判例を読んで感想を聞かせてくれるよう勧めてみましたが、「判旨は小さいフォントでプリントしてもA4判で18ページあるけどね」と言ったら、読むのを嫌がってました(笑)。

彫刻では粘土のような可塑材を使う場合と木材のような実材を使う場合があって、今回のようなブロンズ像の製作では、粘土→石膏→ロウ→ブロンズと4種の素材に変化するからそれだけ手を加える人の人数が増える可能性がある、ということが現場の人間の話を聞いてよくわかりました。

written by ootsukahoumu at 00:05|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2005年06月28日

自由国民社法律書籍イラスト使用差止等請求事件

先日ブログにこの事件を伝えるネット記事を掲載しましたが、自由国民社発行法律書籍のイラスト著作権を巡る侵害事件の判決が知財判決速報に掲載されました。

H17.6.23 東京地裁 平成16(ワ)16957 著作権 民事訴訟事件


事案はイラストレンタル会社を経由したイラストの使用許諾条件に関する著作権者と利用者当事者双方の認識の違い(使用期間などの条件等)が争われたものです。
原告は著作権著作者人格権氏名表示権)侵害を理由として、損害賠償、書籍販売差止を請求しました。

結論として、一部認容差止並びに損害賠償の一部が認められました。

争点としては、
1 許諾契約の条件内容
2 氏名表示権侵害の有無
3 損害の認定

というものでした。


イラスト著作権者とイラストレンタル会社との間の使用許諾契約の内容(1年以内・1社・1号・1種・1回限り)が成立しているのか、そしてその内容がイラスト借受利用者である自由国民社側に明示されていたのかが、今回の事案での争点のひとつとなっています。
問題がこじれたのは、イラストレンタル会社が倒産しているため、当時の契約内容が不分明となっているからでした。


判決はこの点、関連する取引確認書や料金表等の記載、他のレンタルサービス会社の貸出規定との比較検討から上記の条件が契約内容として成立し、被告側にも明示されていたことを認めました。
その上で、契約後1年以上経過してからの増刷部分については著作権(複製権)侵害があるとしました。

また、差止の必要性についても本件書籍の在庫分が回収がされているのかどうか不明であること、将来の増刷の可能性があるという点からこれを認めました。

もっとも、損害額としては、使用料相当額(1回分8万円)と慰藉料(30万円)が認められるにとどまりました(原告請求額は330万円)。


事案を読んで感じることは、自由国民社のような法律書籍を取扱う出版社であればなおさら、レンタルポジやレンタルイラストなどの使用許諾条件については明確にしておかなくてはならないだろうということです。
自由国民社の書籍は学部生の頃から利用する機会があって個人的には好きな出版社なので、この点は法律的にというよりむしろ思い入れを含めた意味での「道義的に」、ですが。

written by ootsukahoumu at 04:30|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2005年06月16日

追記:大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」著作権侵害控訴審判決

翻案権侵害の判断については、江差追分事件最高裁判決によれば依拠性直接感得性が要件とされます。
今回も「直接感得性」が抽象的要件として問題となっていますが、突き詰めるとそれはどういうことなのか。

その判断の内実については、2003年5月開催の著作権法学会シンポジウムでの設楽判事の報告に詳しいところです(設楽隆一複製ないし翻案について著作権研究30号2003年2頁以下参照)。
設楽判事の分析として、「政策的価値判断」と「著作物性判断」ということがあげられていますが、裁判官の思考過程が良く分かる内容となっています。

今回の控訴審判決の理解の一助となる報告ではないかと思われます。
written by ootsukahoumu at 22:00|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」番組公衆送信差止等請求控訴審判決

黒澤明監督・脚本の映画「七人の侍」について、映画脚本の著作権を持つ相続人らが、著作権、同監督の著作者人格権侵害を理由としてTV番組・その脚本の複製、公衆送信等の差止、損害賠償、謝罪文掲載等を請求していた事件の控訴審判決が下されました。

訴えられていたのはNHK番組脚本家
黒澤監督の遺族側は、大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」は「七人の侍」の象徴的な場面を盗用しており、映画の顧客吸引力にフリーライドしたものであると主張していました。

結論的には、原審と同様原告(控訴人)全面敗訴


当裁判所も,著作権法27条にいう「翻案」とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいい,したがって,既存の著作物に依拠して創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案には当たらないと解するのを相当とする(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。前記映画は,原判決も指摘するように,前記番組に比しはるかに高い芸術性を有する作品であることは明らかであるものの,以下に述べるとおり,前記番組が前記映画との間で有する類似点ないし共通点は結局はアイデアの段階の類似点ないし共通点にすぎないものであり,前記映画又はその脚本の表現上の本質的特徴を前記番組又はその脚本から感得することはできないというべきであるから,前記番組がDの有する前記著作権(翻案権)を侵害するものではない。


翻案」の判断基準としては江差追分事件最高裁判決があり、今回の判決でも引用されています。

H13.6.28第一小法廷・判決 平成11(受)922 損害賠償等請求事件

控訴審では、控訴人は「翻案」の判断において「はめ込み型模倣」「象徴型模倣」などの概念を展開、原著作物の著名性を強調して直接感得性判断について論駁しようと試みましたが、この点も認められませんでした。


著作権法の保護を受ける著作物とは,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)であり,それが著名であるか否かによって,その保護に差異があるということはできない。そして,「翻案」(著作権法27条)とは,前述のように,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうところ,著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得するものであるか否かも,対象となる原著作物が著名であるか否かによって差異があるということはできないから,控訴人らの上記主張も採用することができない。



「武蔵」は実際すべてOAを見ました。時折その演出に『「七人の侍」風』を感じないわけではありませんでしたが、それがここにいう「本質的特徴の直接感得性」要件を充足する程度のものであったかどうかといえば多分そうではなかった、と思います。
簡単に言ってしまえば、価値判断先行ですが全体として見るならば著作権侵害とまではいえない番組だった、と思います。

原告側の「はめ込み型模倣」論、不正競争防止法的考察によるフリーライド論で言わんとすることは良く分かるところです。

原告側(控訴人)は、
『著名な作品には(特にそれが娯楽作品である場合には),象徴的な場面があり,その一つの場面が有名ブランドのロゴのように作品全体を表象し,名作の個々の場面は,作品の力と宣伝・口コミ等があいまって,その作品を見たことがない者にも印象付けられ,不正競争防止法の「他人の著名な商品等表示」と似た力を持つようになる。本件は,テレビドラマ「武蔵 MUSASHI」が映画「七人の侍」の象徴的な場面を盗用したという意味において特異である。』
と、主張していました。

とは云え、視聴率絶対主義的な番組作りに対する批判が法的保護の対象になるには、今回の事案では難しかったのかもしれません。

いずれにしましても番組製作者の安易な番組作りの姿勢は、今回の件に限らず今後も問われる機会が増えていくことと思われます。

H17. 6.14 知財高裁 平成17(ネ)10023 著作権 民事訴訟事件

H16.12.24 東京地裁 平成15(ワ)25535 著作権 民事訴訟事件

記事


追記:2005年10月18日黒澤さん側の上告は退けられました。(05.10.22)

   ----------------------------------------

■追記08/12/13

参考文献

内藤篤「映画著作物の翻案的侵害はいかにして起こるか」
コピライト』48巻572号2頁以下参照


written by ootsukahoumu at 05:19|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)