最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ヴィジュアル系バンド専属契約事件(控訴審)

知財高裁令和4.12.26令和4(ネ)10059損害賠償請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 本多知成
裁判官    浅井 憲
裁判官    勝又来未子

*裁判所サイト公表 2023.1.16
*キーワード:バンド名称、グループ名称、専属契約、契約終了、パブリシティ権、信用毀損、営業権、職業選択の自由、公序良俗違反

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■事案

バンドの専属契約終了後の事務所側の通知内容の不法行為性が争点となった事案の控訴審

控訴人兼被控訴人(1審原告):バンドメンバー4名
被控訴人兼控訴人(1審被告):音楽マネジメント事務所、代表者

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■結論

1審原告控訴原判決一部変更、1審被告控訴棄却

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項21号、民法90条

1 1審被告Yが本件要請をしたか
2 本件各通知及び本件要請は不法行為に該当するか
3 1審原告らの損害の発生及びその額

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■事案の概要

『本件は、一審被告会社との間で専属的マネージメント契約を締結し、「A」との名称(本件グループ名)でバンド活動に従事していた一審原告らが、同契約終了後、本件グループ名を用いてバンド活動を継続しようとしたところ、一審被告会社又は一審被告Yが、同バンドは同契約によって契約終了後6か月間、一審被告会社の承諾なしに実演を目的とする契約を締結することが禁止されており、一審被告会社は承諾をしていない、本件グループ名に係る商標権は一審被告会社に帰属しており一審原告らが本件グループ名を使用することを許諾していないなどと記載された文書又は電子メールを関係者らに送付又は送信したこと(本件各通知)等が、一審原告らの営業権、パブリシティ権、営業の自由、名誉権、実演家人格権(氏名表示権)を侵害する不法行為に当たるとして、一審原告らが、一審被告Yに対して民法709条に基づき、一審被告会社に対して民法709条又は会社法350条に基づき、連帯して、各一審原告につき損害賠償金99万円及びこれに対する不法行為の日の後の日である一審被告らに対する各訴状送達の日の翌日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』

『原判決は、本件通知1〜4における一審被告会社が商標権を取得しているかのような記載及び一審被告会社が本件グループ名について利用の許諾をできる地位にあるかのような記載はいずれも虚偽であり、一審被告Yの強い意向により一審被告会社が上記各通知を送付したことにより、一審被告らが一審原告らの営業権を侵害したとして、一審原告らが一審被告らに対してそれぞれ損害額20万円及び弁護士費用2万円の合計22万円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を求める限度で一審原告らの請求を認容し、その余の請求をいずれも棄却した。』

『これに対し、一審原告ら及び一審被告らの双方が、敗訴部分につき不服であるとして、それぞれ控訴した。』
(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 1審被告Yが本件要請をしたか

控訴審は、一審被告Yが本件要請をし、これを受けて訴外Bが本件グループに係る記事の掲載を取りやめたことを認定しています(26頁以下)。

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2 本件各通知及び本件要請は不法行為に該当するか

(1)本件条項の有効性

本件専属契約終了後6か月間の活動制限規定の有効性について、控訴審は、結論として本件条項による制約には何ら合理性がなく、本件条項は公序良俗に違反し無効であると判断しています(27頁以下)。

(2)商標権及び本件グループ名

本件グループ名について、商標権又は排他的使用権を1審被告会社が有しているかどうかに関して、控訴審は、結論として、1審被告会社は、本件グループ名について、商標権及びパブリシティ権、実演家人格権(氏名表示権)その他の排他的使用権を有していないと判断しています。

*グループ名称に関するパブリシティ権について
控訴審は、
「実演家団体に付されたグループ名についても、その構成員の集合体の識別情報として特定の各構成員を容易に想起し得るような場合には、芸名やペンネーム等と同様に、各構成員個人の人格権に基づき、グループ名に係るパブリシティ権を行使できると解される。」(30頁)
と判断しています。

(3)本件写真

本件写真の著作権が一審被告会社に帰属するかどうかについて、控訴審は、本件写真の著作権は訴外Cに帰属すると認めるのが相当であると判断しています。

(4)本件各通知及び本件要請の不法行為該当性

結論として、控訴審は、本件要請及び本件各通知は、実演家である一審原告らの活動を不当に妨害するものであるなどとして、1審原告らの営業権を侵害し、名誉及び信用を毀損するものであって、1審原告らに対する不法行為に当たると判断しています。 

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3 1審原告らの損害の発生及びその額

財産的損害88万4288円(2万9020円+85万5268円)
(そのうちの一部請求70万円)
慰謝料 20万円
弁護士費用相当額損害 9万円

合計 各99万円(36頁以下)

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■コメント

控訴審では専属契約終了後の活動制限規定の無効性、不法行為性も広く認定され、損害額も増額となっています。

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■過去のブログ記事

東京地裁令和4.4.28令和1(ワ)35186損害賠償請求事件
原審記事

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■参考サイト

「FEST VAINQUEURに関するご報告」
レイ法律事務所
2022年12月28日 リリース