最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

オーサグラフ世界地図共同著作者事件(対研究者)控訴審

知財高裁令和4.11.1令和4(ネ)10047「オーサグラフ世界地図」の共同著作権確認請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 東海林保
裁判官    中平 健
裁判官    都野道紀

*裁判所サイト公表 2022.11.17
*キーワード:地図、著作者性、共同著作者

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■事案

地図の共同著作者性が争点となった事案の控訴審

控訴人 (1審原告):デザイン・サイエンティスト
被控訴人(1審被告):研究者

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法14条、64条、65条

1 本件地図1ないし4の著作者

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■事案の概要

『本件は、控訴人が、被控訴人に対し、日本国際地図学会の「平成21年度定期大会発表論文・資料集」中の論文「オーサグラフによる矩形世界地図」(本件論文1)に「図1:筆者が考案する世界地図」として掲載された地図(原判決別紙1の(1)、本件地図1)及び「図2:平面充填地図とそこから切り出せる世界地図」として掲載された地図(原判決別紙1の(2)、本件地図2)並びに慶應義塾大学湘南藤沢学会の「KEIO SFC JOURNAL Vol.17No.1」中の論文「正多面体図法を用いた歪みの少ない長方形世界地図図法の提案」(本件論文2)に「図7 本論文で取り上げる世界地図」として掲載された地図(原判決別紙2の(1)、本件地図3)及び「図17 平面充填地図」として掲載された地図(原判決別紙2の(2)、本件地図4)について、控訴人が被控訴人とともに共同著作権及び著作者人格権を有することの確認を求める事案である。』

『控訴人は、前記第1の2及び3記載のとおり、被控訴人とともに共同著作権及び著作者人格権を有することの確認を求めるが、その趣旨は、控訴人が共同著作物である本件地図1ないし4に係る共有著作権(著作権法65条1項)及び著作者人格権(同法64条1項)を有することの確認を求めるものと解される。
 原判決が控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴した。』
(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件地図1ないし4の著作者

控訴審は、原判決を以下のように改めています(4頁以下)。

『共同著作物であるための要件は、第一に、二人以上の者が共同して創作した著作物であること、第二に、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないことであり、上記第一の要件である二人以上の者が共同して創作した著作物であることという要件を充足するためには、客観的側面として、各著作者が共同して創作行為を行うこと、主観的側面として、各著作者間に、共同して一つの著作物を創作するという共同意思が存在することが必要である。そして、著作権法は、単なるアイデアを保護するものではなく、思想又は感情の創作的な「表現」を保護するものであるから(著作権法2条1項1号参照)、創作行為を行うとは、アイデアの案出に関与したというだけでは足りず、表現の創出に具体的に関与することを要するものというべきである。
 そうすると、本件地図1ないし4が共同著作物であるというためには、少なくとも、上記第一の要件である二人以上の者が共同して創作した著作物であることという要件のうち、各著作者が共同して創作行為を行ったという客観的側面が充足されなければならず、そのためには、共同著作者であることを主張する控訴人が、単にアイデアの案出に関与したにとどまらず、表現の創出に具体的に関与したことを要するというべきである。』

上記のように共同著作物の要件について言及。そのうえで、本件について、本件全証拠を精査しても控訴人が本件地図1ないし4の表現の創出に具体的に関与したことを認めるに足りる証拠はないと判断。
結論として、控訴人の主張を認めていません。

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■コメント

原審の棄却の判断が控訴審でも維持されています。

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■過去のブログ記事

オーサグラフ世界地図共同著作者事件(対研究者)
東京地裁令和4.3.25令和2(ワ)25127「オーサグラフ世界地図」の共同著作権確認請求事件
原審記事

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■参考判例

オーサグラフ世界地図事件(対慶応義塾)
東京地裁令和3.6.4令和2(ワ)25127「オーサグラフ世界地図」の共同著作権確認請求事件
記事