最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

従軍慰安婦問題ドキュメンタリー映画事件(控訴審)

知財高裁令和4.9.28令和4(ネ)10024映画上映禁止及び損害賠償請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 東海林保
裁判官    中平 健
裁判官    都野道紀

*裁判所サイト公表 2022.10.25
*キーワード:映画、取材、許諾、引用、同一性保持権

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■事案

ドキュメンタリー映画製作の際の取材方法や素材の利用を巡って争われた事案の控訴審

控訴人(1審原告) :ジャーナリストら5名
被控訴人(1審被告):映画配給宣伝会社、映像製作者

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法20条、32条

1 1審被告による欺罔行為の有無
2 本件各許諾は本件規定に従い撤回されたか
3 本件映画1の製作、上映により1審原告らの社会的評価が低下したか等
4 本件各利用映像等の利用が1審原告の許諾に基づくものであるか
5 本件各利用映像等の利用が引用(著作権法32条1項)として適法か
6 1審被告らが本件利用映像等5、6を利用して本件映画1を製作、上映することは1審原告の著作者人格権を侵害するか
7 1審被告に1審原告との間の本件事前確認等条項に違反した債務不履行があるか
8 本件映画2の譲渡、貸与等により原告らの肖像権、名誉権(声望)が侵害され、1審原告らはこのことにより1審被告にアマゾンに対する意思表示をすることを請求できるか
9 エンドロールが削除された本件映画1のお正月韓国SBS放送版及び予告編(韓国版)による本件各利用映像等の利用が本件各利用映像等の著作権を侵害することにつき、1審被告らは責任を負うか


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■事案の概要

『(1) 本件は、控訴人らが、
ア 被控訴人らは、控訴人らに対する取材映像等並びに控訴人X2及び控訴人X4が作成した映像等を利用して本件映画1(ドキュメンタリー映画「主戦場」)を製作し、これを上映することにより、控訴人らに対する取材映像等について控訴人らが有する著作権及び著作者人格権を侵害し、控訴人X2及び控訴人X4が作成した映像等について控訴人X2及び控訴人X4が有する著作権並びに控訴人X2が有する著作者人格権を侵害したと主張して、それぞれ、各著作権及び各著作者人格権による差止請求権(著作権法112条1項)に基づき、被控訴人らに対し、本件映画1の上映等の差止めを求めるとともに(前記第1の2関係)、
イ(ア) 被控訴人らは、本件映画1の製作、上映により、控訴人らに対する取材映像等について控訴人らが有する著作権及び著作者人格権、控訴人X2及び控訴人X4が作成した映像等について控訴人X2及び控訴人X4が有する著作権並びに控訴人X2が有する著作者人格権を侵害した(前記ア)ほか、控訴人らの肖像権、名誉権(声望)、控訴人X1のパブリシティ権を侵害したと主張して、それぞれ、各不法行為による損害賠償請求権に基づき、被控訴人らに対し、損害の一部として、控訴人X1及び控訴人X2につき各450万円及びこれに対する不法行為後の令和元年8月1日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を、控訴人X3、控訴人X4及び控訴人X5につき各50万円及びこれに対する上記同様の遅延損害金の連帯支払を求め、
(イ) 予備的に、控訴人X3及び控訴人X4は、被控訴人Yは、控訴人X3及び控訴人X4との間の各合意に反して本件映画1を製作、上映したと主張して、被控訴人らに対し、各債務不履行による損害賠償請求権に基づき、各50万円及びこれに対する上記同様の遅延損害金の連帯支払を求め(前記第1の3及び4関係)、
ウ 被控訴人Yは、本件映画1の製作に当たり控訴人らを欺罔して取材に応じるという役務の提供をさせたと主張して、被控訴人らに対し、各不法行為による損害賠償請求権に基づき、各50万円及びこれに対する上記同様の遅延損害金の連帯支払を求め(前記第1の3及び4関係)、
エ 被控訴人Yが著作権を有する本件映画2(「Shusenjo: Comfort Women and Japan’s War on History」という表題の映画)がアマゾン(アマゾンドットコム・インク、アメリカ合衆国(省略)所在)により譲渡、貸与等され、控訴人らの肖像権、名誉権(声望)が侵害されたと主張して、被控訴人Yに対し、各肖像権及び各名誉権に基づき、アマゾンに対して本件映画2の上映等をしてはならない旨の意思表示をすることを求める(前記第1の5関係)
事案である。
(2) 原判決が控訴人らの請求をいずれも棄却したため、控訴人らが控訴した。』
(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 1審被告による欺罔行為の有無
2 本件各許諾は本件規定に従い撤回されたか
3 本件映画1の製作、上映により1審原告らの社会的評価が低下したか等
4 本件各利用映像等の利用が1審原告の許諾に基づくものであるか
5 本件各利用映像等の利用が引用(著作権法32条1項)として適法か
6 1審被告らが本件利用映像等5、6を利用して本件映画1を製作、上映することは1審原告の著作者人格権を侵害するか
7 1審被告に1審原告との間の本件事前確認等条項に違反した債務不履行があるか
8 本件映画2の譲渡、貸与等により原告らの肖像権、名誉権(声望)が侵害され、1審原告らはこのことにより1審被告にアマゾンに対する意思表示をすることを請求できるか


結論としては、原審の判断が維持されています(12頁以下)。

なお、控訴審で追加された争点

9 エンドロールが削除された本件映画1のお正月韓国SBS放送版及び予告編(韓国版)による本件各利用映像等の利用が本件各利用映像等の著作権を侵害することにつき、1審被告らは責任を負うか

についても、控訴人の主張は認められていません。

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■コメント

原審の判断が維持されています。

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■過去のブログ記事

東京地裁令和4.1.27令和1(ワ)16040映画上映禁止及び損害賠償請求事件
原審記事