最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
トレース疑惑Twitter書き込み事件(控訴審)
知財高裁令和4.10.19令和4(ネ)10019発信者情報開示請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 本多知成
裁判官 浅井 憲
裁判官 勝又来未子
*裁判所サイト公表 2022.10.24
*キーワード:イラスト、発信者情報開示請求、引用、トレース、同一性保持権、名誉棄損
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■事案
トレース疑惑に関する書き込みについて引用の成否などが争点となった発信者情報開示請求事件の控訴審
控訴人(1審被告) :ツイッター社
被控訴人(1審原告):イラストレーター
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■結論
原判決中控訴人敗訴部分取消し、被控訴人請求棄却
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■争点
条文 著作権法20条、32条、プロバイダ責任制限法4条1項
1 本件各投稿により被控訴人の権利が侵害されたことが明らかであるか
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■事案の概要
『本件は、氏名不詳者(本件投稿者1及び2)により、ツイッター(インターネットを利用してツイートと呼ばれるメッセージ等を投稿することができる情報サービス)上に、別紙投稿記事目録1及び2記載の記事(原判決別紙投稿画像目録記載の画像を含む。)が投稿されたことにより、原判決別紙被控訴人イラスト目録記載の各イラストに係る被控訴人の著作権及び著作者人格権並びに被控訴人の名誉権及び営業権が侵害されたことが明らかであると主張して、被控訴人が、ツイッターを運営する控訴人に対し、令和3年法律第27号による改正前の特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき、別紙発信者情報目録記載の情報の開示を請求する事案である。』
『原判決は、(1)別紙発信者情報目録記載1及び2の情報のうち、令和2年4月3日午前零時(日本標準時)以降のもので、別紙投稿記事目録記載の各投稿がされた時以前のログインのうち最も新しいもののIPアドレス並びに同IPアドレスが割り当てられた電気通信設備から控訴人の用いる特定電気通信設備に上記ログインに関する情報が送信された年月日及び時刻、並びに(2)別紙投稿記事目録1のユーザー名欄記載のアカウントの管理者の電話番号及び別紙投稿記事目録2のユーザー名欄記載のアカウントの管理者の電子メールアドレスの開示を求める限度で被控訴人の請求を認め、その余の請求をいずれも棄却した。
控訴人が、原判決における敗訴部分について不服があるとして、控訴を提起した。』(2頁)
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■判決内容
<争点>
1 本件各投稿により被控訴人の権利が侵害されたことが明らかであるか
(1)本件ツイート1−1の投稿による権利侵害の明白性
1)名誉棄損
結論として、裁判所は、本件ツイート1−1の投稿による名誉棄損について、「権利侵害の明白性」は認められないと判断しています(27頁以下)。
2)著作権侵害
また、本件ツイート1−1の投稿による著作権(複製権、自動公衆送信権)侵害について、引用(著作権法32条)が成立するとして、「権利侵害の明白性」は認められないと判断しています(32頁以下)。
3)著作者人格権侵害
さらに、著作者人格権侵害(同一性保持権侵害)についても、「やむを得ないと認められる改変」(20条2項4号)に当たるとして、「権利侵害の明白性」は認められないと判断しています(35頁以下)。
4)営業権侵害
結論として、本件ツイート1−1の投稿による営業権侵害についても、「権利侵害の明白性」は認められていません(36頁)。
(2)本件ツイート1−2の投稿による権利侵害の明白性
本件ツイート1−2の投稿による名誉棄損、著作権侵害、著作者人格権侵害、営業権侵害の各侵害性について、いずれも「権利侵害の明白性」は認められないと裁判所は判断しています(36頁以下)。
(3)本件ツイート2−1の投稿による権利侵害の明白性
本件ツイート2−1の投稿による著作権侵害及び営業権侵害について、「権利侵害の明白性」は認められないと裁判所は判断しています(43頁以下)。
(4)本件ツイート2−2の投稿による権利侵害の明白性
本件ツイート2−2の投稿による著作権侵害、著作者人格権侵害及び営業権侵害について、「権利侵害の明白性」は認められないと裁判所は判断しています(46頁以下)。
結論として、被控訴人の請求は全部棄却すべきところ、これを一部認容した原判決は失当であり、本件控訴は理由があるとして、原判決中控訴人の敗訴部分を取り消した上、当該取消しに係る被控訴人の請求が棄却されています。
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■コメント
原審と異なり、名誉棄損の成立が否定され、また、著作権侵害性の部分では引用の成立が認められ、さらに同一性保持権侵害性も否定されていて、1審原告全部棄却の判断となっています。
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■過去のブログ記事
東京地裁令和3.12.23令和2(ワ)24492発信者情報開示請求事件
原審記事
トレース疑惑Twitter書き込み事件(控訴審)
知財高裁令和4.10.19令和4(ネ)10019発信者情報開示請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 本多知成
裁判官 浅井 憲
裁判官 勝又来未子
*裁判所サイト公表 2022.10.24
*キーワード:イラスト、発信者情報開示請求、引用、トレース、同一性保持権、名誉棄損
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■事案
トレース疑惑に関する書き込みについて引用の成否などが争点となった発信者情報開示請求事件の控訴審
控訴人(1審被告) :ツイッター社
被控訴人(1審原告):イラストレーター
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■結論
原判決中控訴人敗訴部分取消し、被控訴人請求棄却
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■争点
条文 著作権法20条、32条、プロバイダ責任制限法4条1項
1 本件各投稿により被控訴人の権利が侵害されたことが明らかであるか
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■事案の概要
『本件は、氏名不詳者(本件投稿者1及び2)により、ツイッター(インターネットを利用してツイートと呼ばれるメッセージ等を投稿することができる情報サービス)上に、別紙投稿記事目録1及び2記載の記事(原判決別紙投稿画像目録記載の画像を含む。)が投稿されたことにより、原判決別紙被控訴人イラスト目録記載の各イラストに係る被控訴人の著作権及び著作者人格権並びに被控訴人の名誉権及び営業権が侵害されたことが明らかであると主張して、被控訴人が、ツイッターを運営する控訴人に対し、令和3年法律第27号による改正前の特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき、別紙発信者情報目録記載の情報の開示を請求する事案である。』
『原判決は、(1)別紙発信者情報目録記載1及び2の情報のうち、令和2年4月3日午前零時(日本標準時)以降のもので、別紙投稿記事目録記載の各投稿がされた時以前のログインのうち最も新しいもののIPアドレス並びに同IPアドレスが割り当てられた電気通信設備から控訴人の用いる特定電気通信設備に上記ログインに関する情報が送信された年月日及び時刻、並びに(2)別紙投稿記事目録1のユーザー名欄記載のアカウントの管理者の電話番号及び別紙投稿記事目録2のユーザー名欄記載のアカウントの管理者の電子メールアドレスの開示を求める限度で被控訴人の請求を認め、その余の請求をいずれも棄却した。
控訴人が、原判決における敗訴部分について不服があるとして、控訴を提起した。』(2頁)
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■判決内容
<争点>
1 本件各投稿により被控訴人の権利が侵害されたことが明らかであるか
(1)本件ツイート1−1の投稿による権利侵害の明白性
1)名誉棄損
結論として、裁判所は、本件ツイート1−1の投稿による名誉棄損について、「権利侵害の明白性」は認められないと判断しています(27頁以下)。
2)著作権侵害
また、本件ツイート1−1の投稿による著作権(複製権、自動公衆送信権)侵害について、引用(著作権法32条)が成立するとして、「権利侵害の明白性」は認められないと判断しています(32頁以下)。
3)著作者人格権侵害
さらに、著作者人格権侵害(同一性保持権侵害)についても、「やむを得ないと認められる改変」(20条2項4号)に当たるとして、「権利侵害の明白性」は認められないと判断しています(35頁以下)。
4)営業権侵害
結論として、本件ツイート1−1の投稿による営業権侵害についても、「権利侵害の明白性」は認められていません(36頁)。
(2)本件ツイート1−2の投稿による権利侵害の明白性
本件ツイート1−2の投稿による名誉棄損、著作権侵害、著作者人格権侵害、営業権侵害の各侵害性について、いずれも「権利侵害の明白性」は認められないと裁判所は判断しています(36頁以下)。
(3)本件ツイート2−1の投稿による権利侵害の明白性
本件ツイート2−1の投稿による著作権侵害及び営業権侵害について、「権利侵害の明白性」は認められないと裁判所は判断しています(43頁以下)。
(4)本件ツイート2−2の投稿による権利侵害の明白性
本件ツイート2−2の投稿による著作権侵害、著作者人格権侵害及び営業権侵害について、「権利侵害の明白性」は認められないと裁判所は判断しています(46頁以下)。
結論として、被控訴人の請求は全部棄却すべきところ、これを一部認容した原判決は失当であり、本件控訴は理由があるとして、原判決中控訴人の敗訴部分を取り消した上、当該取消しに係る被控訴人の請求が棄却されています。
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■コメント
原審と異なり、名誉棄損の成立が否定され、また、著作権侵害性の部分では引用の成立が認められ、さらに同一性保持権侵害性も否定されていて、1審原告全部棄却の判断となっています。
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■過去のブログ記事
東京地裁令和3.12.23令和2(ワ)24492発信者情報開示請求事件
原審記事