最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

雑誌記事無断複製事件

東京地裁令和4.2.24令和3(ワ)10987著作権侵害損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 田中孝一
裁判官    小口五大
裁判官    稲垣雄大

*裁判所サイト公表 2022.4.19
*キーワード:雑誌、記事、複製、翻案、一般不法行為論

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■事案

雑誌記事が無断複製、翻案されたかどうかが争点となった事案

原告:ジャーナリスト
被告:大学教授

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法21条、27条、民法709条

1 著作権、著作者人格権の侵害の成否
2 デッドコピーによる不法行為の成否

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■事案の概要

『本件は,ジャーナリストを職業としている原告が,中京大学の教授職にある被告に対し,(1)被告の執筆した奨学金に関する雑誌記事等により,原告が執筆した雑誌記事等の著作権(複製権,翻案権)著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)が侵害され,これらは不法行為に当たる,(2)仮に著作権侵害が認められないとしても,被告の雑誌記事等は原告の著作物のデッドコピーであり,これにより,(1)とは別途不法行為が成立するなどと主張して,不法行為に基づく損害賠償請求として,300万円及びこれに対する令和3年5月18日不法行為後である訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』(1頁以下)

<経緯>

H24 雑誌「選択」に原告記事掲載
H25 書籍「日本の奨学金はこれでいいのか!」に原告ルポ掲載
H25 被告が雑誌や書籍に12点の執筆

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■判決内容

<争点>

1 著作権、著作者人格権の侵害の成否

裁判所は、複製及び翻案の意義について言及した上で、原告の著作物(原告雑誌記事、原告ルポ)と被告執筆の各記述部分を対比して検討しています(6頁以下)。
裁判所は、各記述の共通点について、思想又はアイデアに属するものであるとか、ありふれたものであるなどとして、結論として、複製権又は翻案権の侵害性、また、著作者人格権の侵害性を認めていません。

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2 デッドコピーによる不法行為の成否

一般不法行為の成否について、裁判所は、北朝鮮映画放送事件最高裁判決(最判平成23.12.8)に言及した上で、本件では、著作権法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害する、といった特段の事情があることを、具体的に認めるに足りる客観的な証拠は見当たらないと判断。
結論として、被告各記述について、著作権侵害が成立しない場合、別途の不法行為の成立を認めることはできないと判断しています(15頁以下)。

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■コメント

別紙対比表が添付されていないので、詳細が分からないところではあります。